(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脂環式エポキシ基を有する化合物(A)、グリシジルエーテル基を有する化合物(B)として、アルキレングリコール変性ジグリシジルエーテルとポリアルキレングリコール変性ジグリシジルエーテルとの80/20〜20/80(質量比)の混合物、水酸基を有する化合物(C)、及び光カチオン重合開始剤(D)を含み、
かつ、脂環式エポキシ基を有する化合物(A)/グリシジルエーテル基を有する化合物(B)の質量比が、10/90〜50/50であることを特徴とする接着剤組成物。
水酸基を有する化合物(C)が、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、水酸基含有アクリル系ポリマー、水酸基含有ポリイソプレン及び水酸基含有ポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の接着剤組成物は、脂環式エポキシ基を有する化合物からなる(A)成分、特定のグリシジルエーテル基を有する化合物からなる(B)成分、水酸基を有する化合物からなる(C)成分及び光カチオン重合開始剤からなる(D)成分を必須成分として含むものである。これらの(A)成分〜(D)成分は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
【0019】
[脂環式エポキシ基を有する化合物(A)]
本発明の接着剤組成物において、(A)成分となる脂環式エポキシ基を有する化合物は、分子内に下記式(1)に示すエポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物である。エポキシシクロヘキサン基中のエポキシ基の位置は限定されず、任意の位置に設けることができる。
【0021】
脂環式エポキシ基を有する化合物は、(D)成分(光カチオン重合開始剤)によって開環し架橋構造を形成しうるエポキシ基を有し、(C)成分(水酸基を有する化合物)の水酸基とカチオン重合反応を行うことにより、硬化物の接着強度を向上させることができる。また、本発明の接着剤組成物に適度なオープンタイムを付与し、該組成物に紫外線を照射した後に、部材を貼り合わせることを可能とするうえで重要な成分である。
【0022】
(A)成分の具体例としては、例えば、下記式(2−1)〜(2−3)で表わされる脂環式エポキシ化合物が好適である。式(2−2)において、nは1〜3の整数を表す。
【0024】
上記(A)成分の脂環式エポキシ基を有する化合物の中でも、エステル基がシクロヘキサン環に結合した形態の式(2−1)及び式(2−2)で表わされる化合物が好ましい。このような化合物は低粘度であり、塗布液を薄く塗布でき、微弱な紫外線しか届かない遮光部分に塗布した塗布液の硬化性に優れている。中でも、式(2−1)で表わされる化合物は、接着力及び耐久性に優れる点で特に好ましい。
【0025】
(A)成分の脂環式エポキシ化合物の含有割合は、接着剤組成物全体を基準として、1〜
40質量部とすることが好ましい。
40質量部を超える場合は、カチオン重合硬化速度が速く硬化収縮が大きくなり、また脂環構造の剛直さから柔軟性、密着性を損なう欠点がある。更に接着剤組成物の塗布液に紫外線を照射しても半硬化の膜を得る事ができないという欠点もある。より好ましく
は5〜25質量部の範囲が良い。
【0026】
[グリシジルエーテル基を有する化合物(B)]
本発明の接着剤組成物において、(B)成分となるグリシジルエーテル基を有する化合物は、(D)成分(光カチオン重合開始剤)によって開環し架橋構造を形成しうるグリシジルエーテル基を有し、(C)成分(水酸基を有する化合物)の水酸基とカチオン重合反応を行うことにより、硬化物の接着強度を向上させることができる。また、本発明の接着剤組成物に適度なオープンタイムを付与し、該組成物に紫外線を照射した後に、部材を貼り合わせることを可能とするうえで重要な成分である。
【0027】
(B)成分の具体例としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテ
ル等の2個のグリシジルエーテル基を有する脂肪
族グリシジル化合
物が挙げられる。
【0028】
良好な接着強度、耐水性を付与するうえでは、グリシジルエーテル基を2個以上有するグリシジル化合物を使用することが好ましく、硬化速度に優れる点で2個のものを使用することがより好ましい。グリシジルエーテル基はカチオン重合性が小さい為に1個では未反応成分として残留する可能性がある。
