(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5946552
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】新規出店候補地選定システム、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20160623BHJP
【FI】
G06Q30/02 300
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-26312(P2015-26312)
(22)【出願日】2015年2月13日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】509070463
【氏名又は名称】株式会社コロプラ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100153028
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 忠
(72)【発明者】
【氏名】大西 一聡
【審査官】
木方 庸輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−203272(JP,A)
【文献】
特開2003−288459(JP,A)
【文献】
特開2003−295758(JP,A)
【文献】
特開2002−334199(JP,A)
【文献】
特開2003−141325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存店舗、及び、該既存店舗を中心とする360度方位を等分割するための分割数(方位分割の分割数)を指定するための入力手段と、
少なくとも各既存店舗とその顧客の情報を格納したデータベースから、前記方位分割により区分された各方位範囲について前記既存店舗と当該既存店舗を利用する顧客の居住地間の距離情報を取得するための距離情報取得手段と、
前記取得された距離情報に基づいて前記区分された各方位範囲ごとに評価値を計算するための評価値計算手段と、
各方位範囲の前記評価値を所定の評価基準に基づいて判定し、方位範囲を選定するための方位範囲選定手段と、
を有していることを特徴とする新規出店候補地選定システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記距離情報には、既存店舗と顧客居住地間の直線距離、実経路距離、時間距離(移動時間)が含まれることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシステムにおいて、各方位範囲ごとの前記評価値は、
M = Σi f(di) (diは既存店舗と顧客居住地間の距離、f(di)はdiの単調増加関数、iは該方位範囲に居住する顧客の顧客ID)
で表されることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、
f(di)= diα (αはパラメータ)
で表されることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のシステムにおいて、前記所定の評価基準は、前記評価値の最大値を判定するための評価基準であることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のシステムであって、前記方位範囲選定手段により選定された前記方位範囲の中で新規出店候補地として有力な目安位置を、前記既存店舗と当該既存店舗を利用する顧客の居住地間の距離情報と顧客数の分布に基づいて設定するための目安位置選定手段を更に備えたことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記既存店舗が自社店舗であるか否かに応じて、前記目安位置を異ならせるようにしたことを特徴とするシステム。
【請求項8】
コンピュータが、入力された既存店舗、及び、該既存店舗を中心とする360度方位を等分割するための分割数(方位分割の分割数)に基づき、少なくとも各既存店舗とその顧客の情報を格納したデータベースから、前記方位分割により区分された各方位範囲について前記既存店舗と当該既存店舗を利用する顧客の居住地間の距離情報を取得するステップと、
コンピュータが、前記取得された距離情報に基づいて前記区分された各方位範囲ごとに評価値を計算するステップと、
コンピュータが、各方位範囲の前記評価値を所定の評価基準に基づいて判定し、方位範囲を選定するステップと、
を有していることを特徴とする新規出店候補地選定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記距離情報には、既存店舗と顧客居住地間の直線距離、実経路距離、時間距離(移動時間)が含まれることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の方法において、各方位範囲ごとの前記評価値は、
M = Σi f(di) (diは既存店舗と顧客居住地間の距離、f(di)はdiの単調増加関数、iは該方位範囲に居住する顧客の顧客ID)
で表されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
