特許第5946422号(P5946422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946422
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】水性クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20160623BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20160623BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20160623BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20160623BHJP
   C11D 1/74 20060101ALI20160623BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20160623BHJP
   C11D 1/825 20060101ALI20160623BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   A61K8/39
   A61Q1/14
   A61Q19/10
   A61K8/86
   C11D1/74
   C11D1/722
   C11D1/825
   C11D17/08
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-56088(P2013-56088)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-181206(P2014-181206A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】100137419
【弁理士】
【氏名又は名称】桂田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】岡本 将典
(72)【発明者】
【氏名】松尾 真樹
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−214406(JP,A)
【文献】 特開2006−241151(JP,A)
【文献】 特開平07−291830(JP,A)
【文献】 特開平09−040525(JP,A)
【文献】 特開2011−126809(JP,A)
【文献】 特開2009−035498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−99/00
DB等 DWPI(Thomson Innovation)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を含み、前記成分(A)の含有量が50〜99質量%である水性クレンジング化粧料。
成分(A):水
成分(B):酸化エチレンの平均付加モル数が6〜8のポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル
成分(C):酸化エチレンの平均付加モル数が10〜30のポリオキシエチレンジ分岐脂肪酸グリセリルおよび酸化エチレンの平均付加モル数が3〜10のポリオキシエチレンモノ分岐脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種
成分(D):ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリオキシエチレン(8)ポリオキシプロピレン(5)ポリオキシブチレン(3)グリセリルエーテル、ポリオキシプロピレン(14)ジグリセリルエーテルおよびコハク酸ビスエトキシジグリコールから選ばれる少なくとも1種
【請求項2】
前記成分(C)が、酸化エチレンの平均付加モル数が20のジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルおよび/又は酸化エチレンの平均付加モル数が8のポリオキシエチレンイソステアリン酸である請求項1に記載の水性クレンジング化粧料。
【請求項3】
前記成分(B)の含有量が0.5〜5質量%、前記成分(C)の含有量が0.5〜5質量%であり、かつ成分(B)と成分(C)の質量含有比(B:C)が5:1〜1:2の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性クレンジング化粧料。
【請求項4】
さらに、下記成分(E)を含有する請求項1〜3の何れかに記載の水性クレンジング化粧料。
成分(E):緩衝液
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のクレンジング化粧料は、メイクなどの油脂汚れ除去成分として非イオン性界面活性剤を用いて、拭き取り又は洗い流しを容易にした水性のクレンジング化粧料が主流となりつつある。これら水性のクレンジング化粧料の特徴は、油性のクレンジング化粧料と比較すると、簡便にクレンジングが行えるだけでなく使用感にも優れる点にある。
【0003】
