(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の中空構造板の製造方法には、温度条件や成形速度に制約があり、生産性を向上させることが難しいという問題点がある。例えば、従来の製造方法では、成形速度を速くすると、中空凸部同士を熱融着する際の加熱が不十分となり、融着不良が発生する。また、熱融着不良を解消するために、加熱温度を高くすると、中空凸部が変形し、形状不良が発生する。その結果、均質で充分な接着強度有する中空構造板が得られなくなる。
【0007】
そこで、本発明は、中空凸部を熱融着する際に不良が発生しにくく、生産性に優れた中空構造板の製造方法及び製造装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述した課題を解決するために鋭意実験検討を行った結果、以下に示す知見を得た。中空構造体の生産性の向上には、溶融状態の熱可塑性樹脂シートを押し出す代わりに、既にシート化された熱可塑性樹脂シート使用することが有効である。また、中空凸部の形成と熱融着とを別工程で行うことにより、中空構造板を製造する際の生産性及び作業性の両方を向上させることができる。
【0009】
しかしながら、これらの方法を適用する場合、熱融着部をより大きな熱量で加熱する必要があるため、前述した中空凸部の融着不良及び形状不良が発生しやすくなる。特に、特許文献2に記載されているような接触式の加熱ヒーターを用いる場合は、加熱温度が高くなると熱膨張により加熱板が変形し、全ての中空凸部を均一に接触させることが困難になるため、各中空凸部に与えられる熱量にばらつきが生じやすい。
【0010】
そこで、本発明者は、ローラーにより熱可塑性樹脂シートを冷却しつつ、非接触加熱により中空凸部の先端部のみを選択的に大熱量で加熱することによって、中空凸部の変形を防止しつつ、中空凸部同士を確実に熱融着できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明に係る中空構造板の製造方法は、真空成形により、熱可塑性樹脂シートの一方の面に錐台形状の中空凸部を千鳥状に形成して、成形シートを得る工程と、2枚の成形シートを加熱した後、その中空凸部同士を突き合わせて熱融着し、一体化する工程と、を有し、該一体化する工程では、前記成形シートの中空凸部の先端部を、選択的に熱風加熱
し、かつ、複数のピンが千鳥状に形成されると共に、冷却又は温度調節機能を有する1組のローラーを使用し、該ローラーのピンを各成形シートの中空凸部に挿入し、前記成形シートを冷却しつつ、各中空凸部の頂点部分の少なくとも一部を内側から押圧する。
この中空構造板の製造方法では
、前記成形シートを、中空凸部の先端部のみ加熱し、その他の部分は冷却することができる。
また、前記一体化する工程では、前記成形シートの幅方向両端部を、幅方向中心部よりも高熱量で加熱してもよい。
更に、前記一体化する工程により得た中間体の温度に基づいて、前記成形シートの加熱温度を調節することもできる。
【0012】
本発明に係る中空構造板の製造装置は、減圧チャンバー内に成形ローラーが回転可能に配置され、熱可塑性樹脂シートの一方の面に錐台形状の中空凸部を千鳥状に形成する真空成形部と、前記真空成形部で成形された2枚の成形シートを加熱した後、中空凸部同士を突き合わせて熱融着し、一体化する熱融着部と、
複数のピンが千鳥状に形成されると共に、冷却又は温度調節機能を有する1組のローラーと、を有し、前記熱融着部には、前記成形シートの中空凸部の先端部を、選択的に熱風加熱する熱風発生機が設けられ
、前記ローラーのピンを各成形シートの中空凸部に挿入し、前記成形シートを冷却しつつ、各中空凸部の頂点部分の少なくとも一部を内側から押圧する。
この中空構造板の製造装置では、前記熱風発生機の前記成形シートに形成された各中空凸部と整合する位置に、熱風吹出口が設けられていてもよい。その場合、前記熱風吹出口をスリット状とすることができる。
また、前記熱風発生機は、前記成形シートの幅方向で加熱温度が分割制御可能となっていてもよい。ここで、「分割制御可能」とは、幅方向の位置によって、加熱温度などを個別に変更し、制御できることをいう。
