特許第5946369号(P5946369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946369
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】3次元地図画像データ生成システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 17/05 20110101AFI20160623BHJP
   G06T 15/04 20110101ALI20160623BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   G06T17/05
   G06T15/04
   G09B29/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-187797(P2012-187797)
(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-44658(P2014-44658A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】502002186
【氏名又は名称】株式会社ジオ技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 和弘
(72)【発明者】
【氏名】吹田 夏子
【審査官】 岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−186960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 15/00−19/20
G09B 29/00−29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を3次元的に表現した3次元地図を描画するための3次元地図画像データを生成する3次元地図画像データ生成システムであって、
建物の3次元形状を表す3次元モデルを格納した3次元地図データベース記憶部と、
前記3次元モデルを所定の投影方法で投影して3次元地図の通常投影画像を生成する投影処理部と、
前記投影処理部で生成された通常投影画像のうち前記建物の屋上面に相当する領域の画像を用いて、所定の規則に基づいて凹凸感を付すための画像処理を施して各建物の屋上テクスチャを生成する屋上テクスチャ生成部と、
前記屋上テクスチャを前記通常投影画像に合成して、前記3次元地図画像データを生成する画像合成部とを備える3次元地図画像データ生成システム。
【請求項2】
請求項1記載の3次元地図画像データ生成システムであって、
前記屋上テクスチャ生成部は、前記屋上面に相当する領域の縁を切り取った屋上面カット画像を生成し、該屋上面カット画像に対して陰影を施す処理によって前記屋上テクスチャを生成する3次元地図画像データ生成システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の3次元地図画像データ生成システムであって、
さらに、前記屋上面に相当する領域の縁を切り取った領域の輪郭線を形成することで、屋上面に付すための境界線画像を生成する境界線生成部を有し、
前記画像合成部は、さらに前記境界線画像を合成する3次元地図画像データ生成システム。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の3次元地図画像データ生成システムであって、
前記投影処理部は、前記3次元モデルにおいて各建物を構成する面の色を統一し、真上からライティングした状態で前記投影を行って処理用画像を生成し、該処理用画像において、他の面よりも高い明度で表された領域を屋上面として抽出することで屋上面画像を生成し、
前記屋上テクスチャ生成部は、前記屋上面画像を用いて、前記通常投影画像のうち前記画像処理を施す対象となるべき領域を特定する3次元地図画像データ生成システム。
【請求項5】
コンピュータによって、建物を3次元的に表現した3次元地図を描画するための3次元地図画像データを生成する3次元地図画像データ生成方法であって、
建物の3次元形状を表す3次元モデルを格納した3次元地図データベース記憶部から前記3次元モデルを読み出すステップと、
前記3次元モデルを所定の投影方法で投影して3次元地図の通常投影画像を生成するステップと、
該生成された通常投影画像のうち前記建物の屋上面に相当する領域の画像を用いて、所定の規則に基づいて凹凸感を付すための画像処理を施して各建物の屋上テクスチャを生成するステップと、
前記屋上テクスチャを前記通常投影画像に合成して、前記3次元地図画像データを生成するステップとを備える3次元地図画像データ生成方法。
【請求項6】
コンピュータによって、建物を3次元的に表現した3次元地図を描画するための3次元地図画像データを生成するためのコンピュータプログラムであって、
建物の3次元形状を表す3次元モデルを格納した3次元地図データベース記憶部から前記3次元モデルを読み出す機能と、