具体的には、例えば、親水性ノニオン界面活性剤と水を含有し、油性物質を含有しない低刺激性クレンジング組成物(例えば、特許文献2を参照)、ノニオン性界面活性剤とアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体を含有し、油性成分の含有量が2質量%以下であるクレンジング化粧料(例えば、特許文献3を参照)、HLBが12未満と12以上の2種類のノニオン性界面活性剤とアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体と多価アルコールとを含有するクレンジング化粧料(例えば、特許文献4を参照)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、従来の試みでは、簡便かつ容易にクレンジングを行うことはできるものの、油性のクレンジング化粧料と比較して十分なクレンジング効果(油脂汚れ除去効果)が得られ難いといった課題がある。そのため、クレンジング効果を高める観点から、水性のクレンジング化粧料の主たる油脂汚れ除去成分である非イオン性界面活性剤を高配合とすることが考えられる。これにより、クレンジング効果が高まる反面、クレンジング時に眼粘膜や皮膚に対して好ましくない刺激が生じるといった問題がある。また、保存時に活性剤を含む水性剤型特有の現象である分離などが生じ易くなり、製剤安定性が悪化するといった問題もある。一方で、クレンジング時の刺激を低減させることを主たる目的とすると、十分なクレンジング効果が得られないといった問題が生じる。
【0005】
このように従来の水性のクレンジング化粧料では、優れたクレンジング効果を付与するといった課題と、刺激を低減するといった相反する課題に対し、双方の課題を十分に解決できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−308518号公報
【特許文献2】特開平8−301725号公報
【特許文献3】特開平9−87139号公報
【特許文献4】特開2002−284672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、従来の水性クレンジング化粧料と対比して、メイクなどの油脂汚れを除去するクレンジング効果に格段に優れるだけでなく、眼粘膜や皮膚に対する刺激を低減した水性クレンジング化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、
〔1〕下記成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を含み、前記成分(A)の含有量が50〜99質量%である水性クレンジング化粧料、
成分(A):水
成分(B):酸化エチレンの平均付加モル数が6〜8のポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル
成分(C):酸化エチレンの平均付加モル数が10〜30のポリオキシエチレンジ分岐脂肪酸グリセリルおよび酸化エチレンの平均付加モル数が3〜10のポリオキシエチレンモノ分岐脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種
成分(D):ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリオキシエチレン(8)ポリオキシプロピレン(5)ポリオキシブチレン(3)グリセリルエーテル、ポリオキシプロピレン(14)ジグリセリルエーテルおよびコハク酸ビスエトキシジグリコールから選ばれる少なくとも1種
〔2〕前記成分(C)が、酸化エチレンの平均付加モル数が20のジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルおよび/又は酸化エチレンの平均付加モル数が8のポリオキシエチレンイソステアリン酸である前記〔1〕に記載の水性クレンジング化粧料、
〔3〕前記成分(B)の含有量が0.5〜5質量%、前記成分(C)の含有量が0.5〜5質量%であり、かつ成分(B)と成分(C)の質量含有比(B:C)が5:1〜1:2の範囲であることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の水性クレンジング化粧料、
〔4〕さらに、下記成分(E)を含有する請求項1〜3の何れかに記載の水性クレンジング化粧料、
成分(E):緩衝液
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性クレンジング化粧料は、従来の水性クレンジング化粧料と対比して、格段に優れたクレンジング効果(油脂汚れ除去効果)を発揮するにもかかわらず、非イオン性界面活性剤特有の刺激を低減することができるという効果を奏する。
【0010】
また、本発明の水性クレンジング化粧料は、非イオン性界面活性剤が含まれているにもかかわらず、分離が生じず格段に優れた製剤安定性を有するという効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
成分(A)の水は、化粧料原料として使用できるものであれば特に限定されないが、通常、精製水が用いられる。本発明における成分(A)の含有量は、水性とする観点から、化粧料中、50〜99質量%とされ、好ましくは60〜97質量%とするのが良い。その理由は、50質量%未満の場合、べたつき感が生じて使用感に劣り、また、99質量%を超えて配合すると、十分なクレンジング効果が得られないからである。
