特許第5946424号(P5946424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946424
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】タイヤ試験機
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20160623BHJP
   G01B 21/12 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   G01M17/02 B
   G01B21/12
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-96415(P2013-96415)
(22)【出願日】2013年5月1日
(65)【公開番号】特開2014-219213(P2014-219213A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】若園 武彦
(72)【発明者】
【氏名】車地 正信
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−101725(JP,A)
【文献】 特開平09−257661(JP,A)
【文献】 特開2005−313799(JP,A)
【文献】 特開2005−055380(JP,A)
【文献】 特開2006−226859(JP,A)
【文献】 特開平10−335417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
G01B 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象であるタイヤを回転可能に装着するスピンドル軸と、
前記タイヤ側に近接、若しくは当該タイヤ側から離反すると共に、前記スピンドル軸に装着されたタイヤの径と外形の変形量を検出するタイヤ外形計測センサと、
探触子と前記探触子がタイヤに接触する状況を検出する接触検出部とを有すると共に、前記探触子がタイヤに接触することで、前記タイヤ外形計測センサがタイヤに衝突することを回避する衝突防止センサと、を備えているタイヤ試験機において、
前記探触子は、前記衝突防止センサの接触検出部から棒状に突設されており、その先端若しくは中途部が屈曲した形状に形成されていることを特徴とするタイヤ試験機。
【請求項2】
前記衝突防止センサは、前記タイヤ外形計測センサに配備されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ試験機。
【請求項3】
前記探触子は、前記衝突防止センサの接触検出部から前記タイヤの半径方向に突設された後、当該タイヤの幅方向を向いて直角に曲げられてなる形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ試験機。
【請求項4】
前記探触子は、前記衝突防止センサの接触検出部から前記タイヤの半径方向に突設された後、当該タイヤの幅方向を向いて直角に曲げられ、その後タイヤの半径方向に直角に曲げられてなる、平面視でコ字形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ試験機。
【請求項5】
前記探触子は、前記衝突防止センサの接触検出部から前記タイヤの半径方向に突設された後、当該タイヤの幅方向を向いて直角に2方向に分岐されてなる、平面視でT字形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ試験機。
【請求項6】
前記探触子は、前記衝突防止センサの接触検出部から前記タイヤの半径方向に突設された後、当該タイヤの幅方向を向いて直角に2方向に分岐され、その後タイヤの半径方向に直角に曲げられてなる、平面視でE字形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤ試験機。
【請求項7】