【0029】
これら(B)成分のグリシジルエーテル基を2個有するグリシジル化合物のうち、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の炭素数2〜6のアルキレングリコール変性
ジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等の
ポリアルキレングリコール変性
ジグリシジルエーテルが、硬化物の可撓性、耐湿性、耐水性に優れる点で特に好ましい。
【0030】
ポリアルキレングリコールの重合度(n)は限定されるものではなく、ポリエチレングリコールの場合はn=2〜22、ポリプロピレングリコールの場合はn=2〜3の化合物が挙げられる。低粘度で取扱性に優れる点より、n=2〜3の化合物が好ましい。
【0031】
グリシジルエーテル基を有する化合物は
、アルキレングリコール変性
ジグリシジルエーテルと、それ以外の2個のグリシジルエーテル基を有する脂肪
族グリシジル化合物を併用することが、より一層優れた密着性、耐水性を付与するうえで特に好ましい。好ましい併用比(質量比)は20/80〜80/20の範囲である。
【0032】
(B)成分のグ
リシジルエーテル基を有する化合物の含有割合は、接着剤組成物全体を基準として、好ましくは1〜
40質量部、より好ましくは5〜40質量部、特に好ましくは5〜20質量部の範囲である。
【0033】
本発明の接着剤組成物において、脂環式エポキシ基を有する化合物(A)/グリシジルエーテル基を有する化合物(B)の質量比は、
10/90〜50/50の範囲内である。(A)成分の質量比が
10未満であると接着強度が不十分となり、
90を超えると接着強度及び耐水性が不十分となるため好ましくない。より好ましく
は20/80〜30/70である。
グリシジルエーテル基を有する化合物(B)は、脂環式エポキシ基を有する化合物(A)と同様、エポキシ化合物である。これらの化合物は、ほぼ同様の効果を奏するが、(B)成分を(A)成分と併用することにより、硬化速度と硬化収縮、柔軟性、密着性等のバランスが良好となる。一方、(A)成分のみ含む紫外線硬化型接着剤組成物では、硬化後の接着力及び耐水性が悪く、紫外線照射後の塗布液の拡がり性も劣る。
【0034】
[水酸基を有する化合物(C)]
本発明の接着剤組成物において、(C)成分となる水酸基を含有する化合物は、後述する光カチオン重合開始剤によって開環し架橋構造を形成しうる前述のエポキシ化合物とのカチオン重合反応を進行させ、硬化収縮を低減させ、貯蔵弾性率を低下させる上で必須成分である。水酸基を有する化合物は、接着剤組成物の塗布作業性等の点より、常温で液状の化合物が望ましい。
【0035】
本発明における(C)成分;水酸基を有する化合物としては、ポリオール化合物及び水酸基含有液状ポリマー等が好適に用いられる。ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。水酸基含有液状ポリマーは、種類や製法は特に限定されるものではなく、水酸基含有液状アクリル系ポリマー、水酸基含有液状ポリイソプレン、水酸基含有液状ポリブタジエン、水酸基含有液状ポリオレフィン等が挙げられる。
【0036】
(i)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸とジオール類とのエステル化反応により得られる縮合系ポリエステルジオール類、ジオール類にラクトンを開環重合させることで得られるラクトン系ポリエステルジオール類等が挙げられる。
【0037】
縮合系ポリエステルジオール類に用いられる二塩基酸としては、芳香環を有しない脂肪族系や脂環族系の二塩基酸が好ましく、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、単独又は2種以上が併用される。
縮合系ポリエステルジオール類に用いられるジオールとしては、脂肪族系や脂環族系の芳香環を有さないジオールが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられ、単独又は2種以上が併用される。
【0038】
