【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 地熱発電技術研究開発/地熱発電の導入拡大に資する革新的技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明を実施するための実施形態について、熱交換器で熱流体の熱交換を行う熱交換システムを一例にして説明する。しかしながら本発明の浄化装置は熱交換システムに適用されるに留まらず、熱交換システム以外の種々のシステムにも適用が可能である。
【0016】
≪第1実施形態≫
図1は、本発明の第1実施形態に係る浄化装置およびこの浄化装置を含む熱交換システムの全体構成図である。
本実施形態の熱交換システムは、熱流体が流れる流路に接続されるとともに、陽極と陰極とが対向して配置されて前記陽極と前記陰極との間に空間が形成された容器と、前記空間に所定の液体が介在した状態で前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する制御を行うとともに、前記所定の液体に前記電圧を印加して生成した電解水を貯留しつつ当該電解水の少なくとも一部を前記流路に供給する制御を行う制御装置と、を含む。
より具体的な構成としては、熱交換システムは、流路が形成された第1配管L1〜第16配管L16、熱交換器1、補助熱交換器2、蒸気タービン3、発電機4、覆水(凝縮)器5、浄化装置6(6a、6b、6c)および全体制御装置7を含んで構成されている。なお、以下で詳述する構成以外については、例えば特開2013−170553号公報や特開2014−181697号公報、特開2005−337060号公報等に記載された公知の発電システムを適宜参照してもよい。
【0017】
浄化装置6は、本実施形態においては、電解水生成槽6a、酸性水タンク6b、アルカリ水タンク6c、および配管L(L3、L4、L5など)を含んで構成されており、水源WSから図示しないポンプなど介して液体が供給される。そしてこの浄化装置6では、水源WSから供給された液体を電気分解して電解水を生成し、この生成した電解水を貯留することが可能となっている。
水源WSは、本実施形態では後述する熱流体源HSとは独立した水源であり、例えば上水道などが例示される。すなわち本実施形態では、上水道から水が配管L3を介して電解水生成槽6aに供給される。
なお、浄化装置6の詳細な構造およびクリーニング処理の詳細については後に詳述する。
【0018】
熱交換器1は、第1配管L1を介して熱流体源HSと接続されるとともに、後述する作動流体との間で熱交換を終えた熱流体を河川などへ第2配管L2を介して還元(排水)させる。なお、本実施形態においては、第1配管L1には、チャッキ弁CVaを介して第6配管L6が接続されるとともに、バルブVa(三方弁が好適であり、特にことわりの無い限りは以下ではバルブVaとして三方弁を用いる)を介して第10配管L10が接続されている。すなわち、熱流体源HSからの熱流体は、第1配管L1に設置されたバルブVaを介して熱交換器1側と還元(排水)側とに選択的に流入することが可能となっている。
また、熱交換器1で熱交換された熱流体を排水せずに再び熱流体として適宜再利用してもよい。
【0019】
ここで、本実施形態における「熱流体源HS」および「熱流体」には特に制限はないが、例えば熱流体源HSとして温泉井を利用し、この温泉井から湧き出る50℃〜150℃程度の温泉水を熱流体として用いる。なお、本実施形態で適用が可能な熱流体源HSや熱流体としては、上記した温泉水以外にも、例えば産業廃棄水(温水洗浄など工業生産の過程で生じた廃棄温水)や従来の地熱発電で用いられている地熱井からの高圧地下水など(これらを総称して適宜「熱水」と称する)がある。
【0020】
補助熱交換器2は、第11配管L11および第12配管L12やポンプPなどを介して熱交換器1と接続されるとともに、第13配管L13などを介して蒸気タービン3と接続され、さらには第15配管L15やポンプPなどを介して覆水(凝縮)器5と接続されている。