更に、この中空構造板の製造装置には、2枚の成形シートを一体化して得られた中間体の温度を測定する温度測定器と、前記中間体の温度に基づいて、前記成形シートの加熱温度を調節する加熱温度調節部とを設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成形シートの中空凸部の先端部を、選択的に熱風加熱しているため、成形速度を速くしても、中空凸部を熱融着する際に不良が発生しにくく、従来よりも生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係る中空構造板の製造方法について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る中空構造板の製造方法を示すフローチャート図であり、
図2はその際使用する製造装置の概念図である。また、
図3は本実施形態の製造方法により製造される中空構造板の構成を模式的に示す断面図であり、
図4はその成形シート2の一形態を示す斜視図である。
【0017】
本実施形態の中空構造板の製造方法では、真空成形により、熱可塑性樹脂シートの一方の面に錐台形状の中空凸部を千鳥状に形成して、成形シートを得る工程と、2枚の成形シートを加熱した後、その中空凸部同士を突き合わせて熱融着し、一体化する工程と、を少なくとも行う。そして、一体化する工程において、中空凸部の先端部を選択的に熱風加熱する。
【0018】
具体的には、
図1に示すように、シート成形工程(ステップS1)と、熱風加熱工程(ステップS2)と、熱融着工程(ステップS3)とを、この順に行う。そして、必要に応じて、ステップS3の後に面材積層工程(ステップS4)を行う。
【0019】
[中空構造板1の全体構成]
図3に示すように、本実施形態の製造方法により得られる中空構造板1は、
図4に示す錐台形状の中空凸部2aが千鳥状に形成された2枚の成形シート2が、その中空凸部2a同士を突き合わされて熱融着されている。また、この中空構造板1では、2枚の成形シート2からなる中間体3の両面に、必要に応じて面材4などが積層されている。
【0020】
ここで、中間体3を構成する成形シート2の材質は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリカーボネート(PC)などを使用することができる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、コスト、成形性及び物性の面から、特に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン及びブロック状ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂が好ましい。
【0021】
また、成形シート2を形成する熱可塑性樹脂には、タルク、マイカ及び炭酸カルシウムなどのフィラーや、ガラス繊維、アラミド繊維及び炭素繊維などのチョップドストランドが添加されていてもよい。これにより、中間体3の剛性を向上させることができる。更に、成形シート2を形成する熱可塑性樹脂には、難燃性、導電性及び耐候性などを向上させるための改質剤が添加されていてもよい。なお、中間体3を構成する2枚の成形シート2は、通常、同じ材料で形成されるが、熱融着可能な範囲で相互に異なる材料で形成することもできる。
【0022】
[中空凸部2aの構成]
本実施形態の中空構造板1では、成形シート2における開口部から仮想される水平面と中空凸部2aとがなす角度(傾斜角)θが、45°〜80°であることが好ましい。傾斜角θが45°未満の場合、面材4との総接着面積が小さくなるため、得られた中空構造板1に荷重をかけた際に接着部が剥がれやすくなり、強度低下を招く。一方、傾斜角θが80°を超えると、真空成形した際に、成形シート2の厚さが薄くなりすぎて中空凸部2a側面がフィルム化し、十分な強度が得られないことがある。
【0023】
なお、傾斜角θは、50°〜75°であることがより好ましく、これにより、中間体3の剛性を高めると共に、中空構造板1としたときの強度を向上させることができる。また、中空凸部2aの傾斜角θは一定でなくてもよく、中空凸部2aが中心軸に対して非対称な形状であってもよい。
【0024】
一方、中空凸部aの先端部の直径は2〜4mmとすることが好ましく、これにより、中空凸部2aの数を所定の値以上にすることができるため、厚さ方向における圧縮強度を向上させることができる。また、中空凸部2aの間隔は、1〜5mmとすることが好ましい。中空凸部2aの間隔が1mm未満の場合、賦形性が低下することがあり、また5mmを超えると、単位面積あたりの中空凸部2aの数が少なくなり、厚さ方向において十分な圧縮強度が得られないことがある。