f(di)= diα (αはパラメータ)
で表されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項8〜11の何れか1項に記載の方法において、前記所定の評価基準は、前記評価値の最大値を判定するための評価基準であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項8〜12の何れか1項に記載の方法であって、前記選定された前記方位範囲の中で新規出店候補地として有力な目安位置を、前記既存店舗と当該既存店舗を利用する顧客の居住地間の距離情報と顧客数の分布に基づいて設定するステップを更に備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記既存店舗が自社店舗であるか否かに応じて、前記目安位置を異ならせるようにしたことを特徴とする方法。
【請求項15】
コンピュータに請求項8〜14の何れか1項に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規出店候補地選定システム、方法、及びプログラムに係り、特に、新規出店地決定のための目安となる出店候補地を簡便に選定するための新規出店候補地選定システム、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ある地域に新規に出店する場合には、事前に出店候補地を選定し、例えば、新規に出店する地域に関する統計データ、既存の競合店のデータ、商圏データ等を収集して売上予測等のシミュレーションが行った上で、シミュレーション結果等を勘案して最終的に出店地を決定している(例えば、特許文献1参照)。
また、出店候補地の選定に当たって、複数の候補地の中から所定のアルゴリズムに基づいて有力候補地を決定することも行われている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−240799号公報
【特許文献2】特開2014−203272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、出店候補地の選定に当たって候補を絞るためには、十分な知識・経験を必要とするため、専門家の助力等が必要であり、出店候補地の選定を簡便に行えるものではなかった。
【0005】
また、複数の候補地の中から有力候補地を決定する場合であっても、複数の候補地の設定には知識・経験を必要とするため、やはり、出店候補地の選定を簡便に行えるものではなかった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、新規出店地決定のための目安となる出店候補地を簡便に選定するための新規出店候補地選定システム、方法、及びプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することができる。
【0008】
本発明の一実施形態は、既存店舗、及び/又は、該既存店舗を中心とする360度方位を等分割するための分割数(方位分割の分割数)を指定するための入力手段と、少なくとも各既存店舗とその顧客の情報を格納したデータベースから、前記方位分割により区分された各方位範囲について前記既存店舗と当該既存店舗を利用する顧客の居住地間の距離情報を取得するための距離情報取得手段と、前記取得された距離情報に基づいて前記区分された各方位範囲ごとに評価値を計算するための評価値計算手段と、各方位範囲の前記評価値を所定の評価基準に基づいて判定し、方位範囲を選定するための方位範囲選定手段と、を有していることを特徴とする新規出店候補地選定システムに係るものである。
【0009】
また、上記各実施形態において、前記距離情報には、既存店舗と顧客居住地間の直線距離、実経路距離、時間距離(移動時間)が含まれるものである。なお、既存店舗がオフィス街にある場合等には顧客の居住地として、実際の居住地ではなく、勤務地を採用することができる。
【0010】
また、上記実施形態において、各方位範囲ごとの前記評価値が、M = Σ
i f(d
i) (d
iは既存店舗と顧客居住地間の距離、f(d
i)はd
iの単調増加関数、iは該方位範囲に居住する顧客の顧客ID)で表されるようにしてもよく、前記関数f(d
i)として、f(d
i)= d
iα (αはパラメータ)を採用してもよい。
【0011】
また、上記各実施形態において、前記所定の評価基準として、前記評価値の最大値を判定するための評価基準を採用してもよい。
【0012】
また、上記各実施形態において、前記方位範囲選定手段により選定された前記方位範囲の中で新規出店候補地として有力な目安位置を、前記既存店舗と当該既存店舗を利用する顧客の居住地間の距離情報と顧客数の分布に基づいて設定するための目安位置選定手段を更に備えるようにしてもよい。
【0013】
また、目安位置選定手段を更に備えるものにおいて、前記既存店舗が自社店舗であるか否かに応じて、前記目安位置を異ならせるようにしてもよい。
【0014】
また、本発明の他の実施形態は、上記新規出店候補地選定システムと略同様の内容を有する新規出店候補地選定方法、及び、該新規出店候補地選定方法をコンピュータにより実現するためのプログラムに係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の新規出店候補地選定システムの一実施形態によれば、出店候補地の選定を簡便に行うことができる。