この補助熱交換器2は、熱流体源HSから得られる熱流体による汚染の影響を抑制するなどの目的で配置され、不純物の少ない補助流体を用いて熱交換器1(熱流体)との間で熱交換を行うとともに、この熱交換によりエネルギーを得た補助流体と作動流体との間で更に熱交換を行うものである。よって、本実施形態では、第11配管L11および第12配管L12には、それぞれ補助流体として、例えば気相(気液混合)状態と液相状態の純水が流れる。また、第13配管L13〜第15配管L15内には、気相(気液混合)状態または液相状態の作動流体が流れる。なお補助流体は純水に限られず、他の流体(ミネラル分が抑制された液体など)を用いてもよい。
また、補助熱交換器2は適宜省略してもよく、その場合には熱交換器1が第13配管L13などを介して蒸気タービン3と接続されるとともに、第15配管L15などを介して覆水(凝縮)器5と接続されることになる。
【0021】
蒸気タービン3は、いわゆるバイナリー発電に用いられる公知のタービンが適用可能であり、補助熱交換器2で発生した作動流体の蒸気が第13配管L13を介して流入する。
ここで本実施形態の「作動流体」としては、熱流体よりも沸点が低い流体が用いられる点以外に特に限定はなく、例えばブタン(C
4H
10)や代替フロン(HFE)など種々の流体が適用可能である。本実施形態では、作動流体として沸点が約36℃のペンタン(C
5H
12)を用いている。すなわち、作動流体としてのペンタンは、補助熱交換器2内で補助流体(純水など)から伝熱を受けて蒸発(気化)して気相(または気液混合)状態に変換され、第13配管L13を介して蒸気タービン3に導入される。
【0022】
発電機4は、バイナリー発電に用いられる公知の発電機が適用可能であり、蒸気タービン3と接続されて蒸気タービン3に流入する作動流体の蒸気に基づいて発電が行われる。そして発電機4により発電された電力は、例えば図示しない変圧器を介して電力会社の変電所や家屋などへ供給される。
覆水(凝縮)器5は、バイナリー発電に用いられる公知の復水(凝縮)器が適用可能であり、第14配管L14を介して蒸気タービン3と接続されている。そして覆水(凝縮)器5では、水または空気などを用いて蒸気タービン3を経た蒸気状態の作動流体(ペンタンなど)を凝縮して(熱交換を行って)液状の作動流体に変換する。そして変換した液状の作動流体を、第15配管L15やポンプPなどを介して再び補助熱交換器2へ導入させる。
【0023】
全体制御装置7は、例えば中央演算ユニット(CPU)や不図示のディスプレイを搭載するパーソナルコンピューターであり、上記した熱交換システムを構成する各装置を統括制御する。また、全体制御装置7は、所定のタイミングにて後述する第1浄化モードおよび第2浄化モードを含むクリーニング処理(詳細は後述)を実行する機能も備えている。
そして作業者は、上記したディスプレイ画面や不図示の入力装置を介して全体制御装置7の制御の下でクリーニング処理などを実施することが可能となっている。
【0024】
次に
図2および3を用いて本実施形態の浄化装置6の詳細な構造について説明する。
図2には、本実施形態の浄化装置6のうち第1容器としての電解水生成槽6aの構造が示されている。同図から明らかなとおり、電解水生成槽6aは、容器6a
1、陽極6a
2、陰極6a
3、隔膜6a
4を含んで構成されている。
容器6a
1は、例えば絶縁材料が被覆された金属や樹脂からなる中空の構造体であり、上記した陽極6a
2、陰極6a
3および隔膜6a
4などが収容されている。なお、容器6a
1は外部からの熱の出入りが抑制されるように断熱材で覆われていてもよい。
【0025】
また、この容器6a
1には、第3配管L3、第4配管L4、および第5配管L5が接続されて、これらの配管を介して所定の液体が容器6a
1内に流入し又は容器6a
1から流出されるように構成されている。
より具体的には、第3配管L3および不図示のポンプなどを介して水源WSと容器6a
1とが接続され、第4配管L4を介して酸性水タンク6bと容器6a
1とが接続され、第5配管L5を介してアルカリ水タンク6cと容器6a
1とが接続されている。
【0026】
陽極6a
2および陰極6a
3を含む電極体は、本実施形態では板状の構造となっており、商用電源Eと配線elを介して所望の電圧がこれらの電極体の間に印加されるように構成されている。そして陽極6a
2および陰極6a
3は、容器6a
1内において互いに対向して配置され、これら陽極6a
2と陰極6a
3との間に空間が形成されている。
なお電極体の材質としては、例えば鉄や銅などの汎用的な金属、腐食されにくい白金や金などの貴金属、あるいは工業的に安価で安定した炭素電極などが用いられる。
