特許第5946174号(P5946174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5946174キサンテン系可溶性前駆体化合物および着色剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946174
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月5日
(54)【発明の名称】キサンテン系可溶性前駆体化合物および着色剤
(51)【国際特許分類】
   C09B 11/28 20060101AFI20160621BHJP
   C09B 67/44 20060101ALI20160621BHJP
【FI】
   C09B11/28 ECSP
   C09B67/44 A
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-129703(P2012-129703)
(22)【出願日】2012年6月7日
(65)【公開番号】特開2013-253170(P2013-253170A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2014年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三藤 彰洋
【審査官】 中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−066689(JP,A)
【文献】 特表2010−540416(JP,A)
【文献】 特開昭56−135555(JP,A)
【文献】 特開2013−116957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式()で表されるキサンテン化合物であることを特徴とする前駆体化合物
【化1】
(一般式()において、〜R10はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基または水素原子を表し、JとJはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基または下記式(2)を表す。ただし、JとJのうち少なくとも一方は、下記式(2)である。)。
【化2】
(式(2)中、Lは炭素数1〜10のアルキル基である。)。
【請求項2】
一般式(3)が一般式(4)で表されるキサンテン化合物である請求項に記載の前駆体化合物
【化4】
(一般式(4)において、R〜R10はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基または水素原子を表し、Jは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはn−ブチル基を表す。)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物と少なくとも1種類の油溶性有機溶媒を含有する油性染料組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の化合物及び水性媒体を含有する水性染料組成物。
【請求項5】
請求項またはに記載の組成物に含まれる一般式()の化合物より一般式(2)を脱離させる方法。
【請求項6】
請求項の方法を用いて着色した着色体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着色剤として有用な新規なキサンテン化合物に関する。更に詳しくは、色素分散技術を利用することなく、溶剤溶解性の乏しいキサンテン化合物を着色組成物とし、種々の物体を着色する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C.I.Acid Red 289、C.I.Acid Red 52等のキサンテン化合物は、色相が鮮明で、高発色性を有しており、光や熱等に対して堅牢であることから、レッド〜バイオレットの染料として広く使用されており、各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用など幅広い用途での応用がなされている。
【0003】
色素は一般に染料と顔料とに大きく分類される。染料は溶剤に可溶であるため取り扱い易く、高い着色力、透明性を示すが、その反面、耐光性、耐熱性や酸化性ガス耐性等の堅牢性が劣ることが知られている。一方、顔料は耐光性、耐溶剤性といった堅牢性が高いものの、溶剤に不溶なため、取り扱いが難しい。例えば、カラーフィルター等、光学用途への応用を想定した場合、高い透明性の確保が必要不可欠であり、溶剤に不溶な顔料を微細化する技術や溶媒に分散させるための高度な分散技術が必要となる。
【0004】
しかし、染料でも全ての溶剤に対して溶解する訳ではなく、化合物によって異なるが、ある特定の溶剤に対しては難溶性を示すものがほとんどである。
【0005】
溶剤溶解性の乏しい染料を用いて物体を着色する方法としては、例えば、前記した顔料のように高度な分散技術を用いた湿式着色法を用いる他、真空蒸着などの気相から物体上へ染料分子を析出させる乾式着色法などがある。湿式着色法は、溶剤溶解性の乏しい染料を溶剤中に微細に分散するために長時間の分散工程を必要とする上、分散助剤として種々の添加剤を加える必要があり、必ずしも適用範囲が広いとは言えない。また、揮発性の有機溶剤を用いるために、溶剤蒸気の回収設備などの環境負荷低減策を講じる必要がある。乾式着色法は、真空装置のような大型の設備が必要であり、更に染料を気化させる高温条件に耐える耐久性の良い色素は数が限られているため、必ずしも適用範囲が広いとは言えない。
