特許第5946300号(P5946300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946300
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】ファンフィルタユニット
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/00 20060101AFI20160623BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20160623BHJP
   F04D 29/046 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   B01D46/00 Z
   F24F7/06 C
   F04D29/046 D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-57695(P2012-57695)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-188707(P2013-188707A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏
(72)【発明者】
【氏名】洞田 浩文
(72)【発明者】
【氏名】後町 智雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真吾
(72)【発明者】
【氏名】森 正志
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雅史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄一朗
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−225240(JP,A)
【文献】 特開2002−5093(JP,A)
【文献】 特開昭62−261840(JP,A)
【文献】 特開2000−205621(JP,A)
【文献】 特開昭63−49218(JP,A)
【文献】 特表2005−510663(JP,A)
【文献】 特開平10−277339(JP,A)
【文献】 特開平7−66165(JP,A)
【文献】 特開2009−240938(JP,A)
【文献】 特開2005−291016(JP,A)
【文献】 実開平7−26633(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00
F04D 29/046
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気吸込口を設けた直方体形状のケーシングと、該ケーシング内に前記空気吸込口に対向させて配置され、駆動モータの回転軸に取付けられたファンと、前記ケーシングの空気吐出側に配置されたフィルタユニットとを備えたファンフィルタユニットであって、
前記駆動モータは、前記回転軸の一端を第1の転がり軸受を介して回転自在に支持する有底筒状の第1のモータフレームと、該第1のモータフレームの開放端面を閉塞し、前記回転軸の他端側を第2の転がり軸受を介して回転自在に支持する第2のモータフレームと、前記回転軸の前記第1の転がり軸受および第2の転がり軸受間に形成されたロータと、前記第1のモータフレームの内側に前記ロータと対向して固定されたステータとを少なくとも有し、
前記第2のモータフレームは、回転軸のに内輪が嵌合された第2の転がり軸受の外輪を嵌合保持する円筒保持部が形成されているとともに、該円筒保持部に、前記第2の転がり軸受の外輪のロータ側端面と当接して前記ファンを前記駆動モータより下側に位置させる際の荷重を受ける荷重支持部材が取付けられ、前記第1のモータフレームに、前記第1の転がり軸受に予圧を与える予圧部材が配置されている
ことを特徴とするファンフィルタユニット。
【請求項2】
前記ファンユニットは、前記ケーシングの前記フィルタユニットとは反対側の面に前記空気吸込口が形成され、前記ケーシングの一対の対向側面に吊り具を当該ケーシングの側面が回転可能となるように装着したことを特徴とする請求項1に記載のファンフィルタユニット。
【請求項3】
前記空気吸込口は前記ケーシングの表面と面一に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のファンフィルタユニット。
【請求項4】
前記吊り具は、前記ケーシングを所定角度ずつ回転可能とし、且つ各回転位置を保持可能な回転位置調整部を備えていることを特徴とする請求項2又は3に記載のファンフィルタユニット。
