【実施例】
【0131】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例において特に言及しない限り、部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を意味する。また各処方中の各成分の配合割合は、特に言及しない限り、重量部で示すものとする。
実施例1
スクラロース(粉体)1部にイノシン酸ナトリウム(粉体)を表1に示す割合で添加し、デキストリンで計100部に調製し、粉末状のスクラロース含有組成物を得た(粉体混合物)。次いで、この組成物を120℃のオーブン(パーフェクトオーブン:タバイ(株)製)で1時間加熱した。得られたスクラロース含有組成物の甘味を調べて、スクラロースの熱安定性を評価した。また比較としてイノシン酸ナトリウムを配合しないでスクラロースとデキストリンからなる組成物についても同様に熱安定性を評価した。
【0132】
なおスクラロースの熱安定性は、テスト試料(スクラロース含有組成物)をスクラロース含量に応じて適度の濃度になるように水で希釈し、その水溶液の甘味の強度および質を20名のパネラーが官能試験することにより評価した。評価は、各テスト試料の加熱処理前(未加熱処理)のものをコントロールとして、その甘味度および甘味質に対する加熱後の変化を下記の基準に従って、テスト試料毎に得点を付けることによって行った(以下の特記なき実施例において同じ)。
評価点
変化なし 微かに変化 やや変化 有意な変化 顕著な変化
甘味度 5 4 3 2 1
甘味質(マイルド感) 5 4 3 2 1
【0133】
【表1】
【0134】
その結果、イノシン酸ナトリウム無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、イノシン酸ナトリウムを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにイノシン酸ナトリウムを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例2
スクラロース(粉体)1部にグアニル酸ナトリウム、アデニル酸ナトリウム、シチジル酸ナトリウムまたはウリジル酸ナトリウム(全て粉末状)をそれぞれ0.1部添加し、デ
キストリンで計100部に調製し、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組
成物を120℃のオーブン中で1時間加熱した。得られたスクラロース含有組成物について、実施例1と同様にして甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。また比較として、上記のヌクレオチド塩を配合しないでスクラロースとデキストリンからなる組成物についても同様に熱安定性を評価した(無添加)。結果を表2に示す。
【0135】
【表2】
【0136】
その結果、ヌクレオチド塩無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、グアニル酸ナトリウム、アデニル酸ナトリウム、シチジル酸ナトリウムまたはウリジル酸ナトリウムを添加することによりその低下が顕著に抑制できた。
【0137】
実施例1及び2の結果から、イノシン酸、グアニル酸、アデニル酸、シチジル酸及びウリジル酸のナトリウム塩などのヌクレオチドの塩は、スクラロースと共存させることによって、スクラロースの甘味を強さ質ともに顕著に安定化できることが示された。
実施例3
スクラロース(粉体)1部にヒポキサンチン、イノシンまたはイノシン酸ナトリウム(全て粉末状)をそれぞれ0.1部添加し、デキストリンで計100部になるように調製してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、次いで実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。また比較として、上記のヒポキサンチン等の物質を配合しない組成物(比較1)、及び上記物質に代えて核酸を構成する糖(リボース)を配合する組成物(比較2)について同様に熱安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0138】
【表3】
【0139】
その結果、無添加の場合(比較1)には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質とも
に有意に低下し、また核酸構成糖であるリボースを配合してもその低下を抑制することはできなかった(比較2)。しかし、核酸のプリン塩基成分であるヒポキサンチンやプリン塩基を有するヌクレオシドであるイノシンやヌクレオチドであるイノシン酸のナトリウム塩を添加した場合には、その低下が顕著に抑制できた。この結果から、核酸の塩基成分やそれを含むヌクレオシドおよびヌクレオチドにスクラロースに対する顕著な安定化作用が
あることが示された。
実施例4
スクラロース(粉体)1部にイノシン酸ナトリウム(粉体)0.1部を添加し、デキス
トリンで計100部となるように調製し、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。
この組成物を3つに分け、一部はそのままスクラロース含有組成物(粉体混合物)とし、他の一部は前記粉体混合物を水に溶かし噴霧乾燥し(噴霧乾燥物)、残りの一部は前記粉体混合物を水に溶かしドラムドライで乾燥した(ドラムドライ物)。なお比較のためイノシン酸ナトリウムを含まないスクラロース含有組成物を作成した(粉体混合物)。これらの組成物を130℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1に従って、得られたスクラロース含有組成物の甘味を調べて、スクラロースの熱安定性を評価した。結果を表4に示す。
【0140】
【表4】
【0141】
その結果、イノシン酸ナトリウムを配合することによって、製法に関わらずスクラロースの甘味は強さ質共に加熱による低下が有意に抑制され、加熱に対して極めて高い安定性(耐性)を示した。その中でも噴霧乾燥法やドラムドライ法で調製したスクラロース含有組成物はよりすぐれた熱安定性を有していた。
実施例5
パラチニット100部、水30部、スクラロース0.2部及びイノシン酸ナトリウム0.016部を
混合して調製した糖液を150℃で煮詰め、ハードキャンディー(本発明品)をつくった。
また比較のため、イノシン酸ナトリウムを配合しない以外は上記と同様にしてハードキャンディー(比較品)を作成した。得られた各キャンディーを水にて固形分50重量%となるように希釈溶解した糖液の甘味(強さ、質)を、上記糖液処方においてイノシン酸ナトリウムを除いた成分を同様に配合して水にて50重量%になるように調製した糖液(非加熱)の甘味をコントロールとして比較して、イノシン酸ナトリウムのスクラロースに対する熱安定化作用を評価した。結果を表5に示す。