前記探触子は、線状の弾性金属材で形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ外形計測センサとタイヤとの衝突を回避するための衝突防止センサが備えられたタイヤ試験機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤの生産ラインでは、タイヤのユニフォミティ(均一性)を測定するタイヤ試験がタイヤ試験機で行われる。このユニフォミティの測定は、スピンドル軸に装着されたタイヤを回転ドラムに押し付け、スピンドル軸又は回転ドラムを回転駆動させて、タイヤに発生する変動力(Force Variation)をユニフォミティ波形として測定するものである。
また、タイヤ試験機では、上述のユニフォミティの測定と合わせて、タイヤ試験機に備えられたタイヤ外形計測センサで、測定中のタイヤ径や、タイヤのラジアル方向及びラテラル方向の変形量(表面の凸凹やうねり)の測定も行われている。
【0003】
スピンドル軸に装着されたタイヤの径と外形の変形量(ランナウト)を検出する技術としては、特許文献1に開示されたタイヤ試験機の技術が存在する。
特許文献1は、被検査タイヤに対して径方向に進退自在として備えられているスライドフレームに、前記タイヤの両サイドウォール部、両ショルダ部およびトレッド部の変形量を検出するセンサーを備えているタイヤユニフォミティ機のランナウト装置であって、前記両サイドウォール部の変形量を検出するセンサーをタイヤ軸方向に位置調整する手段を設け、前記両ショルダ部およびトレッド部の変形量を検出するセンサーをタイヤ軸方向に位置調整する手段とタイヤ径方向に位置調整する手段を設けているタイヤユニフォミティ機のランナウト装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3216952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の如く、特許文献1のタイヤ試験機には、タイヤに対して半径方向に進退自在として備えられているスライドフレームに、タイヤの両サイドウォール部、両ショルダ部およびトレッド部の変形量をそれぞれ検出するタイヤ外形計測センサが備えられている。
タイヤ外形計測センサは、タイヤ試験機に備えられた位置調整手段によって、タイヤに対して進退可能に構成されている。そして、タイヤ外形計測センサの位置は、タイヤの大きさなどによって調整される。すなわち、タイヤの外形計測時において、タイヤ外形計測センサの位置を調整するにあたっては、タイヤ径やタイヤの厚さなどの情報によって、予めタイヤごとにティーチングして、タイヤ外形計測センサの位置が決定される。
【0006】
しかしながら、オペレータによるタイヤ径やタイヤの厚さなどの情報の入力ミスや、搬送されたタイヤとその搬送されたタイヤの入力情報の誤った割り当てによって、タイヤ外形計測センサとタイヤが衝突する虞がある。また、タイヤ外形計測センサが配備されたアームを伸長させる駆動モータの不具合などによって、タイヤ外形計測センサとタイヤが衝突する虞もある。また、タイヤ試験機に備えられるタイヤ外形計測センサは非常に高価なものであるため、タイヤとの衝突による破損を回避しなければならない。
【0007】
上述した問題を解決するために、タイヤ外形計測センサとタイヤとの間隔(距離)を検出し、タイヤ外形計測センサがタイヤ衝突する前に非常停止する衝突防止手段がタイヤ試験機に講じられていることがある。
この衝突防止手段には、接触を検知するタイプのセンサ(多くはリミットスイッチ)が用いられている。通常、衝突防止センサ(衝突防止手段)には、棒状の探触子が備えられており、探触子がタイヤに接触すると、タイヤ外形計測センサが備えられたアームの伸長を停止するように構成されている。
【0008】
ところが、図4に示すように、スピンドル軸102のリム104に取り付けられたタイヤTの幅方向の端部(両ショルダ部)において、従来の衝突防止センサ117の探触子1
18がタイヤTの幅方向の端部より外側(図4の紙面の上側及び下側)にある場合、探触子118がタイヤTの外周面を沿うように移動し、棒状の探触子118がタイヤTに接触しない不感帯が存在してしまう。このため、探触子118がタイヤTに接触することなく、タイヤ外形計測センサ116がタイヤTに衝突してしまう事例が生じている。
【0009】
図4(a)は、タイヤ外形計測センサ116の水平移動方向に対し、探触子118が水平方向に伸びている場合を示す図である。