前記3次元モデルを所定の投影方法で投影して3次元地図の通常投影画像を生成する機能と、
該生成された通常投影画像のうち前記建物の屋上面に相当する領域の画像を用いて、所定の規則に基づいて凹凸感を付すための画像処理を施して各建物の屋上テクスチャを生成する機能と、
前記屋上テクスチャを前記通常投影画像に合成して、前記3次元地図画像データを生成する機能とをコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地物を3次元的に表現した3次元地図を描画するためのデータを生成する3次元地図画像データ生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物や道路などの地物を3次元的に表示した3次元地図は、カーナビゲーションや電子地図などの形でディスプレイに表示する態様や、印刷物の態様で種々利用されている。3次元地図は、建物等の形状を表した3次元モデルに基づいて透視投影法などの方法で、逐次描画されるのが通常である。また、特許文献1には、予め3次元モデルを平行投影して描いた二次元の画像データを用意しておき、表示時には3次元モデルを用いることなく軽い負荷で3次元地図を表示する技術も開示されている。
これらの3次元地図では、2次元の地図に比較して、建物等の状況を現実に近い状態で描画することができるため、ユーザが現在位置や地理情報を直感的に把握しやすいという利点がある。従って、3次元地図においては、こうしたユーザの直感的な認識を向上させるため、よりリアリティの高い地図を提供することが望まれる。
【0003】
3次元地図におけるリアリティを向上させる方法として、現実の建物を撮影した画像等に基づいて作成されたテクスチャの利用が知られている。特許文献2は、3次元モデルの表面にテクスチャを貼り付けてリアリティを向上するための具体的方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−186960号公報
【特許文献2】特許第4812011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるように、建物よりも高い位置から見た状態の3次元地図を描画する場合は、平行投影による場合も透視投影による場合も、建物の屋上面が比較的目立つ状態となるが、従来、屋上面のリアリティ向上については、着目されて来なかった。屋上面が単に平面状に描画されると、3次元地図全体のリアリティを損ね、3次元地図の価値を低下させることもある。
こうした課題を解決する方法として、屋上面についても、従来技術と同様、テクスチャを利用してリアリティを向上させることは可能ではある。しかし、屋上面のテクスチャを作成するためには、建物の屋上面が視認可能な位置から建物を撮影する必要があり、容易ではない。
また、画像のレタッチ等によってオペレータが個別に屋上面の画像を用意していては、作業負荷が多大となる。
本発明は、こうした過大に鑑み、3次元地図において、比較的軽い負荷で、屋上面のリアリティを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
建物を3次元的に表現した3次元地図を描画するための3次元地図画像データを生成する3次元地図画像データ生成システムであって、
建物の3次元形状を表す3次元モデルを格納した3次元地図データベース記憶部と、
前記3次元モデルを所定の投影方法で投影して3次元地図の通常投影画像を生成する投影処理部と、
前記投影処理部で生成された通常投影画像のうち前記建物の屋上面に相当する領域の画像を用いて、所定の規則に基づいて凹凸感を付すための画像処理を施して各建物の屋上テクスチャを生成する屋上テクスチャ生成部と、
前記屋上テクスチャを前記通常投影画像に合成して、前記3次元地図画像データを生成する画像合成部とを備える3次元地図画像データ生成システムとすることができる。
生成された3次元地図画像データは、ディスプレイへの表示、印刷装置による印刷出力などの態様で、3次元地図の描画に利用可能である。3次元地図画像データは、投影処理によって生成された2次元画像としてのデータであるため、表示、印刷出力などにおいて、改めて投影処理を施す必要はない。
【0007】
本発明によれば、3次元モデルに基づいて生成される通常投影画像に対して、所定の規則に基づく画像処理を施すことにより、屋上面に相当する領域の画像を用いて、凹凸感を付すことができる。この画像処理は、予め設定された所定の規則に基づくものであり、自動処理によって行うことができるため、オペレータ等に多大な処理負荷をかけるものとはならない。もっとも、こうした自動の画像処理に加えて、オペレータによる前処理または後処理を施すものとしてもよい。
また、処理対象とする建物を、属性に応じて絞り込んでも良い。例えば、所定の高さ以上の建物、ビルなど所定の種別の建物、屋上面が平坦になっている形状の建物などの方法で絞り込むことが考えられる。
【0008】
