特許第5946245号(P5946245)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946245
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】蓄圧式EGRシステム
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/14 20160101AFI20160623BHJP
   F02M 26/00 20160101ALI20160623BHJP
   F02M 26/02 20160101ALI20160623BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   F02M26/14
   F02M26/00
   F02M26/02
   F02B37/00 302F
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-51230(P2011-51230)
(22)【出願日】2011年3月9日
(65)【公開番号】特開2012-188948(P2012-188948A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 創
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−069143(JP,A)
【文献】 特開2005−133611(JP,A)
【文献】 特開2005−147052(JP,A)
【文献】 特開2005−054778(JP,A)
【文献】 特開2001−123889(JP,A)
【文献】 特開2008−163789(JP,A)
【文献】 特開2009−115068(JP,A)
【文献】 特開2010−133286(JP,A)
【文献】 特開2010−138801(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/081226(WO,A1)
【文献】 特開2009−216056(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0005503(US,A1)
【文献】 特開2011−231683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00−41/10
F02B 47/08−47/10
F02M 26/00−26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGRパイプとEGRバルブとEGRクーラとを装備した既存のEGR装置と併用する蓄圧式EGRシステムにおいて、
ターボチャージャのタービンより上流の排気通路と前記ターボチャージャのコンプレッサより下流の吸気通路との間を接続して排気ガスの一部をEGRガスとして排気側から吸気側へ再循環するEGRパイプと、該EGRパイプの途中に装備されてEGRガスを蓄圧するEGRガスタンクと、前記EGRパイプにおけるEGRガスタンクと排気通路との間に装備された入側制御弁と、前記EGRパイプにおけるEGRガスタンクと吸気通路との間に装備された出側制御弁と、前記EGRパイプにおけるEGRガスタンクと排気通路との間に装備され且つEGRガスタンクから排気通路へのEGRガスの逆流を防ぐ逆止弁と、EGRガスタンクの内部圧力を検出する圧力センサと、前記入側制御弁と前記出側制御弁を開閉操作する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記圧力センサにより検出されるEGRガスタンク内の圧力が所定圧に達していない時に排気通路側で圧力が高まるたびに逆止弁によりEGRガスが封止されEGRガスタンク内に所定圧のEGRガスが蓄圧されるように燃焼が安定している時を狙って出側制御弁を閉じた状態で入側制御弁を開け、前記圧力センサによりEGRガスタンク内の圧力が所定圧に達したことが確認された時に所定量のEGRガスが蓄圧された状態に保持されるように出側制御弁を閉じた状態で入側制御弁を閉じ、EGRガスタンク内に所定圧のEGRガスが封止された状態で既存のEGR装置でEGRガスを再循環できない運転条件の時に適宜な量の排気ガスをEGRガスタンクから吸気通路へ開放するよう入側制御弁を閉じた状態で出側制御弁を開けるように構成されたことを特徴とする蓄圧式EGRシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧式EGRシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のエンジン等では、排気側から排気ガスの一部を抜き出して吸気側へと戻し、その吸気側に戻された排気ガスでエンジン内での燃料の燃焼を抑制させて燃焼温度を下げることによりNOxの発生を低減するようにした、いわゆる排気ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)が行われている。