【0006】
また、溶剤溶解性の乏しい染料骨格に、嵩高い置換基を導入し、溶剤溶解性を得ることも可能であるが、導入した置換基効果の影響を受けるため、必ずしも物性が元の化合物と等しくなるとは限らない。
【0007】
前記キサンテン化合物においても、ある用途で使用したい場合、そこで用いる特定の溶剤へ溶解しない場合がある。例えば、カラーフィルター用途で使用する場合、レジスト溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等に溶解しないため、分散等の処理が必要となり、製造に時間やコストがかかってしまう。また、溶剤溶解性を得るために、嵩高い置換基を導入する手法も考えられるが、導入した置換基効果により、本来のキサンテン化合物の色相を失う欠点がある。
【0008】
特許文献1〜5には、様々な色素を可溶性前駆体を合成して利用する手法が記載されているが、キサンテン化合物に関する記載はされていない。また、特許文献6には、溶剤溶解性の乏しいキサンテン化合物の着色方法として、イオン液体を用いて塗布する方法が記載されているが、イオン液体は一般的に用いられる溶剤ではなく、高価であるため、使用に関して大きなコストがかかってしまう欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3510927
【特許文献2】特開2007−284665
【特許文献3】特開2002−19261
【特許文献4】特開2000−28820
【特許文献5】特開2010−282074
【特許文献6】特開2006−282983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、溶剤溶解性に乏しいキサンテン化合物の分散技術を利用することなく、着色剤として種々の物体を着色する方法を提供することであり、その用途に適した染料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の置換基を有するキサンテン化合物は、従来に比べ飛躍的に溶剤溶解性が向上する事を見出し、またその置換基を容易に脱離させることができるため、本来のキサンテン化合物の性質を失うことなく物体を着色できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、
(1)一般式()で表されるキサンテン化合物であることを特徴とする前駆体化合物
【化1】
(一般式()において、〜R10はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基または水素原子を表し、JとJはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基または下記式(2)を表す。ただし、JとJのうち少なくとも一方は、下記式(2)である。)。
【化2】
(式(2)中、Lは炭素数1〜10のアルキル基である。)、
)一般式(3)が一般式(4)で表されるキサンテン化合物である()に記載の前駆体化合物
【化4】
(一般式(4)において、R〜R10はそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基または水素原子を表し、Jは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはn−ブチル基を表す。)、
)(1)または)に記載の化合物と少なくとも1種類の油溶性有機溶媒を含有する油性染料組成物、
)(1)または)に記載の化合物及び水性媒体を含有する水性染料組成物、
)()または()に記載の組成物に含まれる一般式()の化合物より一般式(2)を脱離させる方法、
)()の方法を用いて着色した着色体、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化合物は、上記の通り鮮明性および発色性に優れ、油性または水性染料組成物を形成して染料着色体に加工するとき、従来品よりも飛躍的に溶剤溶解性を向上できるため、本来のキサンテン化合物の性質を失うことなく物体を着色できる優れた特性を示すものである。すなわち、本発明の化合物は染料着色体に利用でき、カラーフィルター用インキやインクジェット用インキ等の幅広い用途に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、表1における化合物No.1の熱分析試験の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の化合物は、前記一般式(1)、式(3)または式(4)で表される。
【0016】
式(1)において、Aはキサンテン化合物の残基であり、x個のBはAの一部である窒素原子に結合している残基である。BはAに結合している残基であり、式(2)で表される。
【0017】
式(1)において、xは1または2の整数であり、特に整数xは1であることが好ましい。
【0018】
式(1)のキサンテン化合物とは、例えば、安部田貞治他著、色染社出版「解説染料化学」(3ページ)等に記載されているとおり、一般に下記式(5)で表される構造を有する化合物を意味する。
【0019】
【化5】
【0020】
本発明のキサンテン化合物は、下記式(6)で表される化合物が好ましい。
【0021】
【化6】