また、本実施形態では、互いに対向する陽極6a
2および陰極6a
3の表面は平面形状としたが、これに限られずに上記表面形状が波状となっていてもよいし、凹凸状となっていてもよい。なお、波状又は凹凸状の場合には、互いに対向する面が同じ距離になるように位相がほぼ揃っていることが望ましい。
【0027】
隔膜6a
4は、容器6a
1の中で陽極6a
2と陰極6a
3との間に配置されている。この隔膜6a
4は、容器6a
1のうち陽極6a
2が配置される空間と、陰極6a
3が配置される空間とを区画する部材であり、一方の空間から他方の空間へ向けてイオンや電子などが通過可能となっている。この隔膜6a
4は、例えば固体高分子電解質膜など公知の膜が用いられる。
よって、水源WSから容器6a
1の空間内に流入した水は、全体制御装置7の制御の下で上記した電極体に電圧が印加されることで電解し、これにより容器6a
1内に電解水が生成される。より具体的には、容器6a
1のうち隔膜6a
4と陽極6a
2との間の空間には酸性水が生成され、隔膜6a
4と陰極6a
3との間の空間にはアルカリ水が生成される。
なお、本実施形態の浄化装置6は、必ずしも全体制御装置7で制御される必要はなく、全体制御装置7とは別個に配置される制御装置によって全体制御装置7とは独立して制御されてもよい。
【0028】
次に
図3に、本実施形態の第2容器としての酸性水タンク6bの詳細な構造を示す。
同図から明らかなとおり、本実施形態の酸性水タンク6bは、容器6b
1、温調装置6b
2、温度センサー6b
3などを含んで構成されている。なお、温調装置6b
2、温度センサー6b
3は必須ではなく適宜省略してもよい。そして容器6b
1には第4配管L4を介して酸性水が電解水生成槽6aから供給され、これにより容器6b
1には所定量の酸性水が貯留される。
【0029】
容器6b
1は、例えば絶縁材料が被覆された金属や樹脂からなる中空の構造体である。 容器6b
1の容積については特に制限はなく、後述するクリーニング処理の規模に応じて適宜設定が可能である。例えば電解水生成装置6aで毎分3Lの割合で電解水が生成される場合には、2000L〜5000L程度の電解水が貯留可能なだけの容積を有することが望ましい。
【0030】
また、容器6b
1は、第6配管L6やポンプPおよびチャッキ弁CVaなどを介して第1配管L1と接続されており、容器6b
1に貯留された酸性水(電解水の一部)が第1配管L1内に流入可能とされている。
さらに、容器6b
1は、第7配管L7およびバルブVaなどを介して第2配管L2と接続されており、容器6b
1に貯留された酸性水(電解水の一部)が第2配管L2内に流入可能とされている。
また、容器6b
1は、第9配管L9やポンプPおよびチャッキ弁CVaなどを介して還元(排水)側である河川などに接続され、容器6b
1に貯留された使用済の酸性水(多くの場合は中性に近いpH値となっている)が河川などに排出可能とされている。
【0031】
温調装置6b
2は、例えば公知のヒーター又はクーラーであり、容器6b
1に貯留される酸性水の温度を所望の温度に温調する。例えば後述するクリーニング処理の効果を高めたい場合などに、全体制御装置7は温調装置6b
2を制御して酸性水を加温する制御を行ってもよい。
温度センサー6b
3は、例えば公知の熱電対などが好適であり、容器6b
1に貯留される酸性水の温度を検出する。そして上記したクリーニング処理の効果を高めたい場合などに、全体制御装置7は温度センサー6b
3の検出結果に基づいて温調装置6b
2を制御してもよい。
【0032】
また、本実施形態の第2容器としてのアルカリ水タンク6cは、第5配管L5を介して電解水生成槽6aと接続され、この電解水生成槽6aで生成されたアルカリ水が供給される。また、アルカリ水タンク6cは、第9配管L9、ポンプP、バルブVaおよびチャッキ弁CVaを介して第2配管L2と接続されている。このうち、第9配管L9に設置された上記バルブVaは、第16配管L16を介して第8配管L8に設置されたチャッキ弁CVaと接続されている。
上記構成により、アルカリ水タンク6cに貯留されたアルカリ水(電解水の他の一部)は、第8配管L8を介して第2配管L2内へ流入可能とされるとともに、第8配管L8および第16配管L16を介して第9配管L9内へ流入可能とされている。