【請求項5】
前記ファンユニットのケーシングの前記一対の対向側面の一方に少なくとも電源ケーブル及び信号ケーブルを接続する接続口が形成されていることを特徴とする請求項乃至4の何れか1項に記載のファンフィルタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気吹出口を任意の方向に向けて配置可能なファンフィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のファンフィルタユニットを使用したクリーンルームとしては、例えば特許文献1に記載の乱流式クリーンルームが知られている。
この特許文献1に記載のクリーンルームでは、下方から空気を吸い込んで冷暖房負荷を処理した空気を側方から吹熱交換装置と、上方から空気を吸い込んで清浄処理した空気を下方から吹き出す空気清浄装置とを備え、前記熱交換装置を、天井を張らない状態の室内の上部に配置する一方、前記空気清浄装置を前記室内上部において前記熱交換装置の側方下部に配置し、前記熱交換装置から吹き出された空気を前記空気清浄装置内に取り込み、前記空気清浄装置で清浄処理して前記室内の下方に向けて吹き出し、前記室内を循環した空気を前記熱交換装置に取り込んで冷暖房負荷を処理するようにしている。
【0003】
このようなクリーンルームに使用する空気清浄装置としては、一般的にファンフィルタユニットが適用され、このファンフィルタユニットでは、例えば特許文献2に記載されているファンフィルタユニットが使用されている。
このファンフィルタユニットは、ユニットケースの上面にエア吸込口を形成し、この吸込口の下側に送風ファンを配置し、この送風ファンを下側に配置した駆動モータで駆動し、下部に設けたガス吸着フィルタ、塵埃用フィルタを有するフィルタユニットで清浄化して下方から吹き出すようにしている。
【0004】
そして、このようなファンフィルタユニットに適用する駆動モータとしては、回転軸を回転自在に支持する転がり軸受に対して、回転軸やロータの荷重がかからない位置に波形ワッシャを配置して予圧を与えることにより、振動や異音の発生を防止するようにしている。
すなわち、特許文献2に記載されているように駆動モータの上方から突出する回転軸に送風ファンを装着する場合には、図9に示すように、回転軸100やロータ101の荷重が掛からない上方側の転がり軸受102の外輪に波形ワッシャ103を配置して転がり軸受102に予圧を与えて、振動や異音の発生を防止している。ここで荷重方向を下向き矢印で示している。なおステータ(コイル)104とロータ101との間に生じる磁界で駆動モータが回転するのはいうまでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4275969号公報
【特許文献2】特開平10−277339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記図9に示す従来例のように回転軸やロータの荷重が掛からない位置に波形ワッシャを配置して転がり軸受に予圧を与える場合には、ファンフィルタユニットを特許文献1又は2のように吹出口を下側として配置する場合には問題にならないが、ファンフィルタユニットを上下反転させて吹出口を上側として配置する場合には、駆動モータの波形ワッシャに回転軸やロータの荷重が掛かってしまい、波形ワッシャの寿命が短くなって振動や異音の発生を抑制できない状態となるという未解決の課題がある。
【0007】
このため、ファンフィルタユニットを上下反転させて使用する場合には、図10に示すように、波形ワッシャの挿入位置を変更した駆動モータを使用する必要があり、上向き吹出用及び下向き吹出用のファンフィルタユニットを別々に形成せざるを得ないという未解決の課題がある。なお、図9のように回転軸が駆動モータの上側に突出するものを“軸上”、図10のように回転軸が駆動モータの下側に突出するものを“軸下”と呼称する。
本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、上向き吹出用及び下向き吹出用の双方に兼用可能なファンフィルタユニットを提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のファンフィルタユニットの第1の態様は、空気吸込口を設けた直方体形状のケーシングと、該ケーシング内に前記空気吸込口に対向させて配置され、駆動モータの回転軸に取付けられたファンと、前記ケーシングの空気吐出側に配置されたフィルタユニットとを備えたファンフィルタユニットであって、前記駆動モータは、前記回転軸の一端を第1の転がり軸受を介して回転自在に支持する有底筒状の第1のモータフレームと、該第1のモータフレームの開放端面を閉塞し、前記回転軸の他端側を第2の転がり軸受を介して回転自在に支持する第2のモータフレームと、前記回転軸の前記第1の転がり軸受および第2の転がり軸受間に形成されたロータと、前記第1のモータフレームの内側に前記ロータと対向して固定されたステータとを少なくとも有し、
