(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946339
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】ノイズフィルタ
(51)【国際特許分類】
H03H 7/01 20060101AFI20160623BHJP
【FI】
H03H7/01 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-143968(P2012-143968)
(22)【出願日】2012年6月27日
(65)【公開番号】特開2014-7696(P2014-7696A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201777
【氏名又は名称】双信電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】依田 武治
(72)【発明者】
【氏名】猫塚 克行
(72)【発明者】
【氏名】今井 悟史
(72)【発明者】
【氏名】三木 清貴
【審査官】
▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−208958(JP,A)
【文献】
特開平08−298367(JP,A)
【文献】
特開2011−249547(JP,A)
【文献】
特開2002−094209(JP,A)
【文献】
特開平11−220237(JP,A)
【文献】
特開2000−091143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、少なくともコイルの巻線が接続される複数の端子台と、複数のブロックコンデンサと、一主面に少なくとも前記コイル及び前記端子台が実装されるメイン基板と、
少なくとも前記ブロックコンデンサが実装される1以上のサブ基板とを有し、
前記メイン基板は、水平方向に配置され、
前記サブ基板は、前記メイン基板の他主面にほぼ垂直方向に配置され、且つ、前記メイン基板に連結され、
前記メイン基板と前記サブ基板との連結部分において、前記メイン基板の配線パターンと前記サブ基板の配線パターンとが電気的に接続され、
前記メイン基板は、前記サブ基板との連結部分に貫通孔を有し、
前記サブ基板は、前記メイン基板との連結部分に、凸部を有し、
前記サブ基板の前記凸部が前記メイン基板の前記貫通孔に挿入されることで前記メイン基板に前記サブ基板が連結され、
少なくとも前記メイン基板及び前記サブ基板を収容し、少なくとも前記サブ基板が嵌合される筐体を有し、
前記筐体の側板は、前記サブ基板との嵌合部分に切欠きを有し、
前記サブ基板は、前記筐体の側板との嵌合部分に凸部を有し、
前記サブ基板の前記凸部が前記筐体の側板の前記切欠きに挿入されることで前記筐体に前記サブ基板が嵌合され、
前記筐体の底板に、前記サブ基板の位置ずれを防止するための第1凸部及び第2凸部を有し、
前記第1凸部は、前記筐体の底板のうち、前記筐体の一方の側板に近接する位置であって、且つ、前記サブ基板の一方の主面に対向する位置に形成され、
前記第2凸部は、前記筐体の底板のうち、前記筐体の前記一方の側板と対向する他方の側板に近接する位置であって、且つ、前記サブ基板の他方の主面に対向する位置に形成されていることを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載のノイズフィルタにおいて、
前記サブ基板の前記凸部の一部が、前記メイン基板の一主面より1mm以上5mm以下突出していることを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のノイズフィルタにおいて、
前記メイン基板は、前記貫通孔にかけて配線パターンが形成され、
前記サブ基板は、前記凸部にかけて配線パターンが形成され、
前記メイン基板の貫通孔への前記サブ基板の凸部の挿入部分に、前記メイン基板の配線パターンと前記サブ基板の配線パターンとを電気的に接続する導電部材を有することを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のノイズフィルタにおいて、
前記サブ基板を複数有し、
複数の前記サブ基板は、各主面が互いにほぼ平行となるように配置されていることを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のノイズフィルタにおいて、
前記サブ基板を複数有し、
複数の前記サブ基板は、各主面が互いに非平行となるように配置されていることを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項6】
請求項4又は5記載のノイズフィルタにおいて、