【0022】
式(6)において、R101〜R104はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R105はスルホ基、カルボキシ基、または、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基を表し、R106は水素原子または置換基を表し、R107およびR108はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、R109はカウンターアニオンを表す。ただし、式(6)で表される化合物が分子内で塩を形成するときは、R109は存在しない。
【0023】
式(6)で表される化合物は、例えば、下記式(7)または式(8)で表されるように、カチオンの位置が異なる異性体を有する。本発明の「キサンテン化合物」には、このような異性体も全て含まれる。なお、下記式(7)または式(8)中、R101〜R108、およびR109は、前記式(6)におけるのと同じ意味を表す。
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
式(6)で表されるキサンテン化合物のうち、より好ましくは前記式(3)で表される化合物が挙げられ、特に好ましくは前記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
式(2)において、Lは置換基を有しても良い炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0028】
式(2)において、Lが有しても良い置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例、F、Cl、Br)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、イソブトキシなど)、アルコキシアルコキシ基(例、メトキシエトキシなど)、アリール基(例、フェニル、ナフチルなどでこれらのアリール基はさらに置換基を有しても良い)、アリールオキシ基(例、フェノキシなど)、アシルオキシ基(例、アセチルオキシ、ブチリルオキシ、ヘキシリルオキシ、ベンゾイルオキシなどで、これらのアリールオキシ基はさらに置換基を有しても良い)、アミノ基、アルキル置換アミノ基(例、メチルアミノ、ジメチルアミノなど)、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボンアミド基、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アシル基、アミド基(例、アセトアミドなど)、スルホンアミド基(例、メタンスルホンアミドなど)およびスルホン酸が挙げられる。
【0029】
式(2)において、Lが置換基を有しない炭素数1〜10のアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ペンチニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、イソプロペニル、イソへキセニル基、シクロへキセニル基、シクロペンタジエニル基、エチニル基、プロピニル基、へキシニル基、イソへキシニル基、シクロへキシニル基等が挙げられる。
【0030】
式(2)において、Lは置換基を有しない炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、特にt−ブチル基であることが好ましい。
【0031】
式(3)において、R〜R10はそれぞれ独立に置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基または水素原子を表し、JとJはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基または上記式(2)を表す。ただし、JとJのうち少なくとも一方は、上記式(2)である。
【0032】
式(3)のR〜R10において、炭素数1〜8のアルキル基が有しても良い置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例、F、Cl、Br)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、イソブトキシなど)、アルコキシアルコキシ基(例、メトキシエトキシなど)、アリール基(例、フェニル、ナフチルなどでこれらのアリール基はさらに置換基を有しても良い)、アリールオキシ基(例、フェノキシなど)、アシルオキシ基(例、アセチルオキシ、ブチリルオキシ、ヘキシリルオキシ、ベンゾイルオキシなどで、これらのアリールオキシ基はさらに置換基を有しても良い)、アミノ基、アルキル置換アミノ基(例、メチルアミノ、ジメチルアミノなど)、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボンアミド基、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アシル基、アミド基(例、アセトアミドなど)、スルホンアミド基(例、メタンスルホンアミドなど)、およびスルホン酸が挙げられる。
【0033】
式(3)のR〜R10において、置換基を有しない炭素数1〜8のアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ペンチニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、イソプロペニル、イソへキセニル基、シクロへキセニル基、シクロペンタジエニル基、エチニル基、プロピニル基、へキシニル基、イソへキシニル基、シクロへキシニル基等が挙げられる。
