(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分散剤がアルコキシレート、アルキロールアミド、エステル、アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、水溶性単独重合体、統計的共重合体、ブロック共重合体、グラフト重合体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロース、デンプン、ゼラチン、ゼラチン誘導体、アミノ酸重合体、ポリリシン、ポリアスパラギン酸、ポリアクリレート、ポリエチレンスルホネート、ポリスチレンスルホネート、ポリメタクリレート、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ナフタレンスルホネート、リグノスルホネート、アクリル単量体の共重合体、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリ(2−ビニルピリジン)及び/又はポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドよりなる群から選択される少なくとも1種の分散剤であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
前記銀塩溶液が硝酸塩、過塩素酸塩、雷酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、アセチルアセトン酸塩、テトラフルオロ硼酸塩又はテトラフェニル硼酸塩から選択される銀の陽イオン及び陰イオンを含有するものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
前記還元剤が多価アルコール、アミノフェノール、アミノアルコール、アルデヒド、糖類、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸及びそれらの塩、トリエタノールアミン、ヒドロキノン、亜ジチオン酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸、二亜硫酸ナトリウム、ホルムアミジンスルフィン酸、亜硫酸、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、ホウ化水素ナトリウム、ホルムアルデヒド、アルコール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールジアセテート、グリセロール及び/又はジメチルアミノエタノールよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
前記ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金から選択される金属の金属塩が塩化ルテニウム、酢酸ルテニウム、硝酸ルテニウム、ルテニウムエトキシド、アセチルアセトン酸ルテニウムから選択される少なくとも1種のルテニウム塩であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金よりなる群から選択される、金属の形態及び/又は少なくとも1種の金属化合物の形態の金属の含有量は、0.1〜5重量%の量、特に好ましくは0.4〜2重量%の量(該金属ナノ粒子ゾルの銀含有量により表される)である。
【0013】
本発明の範囲において、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金よりなる群から選択される金属は、好ましくはルテニウムである。本発明に従う金属ナノ粒子ゾルでは、好ましくは、ルテニウムの少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、特に好ましくは少なくとも99重量%、さらに好ましくはルテニウムの全てが二酸化ルテニウムの形態で存在する。
【0014】
最も好ましい実施形態では、金属ナノ粒子ゾル中における銀ナノ粒子は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金よりなる群から選択される少なくとも1種の金属の含有量の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%を占める。金属ナノ粒子ゾルは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金よりなる群から選択されるこの金属の銀を有しない金属ナノ粒子又は金属化合物ナノ粒子を少量しか含有しない。好ましくは、金属ナノ粒子ゾルは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金よりなる群から選択されるこの金属の含有量の20%未満、特に好ましくは10%未満(この金属の含有量により表される)を、この金属の銀を有しない金属ナノ粒子又は金属化合物ナノ粒子の形態で含有する。