【0025】
更に、成形シート2における中空凸部2aの高さは、3mm以上であることが好ましい。中空凸部2aの高さが3mm未満の場合、中空構造板1の各種用途において、その中空構造による有用性が低くなると共に、製造上の困難性も低下する。なお、中空凸部2aの高さが15mmを超えると成形が難しくなるため、製造工程における成形性を考慮すると、中空凸部2aの高さは15mm以下であることが好ましい。
【0026】
[目付け]
本実施形態の中空構造板1の目付けは、特に限定されるものではないが、500〜3500g/m
2とすることが好ましい。中空構造板1の目付けが500g/m
2未満の場合、成形シート2の厚さが薄くなりすぎて中空凸部2a側面がフィルム化し、強度や剛性が低下することがあり、また、目付けが3500g/m
2を超えると、質量が増加し、用途によっては軽量性が損なわれることがあるからである。
【0027】
[ステップS1:シート成形工程]
シート成形工程では、真空成形により、熱可塑性樹脂シートの一方の面に錐台形状の中空凸部2aを千鳥状に形成して、成形シート2を作製する。このシート成形工程は、例えば、
図2に示すように、減圧チャンバー11内に、表面に円錐台形状又は角錐台形状のピン12aが複数突設されている1組の成形ローラー12が、その回転軸が相互に平行になるように配置されている真空成形装置(真空成形部10)により実施することができる。
【0028】
この真空成形装置(真空成形部10)の各成形ローラー12には、熱可塑性樹脂シート5を効果的にピン12aに沿わせ、所望の形状に短時間で斑なく成形するために、熱可塑性樹脂シート5を吸引保持するための吸引孔が設けられている。
【0029】
また、真空成形装置(真空成形部10)には、中空凸部2aが形成された成形シート2を、強制的に冷却する冷却機構が設けられていることが好ましい。このように、真空成形後の成形シートを強制的に冷却することにより、溶融状態の熱可塑性樹脂シート5を真空成形し、成形シート2の状態で固化させるために必要な時間を短縮することができ、生産速度を高めることが可能となる。なお、真空成形装置(真空成形部10)に設けられる冷却機構としては、例えば、成形ローラー12のオイル循環冷却、成形シート2への風冷装置や微細ミスト発生機の設置などがある。
【0030】
ここで、成形ローラー12の温度は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂シート5を形成する樹脂の種類などに応じて適宜設定することができるが、10〜40℃が好適である。これにより、成形シート2の固化状態をより良好なものにすることができる。
【0031】
この装置を使用して、成形シート2を作製する際は、先ず、ダイ13から、溶融状態の熱可塑性樹脂シート5を押し出す。或いは、前述した溶融状態の熱可塑性樹脂シート5を押し出す代わりに、既にシート化された熱可塑性樹脂シートを加熱し、溶融状態にして送り出してもよい。そして、これら熱可塑性樹脂シート5は、成形ローラー12に吸引保持され、ピン12aに対応する形状の中空錐台状の凸部2aが形成されて、成形シート2となる。
【0032】
その際、熱可塑性樹脂シート5の厚さは、特に限定されるものではないが、0.2〜2.0mmであることが好ましい。熱可塑性樹脂シート5の厚さが0.2mm未満の場合、得られる成形シート2の物性が十分でないことがある。また、熱可塑性樹脂シート5の厚さが2.0mmよりも厚いと、真空成形により中空凸部2aを形成することが困難になることがある。
【0033】
[ステップS2:熱風加熱工程]
熱風加熱工程では、熱風発生機22によって、ステップS1により形成した成形シート2の中空凸部2aの先端部を、選択的に、熱融着可能な温度まで熱風加熱する。このように、熱融着に関係する先端部のみを選択的に加熱することにより、中空凸部2aの変形を防止しつつ、中空凸部2a同士を確実に熱融着することができる。
【0034】
ここで、中空凸部2aを熱融着する際に接触方式の加熱装置を用いると、加熱から熱融までにわずかではあるが間が空くため、その間に周囲の環境の影響を受け、中空凸部2aの先端部の温度が低下することがある。これに対して、本実施形態の中空構造板の製造方法では、熱風発生機22により熱風加熱しているため、熱融着の直前まで加熱することが可能であり、中空凸部2aの先端部の温度が低下することはない。その結果、本実施形態の中空構造板の製造方法は、中空凸部2aに必要以上の熱量を付与する必要がなく、効率的に加熱することができる。