隣接する前記サブ基板間に配置され、且つ、隣接する前記サブ基板同士を連結する補助基板を有することを特徴とするノイズフィルタ。
【請求項7】
請求項6記載のノイズフィルタにおいて、
前記補助基板は、前記メイン基板の他主面にほぼ垂直方向に配置され、且つ、前記メイン基板に連結されていることを特徴とするノイズフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源と負荷装置の間に挿入され、電源から負荷装置へ伝播するノイズ、負荷装置から電源へ伝播するノイズを低減するノイズフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばモータ等を駆動するインバータ装置等の負荷装置と電源との間に、伝導ノイズあるいは放射ノイズのノイズ発生源となる負荷装置からのノイズを阻止するためにノイズフィルタが挿入配置される(特許文献1及び2参照)。
【0003】
このようなノイズフィルタでは、主にコイルと、コンデンサと、これらの接続部品(端子等)が構成要素となるが、サイズ的にコイルが一番大きくなりやすいため、特許文献1では、筐体の中央にコイル、筐体の両側に接続部品を配置し、コイルと接続部品との隙間にコンデンサを配置するようにしている(特許文献1の
図3参照)。
【0004】
コンデンサは、ノイズの混入を防止したり、実装作業を容易にするために、複数のコンデンサ素子を一まとめにしてブロック化したブロックコンデンサが用いられる。しかし、ブロックコンデンサは、サイズが大きく嵩張るため、コイルと接続部品との隙間の面積を大きくする必要があり、ノイズフィルタの実装面積(筐体の底面の面積)が大きくなる。通常、ノイズフィルタは、分電盤等に実装されることが多く、実装面積(筐体の底面の面積)の縮小化の要請があるが、この要請に対応できない。
【0005】
そこで、従来では、特許文献1の
図1や特許文献2に示すように、筐体の底板と接続部品との間にある空間にブロックコンデンサを収容することで、ノイズフィルタの実装面積を小さくすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−114905号公報
【特許文献2】特許第3672792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した空間(筐体の底板と接続部品との間にある空間)にブロックコンデンサを収容するにしても限界があり、必要数のブロックコンデンサを全て収容できるわけではない。もちろん、ブロックコンデンサの数を減らして小型化を図ることも考えられるが、ノイズフィルタとしての性能が低下するという問題がある。従って、一定の性能を確保するには、コイルと接続部品との隙間にもブロックコンデンサを配置せざるを得ない場合もある。
【0008】
このようなことから、従来は、実装するブロックコンデンサの個数で、ノイズフィルタの実装面積を決めざるを得なかった。
【0009】
そこで、実装基板を立体的に使用することも考えられるが、1つのブロックコンデンサのサイズが大きいこと、実装するブロックコンデンサの個数が多いため、強度に不安がある。
【0010】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、ノイズフィルタの実装面積をブロックコンデンサを考慮せずに設定することが可能となり、しかも、コイル、接続部品、ブロックコンデンサ等を実装しても強度を十分に確保することができ、一定の性能を確保しながらも小型化を図ることができるノイズフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1] 本発明に係るノイズフィルタは、コイルと、少なくともコイルの巻線が接続される複数の端子台と、複数のブロックコンデンサと、一主面に少なくとも前記コイル及び前記端子台が実装されるメイン基板と、少なくとも前記ブロックコンデンサが実装される1以上のサブ基板とを有し、前記メイン基板は、水平方向に配置され、前記サブ基板は、前記メイン基板の他主面にほぼ垂直方向に配置され、且つ、前記メイン基板に連結され、前記メイン基板と前記サブ基板との連結部分において、前記メイン基板の配線パターンと前記サブ基板の配線パターンとが電気的に接続され、前記メイン基板は、前記サブ基板との連結部分に貫通孔を有し、前記サブ基板は、前記メイン基板との連結部分に、凸部を有し、前記サブ基板の前記凸部が前記メイン基板の前記貫通孔に挿入されることで前記メイン基板に前記サブ基板が連結されていることを特徴とする。