【0012】
成分(B)は、クレンジング効果、並びに水への溶解性の観点から、ポリオキシエチレン(6)(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ポリオキシエチレン(7)(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ポリオキシエチレン(8)(カプリル/カプリン酸)グリセリルといった酸化エチレンの平均付加モル数が6〜8のポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリルが用いられる。これら成分(B)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0013】
尚、成分(B)は、市販品をそのまま使用することができる。ポリオキシエチレン(6)(カプリル/カプリン酸)グリセリルの市販品としては、例えば、ハイバーオイルCC−6(商品名,交洋ファインケミカル社製)、ソフチゲン767(商品名,サソール社製)などが挙げられる。ポリオキシエチレン(7)(カプリル/カプリン酸)グリセリルの市販品としては、例えば、CETIOL HE810(商品名,コグニス ジャパン社製)などが挙げられる。ポリオキシエチレン(8)(カプリル/カプリン酸)グリセリルの市販品としては、例えば、MファインオイルMCG−8M(商品名,ミヨシ油脂社製),L.A.S(商品名,ガテフォッセ社製)などが挙げられる。
【0014】
成分(B)の含有量は、特に限定されないが、通常、優れたクレンジング効果を発揮させる観点から、化粧料中、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。また、刺激を低減する観点から、7質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下である。これらの観点から、成分(B)の含有量は、0.1〜7質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0015】
成分(C)は、クレンジング効果、並びに水への溶解性の観点から、酸化エチレンの平均付加モル数が10〜30のポリオキシエチレンジ分岐脂肪酸グリセリルが用いられる。本明細書においては、前記「酸化エチレンの平均付加モル数が10〜30のポリオキシエチレンジ分岐脂肪酸グリセリル」を「成分(C1)」と称する場合がある。
【0016】
具体的な成分(C1)としては、例えば、酸化エチレンの平均付加モル数が10であるジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(ジイソステアリン酸PEG−10グリセリル)、酸化エチレンの平均付加モル数が20であるジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(ジイソステアリン酸PEG−20グリセリル)、酸化エチレンの平均付加モル数が30であるジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(ジイソステアリン酸PEG−30グリセリル)が挙げられる。これら成分(C1)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0017】
これら成分(C1)の中でも、クレンジング効果、並びに水への溶解性をさらに高める観点から、酸化エチレンの平均付加モル数が20であるジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(ジイソステアリン酸PEG−20グリセリル)を用いることが好ましい。
【0018】
尚、成分(C1)は、市販品をそのまま使用することができる。ジイソステアリン酸PEG−10グリセリルの市販品としては、例えば、EMALEX GWIS−210EX(商品名,日本エマルジョン社製)などが挙げられる。ジイソステアリン酸PEG−20グリセリルの市販品としては、例えば、EMALEX GWIS−220EX(商品名,日本エマルジョン社製)などが挙げられる。ジイソステアリン酸PEG−30グリセリルの市販品としては、例えば、EMALEX GWIS−230EX(商品名,日本エマルジョン社製)などが挙げられる。
【0019】
また、成分(C)は、クレンジング効果、並びに水への溶解性の観点から、酸化エチレンの平均付加モル数が3〜10のポリオキシエチレンモノ分岐脂肪酸エステルを用いることもできる。本明細書においては、前記「酸化エチレンの平均付加モル数が3〜10のポリオキシエチレンモノ分岐脂肪酸エステル」を「成分(C2)」と称する場合がある。
【0020】
具体的な成分(C2)としては、例えば、酸化エチレンの平均付加モル数が3であるポリオキシエチレンイソステアリン酸(イソステアリン酸PEG−3)、酸化エチレンの平均付加モル数が4であるポリオキシエチレンイソステアリン酸(イソステアリン酸PEG−4)、酸化エチレンの平均付加モル数が6であるポリオキシエチレンイソステアリン酸(イソステアリン酸PEG−6)、酸化エチレンの平均付加モル数が8であるポリオキシエチレンイソステアリン酸(イソステアリン酸PEG−8)、酸化エチレンの平均付加モル数が10であるポリオキシエチレンイソステアリン酸(イソステアリン酸PEG−10)が挙げられる。これら成分(C2)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0021】
