(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946377
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/58 20060101AFI20160623BHJP
H01R 13/46 20060101ALI20160623BHJP
H01R 13/533 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
H01R13/58
H01R13/46 B
H01R13/533 D
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-196881(P2012-196881)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-53167(P2014-53167A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雅幸
【審査官】
前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−40327(JP,A)
【文献】
特開2008−108487(JP,A)
【文献】
特開平8−288013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/58
H01R 13/46
H01R 13/533
H01R 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コネクタが嵌合し雄側端子部が突出する嵌合フード部が一体に形成された雌コネクタと、
前記雌コネクタの嵌合フード部に嵌合し前記雄側端子部と接続される雌端子が収容される雌側端子収容部を備え前記雌端子に接続された電線が電線引出側の後端部から引き出される雄コネクタと、
前記雄コネクタの前記電線引出側後端部に取り付けられて引き出された複数本の電線を集束する電線規制カバーと、から構成されるコネクタであって、
前記雌コネクタの前記嵌合フード部の内壁には、雄コネクタの挿入方向に沿って突起部挿入溝が形成され、
前記電線規制カバーには、前記雄コネクタの電線引出側後端部を覆うカバー本体部が形成され、
該カバー本体部には、前記嵌合フード部への前記雄コネクタの挿入方向前方側の前端部に、前記雌コネクタの突起部挿入溝と前記雄コネクタの外周面との間に挿入されて前記嵌合フード部の内壁と前記雄コネクタの外周との隙間を埋める突起部が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記突起部には、前記嵌合フード部側に突出する係止片が設けられ、
前記雌コネクタの嵌合フード部に前記係止片が係止される係止部が設けられ、前記係止片が前記係止部に係止されることで前記電線規制カバーが前記雄コネクタに組み付けられることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコネクタであって、
前記雄コネクタの電線引出側の後端部に、前記突起部を前記嵌合フード部と前記雄コネクタの外周面との間に案内する突起部挿入案内部が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関し、特に電線規制カバーを装着するコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタは、雄側コネクタと雌側のコネクタとで形成され、これらが嵌合される。雄側コネクタ又は雌側コネクタのどちらか一方のコネクタには、導電部材が収容されて、他方のコネクタ内に配置された端子が導電部材と接触することで電気的に接続される。この導電部材に電気を流すための電線がコネクタに接続されており、コネクタの一端側からは電線が引き出される。このように引き出された電線は、特許文献1に示すように集束され、コネクタの一方向に規制するため、コネクタの電線引出側に電線規制カバーが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−350342
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコネクタでは電線規制カバーを雄コネクタ又は雌コネクタの電線引出側に取り付けた際に、電線規制カバーを取り付けた側のコネクタの重量が増すため、雄コネクタと雌コネクタとを嵌合した際に、雌コネクタの内壁と雄コネクタの外周との間に隙間が生じている場合、電線規制カバーを取り付けた側のコネクタが振動しやすくなり、電線規制カバーを取り付けた側のコネクタの耐振性が低下するという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、電線引出側の後端側に電線規制カバーが取り付けられたコネクタの耐振性を向上させるコネクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明では、相手コネクタが嵌合し雄側端子部7が突出する嵌合フード部6が一体に形成された雌コネクタ2と、前記雌コネクタ2の嵌合フード部6に嵌合し前記雄側端子部7と接続される雌端子が収容される雌側端子収容部19を備え前記雌端子に接続された電線が電線引出側の後端部から引き出される雄コネクタ3と、前記雄コネクタ3の前記電線引出側後端部に取り付けられて引き出された複数本の電線を集束する電線規制カバー4と、から構成されるコネクタ1であって、前記雌コネクタ2の前記嵌合フード部6の内壁には、雄コネクタ3の挿入方向に沿って突起部挿入溝11が形成され、前記電線規制カバー4には、前記