【0003】
図2は排気ガス再循環を行うためのEGR装置を搭載したエンジンの一例を示すもので、図2中における1はディーゼル機関であるエンジンを示し、該エンジン1は、ターボチャージャ2を備えており、図示しないエアクリーナから導いた吸気3を吸気管4を通し前記ターボチャージャ2のコンプレッサ2aへ送り、該コンプレッサ2aで加圧された吸気3をインタクーラ5へと送って冷却し、該インタクーラ5から更に吸気マニホールド6へと吸気3を導いてエンジン1の各気筒7(図2では直列6気筒の場合を例示している)に分配するようにしてある。
【0004】
また、このエンジン1の各気筒7から排出された排気ガス8を排気マニホールド9を介し前記ターボチャージャ2のタービン2bへ送り、該タービン2bを駆動した排気ガス8を排気管10を介し車外へ排出するようにしてある。
【0005】
そして、排気マニホールド9における各気筒7の並び方向の一端部と、吸気マニホールド6に接続されている吸気管4の一端部との間がEGRパイプ11により接続されており、排気マニホールド9から排気ガス8の一部を抜き出してEGRガス8’として吸気管4に導き得るようにしてある。
【0006】
ここで、前記EGRパイプ11には、該EGRパイプ11を適宜に開閉するEGRバルブ12と、EGRガス8’を冷却するためのEGRクーラ13とが装備されており、該EGRクーラ13では、図示しない冷却水とEGRガス8’とを熱交換させることによりEGRガス8’の温度を低下し得るようになっている。
【0007】
即ち、EGRガス8’をEGRパイプ11の途中で冷却すると、EGRガス8’の温度が下がり且つその容積が小さくなることにより、エンジン1の出力をあまり低下させずに燃焼温度を低下して効果的にNOxの発生を低減させることが可能となる。
【0008】
尚、排気マニホールド9から抜き出した排気ガス8の一部をEGRガス8’として吸気管4へ再循環するようにした例を開示する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−123889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、斯かる従来システムにおいては、エンジン1で燃焼される燃料噴射量とエンジン回転数とに基づき必要なEGRガス8'の再循環量を確保するめのEGRバルブ12の目標リフトが決定されるようになっており、この目標リフトに従いEGRバルブ12の開閉制御が行われるようになっているが、燃料噴射量と吸気量の関係制御は、黒煙の発生や失火等を確実に回避する観点から前記目標リフトに基づく開閉制御よりも優先されるため、例えば、過渡加速時等にあっては、図3のグラフ中に一点鎖線で示す如く、必要な吸気量を確保するためにEGRバルブ12が一時的に閉じられることになり、図3のグラフ中に実線で示す如き目標リフト通りにはならない。
【0011】
即ち、過渡加速時等にアクセルが踏み込まれると、これに即応して燃料噴射量が増加して排気ガス8が増加するが、EGRバルブ12が開いたままの状態にあると、タービン2bの通過が抵抗となって排気ガス8の多くがEGRガス8’として吸気側へ再循環してしまい、タービン2bを効率良く駆動することができなくなって吸気量が燃料噴射量の増加に追いつかなくなってしまうため、必要な吸気量を確保するためにEGRバルブ12を一時的に閉じて排気ガス8の全量をタービン2bに導き、該タービン2bを効率良く駆動して吸気量の早期の増加を促すようにしている。
【0012】
このため、同じ時間軸を横軸にとった図4のグラフ(縦軸は図示範囲の排出量ピークを1としたときのNOx排出量の比率を示す)でNOx排出量の推移を示す如く、EGRバルブ12を一時的に閉じたタイミングでEGRガス8’の再循環が遮断されることでNOx排出量が突発的に増加してしまうという問題があった。