上記方法によって付される凹凸感は、必ずしも現実の建物の屋上面の様子を再現するものとはならない。しかし、建物の屋上面には、転落を防止する壁または柵や、屋上面の雨水を配水するための排水溝、水道用のタンクなど種々の類似した設備体が設けられているのが通常であり、凹凸感を付すことによって、これらの設備体を表現することができるため、正確な再現ではないにせよ、屋上面のリアリティを向上させることができる。そして、屋上面のリアリティを向上することによって、3次元地図全体のリアリティを向上させることができる。
従来、3次元地図におけるリアリティ向上は、可能な限り現実の状況を再現することが指向されてきたが、本願の発明者は、屋上面のリアリティについては、必ずしも現実の状況を正確に再現する必要はなく、3次元地図全体のリアリティを損なわない程度に表現されていればよいとの着眼によって、本発明をなし得たものである。
【0009】
凹凸感は、種々の方法で付すことができる。例えば、屋上面の周囲に所定幅の壁または柵が設けられている状態の画像処理としてもよい。また、屋上面の所定の位置に、円形や矩形等の形状で、タンクや階段出入口などの設備を配置した状態を表現する画像処理としてもよい。複数種類の画像処理を、建物の形状や屋上面の面積などに応じて、選択的または組合せて使用してもよい。
【0010】
画像処理の一例として、次の態様をとることもできる。
本発明の3次元地図画像データ生成システムにおいては、
前記屋上テクスチャ生成部は、前記屋上面に相当する領域の縁を切り取った屋上面カット画像を生成し、該屋上面カット画像に対して陰影を施す処理によって前記屋上テクスチャを生成するものとしてもよい。
こうすることによって、屋上面の周囲に、所定幅の壁が設けられている状態を表現することができる。領域の縁の切り取りは、所定幅を切り取る方法、屋上面を所定比率で縮小させる方法などによって行うことができる。
陰影を施す際には、3次元地図を投影する際のライティング方向と同等のライティングを想定し、濃淡が表れる方向を決定することが好ましい。こうすることにより、違和感のない陰影を施すことができる。
【0011】
また、本発明の3次元地図画像データ生成システムにおいては、
さらに、前記屋上面に相当する領域の縁を切り取った領域の輪郭線を形成することで、屋上面に付すための境界線画像を生成する境界線生成部を有し、
前記画像合成部は、さらに前記境界線画像を合成するものとしてもよい。
こうすることにより、屋上面の周囲に設けられた壁を、輪郭付きで明瞭に表現することができ、よりリアリティを向上させることができる。輪郭線は、所定幅を切り取る方法、屋上面を所定比率で縮小させる方法などによって決めることができる。
【0012】
本発明の3次元地図画像データ生成システムにおいては、
前記投影処理部は、前記3次元モデルにおいて各建物を構成する面の色を統一し、真上からライティングした状態で前記投影を行って処理用画像を生成し、該処理用画像において、他の面よりも高い明度で表された領域を屋上面として抽出することで屋上面画像を生成し、
前記屋上テクスチャ生成部は、前記屋上面画像を用いて、前記通常投影画像のうち前記画像処理を施す対象となるべき領域を特定するものとしてもよい。
3次元モデルの段階では、建物の屋上面を個別に特定することは容易であるが、3次元モデルを投影して得られる画像では、屋上面という属性が欠落してしまうため、屋上面を特定することは容易ではなくなる。上記態様によれば、真上からライティングすることによって屋上面は、側面等に比べて最も明度が高くなるため、投影後の画像においても、明度の差違に基づいて屋上面を容易に特定することができる。
上記態様においては、各建物を構成する面の色は、建物ごとに統一されていれば足りる。異なる建物に対しては、同一の色としてもよいし、異なる色を用いても良い。
【0013】
本発明において、屋上面を特定する方法は、上述の態様に限定されるものではない。例えば、3次元モデルにおいて、屋上面のポリゴンを特定可能な属性が付されている場合には、屋上面以外の面を透明、または描画対象外とし、屋上面だけを投影対象とすることによって、上述の屋上面画像を得る方法をとってもよい。また、かかる属性が付されていない場合でも、各ポリゴンの法線が鉛直方向から所定範囲にある面を屋上面と判断して、上記処理を行うようにしてもよい。
【0014】
本発明においては、必ずしも上述の全ての特徴を備えている必要はなく、適宜、一部を省略したり、組み合わせたりして構成することも可能である。
本発明は,その他,コンピュータによって3次元地図を描画するためのデータを生成する3次元地図画像データ生成方法として構成してもよいし,かかる描画をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして構成してもよい。また,かかるコンピュータプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体として構成してもよい。記録媒体としては,フレキシブルディスクやCD−ROM,光磁気ディスク,ICカード,ROMカートリッジ,パンチカード,バーコードなどの符号が印刷された印刷物,コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等,コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】3次元地図画像データ生成システムの構成を示す説明図である。