【0016】
なお、本発明の新規出店候補地選定システムを一例に作用効果を説明したが、新規出店候補地選定方法、及び、プログラムにおいても同様の作用効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における新規出店候補地選定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、データベースにおけるデータの格納形態の一例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、データベースにおけるデータの格納形態の他の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、各方位範囲についてのモーメントによる評価値計算を模式的に示した図である。
【
図4】
図4は、各方位範囲についてのモーメントによる評価値計算の計算結果をプロットした図である。
【
図5A】
図5Aは、目安位置選定手段を用いて新規出店候補地の目安位置を求める手法を説明するための説明図である。
【
図5B】
図5Bは、自社店舗間での競合を防止し得るための目安位置の別の設定手法を説明するための説明図である
【
図6】
図6は、新規出店候補地を選定する方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る新規出店候補地選定システム、方法、及びプログラムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下において説明する実施の形態に限定されるべきではなく、特許請求の範囲の記載に基き解釈されるべきである。また、当業者であれば、他の類似する実施形態を使用することができること、また、本発明から逸脱することなく適宜形態の変更又は追加を行うことができることに留意すべきである。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態における新規出店候補地選定システムの構成を示すブロック図である。
新規出店候補地選定システム1は、既存店舗や既存店舗を中心とする360度方位を等分割するための分割数(方位分割の分割数)を指定するための入力手段2と、少なくとも各既存店舗とその顧客のデータを格納したデータベース10から、前記方位分割により区分された各方位範囲について前記既存店舗と当該店舗を利用する顧客の居住地間の距離情報(以下、「既存店舗と顧客居住地間の距離情報」という。なお、前述のように、既存店舗がオフィス街にある場合等には顧客の居住地として、実際の居住地ではなく、勤務地を採用することができる。)を取得するための距離情報取得手段3と、前記取得された距離情報に基づいて前記区分された各方位範囲ごとに評価値を計算するための評価値計算手段4と、各方位範囲の前記評価値を入力し所定の評価基準に基づいて方位範囲を選定するための方位範囲選定手段5とを有している。
【0020】
前記入力手段2は、既存店舗や方位分割の分割数を指定するための手段であり、文字を入力可能なキーボード、ポインティングデバイス、通信による入力手段、光学読取装置等の公知の入力手段を含む。例えば、入力手段2により既存店舗を指定する場合には、画面上に既存店舗の候補を表示し、その中からポインティングデバイスで位置を指定することにより既存店舗を決定してもよい。また、方位分割の分割数は指定を省略することもでき、その場合にはデフォルト値が設定される。
【0021】
前記データベース10は、例えば、
図2Aに示すように、各既存店舗ごとに、顧客名、顧客ID、顧客居住地情報、既存店舗と顧客居住地間の距離情報からなるデータを格納したものであってもよく、また、
図2Bに示すように、顧客名、顧客ID、顧客居住地情報、顧客が利用する既存店舗と顧客居住地間の距離情報からなるデータを格納したものであってもよい。なお、既存店舗と顧客居住地間の距離情報には、例えば、既存店舗と顧客居住地間の直線距離、実経路距離、時間距離(移動時間)が含まれる。
【0022】
前記距離情報取得手段3は、前記データベース10から、方位分割により区分された各方位範囲内に居住し指定された既存店舗を利用する顧客について、顧客IDと前記既存店舗と顧客居住地間の距離情報とを取得し、そのデータを各方位範囲ごとに一時的に格納するための手段である。
【0023】
前記評価値計算手段4は、各方位範囲ごとに、前記既存店舗と顧客居住地間の距離情報を用いて所定の計算式による計算を行い、各方位範囲ごとの評価値を算出するための手段である。評価値Mを算出するための計算式は、例えば、次の式(1)で表される。
【0024】
M = Σ
i f(d
i) (1)
ここで、d
iは既存店舗と顧客居住地間の距離であり、距離として、既存店舗と顧客居住地間の直線距離、実経路距離、時間距離(移動時間)のいずれも適用できる。また、f(d
i)は、d
iの単調増加関数であり、その関数形は適宜設定し得るが、例えば、f(d
i)=d
iαとすることができる。但し、αはパラメータであり、この場合の評価値Mを「モーメント」と呼ぶ。
なお、iは顧客IDを意味し、総和(Σ
i)は当該方位範囲に居住する顧客について取られるものである。
【0025】
図3は、方位範囲1〜12についての前記モーメントによる評価値計算を模式的に示した図である。また、