【0015】
一般に、本発明に従う金属ナノ粒子ゾルは、好ましくは、1g/l〜25.0g/lの金属ナノ粒子含有量を有する。しかしながら、濃縮工程を使用することによって、500.0g/lまで又はそれ以上の金属ナノ粒子含有量を達成することもできる。
【0016】
本発明の範囲において、金属ナノ粒子は、動的光散乱により測定される、300nm未満の有効流体力学直径、好ましくは0.1〜200nm、特に好ましくは1〜150nm、さらに好ましくは20〜140nmの有効流体力学直径を有するものを意味するものとする。例えば、Brookhaven Instrument Corporation社製のZetaPlusゼータ電位分析器が動的光散乱による測定に好適である。
【0017】
金属ナノ粒子は、少なくとも1種の液体分散媒体に少なくとも1種の分散剤の助けをかりて分散される。
【0018】
したがって、本発明に従う金属ナノ粒子ゾルは、濃縮を実施した場合であっても保存される高いコロイド化学安定性により区別される。この場合、用語「コロイドとして化学的に安定」とは、コロイド分散体又はコロイドの特性が、適用前の従来の貯蔵時間であっても大きくは変化せず、しかも、例えばコロイド粒子の実質的な集合や凝集が全く起こらないことを意味する。
【0019】
分散剤として、好ましくは高分子分散剤を使用する。これは、好ましくは100g/mol〜1000000g/mol、特に好ましくは1000g/mol〜100000g/molの分子量(重量平均)M
wを有するものである。このような分散剤は市販されている。分子量(重量平均)M
wは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の手段により、好ましくは基準物としてポリスチレンを使用することにより決定できる。
【0020】
また、分散剤の選択は、金属ナノ粒子の表面特性を調節することも可能にする。粒子表面に付着した分散剤は、例えば、粒子に正又は負の表面電荷を付与することができる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、分散剤は、アルコキシレート、アルキロールアミド、エステル、アミンオキシド、アルキルポリグルコシド、アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、水溶性単独重合体、統計的共重合体、ブロック共重合体、グラフト重合体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロース、デンプン、ゼラチン、ゼラチン誘導体、アミノ酸重合体、ポリリシン、ポリアスパラギン酸、ポリアクリレート、ポリエチレンスルホネート、ポリスチレンスルホネート、ポリメタクリレート、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ナフタレンスルホネート、リグノスルホネート、アクリル単量体の共重合体、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリ(2−ビニルピリジン)及び/又はポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドよりなる群から選択される。
【0022】
このような分散剤は、一方で金属ナノ粒子ゾルの粒度又は粒度分布に影響を及ぼす場合がある。いくつかの用途では、狭い粒度分布が存在することが重要である。他の用途については、広い又は多峰型の粒度分布が存在することが有益である。というのは、粒子は、より高密度のパッキングを採用することができるからである。該分散剤の言及すべき別の利点は、粒子に対して、該分散剤が付着する表面上に目的の特性を付与することができることである。相互反発によりコロイド安定性に寄与することのできる上記正及び負の表面電荷の他に、表面の親水性又は疎水性と生体適合性も言及できる。ナノ粒子の親水性及び疎水性は、例えば、粒子を特定の媒体、例えば重合体に分散させようとする場合に重要である。表面の生体適合性は、そのナノ粒子を医療用途に使用することを可能にする。
【0023】
液体分散媒体は、好ましくは、水又は水と有機溶媒、好ましくは水溶性有機溶媒とを含有する混合物である。しかし、例えばこの方法を0℃よりも低い温度又は100℃よりも高い温度で実施しようとする場合や、得られた生成物を、水の存在が問題を生じさせるマトリックスに導入しようとする場合には、他の溶媒も想定できる。例えば、アルコール及びアセトンなどの極性プロトン性溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの極性非プロトン性溶媒又はCH
2Cl
