(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946611
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】光レセプタクルおよびこれを備えた光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20160623BHJP
【FI】
G02B6/42
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-156708(P2011-156708)
(22)【出願日】2011年7月15日
(65)【公開番号】特開2013-24918(P2013-24918A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085084
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高英
(74)【代理人】
【識別番号】100095326
【弁理士】
【氏名又は名称】畑中 芳実
(74)【代理人】
【識別番号】100115314
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100117190
【弁理士】
【氏名又は名称】玉利 房枝
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】森岡 心平
【審査官】
里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭64−076430(JP,A)
【文献】
特開2006−017885(JP,A)
【文献】
特開2007−066880(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/077723(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子およびこれから発光された光をモニタするためのモニタ光を受光する受光素子が基板上に実装された光電変換装置と、光ファイバとの間に配置され、前記発光素子と前記光ファイバの端面とを光学的に結合可能とされた光レセプタクルであって、
前記発光素子からの前記光の入射および前記受光素子に向けた前記モニタ光の出射が行われる光レセプタクル本体の第1の面と、
この第1の面の反対側に、前記第1の面に対して所定の傾斜角を有するとともに、前記第1の面に入射した前記発光素子の光が入射するように配置され、入射した前記発光素子の光を反射させる第1の反射面と、
前記第1の面の反対側であって、前記第1の反射面に対して前記発光素子の光の反射方向側に配置され、前記第1の反射面によって反射された前記発光素子の光を、前記第1の面に向かう前記モニタ光と前記光ファイバの端面に結合すべき光とに分離する光分離部であって、前記第1の面に対して所定の傾斜角を有する傾斜面であるとともに、前記第1の反射面によって反射された前記発光素子の光のうちの一部の光が臨界角より小さい入射角をもって入射するように配置されるとともに、当該傾斜面上に反射膜がコーティングされていて入射した光の全部を反射させる第2の反射面を有し、前記第2の反射面によってこれに入射した前記一部の光を前記モニタ光として反射させるとともに、前記第1の反射面によって反射された前記発光素子の光のうちの前記第2の反射面に入射しなかった光を、そのまま前記第2の面側に進行させる光分離部と、
この光分離部によって分離された前記光ファイバの端面に結合すべき光の前記光ファイバの端面に向けた出射が行われる前記光レセプタクル本体の第2の面と
を備え、
前記第1の反射面から前記第2の面に到達する光は、前記第1の反射面と前記第2の面との間における進行方向が、前記第1の反射面における反射方向のまま維持されること
を特徴とする光レセプタクル。
【請求項2】
前記第2の反射面は、前記光レセプタクル本体の傾斜面からなること
を特徴とする請求項1に記載の光レセプタクル。
【請求項3】
前記第1の反射面は、前記第1の面に入射した前記発光素子の光が臨界角よりも大きな入射角で入射するような傾斜角を有する前記光レセプタクル本体の傾斜面からなり、入射した前記発光素子の光を全反射させること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の光レセプタクル。
【請求項4】
前記第1の反射面は、前記光レセプタクル本体の傾斜面上に反射膜がコーティングされてなること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光レセプタクル。
【請求項5】
前記第1の面に、前記発光素子の光を前記第1の反射面に向けて入射させる第1のレンズ面が形成され、
前記第2の面に、前記光ファイバの端面に結合すべき光を前記光ファイバの端面に向けて出射させる第2のレンズ面が形成されていること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光レセプタクル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光レセプタクルと、
請求項1に記載の光電変換装置と
を備えたことを特徴とする光モジュール。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の光レセプタクルと、
請求項1に記載の光電変換装置と
を備え、
光レセプタクル本体は、樹脂材料によって形成され、
前記光レセプタクルの第2の反射面における第1の面側の端部に形成されたR形状における前記発光素子の光の反射を想定して、この反射した光が前記光電変換装置の受光素子および発光素子に入射しないように、前記受光素子の大きさ、前記発光素子の位置および前記光レセプタクルの第1の反射面と前記第2の反射面との間隔が設定されていること
を特徴とする光モジュール。
【請求項8】
前記第1の反射面は、前記第1の面に入射した前記発光素子の光が臨界角よりも大きな入射角で入射するような傾斜角を有する光レセプタクル本体の傾斜面からなり、入射した前記発光素子の光を全反射させること
を特徴とする請求項7に記載の光モジュール。
【請求項9】
前記第1の反射面は、光レセプタクル本体の傾斜面上に反射膜がコーティングされてなること
を特徴とする請求項7に記載の光モジュール。
【請求項10】
前記第1の面に、前記発光素子の光を前記第1の反射面に向けて入射させる第1のレンズ面が形成され、