【0034】
式(3)において、R〜R10は置換基を有しないことが好ましく、中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基であることが最も好ましい。
【0035】
式(3)において、JとJはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または上記式(2)を表す。ただし、JとJのうち少なくとも一方は上記式(2)である。
【0036】
式(3)のJおよびJにおいて、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基が挙げられ、中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が最も好ましい。
【0037】
式(3)中のJおよびJにおいて、式(2)としては、上記式(1)における式(2)と同義である。
【0038】
式(4)のR〜R10において、炭素数1〜8のアルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ペンチニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、イソプロペニル、イソへキセニル基、シクロへキセニル基、シクロペンタジエニル基、エチニル基、プロピニル基、へキシニル基、イソへキシニル基、シクロへキシニル基等が挙げられる。
【0039】
式(4)のR〜R10は、中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基であることが最も好ましい。
【0040】
本発明の式(1)で表されるキサンテン化合物は、例えば特開2011−148973号公報に記載の公知技術で製造したキサンテン化合物を対応するカルボエステル化することにより製造することができる。その合成スキームの一例を以下に示す。
【化9】
(上記化合物(10)〜(13)および(15)におけるR11およびR12は対応する置換基であり、例えば、式(16)および(17)である。
【化10】
上記式(14)〜(17)におけるLおよびJおよびJおよびR〜R10は、前記一般式(3)および(4)と同義である。)
【0041】
上記に例示した合成スキームでは、1ステップ目に示した1次縮合工程、2ステップ目に示した2次縮合工程、3ステップ目に示したカルボエステル化工程によって、本発明の色素化合物(1)、(3)および(4)を合成する方法である。
【0042】
1ステップ目に示した1次縮合工程では化合物(9)と化合物(10)とを有機溶剤や縮合剤の存在下で加熱し、縮合させる。次に、2ステップ目に示した2次縮合工程では上記の1次縮合工程で得た化合物(11)と化合物(12)とを再び加熱し、縮合させることによって化合物(13)を得ることができる。最後に3ステップ目では得られた化合物(13)を有機溶剤や塩基の存在下で(14)で示される二炭酸ジアルキル(二炭酸ジ−t−ブチル等)を用いて、カルボエステル化させることによって化合物(15)を得ることができる。即ち、本発明の化合物(1)を得ることができる。
【0043】
上記に例示した合成スキームの縮合反応において用いる有機溶剤については、1ステップ目に示した1次縮合工程では、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールおよびn−ブタノール等を単独で、もしくは混合して使用することが好ましい。2ステップ目に示した2次縮合工程では、例えば、エチレングリコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンおよびニトロベンゼン等を単独で、もしくは混合して使用することが好ましい。
【0044】
上記1次縮合工程における反応温度は、50〜100℃であることが好ましく、中でも90℃以下であることが好ましい。上記2次縮合工程における反応温度は、100〜200℃であることが好ましく、中でも110〜170℃であることが好ましい。
【0045】
一般式(3)および(4)中のR〜RとR〜R10が同一の基である化合物、即ち、R11とR12とが同一の基である化合物を合成する場合、上記合成スキーム中の化合物(10)と(12)とは同一のものを用いることができる。したがって、この場合は化合物(9)より一段階の縮合工程で化合物(13)を得ることができる。その際の反応温度としては、110〜170℃であることが好ましい。
【0046】
縮合剤としては、例えば、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム等を用いることが好ましい。
【0047】
上記3ステップ目におけるカルボエステル化に用いる有機溶剤としては、水、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、ジオキサジン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレン等が挙げられ、これらを単独で、もしくは混合して使用することができる。
【0048】