ラクトン系ポリエステルジオール類は、低分子ジオールに、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等を開環重合させることにより得ることができる。低分子ジオールとしては、前記の縮合系ポリエステルジオール類に用いられたのと同じジオールが挙げられる。
【0039】
これらのポリエステルポリオールのうち、二塩基酸とジオールから得られる縮合系ポリエステルジオール類が好ましい。具体的には、日本ポリウレタン工業(株)製)の「ニッポラン」シリーズ、川崎化成工業(株)製の「マキシモール」シリーズ、DIC(株)製の「ポリライト」シリーズ等の市販品が挙げられる。
【0040】
(ii)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとしては、2個の活性水素を有する化合物とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。2個の活性水素を有する化合物としては、水、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等が挙げられ、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0041】
アルキレンオキサイドは単独で使用しても、2種以上を併用してもよく、ポリエーテルポリオールの具体例としては、エチレンオキサイドを単独で使用したポリエチレングリコール、プロピレンオキサイドを単独で使用したポリプロピレングリコール、テトラヒドロフランを単独で使用したポリブチレングリコール、エチレンオキサイドとプレピレンオキサイドを併用したポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー等が挙げられる。
【0042】
(iii)ポリカーボネートポリオール
ポリカーボネートポリオールとしては、ジアルキルカーボネートとジオールとのエステル交換反応により得られるポリカーボネートジオールが挙げられる。
ジアルキルカーボネートとしては、芳香環を有しない脂肪族系や脂環族系のジアルキルカーボネートが好ましく、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。
ジオールとしては、前記のポリエステルジオールに用いられるジオールと同様、芳香環を有しない脂肪族系や脂環族系のジオールが好ましい。具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0043】
上記(i)〜(iii)のポリオール類のなかでは、ポリエステルポリオールは耐加水分解性に劣り、ポリエーテルポリオールは耐水性に劣る傾向があることより、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0044】
(C)成分の水酸基含有化合物の含有割合は、接着剤組成物全体を基準として、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは30〜80質量部、特に好ましくは40〜60質量部の範囲が良い。このような範囲で含有することにより、柔軟性、密着性が良好となる。
【0045】
[光カチオン重合開始剤(D)]
本発明における(D)成分;光カチオン重合開始剤としては、紫外線を受けてカチオンを発生する化合物であれば良い。光カチオン重合開始剤を配合することにより、常温でも硬化が可能となり、熱による部材の膨張又は収縮による歪を抑制でき、部材を良好に接着することができる。
【0046】
光カチオン重合開始剤(E)としては、芳香族スルホニウム塩(例えば、ダウケミカル社製のサイラキュアUVI−6990、6974、ADEKA社製のアデカオプトマーSP−150、SP−152、SP−170、SP−172、サンアプロ社製のCPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S等)、芳香族ヨードニウム塩(例えば、BASF社製のイルガキュア250)、芳香族ジアゾニウム塩等のオニウム塩、鉄−アレン錯体等が挙げられる。
【0047】
これらの光カチオン重合開始剤の中でも、無色透明の硬化膜が得られる化合物が好ましく用いられる。
【0048】
(D)成分の含有割合は、接着剤組成物全体を基準として、0.5〜10質量部とすることが好ましく、より好ましくは1〜5質量部、特に好ましくは1〜3質量部である。このような範囲で含有することにより、接着剤組成物の硬化性や接着強度が悪くなることがなく、イオン性物質が増加することで硬化物の耐水性や耐久性が低下することがない。