【0142】
【表5】
【0143】
イノシン酸ナトリウムを添加しないで調製したハードキャンデー(比較品)は、甘味の
強さ質ともに有意な低下が認められたのに対し、イノシン酸ナトリウムを添加して調製した本発明のハードキャンデーは加熱による甘味の劣下がなく極めて良好な甘味を維持していた。この結果から、これからヌクレオチドの塩であるイノシン酸ナトリウムをスクラロ
ースと共存させることによって、水分含量の少ない状態での極度の加熱においてもスクラロースを安定化でき、良好な甘味(強さ・質)を維持できることが示された。
実施例6
薄力粉100部、還元水飴45部、重炭酸ナトリウム0.6部、マーガリン50部、卵黄10部、香料0.4部及びスクラロース0.02部からなる組成物に、グアニル酸ナトリウムを0.002部添加、混合し、得られた生地を伸ばしてオーブンで170℃、40分間焼成し、本発明のクッキー(本発明品)を得た。また比較のため、グアニル酸ナトリウムを配合しない以外は上記と同様にしてクッキー(比較品)をつくった。得られたグアニル酸ナトリウムを配合したクッキー(本発明品)の甘味の強さ、質を評価点5としてグアニル酸ナトリウムを配合しないクッキー(比較品)の甘味の強さ、質を評価して、グアニル酸ナトリウムのスクラロースに対する熱安定化作用を評価した。結果を表6に示す。
【0144】
【表6】
【0145】
グアニル酸ナトリウムを添加しないで調製したクッキーは、甘味の強さ質ともに低下が認められたのに対し、グアニル酸ナトリウムを添加して調製した本発明のクッキーは所期の良好な甘味を有しており、熱安定性に優れていることがわかった。
実施例7
スクラロース(粉体)1部にクエルシトリン(粉体)を表7に示す割合で添加し、デキ
ストリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。次いで、この
組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にしてその甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表7に合わせて示す。
【0146】
【表7】
【0147】
その結果、クエルシトリン無添加の場合は加熱によってスクラロースの甘味が強さ質とともに有意に低下したが、クエルシトリンを添加するとその低下は有意に抑制できた。この結果からスクラロースにクエルシトリンを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さ質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例8
スクラロース(粉体)にメチルヘスペリジン、赤キャベツ色素(フラボノイド系色素)、及びビートレッド(ベタシアニン系色素)(以上全て粉体)をそれぞれ0.1部づつ添加し、デキストリンで計100部となるように調製してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にしてその甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表8に示す。
【0148】
【表8】
【0149】
その結果、無添加の場合は加熱によって甘味が強さ質ともに有意に低下したが、メチルヘスペリジン、赤キャベツ色素またはビートレッドを添加した場合には、その低下が有意に抑制できた。
【0150】
実施例7及び8の結果から、クエルシトリン、メチルヘスペリジン及び赤キャベツ色素等のフラボノイド及びフラボノイド配糖体、並びにビートレッド(ベタシアニン系色素)は、スクラロースの甘味を強さ質ともに安定化させる作用(熱安定化作用、熱耐性作用)があることがわかった。
実施例9
スクラロース(粉体)1部にミリシトリン(粉体)0.1部を添加し、デキストリンで計100部とし、粉体混合してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を3つに分け、一部はそのままスクラロース含有組成物(粉体混合物)とし、他の一部は水に溶かし噴霧乾燥し(噴霧乾燥物)、また残りの一部は水に溶かしドラムドライで乾燥した(ドラムドライ物)。なお、比較としてミリシトリンを含まない組成物を作成した(粉体混合物)。これらの組成物を130℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1に従って、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果表9に示す。
【0151】
【表9】
【0152】
その結果、ミリシトリンを配合することとによって、製法に関わらずスクラロース含有組成物の甘味は強さ質ともに加熱による低下が有意に抑制され、加熱に対して極めて高い安定性(耐性)を示した。その中でも噴霧乾燥法やドラムドライ法で調製したスクラロース含有組成物はよりすぐれた熱安定性を有していた。
実施例10
スクラロース(粉体)1部にタンニン酸(粉体)を表10に示す割合で添加し、デキス
トリンで計100部に調製して、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。次いでこ
の組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表10に示す。
【0153】
【表10】
【0154】
その結果、タンニン酸無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、タンニン酸を添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにタンニン酸を共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例11
スクラロース1部(粉体)に没食子酸またはコーヒー酸(いずれも粉体)をそれぞれ0.1部添加し、デキストリンで計100部となるように調製しスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表11に示す。
【0155】
【表11】
【0156】
その結果、無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、没食子酸またはコーヒー酸を添加することによってその低下が顕著に抑制できた。
【0157】