図4は、方位範囲1〜12についての前記モーメントによる評価値計算の計算結果(評価値1〜12)をプロットした図であり、この場合には、評価値4が、評価値1〜12の中で最大値となることから、方位範囲4が評価値の最大値を与える方位範囲となる。
なお、
図3には、東西南北に延びる4本の分割線を含む12分割の例が示されているが、分割線の方向は、これに限られるものではなく、
図3の方位を小角度だけ回転させた形の方位分割であってもよい。
【0026】
前記式(1)からも明らかなように、上記評価値Mは、方位範囲に居住する顧客数が多いほど、また、既存店舗と顧客居住地間の距離が大きい顧客数が多いほど大きくなる。即ち、上記評価値Mは、各方位範囲について、当該既存店舗が遠方からの顧客をも誘引する誘引力の大きさを概略示すものといえる。
【0027】
前記方位範囲選定手段5は、各方位範囲の評価値Mを入力し所定の評価基準に基づいて方位範囲を選定するための手段である。所定の評価基準として、例えば、評価値Mの最大値を与えるような方位範囲を選択する評価基準を採用することができる。
【0028】
前記方位範囲選定手段5により方位範囲が選択されることにより新規出店候補地は絞られるが、選択された方位範囲の中でどの場所が新規出店候補地として有力と考えられるか、その目安を与えることができれば一層利便性を増大させることができる。
【0029】
そこで、新規出店候補地選定システム1に、更に、選択された方位範囲の中でどの場所が新規出店候補地として有力と考えられるか、その目安を与えるための目安位置選定手段6を付加することが望ましい。
【0030】
図5Aは、前記目安位置選定手段6を用いて新規出店候補地の目安位置を求める手法を説明するための説明図である。
図5Aには、横軸に既存店舗と顧客居住地間の距離が、縦軸に顧客数が取られた、既存店舗と顧客居住地間の距離と顧客数の分布を表すグラフが示されており、横軸上の点Gが、既存店舗と顧客居住地間の距離の重心位置(縦軸に平行な直線で区切られるグラフの左右の領域の面積が等しくなるような横軸上の点の位置であってもよい)を表している。例えば、この点Gを前記目安位置として選定すればよい。
【0031】
但し、既存店舗が自社店舗である場合には、新規店舗と既存店舗との距離が小さいと自社店舗同士で競合が生ずる恐れがある。このような競合を防止するためには、新規店舗と既存店舗との距離をある程度大きくすることが有効と考えられるが、そのような場合には、
図5Aにおける点Hを目安位置として選定すればよい。因みに、点Hは、横軸上で点Gの2倍の距離に位置した点である。
【0032】
図5Bは、前記のような自社店舗間での競合を防止し得るための目安位置の別の設定手法を説明するための説明図である。
図5Bにおいては、所定の距離r以内の範囲を除いたグラフの領域に対して重心位置G’を求め、その位置を前記目安位置として選定するものであり、このような手法も新規及び既存両店舗間の競合を防止する上で有効である。
ただし、新規出店候補地の目安位置を求める手法は、前述の例に限られるものではなく、目安位置は、既存店舗と顧客居住地間の距離と顧客数の分布に基づき適宜設定し得るものである。
【0033】
なお、上記諸手段は、上記処理を行う専用のハードウエアであってもよいが、コンピュータがプログラムを実行することにより各処理段階ごとに実現される仮想的手段(所謂、機能実現手段)であってもよい。
【0034】
次に、上記構成を有する新規出店候補地選定システム1を用いて、新規出店候補地を選定する方法について
図6のフローチャートにしたがって説明する。
【0035】
まず新規に出店を予定している店の近傍の既存店舗を入力する。この場合、例えば、画面上に表示された地図上に既存店舗の候補を表示し、表示された候補の中から既存店舗を指定することにより既存店舗を決定してもよいし、画面上に既存店舗のリストを表示し、その中から選択するようにしてもよい。次に、必要に応じ方位分割の分割数を入力する。ここで、方位分割の分割数とは、前述のように、既存店舗を中心とする360度方位を当分割するための分割数を意味するものであるが、分割数の指定を省略することもでき、その場合にはデフォルト値が設定される(ステップS10)。
【0036】
次に、入力(指定)された既存店舗を中心とし、入力分割数(又はデフォルト値)で方位分割された各方位範囲に居住地を有する前記既存店舗の顧客について、顧客IDと前記既存店舗と顧客居住地間の距離情報をデータベースより取得する。前記データベースとしては、例えば、
図2Aに示すように、各既存店舗ごとに、顧客名、顧客ID、顧客居住地情報、既存店舗と顧客居住地間の距離情報からなるレコードを格納したものや、
図2Bに示すように、顧客名、顧客ID、顧客居住地情報、顧客が通う既存店舗と顧客居住地間の距離情報からレコードを格納したものがあるが、データベースの格納形態はこれらに限定されるものではない。なお、既存店舗と顧客居住地間の距離情報には、例えば、既存店舗と顧客居住地間の直線距離、実経路距離、時間距離(移動時間)が含まれる。
【0037】
図2Aに示されるような格納形態のデータベースを検索する場合には、指定された既存店舗を利用する顧客について、顧客居住地情報を用いて各方位範囲に属する顧客を特定し、各方位範囲ごとに、レコード情報から顧客ID、既存店舗と顧客居住地間の距離情報を取得して、それらの情報を各方位範囲ごとに記憶装置に一時格納する。また、