【0013】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、既存のEGR装置でEGRガスを再循環できない運転条件下であっても、任意のタイミングでEGRガスを吸気通路に供給し得る蓄圧式EGRシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、EGRパイプとEGRバルブとEGRクーラとを装備した既存のEGR装置と併用する蓄圧式EGRシステムにおいて、ターボチャージャのタービンより上流の排気通路と前記ターボチャージャのコンプレッサより下流の吸気通路との間を接続して排気ガスの一部をEGRガスとして排気側から吸気側へ再循環するEGRパイプと、該EGRパイプの途中に装備されてEGRガスを蓄圧するEGRガスタンクと、前記EGRパイプにおけるEGRガスタンクと排気通路との間に装備された入側制御弁と、前記EGRパイプにおけるEGRガスタンクと吸気通路との間に装備された出側制御弁と、前記EGRパイプにおけるEGRガスタンクと排気通路との間に装備され且つEGRガスタンクから排気通路へのEGRガスの逆流を防ぐ逆止弁と、EGRガスタンクの内部圧力を検出する圧力センサと、前記入側制御弁と前記出側制御弁を開閉操作する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記圧力センサにより検出されるEGRガスタンク内の圧力が所定圧に達していない時に排気通路側で圧力が高まるたびに逆止弁によりEGRガスが封止されEGRガスタンク内に所定圧のEGRガスが蓄圧されるように燃焼が安定している時を狙って出側制御弁を閉じた状態で入側制御弁を開け、前記圧力センサによりEGRガスタンク内の圧力が所定圧に達したことが確認された時に所定量のEGRガスが蓄圧された状態に保持されるように出側制御弁を閉じた状態で入側制御弁を閉じ、EGRガスタンク内に所定圧のEGRガスが封止された状態で既存のEGR装置でEGRガスを再循環できない運転条件の時に適宜な量の排気ガスをEGRガスタンクから吸気通路へ開放するよう入側制御弁を閉じた状態で出側制御弁を開けるように構成されたことを特徴とするものである。
【0015】
而して、このような蓄圧式EGRシステムを採用した場合、圧力センサにより検出されるEGRガスタンク内の圧力が所定圧に達していない時に、定常運転時等における燃焼が安定している時を狙って出側制御弁を閉じた状態で入側制御弁を開けるように制御装置により制御すると、排気通路側で圧力が高まる度にEGRガスタンクにEGRガスが導入されて逆止弁により封止される結果、EGRガスタンク内に所定量のEGRガスが蓄圧されることになり、EGRガスタンク内に所定量のEGRガスが蓄圧されたら、圧力センサの検出値に基づき制御装置により出側制御弁を閉じた状態で入側制御弁を閉じるように制御して所定量のEGRガスが蓄圧された状態を保持させる。
【0016】
次いで、過渡加速時等のように既存のEGR装置でEGRバルブを閉じなければならないようなEGRガスの再循環ができない運転条件下で、制御装置により入側制御弁を閉じた状態で出側制御弁を適宜なリフト量で開けるように制御すると、EGRガスタンク内に蓄圧されたEGRガスが吸気通路に開放され、吸気と混合してエンジンに導かれて該エンジン内での燃料の燃焼を抑制する役割を果たし、これにより燃焼温度が低下してNOxの発生が抑制されることになる。
【発明の効果】
【0018】
上記した本発明の蓄圧式EGRシステムによれば、既存のEGR装置でEGRガスを再循環できない運転条件下であっても、任意のタイミングでEGRガスを吸気通路に供給することができるので、特定の運転条件下でNOx排出量が突発的に増加してしまうことを防止することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
図2】従来例を示す概略図である。
図3】EGRバルブの目標リフトと実リフトの違いを説明するグラフである。
図4図3と同じ時間軸でのNOx排出量の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、本形態例においては、前述した図2と略同様のエンジン1に後述の蓄圧式EGRシステム14を搭載した場合を例示しており、このエンジン1には、既存のEGR装置を成すEGRパイプ11とEGRバルブ12とEGRクーラ13とが装備されており、このような既存のEGR装置と併用して前記蓄圧式EGRシステム14が用いられるようになっている。
【0022】
ここに図示している例では、ターボチャージャ2のタービン2bより上流の排気通路を成す排気マニホールド9と、前記ターボチャージャ2のコンプレッサ2aより下流の吸気通路を成す吸気マニホールド6との間が、EGRパイプ15により接続されて排気ガス8の一部がEGRガス8’として排気側から吸気側へ再循環されるようになっており、このEGRパイプ15の途中には、EGRガス8’を蓄圧するEGRガスタンク16が装備されている。
【0023】