実施例10と11の結果から、タンニン酸、没食子酸及びコーヒー酸等のポリフェノールには、スクラロースの甘味を強さ質ともに安定化させる作用があることがわかった。
実施例12
スクラロース(粉体)1部に没食子酸(粉体)0.1部を添加し、デキストリンで計100部
となるように調製し、粉体混合してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を3つに分け、一部はそのままスクラロース含有組成物(粉体混合物)とし、他の
一部は水に溶かし噴霧乾燥し(噴霧乾燥物)、残りの一部は水に溶かしドラムドライで乾燥した(ドラムドライ物)。なお比較として没食子酸を含まない以外は上記と同様にして
スクラロース含有組成物を作成した(粉体混合物)。これらの組成物を130℃のオーブン
中で1時間加熱し、実施例1と同様にしてその甘味を調べて、スクラロースの熱安定性を
評価した。結果を表12に示す。
【0158】
【表12】
【0159】
その結果、没食子酸を配合することによって、製法に関わらず、スクラロースの甘味は強さ質ともに加熱による低下が有意に抑制され、加熱に対して極めて高い安定性(耐性)を示した。その中でも噴霧乾燥法やドラムドライ法で調製されたスクラロース含有組成物は、より優れた熱安定性を有していた。
実施例13
スクラロース(粉体)1部にフィチン酸ナトリウム(粉体)を表13に示す割合で添加
し、デキストリンで計100部に調製し、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。
次いで、この組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にしてその甘味を調べて、スクラロースの熱安定性を評価した。結果を表13に示す。
【0160】
【表13】
【0161】
その結果、フィチン酸ナトリウム無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、フィチン酸ナトリウムを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにフィチン酸ナトリウムを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例14
スクラロース(粉体)1部にグリセロリン酸ナトリウム(粉体)またはリボフラビンリン酸エステルナトリウム(粉体)をそれぞれ0.1部添加し、デキストリンで計100部に調製し、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にしてその甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表14に示す。
【0162】
【表14】
【0163】
その結果、無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、グリセロリン酸ナトリウムまたはリボフラビンリン酸エステルナトリウムを添加することによりその低下が顕著に抑制できた。
【0164】
実施例13及び14の結果から、フィチン酸、グリセロリン酸及びリボフラビンリン酸エステルのナトリウム塩などの有機リン酸化合物を、スクラロースと共存させることによって、スクラロースの甘味を強さ質ともに顕著に安定化できることが示された。
実施例15
スクラロース(粉体)1部にグリセロリン酸ナトリウム(粉体)0.1部を添加し、デキストリンで計100部に調製し、粉体混合してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た
。この組成物を3つに分け、一部はそのままスクラロース含有組成物(粉体混合物)とし
、他の一部は水に溶かし噴霧乾燥し(噴霧乾燥物)、残りの一部は水に溶かしドラムドライで乾燥した(ドラムドライ物)。なお比較としてグリセロリン酸ナトリウムを含まないスクラロース含有組成物を作成した(粉体混合物)。これら組成物を130℃のオーブン中
で1時間加熱し、実施例1と同様にしてその甘味を調べて、スクラロースの熱安定性を評
価した。結果を表15に示す。
【0165】
【表15】
【0166】
その結果、グリセロリン酸ナトリウムを配合することによって、製法に関わらず、スクラロースの甘味は強さ質ともに加熱による低下が有意に抑制され、加熱に対して極めて高い安定性(耐性)を示した。その中でも噴霧乾燥法やドラムドライ法で調製されたスクラロース含有組成物は、より優れた熱安定性を有していた。
実施例16
スクラロース(粉体)1部にグルタチオン、システイン又はインジゴカルミン(いずれも粉体)をそれぞれ0.1部添加し、デキストリンで計100部に調製してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表16に示す。
【0167】
【表16】
【0168】
その結果、無添加の場合は加熱によって甘味が強さ質ともに有意に低下したが、グルタチオン、システイン又はインジゴカルミンを添加すると、その低下が有意に抑制できた。
実施例17
スクラロース(粉体)1部にメチオニン(粉体)0.1部添加し、デキストリンで計100部
とし、粉体混合してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を3つに
分け、一部はそのままスクラロース含有組成物(粉体混合)とし、他の一部は水に溶かし噴霧乾燥し(噴霧乾燥物)、残りの一部は水に溶かしドラムドライで乾燥した(ドラムドライ物)。なお比較のためメチオニンを含まないスクラロース含有組成物を作成した(粉体混合物)。これらの組成物を130℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にしてその甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表17に示す。
【0169】
【表17】
【0170】
その結果、メチオニンを配合することによって、製法に関わらずスクラロースの甘味は強さ質共に加熱による低下が有意に抑制され、加熱に対して極めて高い安定性(耐性)を示した。その中でも噴霧乾燥法やドラムドライ法で調製したスクラロース含有組成物はよりすぐれた熱安定性を有していた。
【0171】
実施例16及び17の結果から、グルタチオン、システイン、インジゴカルミン及びメチオニン等の含硫黄化合物は、スクラロースの甘味を強さ質ともに安定化させる作用(熱安定化作用、熱耐性作用)があることがわかった。
実施例18
スクラロース(粉体)1部に乳酸カルシウム(粉体)を表18に示す割合で添加し、デ
キストリンで計100部としてスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。