これら成分(C2)の中でも、クレンジング効果、並びに水への溶解性をさらに高める観点から、酸化エチレンの平均付加モル数が8であるポリオキシエチレンイソステアリン酸(イソステアリン酸PEG−8)を用いることが好ましい。
【0022】
尚、成分(C2)は、市販品をそのまま使用することができる。イソステアリン酸PEG−3の市販品としては、例えば、EMALEX PEIS−3EX(商品名,日本エマルジョン社製)などが挙げられる。イソステアリン酸PEG−4の市販品としては、例えば、ノニオン IS−2(商品名,日油社製)などが挙げられる。イソステアリン酸PEG−6の市販品としては、例えば、EMALEX PEIS−6EX(商品名,日本エマルジョン社製)などが挙げられる。イソステアリン酸PEG−8の市販品としては、例えば、EMALEX PEIS−8EX(商品名,日本エマルジョン社製),ノニオン IS−4(商品名,日油社製)などが挙げられる。イソステアリン酸PEG−10の市販品としては、例えば、EMALEX PEIS−10EX(商品名,日本エマルジョン社製)などが挙げられる。
【0023】
本発明において成分(C)は、上記した成分(C1)および成分(C2)の中から選ばれる少なくとも1種が用いられる。成分(C)の含有量は、特に限定されないが、通常、優れたクレンジング効果を発揮させる観点から、化粧料中、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。また、刺激を低減する観点から、7質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下である。これらの観点から、成分(C)の含有量は、0.1〜7質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0024】
本発明では、上記した成分(B)および成分(C)を併用することにより、従来の水性クレンジング化粧料と対比して、格段に優れたクレンジング効果を発揮させることができるようになる。
【0025】
このような本発明の格段に優れたクレンジング効果を十分に発揮させるためには、上記した成分(B)と成分(C)とを、質量含有比(B:C)として、10:1〜1:3の範囲で調製することが好ましく、5:1〜1:2の範囲で調製することがより好ましく、2:1〜1:1の範囲で調製することが最も好ましい。
【0026】
成分(D)は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリオキシエチレン(8)ポリオキシプロピレン(5)ポリオキシブチレン(3)グリセリルエーテル(PEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリン)、ポリオキシプロピレン(14)ジグリセリルエーテル(PPG−14ジグリセリル)およびコハク酸ビスエトキシジグリコールから選ばれる少なくとも1種が用いられる。尚、本明細書中において、括弧内の数値記載は、酸化エチレンの平均付加モル数、酸化プロピレンの平均付加モル数、並びに酸化ブチレンの平均付加モル数を表す。
【0027】
上記した成分(D)から選ばれる少なくとも1種を、水性クレンジング化粧料に配合させることで、クレンジング効果をさらに高めるだけでなく、非イオン性界面活性剤特有の刺激を低減させることができるようになる。また、驚くべきことに、本発明の成分(D)を含む水性クレンジング化粧料は、保存時に活性剤を含む水性剤型特有の現象である分離が生じ難くなり、格段に優れた製剤安定性を発揮させることができるようにもなる。
【0028】
尚、成分(D)は、市販品をそのまま使用することができる。ジエチレングリコールモノエチルエーテルの市販品としては、例えば、シーホゾール DG−S(商品名,日本触媒社製)などが挙げられる。ポリオキシエチレン(8)ポリオキシプロピレン(5)ポリオキシブチレン(3)グリセリルエーテルの市販品としては、例えば、ウィルブライド S−753(商品名,日油社製)などが挙げられる。ポリオキシプロピレン(14)ジグリセリルエーテルの市販品としては、例えば、SY−DP14T(商品名,阪本薬品工業社製)などが挙げられる。コハク酸ビスエトキシジグリコールの市販品としては、例えば、ハイアクオスター DCS(商品名,高級アルコール工業社製)などが挙げられる。
【0029】
成分(D)の含有量は、特に限定されないが、通常、クレンジング効果を高める観点、さらには、製剤安定性をも付与する観点から、化粧料中、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、使用感の観点から、40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下である。これらの観点から、成分(D)の含有量は、0.5〜40質量%が好ましく、より好ましくは1〜30質量%である。
【0030】