2などの非極性溶媒を使用することができる。上記混合物は、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%の水、特に好ましくは少なくとも70重量%の水を含有する。液体分散媒体は、特に好ましくは、水或いは水とアルコール、アルデヒド及び/又はケトンとの混合物、特に好ましくは水或いは水と4個までの炭素原子を有する1価若しくは多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール若しくはエチレングリコール、4個までの炭素原子を有するアルデヒド、例えばホルムアルデヒド、及び/又は4個までの炭素原子を有するケトン、例えばアセトン若しくはメチルエチルケトンとの混合物である。水が特に好ましい分散媒体である。
【0024】
さらに、本発明は、本発明に従う金属ナノ粒子ゾルの製造方法を提供する。
【0025】
少なくとも部分的にナノスケールの金属酸化物及び/又は金属水酸化物粒子をまず製造し、その後の工程で還元してナノスケール金属粒子を製造する方法が特に有益であることが分かった。しかしながら、本発明の範囲においては、この場合、酸化銀及び/又は水酸化銀及び/又は酸化銀−水酸化銀の単なる元素銀への還元を行う。ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金よりなる群から選択される金属の金属酸化物は、元素金属には還元されない、又は完全には還元されない、好ましくは還元されない。
【0026】
したがって、本発明は、本発明の金属ナノ粒子ゾルの製造方法であって、
a)銀塩溶液と、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金から選択される金属の少なくとも1種の金属塩を含有する溶液と、水酸化物イオンを含有する溶液とを混合し、
b)その後、該工程a)で得られた溶液を還元剤と反応させる
ことを特徴とし、
ここで、該工程a)における溶液の一つは少なくとも1種の分散剤を含有し、該3種の溶液を工程a)において同時に混合することを特徴とする方法を提供する。
【0027】
驚くべきことに、十分な導電性を達成するのに必要な焼結時間は、工程a)において、銀塩溶液と、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金から選択される金属の少なくとも1種の金属塩を含有する溶液と、水酸化物イオンを含有する溶液とを同時に混合する場合に得られる金属ナノ粒子ゾルでのみ減少し得ることが分かった。ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金から選択される金属の少なくとも1種の金属塩を含有する溶液を銀塩溶液に添加してから、水酸化物イオンを含有する溶液を添加する場合や、まず銀塩溶液と水酸化物イオンを含有する溶液とを混合し、そしてその後ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金よりなる群から選択される金属の少なくとも1種の金属塩を含有する溶液を単に該溶液に添加するに過ぎない場合には、同じ焼結時間で、製造のために上記3種の溶液を同時に混合した金属ナノ粒子で達成できるよりも有意に低い導電性となる。
【0028】
工程a)における3つの溶液の同時混合は、本発明に従って、これら3つの溶液のうちの2つを第3の溶液に添加することによって実施できるが、この場合、溶液を選択することは重要ではない。また、工程a)における3つの溶液の同時混合は、3つの溶液の一つを別々に処理することなく、これら3つの溶液の全てを混合することにより、本発明に従って実施することもできる。
【0029】
したがって、本発明は、特に、本発明の方法により製造された金属ナノ粒子ゾルを提供する。
【0030】
特定の理論に限定されるものではないが、本発明の方法の工程a)において、金属塩溶液中に存在する金属陽イオンは、水酸化物イオンを含有する溶液の水酸化物イオンと反応し、それによって、金属酸化物、金属水酸化物、混合金属酸化物−水酸化物及び/又はそれらの水和物として溶液から沈殿することが想定される。このプロセスは、ナノスケール及びサブミクロンスケールの粒子の不均一な沈殿であるとみなされる。
【0031】
本発明の第2工程b)では、金属の酸化物/水酸化物粒子を含有する溶液と還元剤とを反応させる。
【0032】
本発明の方法では、工程a)におけるナノスケール及びサブミクロンスケール粒子の不均一沈殿は、好ましくは保護コロイドとも呼ばれる少なくとも1種の分散剤の存在下で実施される。かかる分散剤としては、本発明の金属粒子ゾルについて既に上記したものを使用することが好ましい。
【0033】
本発明の方法の工程a)において、≧0.5:1〜≦10:1、好ましくは≧0.7:1〜≦5:1、特に好ましくは≧0.9:1〜≦2:1のモル比は、好ましくは、水酸化物イオンの量と金属陽イオンの量との間で選択される。
【0034】
方法の工程a)を実施する温度は、例えば、≧0℃〜≦100℃、好ましくは≧5℃〜≦50℃、特に好ましくは≧10℃〜≦30℃の範囲にあることができる。