さらに、本発明に係るノイズフィルタは、少なくとも前記メイン基板及び前記サブ基板を収容し、少なくとも前記サブ基板が嵌合される筐体を有し、前記筐体の側板は、前記サブ基板との嵌合部分に切欠きを有し、前記サブ基板は、前記筐体の側板との嵌合部分に凸部を有し、前記サブ基板の前記凸部が前記筐体の側板の前記切欠きに挿入されることで前記筐体に前記サブ基板が嵌合され、前記筐体の底板に、前記サブ基板の位置ずれを防止するための第1凸部及び第2凸部を有し、前記第1凸部は、前記筐体の底板のうち、前記筐体の一方の側板に近接する位置であって、且つ、前記サブ基板の一方の主面に対向する位置に形成され、前記第2凸部は、前記筐体の底板のうち、前記筐体の前記一方の側板と対向する他方の側板に近接する位置であって、且つ、前記サブ基板の他方の主面に対向する位置に形成されていることを特徴とする。
【0012】
[2] 本発明において、前記サブ基板の前記凸部の一部が、前記メイン基板の一主面より1mm以上5mm以下突出していることが好ましい。
【0013】
[3] 本発明において、前記メイン基板は、前記貫通孔にかけて配線パターンが形成され、前記サブ基板は、前記凸部にかけて配線パターンが形成され、前記メイン基板の貫通孔への前記サブ基板の凸部の挿入部分に、前記メイン基板の配線パターンと前記サブ基板の配線パターンとを電気的に接続する導電部材を有するようにしてもよい。
【0014】
[4] 本発明において、前記サブ基板を複数有し、複数の前記サブ基板は、各主面が互いにほぼ平行となるように配置されていてもよい。
【0015】
[5] 本発明において、前記サブ基板を複数有し、複数の前記サブ基板は、各主面が互いに非平行となるように配置されていてもよい。
【0016】
[6] [4]又は[5]において、隣接する前記サブ基板間に配置され、且つ、隣接する前記サブ基板同士を連結する補助基板を有するようにしてもよい。
【0017】
[7] この場合、前記補助基板は、前記メイン基板の他主面にほぼ垂直方向に配置され、且つ、前記メイン基板に連結されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るノイズフィルタによれば、ノイズフィルタの実装面積をブロックコンデンサを考慮せずに設定することが可能となり、しかも、コイル、接続部品、ブロックコンデンサ等を実装しても強度を十分に確保することができ、一定の性能を確保しながらも小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施の形態に係るノイズフィルタを底面側から見て示す斜視図である。
【
図2】ノイズフィルタからブロックコンデンサを取り外した状態を底面側から見て示す斜視図である。
【
図3】2つのサブ基板を各主面が互いにほぼ平行となるように配置した状態(第1の例)を、ブロックコンデンサを外して示す側面図である。
【
図4】本実施の形態に係るノイズフィルタの要部を一部省略して示す断面図である。
【
図5】メイン基板、サブ基板及び金属ケースを分離した状態を一部省略して示す分解斜視図である。
【
図6】第1サブ基板及び第2サブ基板の各一方の主面をメイン基板の他主面に投影した2つの線分と、メイン基板の中心線とを示す模式図である。
【
図7】2つのサブ基板を各主面が互いにほぼ平行となるように配置した状態(第2の例)を、ブロックコンデンサを外して示す側面図である。
【
図8】2つのサブ基板を各主面が互いに非平行となるように配置した状態を、ブロックコンデンサを外して示す側面図である。
【
図9】
図9Aは2つのサブ基板間に補助基板を連結した例を示す側面図であり、
図9Bはその底面図である。
【
図10】
図10Aは2つのサブ基板とメイン基板間に補助基板を連結した例を示す側面図であり、
図10Bはその底面図である。
【
図11】金属ケースに組立体を収容する際に、サブ基板の一部を嵌合して収容する状態を一部省略して示す斜視図である。
【
図12】筐体の底板に、サブ基板の位置ずれを防止するための凸部を設けた例を一部省略して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るノイズフィルタの実施の形態例を
図1〜
図12を参照しながら説明する。
【0024】
本実施の形態に係るノイズフィルタ10は、
図1〜
図3に示すように、コイル12と、少なくともコイル12の巻線14が接続される第1端子台16a及び第2端子台16b(接続部品)と、複数のブロックコンデンサ18と、一主面に少なくともコイル12、第1端子台16a及び第2端子台16bが実装される平板状のメイン基板20と、少なくともブロックコンデンサ18が実装される1以上の平板状のサブ基板22(本実施の形態では、第1サブ基板22A及び第2サブ基板22B)とを有する。
【0025】
メイン基板20は、水平方向に配置される。サブ基板22は、メイン基板20の他主面にほぼ垂直方向に配置され、且つ、メイン基板20に連結されている。メイン基板20、サブ基板22は、例えば紙フェノール、紙エポキシ、ガラス・コンポジット、ガラス・エポキシ等で構成される。もちろん、セラミック基板を用いてもよい。