前記第2のモータフレームは、回転軸のに内輪が嵌合された第2の転がり軸受の外輪を嵌合保持する円筒保持部が形成されているとともに、該円筒保持部に、前記第2の転がり軸受の外輪のロータ側端面と当接して前記ファンを前記駆動モータより下側に位置させる際の荷重を受ける荷重支持部材が取付けられ、前記第1のモータフレームに、前記第1の転がり軸受に予圧を与える予圧部材が配置されている。
【0009】
この第1の態様によると、ファンを駆動する駆動モータに、ファンを駆動モータより下側に位置させて配置する際の荷重を受ける荷重支持部材を配置したので、駆動モータの向きがどのような向きであっても、回転軸やロータの荷重を円筒保持部又は荷重支持部材で受けることができる。このため、ファンフィルタユニットを上向や下向きに装着しても予圧部材には回転軸やロータの荷重が掛かることがなく、予圧部材の破損を防止することができ、一つのファンフィルタユニットで上向き吹出用及び下向き吹出用の双方に兼用することができる。
【0010】
また、本発明に掛かるファンフィルタユニットの第2の態様は、前記ファンユニットが、前記ケーシングの前記フィルタユニットとは反対側の面に前記空気吸込口を形成し、前記ケーシングの一対の対向側面に吊り具を当該ケーシングの側面が回転可能となるように装着している。
この第2の態様によると、ケーシングの側面に吊り具が装着され、この吊り具でケーシングの側面を回転することができるので、ファンフィルタユニットの空気吹出方向に任意の方向に調整することができる。
【0011】
また、本発明に係るファンフィルタユニットの第3の態様は、前記空気吸込口が前記ケーシングの表面と面一に形成されている。
この第3の態様によると、空気吸込口がケーシングの表面から突出していないので、ケーシングを天井面等に近接させて配置することができる。
【0012】
また、本発明に係るファンフィルタユニットの第4の態様は、前記吊り具が、前記ケーシングを所定角度ずつ回転可能とし、且つ各回転位置を保持可能な回転位置調整部を備えている。
この第4の態様によると、吊り具に設けた回転位置調整部でファンフィルタユニットを任意の角度に保持して配置することができる。電源ケーブルや信号ケーブルを形成する面に回転位置調整部を設けたので、ケーブル長が短かった場合による回転ができなくなるような問題が生じない。
【0013】
また、本発明に係るファンフィルタユニットの第5の態様は、前記ファンユニットのケーシングの前記一対の対向側面の一方に少なくとも電源ケーブル及び信号ケーブルを接続する接続口が形成されている。
この第5の態様によると、ファンフィルタユニットの駆動モータを駆動するための電源ケーブルや信号ケーブルを側面に配置するので、電源ケーブルや信号ケーブルがファンフィルタユニットの吹出面や吸込面に露出することがないとともに、ケーブル接続作業も容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ファンフィルタユニットに適用する駆動モータの予圧部材にファンフィルタユニットの上向きや下向きの設置方向にかかわらず回転軸やロータの荷重が作用することを防止できる。また、各種ケーブルをケーシングの任意の側面に設け、この面を回転の支点とした為、一つのファンフィルタユニットを任意の吹出方向に回転させても、ケーブル長さの制約により回転が出来ないと言う状態にはならない。
このように回転自在に設置できるので、複数のファンフィルタユニットを使用して、上向きファンフィルタユニット及び下向きファンフィルタユニットなどを構成することにより、ファンフィルタユニットだけで、ダクトレス空気循環路を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のファンフィルタユニットを示す平面図である。
図2図1のA−A線上の断面図である。
図3図1のB−B線上の断面図である。
図4図1の右側面図である。
図5】本発明のファンフィルタユニットに適用し得る駆動モータを示す断面図である。
図6】駆動モータの第2のモータフレーム、転がり軸受、荷重支持プレート及び回転軸19を示す分解斜視図である。
図7】吊り具の回転位置調整部を示す断面図である。
図8】本発明のファンフィルタユニットを使用したクリーンルームを示す断面図である。
図9】従来のファンフィルタユニットに適用する駆動モータを示す模式的断面図である。