【0035】
図5(a)は
図2に示す熱風加熱工程で使用する熱風発生機22の構成を模式的に示す斜視図であり、
図5(b)は熱風発生機22の使用時の状態を示す側面図である。本実施形態の中空構造板で使用する熱風発生機22は、成形シート2の中空凸部2aの先端部を、選択的に熱風加熱できるものであればよく、例えば
図5(a)に示すように、複数の熱風吹出口22bが設けられたノズル22aを備えたものを使用することができる。
【0036】
図5(b)に示すように、熱風発生機22のノズル22aは、熱融着部20の1組のローラー21の手前に配置したときにローラー21と対向する面は、ローラー21と同等又は近似する曲率半径を有する曲面で形成されており、この曲面に熱風吹出口22bが設けられていることが望ましい。
【0037】
また、熱風吹出口22bの形状は、特に限定されるものではないが、例えばスリット状とすることができる。この場合、スリットのピッチを、ローラー21のピン21aのピッチと同等にし、スリットの中心にピン21aの中心が整合するように、各熱風吹出口22bを形成すると共に、1組のローラー21に対応するようにノズル22aの先端の上下曲面に形成すればよい。これにより、成形シート2の中空凸部2aの先端部を、選択的かつ効率的に熱風加熱することができる。
【0038】
なお、熱風吹出口22bの幅方向の開口面積は、特に限定されるものではないが、熱風発生機22の出力が同じである場合、開口面積が小さい方が、中空凸部2aの先端部をより高熱量で加熱することができ、更に、他の部分への影響も少ない。
【0039】
一方、非接触方式の加熱装置は、間接的な加熱方法であるがゆえに、成形シート2の実質的な加熱条件が周囲の環境の影響を受けやすく、特に成形シート2の幅方向における両端部の実質的な加熱温度が低くなる傾向がある。この問題を解消する方法としては、中空凸部2aの先端部に与えられる熱量を、高めに設定しておくことが考えられるが、その場合、幅方向中心部で中空凸部2aの軟化や溶融変形が生じ、製造される中空構造板の強度が部分的に低下することがある。
【0040】
そこで、本実施形態の中空構造板の製造方法では、必要に応じて、成形シート2の幅方向両端部を、幅方向中心部よりも高熱量で加熱することができる。これにより、中空凸部2aの先端部をより均一に加熱することが可能となるため、高強度で高品質の中空構造板を、効率よく製造することができる。
【0041】
このような温度傾斜加熱を熱風発生機22で実施する場合は、例えばノズル22aの幅を、成形シート2の幅と同じか若しくは成形シート2よりも少し広くし、その幅方向で複数の区画に分割する。そして、複数の熱風発生機本体を用意し、1又は複数の区画毎に別個の熱風発生機本体に連結すればよい。各熱風発生機本体はそれぞれ異なる条件で動作させることができるため、これにより、1又は複数の区画毎に加熱条件を設定し、制御することが可能となる。即ち、成形シート2の幅方向において加熱温度を分割制御することが可能となる。なお、熱風加熱の場合で調節する加熱条件は、熱風の温度及び熱風の風量のいずれでもよい。
【0042】
また、成形シート2の幅方向端部の熱量(Q
1)と中央部の熱量(Q
2)の比(Q
1/Q
2)は、特に限定されるものではなく、周囲の環境に応じて適宜設定することができるが、成形シート2の形状保持と中空凸部2a間の接着力のバランスを考慮すると、1.0<(Q
1/Q
2)≦1.2とすることが好ましい。熱量比(Q
1/Q
2)を、この範囲にすることにより、成形シート2の幅方向における加熱温度の差を0〜50℃、好適には0〜30℃の範囲に抑えることができる。なお、ここでいう加熱温度は、成形シート2の温度である。
【0043】
一方、成形シート2に付与される熱量は、幅方向両端部から中央部に向かって、段階的に小さくなることが望ましい。これにより、製造される中空構造板の強度を均一化することができる。
【0044】
また、本実施形態の製造方法では、後述する熱融着工程により得た中間体3や熱融着前の成形シート2の状態に応じて、熱風加熱工程における成形シート2の加熱温度などを調節することができる。
図6は中間体3の表面温度により熱風発生機22の加熱条件をフィードバック制御する場合の構成を示す斜視図である。なお、