図2Bに示されるような格納形態のデータベースを検索する場合には、指定された既存店舗を利用する顧客を検索して、各顧客のレコード情報を取得し、そのレコード情報から顧客居住地情報を取得して各方位範囲に属する顧客を特定し、各方位範囲ごとに、顧客ID、既存店舗と顧客居住地間の距離情報を取得して、それらの情報を各方位範囲ごとに記憶装置に一時格納する(ステップS20)。
【0038】
次に、各方位範囲ごとに一時格納した距離情報から所定の計算式を利用して各方位範囲ごとに評価値Mを算出する。算出式については、前述したように、例えば、以下の式を採用することができる。
M = Σ
i f(d
i)
但し、d
iは既存店舗と顧客居住地間の距離であり、距離として、既存店舗と顧客居住地間の直線距離、実経路距離、時間距離(移動時間)のいずれも適用でき、また、f(d
i)は、d
iの単調増加関数である。なお、iは顧客IDを意味し、総和(Σ
i)は当該方位範囲に居住する顧客について取られるものである。
【0039】
f(d
i)の一例として、以下の式を採用することができる。
f(d
i)=d
iα
但し、αはパラメータであり、好ましくは、α>1である。
なお、この場合の評価値Mを「モーメント」と呼ぶこととすれば、このモーメントが大きいほど、当該既存店舗に遠い距離から多くの顧客が来店しているということを概略示しており、各方位範囲ごとのモーメントは、各方位範囲についての既存店舗の遠方顧客の顧客誘引力の大きさを概略示すものといえる。
【0040】
そして、各方位範囲ごとに算出された評価値Mを、各方位範囲ごとに記憶装置に一時格納する(ステップS30)。なお、各方位範囲ごとに算出された評価値Mを画面表示やプリントアウト等により出力するようにしてもよい。その場合には、例えば、
図4に図示されるような態様で、各方位範囲ごとに、算出された評価値Mが表わされる。
【0041】
次に、各方位範囲ごとの評価値Mを所定の判定基準に基づいて判定し、基準に合致する方位範囲を選定する。この所定の評価基準として、例えば、評価値Mの最大値を与えるような方位範囲を選択する評価基準を採用することができるが、評価基準はこれに限られるものではない。そして、選定された新規出店のための方位範囲が、画面表示やプリントアウト等により出力される(ステップS40)。
【0042】
前記ステップ40までを実施することにより、新規出店のための方位範囲が選択され、新規出店候補地は絞られるが、選択された方位範囲の中でどの場所が新規出店候補地として有力と考えられるか、その目安を与えることができれば一層利便性を増大させることができる。
【0043】
そこで、更に、選択された方位範囲の中でどの場所が新規出店候補地として有力と考えられるか、その目安を与えることが望ましい。この目安の与え方に係る手法については、
図5A、
図5Bに関連して既に詳述したので説明は省略するが、既存店舗と顧客居住地間の距離と顧客数の分布に基づいて、選定された方位範囲の中で新規出店候補地の目安位置が取得され、画面表示やプリントアウト等により出力される(ステップS50)。
【0044】
そして、このようにして取得された新規出店候補地について、例えば、新規に出店する地域に関する統計データ、既存の競合店のデータ、商圏データ等を収集して売上予測等のシミュレーションが行った上で、シミュレーション結果等を勘案して最終的に出店の可否を決定することができる。また、新規出店候補地を微修正して更なるシミュレーションを行い、シミュレーション結果等を勘案して最終的に出店の可否を決定するようにしてもよい。
【0045】
上記ステップ10における方位分割に関し補足しておく。
図3には、東西南北に延びる4本の分割線を含む12分割の例が示されているが、
図3の方位を小角度だけ回転させた形の方位分割をいくつか用意しておき、それぞれについて、前記ステップ20〜40を実行して、評価値Mの最大値が最大になるような方位分割を採用するようにしてもよい。
【0046】
また、ステップ10において、新規に出店を予定している店の近傍の既存店舗を入力する代わりに、新規出店を予定している地域を指定し、当該地域に含まれる既存店舗について前記ステップ20〜50を実行し、その結果を画面表示やプリントアウト等により出力してもよい。その際、方位分割数は、手作業で入力してもよいし、デフォルト値で与えてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1:新規出店候補地選定システム
2:入力手段
3:距離情報取得手段
4:評価値計算手段
5:方位範囲選定手段
6:目安位置選定手段
10:データベース
【要約】
【課題】専門的な知識・経験を必要とすることなく、新規出店候補地の選定を簡便に行う。
【解決手段】既存店舗、及び/又は、該既存店舗を中心とする360度方位を等分割するための分割数(方位分割の分割数)を入力し(S10)、少なくとも各既存店舗とその顧客の情報を格納したデータベースから、前記方位分割により区分された各方位範囲について前記既存店舗と当該既存店舗を利用する顧客の居住地間の距離情報を取得する(S20)。そして、前記取得された距離情報に基づいて前記各方位範囲ごとに評価値Mを計算し(S30)、各方位範囲の前記評価値Mを所定の評価基準に基づいて判定し方位範囲を選定する(S40)。さらに、選定された方位範囲の中で新規出店候補地の目安位置を取得する(S50)ようにしてもよい。
【選択図】
図6