【0035】
好ましくは、還元される金属陽イオンに対する割合で≧1:1〜≦100:1、好ましくは≧2:1〜≦25:1、特に好ましくは≧4:1〜≦5:1の還元剤の当量の等モル比又は過剰が還元工程b)で選択される。
【0036】
方法の工程b)を実施する温度は、例えば、≧0℃〜≦100℃、好ましくは≧30℃〜≦95℃、特に好ましくは≧55℃〜≦90℃の範囲にあることができる。
【0037】
酸又は塩基を工程a)後に得られる溶液に添加して所望のpHを設定することができる。例えば、pHを酸性範囲に維持することが有利である。このようにして、後工程b)における粒度分布の単分散を改善することが可能である。
【0038】
分散剤は、好ましくは工程a)のために使用される3つの溶液(反応溶液)の少なくとも一つに、≧0.1g/l〜≦100g/l、好ましくは≧1g/l〜≦60g/l、特に好ましくは≧1g/l〜≦40g/lの濃度で含まれる。本発明の方法の工程a)で使用される溶液の2つ又は3つ全ては分散剤を含み、この場合、該分散剤は、異なり、しかも様々な濃度で存在することが可能である。
【0039】
このような濃度範囲の選択は、一方では、粒子を、溶液からの沈殿の間に、安定性及び再分散性などの所望の特性を保持する程度に分散剤で被覆することを確実なものにする。他方で、粒子が分散剤で過剰にカプセル化されることが避けられる。不必要に過剰の分散剤は、還元剤とさらに反応する場合があり望ましくない。さらに、分散剤の量が多すぎると、粒子のコロイド安定性に有害となり、さらに処理加工がさらに困難になる場合がある。特に、この選択は、処理加工することを可能にし、また、処理加工技術の点で容易に取り扱うことができる粘度の液体を得ることを可能にする。
【0040】
銀塩溶液は、好ましくは、硝酸塩、過塩素酸塩、雷酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、アセチルアセトン酸塩、テトラフルオロ硼酸塩又はテトラフェニル硼酸塩から選択される銀の陽イオン及び陰イオンを含有するものである。硝酸銀、酢酸銀又はクエン酸銀が特に好ましい。硝酸銀がさらに好ましい。
【0041】
銀イオンは、好ましくは、銀塩溶液に、≧0.001mol/l〜≦2mol/l、特に好ましくは≧0.01mol/l〜≦1mol/l、さらに好ましくは≧0.1mol/l〜≦0.5mol/lの濃度で含まれる。この濃度範囲が有益である。というのは、これよりも低い濃度では、ナノゾルについて達成される固形分が低すぎる場合があり、費用のかかる再処理工程が必要となる可能性があるからである。それよりも高い濃度は、酸化物/水酸化物粒子の沈殿が生じるのが迅速過ぎる(これは不均質な粒子形態をもたらすと考えられる)というリスクを伴う。さらに、粒子は、この高い濃度によりさらに凝集すると考えられる。
【0042】
ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金から選択される金属の少なくとも1種の金属塩を含有する溶液は、好ましくはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金から選択される金属の陽イオンと、硝酸陰イオン、塩化物陰イオン、臭化物陰イオン、硫酸陰イオン、炭酸陰イオン、酢酸陰イオン、アセチルアセトン酸陰イオン、テトラフルオロ硼酸陰イオン、テトラフェニル硼酸陰イオン又はアルコキシド陰イオン(アルコラート陰イオン)、例えばエトキシドよりなる群から選択される、該金属陽イオンの対陰イオンの少なくとも一つとを含有するものである。金属塩は、特に好ましくは少なくとも1種のルテニウム塩、さらに好ましくは、塩化ルテニウム、酢酸ルテニウム、硝酸ルテニウム、ルテニウムエトキシド又はアセチルアセトン酸ルテニウムから選択されるものである。
【0043】
金属イオンは、好ましくは、金属塩溶液中に、0.01g/l〜1g/lの濃度で含まれる。
【0044】
水酸化物イオンを含有する溶液は、好ましくは、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)
2、Ca(OH)
2、NH
4OH、脂肪族アミン、芳香族アミン、アルカリ金属アミド、及び/又はアルコキシドよりなる群から選択される塩基の反応により得ることができる。NaOH及びKOHが特に好ましい塩基である。このような塩基には、これらを経済的に得ることができ、かつ、本発明の方法からの溶液の後の排水処理中に廃棄するのが容易であるという利点がある。
【0045】
水酸化物イオンを含有する溶液中における水酸化物イオンの濃度は、有利にはかつ好ましくは、≧0.001mol/l〜≦2mol/l、特に好ましくは≧0.01mol/l〜≦1mol/l、さらに好ましくは≧0.1mol/l〜≦0.5mol/lの範囲内にある。
【0046】