この図に示すように、アーム部121が水平移動し、探触子118がタイヤTの幅方向の中央部に位置する場合、探触子118によるタイヤTの接触検知が程度可能であるが、探触子118がタイヤTの幅方向の端部より外側に位置する場合には、探触子118がタイヤTに接触しない不感帯が存在してしまう。このため、タイヤ外形計測センサ116がタイヤTに衝突してしまう虞がある。
【0010】
図4(b)は、タイヤ外形計測センサ116の水平移動方向に対し、探触子118が垂直に伸びている場合を示す図である。
この図に示すように、アーム部121が垂直移動し、探触子118がタイヤTのサイドウォール部の中央に位置する場合、探触子118によるタイヤTの接触検知がある程度可能であるが、探触子118がタイヤTの半径方向の端部より外側(タイヤTの外周面より外側)に位置する場合、探触子118がタイヤTに接触しない不感帯が存在してしまう。このため、タイヤ外形計測センサ116がタイヤTに衝突してしまう虞がある。また、アーム部121が水平移動し、探触子118がタイヤTのトレッド部の中央に位置する場合では、探触子118が垂直方向に伸びているため、探触子118によるタイヤTの接触検知をすることはできない。
【0011】
図4(c)は、図4(a)及び図4(b)の問題を解決するために、タイヤ外形計測センサ116の水平移動方向に対し、探触子118を斜めに配置した場合を示す図である。
この場合、アーム部121の水平移動及び垂直移動に対し、タイヤTの接触を広い範囲で検出することができるが、それでも探触子118がタイヤTに接触しない不感帯が存在してしまう。このため、タイヤ外形計測センサ116がタイヤTに衝突してしまう虞がある。
【0012】
例えば、タイヤTのサイドウォール部の下面を検出する探触子118においては、まず水平に移動し、その後垂直上方に移動して探触子118がタイヤTの表面(サイドウォール部)にアプローチする場合、探触子118がタイヤTの内側に入ってしまう状況(探触子118がタイヤTに接触しない不感帯)が生じてしまう。このため、タイヤ外形計測センサ116がタイヤTに衝突してしまう(図4(c)のタイヤTの下側に位置する探触子118の例)。
【0013】
また、タイヤTのサイドウォール部が盛り上がっている場合においても、探触子118がタイヤTに接触する(検知する)前に、タイヤ外形計測センサ116が盛り上がったサイドウォール部に衝突してしまう(図4(c)のタイヤTの上側に位置する探触子118の例)。
そこで、本発明は上記問題点を鑑み、衝突防止センサの探触子とタイヤとが接触しない不感帯をなくしてタイヤ外形計測センサとタイヤとの間隔が所定距離以内となったことを確実に検出することができ、タイヤ外形計測センサとタイヤとの衝突を確実に防止することができる衝突防止センサを備えたタイヤ試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明に係るタイヤ試験機は、検査対象であるタイヤを回転可能に装着するスピンドル軸と、前記タイヤ側に近接、若しくは当該タイヤ側から離反すると共に、前記スピンドル軸に装着されたタイヤの径と外形の変形量を検出するタイヤ外形計測センサと、探触子と前記探触子がタイヤに接触する状況を検出する接触検出部とを有すると共に、前記探触子がタイヤに接触することで、前記タイヤ外形計測センサがタイヤに衝突することを回避する衝突防止センサと、を備えているタイヤ試験機において、前記探触子は、前記衝突防止センサの接触検出部から棒状に突設されており、その先端若しくは中途部が屈曲した形状
に形成されていることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記衝突防止センサは、前記タイヤ外形計測センサに配備されているとよい。
好ましくは、前記探触子は、前記衝突防止センサの接触検出部から前記タイヤの半径方向に突設された後、当該タイヤの幅方向を向いて直角に曲げられてなる形状を有するとよい。
【0016】
好ましくは、前記探触子は、前記衝突防止センサの接触検出部から前記タイヤの半径方向に突設された後、当該タイヤの幅方向を向いて直角に曲げられ、その後タイヤの半径方向に直角に曲げられてなる、平面視でコ字形状に形成されているとよい。