更に、前記EGRパイプ15におけるEGRガスタンク16と排気マニホールド9との間には、EGRガス8’が流れる流路を開閉する入側制御弁17と、EGRガスタンク16から排気マニホールド9へのEGRガス8’の逆流を防ぐ逆止弁18とが装備されており、前記EGRパイプ15におけるEGRガスタンク16と吸気マニホールド6との間には、EGRガス8’が流れる流路を開閉する出側制御弁19が装備されている。
【0024】
また、EGRガスタンク16の適宜位置には、該EGRガスタンク16の内部圧力を検出する圧力センサ20が装備されており、該圧力センサ20の検出信号20aが、エンジン制御コンピュータ(ECU:Electronic Control Unit)を成す制御装置21に入力されてEGRガスタンク16内の圧力が監視されるようになっている。
【0025】
そして、前記制御装置21から入側制御弁17と出側制御弁19に向け制御信号17a,19aが出力され、前記圧力センサ20の検出値に基づきEGRガスタンク16内に所定圧のEGRガス8’が蓄圧されるように出側制御弁19を閉じた状態で入側制御弁17が開閉操作されると共に、必要時に適宜な量の排気ガス8をEGRガスタンク16から吸気マニホールド6へ開放するよう出側制御弁19が開閉操作されるようになっている。
【0026】
より具体的には、圧力センサ20により検出されるEGRガスタンク16内の圧力が所定圧に達していない時に、定常運転時等における燃焼が安定している時を狙って出側制御弁19を閉じた状態で入側制御弁17を開け、圧力センサ20によりEGRガスタンク16内の圧力が所定圧に達したことが確認されたら入側制御弁17を閉じるようにしており、EGRガスタンク16内に所定圧のEGRガス8’が蓄圧された状態においては、例えば、過渡加速時等のように既存のEGR装置でEGRバルブ12を閉じなければならないようなEGRガス8’の再循環ができない運転条件下において出側制御弁19を適宜なリフト量で開けるようになっている。
【0027】
而して、このようにした場合、定常運転時等における燃焼が安定している時に制御装置21からの制御信号19a,17aにより出側制御弁19を閉じた状態で入側制御弁17を開けると、排気マニホールド9側で圧力が高まる度にEGRガスタンク16にEGRガス8’が導入されて逆止弁18により封止される結果、EGRガスタンク16内に所定量のEGRガス8’が蓄圧されることになり、EGRガスタンク16内に所定量のEGRガス8’が蓄圧されたならば、これを圧力センサ20からの検出信号20aにより確認した制御装置21からの制御信号17aにより入側制御弁17が閉じられて所定量のEGRガス8’が蓄圧された状態に保持される。
【0028】
次いで、過渡加速時等のように既存のEGR装置でEGRバルブ12を閉じなければならないようなEGRガス8’の再循環ができない運転条件下で制御装置21からの制御信号19aにより出側制御弁19を適宜なリフト量で開けると、EGRガスタンク16内に蓄圧されたEGRガス8’が吸気マニホールド6に開放され、吸気3と混合してエンジン1に導かれて該エンジン1内での燃料の燃焼を抑制する役割を果たし、これにより燃焼温度が低下してNOxの発生が抑制されることになる。
【0029】
従って、上記形態例によれば、既存のEGR装置でEGRガス8’を再循環できない運転条件下であっても、任意のタイミングでEGRガス8’を吸気マニホールド6に供給することができるので、特定の運転条件下でNOx排出量が突発的に増加してしまうことを防止することができる。
【0030】
尚、本発明の蓄圧式EGRシステムは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、EGRガスタンクからのEGRガスの放出は、必ずしも過渡加速時の運転条件下で行うことに限定されるものではなく、必要時に任意のタイミングで行うようにして良いこと、また、例えば、排気バルブのリフト量と開閉タイミングを任意に変更できる可変バルブタイミング・リフト機構(VVA)等を備えたエンジンにあっては、膨張行程中の高圧の排気ガスを排気通路に抜き出してEGRガスタンク内の高圧化を図るようにしても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 エンジン
2 ターボチャージャ
2a コンプレッサ
2b タービン
3 吸気
6 吸気マニホールド(吸気通路)
8 排気ガス
8’ EGRガス
9 排気マニホールド(排気通路)
14 蓄圧式EGRシステム
15 EGRパイプ
16 EGRガスタンク
17 入側制御弁
18 逆止弁
19 出側制御弁
20 圧力センサ
21 制御装置
図1
図2
図3
図4