図2】3D地図画像データ生成処理のフローチャート(1)である。
図3】3D地図画像データ生成処理のフローチャート(2)である。
図4】3D地図画像データ生成処理のフローチャート(3)である。
図5】3D地図画像データの生成処理例(1)である。
図6】3D地図画像データの生成処理例(2)である。
図7】3D地図画像データの生成処理例(3)である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
A.システム構成:
図1は、3次元地図画像データ生成システムの構成を示す説明図である。
3次元地図画像データ生成システム100は、CPU、RAM、ROMを備えるコンピュータに、図示する種々の機能を実現するコンピュータソフトウェアをインストールすることによって構成され、3次元地図(3D地図と言うこともある)を描画するための3次元地図画像データを生成するシステムである。本実施例では、スタンドアロンで稼働するコンピュータによってシステムを構成する例を示したが、複数のコンピュータ、サーバ等をネットワークで接続して構成してもよい。
3次元地図画像データとは、建物等の3次元形状を表した3次元モデルを投影して得られる2次元画像としての画像データである。
3次元地図画像データ生成システム100で生成された3次元地図画像データを用いることによって、スマートフォン300その他のディスプレイに3D地図を表示させることができる。また、3次元地図画像データをプリンタ200に出力することによって、3次元地図201を印刷することもできる。3次元地図画像データは、投影された2次元画像としてのデータであるため、これらの地図表示および印刷出力において、改めて投影処理を施す必要はない。
【0017】
3次元地図画像データ生成システム100を構成する各機能ブロックの内容について説明する。図1に示した各機能ブロックは、上述の通り、主としてソフトウェア的に構成されているが、その一部または全部をハードウェア的に構成しても構わない。
3D地図データベース101は、3次元地図画像データを作成する際に利用されるデータベースであり、建物を含む地物の3次元形状を表すポリゴンデータからなる3D地図データを記憶している。
投影処理部111は、3D地図データベース101の3D地図データを読み込み、投影処理を行って投影画像、即ち建物等を3次元的に表現した2次元画像を生成する。本実施例では、投影処理は平行投影によって行うものとし、2次元画像は、ラスタデータとなっている。透視投影による投影処理を行うものとしてもよい。
投影条件指定部110は、投影処理を行う際の条件を指定する。本実施例では、「通常」投影の条件と、「処理用」投影の条件とが用意されている。「通常」投影とは、3D地図データをそのまま用いて投影するための条件である。「通常」投影によって得られた画像は、通常投影画像102として記憶されている。「処理用」投影とは、通常投影画像102において建物の屋上面を特定するための投影処理を行うための条件である。「処理用」投影の結果を用いて特定された屋上面の画像は、屋上面画像103として記憶される。
屋上テクスチャ生成部113は、通常投影画像102、屋上面画像103を用いた画像処理によって、屋上面の凹凸感を表したテクスチャ画像を生成する。こうして生成されたテクスチャ画像は、屋上テクスチャ105として記憶される。
境界線生成部112は、屋上面画像103に基づいて、屋上テクスチャ105の境界線に相当する枠状の画像を生成する。この枠状の画像は、境界線画像104として記憶される。
画像合成部114は、通常投影画像102に、屋上テクスチャ105および境界線画像104を合成することによって、通常投影画像102における各建物の屋上面に凹凸感を付した画像を生成する。こうして生成された画像データが、3D地図画像106となる。
以下、3D地図画像106を生成するための処理内容について具体的に説明する。
【0018】
B.3D地図画像データ生成処理:
図2〜4は、3D地図画像データ生成処理のフローチャートである。図1に示した各機能ブロックが連動して実行する処理に相当し、ハードウェア的には、3D地図画像データ生成システム100のCPUが実行する処理である。
処理を開始すると、3D地図画像データ生成システム100(以下、単に「システム100」というときもある)は、オペレータからの描画範囲、視線方向、投影方法の指定を受け付ける(ステップS10)。投影方法に応じた他の条件も入力するようにしてもよい。例えば、平行投影の場合は、さらに視線方向として、方位および見下ろし角度を入力することが考えられる。透視投影の場合は、さらに視点位置を入力することが考えられる。
次に、システム100は、指定された描画範囲に応じた3D地図データを読み込む(ステップS12)。そして、ステップS10で指定された条件に基づいて3D地図データを投影することによって、通常投影画像を生成する(ステップS14)。
【0019】