還元剤は、好ましくは、多価アルコール、アミノフェノール、アミノアルコール、アルデヒド、糖類、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸及びそれらの塩、チオ尿素、ヒドロキシアセトン、クエン酸鉄アンモニウム、トリエタノールアミン、ヒドロキノン、亜ジチオン酸塩、例えば亜ジチオン酸ナトリウムなど、ヒドロキシメタンスルフィン酸、二亜硫酸塩、例えば二亜硫酸ナトリウムなど、ホルムアミジンスルフィン酸、亜硫酸、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、ホウ化水素、例えばホウ化水素ナトリウムなど、ホルムアルデヒド、アルコール、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、
sec−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールジアセテート、グリセロール及び/又はジメチルアミノエタノールなどよりなる群から選択される。ホルムアルデヒドが特に好ましい還元剤である。
【0047】
また、低分子量添加剤、塩、外来イオン、界面活性剤及び金属イオン封鎖剤などの追加の物質を、反応溶液(工程b)における還元剤の溶液又は工程a)後に得られる溶液を含むことも意図する用語)に添加することもできる。さらに、該反応溶液は、例えば酸素及びCO
2を除去するために、反応前に脱ガスできる。同様に、該反応溶液を保護ガス下及び/又は暗所内で取り扱うことが可能である。
【0048】
同伴する物質及び/又は生成物分散体、すなわち金属粒子分散体に溶解した塩を除去するため、また、該分散体を濃縮するために、従来の機械的液体分離方法(例えば加圧フィルターによるろ過又は遠心力場でのろ過、重力場又は遠心力場での沈降)、抽出、膜技術(透析)及び蒸留を使用することが可能である。
【0049】
本発明に従う方法は、バッチ方法又は連続方法として実施できる。両方の方法の変形例の組み合わせも可能である。
【0050】
さらに、生成物分散体を標準的な方法(限外ろ過、遠心分離、沈降(任意に凝集剤又は弱溶剤を添加した後)、透析及び蒸発)で濃縮し、そして任意に洗浄することが可能である。
【0051】
生成物分散体のコロイド化学安定性及び技術適用特性は、洗浄工程によって又は添加剤を導入することによってさらに最適化できる場合がある。
【0052】
本発明の特に好ましい実施形態では、工程a)及びb)の少なくとも一方、特に好ましくは工程a)及びb)の両方は、マイクロリアクターで実施できる。ここで、本発明の範囲において、「マイクロリアクター」とは、特に用語「マイクロリアクター」、「ミニリアクター」、「マイクロミキサー」又は「ミニキサー」で知られている、小型の、好ましくは連続操作反応器をいう。例は、様々な会社(例えばEhrfeld Mikrotechnik BTS GmbH、Institut fur Mikrotechnik Mainz GmbH、Siemens AG、CPC Cellular Process Chemistry Systems GmbH)のT−及びY−ミキサー並びにマイクロミキサーである。
【0053】
マイクロリアクターが有利である。というのは、湿式化学及び不均一沈殿方法による微粒子及びナノ粒子の連続生成は、混合ユニットの使用を要するからである。上記マイクロリアクター及び分散ノズル又はノズル反応器を混合ユニットとして使用することができる。ノズル反応器の例は、MicroJetReactor(Synthesechemie GmbH)及びジェット分散機(Bayer Technology Services GmbH)である。バッチ方法と比較すると、連続操作方法には、実験室規模から生産規模までのスケーリングを、「比率の増加」の原理の代わりに「数の増加」の原理により単純化することができるという利点がある。
【0054】
本発明に従う方法の別の利点は、生成物の特性の良好な制御性のため、連続操作中に詰まることなくマイクロリアクター内で実施することが可能になることである。
【0055】
金属酸化物/水酸化物粒子を生成するための不均一沈殿方法を、第1保持部材と、第2保持部材と、マイクロリアクターと、第3保持部材と、圧力弁とを備える毛管系でのマイクロ方法として実施することが好ましい。この場合、反応溶液、すなわち、銀塩溶液、金属塩溶液及び水酸化物イオンを含有する溶液は、特に好ましくは、装置又は毛管系を介して、ポンプ又は高圧ポンプ、例えばHPLCポンプにより一定の流量で汲み上げられる。冷却器の後にある圧力弁を介して、液体を緩め、出口毛管を介して生成物容器に集める。
【0056】
マイクロリアクターは、好都合には、≧0.01秒〜≦10秒、好ましくは≧0.05秒〜≦5秒、特に好ましくは≧0.1秒〜≦0.5秒の混合時間を有するミキサーである。
【0057】
≧0.05mm〜≦20mm、好ましくは≧0.1mm〜≦10mm、特に好ましくは≧0.5mm〜≦5mmの直径を有する毛管が保持部材として好適である。