【0026】
また、
図4及び
図5に示すように、メイン基板20は、第1サブ基板22A及び第2サブ基板22Bとの連結部分に貫通孔24を有し、サブ基板22は、メイン基板20との連結部分に凸部26を有する。そして、サブ基板22の凸部26がメイン基板20の貫通孔24に挿入されて、はめ込まれることで、メイン基板20にサブ基板22が連結される。この場合、サブ基板22の凸部26のうち、メイン基板20の貫通孔24から突出する部分(突出部)の高さ、すなわち、メイン基板20の一主面からの突出量daは、1mm以上5mm以下であることが好ましい。1mm未満だと貫通孔24に対する凸部26の係止、係合が不十分となり、サブ基板22がメイン基板20から外れ易くなる。突出量daが5mmを超えると、コイル12の巻線14に接触する等してショートする危険性がある。
【0027】
さらに、メイン基板20の一主面20aには、貫通孔24にかけて配線パターン28が形成され、サブ基板22にも、凸部26の先端にかけて配線パターン30が形成されている。メイン基板20の貫通孔24の周辺(一主面20a側の周辺及び他主面20b側の周辺)及び内壁には、配線パターン28につながる導電層32が形成され、スルーホール接続ができるようになっている。
【0028】
そして、メイン基板20の貫通孔24へのサブ基板22の凸部26の挿入部分に、メイン基板20の配線パターン28とサブ基板22の配線パターン30とを電気的に接続する導電部材34(例えば半田、銀ろう、導電性接着剤等)が塗布される。
【0029】
具体的には、サブ基板22の凸部26のうち、メイン基板20の貫通孔24から突出する部分(突出部)の配線パターン30とメイン基板20の貫通孔24周辺の配線パターン28とを電気的に接続するように導電部材34を塗布する。塗布された導電部材34は、凸部26と貫通孔24の隙間を通じてメイン基板20の他主面20b側にも回りこむことから、サブ基板22の配線パターン30とメイン基板20の配線パターン28の電気的接続は、サブ基板22の凸部26とメイン基板20の一主面20a(貫通孔24周辺)との間、サブ基板22の凸部26とメイン基板20の貫通孔24との間並びにサブ基板22とメイン基板20の他主面20b(貫通孔24周辺)との間で行われることになる。なお、導電部材34として、導電性接着剤を用いた場合は、ある程度の弾性を有するため、凸部26が横方向に振動したり、横方向に変位しても、剥離することがなく、確実にサブ基板22とメイン基板20との電気的接続を確実に行うことができる。
【0030】
また、サブ基板22には、ブロックコンデンサ18の端子36が挿通される貫通孔38を有する。各貫通孔38も、メイン基板20の貫通孔24と同様に、サブ基板22の配線パターン30につながる導電層40が形成され、さらに、導電部材34が塗布されることによって、スルーホール接続が行えるようになっている。
【0031】
図1に示すように、第1サブ基板22Aには、6つのブロックコンデンサ18が実装され、そのうち、3つのブロックコンデンサ18は、第1サブ基板22Aの一方の主面22Aa(第2サブ基板22Bと対向する面)に実装され、他の3つのブロックコンデンサ18は、第1サブ基板22Aの他方の主面22Abに実装されている。この場合、3つのブロックコンデンサ18の各端子36が、他の3つのブロックコンデンサ18にぶつからないように、互いにずらして実装されている。ブロックコンデンサ18の端子36は、長ければ、実装後、適当に切断してもよい。
【0032】
同様に、第2サブ基板22Bには、4つのブロックコンデンサ18が実装され、そのうち、2つのブロックコンデンサ18は、第2サブ基板22Bの一方の主面22Ba(第1サブ基板22Aと対向する面)に実装され、他の2つのブロックコンデンサ18は、第2サブ基板22Bの他方の主面22Bbに実装されている。この場合も、2つのブロックコンデンサ18の各端子36が、他の2つのブロックコンデンサ18にぶつからないように、互いにずらして実装されている。
【0033】
図3に示すように、メイン基板20の他主面20bと第1サブ基板22Aの一方の主面とのなす角θ1及びメイン基板20の他主面20bと第2サブ基板22Bの一方の主面とのなす角θ2は、85゜〜95゜が好ましい。すなわち、サブ基板22は、メイン基板20の他主面20bにほぼ垂直方向に配置される。なす角θ1及びθ2が85゜よりも小さく、あるいは95゜よりも大きいと、メイン基板20を支える力(メイン基板20に向かう方向の力成分)が低下し、メイン基板20とサブ基板22による組立体42の強度、例えば複数のブロックコンデンサ18を支える強度が不十分になるおそれがある。しかも、ブロックコンデンサ18を収容する空間が局部的に狭くなる部分が発生し、必要数のブロックコンデンサ18を実装できなくなるおそれもある。これに対して、なす角θ1及びθ2が85゜〜95゜であれば、このような不都合は生じない。