図10】従来のファンフィルタユニットに適用する駆動モータの他の例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るファンフィルタユニットを示す平面図、図2図1のA−A線上の断面図、図3図2のB−B線上の断面、図4図1の右側面図である。
図中、1はファンフィルタユニットであって、このファンフィルタユニット1は、図1に示すように、平面から見て長方形で比較的高さが低い直方体に形成されたケーシング2を有し、このケーシング2の上面板2aに空気吸込口3が設けられている。この空気吸込口3は、図2に示すように、ケーシング2の表面と面一に形成されている。
【0017】
また、ケーシング2の上面板2aの右端側には、後述する駆動モータを駆動制御するインバータを含むコントロールユニット4を格納した格納室5が形成されている。
また、ケーシング2の右側面板2fには、所定長さの電源ケーブル6及び信号ケーブル7が導出され、これらの先端にコネクタ8及び9が接続されている。
ケーシング2内には、空気吸込口3の下側に遠心型の送風ファン11が回転自在に配置されている。この送風ファン11は、空気吸込口3から空気を吸込み、円周方向に吹き出す例えばシロッコファン等で構成されている。そして、送風ファン11がその下側に配置された例えばブラシレスモータで構成される駆動モータ12によって回転駆動される。
【0018】
この駆動モータ12は、図5に示すように、一端を開放した有底円筒状の第1のモータフレーム13と、この第1のモータフレーム13の開放端を閉塞する第2のモータフレーム14とを有する。
第1のモータフレーム13は、比較的高さが高い円筒部13aと、この円筒部13aの一方の端面を閉塞する端板部13bとで有底円筒状に形成され、円筒部13aの端板部13bとは反対側の外周側に取付フランジ13cが形成されている。
【0019】
第2のモータフレーム14は、図6で特に明らかなように、比較的高さが低い円筒部14aと、この円筒部14aの一方の端面を閉塞する端板部14bと、端板部14bの外周側に形成された取付フランジ14cとで構成されている。
そして、第1モータフレーム13及び第2のモータフレーム14は互いの中心軸が一致するように固着(例えば、不図示のボルト締め)されている。
【0020】
また、駆動モータ12は、第1のモータフレーム13の内周面に装着されたステータ15と、このステータ15と所定の間隙を介して対向する円筒状のロータ16とを有する。ロータ16は、第1のモータフレーム13及び第2のモータフレーム14に第1の転がり軸受17及び第2の転がり軸受18を介して回転自在に支持された回転軸19に固定されている。
【0021】
第2のモータフレーム14には、端板部14bの内面中央位置に、第2の転がり軸受18を嵌合保持する円筒保持部20が形成されている。この円筒保持部20の内周面の端板部14bからの高さは、第2の転がり軸受18の外輪の高さと等しいか僅かに低く選定されている。
そして、図5(a)に示すように、円筒保持部20に回転軸19の端部に内輪が嵌合された第2の転がり軸受18の外輪を嵌合した状態で、円筒保持部20の端面に荷重支持部材としての荷重支持プレート21をボルト20aによってボルト締めすることにより、第2の転がり軸受18の外輪におけるロータ16側の端面が荷重支持プレート21の下端面に当接されている。
【0022】
ここで、荷重支持プレート21には、中心開口21aが形成され、この中心開口21aの半径は、第2の転がり軸受18の外輪の内径と内輪の外径との間の径に設定され、第2の転がり軸受18の内輪に接触しない径とされている。
第1のモータフレーム13には、端板部13bの内面中央部に円筒部22が形成され、この円筒部22の内周面に第1の転がり軸受17の外輪が予圧部材としての波形ワッシャ23を介して係合されている。
【0023】
この第1の転がり軸受17の内輪には回転軸19が嵌合される。なお、第1の転がり軸受、第2の転がり軸受は、ベアリング等の構成物であり、同じサイズで構わないが、駆動モータの設計によりサイズが異なる場合もある。いずれにせよ、回転軸19を安定回転させるための部位である。
そして、駆動モータ12は、第2のモータフレーム14の取付フランジ14cをファンフィルタユニット1のケーシング2に固定された枠状支持部材24に固定することにより、ケーシング2内に保持されている。
【0024】
駆動モータ12の第1のモータフレーム13から突出する回転軸19に送風ファン11が装着されている。この送風ファン11の空気吸込口11に空気吸込口3の背面側に固定されたインレットノズル11aの先端が挿通されている。