また、本発明の水性クレンジング化粧料には、製剤安定性を高める観点から、成分(E)として緩衝液を含有させることができる。具体的な成分(E)としては、例えば、塩酸と塩化カリウムから調製される塩酸−塩化カリウム緩衝液(pH1.0〜2.2);グリシンと塩酸から調製されるグリシン−塩酸緩衝液(pH2.2〜3.6);クエン酸とクエン酸ナトリウムから調製されるクエン酸緩衝液(pH3.0〜6.2);酢酸と酢酸ナトリウムから調製される酢酸緩衝液(pH3.6〜5.6);クエン酸とリン酸水素二ナトリウムから調製されるクエン酸−リン酸緩衝液(pH2.6〜7.0);リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムから調製されるリン酸緩衝液(pH5.8〜8.0);トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと塩酸から調製されるトリス−塩酸緩衝液(pH7.2〜9.0);グリシンと水酸化ナトリウムから調製されるグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.6〜10.6);炭酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムから調製される炭酸−重炭酸緩衝液(pH9.2〜10.6)などの易溶解性の塩の水溶液が挙げられる。
【0031】
本発明においては、上記した成分(E)の中でも、製剤安定性をさらに高める観点から、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液を用いることが好ましく、クエン酸緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、リン酸緩衝液を用いることがより好ましい。
【0032】
成分(E)の含有量は、特に限定されないが、通常、製剤安定性を高める観点から、化粧料中、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上である。また、製剤安定性およびクレンジング効果の観点から、1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以下である。これらの観点から、成分(E)の含有量は、好ましくは0.01〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0033】
また、本発明の水性クレンジング化粧料には、使用感を高める観点から、成分(F)として多価アルコールを含有させることもできる。用いられる成分(F)としては、グリコール類、グリセリン類などが挙げられる。具体的なグリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオールなどが挙げられる。また、具体的なグリセリン類としては、例えば、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどが挙げられる。これら成分(F)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0034】
成分(F)の含有量は、特に限定されないが、通常、使用感を高める観点から、化粧料中、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上である。また、べたつき感を抑える観点から、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。これらの観点から、成分(F)の含有量は、0.01〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜20質量%である。
【0035】
さらに、本発明の水性クレンジング化粧料には、べたつき感を抑えて使用感を向上させる観点から、成分(G)としてスチレン化合物を含有させることもできる。具体的な成分(G)としては、例えば、酢酸ビニル・スチレン共重合体、ビニルピロリドン・スチレン共重合体、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体、アクリル酸アルキル・アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリル酸アミド・スチレン共重合体などが挙げられる。また、本発明においては、上記した共重合体を水性媒体に分散したエマルションの形態のものを用いても良い。これら成分(G)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0036】
好適な成分(G)としては、クレンジング時のべたつき感を低減させ使用感を高める観点から、ビニルピロリドン・スチレン共重合体、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体、アクリル酸アミド・スチレン共重合体を用いることが好ましい。
【0037】
尚、成分(G)は、市販品をそのまま使用することができる。ビニルピロリドン・スチレン共重合体の市販品としては、例えば、アンタラ430(商品名,アイエスピー社製)などが挙げられる。アクリル酸アルキル・スチレン共重合体の市販品としては、例えば、アキュゾールOP301(商品名,ローム・アンド・ハース社製)などが挙げられる。アクリル酸アミド・スチレン共重合体の市販品としては、例えば、アキュゾールOP303P(商品名,ローム・アンド・ハース社製),ヨドゾールGH52(商品名,日本エヌエスシー社製)などが挙げられる。