次いで、この組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にしてその甘味を調べて、スクラロースの熱安定性を評価した。結果を表18に示す。
【0172】
【表18】
【0173】
その結果、乳酸カルシウム無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、乳酸カルシウムを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースに乳酸カルシウムを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例19
スクラロース(粉体)1部にグルコン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム又はクエン酸ナトリウム(いずれも粉体)をそれぞれ0.1部添加し、デキストリン
で計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にしてその甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表19に示す。
【0174】
【表19】
【0175】
その結果、無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸又はクエン酸のナトリウム塩を添加することによりその低下が顕著に抑制できた。
【0176】
実施例18及び19の結果から、乳酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸及びクエン酸のなどのヒドロキシ酸の塩を、スクラロースと共存させることによって、スクラロースの甘味を強さ質ともに顕著に安定化できることが示された。
実施例20
スクラロース1部に乳酸ナトリウム0.1部添加し、デキストリンで計100部とし、粉体混
合してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を3つに分け、一部は
そのままスクラロース含有組成物(粉体混合物)とし、他の一部は水に溶かし噴霧乾燥し(噴霧乾燥物)、残りの一部は水に溶かしドラムドライで乾燥した(ドラムドライ物)。なお比較のため乳酸ナトリウムを含まない組成物を作成した(粉体混合物)。これらの組
成物を130℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表20に示す。
【0177】
【表20】
【0178】
その結果、乳酸カルシウムを配合することによって、製法に関わらずスクラロースの甘味は強さ質共に加熱による低下が有意に抑制され、加熱に対して極めて高い安定性(耐性)を示した。その中でも噴霧乾燥法やドラムドライ法で調製したスクラロース含有組成物はよりすぐれた熱安定性を有していた。
実施例21
スクラロース1部にセサモールを表21に示す割合で添加し、デキストリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。次いでこの組成物を120℃のオーブ
ン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性
を評価した。結果を表21に示す。
【0179】
【表21】
【0180】
その結果、セサモール無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、セサモールを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにセサモールを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例22
スクラロース(粉体)1部にセサミン又はセサミノール(いずれも粉体)をそれぞれ0.1部添加し、デキストリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表22に示す。
【0181】
【表22】
【0182】
その結果、無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、セサミン又はセサミノールを添加することによりその低下が顕著に抑制できた。
【0183】
実施例21及び22の結果から、セサモール、セサミン又はセサミノールなどのリグナンを、スクラロースと共存させることによって、スクラロースの甘味を強さ質ともに顕著に安定化できることが示された。
実施例23
スクラロース1部にカロチン(粉体)を表23に示す割合で添加し、デキストリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。次いでこの組成物を120℃の
オーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱
安定性を評価した。結果を表23に示す。
【0184】
【表23】
【0185】
その結果、カロチン無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、カロチンを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにカロチンを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例24
スクラロース(粉体)1部にリコピン又はクチナシ黄色素(いずれも粉体)を0.1部添加し、デキストリンで計100部としスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組
成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表24に示す。
【0186】
【表24】
【0187】
その結果、無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、リコピン又はクチナシ黄色素を添加することによりその低下が顕著に抑制できた。
【0188】
実施例23及び24の結果から、カロチン、リコピン及びクチナシ黄色素等のカロテノイド及びその配糖体を、スクラロースと共存させることによって、スクラロースの甘味を強さ質ともに顕著に安定化できることが示された。
実施例25
スクラロース(粉体)1部にカロチン(粉体)0.1部を添加し、デキストリンで計100部
とし、粉体混合してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を3つに