また、ケーシング2の下面板2bには、ガス吸着フィルタや除塵フィルタを内装したフィルタユニット30が着脱可能に装着されている。
【0025】
さらに、ケーシング2の左右側板2e及び2fの中央位置には、吊り具32及び33が装着されている。これら吊り具32及び33は、図7に示すように、ケーシング2の左右側板2e及び2fにそれぞれ突出形成された軸部34の端面に形成された円柱部35の外周面に係合する円筒支持部36と、この円筒支持部36の外周面に固定された支柱37とで構成されている。
【0026】
そして、円筒支持部36には、外周面から突出し内面側にスプリング等の弾性体で付勢されたノッチ38を有し、このノッチ38を円柱部35の外周面に所定角度間隔で形成した複数の係合凹部39に係合させることにより、支柱37に対するケーシング2の左右側板の傾斜角を設定することができる。
この場合、係合凹部39を360度の範囲で形成しておくことにより、ケーシング2の角度を任意に設定することができ、フィルタユニット30からの空気吹出方向を任意に設定することができる。また、この軸部34は上述の電源ケーブル6及び信号ケーブル7が送出されている面、及びこの面と対した面にある。この為、回転時にケーブル長は影響しない。
【0027】
また、ケーシング2は略直方体形状であるので、左右側板2e及び2fにある軸部34で回転させる場合は左右側板2c及び2dに軸部を設けて回転させる場合に比べ回転に必要な力も軽減できる。
上記構成を有する複数のファンフィルタユニット1が図8(a)及び(b)に示すように例えばISO7クラスのクリーンルーム40に設置される。
【0028】
すなわち、一つの形態は、図8(a)に示すように、クリーンルーム40の天井面に、5つのファンフィルタユニット1A〜1Eが所定間隔を保って配置され、クリーンルーム40の側壁40a及び40bに近い位置に配置されたファンフィルタユニット1A及び1Eは、吊り具32及び33が天井に固定され、且つフィルタユニット30が上側となって清浄空気を上側に吐出する上向き吹出ファンフィルタユニットとされている。また、中央側の3つのファンフィルタユニット1B、1C及び1Dのそれぞれは、吊り具32及び33が天井に固定され、且つフィルタユニット30が下側となって清浄空気を下側に吐出する下向き吹出ファンフィルタユニットとされている。
【0029】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
ファンフィルタユニット1を組立てるには、先ず、駆動モータ12を組み立てる。この駆動モータ12は、ロータ16を装着した回転軸19の下端を荷重支持プレート21の中心開口21a内に挿通した状態で、回転軸19の下端に第2の転がり軸受18の内輪を嵌合させ、さらにロータ16の上側に第1の転がり軸受17の内輪を嵌合させる。この状態で、回転軸19に嵌合した第2の転がり軸受18の外輪を第2のモータフレーム14の円筒保持部20に嵌合させ、この状態で荷重支持プレート21を円筒保持部20にボルト20aによってボルト締めする。このとき、円筒保持部20の内面高さが第2の転がり軸受18の外輪の高さと等しいか僅かに低いので、荷重支持プレート21を円筒保持部20に固着(例えば、図6に示すボルト締め)したときに、荷重支持プレート21の下面が第2の転がり軸受18の外輪の上端にガタなく確実に当接される。
【0030】
次いで、第1の転がり軸受17における外輪の上面に波形ワッシャ23を載置し、この状態で、内周面にステータ15を固定した第1のモータフレーム13をその開放端面を下側とし、端板部13bの中心開口13d内に回転軸19を挿通させながら押し下げ、第2のモータフレーム14の上端にボルト締めする。これにより、第1の転がり軸受17の外輪がその上面と円筒部22の底面との間に配置される波形ワッシャ23で所定の予圧を与えられた状態となり、駆動モータ12の組み立てが完了する。
【0031】
そして、このように組み立てられた駆動モータ12の第1のモータフレーム13から突出する回転軸19に送風ファン11を装着してからケーシング2内に形成された枠状支持部材24に第2のモータフレーム14の取付フランジ14cをボルト締めする。
この状態で、図2に示すように、インレットノズル11aを固定し、空気吸込口3を形成した取付プレート11bを、インレットノズル11aの下端が送風ファン11の空気吸込口11c内に挿入されようにケーシング2の開口部に装着する。
【0032】
その後、ケーシング2の左右側板2e及び2fから突出させた円柱部35を覆うように吊り具32及び33の円筒支持部36を係合させる。このとき、ノッチ38は弾性体に抗して引き抜いた状態として、円柱部35と円筒支持部36を係合させ、ノッチ38をファンフィルタユニット1の空気吹出方向に応じた係合凹部39に係合させる。