好ましくは、前記探触子は、前記衝突防止センサの接触検出部から前記タイヤの半径方向に突設された後、当該タイヤの幅方向を向いて直角に2方向に分岐されてなる、平面視でT字形状に形成されているとよい。
【0017】
好ましくは、前記探触子は、前記衝突防止センサの接触検出部から前記タイヤの半径方向に突設された後、当該タイヤの幅方向を向いて直角に2方向に分岐され、その後タイヤの半径方向に直角に曲げられてなる、平面視でE字形状に形成されているとよい。
好ましくは、前記探触子は、線状の弾性金属材で形成されているとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のタイヤ試験機によれば、衝突防止センサに先端若しくは中途部が屈曲した形状を備えた探触子を備えることで、衝突防止センサとタイヤとが接触しない不感帯をなくし、タイヤ外形計測センサとタイヤとの間隔が所定距離以内となったことを確実に検出することができ、タイヤ外形計測センサとタイヤとの衝突を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るタイヤ試験機の概略図である。
図2】本発明のタイヤ試験機における衝突防止センサの探触子の形状を示した概略図である。
図3】本発明のタイヤ試験機における衝突防止センサの探触子の形状を示した概略図である。
図4】従来のタイヤ試験機における衝突防止センサの問題点を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るタイヤ試験機1を、図面に基づいて、詳しく説明する。
図1に示すように、本明細書で例示するタイヤ試験機1は、被検査対象であるタイヤTのユニフォミティ(タイヤTの均一性)とそのタイヤTの動バランス(動的釣合)とを測定する複合試験装置である。また、本発明のタイヤ試験機1は、タイヤTのユニフォミティと動バランスを測定中に、そのタイヤTの径や、タイヤTの外形の変形量(ランナウト:タイヤTの表面の凸凹やうねり)の測定も行っている。
【0021】
なお、本発明は、タイヤTの外形の変形量の測定に関わる技術に特徴があるものであって、採用されるタイヤ試験機1は、複合試験装置に限定されない。ユニフォミティ測定用のタイヤ試験機であってもよく、動バランス測定用のタイヤ試験機であってもよい。
以降、本発明に係るタイヤ試験機1の説明において、図1の紙面の左右方向をタイヤ試験機1を説明する際の水平(左右)方向とする。また、図1の紙面の上下方向をタイヤ試験機1を説明する際の垂直(鉛直)方向とする。
【0022】
図1に示す如く、タイヤ試験機1は、検査対象であるタイヤTを垂直方向の軸心回りに回転可能に装着し、装着されたタイヤTを駆動回転するスピンドル軸2と、スピンドル軸2から所定の間隔を空けて配備されると共にそのスピンドル軸2に取り付けられたタイヤTに対して近接離間自在に設けられた回転ドラム機構3と、回転ドラム機構3と接触しているタイヤTのユニフォミティを測定するユニフォミティ測定部15と、回転ドラム機構3から離間しているタイヤTの動バランスを測定する動バランス測定部14と、を有している
加えて、このタイヤ試験機1は、タイヤT側に近接、若しくはタイヤT側から離反すると共に、スピンドル軸2に装着されたタイヤTの径と外形の変形量を検出するタイヤ外形
計測センサ16と、探触子18とその探触子18がタイヤTに接触する状況を検出する接触検出部19とを有すると共に、その探触子18がタイヤTに接触することで、タイヤ外形計測センサ16がタイヤTに衝突することを回避する衝突防止センサ17と、を備えている。
【0023】
以下、本発明に係るタイヤ試験機1の詳細について述べる。まず、タイヤ試験機1に備えられたスピンドル軸2は、垂直方向を向く軸心回りに円筒状に形成されており、スピンドルハウジング5に回転自在に支持されている。スピンドル軸2の上方突出部分にタイヤTを固定する上下一対のリム4が設けられている。
スピンドルハウジング5は、スピンドル軸2を内側に収容可能な円筒状に形成されており、スピンドル軸2を回転可能に支持している。スピンドルハウジング5の外周面には、スピンドルハウジング5をベース8に固定するハウジング支持部材6が配備されており、このハウジング支持部材6は垂直方向及び水平方向の双方に向かって伸びる板状に形成されている。