【0049】
[オキセタン化合物(E)]
本発明の接着剤組成物では、硬化速度をさらに向上させる目的で、(E)成分:オキセタン化合物を配合することができる。
【0050】
(E)成分の含有割合は、接着剤組成物全体を基準として、1〜60質量部とすることが好ましく、より好ましくは5〜30質量部、特に好ましくは5〜20質量部である。このような範囲で含有することにより、接着剤組成物の硬化性がさらに良好となる。
【0051】
オキセタン化合物(E)の具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、2−エチルヘキシルオキセタン、3−エチル−3−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、キシレンビスオキセタン等が挙げられる。
【0052】
本発明の接着剤組成物は、製造方法に特に制限はなく、上記の(A)、(B)、(C)及び(D)成分(必要により(E)成分を配合する)、並びに必要によりその他の添加剤の所定量を、均一になるまで混合、攪拌することによって得られる。
【0053】
接着剤組成物の粘度は、塗布工程で使用可能な塗布性、即ち薄膜で平滑性に優れた塗布面を得るために、25℃における粘度が150mPa・s以下であることが好ましい。
【0054】
添加剤としては、例えば、光透過率や色調を調整するための色素、可塑剤、補強剤、光増感剤、光安定剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、粘度調整剤、粘着付与剤(タッキファイヤー)、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤等を配合することができる。これらの添加剤は光学特性や硬化特性等を阻害しない範囲で、単独或いは組み合わせて用いることができる。
【0055】
また、本発明の接着剤組成物では、熱によって酸を発生する熱カチオン重合開始剤を配合することができる。本発明の接着剤組成物を硬化させる際に紫外線を照射することが困難である場合や、紫外線が透過しない部分を接着させる場合でも、接着剤組成物が熱カチオン重合開始剤を含有していれば、熱を付与することによって、硬化させることが可能となる。
【0056】
熱カチオン重合開始
剤としては、例えば、ベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド等が挙げられる。これらの開始剤は、市販品を容易に入手することが可能であり、例えば、サンエイドSI−60L、SI−80L、SI−100L(いずれも三新化学工業(株)製)、アデカオプトンCP−66、CP−77(いずれも(株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0057】
熱カチオン重合開始剤の含有割合は、接着剤組成物全体を基準として、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量部である。
【0058】
本発明の接着剤組成物は、硬化収縮率が5%以下であり、紫外線照射により硬化させて得られる硬化物の伸び率(25℃)が200%以上、貯蔵弾性率(25℃)が1×10
7Pa以下であることが好ましい。
【0059】
このように、硬化収縮率が5%以下、より好ましくは3%以下となるように調製することにより、接着剤組成物が硬化する際に蓄積される内部応力を低減させることができ、硬化物層と被接着部材との界面に歪が生じることを防止でき、画像表示装置等における表示ムラや硬化物の剥離を抑制することができる。
【0060】
また、硬化物の伸び率(25℃)を200%以上に調製することにより、硬化物をガラス板の熱変形に追随させることができるが、ガラス板とポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂等のプラスチック基材との貼り合わせを考慮すると、硬化物の伸び率(25℃)は200%〜400%の範囲が好ましい。
【0061】
また、硬化物の貯蔵弾性率(25℃)を1×10
7Pa以下、好ましくは1×10
5〜1×10
6Paに調製することにより、接着剤組成物が硬化する際に硬化物の収縮により生ずる内部応力を低減し、硬化物を被接着部材の反りに追随させることができる。