分け、一部はそのままスクラロース含有組成物(粉体混合物)とし、他の一部は水に溶かして噴霧乾燥し(噴霧乾燥物)、残りの一部は水に溶かしドラムドライで乾燥した(ドラムドライ物)を得た。なお比較としてカロチンを含まない組成物を作成した(粉体混合物)。これらの組成物を130℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表25に示す。
【0189】
【表25】
【0190】
その結果、カロチンを配合することによって、製法に関わらずスクラロースの甘味は強さ質共に加熱による低下が有意に抑制され、加熱に対して極めて高い安定性(耐性)を示した。その中でも噴霧乾燥法やドラムドライ法で調製したスクラロース含有組成物はよりすぐれた熱安定性を有していた。
実施例26
スクラロース1部にdl-α-トコフェロール粉末製剤(デキストリンを基材として含量5
0%となるように調整されたもの;三栄源エフエフアイ(株)製)を表26に示す割合で添加し、デキストリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。
次いでこの組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表26に示す。
【0191】
【表26】
【0192】
その結果、トコフェロール無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、トコフェロールを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにトコフェロールを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例27
スクラロース(粉体)1部にd-β-トコフェロール又はd-γ-トコフェロールの粉末製剤
(いずれもデキストリンを基材として含量50%となるように調整されたもの;三栄源エフエフアイ(株)製)を0.1部添加し、デキストリンで計100部としスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表27に示す。
【0193】
【表27】
【0194】
その結果、無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、β-トコフェロール又はγ-トコフェロールを添加することによりその低下が顕著に抑制できた。
【0195】
実施例26及び27の結果から、α-、β-及びγ-トコフェロール等のトコフェロール
を、スクラロースと共存させることによって、スクラロースの甘味を強さ質ともに顕著に安定化できることが示された。
実施例28
スクラロース(粉体)1部にdl-トコフェロール酢酸エステル粉末製剤(デキストリンを基材として含量50%となるように調整されたもの;三栄源エフエフアイ(株)製))0.1部を添加し、デキストリンで計100部とし、粉体混合してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を3つに分け、一部はそのままスクラロース含有組成物(粉体混合物)とし、他の一部は水に溶かして噴霧乾燥し(噴霧乾燥物)、残りの一部は水に溶かしドラムドライで乾燥した(ドラムドライ物)を得た。なお比較としてトコフェロールを含まない組成物を作成した(粉体混合物)。これらの組成物を130℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表28に示す。
【0196】
【表28】
【0197】
その結果、トコフェロールを配合することによって、製法に関わらずスクラロースの甘味は強さ質共に加熱による低下が有意に抑制され、加熱に対して極めて高い安定性(耐性)を示した。その中でも噴霧乾燥法やドラムドライ法で調製したスクラロース含有組成物はよりすぐれた熱安定性を有していた。
実施例29
スクラロース(粉体)1部にグリチルリチン(粉体)を表29に示す割合で添加し、デ
キストリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。次いでこの
組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表29に示す。
【0198】
【表29】
【0199】
その結果、グリチルリチン無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、グリチルリチンを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにサポニンであるグリチルリチンを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例30
スクラロース(粉体)1部にコハク酸ナトリウム(粉体)を表30に示す割合で添加し
、デキストリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。次いで
この組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表30に示す。
【0200】
【表30】
【0201】
その結果、コハク酸ナトリウム無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、コハク酸ナトリウムを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにコハク酸ナトリウムを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例31
スクラロース(粉体)1部に酢酸ナトリウム又はフマル酸ナトリウム(いずれも粉体)
を0.1部添加し、デキストリンで計100部としスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を120℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表31に示す。
【0202】
【表31】
【0203】
その結果、無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、酢酸ナトリウム又はフマル酸ナトリウムを添加することによりその低下が顕著に抑制できた。
【0204】
実施例30及び31の結果から、コハク酸、酢酸及びフマル酸等の有機酸のナトリウム塩をスクラロースと共存させることによって、スクラロースの甘味を強さ質ともに顕著に安定化できることが示された。
実施例32