次に、システム100は、3D地図データを投影することで、処理用投影画像を生成する(ステップS16)。このための投影条件は、図中に示す通り、建物のテクスチャを非表示とすること、建物の色を統一すること、および真上から真下に向けてライティングを設定することの3つの条件である。本実施例では、全建物の色を共通としたが、用いる色は、建物ごとに異ならせてもよい。
これらの条件は、投影条件指定部110に予め設定されている。投影のための条件、即ち、視線方向、投影方法などの条件は、通常投影画像生成(ステップS14)と同じである。
こうすることによって、模様等が無い状態の単色の建物の投影画像が得られる。得られた処理用投影画像は、ライティングは真上から真下に設定されているため、建物の屋上面が最も明度が高い状態の画像となる。
【0020】
システム100は、得られた画像に基づいて屋上面画像を生成する(ステップS18)。即ち、処理用投影画像は、上述の通り、屋上面の明度が高い画像となっているため、明度差に基づいて、屋上面に相当する部分のみを抽出するのである。
図中に処理の様子を示した。左側が、処理用投影画像の例である。屋上面S1、S2を有する2つの建物が描画されている。建物は全ての面の色が統一されているが(ステップS16参照)、ライティングの効果によって、屋上面S1、S2は明度が高く、側面(図中のハッチングを付した部分)は、暗い面となっている。
この中から、明るい部分S1、S2のみを抽出すると、図の右側に示す状態となる。このように屋上面に相当する部分のみが抽出された画像を、屋上面画像と呼ぶ。
【0021】
次に、システム100は、屋上面画像に基づいて境界線を生成する(ステップS20)。境界線とは、後述する通り、屋上面のテクスチャの外周に相当する線である。本実施例では、屋上面画像を収縮処理して境界を抽出するものとした。
図中に処理例を示した。左端が屋上面画像である。先に図2のステップS18に示したS1、S2の一方のみを表した。
この屋上面画像に対して収縮処理を施す。収縮処理とは、周知の画像処理技術であり、屋上面画像のように一定の領域の外周部分の所定範囲に存在するピクセルを削除する処理である。どの程度の収縮を施すかは、任意に設定可能である。
システム100は、収縮処理が施された屋上面画像に基づき、その境界を抽出する。こうして得られた枠状の画像が、ステップS20で生成される境界線画像である。
【0022】
なお、境界線画像の生成は、上述の方法に限らず、種々の方法で行うことができる。例えば、屋上面画像に基づいて境界線を抽出し、これをベクトル化して一つの閉図形として認識した後、縦横一定比率で縮小する処理を施す方法によってもよい。
【0023】
システム100は、次に屋上面カット画像を生成する(ステップS22)。図中に、この処理の内容を示した。
まず、左上にあるように、屋上面画像を読み込み、これに収縮処理を施す。この収縮処理は、境界線生成(ステップS20)で行ったのと同一の処理である。収縮処理によって得られた画像を、ここではカット枠と呼ぶ。
次に、左下にあるように、通常投影画像を読み込む。そして、これにカット枠を適用し、カット枠と重複する部分のみを屋上面カット画像として抽出する。こうすることによって、右下に示すように、通常投影画像の屋上面のうち、外周の一定幅を除いた部分が屋上面カット画像として抽出されることになる。屋上面カット画像は、通常投影画像を切り出したものであるから、屋上面画像やカット枠のように単色で表されたものではなく、各建物のマテリアルを反映した画像となっている。
【0024】
システム100は、生成された屋上面カット画像に対して、陰影を付し、屋上テクスチャを生成する(ステップS24)。
図中に処理例を示した。左側に示したのがステップS22で生成される屋上面カット画像である。
システム100は、この屋上面カット画像の2辺に陰影を付している。図中の例では、上側および右側の辺に陰影を付した例を示した。陰影の幅d1、d2は、任意に設定可能である。陰影を付す辺も任意に設定可能であるが、通常投影画像のライティングを踏まえて決定することが好ましい。例えば、通常投影画像において図中の右上側から左下方向にライティングの方向が設定されている場合には、このライティング方向に近い2辺、即ち図中の2辺に陰影を施すことになる。逆に、図中に左下から右上方向にライティングが設定されている場合には、左辺および下辺に陰影を付せばよい。
【0025】
上述の境界線生成処理(ステップS20)と、屋上面カット画像生成(ステップS22)および屋上テクスチャの生成(ステップS24)とは、順序を入れ替えてもよいし、両者を並行して行っても良い。
【0026】
システム100は、上述の各処理で得られた結果に基づき、通常投影画像、境界線、屋上テクスチャを合成する(ステップS26)。
図中に処理例を示した。上段の左側に示したのが通常投影画像で得られる建物の画像である。この状態では、屋上はただの平坦な面として描かれている。中央にはステップS20で生成された境界線、右側にはステップS24で生成された屋上テクスチャを示した。