上記3ステップ目におけるカルボエステル化に用いる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の無機塩基、t−ブトキシカリウム、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の有機塩基が挙げられ、これらを単独で、もしくは混合して使用することができる。
【0049】
上記式(1)で表される化合物の具体例を、以下の表1−1〜表1−3に示すが、本発明はこれに限定されない。
表1−1
表1−2
表1−3
表1−3において、Meはメチル基を、Etはエチル基を、n−Prはノルマルプロピル基を、n−Buはノルマルブチル基をそれぞれ表す。
【0050】
本発明の油性または水性染料組成物は、本発明の化合物及び、油性染料組成物の場合は油溶性有機溶媒を、水性染料の場合は水性媒体を含有する。本発明の油性または水性染料組成物においては、本発明の化合物を0.2〜40質量%含有させるのが好ましく、さらには0.5〜20質量%含有させるのがより好ましい。また本発明の油性または水性染料組成物において、色相の調整などの目的で必要に応じて上記式(1)以外の色材を添加してもよい。添加できる色材としては、例えば酸性染料、反応性染料、直接性染料、カチオン染料、塩基性染料等の水溶性染料、分散染料、ソルベント染料等の油溶性染料、有機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、溶媒に溶解した状態あるいは分散した状態で添加される。
【0051】
本発明の水性染料組成物は、水性媒体に本発明の化合物を分散させて調製する事ができる。水性媒体としては、水または水溶性有機溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等のアミン類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0052】
本発明の油性染料組成物は、少なくとも1種類の油溶性有機溶媒に本発明のキサンテン化合物を溶解または分散させて調製する事ができる。用いられる油溶性有機溶媒としては、例えば、エタノール、ペンタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、テトラフルオロプロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のグリコール誘導体;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ブチルフェニルエーテル、ベンジルエーテル、ヘキシルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等の極性有機溶媒、等が挙げられ、これらの溶媒は単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
【0053】
油性染料組成物に用いられる分散剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ポリオキシアルキルエーテル燐酸エステル塩等公知のアニオン界面活性剤、ビニルナフタレン誘導体、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、スチレン、スチレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、無水マレイン酸、無水マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、またはこれらの塩等の高分子分散剤等が挙げられ、これらの1種以上を分散する染料化合物に対して10〜100質量%で使用するのが好ましい。またこれらの分散剤と併せて、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物等の公知のノニオン系の界面活性剤やシリコーン系、アセチレン系の公知の消泡剤を必要に応じ、顔料分散時及び/または顔料分散化後に添加する事ができる。
【0054】
顔料を微粒子に分散する方法としては、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いる方法が挙げられるが、これらの中でもサンドミル(ビーズミル)が好ましい。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましく、更に粉砕処理後に濾過、遠心分離などで素粒子を除去することが好ましい。
【0055】
本発明の染料組成物にはその他の添加剤として表面調整剤、防腐・防黴剤、pH調整剤等を含んでも良い。表面調整剤としては、ポリシロキサン系あるいはポリジメチルシロキサン系の界面活性剤、防腐・防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩等を、pH調整剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の3級アミン類等が挙げられ、それぞれ必要に応じて添加する事ができる。
【0056】
また本発明の油性または水性染料組成物中には被着色体への染料の定着性を向上させる目的で、必要な範囲内で組成中の媒体と相溶性のあるポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系又はポリアクリル系樹脂を含有させる事が好ましい。また定着性を向上させる目的で、必要な範囲内でエチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーや重合開始剤などを含有させてもよい。本発明の油性または水性染料組成物は上記各成分を溶媒に溶解あるいは分散及び混合する事によって調製することができる。