スクラロース(粉体)1部に酢酸ナトリウム(粉体)0.1部を添加し、デキストリンで計100部とし、粉体混合してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を3つに分け、一部はそのままスクラロース含有組成物(粉体混合物)とし、他の一部は水に溶かして噴霧乾燥し(噴霧乾燥物)、残りの一部は水に溶かしドラムドライで乾燥した(ドラムドライ物)を得た。なお比較として酢酸ナトリウムを含まない組成物を作成した(粉体混合物)。これらの組成物を130℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表32に示す。
【0205】
【表32】
【0206】
その結果、酢酸ナトリウムを配合することによって、製法に関わらずスクラロースの甘味は強さ質共に加熱による低下が有意に抑制され、加熱に対して極めて高い安定性(耐性)を示した。その中でも噴霧乾燥法やドラムドライ法で調製したスクラロース含有組成物はよりすぐれた熱安定性を有していた。
実施例33
スクラロース(粉体)1部にリン酸2ナトリウム(粉体)0.05部を添加し、デキストリ
ンで計100部とし、粉体混合してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組
成物を3つに分け、一部はそのままスクラロース含有組成物(粉体混合物)とし、他の一
部は水に溶かして噴霧乾燥し(噴霧乾燥物)、残りの一部は水に溶かしドラムドライで乾燥した(ドラムドライ物)を得た。なお比較として酢酸ナトリウムを含まない組成物を作成した(粉体混合物)。これらの組成物を130℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表33に示す。
【0207】
【表33】
【0208】
その結果、無機酸塩であるリン酸2ナトリウムを配合することによって、製法に関わらずスクラロースの甘味は強さ質共に加熱による低下が有意に抑制され、加熱に対して極めて高い安定性(耐性)を示した。その中でも噴霧乾燥法やドラムドライ法で調製したスクラロース含有組成物はよりすぐれた熱安定性を有していた。
実施例34
スクラロース(粉体)1部にアルギニン塩酸塩(粉体)0.05部を添加し、デキストリン
で計100部とし、粉体混合してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成
物を3つに分け、一部はそのままスクラロース含有組成物(粉体混合物)とし、他の一部
は水に溶かして噴霧乾燥し(噴霧乾燥物)、残りの一部は水に溶かしドラムドライで乾燥した(ドラムドライ物)を得た。なお比較として酢酸ナトリウムを含まない組成物を作成した(粉体混合物)。これらの組成物を130℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表34に示す。
【0209】
【表34】
【0210】
その結果、アミノ酸塩であるアルギニン塩酸塩を配合することによって、製法に関わらずスクラロースの甘味は強さ質共に加熱による低下が有意に抑制され、加熱に対して極めて高い安定性(耐性)を示した。その中でも噴霧乾燥法やドラムドライ法で調製したスクラロース含有組成物はよりすぐれた熱安定性を有していた。
実施例35
表35に示すように、スクラロース(粉体)10部にリン酸2ナトリウム(粉体)0.5部を添加し、これにアルギニン塩酸塩またはイノシン酸ナトリウム(いずも粉体)をそれぞれ0.5部配合し、パラチニットで計100部としてスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。これらの組成物を100℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。また比較として、スクラロースとパラチニットからなる組成物についても同様にして熱安定性を評価した。結果を表35に示す。
【0211】
【表35】
【0212】
その結果、パラチニットだけの配合では加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、リン酸2ナトリウムを添加することによりその低下が有意に抑制できた。またこのリン酸2ナトリウムのスクラロースに対する熱安定化作用は、アルギニン塩酸塩またはイノシン酸ナトリウムの併用によって増強され、スクラロースの甘味を強さ質ともに顕著に安定化できることが示された。
実施例36
スクラロース(粉体)1部にカフェイン(粉体)を表36に示す割合で添加し、デキス
トリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。次いでこの組成
物を100℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表36に示す。
【0213】
【表36】
【0214】
その結果、カフェイン無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、カフェインを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにカフェインを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例37
スクラロース(粉体)1部にニコチンアミド(粉体)0.1部を添加し、デキストリンで計100部とし、粉体混合してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。この組成物を3つに分け、一部はそのままスクラロース含有組成物(粉体混合物)とし、他の一部は水に溶かして噴霧乾燥し(噴霧乾燥物)、残りの一部は水に溶かしドラムドライで乾燥した(ドラムドライ物)を得た。なお比較としてニコチンアミドを含まない組成物を作成した(粉体混合物)。これらの組成物を110℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表37に示す。
【0215】
【表37】
【0216】
その結果、ニコチンアミドを配合することによって、製法に関わらずスクラロースの甘味は強さ質共に加熱による低下が有意に抑制され、加熱に対して極めて高い安定性(耐性)を示した。その中でも噴霧乾燥法やドラムドライ法で調製したスクラロース含有組成物はよりすぐれた熱安定性を有していた。
【0217】
実施例36及び37の結果から、カフェイン及びニコチンアミド等の塩基性物質をスクラロースと共存させることによって、スクラロースの甘味を強さ質ともに顕著に安定化できることが示された。
実施例38
表38に示すように、スクラロース(粉体)10部にニコチンアミド(粉体)1部を添加