下段には、これらを合成した状態を示した。屋上面には、屋上テクスチャにより陰影が施され、屋上テクスチャの外周に境界線が描かれる(図中では、敢えて境界線を強調して示した)。こうすることにより、屋上の周囲に一定幅の壁が形成されている状態を表すことができる。この壁の幅は、ステップS20、S22における収縮処理の程度によって決まり、壁の高さは、ステップS24における陰影の幅d1、d2によって決まる。
【0027】
システム100は、合成によって得られた画像を、3D地図画像として出力する(ステップS28)。この3D地図画像は、先に説明した通り、スマートフォン300その他のディスプレイに3D地図を表示させたり、プリンタ200によって印刷出力することができる。
【0028】
C.処理例:
図5〜7は、3D地図画像データの生成処理例である。
図5(a)は、オペレータから指定された描画範囲の通常投影画像(図2のステップS14参照)である。平行投影した例を示した。この状態では、いずれの建物も屋上が平坦な面で描画されている。以下、右下の建物BLDに着目しながら処理例を説明する。この建物BLDも屋上面SRは平坦である。また、建物BLDは、単純な直方体ではなく、領域aに示すように、凹部が存在する点が特徴である。
【0029】
図5(b)は、処理用投影画像(図2のステップS16参照)の例である。建物全体の色を統一し、真上からのライティングで投影した結果を示している。このように真上からのライティングを施すことにより、屋上は側面よりも明度が高い状態で描画される。建物BLDについても、屋上面PRの明度が高くなっている。また、凹部bがはっきりと判別できる状態となっている。
【0030】
図6(a)は、屋上面画像(図2のステップS18参照)の例である。図5(b)の処理用画像から、明度の高い部分のみを抽出した結果を示している。建物BLDの屋上面PRは、凹部cが存在する状態で、抽出されていることが分かる。
【0031】
図6(b)は、境界線(図3のステップS20参照)の例である。図6(a)の屋上面画像を収縮処理した上で、その外周を境界として抽出した結果である。建物BLDの屋上面PRからは、凹部dが存在する境界線LRが抽出されている。
【0032】
図7(a)は、屋上面テクスチャ(図4のステップS24参照)の例である。屋上面画像(図6(a))に基づいて生成される屋上面カット画像によって、通常投影画像(図5(a))の屋上部分を切り抜いた上で、上辺および右辺に陰影を施した画像である。建物BLDの屋上テクスチャTRも図示する通り生成されている。
【0033】
図7(b)は、3D地図画像である。右下の建物BLDについて示すように、通常投影画像SR(図5(a))に、境界線LR(図6(b))、および屋上テクスチャTR(図7(a))を合成することで生成される画像である。
3D地図画像では、各建物の屋上面には、外周に沿って所定幅の壁が形成されているように凹凸感が表現されており、平坦な面で示されている通常投影画像(図5(a))よりもリアリティが向上している。
【0034】
以上で説明した本実施例の3D地図画像データ生成システムによれば、建物の屋上に凹凸感を持たせることによって、3次元地図のリアリティを向上させることができる。この凹凸感は、図2〜4で示した処理によって自動的に付すことができるものであるため、オペレータに多大な負荷をかけることもない。
本実施例で付される凹凸感は、必ずしも建物の屋上の現実の状態を再現するものとはならないが、図7(b)に示す通り、現実を忠実に再現したものでなくても、3次元地図のリアリティを向上させることができ、地図としての有用性を高めることができる。
【0035】
本実施例で示した凹凸感を付すための画像処理は、一例に過ぎず、以下に示すように種々の変形例を構成することもできる。
例えば、本実施例で示した処理に加えてオペレータによる前処理または後処理を施し、よりリアリティを向上させてもよい。
また、本実施例は、屋上の外周に沿った壁状の凹凸感を付す処理例を示したが、屋上面の雨水を配水するための排水溝、水道用のタンクなど種々の設備体を表す凹凸感を付す処理を施しても良い。
さらに、屋上に凹凸感を与える処理を複数種類用意しておき、屋上の面積や形状に応じて、使い分けるものとしてもよい。
なお、本実施例では、平行投影の処理例を示したが、透視投影に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ディスプレイへの表示や印刷出力などに活用できるデータとして、地物を3次元的に表現した3次元地図を描画するためのデータを生成するために利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
100…3次元地図画像データ生成システム
101…3D地図データベース
102…通常投影画像
103…屋上面画像
104…境界線画像
105…屋上テクスチャ
106…3D地図画像
110…投影条件指定部
111…投影処理部
112…境界線生成部
113…屋上テクスチャ生成部
114…画像合成部
200…プリンタ
201…地図
300…スマートフォン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7