【0057】
本発明の化合物は、油性染料組成物、または水性染料組成物として各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用着色組成物に用いられる。油性染料組成物および水性染料組成物は、例えば普通紙、コート紙、プラスチックフィルム、プラスチック基板などの被着色材料に用いられる。また、本発明の染料組成物を被着色材料に付与する方法としては、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの各種印刷方法あるいはスピンコーター、ロールコーターなどによる塗工方法が挙げられる。
【0058】
次に、下記式(1)で表される本発明の可溶性前駆体化合物を化学的手段、光分解的手段及び/または熱的手段を用いて脱カルボエステル化し、下記のスキームにより示される溶剤溶解性の乏しいキサンテン化合物(18)に変換する方法について説明する。
【0059】
【化11】
(化合物(18)において、xは化合物(1)のそれと同じ整数を表し、Aは化合物(1)のそれと同じ意味を表し、Hは水素原子であり、Aの一部である窒素原子を介してx個の水素原子が結合していることを表す。)
【0060】
化学的手段とは、酸または塩基などの触媒によりキサンテン化合物(18)を製造する方法である。好ましい触媒は酸であるが、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、安息香酸、塩酸、硫酸、ホウ酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等が挙げられる。
【0061】
光分解的手段とは、式(1)で示されるキサンテン化合物が、吸収を有する光であれば使用することができる。具体的には、高圧または低圧水銀灯、タングステンランプ、LEDランプ、レーザー光源等が上げられる。
【0062】
熱的手段とは、無溶媒あるいは溶媒の存在下で50〜300℃に加熱することにより、キサンテン化合物(18)へと変換する方法であり、中でも加熱温度は70〜250℃が好ましい。更には、この熱的手段と上記化学的手段と上記光分解的手段の3つの内、複数の方法を好ましく併用することができる。
【0063】
これらの内、塗膜の脱溶剤方法としても一般的に用いられている熱的手段は塗膜の脱溶剤とキサンテン化合物(1)の脱カルボエステル化を同時に行なうことができる点で好ましい。熱的手段としては空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは導電性支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度は、加熱時間や電磁波照射の有無、分解触媒の存否等の他の条件にもよるが、塗膜に用いられる溶剤の沸点以上であることが好ましい。
【0064】
塗膜には、上記油溶性染料組成物または水性染料組成物を使用することもできる。例えば、上記油溶性染料組成物または水性染料組成物を用いて塗膜等により着色された着色体に、上記化学的手段、光分解的手段及び/または熱的手段を用いて脱カルボエステル化することにより、キサンテン化合物(18)へと変換された着色体を得ることができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものでは無い。熱分析試験は、示差熱熱重量同時測定装置「エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製 TG/DTA6200」により測定し評価した。また、実施例中、合成によって得られた化合物は、液体クロマトグラフィー−質量分析装置「Waters製 ACQUITY UPLC/LCT Premier XE」(以下、LC−MSと略記)によって同定した。液体クロマトグラフィー測定条件は以下の通りである。
カラム;Inertsil ODS−2(5μm、3.0mm×250mm)
移動相;A液;5mM酢酸アンモニウム水、B液;アセトニトリル
グラジエント(B液);50%→(25分)→90%→(5分)→99%
観測波長;254nm、カラム温度;40℃、流量;0.4ml/mim
【0066】
実施例1(表1における化合物No.1の合成)
(工程1−1)
200ml四つ口フラスコに、下記式(100)のフルオラン化合物8.1g、スルホラン30g、2,6−ジメチルアニリン(東京化成工業社製)12.1g、塩化亜鉛4.1gを入れ、100℃で1時間、更に170℃で4時間攪拌した。加熱を止め、液温が90℃以下に下がった時、反応液を5.8%塩酸400gに注ぎ、室温で15分攪拌した。析出した結晶をろ過、湯で洗浄、乾燥することにより、染料中間体(101)8.5gを得た。
【0067】
【化12】
【0068】
(工程1−2)
100ml四つ口フラスコに、工程1−1で得られた染料中間体(101)2.5g、ジメチルスルホキシド55g、油性の水素化ナトリウム(和光純薬社製)0.7gを少しずつ入れ、室温で1時間攪拌した。この反応液に二炭酸ジ−t−ブチル(東京化成工業社製)1.9gを滴下し、続けてトリエチルアミン2.2gを滴下し、更に4−ジメチルアミノピリジン(東京化成工業社製)0.03gを加え、室温で2時間攪拌した。反応液を水400gに注ぎ、5分間攪拌した後、酢酸エチルで抽出、水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下で濃縮することにより、本発明の可溶性前駆体化合物1.3gを得た。赤茶色結晶。極大吸収波長:513nm(メタノール)。