【0024】
スピンドル軸2は、モータ9からの回転駆動力がタイミングベルト10を介して伝達されることで回転するようになっている。スピンドル軸2から所定の間隔をあけた側方には、水平方向に近接離間自在に移動する回転ドラム機構3が設けられている。
回転ドラム機構3は、外形が円筒状に形成されると共に、その円筒状の外周面にタイヤTが接地する模擬路面11aが形成されたドラム部11と、このドラム部11を回転自在に支持するドラム支持体12とを備えている。
【0025】
ドラム部11は、スピンドル軸2のリム4に対向する位置に備えられ、上方と下方とに向かって突出した軸部13(軸心)回りに回転可能となっている。
ドラム支持体12は、ドラム部11を垂直方向の軸心回りに駆動回転できるように支持すると共に、水平方向に近接離間可能に配設されており、ドラム部11がスピンドル軸2に取り付けられたタイヤTに模擬路面11aを接触できる構成となっている。
【0026】
図1に例示するタイヤ試験機1では、回転ドラム機構3とドラム支持体12との間にタイヤTのユニフォミティを測定するユニフォミティ測定部15が設けられ、動バランス測定部14は、ロードセルで構成され、スピンドルハウジング5のハウジング支持部材6と位置決め部材7との間に設けられている。
さらに、タイヤ試験機1には、タイヤTの径と外形の変形量を検出するタイヤ外形計測センサ16が備えられている。このタイヤ外形計測センサ16は、スピンドル軸2を挟んで、回転ドラム機構3に対向する位置に配備されている。
【0027】
タイヤ外形計測センサ16は、タイヤT側に近接、若しくはタイヤT側から離反すると共に、スピンドル軸2に装着されたタイヤTの径と外形の変形量(タイヤTの表面の凸凹やうねり)を検出する。タイヤTの外形の変形量としては、例えば、タイヤTの半径方向の振れの大きさ(ラジアルランナウト:RR)やタイヤTの横方向の振れの大きさ(ラテラルランナウト:LR)などが挙げられる。
【0028】
タイヤ外形計測センサ16は、タイヤTのセンタラインおよび両側ショルダ位置でタイヤTの外形の変形量などを測定するものであり、負荷時の接地面付近でのタイヤTの変形が影響しない位置で測定するようになっている。
タイヤ外形計測センサ16は、非接触式のセンサであり、例えば、ライン状のレーザ光を照射し、反射してきた光を基にタイヤT外形を計測する光切断センサなどである。このタイヤ外形計測センサ16は、水平方向に進退自在なスライドフレーム20に備えられたアーム部21に取り付けられている。タイヤTの両サイドウォール部の変形量を検出するタイヤ外形計測センサ16は、タイヤTの両サイドウォール部より間隔をあけて上下一対備えられている。タイヤTの両ショルダ部およびトレッド部の変形量を検出するタイヤ外形計測センサ16は、タイヤTの両ショルダ部およびトレッド部より間隔をあけて備えられている。
【0029】
スライドフレーム20は、板状の枠体であり、水平方向に進退可能となっている。また、スライドフレーム20には、このスライドフレーム20を水平方向に進退させるためのアジャストスクリュ等の駆動装置22が取り付けられている。
なお、このタイヤ試験機1には、タイヤTの両サイドウォール部の変形量を検出するタイヤ外形計測センサ16をタイヤT軸方向に位置を調整する第1位置調整手段と、タイヤTの両ショルダ部およびトレッド部の変形量を検出するタイヤ外形計測センサ16をタイヤT軸方向に位置を調整する第2位置調整手段とが設けられている(両方とも図示せず)。
【0030】
タイヤTの変形量を測定する際のタイヤ外形計測センサ16の位置は、検査対象のタイヤT径及びタイヤTの厚さ情報によって、予めタイヤTごとにティーチングして決定される。
さらに、このタイヤ外形計測センサ16には、衝突防止センサ17が配備されている。
衝突防止センサ17は、探触子18と、探触子18がタイヤTに接触する状況を検出する接触検出部19と、を有する。衝突防止センサ17は、スライドフレーム20がタイヤT方向に進行する際に、タイヤ外形計測センサ16の水平方向の前方に存在する探触子18がタイヤTに接触することで、タイヤ外形計測センサ16が備えられたアーム部21の伸長を停止し、タイヤ外形計測センサ16がタイヤTに衝突することを回避するものである。
【0031】