なお、アルカリ水タンク6cの上記以外の構造については、酸性水タンク6bと構造的には同様であるので、その説明を省略する。
【0033】
<熱交換器1内や配管L内における析出について>
本実施形態の熱交換システムでは、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、カルシウムなどのミネラル分などが含まれている温泉水が、第1配管L1や第2配管L2内および熱交換器1内の一部などを流通している。したがって熱交換器1で熱交換が開始された後で所定の時間が経過すると、熱交換器1内や配管などに下記で示される固形物が析出し始める。
例えばカルシウムを多く含む炭酸水素塩泉の場合、温度やpHなどの諸条件が変化すると、下記式1に示される化学反応によって温泉水内の溶解成分の一部が固形物(C
aCO
3など)となって配管や熱交換器1内に析出する。
Ca
2+ + 2HCO
3− → CaCO
3↓ + H
2O + CO
2↑ ・・・(1)
したがって、本実施形態では、温泉水を熱流体として用いた熱交換(並びに発電)を長時間行う場合においても、上述した析出物による熱交換効率の低下が抑制できるクリーニング機能を備えることとした。なお、後述もするが、本実施形態は、熱交換器や配管への適用に留まらず、その一部の成分が析出することが懸念される熱流体(温泉水など)が流通する様々なシステムや装置、部品などにも適用が可能である。
【0034】
<第1浄化モード>
まず
図4を参照しつつ、本実施形態のクリーニング処理のうち第1浄化モードについて説明する。
第1浄化モードにおいては、クリーニング時に熱流体源HSからの熱流体は熱交換器1へは流通せずに、第1配管L1からバルブVaを介して第10配管L10へ流れ込んで河川などへ還元される。一方で、酸性水タンク6bに貯留された酸性水が第6配管L6およびポンプPとチャッキ弁CVaを介して第1配管L1内へ流入する。なお、熱交換システムでの熱交換は停止されているので、第1浄化モードにおいては作動流体の状態遷移はない。
【0035】
第1配管L1内へ流入された酸性水は、そのまま熱交換器1に流入した後に第2配管L2へ流通し、その後に第2配管L2上のバルブVaを介して第7配管L7へ流通して酸性タンク6bへと還流される。本実施形態では、全体制御装置7の制御の下で、この酸性水の循環が1回または複数回繰り返され、これにより第1配管L1や熱交換器1、第2配管L2などに析出した析出物(ミネラル分)がクリーニングされる。
なお、通常は酸性タンク6bに貯留された酸性水のpHは概ね2〜3程度であるが、上述した循環を繰り返すと酸性水のpHが7近くまで変化することが想定される。
よって、全体制御装置7は、所定時間毎(数分毎、数十分毎、数時間毎など)あるいは酸性水が循環される毎(1回循環毎、数回に1回毎など)に、電解水生成槽6aから新たな酸性水を酸性タンク6bに供給する制御を行ってもよい。これにより、クリーニング時における酸性水の浄化能力を維持したまま上記したクリーニング処理を続行することが可能となる。
【0036】
第1浄化モードが完了した際には、
図5に示されるとおり、クリーニングに使用された酸性水の排出処理が行われる。
具体的には、全体制御装置7は、第9配管L9に設けられたポンプPを制御して、酸性タンク6bに貯留された使用済の酸性水を河川などに第9配管L9を介して還元する。このとき全体制御装置7は、同時に第8配管L8に配置されたポンプPとバルブVaを制御して、アルカリ水タンク6cに貯留されたアルカリ水を第8配管L8および第16配管L16を介して第9配管L9内に添加する制御を行う。
【0037】
これにより第9配管L9を流れる使用済の酸性水は、第16配管L16とチャッキ弁CVaを介して供給されるアルカリ水により中和されてから河川などに還元されることになる。よって、酸性度の高い液体が河川などの排出先にそのまま流れることが抑制され、環境汚染の発生を防止することが可能となる。
なお、第9配管L9の末端側に公知のpH検出装置をさらに設け、全体制御装置7はこのpH検出装置の検出結果に基づいて第9配管L9内へ添加するアルカリ水の量を制御してもよい。
また、第1配管L1から第10配管L10へ流れ込んで河川などへ還元される熱流体は、温調用流体として利用してもよい。具体的には、この還元される熱流体を、例えば第4配管L4や第6配管L6あるいは酸性水タンク6bの周囲などへ導いてこれらの部材に対する温調(加温)処理に用いてもよい。