【0062】
本発明の接着剤組成物は、透明なガラス板又はプラスチック基材からなる積層体の製造に好適に使用することができ、具体的には、ガラス板とガラス板の積層体、ガラス板とプラスチック基材の積層体、プラスチック基材とプラスチック基材の積層体の製造に使用することができる。なかでも、機械的強度の高いガラス板を使用した積層体に使用することが好ましい。積層体の用途は特に限定されないが、特に好適な用途は光学部材である。
【0063】
ガラス板としては、液晶セルの液晶を挟持するガラス板や液晶セルの保護板として使用されているものを好ましく使用することができる。
【0064】
プラスチック基材としては、透光性のポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂、及びポリノルボルネン系樹脂等からなる板状、シート状又はフィルム状の保護板を好ましく使用することができる。保護板の表面又は裏面に積層する反射防止膜、アンチグレア膜、視野角制御膜、ITO膜等の透明又は非透明の光学フィルムの接着にも好ましく使用することができる。
【0065】
また、本発明の接着剤組成物は、偏光板の製造において、偏光子と保護フィルムとの接着にも好適に使用することができる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールの部分ケン化物等の親水性ポリマーからなるプラスチック基材に、ヨウ素や二色性染料等を吸着させて一軸延伸したものや、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等が挙げられる。保護フィルムとしては、TAC樹脂、COP樹脂、ポリノルボルネン系樹脂等からなるプラスチックフィルムが挙げられる。
【0066】
[積層体の製造方法]
本発明の接着剤組成物を用いて基材を接着する場合には、前記ガラス板又はプラスチック基材の貼合面のうち、少なくとも一方に、本発明の接着剤組成物からなる塗布液を塗布する塗布工程と、必要により乾燥(揮発分除去)させた後、前記塗布液を介して他のガラス板又はプラスチック基材を積層する貼合工程と、貼り合わされた状態で透光性基材の外側から紫外線を照射することにより接着剤を硬化させる硬化工程と、を含む接着方法により積層体を製造することができる。硬化工程の後に熱硬化工程を設けても良い。
【0067】
本発明の接着剤組成物を用いて遮光部を有する基材を接着する場合等には、前記ガラス板又はプラスチック基材の貼合面に、本発明の接着剤組成物からなる塗布液を塗布する塗布工程と、必要により乾燥(揮発分除去)させた後、前記塗布液に紫外線を照射することにより接着剤を半硬化させる硬化工程と、半硬化状態の接着層を介して遮光部を有する基材を積層する貼合工程と、を含む接着方法により積層体を製造することができる。接着剤の硬化を促進させるために、貼合工程の後に熱硬化工程を設けることが好ましい。塗布工程と硬化工程は、同時に実施しても良い。
【0068】
塗布工程における塗布方法は、例えば、ロールコート方式、スプレー方式、ディップ方式、刷毛塗り方式、インクジェット方式、静電塗装方式等の公知の方法を用いれば良い。塗布工程の雰囲気温度は15〜30℃が好ましい。塗膜厚さは特に限定されないが、硬化後の膜厚が50〜200μm程度となるよう塗布することが好ましい。
【0069】
貼合工程では、塗布液を介して基材を重ね合わせ、重ね合せた基材の両面を加圧する。
【0070】
硬化工程における紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0071】
照射強度は目的とする接着剤組成物ごとに決定されるものであり、特に限定されない。接着剤組成物への光照射時間は、硬化する接着剤組成物ごとに制御されるものであり、特に限定されないが、照射強度と照射時間との積で表わされる積算光量が10〜5,000mJ/cm
2となるように設定されることが好ましい。積算光量が小さすぎると、光カチオン重合開始剤の分解が十分でなく、接着剤組成物の硬化が不十分となる可能性があり、一方で積算光量を大きくしようとすると、照射時間が長くなり生産性向上には不利なものとなる。
【0072】
本発明の接着剤組成物を用いて貼り合わせてなる光学部材は、ガラス又はプラスチック基材に対する硬化収縮時の応力の影響を最小限に抑えることができ、光学部材の歪みや変形が殆んど発生しない。したがって、例えば偏光板に本発明の接着剤組成物を用いれば、表示ムラのない画像表示装置を提供することができ、硬化物の白化や剥離が生じない耐久性に優れる画像表示装置を提供することができる。