し、これに乳酸カルシウムまたはイノシン酸ナトリウム(いずも粉体)をそれぞれ1部配合し、パラチニットで計100部としてスクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。こ
れらの組成物を100℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。また比較として、スクラロースとパラチニットからなる組成物についても同様にして熱安定性を評価した。結果を表38に示す。
【0218】
【表38】
【0219】
その結果、パラチニットだけの配合では加熱によってスクラロースの甘味が強さ質と
もに有意に低下したが、ニコチンアミドを添加することによりその低下が有意に抑制できた。またこのニコチンアミドのスクラロースに対する熱安定化作用は、乳酸カルシウムまたはイノシン酸ナトリウムの併用によって増強され、スクラロースの甘味を強さ質ともに顕著に安定化できることが示された。
実施例39
スクラロース(粉体)1部にEDTA2ナトリウム(粉体)を表39に示す割合で添加
し、デキストリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。次い
でこの組成物を100℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表39に示す。
【0220】
【表39】
【0221】
その結果、EDTA2ナトリウム無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、EDTA2ナトリウムを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにEDTA2ナトリウム等のキレート剤を共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示唆された。
実施例40
スクラロース(粉体)1部にメラノイジン(粉体)を表40に示す割合で添加し、デキ
ストリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。次いでこの組
成物を100℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表40に示す。
【0222】
【表40】
【0223】
その結果、メラノイジン無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、メラノイジンを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにメラノイジンを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例41
スクラロース(粉体)1部にグルコレダクトン(粉体)を表41に示す割合で添加し、
デキストリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。次いでこ
の組成物を100℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表41に示す。
【0224】
【表41】
【0225】
その結果、グルコレダクトン無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、グルコレダクトンを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにグルコレダクトン等のレダクトンを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示唆された。
実施例42
スクラロース(粉体)1部にホスファチジルコリン(粉体)を表42に示す割合で添加
し、デキストリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合物)を得た。次い
でこの組成物を100℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表42に示す。
【0226】
【表42】
【0227】
その結果、ホスファチジルコリン無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、ホスファチジルコリンを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにホスファチジルコリン等のリン脂質を共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示唆された。
実施例43
スクラロース(粉体)1部にブチルヒドロキシアニソール(BHA)(粉体)を表43
に示す割合で添加し、デキストリンで計100部とし、スクラロース含有組成物(粉体混合
物)を得た。次いでこの組成物を100℃のオーブン中で1時間加熱し、実施例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの熱安定性を評価した。結果を表43に示す。
【0228】
【表43】
【0229】
その結果、BHA無添加の場合には加熱によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、BHAを添加するとその低下が有意に抑制できた。この結果からスクラロースにBHAを共存させることによって、スクラロースの甘味が強さと質ともに顕著に安定化することが示された。
実施例44
表44に示すように没食子酸(5部)、乳酸カルシウム(5部)をそれぞれ単独および併用(計10部)してスクラロース1部に添加し、デキストリンで計100部にし、スクラロ
ース含有組成物(粉体混合物)を得た。次いでこの組成物を40℃で6ヶ月間保存し、実施
例1と同様にして、その甘味を調べてスクラロースの保存安定性を評価した。結果を表44に示す。
【0230】
【表44】
【0231】
無添加の配合、40℃下6ヶ月間の保存によってスクラロースの甘味が強さ質ともに有意に低下したが、没食子酸または乳酸カルシウムを添加することによりその低下が有意に抑制できた。また両者を併用することによって、スクラロースの甘味を強さ質ともにより一層安定化できることが示された。
実施例45
スクラロース(粉体)1部に対して、表45に示す割合でイノシン酸ナトリウム、蛋白
加水分解物、グルタミン酸ナトリウム、酒石酸または塩化ナトリウム(いずれも粉体)をそれぞれ粉体混合してスクラロース含有組成物(粉体混合物)を調製した。これをそれぞれポリエチレン製の袋に15gずつとり、60℃で保管して外観変化を観察した。なお、比較としてスクラロース単独についても同様に試験した。結果を表45に併せて示す。