ここで、ファンフィルタユニット1を、フィルタユニット30を下側(軸上)として取付ける場合には、図4に示す状態で吊り具32及び33を装着し(吊り具32は図4に図示されないが、対向する面にある)、フィルタユニット30を上側として取付ける場合には図4で鎖線図示の方向に吊り具32及び33を装着する。
【0033】
そして、吊り具32及び33を装着したファンフィルタユニット1A〜1Eを図8に示すように、側壁40a及び40b側のファンフィルタユニット1A及び1Eについてはフィルタユニット30を上側とする上向き吹出ファンフィルタユニットとして吊り具32及び33を天井に装着(配置)し、中央部のファンフィルタユニット1B、1C及び1Dにはついてはフィルタユニット30を下側とする下向き吹出ファンフィルタユニットとして吊り具32及び33を天井に装着(配置)する。
【0034】
このようにして、ファンフィルタユニット1A〜1Eをクリーンルーム40に装着(配置)した後に、各ファンフィルタユニット1A〜1Dの電源ケーブル6及び信号ケーブル7を、各駆動モータを集中管理するコントローラ(図示せず)に接続して各ファンフィルタユニット1A〜1Eの駆動モータ12を回転駆動させる。
これにより、クリーンルーム40内では中央部のファンフィルタユニット1B〜1Dからは下方に浄化空気を吹き出して下降気流を発生することができる。一方、クリーンルーム40の側壁40a及び40bの近くに配置されたファンフィルタユニット1A及び1Eからは床面側から空気を吸い込んで、天井側に清浄空気を吹き出して上昇気流を形成する。
【0035】
このため、下向き吹出用のファンフィルタユニット1B〜1Dから床面に向かって吹き出された清浄空気が左右側壁40a及び40b側に配置された上向き吹出用のファンフィルタユニット1A及び1Eの下面側から吸い込まれてフィルタユニット30で清浄化された空気が天井面に放出される。この天井面に放出された清浄空気は、天井に沿って中央の下向き吹出用のファンフィルタユニット1B〜1Dに天井側から吸い込まれてフィルタユニット30で再度清浄化されて床側に向けて吹き出される。このように、各ファンフィルタユニット1A〜1Eでダクトレス循環空気流を形成することができる。
【0036】
そして、下向き吹出用のファンフィルタユニット1B〜1Dでは、図5(a)に示すように、駆動モータ12の上側に送風ファン11が位置することになり、第1のモータフレーム13が上方となって、波形ワッシャ23が上方に配置されることになるので、波形ワッシャ23に回転軸19及びロータ16の荷重が掛かることはなく、波形ワッシャ23で適度な予圧を第2の転がり軸受18の外輪に与えて、振動や異音の発生を確実に抑制しながら、清浄空気を吹き出すことができる。なお、回転軸19が駆動モータの上側に突出しているので“軸上”である。
【0037】
一方、上向き吹出用のファンフィルタユニット1A及び1Eは、図5(b)に示すように、駆動モータ12の下側に送風ファン11が位置することになる。このため、回転軸19、ロータ16及び送風ファン11の荷重が下側の第1のモータフレーム13に支持された第1の転がり軸受17の内輪及びボールを介して第1の転がり軸受17の外輪と円筒部22の底部との間に介挿された波形ワッシャ23を押し潰す方向に作用することになる。
【0038】
しかしながら、本実施形態では、第2のモータフレーム14の円筒保持部20に嵌合された第2の転がり軸受18が荷重支持プレート21に当接されて丁度吊られるような状態で上向きに支持されるので、この荷重支持プレート21で回転軸19、ロータ16及び送風ファン11の荷重を受けることができる。このため、回転軸19、ロータ16及び送風ファン11の荷重が波形ワッシャ23に作用することを確実に防止することができる。このため、波形ワッシャ23が必要以上に押し潰されることを回避することができ、波形ワッシャ23で必要な予圧を与えながら波形ワッシャ23の破損を抑制することができ、波形ワッシャ23の寿命を長期化することができる。なお、回転軸19が駆動モータの下側に突出しているので“軸下”である。
【0039】
また、図8(b)に示すように、クリーンルーム40の側壁40a及び40bに沿うファンフィルタユニット1A及び1Eを、その天井からの吊り下げ長さを長くして低い位置に配置する。これに応じて中央のファンフィルタユニット1Cも低い位置に配置する。
さらに、ファンフィルタユニット1Bは天井に近い位置で、フィルタユニット30を右側とし、中央側に浄化空気を吹き出す縦置き配置とし、ファンフィルタユニット1Dも天井に近い位置で、フィルタユニット30を左側とし、中央側に浄化空気を吹き出す縦置き配置とする。
【0040】