図6では、図を見やすくするため、成形シート2に形成された各中空凸部については、図示を省略しているが、各成形シート2は中空凸部同士が対向する向きに配置され、導入される。
【0045】
熱風発生機22により加熱する条件の制御方法は特に限定されるものではないが、例えば、
図6に示すように、接触式又は非接触式の温度測定器41を用いて、後述する熱融着工程により形成された中間体3の温度を測定し、その値に基づいて、加熱温度調節部42が熱風発生機22の加熱条件を調節する方法がある。具体的には、温度測定器41により中間体3の表面温度を測定し、幅方向における表面温度のばらつきに応じて、加熱温度調節部42が、熱風発生機22の幅方向における加熱条件を調節する。
【0046】
その他にも、形成された中間体3を抜き取り、幅方向における接着強度のばらつきに応じて熱風発生機22の加熱条件を調節する方法や、加熱前の成形シート2の表面温度を測定し、幅方向における表面温度のばらつきに応じて熱風発生機22の加熱条件を調節する方法を適用することもできる。
【0047】
[ステップS3:熱融着工程]
熱融着工程では、前述した温度傾斜加熱工程で加熱された2枚の成形シート2を、その中空凸部2a同士を突き合わせて熱融着し、一体化する。この熱融着工程は、例えば、
図2に示すように、真空成形部10のローラー12とロール径が同等で、表面に複数のピン21aが複数突設されている1組のローラー21が、回転軸が相互に平行になるように配置されている熱融着部20により実施することができる。
【0048】
その場合、各ローラー21のピン21aをそれぞれ成形シート2の中空凸部2aに挿入し、ピン21aにより各中空凸部2aの頂点部分の少なくとも一部を内側から押圧することにより、2枚の成形シート2の中空凸部2aを熱融着して、一体化する。これにより、2枚の成形シート2からなる中間体3が得られる。
【0049】
ここで使用するローラー21のピン21aは、中空凸部2aに挿入可能な形状であれば、真空成形部10のローラー12と同一形状である必要はなく、円錐台形状や角錐台形状に限らず、棒状や柱状などでもよい。更に、熱融着部20のローラー21の回転速度は、前述したローラー21のピン21aへの嵌め込みやすさなどの観点から、真空成形部10のローラー12の回転速度と同じか、少し速くすることが望ましい。
【0050】
また、ローラー21は、冷却又は温度調節機能を備えていることが望ましい。このようなローラー21を使用すると、熱融着時に、中空凸部2aの先端部のみを加熱し、その他の部分を冷却することができる。これにより、中空凸部2aの形状安定性に優れ、従来よりも高強度の中空構造板を製造することが可能となる。
【0051】
なお、熱融着部20には、ローラー21の他に、成形シート2を加熱するための熱風発生機22や、成形シート2の中空凸部2aとローラー21のピン21aとの嵌合を補助する押さえローラー23などを設けることができる。この熱融着部20は、減圧チャンバー内に設けられていてもよいが、開放系とすることもできる。このように熱融着工程を、大気中で実施可能とすることにより、設備を簡略化することができるため、作業性が向上する。
【0052】
また、本実施形態の中空構造板の製造方法では、中空凸部2aを熱融着する前に各成形シート2を予備加熱してもよい。この成形シート2の予備加熱温度は、成形シート2を構成する樹脂の熱特性によって異なるため、一概に規定することはできないが、例えば、ローラー21の温度と成形シート2を構成する樹脂の融点との間の温度とすることが望ましい。なお、予備加熱の方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱融着部20の手前に加熱槽30を設ける方法などが挙げられる。これにより、成形シート2の幅方向における温度分布が均一化されると共に、成形シート2がやや軟化してローラー21のピン21aに嵌合しやすくなる。
【0053】
[ステップS4:面材積層工程]
面材積層工程では、前述した熱融着工程で作製した中間体3の両面に、面材4を積層する。ここで使用する面材4としては、前述した成形シート2と同様に、熱可塑性樹脂シートを使用することができる。その材質は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリカーボネート(PC)などを使用することができる。また、面材4の厚さは、特に限定されるものではなく、中間体3の厚さ及び中空構造板1の厚さに応じて適宜設定することができる。