【0232】
【表45】
【0233】
この結果からわかるように、スクラロース単品は60℃の保存3日後にすでに着色し、6日後には顕著に着色したが、本発明の製剤は保存6日後でも有意に着色が抑えられていた。このことからスクラロースは、イノシン酸ナトリウム、蛋白加水分解物、グルタミン酸ナトリウム、酒石酸または塩化ナトリウムを併用することによって安定性が向上し、加温時の長期保存によっても着色を有意に抑制できることが示された。
【0234】
なお、スクラロース単品及び上記各種の組成物を25℃で12日間保管した場合は、いずれも着色は認められなかった。
実施例46 ハードキャンディー
パラチニット100部と水30部を攪拌混合し、減圧下(真空圧14.6kPa)で150℃に加熱し
ながら煮詰めた後、減圧を止め、スクラロース0.1部と表46に示す各物質0.02部を添加
混合し、加熱しながら常圧140℃にて保持した。かかる糖液を0分,10分,20分,3
0分及び60分経過毎にサンプリングし、ディスク状の型に充填成型して1個3gのハードキャンディーを調製した。これらの各ハードキャンディーについて甘味の強度及び質を20名のパネラーにより官能試験してもらい、スクラロースの熱安定性を評価した。尚、熱安定性評価は、上記の140℃保持0分経過のキャンディーをコントロールとしてその甘
味(強度、質)を5として、その甘味との差を下記に示す基準に従って評価した。なお、
各コントロール間には味覚上の差はなかった。結果を表46に示す。尚、表46中に示す/は、「甘味の強度/甘味の質」を意味する。
【0235】
変化なし かすかに変化 やや変化 ある程度変化 変化あり
甘味の強度 5 4 3 2 1
甘味の質 5 4 3 2 1
(マイルド感)
【0236】
【表46】
【0237】
この結果から、スクラロースの上記物質を併用することにより、140℃というきわめて
過酷な高温下でも、スクラロースの甘味の強度、質ともにその減少が抑えられ、スクラロースの熱安定性が大幅に上昇したことが判った。その中でも、クエン酸三ナトリウムが顕著に熱安定性向上効果を示すことが判った。
実施例47 酸性ハードキャンディー
実施例46において最も効果の高かったクエン酸三ナトリウムを用いて酸性のハードキャンディーを調製し、スクラロースの酸性下での熱安定性を評価した。具体的には、まずパラチニット100部と水30部を攪拌混合し、減圧下(真空圧14.6kPa)で150℃に加熱しながら煮詰めた後、減圧を止め、140℃まで冷却し、クエン酸及びクエン酸三ナトリウムをこの順で表47に示す割合で添加し、攪拌溶解した。次いで、これにスクラロース0.03部を添加し攪拌溶解した後、常圧で加熱しながら140℃に保持した。かかる糖液を10分、30分、60分経過毎にサンプリングし、ディスク状の型に充填成型して1個3gのハードキャンディを調製した。これらの各ハードキャンディーについて甘味の強度及び質を実施例46と同様にして官能試験し、スクラロースの熱安定性を評価した。結果を表47に示す。
【0238】
【表47】
【0239】
この結果から、酸性のハードキャンディにおいて、クエン酸三ナトリウムの併用により、140℃というきわめて過酷な高温下でも、スクラロースの甘味の強度、質ともにその減少が最小限に抑えられ、スクラロースの熱安定性が大幅に上昇することが判った。
実施例48 ハーブキャンディー
<処方>
1.還元麦芽糖水飴 50.0
2.パラチニット 49.0
3.還元水飴 21.0
4.スクラロース 0.02
5.クエン酸三ナトリウム 0.007
6.ハーブ エキストラクト 0.6
7.ペパーミント香料 0.2
8.カラメル色素 0.2
9.水 30.0
煮詰めて全量100部とする。
【0240】
上記成分1〜4に成分9を加え、減圧煮詰器にて真空圧14.6kPaで150℃まで煮詰めた後、成分5〜8を混合し、加熱しながら150℃に保持しながら型に充填し、冷却して成型し、ハーブキャンディを調製した。
【0241】
上記製造工程において、全成分を混合した糖液を150℃に保持しながらその全てを型に
充填し終わるのに30分を要したが、充填開始直後に得られたハーブキャンディーと充填終了直前に得られたハーブキャンディーは、甘味の強度及び甘味質いずれも差が認められず、良好な風味を有していた。また、得られたハーブキャンディは30℃で1年間保存後も調製直後のハーブキャンディーと変わらぬ甘味(強度及び質)と風味を有していた。
実施例49 アップルキャンディ(pH2.6)
<処方>
1. 還元麦芽糖水飴 50
2. パラチニット 40
3. 還元水飴 21
4. 還元乳糖(一水和物) 9
5. スクラロース 0.03
6. 乳酸カルシウム 0.02
7. クエン酸(結晶)N 1.5
8. 色素 0.02
9. 香料 0.2
10. 水 30
煮詰めて全量100部とする。
【0242】
上記成分1〜4に成分10を加えて常圧190℃で煮詰めた後、140℃まで冷却し、次いで成分5〜9を加えて、加熱しながら140℃に保持しながら型に充填し、成型、冷却してアッ
プルキャンディ(pH2.6)を調製した。
【0243】
上記製造工程において、全成分を混合した糖液を140℃に保持しながらその全てを型に
充填し終わるのに45分を要したが、充填開始直後に得られたアップルキャンディーと充填終了時に得られたアップルキャンディーは、甘味の強度及び甘味質いずれも差が認められず、良好な風味を有していた。また、得られたアップルキャンディは40℃で1年間保存後も調製直後のアップルキャンディーと変わらぬ甘味(強度及び質)と風味を有していた。
【0244】
更に、上記処方の乳酸カルシウムに代えて5倍濃縮リンゴ果汁2部を添加した以外は上記と同様にしてアップルキャンディーを調製したが、乳酸カルシウム添加品と同様の甘味の強度及び甘味質の維持効果があった。
実施例50 オレンジ果汁入り飲料
<処方>
スクラロース 0.008
濃縮バレンシアオレンジ果汁(フ゛リックス55°) 4.4
クエン酸(結晶) 0.16
ビタミンC 0.03
ネイティブジェランガム 0.025
ペクチン 0.0025
オレンジ香料 0.25
(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)
水 残 部
合 計 100.0000 部
まず、水にネイティブジェランガムとペクチンとを加え、80℃で10分間攪拌し、その中にオレンジ香料以外をすべて加え、93℃まで加熱しながら攪拌し、オレンジ香料を加えて均一に攪拌した後、容器に充填して、オレンジ果汁入り飲料を得た。なお、濃縮バレンシアオレンジ果汁(ブリックス55°)はあらかじめヘスペリジナーゼ処理をしてヘスペリジンを分解除去したものを用いた。