【0038】
以上説明した第1浄化モードによれば、安価で大量供給が可能な水源WSからの水を電気分解して生成・貯留した電解水をクリーニングに利用するので、特別な薬品を使用せずにクリーンで安価な洗浄処理を行うことができる。また、第1浄化モードにおいては酸性水だけでクリーニング処理を行うとともに、この酸性水の外部への排出時にはアルカリ水を用いて中和してから排出するので、河川など環境への影響も抑制することが可能となっている。
【0039】
<第2浄化モード>
次に
図6を参照しつつ、本実施形態のクリーニング処理のうち第2浄化モードについて説明する。
この第2浄化モードの特徴としては、浄化装置6内で電気分解により生成された電解水を、全体制御装置7の制御の下で所定の周期毎に熱流体に添加することにある。換言すると、熱交換処理を停止してクリーニング処理を行う第1浄化モードをオフライン式とすれば、この第2浄化モードは熱交換処理を継続しながらクリーニング処理も同時に行うオンライン式とも言える。
【0040】
すなわち、まず事前に水源WSから第3配管L3や不図示のポンプなどを介して液体(水)が浄化装置6へ供給され、全体制御装置7の制御の下で商用電源Eを介して陽極6a
2と陰極6a
3との間に所定の電位が付与されて電解水が生成される。この生成された電解水は、それぞれ酸性水は酸性タンク6bに、アルカリ水はアルカリ水タンク6cで貯留される。
なお、酸性水の供給が間に合うのであれば、熱交換システムによる熱交換が稼働したと同時に電解水の生成処理が開始されてもよい。
【0041】
熱交換システムによる熱交換が開始されると、
図6のドット柄矢印で示されるように、温泉井などの熱流体源HSから第1配管L1と不図示のポンプなどを介して熱流体(温泉水)が汲み上げられて熱交換器1へと流入し、第2配管L2を通って河川などへ排出される。また、熱交換システム内では、
図6の白抜き矢印と格子線矢印で示されるように、この熱交換器1と補助熱交換器2によって熱流体(温泉水)から補助流体(純水)への伝熱が行われ、更にこの伝熱を受けた補助流体と作動流体との間で熱交換が行われる。なお、補助流体と熱交換を行った作動流体によるバイナリー発電の態様は上記したとおりである。
【0042】
一方で、全体制御装置7は、第6配管L6に設けられたポンプPを制御して、所定の周期毎に、酸性タンク6bに貯留された酸性水の一部を第6配管L6およびチャッキ弁CVaを介して第1配管L1内へ添加する制御を行う。なお、所定の周期としては、例えば10分置き、1時間置き、1日置き、1週間置きなど任意のタイミングを設定してもよく、熱交換器1への温泉水の供給流量や流速なども考慮することが好ましい。例えば温泉水を約1m/sの速度で第1配管L1内に流した場合、およそ30分で0.1mm厚の析出が確認される。よって、熱交換システムのクリーン度を常時保ちたい場合には、例えば30分置きに、貯留された酸性水を熱流体に添加してもよい。また、酸性水の供給期間についても、周期が長くなるほど長時間取ることが好ましい。また、上記した所定の周期において酸性水を添加するときに、その期間内で同じ流量で酸性水を添加してもよいし流量をその期間内で変化させて(強弱をつけて)第1配管L1内へ添加してもよい。
【0043】
以上のとおり、第1配管L1を流れる温泉水には酸性水が添加されるので、この温泉水は補助流体との熱交換に必要なエネルギーを有するだけでなく浄化作用も併せ持つ液体に変化する。このように、熱交換器1内へは、酸性水の添加された熱流体が流入して上記した補助流体との間で熱交換が行われることになり、この熱交換後には第2配管L2へ酸性水が添加された熱流体が流通することになる。
【0044】
また、全体制御装置7は、第8配管L8に設置されたポンプPを制御して、第8配管L8とチャッキ弁CVaを介して第2配管L2内にアルカリ水タンク6cから所望の量のアルカリ水を添加する制御を行う。
これにより酸性となった熱流体が中和されるので、河川など外部への影響を最小限に抑制することが可能となる。
なお、第2配管L2の末端側に公知のpH検出装置をさらに設け、全体制御装置7はこのpH検出装置の検出結果に基づいて第8配管L8へ供給するアルカリ水の量を制御してもよい。