【0038】
成分(G)の含有量は、べたつき感を抑えて使用感を向上させる観点から、化粧料中、0.01〜3質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜2質量%である。
【0039】
また、本発明の水性クレンジング化粧料は、実質的にエタノールを含有させないことが好ましい。これにより、施術後にぬるま湯による洗い流しや後洗顔を行わずとも刺激をより低減させることが可能となる。尚、本発明における「実質的にエタノールを含有させない」とは、「別途、エタノールを含有させることはしない」という意味であり、各配合成分中に含まれる微量のエタノールまでを除外するものではない。
【0040】
本発明の水性クレンジング化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧料に用いられる成分、例えば、成分(B)および成分(C)以外の界面活性剤;紫外線吸収剤、粉体、酸化防止剤、防腐剤、香料、着色剤、キレート剤、清涼剤、増粘剤、植物抽出液、ビタミン類、中和剤、アミノ酸などの添加剤などを適宜、その用途、目的に応じて配合することができる。
【0041】
尚、本発明の水性クレンジング化粧料は、顔面の皮脂やメイクなどによる油脂の除去に格段に優れた効果を発揮させることから、メイクアップ除去剤、フェイスマッサージ剤として好適に用いられる。
【0042】
また、本発明の水性クレンジング化粧料の使用方法としては、使用後の皮膚のつっぱり感を抑制する観点、並びに過度の脱脂によって乾燥肌となることを抑制する観点から、施術後にぬるま湯による洗い流しや後洗顔を行わないことが好ましい。より好ましい使用方法としては、コットンや不織布などに水性クレンジング化粧料を含浸させて適用部位に施術する方法、若しくは、水性クレンジング化粧料を適用部位に施術後、コットンや不織布などで拭き取る方法などを例示することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。また、表中括弧内の数値は、酸化アルキレンの平均付加モル数を表す。
【0044】
実施例および比較例では、下記の成分を用いた。
((B)成分)
ポリオキシエチレン(6)(カプリル/カプリン酸)グリセリル(交洋ファインケミカル社製,〔ハイバーオイルCC−6〕)
ポリオキシエチレン(7)(カプリル/カプリン酸)グリセリル(コグニス ジャパン社製,〔CETIOL HE810〕)
ポリオキシエチレン(8)(カプリル/カプリン酸)グリセリル(ミヨシ油脂社製,〔MファインオイルMCG−8M〕)
((C)成分)
ジイソステアリン酸PEG−10グリセリル(日本エマルジョン社製,〔EMALEX GWIS−210EX〕)
ジイソステアリン酸PEG−20グリセリル(日本エマルジョン社製,〔EMALEX GWIS−220EX〕)
イソステアリン酸PEG−8(日本エマルジョン社製,〔EMALEX PEIS−8EX〕)
イソステアリン酸PEG−10(日本エマルジョン社製,〔EMALEX PEIS−10EX〕)
((D)成分)
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(日本触媒社製,〔シーホゾール DG−S〕)
PEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリン(日油社製,〔ウィルブライド S−753〕)
PPG−14ジグリセリル(阪本薬品工業社製,〔SY−DP14T〕)
コハク酸ビスエトキシジグリコール(高級アルコール工業社製,〔ハイアクオスター DCS〕)
(その他成分)
ポリオキシエチレン(7)ポリオキシプロピレン(2)デシルエーテル(日本エマルジョン社製,〔EMALEX DAPE−0207〕)
ポリオキシエチレン(8)オレイルエーテル(日本エマルジョン社製,〔EMALEX 508〕)
ポリオキシエチレン(7)アルキル(12〜14)エーテル(日光ケミカルズ社製,〔NIKKOL BT−7〕)
モノイソステアリン酸PEG−20グリセリル(日本エマルジョン社製,〔EMALEX GWIS−220〕)
トリイソステアリン酸PEG−20グリセリル(日本エマルジョン社製,〔EMALEX GWIS−320〕)
PPG−9ジグリセリル(阪本薬品工業社製,〔SY−DP9〕)
シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール(日本精化社製,〔Neosolu−Aqulio〕)
ビニルピロリドン・スチレン共重合体(アイエスピー社製,〔アンタラ430〕)
ジプロピレングリコール(旭硝子社製,〔DPG−FC〕)
【0045】
(試料の調製1)
表1〜表4に記した組成に従い、実施例1〜30および比較例1〜18の各水性クレンジング化粧料を常法に準じてそれぞれ調製し、下記評価に供した。結果をそれぞれ表1〜
表4に併記する。
尚、評価はすべて、23℃、湿度60%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0046】
(試験例1:メイク汚れ(マスカラ)除去力の測定)