【0054】
この面材積層工程は、例えば、1対のローラーが、その回転軸が相互に平行になるように所定の間隔をあけて配置されている装置により実施することができる。この装置を使用して、面材4を積層する際は、先ず、ダイから溶融状態の面材4を押し出したり、既にシート化された面材4を溶融状態にして送り出したりする。これら面材4は、それぞれラミネート用のローラーによって加熱加圧し、予熱装置によって予熱された中間体3の両面に熱融着した後、空冷、冷却ロール及び冷却装置などによって全体を冷却して中空構造板1とする。
【0055】
なお、本実施形態の中空構造板1は、面材4の上に、更に、熱可塑性樹脂シートやその他の材料を積層することができる。その積層材料としては、熱可塑性樹脂シート以外に、例えば熱硬化性樹脂シート、発泡シート、紙、織布、不織布、金属板、金属メッシュ体、金属酸化物板などが挙げられる。また、積層方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱融着、超音波融着、接着剤による接着、ラミネートなどの公知の方法を適用することができる。
【0056】
以上詳述したように、本実施形態の中空構造板の製造方法では、シート成形工程と熱融着工程との間に熱風加熱工程を設け、この熱風加熱工程において、成形シートの中空凸部の先端部を、選択的に熱風加熱しているため、熱融着される部分以外への熱影響が少なく、加熱効率も高い。このため、本実施形態の中空構造板の製造方法は、成形速度を速くしても、中空凸部2aの融着不良及び形状不良が発生しにくく、従来よりも生産性を向上させることができる。
【0057】
なお、
図2では、シート成形工程と、熱融着工程とを、同一ライン上で連続的に行う例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらを別ラインで行うこともできる。具体的には、ステップS1のシート成形工程で得られた成形シート2を、一旦巻き取るなどした後に、別途、ステップS2の熱風加熱工程及びステップS3の熱融着工程を実施するなどのオフラインで、非連続的に行ってもよい。
【0058】
(
参考形態)
次に、本発明の
参考形態に係る中空構造板の製造方法について説明する。
図7は本
参考形態の中空構造板の製造方法において使用する製造装置の概念図である。なお、
図7においては、
図2に示す製造装置の構成要素と同じものには同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。前述した第1の実施形態では、
図2に示す真空成形部10と熱融着部20とが独立して設けられている装置を使用しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
そこで、本
参考形態の中空構造板の製造方法では、
図7に示す製造装置を使用して、シート成形工程(ステップS1)、熱風加熱工程(ステップS2)及び熱融着工程(ステップS3)を、連続して行う。
図7に示す製造装置は、減圧チャンバー11内に、表面に円錐台形状又は角錐台形状のピンが複数突設されている1組のローラ
ー12が配置されており、このローラ
ー12により、凸部2aの成形及び凸部2a同士の熱融着の両方を行う。即ち、本
参考形態において使用する製造装置は、
図2に示す製造装置の真空成形部10及び熱融着部20が、同一チャンバー11内に設けられている。
【0060】
この場合でも、熱風加熱工程(ステップS2)では、例えば、熱風発生機22などを使用して、成形シート2の中空凸部2aの先端部を、選択的に熱風加熱する。
【0061】
本
参考形態の中空構造板の製造方法は、中空凸部2aの先端部を、選択的に熱風加熱しているため、中空凸部2aの融着不良及び形状不良が発生しにくく、生産性に優れている。なお、本
参考形態における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、
図2に示す装置を使用し、以下に示す条件で、
図3に示す構成の中空構造板を製造し、その生産性を評価した。
【0063】
<実施例1>
目付が400g/m