接触検出部19は、探触子18がタイヤTに接触することで、タイヤ外形計測センサ16とタイヤTとの間隔が所定の距離以内となったことを検出する。接触検出部19は、リミットスイッチが用いられ、例えばマルチプル形の多極リミットスイッチが挙げられる。なお、接触検出部19は、探触子18がタイヤTに接触したことを検出できるものであれば、どのような装置を用いてもよい。
【0032】
探触子18は、衝突防止センサ17の接触検出部19から棒状に突設されており、その先端若しくは中途部が屈曲した形状に形成されている。この探触子18の先端若しくは中途部を屈曲させておくことにより、衝突防止センサ17とタイヤTとが接触する接触検知範囲を広く確保することができ、衝突防止センサ17がタイヤTに衝突することを未然に防ぐことが可能である。
【0033】
探触子18は、線状の弾性金属材(例えば、針金線)で形成されている。そのため、探触子18の曲げ作業が容易となり、タイヤT形状の実態に合わせた変更も容易である。
以下、本発明に係るタイヤ試験機1に備えられた衝突防止センサ17の探触子18の形状について、図を参照して述べる。
図2及び図3には、本発明に係るタイヤ試験機1に備えられた衝突防止センサ17の探触子18の形状例が示されている。なお、図2及び図3において、紙面の左右方向を探触子18及びタイヤ試験機1の水平方向とし、紙面の上下方向を探触子18及びタイヤ試験機1の垂直方向とする。
【0034】
図2(a)に示す探触子18は、衝突防止センサ17の接触検出部19からタイヤTの半径方向(水平方向)に突設された後、当該タイヤTの幅方向(垂直方向)を向いて直角に曲げられてなる形状に形成されている。
例えば、タイヤTのサイドウォール上面検出用の探触子18は、接触検出部19からスピンドル軸2の方向に向かってタイヤTの半径方向に沿うように突出した後、探触子18の中途部が垂直下方(タイヤTのサイドウォール方向)を向いて直角に屈曲して形成されている。また、タイヤTのサイドウォール下面検出用の探触子18は、接触検出部19からスピンドル軸2の方向に向かってタイヤTの半径方向に沿うように突出した後、探触子18の中途部が垂直上方を向いて直角に屈曲して形成されている。
【0035】
一方、タイヤTのトレッド面検出用の探触子18は、接触検出部19からスピンドル軸2の方向に向かって突出した後、探触子18の中途部が垂直方向の上方乃至は下方に向けて直角に屈曲して形成されている。なお、タイヤTのトレッド面検出用の探触子18は、衝突防止センサ17の移動開始の位置がタイヤTに対して上方から接近する場合、その探触子18の中途部を下方に向けて直角に屈曲した形状に形成され、衝突防止センサ17の移動開始の位置がタイヤTに対して下方から接近する場合、その探触子18の中途部を上方に向けて直角に屈曲した形状に形成される。つまり、図2(a)に示す探触子18は、平面視でL字形状に形成されている。
【0036】
図2(b)に示す探触子18は、衝突防止センサ17の接触検出部19からタイヤTの半径方向に突設された後、当該タイヤTの幅方向を向いて直角に曲げられ、その後タイヤTの半径方向に直角に曲げられてなる、平面視でコ字形状に形成されている。
例えば、タイヤTのサイドウォール上面検出用の探触子18は、接触検出部19からスピンドル軸2の方向に向かってタイヤTの半径方向に沿うように突出した後、探触子18の中途部が垂直下方(タイヤTのサイドウォール方向)を向いて直角に屈曲し、そして探触子18の先端がスピンドル軸2の方向から離間する方向に向かってタイヤTの半径方向に沿うような形状に形成されている。また、タイヤTのサイドウォール下面検出用の探触子18は、接触検出部19からスピンドル軸2の方向に向かってタイヤTの半径方向に沿うように突出した後、探触子18の中途部が垂直上方を向いて直角に屈曲し、そして探触子18の先端がスピンドル軸2の方向から離間する方向に向かってタイヤTの半径方向に沿うような形状に形成されている。
【0037】