LC−MS測定値:保持時間;19.2、計算値(Exact Mass)674.25;、実測値([M+H]+);675.17。
【0069】
実施例2(表1における化合物No.3の合成)
200ml四つ口フラスコに、アシッドレッド289(東京化成工業社製)4g、ジメチルスルホキシド44g、油性の水素化ナトリウム(和光純薬社製)1.1gを少しずつ入れ、室温で1時間攪拌した。この反応液に二炭酸ジ−t−ブチル(東京化成工業社製)3.1gを滴下し、続けてトリエチルアミン3.6gを滴下し、更に4−ジメチルアミノピリジン(東京化成工業社製)0.04gを加え、室温で2時間攪拌した。反応液を水2.9%塩酸200gに注ぎ、10分間攪拌した後、ジクロロメタンで抽出、水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧下で濃縮することにより、本発明の可溶性前駆体化合物0.5gを得た。赤茶色結晶。極大吸収波長:515nm(メタノール)。
【0070】
実施例3(各種溶剤への溶解度試験)
サンプル瓶に上記色素化合物No.1を10mgまたは比較対象として上記式(101)の化合物10mgを秤取り、それぞれ色素化合物が完全に溶解するまで、単一の溶剤を少しずつ添加した。この時の重量を測定することにより、各色素化合物の各種溶剤への溶解度(重量パーセント濃度:wt%と略記する。)を算出した。
【0071】
実施例3の結果を下表2に示す。表2において、PGMEAとはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを示す。
表2
化合物 PGMEAへの溶解度 シクロヘキサノンへの溶解度
化合物No.1 1.15wt%以上 1.38wt%以上
化合物(101) 0.1wt%以下 0.1wt%以下
【0072】
上記実施例3の結果より、化合物No.1の溶剤溶解性は、比較化合物(101)よりも向上していることは明らかである。
【0073】
実施例4(熱分析試験)
アルミパン容器に、上記色素化合物No.1を5mgまたは比較対象として上記式(101)の化合物5mgを秤取り、それぞれ熱重量減少率の測定を行なった。測定チャートを図1に示す。
【0074】
測定プログラム条件:
開始温度:40℃、 終点温度250℃、
昇温レート10℃/10mim、 ホールド時間30mim
【0075】
上記実施例4の結果、本発明の化合物No.1は、150℃付近に19.2%の重量減少が観測された。これは、化合物No.1のカルボエステル基の脱離に伴う重量減少率の理論値14.8%とほぼ一致する。しかし、比較化合物(101)では、この様な重量減少は観測されなかった。
【0076】
また、本発明の化合物No.1の熱分析試験後の化合物をLC−MSにて測定を行なった。測定条件は、上記と同じである。
LC−MS測定値:保持時間;13.1、計算値(Exact Mass)574.19;、実測値([M+H]+);575.13。
【0077】
従って、上記の結果から、本発明の化合物No.1は、150℃以上の熱を加えることにより、脱カルボエステル化反応が進行し、脱カルボエステル体である化合物(101)に変換することができたことは明らかである。
【0078】
実施例5(油性染料組成物及び染料着色体1の作成)
500mlの4つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート160g、メタクリル酸6.6g、シクロヘキシルメタクリレート30g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6g、α,α’―アゾビス(イソブチロニトリル)2gを仕込み、攪拌しながら30分間窒素ガスをフラスコ内に流した後、80℃まで昇温し、80〜85℃で4時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却したところ、無色の透明で均一な液体、すなわち共重合体溶液を得た。このポリスチレン換算重量平均分子量は12000、また、酸価は100であった。
得られた共重合体0.8gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1gを加えたものに、上記実施例1で得られた化合物No.1の0.025gを溶解させ油性染料組成物を作成した。得られた油性染料組成物をガラス基盤にスピンコートし、200℃で20分乾燥し、溶剤の除去と同時に、カルボエステル基を脱離させることにより、本発明の染料着色体を作成した。
【0079】
比較例1
表1−1における化合物No.1を、上記式(101)に変更したこと以外は実施例5と同様にして、本発明の比較用染料着色体1を作成したところ、上記式(101)の化合物は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートへの溶解度が乏しく、スピンコートによって着色体を得ることができなかった。
【0080】
以上のように本発明のキサンテン化合物は、油性または水性染料組成物を形成して染料着色体に加工することができ、この時、分散技術を利用することなく、着色剤として種々の物質を着色することが可能である。そのため、カラーフィルター用インキやインクジェット用インキ等、アプリケーションの幅が広がるなどの産業的な価値が高い事が明らかとなった。
図1