2の2枚の成形シート2を、熱融着部20よりも手前に設置された120℃の加熱槽30を通過させて、予備加熱した。その後、その中空凸部2aに、熱融着部20内に回転可能に配置され、オイルを循環させることにより温度が40℃に保持されている1組の成形ローラー21(ピン構成:高さ6mm、最小直径(先端部)2mm、最大直径(底部)6mm、傾斜角度約72°)のピン21aを挿入した。
【0064】
そして、
図5(a)に示すドライヤー式熱風発生機22を使用して、成形シート2の中空凸部2aの頂点部分を選択的に加熱しながら、成形ローラー21によって中空凸部2a同士を熱融着させた。このとき、ドライヤー式熱風発生機22の設定温度は、成形シート2の幅方向全域に亘って270℃とした。その結果、全面において中空凸部2aの熱融着状態が良好で、十分な接着強度を有する中間体3を、長時間に亘って安定して製造することができた。
【0065】
<実施例2>
ドライヤー式熱風発生機22の設定温度を、成形シートの幅方向中央部を260℃とし、両端部を280℃とした以外は、前述した実施例1と同様の方法及び条件で、中空凸部2a同士を熱融着した。その結果、全面において中空凸部2aの熱融着状態が良好で、十分な接着強度を有する中間体3を、長時間に亘って安定して製造することができた。
【0066】
<比較例1>
目付が400g/m
2の2枚の成形シート2を、熱融着部20よりも手前に設置された120℃の加熱槽30を通過させて、予備加熱した。その後、その中空凸部2aに、熱融着部20内に回転可能に配置され、オイルを循環させることにより温度が40℃に保持されている1対の成形ローラー21(ピン構成:高さ6mm、最小直径(先端部)2mm、最大直径(底部)6mm、傾斜角度約72°)のピン21aを挿入した。
【0067】
そして、実施例1のドライヤー式熱風発生機22に換えて、温度制御可能な鉄鋼製熱ブロックを備える接触方式の加熱装置使用して、成形シート2の中空凸部2aの頂点部分を、幅方向の熱量を一定にして加熱した後、成形ローラー21によって中空凸部2a同士を熱融着させた。このとき、接触式加熱装置の鉄鋼製熱ブロックを成形ローラ21のピン21aの先端部に沿うように配置し、加熱装置の設定温度は、成形シート2の幅方向全域に亘って270℃とした。
【0068】
その結果、成形シート2の幅方向中央部では中空凸部2a同士が良好に熱融着していたが、幅方向両端部では中空凸部2a同士が十分な強度で接着しておらず、接着不良が発生した。
【0069】
<比較例2>
加熱装置の設定温度を、成形シート2の幅方向全域に亘って280℃とした以外は、前述した比較例1と同様の方法及び条件で、中空凸部2a同士を熱融着した。その結果、幅方向両端部は良好に熱融着していたが、幅方向中央部では中空凸部2aが歪み、熱融着部において中空凸部2aに変形が生じた。また、開始から数分という短時間の間に、加熱装置の幅方向中央部付近の鉄鋼製熱ブロック(中空凸部2aが接触する部分)に、成形シート2に由来する溶融樹脂が蓄積し、その一部が中間体3の熱融着部分に付着していた。その結果、製造される中間体3に、形状不良及び接着不良が発生した。
【0070】
<比較例3>
目付が400g/m
2の2枚の成形シート2を、熱融着部20よりも手前に設置された120℃の加熱槽30を通過させて、予備加熱した。その後、その中空凸部2aに、熱融着部20内に回転可能に配置され、オイルを循環させることにより温度が40℃に保持されている1対の成形ローラー21(ピン構成:高さ6mm、最小直径(先端部)2mm、最大直径(底部)6mm、傾斜角度約72°)のピン21aを挿入した。
【0071】
そして、実施例1で使用した
図5に示すドライヤー式加熱装置22のノズル22aを、先端部の熱風吹出口が、スリット状ではなく、平面視矩形状の大形の開口であるノズルに換えたドライヤー式加熱装置を使用し、熱風によって成形シート2の全体を加熱しながら、成形ローラー21によって中空凸部2a同士を熱融着させた。このとき、ドライヤー式熱風発生機の設定温度は、成形シート2の幅方向全域に亘って280℃とした。その結果、中空凸部2aの側面が過剰に加熱されたため、形状に歪みが生じ、変形が生じた。その一方で、中空凸部2aの先端部は十分に加熱されず、製造された中間体3には、形状不良及び接着不良が多数認められた。
【0072】
以上の結果から、本発明によれば、中空凸部を熱融着する際に不良が発生しにくく、生産性に優れた中空構造板の製造方法及び製造装置を実現できることが確認された。また、本発明によれば、従来よりも生産速度を高めることが可能であることも確認された。