雄コネクタ3の電線引出側後端部を覆うカバー本体部21が形成され、該カバー本体部21には、前記嵌合フード部6への前記雄コネクタ3の挿入方向前方側の前端部に、前記雌コネクタ2の突起部挿入溝11と前記雄コネクタ3の外周面20との間に挿入されて前記嵌合フード部6の内壁と前記雄コネクタ3の外周との隙間を埋める突起部29が形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明では、請求項1記載のコネクタ1であって、前記突起部29には、前記嵌合フード部6側に突出する係止片39が設けられ、前記雌コネクタ2の嵌合フード部6に前記係止片39が係止される係止部15が設けられ、前記係止片39が前記係止部15に係止されることで前記電線規制カバー4が前記雄コネクタ3に組み付けられることを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項3の発明では、請求項1または2に記載のコネクタ1であって、前記雄コネクタ3の電線引出側の後端部に、前記突起部29を前記嵌合フード部6と前記雄コネクタ3の外周面20との間に案内する突起部挿入案内部25が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、カバー本体部21には、嵌合フード部6への雄コネクタ3の挿入方向前方側の前端部に、雌コネクタ2の突起部挿入溝11と雄コネクタ3の外周面20との間に挿入されて嵌合フード部6の内壁と雄コネクタ3の外周との隙間を埋める突起部29が形成されていることにより、雄コネクタ3と雌コネクタ2との間に生じる隙間を電線規制カバー4に形成された突起部29が挿入されるため、雄コネクタ3と雌コネクタ2との間に生じる隙間を突起部29によって埋めることができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の効果に加え、突起部29の設けられた係止片39が雌コネクタ2の側壁8に形成された係止部15に係止されるので、電線規制カバー4を確実に雌コネクタ2に係止することができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、雄コネクタ3の電線引出側の後端部に、突起部29を嵌合フード部6と雄コネクタ3の外周面20との間に案内する突起部挿入案内部25が形成されているため、突起部29を確実に突起部挿入溝11に案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明のコネクタの組み付け途中を示す斜視図。
【
図3】本発明のコネクタの組み付け完成状態を示す斜視図。
【
図4】(a)本発明のコネクタの上面図、(b)
図4(a)のA−A線断面図。
【
図5】本発明のコネクタの変形例を示す組み付け途中を示す斜視図。
【
図6】本発明のコネクタの変形例を示す組み付け完成状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、
図1〜6を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1〜4に示すように、本発明のコネクタ1は、相手コネクタが嵌合し雄側端子部7が突出する嵌合フード部6が一体に形成された雌コネクタ2と、雌コネクタ2の嵌合フード部6に嵌合し雄側端子部7と接続される雌端子が収容される雌側端子収容部19を備え雌端子に接続された電線が電線引出側の後端部から引き出される雄コネクタ3と、雄コネクタ3の電線引出側後端部に取り付けられて引き出された複数本の電線を集束する電線規制カバー4と、雌コネクタ2内に配置されて雄コネクタ3の端部との間で狭持されるパッキン5と、から構成されている。
【0015】
雌コネクタ2は、相手コネクタが嵌合して雄側端子部7が突出する嵌合フード部6と、雌コネクタ2の嵌合フード部6に嵌合し雌側端子と接続される雄側端子部7が収容される端子収容部16と、雌コネクタ2の一端に形成される取付部9と、から構成されている。
【0016】
嵌合フード部6は、一面側を開口した略角筒状に形成されており、側壁8と底面壁10を有している。側壁8の内周側には、雄コネクタ3の挿入をガイドする雄コネクタガイド溝13と、後述する突起部29が挿入される突起部挿入溝11と、が挿入方向に沿って形成され、側壁8の外周側には、他のコネクタや取り付け箇所に取り付けるためのロック手段18が形成されている。また、嵌合フード部6の内周側の底面壁10には、上述したパッキン5が当接して配置される。
【0017】
側壁8の内周側に形成される突起部挿入溝11は、内壁側から外壁側へ突出するように形成されている。この突起部挿入溝11には、後述する電線規制カバー4に設けられる突起部29が圧入される。
【0018】
端子収容部16は、嵌合フード部6の内側に形成されて、雄側端子部7を収容している。端子収容部16に収容される雄側端子部7は、底面壁10側から開口側に端子が突出するように配置されている。
【0019】
取付部9は、雌コネクタ2の一側の側壁8から延設されて形成されており、所望の取り付け箇所に取り付けられる。
【0020】
雌コネクタ2に取り付けられる雄コネクタ3は、端子収容部16の内径とほぼ同じ大きさに外径が形成された本体部17と、図示しない雌端子を収容する雌側端子収容部19と、から構成されている。
【0021】
嵌合フード部6の内周と略同形状に形成される本体部17は、雌コネクタ2の端子収容部16に収容されるように挿入される。
【0022】
本体部17に隣接して設けられる雌側端子収容部19には、図示しない雌側端子が収容されており、雌コネクタ2の雄側端子部7と電気的に接続される。
【0023】