10cm×10cmのバイオスキンプレート白色(商品名,ビューラック社製)に、ウォータープルーフマスカラ(商品名:MAYBELLINE VOLUME EXPRESS turbo boostN WATERPROOF ジェットブラック,ロレアル社製)0.02gを2cm×2cm四方に均一に塗り延ばし減圧条件下のデシケーターにて一晩乾燥した。
次いで、実施例および比較例で得られた各試料1gを1.5cm×1.5cm四方のコットンに含浸させ、摩擦感テスター(KES−SE、カトーテック社製)を用いて、上記試料含有コットンに400gfの荷重をかけてバイオスキンプレート白色上を拭き取るように4cm引っ張った。そして、拭き取り操作を15回繰り返した。
【0047】
尚、評価は、バイオスキンプレート白色上の2cm×2cm四方におけるマスカラの除去された面積値を画像解析により求め、下記式により除去率を算出して下記評価基準に従って評価した。
除去率(%)=(マスカラが除去された面積値/塗布面積値)×100
【0048】
<メイク汚れ(マスカラ)除去力の評価基準>
○(良好):除去率が、70%以上
△(不十分):除去率が、30%以上70%未満
×(不良):除去率が、30%未満
【0049】
(試験例2:官能評価)
アイメイクを施した女子評価パネル20名により、実施例および比較例で得られた各試料をコットンに含浸させ、実際にアイメイクを拭き取るように使用してもらい、クレンジング施術時の「刺激」、並びに「除去効果」について下記の評価基準に従って官能評価した。
【0050】
尚、「刺激」とは、目元をクレンジング中に眼に沁みることで感じる「ピリピリ感」又は「チクチク感」のことを言う。
【0051】
<刺激の評価基準>
◎(非常に良好):20名中16名以上が、刺激はないと回答
○(良好):20名中11〜15名が、刺激はないと回答
△(不十分):20名中6〜10名が、刺激はないと回答
×(不良):20名中5名以下が、刺激はないと回答
【0052】
<除去効果の評価基準>
◎(非常に良好):20名中16名以上が、除去効果に優れると回答
○(良好):20名中11〜15名が、除去効果に優れると回答
△(不十分):20名中6〜10名が、除去効果に優れると回答
×(不良):20名中5名以下が、除去効果に優れると回答
【0053】
(試験例3:製剤安定性の評価)
実施例および比較例で得られた各試料を、50mL容の透明ガラス容器にそれぞれ封入し、40℃の恒温槽に夫々4週間保存したときの系の状態を目視観察して、以下の評価基準に従って評価した。
【0054】
<製剤安定性の評価基準>
○(良好):析出物は一切認められず、均一な一層系の状態を呈している
△(不十分):若干の析出物が認められるが、均一な一層系の状態を呈している
×(不良):明らかな析出物が認められ、二層に分離している。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
表1〜表4の結果から、各実施例の本発明の水性クレンジング化粧料は、各比較例のものと対比して、クレンジング効果(メイク汚れの除去効果)に格段優れた効果を有しているにもかかわらず、刺激がないことが分かる。また、本発明の水性クレンジング化粧料は、非イオン性界面活性剤が含まれているにもかかわらず、分離が生じず格段に優れた製剤安定性を有していることが分かる。
【0060】
これに対し、本発明の必須構成成分を充足しない比較例1〜3、7〜8、10、13〜15の水性クレンジング化粧料では、優れたクレンジング効果が得られないばかりでなく、製剤安定性にも劣っていることが分かる。さらに、本発明の必須構成成分を他の成分へ置き換えた比較例4〜6、9、11〜12、16〜18の水性クレンジング化粧料では、優れたクレンジング効果が得られず、製剤安定性に劣るものや、優れたクレンジング効果が得られる反面、刺激が生じるものであり、本発明の効果を十分に奏し得ないものであった。
【0061】
以下、本発明に係る水性クレンジング化粧料の処方例を示す。尚、含有量は質量%である。
【0062】
(処方例1)
精製水 75.0
ジプロピレングリコール 5.0
PEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリン 7.0
PPG−14ジグリセリル 3.0
ポリオキシエチレン(6)(カプリル/カプリン酸)グリセリル 3.0
ジイソステアリン酸PEG−20グリセリル 3.0
クエン酸緩衝液 0.3
1,2−オクタンジオール 0.3
フェノキシタノール 0.3
ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム 0.1
1,3−ブチレングリコール 3.0
合 計 100.0
【0063】
(処方例2)
精製水 85.1
ジプロピレングリコール 7.0
PEG/PPG/ポリブチレングリコール−8/5/3グリセリン 1.5
PPG−14ジグリセリル 1.5
ポリオキシエチレン(6)(カプリル/カプリン酸)グリセリル 2.0
イソステアリン酸PEG−8 1.0
リン酸緩衝液 0.2
メチルパラベン 0.3
オクトキシグリセリン 0.3
ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム 0.1
ポリエチレングリコール(PEG−400) 1.0
合 計 100.0