【0045】
以上説明した第2浄化モードによれば、安価で大量供給が可能な水源WSからの水を電気分解して生成・貯留した電解水をクリーニングに利用するので、特別な薬品を使用せずにクリーンで安価な洗浄処理を行うことができる。また、第2浄化モードにおいては熱交換システムでの熱交換処理を停止せずにクリーニング処理を行うので、発電量の低下も抑制することができる。さらにこの酸性水の外部への排出時にはアルカリ水を用いて中和してから排出するので、河川など環境への影響も抑制することが可能となる。
【0046】
≪第2実施形態≫
次に本発明の第2実施形態について、
図7を参照して説明する。
第1実施形態においては熱流体源HSとは別個の水源WSから液体が浄化装置6へ供給されていたが、本実施形態では熱流体源HSからの熱流体の一部を浄化装置6へ供給して電解水を生成するシステムである点に主として特徴がある。
よって以下では第1実施形態との相違点について主として説明し、第1実施形態と同じ構成あるいは機能を有する要素については第1実施形態と同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0047】
図7に示されるとおり、本実施形態の熱交換システムは、浄化装置6と第1配管L1とを接続する第17配管L17と、この第17配管L17と第1配管L1とを接続するバルブVa´と、第17配管L17に設けられる流量計6dを含んで構成されている。
バルブVa´は、第1配管L1を流れる熱流体の一部を第17配管L17へ供給する部材であり、公知の種々のバルブが適用可能である。
流量計6dは、この第17配管L17を流れる流体(熱流体)の流量を計測する機器であり、公知の種々の流量計が適用可能である。
【0048】
本実施形態では、熱流体源HSから不図示のポンプを介して第1配管L1に流入した熱流体は、バルブVa´を介してその一部が第17配管L17へ流入するとともに、残部は熱交換器1へと供給される。なお、全体制御装置7は、流量計6dの検出結果に基づいてバルブVa´の開度を適宜調整し、これにより第1配管L1と第17配管L17へ流れる熱流体の量を適宜調整することが可能となっている。
【0049】
本実施形態によれば、別個の水源WSを用いずに熱流体の一部を用いて電解水を生成して利用することができるので、第1実施形態に比してシステムの規模を相対的に小さくすることができる。また、熱流体から電解水を生成するので、生成された酸性水は第1実施形態に比して高温となり洗浄能力が高まるとともに、酸性タンク6bで加温する手間も適宜省くことが可能となる。
【0050】
≪第3実施形態≫
次に本発明の第3実施形態について、
図8を参照して説明する。
第1実施形態および第2実施形態においてはバイナリー発電を例にして説明したが、本実施形態では熱流体源HSからの熱流体(蒸気状態)を蒸気タービンに導いて発電を行うシステムである点に主として特徴がある。
よって以下では上記各実施形態との相違点について主として説明し、上記各実施形態と同じ構成あるいは機能を有する要素については同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0051】
図8に示されるとおり、本実施形態の熱交換システムは、浄化装置6(6a、6b、6c)、全体制御装置7、セパレータ8、蒸気タービン9、発電機10、覆水(凝縮)器11、および、流路がそれぞれ形成された第18配管L18〜第26配管L26などを含んで構成されている。
セパレータ8は、第18配管L18及びポンプPなどを介して熱流体源HSから熱流体の供給を受けて、当該熱流体を蒸気と液体とに分離する装置であり、種々の公知のセパレータが適用可能である。より具体的にセパレータ8は、供給された熱流体のうち、分離した蒸気については第19配管L19を介して蒸気タービン9へ供給するとともに、分離した液体(温水)については第20配管L20を介して浄化装置6へ供給する。
【0052】
浄化装置6は、セパレータ8から供給された液体(熱流体)に対して上述した電気分解を行って電解水を生成し、この生成した電解水を貯留する。そして浄化装置6は、全体制御装置7の制御の下で、上記した第1浄化モード又は第2浄化モードの実行時に、第23配管L23を介して酸性水タンク6bに貯留された酸性水を第25配管L25内へ供給する。