雄コネクタ3の雌側端子収容部19に沿って立設される突起部挿入案内部25と、本体部17の外周には雌コネクタ2への挿入をガイドするガイド突起27が形成されている。このガイド突起27は、本体部17の外周面20に複数箇所設けられている。
【0024】
突起部挿入案内部25は、電線規制カバー4に固定する固定部31と、電線規制カバー4の組み付けを案内する凹部33と、から構成されている。
【0025】
固定部31は、コネクタの挿入方向に直交する方向に突設して設けられ図示しない電線規制カバー4の内部に形成された固定手段によって電線規制カバー4と雄コネクタ3を固定している。
【0026】
固定部31とともに雌側端子収容部19に隣接して設けられる凹部33は、後述する電線規制カバー4の突起部29の挿入を規制するように挿入方向に沿って凹設して形成されている。
【0027】
図2に示すように、電線規制カバー4は、雄コネクタ3の雌側端子収容部19を覆うカバー本体部21と、電線を集束する電線集束部22と、電線集束部22によって集束された電線を引き出す電線挿通孔23と、から構成されている。
【0028】
電線を引き出す後端側を覆うカバー本体部21は、雌側端子収容部19を内部に覆うようにコネクタに取り付けられる。また、カバー本体部21の組み付け挿入方向前方側の前端部には、突起部29が立設されている。この突起部29の厚さは、雌コネクタ2に形成された突起部挿入溝11の突出高さよりも突起部29の厚みの方が大きく設定されている。
【0029】
また、突起部29は、カバー本体部21の挿入方向前方側の前端部に複数箇所設けることが好ましく、本実施例では、カバー本体部21に突起部29を電線規制カバー4の長辺に1箇所の長辺側突起部35と、短辺に2箇所の短辺側突起部37と、を設けたものについて説明する。
【0030】
さらに、突起部29の内壁側に突起部挿入案内部25の凹部33に規制される規制部を設けてもよい。さらにまた、突起部29の先端部36、38には、組み付けを容易にするために傾斜面を設けてもよい。
【0031】
電線集束部22は、後述する電線挿通孔23に向けて電線を集束するもので、カバー本体部21の突起部29の他端側に設けられて電線挿通孔23に向けて傾斜面が形成されている。
【0032】
電線集束部22に連設して設けられる電線挿通孔23は、内部で電線集束部22によって集束された電線を引き出している。
【0033】
次に、コネクタの組み付け方法について説明する。
【0034】
まず、雌コネクタ2の底面壁10にパッキン5を取り付け、その後雄コネクタ3を雌コネクタ2に挿入する。雄コネクタ3を雌コネクタ2に挿入する際、嵌合フード部6の側壁8に形成される雄コネクタガイド溝13に雄コネクタ3に形成されるガイド突起27を挿入する。
【0035】
そして、
図2に示すように雄コネクタ3の本体部17を雌コネクタ2の端子収容部16に挿入することで、図示しない雌側端子と雄側端子部7が電気的に接続される。
【0036】
この状態から、雌側端子収容部19を覆うように電線規制カバー4を挿入する。この際、電線規制カバー4の開口に設けられた突起部29(短辺側突起部37)を雄コネクタ3の突起部挿入案内部25の凹部33に摺動させながら、雌コネクタ2の突起部挿入溝11(短辺側挿入溝14)と雄コネクタ3の本体部17の外周面20との間に圧入する。なお、短辺側突起部37を短辺側挿入溝14に圧入すると同時に、長辺側突起部35も雄コネクタ3の本体部17の外周面20と長辺側挿入溝12の間に圧入する。
【0037】
上記のような構成とすることにより、カバー本体部21には、雌コネクタ2の突起部挿入溝11と雄コネクタ3の本体部17の外周面20との間に挿入される突起部29が形成されていることにより、雄コネクタ3と雌コネクタ2との間に生じる隙間を電線規制カバー4に形成された突起部29が挿入されるため、雄コネクタ3と雌コネクタ2との間に生じる隙間を突起部29によって埋めることができる。加えて、突起部29の厚さを突起部挿入溝11の突出高さよりも厚くすることで、雌コネクタ2と雄コネクタ3との隙間を確実に埋めることができ、雄コネクタ3が雌コネクタ2内で振動することを防止することができる。
【0038】
また、突起部29の設けられた係止片39が雌コネクタ2の側壁8に形成された係止部15に係止されるので、電線規制カバー4を確実にコネクタ1に係止することができる。
【0039】
さらに、雄コネクタ3の雌側端子収容部19の側面には、カバー本体部21に形成される突起部29を嵌合フード部6と雄コネクタ3の外周面20との間に案内する突起部挿入案内部25が形成されているため、突起部29を確実に突起部挿入溝11に案内することができる。
【0040】
また、
図5,6に示すように、本願発明の電線規制カバー4の突起部29に嵌合フード部6側に突出する係止片39を設け、雌コネクタ2の側壁8に係止部15を設けても良い。
【0041】
すなわち、係止片39が係止部15に係止することにより、電線規制カバー4と雌コネクタ2とが確実に係止することができるため、突起部29が突起部挿入溝11から抜け出ることを防止することができる。
【0042】
また、係止片39の先端は、挿入側から挿入後方側へ徐々に隆起するようにテーパ形状にすることによって、係止片39を係止部15へ容易に係止させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、コネクタを覆うカバーを用いるコネクタに利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 コネクタ
2 雌コネクタ
3 雄コネクタ
4 電線規制カバー
7 雄側端子部
11 突起部挿入溝
17 本体部
19 雌側端子収容部
20 外周面
21 カバー本体部
29 突起部