【0034】
また、
図6に模式的に示すように、第1サブ基板22Aの一方の主面22Aaをメイン基板20の他主面20bに投影した線分を第1線分L1、第2サブ基板22Bの一方の主面22Baをメイン基板20の他主面20bに投影した線分を第2線分L2とし、メイン基板20の中心線Lc(第1端子台16a及び第2端子台16bに向けて延びる中心線(仮想線))と第1線分L1とのなす角を第1角度φ1、上記中心線Lcと第2線分L2とのなす角を第2角度φ2としたとき、第1角度φ1と第2角度φ2とはほぼ同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。ここで、「ほぼ同じ」とは、0゜≦|φ1−φ2|≦2゜であり、第1サブ基板22A及び第2サブ基板22Bの各一方の主面22Aa及び22Baが互いにほぼ平行であることを示す。
図3及び
図7に、第1サブ基板22A及び第2サブ基板22Bを、各一方の主面22Aa及び22Baが互いにほぼ平行となるように配置した例を示す。一方、「互いに異なる」とは、2゜<|φ1−φ2|≦90゜であり、第1サブ基板22A及び第2サブ基板22Bの各一方の主面22Aa及び22Baが互いに非平行であることを示す。
図8に、第1サブ基板22A及び第2サブ基板22Bを、各主面が互いに非平行となるように配置した例を示す。
【0035】
また、
図9A及び
図9Bに示すように、隣接する第1サブ基板22A及び第2サブ基板22B間に配置され、且つ、第1サブ基板22A及び第2サブ基板22B同士を連結する補助基板44を有するようにしてもよい。
【0036】
この場合、第1サブ基板22A及び第2サブ基板22Bのうち、補助基板44との連結部分にそれぞれ貫通孔46を設け、補助基板44のうち、第1サブ基板22A及び第2サブ基板22Bとの連結部分にそれぞれ凸部48を設ける。そして、補助基板44の凸部48が第1サブ基板22A及び第2サブ基板22Bの各貫通孔46に挿入されて、はめ込まれることで、第1サブ基板22A及び第2サブ基板22B同士が補助基板44を介して強固に連結され、もって、メイン基板20とサブ基板22による組立体42の強度がさらに向上することとなる。この場合も、補助基板44の凸部48のうち、第1サブ基板22A及び第2サブ基板22Bの貫通孔46から突出する部分(突出部)の高さ(突出量db)は、1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0037】
さらに、
図10A及び
図10Bに示すように、補助基板44を、メイン基板20の他主面20bにほぼ垂直方向に配置し、且つ、メイン基板20に連結してもよい。この場合、メイン基板20とサブ基板22との関係と同様に、メイン基板20の他主面20bと、補助基板44の主面とのなす角は、85゜〜95゜が好ましい。
【0038】
また、メイン基板20のうち、補助基板44との連結部分に貫通孔50を設け、補助基板44のうち、メイン基板20との連結部分に凸部52を設ける。そして、補助基板44の凸部52がメイン基板20の貫通孔50に挿入されて、はめ込まれることで、メイン基板20と補助基板44とが強固に連結され、もって、メイン基板20とサブ基板22による組立体42の強度がさらに向上することとなる。また、
図9A〜
図10Bにおいて、補助基板44とサブ基板22とを、メイン基板20とサブ基板22と同様に、電気的にも接続するようにしてもよいし、
図10A及び
図10Bにおいて、補助基板44とメイン基板20とを電気的にも接続するようにしてもよい。これにより、各基板の配線設計の自由度が増し、好ましい。
【0039】
そして、メイン基板20とサブ基板22(ブロックコンデンサ18が実装されている)による組立体42は、
図11に示すように、シールドケースとしての金属ケース54(筐体)の内部空間に収容される。
【0040】
この場合、金属ケース54にサブ基板22の一部を嵌合して、組立体42を収容することが好ましい。具体的には、
図11に示すように、金属ケース54の一方の側板54aの上部のうち、サブ基板22との嵌合部分に切欠き56を設け、サブ基板22のうち、金属ケース54の一方の側板54aとの嵌合部分に凸部58を設ける。そして、サブ基板22の凸部58が金属ケース54の一方の側板54aの切欠き56に挿入されて、はめ込まれることで、金属ケース54にサブ基板22が嵌合され、これによって、メイン基板20とサブ基板22による組立体42が金属ケース54内において所定の位置に位置決めされ、組立体42が金属ケース54内において水平方向にずれることがなくなる。切欠き56を一方の側板54aのみに形成したので、サブ基板22の金属ケース54の側板に対する組み付けが簡単で作業効率が向上する。もちろん、金属ケース54の互いに対向する2つの側板54a及び54bにそれぞれ切欠き56を設け、サブ基板22の各両側にそれぞれ凸部58を設けるようにしてもよい。