【0073】
さらに、本発明の接着剤組成物は、その透明性、柔軟性及び耐水性を活かして、液晶表示装置の液晶パネルと保護部材の間に存在する空間に充填して貼り合わせる接着剤としても用いることができる。これに限らず、例えば、有機EL装置(有機EL素子の封止剤)、プラズマディスプレイ装置(透明プラスチックフィルムと導電性金属箔の接着)等、種々の画像表示装置にも適用することができる。
【0074】
画像表示装置以外では、眼鏡レンズ、CDやDVDのピックアップ用レンズ、自動車ヘッドランプ用レンズ、プロジェクター用レンズ、光ファイバー、光導波路、光フィルター、光ディスク基板等の光学部材にも好適に使用される。
【0075】
その他、フレキソ印刷版、家具・建具・什器・自動車内装材等に用いられる化粧シート、半導体素子等の接着剤として使用することもできる。
【0076】
さらに、本発明の接着剤組成物は、透明性を必要としない用途に使用される場合は、充填剤として、コロイダルシリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー等の粉体や、ガラス繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維等の繊維が添加されていても良い。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。また、文中の「部」、「%」は質量基準であるものとする。
【0078】
配合した接着剤成分の略称と詳細を以下に記す。
(A)成分:脂環式エポキシ基を有する化合物
・セロキサイド2021P((株)ダイセル製)
3´,4´−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(2個の脂環式エポキシ基を有する化合物)
(B)成分:グリシジルエーテル基を有する化合物
・EX−212:デナコールEX−212(ナガセケムテックス(株)製)
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(2官能グリシジルエーテル)
・EX−821:デナコールEX−821(ナガセケムテックス(株)製)
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(n=4)
・EX−920:デナコールEX−920(ナガセケムテックス(株)製)
ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(n=3)
(C)成分:水酸基含有化合物
・UH2000:ARUFON UH−2000(東亞合成(株)製)
無溶剤アクリルポリオール、ガラス転移点:−55℃ 水酸基価:20 Mw:11,000
・4002:ニッポラン4002(日本ポリウレタン工業(株)製)
ポリエステルジオール、水酸基価:107〜117
・T5650J:デュラノールT5650J(旭化成(株)製)
ポリカーボネートジオール、水酸基価:130〜150
・PEG600:ポリエチレングリコール600(純正化学(株)製)
ポリエーテルジオール、水酸基価:570〜630
・Poly ip(出光興産(株)製)
ポリイソプレンポリオール、水酸基価:47 Mn(ASTM D 2503):2,500
・R−45HT:Poly bd R−45HT(出光興産(株)製)
ポリブタジエンポリオール、水酸基価:47 Mn(ASTM D 2503):2,800
(D)成分:光カチオン重合開始剤
・#250:イルガキュア250(BASF社製)
(E)成分:オキセタン化合物
・XDO:アロンオキセタンOXT−121(東亞合成(株)製)
キシリレンビスオキセタン
【0079】
(
参照例1〜2、実施例
3〜10、比較例1〜6)
表1に示した各成分と量を配合し、接着剤組成物を調製した。部材は10cm×10cm、厚さ1mmのガラス板を使用した。
[工程1]:接着剤組成物を一方の部材に滴下し、もう一方の部材を貼り合わせた後、UV照射(Fusion製Dバルブ、積算光量:3000mJ/cm
2、最大照度:600mW/cm
2)をして硬化させ、接着剤を介して2枚の部材を貼り合わせた試験片を作製した。
【0080】
(
参照例11〜12、実施例
13〜20、比較例7〜12)
表