【0058】
保持部材の長さは、好都合には、≧0.05m〜≦10m、好ましくは≧0.08m〜≦5m、特に好ましくは≧0.1m〜≦0.5mの範囲とすることができる。
【0059】
該系における反応混合物の温度は、好都合には、≧0℃〜≦100℃、好ましくは≧5℃〜≦50℃、特に好ましくは≧3℃〜≦30℃の範囲にある。
【0060】
マイクロリアクター単位当たりの反応体流れの流量は、好都合には、≧0.05ml/分〜≦5000ml/分、好ましくは≧0.1ml/分〜≦250ml/分、特に好ましくは≧1ml/分〜≦100ml/分の範囲にある。
【0061】
同等の導電性を達成するための焼結時間は既知の銀粒子ゾルと比較して減少するため、本発明の金属粒子ゾル及び本発明の方法によって製造された金属粒子ゾルは、導電性被膜又は導電性構造の製造用の導電性印刷用インクの製造並びにこのような導電性被膜又は導電性構造の製造に特に好適である。
【0062】
したがって、本発明は、本発明の金属粒子ゾルの、導電性印刷用インク、好ましくはインクジェット及びスクリーン印刷方法のためのもの、導電性被膜、好ましくは導電性透明被膜、導電性微細構造及び/又は機能層の製造のための使用をさらに提供する。さらに、本発明の金属粒子ゾルは、触媒、他の塗料、冶金製品、電子製品、エレクトロセラミック、光学材料、生体標識、偽造防止マーキング用の材料、プラスチック複合材料、抗菌性材料及び/又は活性剤処方物の製造にも好適である。
【0063】
本発明を実施例を用いて以下で詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0064】
例
例1(本発明に従う)
a)バッチ方法によるAg2O/RuO2ナノ粒子ゾルの調製
反応溶液1として硝酸銀の54ミリモル溶液(9.17g/l AgNO
3)、反応溶液2として10g/lの分散剤濃度を有するNaOH(2.14g/l)の54ミリモル溶液及び反応溶液3として0.12モルのRuCl
3エタノール溶液を調製した。脱塩水(Millipore Corporation社製のMilli−Qplus、QPAK(登録商標)2で調製)を溶媒として使用した。Disperbyk(登録商標)190(Byk GmbH)を分散剤として使用した。250mlの反応溶液1をガラスビーカー内に室温で置いた。連続的に撹拌しながら、250mlの反応溶液2及び1mlの反応溶液3を反応溶液に10秒にわたって均一に添加した。したがって、反応混合物におけるルテニウム対銀の当量比は9:1000である(銀含有量により表して0.9重量%のルテニウム)。続いて、このバッチをさらに10分間にわたって再度撹拌した。灰色−黒色のコロイドとして化学的に安定なAg
2O/RuO
2ナノ粒子ゾルを得た。
【0065】
b)バッチ方法によるホルムアルデヒドでの還元
2.33モルのホルムアルデヒド水溶液(70g/l)25mlを例1aで調製されたAg
2O/RuO
2ナノ粒子ゾル500mlに室温で連続的に撹拌しながら添加し、30分間にわたり60℃で保存し、そして冷却した。金属酸化ルテニウムドープ銀ナノ粒子を含むコロイドとして化学的な安定なゾルを得た。その後、これらの粒子を遠心分離により分離し(30000rpmで60分、Avanti J 30i、Rotor JA 30.50、Beckman Coulter GmbH)、そして超音波(Branson Digital Sonifier)を適用することによって脱塩水に再度分散させた。10重量%の固形分を有する、コロイドとして化学的に安定な金属粒子ゾルを得た。
【0066】
動的光散乱による粒度の分析から、128nmの有効流体力学直径を有する結晶性ナノ粒子が明らかになった。Brookhaven Instrument Corporation社製のZetaPlusゼータ電位分析器を動的光散乱による測定に使用した。
【0067】
この分散体の2mm幅の線をポリカーボネートシート(Bayer MaterialScience AG、Makrolon(登録商標)DE1−1)上に適用し、そして乾燥させ、オーブン内において10分間にわたり140℃及び周囲圧力(1013hPa)で焼結させた。
【0068】
導電率は、10分後に3000S/mであり、60分後には4.4×10
6S/mであった。
【0069】
例2(本発明に従う):
a)バッチ方法によるAg2O/RuO2ナノ粒子ゾルの調製
反応溶液1として硝酸銀の54ミリモル溶液(9.17g/l AgNO
3)、反応溶液2として10g/lの分散剤を有するNaOH(2.14g/l)の54ミリモル溶液及び反応溶液3として0.12モルのRuCl