なお、蒸気タービン9へ供給された蒸気は、発電機10の発電に用いられ、その後は第25配管L25を介して覆水(凝縮)器11で液体に変換された後に第26配管L26を介して河川などに還元(排出)される。このとき、上記各実施形態と同様に、アルカリ水タンク6cに貯留されたアルカリ水が、第24配管L24およびポンプPとチャッキ弁などを介して第26配管L26内へ供給される。
【0053】
なお本実施形態では、第23配管L23は第25配管L25へチャッキ弁を介して接続されているが、その他の配管(第18配管L18、第19配管L19、第26配管L26など)に接続されてもよい。
本実施形態によっても、熱流体から分離して生成された電解水を用いて配管などのクリーニングが行われるため、発電システムを簡略化できるだけでなく、クリーンで低コストなシステムを実現することが可能となる。
【0054】
上記した各実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。以下、各実施形態に適宜適用が可能な変形例について説明する。なお、以下の変形例においても、既述の構成と同じ機能・作用を奏するものは同じ参照番号を付し、その説明は適宜省略する。
≪変形例≫
図9は、上記各実施形態に適用が可能な浄化装置6の変形例を示す構成図である。この変形例に係る浄化装置6は、熱交換器1へ流入する熱流体の温度を検出する第1温度センサーS1と、熱交換器1から排出される熱流体の温度を検出する第2温度センサーS2を含んでいる。
【0055】
そして本変形例では、全体制御装置7は、熱流体の温度を検出する温度センサーの検出結果(計測値)に基づいて、酸性水タンク6bに貯留された酸性水を第1配管L1の流路に供給する制御を行う。
すなわち、熱交換システムが稼働して所定時間が経過すると、熱交換器1内や配管内に上記した固形物が析出するなどして熱交換効率が低下する。熱交換効率が低下した場合、熱交換器1に流入する熱流体の温度と、熱交換器1から排出される熱流体の温度とで差がさほどなくなってくる。
【0056】
よって、全体制御装置7は、第1温度センサーS1の計測値と第2温度センサーS2の計測値の差が所定値以下となった場合に、上記した第1浄化モード又は第2浄化モードの少なくともいずれかを実行する制御を行う。
これにより熱交換器1や配管内の固形物の生成状態に応じてクリーニング処理を自動で実行することができる。
【0057】
なお、本変形例では熱交換器1に対して出入りする熱流体の温度を計測する温度センサーを説明したが、本発明が適用可能な計測器はこれに限られない。例えば計測器として、電解水生成槽6aに配置される電極体の間の電圧や電流を検出してもよいし、第1配管L1や第2配管L2を流れる流体の圧力を検出してもよい。
また、上述した各実施形態および変形例では、クリーニング処理に利用する電解水として酸性水を用いたが、これに限られずに浄化する対象に応じてアルカリ水をクリーニングに利用してもよい。
【0058】
上記した第2容器は必ずしも必須ではなく、容量の大きい第1容器を用いれば第2容器は適宜省略してもよい。もしくは、第2容器に接続される第3容器を更に設け、貯留される電解水(酸性水やアルカリ水)の量を拡大させてもよい。
また、酸性水タンク6bやアルカリ水タンク6c内に水量センサーを設け、所定の容量となるまで電解水生成槽6aから電解水の供給を継続してもよい。
【0059】
以上で説明した各実施形態および変形例の要素を適宜組み合わせて発電システムを構成してもよい。
上記では熱流体を用いた発電システムを例にして説明したが、他の方式の発電システムに本発明を適用してもよいし、さらには発電システムに留まらず固形物の析出や付着が懸念される他のシステムや装置、バルブなどの部品、あるいは配管などの浄化に本発明を適用してもよい。
【解決手段】本発明の浄化装置は、熱流体が流れる流路に接続されるとともに、陽極と陰極とが対向して配置されて前記陽極と前記陰極との間に空間が形成された容器と、前記空間に所定の液体が介在した状態で前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する制御を行うとともに、前記所定の液体に前記電圧を印加して生成した電解水を貯留した後に、当該貯留した電解水の少なくとも一部を前記流路に供給する制御を行う制御装置と、を含むことを特徴とする。