2に示した各成分と量を配合し、接着剤組成物を調製した。部材は10cm×10cm、厚さ1mmのガラス板を使用した。
[工程2]:接着剤組成物を一方の部材に滴下し、UV照射(Fusion製Dバルブ、積算光量:2000mJ/cm
2、最大照度:600mW/cm
2)をした後、もう一方の透明部材と貼り合わせ、接着剤を介して2枚の部材を貼り合わせた試験片を得た。
【0081】
(実施例21〜22、比較例13)
[遮光部を有する部材の紫外線硬化]
遮光部を有する部材の作成:
部材は10cm×10cm、厚さ1mmのガラス板を使用した。オリジツーク#100クロ(オリジン電気(株)製アクリルシリコン塗料)/硬化剤ポリハードGを混合比4/1で混合し、ガラス板の縁に沿って2cmの幅で、膜厚20μmになるように塗装し、遮光部を作製した。このときの、遮光部分の光線透過率は400〜800nmの範囲で0%であった。
【0082】
(実施例21)
実施例6で配合した接着剤組成物を用いた。
[工程3]:
図1の工程に従い、接着剤組成物をガラス板に塗布し、UV照射後、遮光部を有するガラス板を貼り合わせ、接着剤を介して2枚の部材を貼り合わせた試験片を得た。UV照射条件:Fusion製Dバルブ、積算光量:3,000mJ/cm
2、最大照度:600mW/cm
2。
【0083】
(実施例22)
実施例21で試験片を作製後、更に70℃×10分の熱硬化工程を行い試験片を得た。
【0084】
(比較例13)
[ラジカル重合硬化型
接着剤]
UN7700(2官能ウレタンアクリレート、根上工業(株)製)50質量部、CHA(シクロヘキシルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製)28質量部、ポリカーボネートジオール(旭化成(株)製デュラノールT5650J)20質量部、イルガキュア184(光ラジカル重合開始剤、BASF(株)社製)2質量部の配合でラジカル重合硬化型接着剤を
調製した。
接着剤を、10cm×10cm、厚さ1mmのガラス板に塗布した後、実施例21と同じ[工程3]に従い、塗布、UV照射、貼り合わせを行い、接着剤を介して2枚の部材を貼り合わせた試験片を得た。UV照射条件:Fusion製Dバルブ、積算光量:3000mJ/cm
2、最大照度:600mW/cm
2。
【0085】
(比較例14)
比較例13で作製した接着剤組成物を用いた。
[工程4]:上部ガラス板として、工程3で用いた遮光部を有するガラス板を用いたこと以外は、
参照例1の工程1と同様にして、試験片を得た。
【0086】
上記の
参照例、実施例及び比較例で得た試験片の評価は、以下の方法に従った。
【0087】
(評価方法)
(1)透過率:
分光光度計(U−3000、日立ハイテクノロジーズ社製)で400〜800nmの範囲で、試験片の光線透過率を測定(ブランク:2mm厚ガラス板)。
(2)伸び:
300μm厚の接着剤組成物の硬化膜を作成し、引っ張り試験機(島津製作所EZ−S 500N)で5mm/minの速度で接着剤組成物を引っ張り、切断するまでの伸びを測定。
(3)貯蔵弾性率:
500μm厚の接着剤組成物の硬化膜を作成し、引っ張りモード、周波数1HZで粘弾性を測定(粘弾性測定装置:SIIナノテクノロジー社製DMS6100)。
(4)硬化収縮率:
電子比重計(アルファーミラージュ社製SD−200L)を用いて液体比重、固体比重を測定し次式により算出。
硬化収縮率%=[(硬化後の比重−硬化前の比重)/硬化後の比重]×100
(5)接着強度:
試験片の2枚のガラスを上下に引っ張り試験機で引き剥がし接着強度を測定。
(6)耐湿性:
80℃90%RHの環境に試験片を500h放置し、取り出し後に外観を観察。
(7)耐沸騰水性:
沸騰水に試験片を3h浸漬し、取り出し後に外観を観察。以下の評価基準にて評価。
○:変化無し、合格
△:僅かに白化、合格
×:白化、不合格
××:剥離、不合格
(8)貼り合わせ後の塗布液の濡れ拡がり:
塗布液にUV照射後、室温で規定の時間放置後、部材同士を貼り合わせ。貼り合わせに要した接着剤の濡れ広がりを目視で評価。
○:合格、スムーズに部材全体に濡れ拡がり
△:合格、時間は要するが部材全体に濡れ拡がり
△×:不合格、濡れ拡がるが不十分
×:不合格、ほぼ全く濡れ拡がらない
【0088】
以上の評価結果を表1、表2、表3に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】