3溶液を調製した。脱塩水(Millipore Corporation社製のMilli−Qplus、QPAK(登録商標)2で調製)を溶媒として使用した。Disperbyk(登録商標)190を分散剤として使用した。250mlの反応溶液1をガラスビーカー内に室温で置いた。連続的に撹拌しながら、250mlの反応溶液2及び2.0mlの反応溶液3を反応溶液に10秒にわたって均一に添加した。したがって、反応混合物におけるルテニウム対銀の当量比は18:1000であった(銀含有量により表して1.8重量%のルテニウム)。続いて、このバッチをさらに10分間にわたって再度撹拌した。灰色−黒色のコロイドとして化学的に安定なAg
2O/RuO
2ナノ粒子ゾルを得た。
【0070】
b)バッチ方法によるホルムアルデヒドでの還元
2.33モルのホルムアルデヒド水溶液(70g/l)25mlを例2a)で調製されたAg
2O/RuO
2ナノ粒子ゾル500mlに室温で撹拌しながら添加し、30分間にわたり60℃で保存し、そして冷却した。金属酸化ルテニウムドープ銀ナノ粒子を含むコロイドとして化学的な安定なゾルを得た。その後、これらの粒子を遠心分離により分離し(30000rpmで60分、Avanti J 30i、Rotor JA 30.50、Beckman Coulter GmbH)、そして超音波(Branson Digital Sonifier)を適用することによって脱塩水に再度分散させた。10重量%の固形分を有する、コロイドとして化学的に安定な金属粒子ゾルを得た。
【0071】
この分散体の表面被覆を例1b)で説明したのと同じ方法でポリカーボネートシート上に適用した。例1b)と同様に決定された導電率は、60分後に4.4×10
6S/mであった。
【0072】
比較例3:ルテニウムを有しない銀ナノゾル
比較のために、立体的に安定化された銀ナノ粒子の分散体を調製した。この目的のために、0.054モルの硝酸銀溶液を、0.054モル水酸化ナトリウム溶液と分散剤Disperbyk(登録商標)190(1g/l)との1:1の容積比の混合物と10分間撹拌しながら混合した。4.6モルのホルムアルデヒド水溶液を、Ag
+対還元剤の比が1:10となるように、この反応混合物に撹拌しながら添加した。この混合物を60℃に加熱し、この温度で30分間保持し、その後冷却した。これらの粒子を未反応の反応体から第1工程でダイアフィルトレーションにより分離し、その後このゾルを濃縮した。この目的のために、30000ダルトン膜を使用した。20重量%までの固形分を有するコロイドとして安定なゾル(銀粒子及び分散剤)を得た。膜ろ過後の元素分析によれば、Disperbyk(登録商標)190の割合は、銀含有量により表して6重量%であった。この分散体の表面被覆を例1b)で説明したのと同じ方法でポリカーボネートシート上に適用した。例1b)と同様に決定した特定の導電率は、140℃及び周囲圧力(1013hPa)で1時間の乾燥及び焼結時間後にのみ決定することができた。1時間の乾燥及び焼結時間後の特定の導電率は、約1S/mであった。
【0073】
比較例4:本発明ではないルテニウムドープ銀ナノゾル
a)バッチ方法によるAg2O/RuO2ナノ粒子ゾルの調製
反応溶液1として硝酸銀の54ミリモル溶液(9.17g/l AgNO
3)、反応溶液2として10g/lの分散剤を有するNaOH(2.14g/l)の54ミリモル溶液及び反応溶液3として0.12モルのRuCl
3溶液を調製した。脱塩水(Millipore Corporation社製のMilli−Qplus、QPAK(登録商標)2で調製)を溶媒として使用した。Disperbyk(登録商標)190を分散剤として使用した。250mlの反応溶液1をガラスビーカー内に室温で置いた。連続的に撹拌しながら、250mlの反応溶液2及び0.1mlの反応溶液3を反応溶液に10秒にわたって均一に添加した。したがって、反応体混合物中におけるルテニウム対銀の当量質量比は9:10000であった(銀含有量により表して0.09重量%のルテニウム)。続いて、このバッチをさらに10分間にわたって再度撹拌した。灰色−黒色のコロイドとして化学的に安定なAg
2O/RuO
2ナノ粒子ゾルを得た。
【0074】
b)バッチ方法によるホルムアルデヒドでの還元
2.33モルのホルムアルデヒド水溶液(70g/l)25mlを、比較例4a)で調製されれたAg
2O/RuO
2ナノ粒子ゾル500mlに室温で連続的に撹拌しながら添加し、30分間にわたり60℃で保存し、そして冷却した。金属酸化ルテニウムドープ銀ナノ粒子を含むコロイドとして化学的な安定なゾルを得た。その後、これらの粒子を遠心分離により分離し(30000rpmで60分、Avanti J 30i、Rotor JA 30.50、Beckman Coulter GmbH)、そして超音波(Branson Digital Sonifier)を適用することによって脱塩水に再度分散させた。10重量%の固形分を有する、コロイドとして化学的に安定な金属粒子ゾルを得た。
【0075】
この分散体の表面被覆を例1b)で説明したのと同じ方法でポリカーボネートシート上に適用した。140℃及び周囲圧力(1013hPa)で1時間の乾燥及び焼結時間後であっても、例3)と同様に特定の導電率を決定することができなかった。