このようにファンフィルタユニット1A〜1Eを配置することにより、中央のファンフィルタユニット1Cで床側に向かう下降気流を形成し、この下降気流が床側で左右の側壁40a及び40b側に分かれて、側壁40a及び40b側のファンフィルタユニット1A及び1Eによって吸い込まれて上昇気流が形成される。さらにファンフィルタユニット1A及び1Eから吹出された浄化空気は、ファンフィルタユニット1B及びDによって天井面に沿って中央のファンフィルタユニット1Cに向かう気流となり、ダクトレスの循環気流を形成することができる。
【0041】
このように、本実施形態では、1つのファンフィルタユニット1を上向き吹出用及び下向き吹出用の双方に使用しても波形ワッシャ23が押し潰されることはなく、振動や異音の発生を抑制して正常な回転を確保することができる。このため、上向き吹出用と下向き吹出用に専用の駆動モータ12を構成する必要がなく、従来のように駆動モータ12を誤って設置したときに生じる不都合も回避することができる。
【0042】
また、ファンフィルタユニット1の側面に電源ケーブル6及び信号ケーブル7を配置するようにしているので、ファンフィルタユニット1を天井との間隔を狭く配置した場合でも電源ケーブル6及び信号ケーブルの接続に支障が生じることはなく、ファンフィルタユニット1の組付作業を容易に行うことができる。
また、ファンフィルタユニット1のケーシング2に空気吸込口3が面一に形成されているので、ファンフィルタユニット1の空気吸込口を天井に近接させて配置した場合でも、吸込空気量が低下することはなく、安定した空気吸込量を確保することができる。
【0043】
また、吊り具32及び33とファンフィルタユニット1との角度を任意に調整することができるので、清浄空気の吹出方向を微調整することが可能となる他、ファンフィルタユニット1をクリーンルーム40に設置した後に、自由に清浄空気の吹出方向を調整することができる。
さらに、図8(a)及び(b)に示すように、クリーンルーム40を構成した場合に、天井、壁にダクトを形成したり、二重床としたりして空気循環路を形成する必要がなく、ダクトレスの空気循環路を形成することができ、クリーンルームのイニシャルコストを削減することができる。
【0044】
また、床、壁、天井に循環用のダクトを形成する必要がないので、クリーンルームのスペースを有効利用することができる。
なお、上記実施形態においては、駆動モータ12としてブラシレスモータを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、インダクションモータ等の他の形式のモータを適用することができる。
【0045】
また、上記実施形態においては、予圧部材として波形ワッシャ23を適用した場合について説明したが、これに限定されるものはなく、他の任意の形式の予圧部材を適用することができる。
さらに、上記実施形態においては、吊り具32及び33とファンフィルタユニット1のケーシング2との傾きを手動で変化させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば角度調整用の電動モータを装着することにより、自動でファンフィルタユニット1の角度を調整することができる。
【0046】
さらに、上記実施形態においては、ファンフィルタユニット1をクリーンルーム40に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、塵埃を嫌う実験室や花粉の飛散を防止する居住空間やオフィス空間でも複数のファンフィルタユニット1を適用してダクトレスの循環気流を形成して清浄空間を形成することができる。
また、上記実施形態においてはフンフィルタユニット1のみで循環気流を形成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、循環気流の経路の一部に熱交換機を配置することにより、熱交換機で温度調整を行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1…ファンフィルタユニット、2…ケーシング、3…空気吸込口、6…電源ケーブル、7…信号ケーブル、11…送風ファン、12…駆動モータ、13…第1のモータフレーム、14…第2のモータフレーム、15…ステータ(コイル)、16…ロータ、17…第1の転がり軸受、18…第2の転がり軸受、19…回転軸(シャフト)、20…円筒保持部、21…荷重支持プレート(荷重支持部材)、22…円筒部、23…波形ワッシャ(予圧部材)、30…フィルタユニット、32,33…吊り具、40…クリーンルーム、1A〜1E…ファンフィルタユニット
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