一方、タイヤTのトレッド面検出用の探触子18は、接触検出部19からスピンドル軸2の方向に向かって突出した後、探触子18の中途部が垂直方向の上方乃至は下方に向けて直角に屈曲し、そして探触子18の先端がスピンドル軸2の方向から離間する方向を向いた形状に形成されている。なお、タイヤTのトレッド面検出用の探触子18は、衝突防止センサ17の移動開始の位置がタイヤTに対して上方から接近する場合、その探触子18の中途部を下方に向けて直角に屈曲させた後、探触子18の先端をスピンドル軸2の方向から離間する方向に向けて形成され、衝突防止センサ17の移動開始の位置がタイヤTに対して下方から接近する場合、その探触子18の中途部を上方に向けて直角に屈曲させた後、探触子18の先端をスピンドル軸2の方向から離間する方向に向けて形成される。
【0038】
図3(a)に示す探触子18は、衝突防止センサ17の接触検出部19からタイヤTの半径方向に突設された後、当該タイヤTの幅方向を向いて直角に2方向に分岐されてなる、平面視でT字形状に形成されている。
例えば、タイヤTのサイドウォール上面検出用及びその下面検出用の探触子18は、接触検出部19からスピンドル軸2の方向に向かってタイヤTの半径方向に沿うように突出した後、探触子18の中途部がタイヤTのサイドウォール方向、及びタイヤTのサイドウォールから離間する方向を向いて直角に屈曲した形状に形成されている。
【0039】
一方、タイヤTのトレッド面検出用の探触子18は、接触検出部19からスピンドル軸2の方向に向かって突出した後、探触子18の中途部が垂直方向の上方及び下方を向いて直角に屈曲した形状に形成されている。
図3(b)に示す探触子18は、衝突防止センサ17の接触検出部19からタイヤTの半径方向に突設された後、当該タイヤTの幅方向に直角に2方向に分岐され、その後タイヤTの半径方向に直角に曲げられてなる、平面視でE字形状に形成されている。
【0040】
例えば、タイヤTのサイドウォール上面検出用及びその下面検出用の探触子18は、接触検出部19からスピンドル軸2の方向に向かってタイヤTの半径方向に沿うように突出した後、探触子18の中途部がタイヤTのサイドウォール方向、及びタイヤTのサイドウォールから離間する方向を向いて直角に屈曲し、そして探触子18の先端がスピンドル軸2の方向から離間する方向を向いた形状に形成されている。
【0041】
一方、タイヤTのトレッド面検出用の探触子18は、接触検出部19からスピンドル軸2の方向に向かって突出した後、探触子18の中途部が垂直方向の上方及び下方を向いて直角に屈曲し、そして探触子18の先端がスピンドル軸2の方向から離間する方向を向いた形状に形成されている。
以上述べたように、本発明のタイヤ試験機1に備えられた衝突防止センサ17の探触子18は、その先端若しくは中途部が屈曲した形状を備えることで、衝突防止センサ17とタイヤTとが接触しない不感帯をなくし、タイヤ外形計測センサ16とタイヤTとの間隔が所定距離以内となったこと(探触子18とタイヤTとの接触)を確実に検出することができる。ゆえに、タイヤ外形計測センサ16がタイヤTに衝突することを防ぐことができる。また、本発明の探触子18を、図2(b)のようなコ字形状に形成することで、垂直移動方向の不感帯を削減することができる。図3(a)のようなT字形状に形成したり、
図3(b)のようなE字形状に形成したりすることで、さらに不感帯を削減することができる。
【0042】
また、本発明の探触子18を線状の弾性金属材で形成することで、タイヤTに衝突防止センサ17の探触子18が触れた際に、タイヤTと衝突防止センサ17(タイヤ外形計測センサ16)を支持するアーム部21にタイヤTとの接触による力が付与されなくなり、タイヤTの表面が健全に保持されると共にアーム部21の破損も防止することができる。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 タイヤ試験機
2 スピンドル軸
3 回転ドラム機構
4 リム
5 スピンドルハウジング
6 ハウジング支持部材
7 位置決め部材
8 ベース
9 モータ
10 タイミングベルト
11 ドラム部
11a 模擬路面
12 ドラム支持体
13 軸部
14 動バランス測定部
15 ユニフォミティ測定部
16 タイヤ外形計測センサ
17 衝突防止センサ
18 探触子
19 接触検出部
20 スライドフレーム
21 アーム部
22 駆動装置
102 従来のスピンドル軸
104 従来のリム
116 従来のタイヤ外形計測センサ
117 従来の衝突防止センサ
118 従来の探触子
119 従来の接触検出部
121 従来のアーム部
T タイヤ
図1
図2
図3
図4