【0041】
さらに、
図12に示すように、金属ケース54の底板54cに、サブ基板22の位置ずれを防止するための凸部60を設けるようにしてもよい。凸部60は、
図12に示すように、板金の折り曲げ加工によって、底板54cの一部を金属ケース54の内方に折り曲げて形成してもよいし、図示しないが、底板54cにエンボス加工を施して形成してもよい。これにより、例えばノイズフィルタ10を分電盤に取り付ける際に、メイン基板20の一主面20aが鉛直方向(重力方向)に沿うように設置されても、サブ基板22の下端が鉛直方向にずれるということがなくなり、ガタつきや振動等が生じにくくなる。
【0042】
この場合、例えば
図12に示すように、金属ケース54の一方の側板54a(二点鎖線で示す)に近接する位置(一方の側板54aから1mm〜1cm程度離間した位置)であって、且つ、サブ基板22の一方の主面に対向する位置と、金属ケース54の他方の側板54bに近接する位置(他方の側板54bから1mm〜1cm程度離間した位置)であって、且つ、サブ基板22の他方の主面に対向する位置とに、それぞれ凸部60を形成することが好ましい。サブ基板22の金属ケース54の底板54cに対する組み付けが簡単で作業効率が向上し、ガタつきや振動の発生をさらに低減させることができる。
【0043】
このように、本実施の形態に係るノイズフィルタ10は、メイン基板20とサブ基板22との組み合わせにより、いままで考慮されていなかったコイル12、第1端子台16a及び第2端子台16bの下方において空間を形成することが可能となり、該空間を利用して、複数のブロックコンデンサ18を収容することができる。その結果、ノイズフィルタ10の実装面積をブロックコンデンサ18を考慮せずに設定することが可能となり、しかも、コイル12、第1端子台16a、第2端子台16b、ブロックコンデンサ18等を実装しても強度を十分に確保することができ、一定の性能を確保しながらも小型化を図ることができる。
【実施例】
【0044】
比較例と実施例について、1つのコイル12、第1端子台16a、第2端子台16b、10個のブロックコンデンサ18を実装した際のサイズの違いを確認した。比較例及び実施例の寸法(縦×横)、実装面積、実装面積の割合(比較例を100%としたときの実施例の割合)を下記表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
<比較例>
特許文献2に記載のノイズフィルタと同様の構成を有し、第1端子台16a及び第2端子台16bの各下方にブロックコンデンサ18を収容した。この場合、第1端子台16aの下方の空間に3つのブロックコンデンサ18しか収容できず、また、第2端子台16bの下方の空間に2つのブロックコンデンサ18しか収容できなかったため、メイン基板20の面積を大きく設定し、第1端子台16aとコイル12との間に3つのブロックコンデンサ18が実装できる程度の隙間を確保し、第2端子台16bとコイル12との間に2つのブロックコンデンサ18が実装できる程度の隙間を確保した。その結果、上記表1に示すように、縦及び横の寸法は140.0mm×77.0mmであり、実装面積は10780mm
2であった。
【0047】
<実施例>
実施の形態に係るノイズフィルタ10と同様の構成を有し、10個のブロックコンデンサ18のうち、6個のブロックコンデンサ18を第1サブ基板22Aに実装し、残り4個のブロックコンデンサ18を第2サブ基板22Bに実装した。この場合、第1端子台16aとコイル12との間、並びに第2端子台16bとコイル12との間に、それぞれブロックコンデンサ18を実装するための隙間を確保する必要はなかった。その結果、上記表1に示すように、縦及び横の寸法は128.0mm×62.5mmであり、実装面積は8000mm
2であった。比較例の実装面積を100%としたとき、実施例の実装面積は74%であり、26%も低減したことがわかった。
【0048】
なお、本発明に係るノイズフィルタは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
10…ノイズフィルタ 12…コイル
14…巻線 16a…第1端子台
16b…第2端子台 18…ブロックコンデンサ
20…メイン基板 22…サブ基板
22A…第1サブ基板 22B…第2サブ基板
24、38、46、50…貫通孔 26、48、52、58、60…凸部
28、30…配線パターン 32、40…導電層
34…導電部材 36…端子
42…組立体 44…補助基板
54…金属ケース 56…切欠き