前記光レセプタクル本体の第2の面に、光ファイバの端面に結合すべき光を前記光ファイバの端面に向けて出射させる第2のレンズ面が形成されていること
を特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光レセプタクルおよびこれを備えた光モジュールに係り、特に、発光素子と光ファイバの端面とを光学的に結合するのに好適な光レセプタクルおよびこれを備えた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ファイバを用いた光通信には、面発光レーザ(例えば、VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等の発光素子を備えた光モジュールが用いられていた。
【0003】
この種の光モジュールには、光レセプタクルと称される光モジュール部品が用いられており、この光レセプタクルは、発光素子から出射された通信情報を含む光を、レンズを介して光ファイバの端面に結合させることによって、光ファイバを介した光送信に用いられるようになっていた。
【0004】
また、従来から、光モジュールにおいては、温度変化に対する発光素子の出力特性の安定化を目的として、発光素子から出射された光(強度や光量)をモニタ(監視)するための種々の提案がなされていた。
【0005】
例えば、特許文献1および特許文献2においては、TO−CANと称されるパッケージに、発光素子とともにモニタ用の受光素子を内包した光電変換装置を利用し、発光素子からの出射光の一部をパッケージのガラス窓においてモニタ光として受光素子側に反射させることが提案されている。
【0006】
しかしながら、このようなCANパッケージ型の光電変換装置は、高周波の駆動になると、発光素子に接続された配線の部分から電磁波が漏れることによってクロストークが生じる場合があり、このような場合には、10Gbps以上の高速通信に対応することが困難となる。さらに、CANパッケージを使ったモジュールは、光レセプタクルの最大径が、例えばTO−46というCANの場合、6〜7mmになり、小型化が難しい。
【0007】
これに対して、回路基板に発光素子が実装された基板実装型の光電変換装置においては、CANパッケージ型のようなクロストークの問題はなく、また、部品点数およびコストの削減ならびに小型化が可能等の利点を有するが、その一方で、ガラス窓を有しないため、光電変換装置側にモニタ光を発生させる機能を備えることは困難であった。
【0008】
そこで、これまでにも、例えば、特許文献3に示すように、基板実装型の光電変換装置に対応すべく、光レセプタクル側に、発光素子からの出射光の一部をモニタ光として受光素子側に反射させるための反射面を形成することによって、モニタをともなう安定的な高速通信を実現するための提案がなされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−340877号公報
【特許文献2】特開2004−221420号公報
【特許文献3】特開2008−151894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した特許文献3に記載の発明においては、発光素子の光が、光レセプタクルを透過した後に、光ファイバの端面において光電変換装置の基板に垂直な方向に取り出されるように構成されている。
【0011】
しかるに、光モジュールの使用態様によっては、発光素子の光を、光ファイバの端面において基板に沿った方向に取り出すことが求められる場合があり、このような場合に、モニタをともなう光送信を簡便かつ適正に実現するためには、光の取り出し方向が異なる特許文献3に記載の発明とは自ずと違った新たな手法が求められる。
【0012】
そこで、本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、発光素子の光を光ファイバの端面において基板に沿った方向に取り出すようなモニタをともなう光送信を、簡便かつ適正に実現することができる光レセプタクルおよびこれを備えた光モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するため、本発明の請求項1に係る光レセプタクルの特徴は、発光素子およびこれから発光された光をモニタするためのモニタ光を受光する受光素子が基板上に実装された光電変換装置と、光ファイバとの間に配置され、前記発光素子と前記光ファイバの端面とを光学的に結合可能とされた光レセプタクルであって、 前記発光素子からの前記光の入射および前記受光素子に向けた前記モニタ光の出射が行われる光レセプタクル本体の第1の面と、この第1の面の反対側に、前記第1の面に対して所定の傾斜角を有するとともに、前記第1の面に入射した前記発光素子の光が入射するように配置され、入射した前記発光素子の光を反射させる第1の反射面と、前記第1の面の反対側であって、前記第1の反射面に対して前記発光素子の光の反射方向側に配置され、前記第1の反射面によって反射された前記発光素子の光を、前記第1の面に向かう前記モニタ光と前記光ファイバの端面に結合すべき光とに分離する光分離部であって、前記第1の面に対して所定の傾斜角を有する
傾斜面であるとともに、前記第1の反射面によって反射された前記発光素子の光のうちの一部の光が臨界角より小さい入射角をもって入射するように配置されるとともに
、当該傾斜面上に反射膜がコーティングされていて入射した光の全部を反射させる第2の反射面を有し、前記第2の反射面によってこれに入射した前記一部の光を前記モニタ光として反射させるとともに、前記第1の反射面によって反射された前記発光素子の光のうちの前記第2の反射面に入射しなかった光を、そのまま前記第2の面側に進行させる光分離部と、この光分離部によって分離された前記光ファイバの端面に結合すべき光の前記光ファイバの端面に向けた出射が行われる前記光レセプタクル本体の第2の面とを備え、前記第1の反射面から前記第2の面に到達する光は、前記第1の反射面と前記第2の面との間における進行方向が、前記第1の反射面における反射方向のまま維持される点にある。
【0014】
そして、この請求項1に係る発明によれば、第1の面に入射した発光素子の光を、第1の反射面によって反射させた上で、光分離部によってモニタ光と光ファイバの端面に結合すべき光とに分離し、モニタ光については、第1の面から受光素子側に出射させ、光ファイバの端面に結合すべき光については、第2の面から光ファイバの端面側に出射させることができるので、モニタ光の取得および光ファイバの端面における発光素子の光の基板に沿った方向への取り出しを適切に行うことができ、また、第1の反射面から第2の面に到達する光の第1の反射面と前記第2の面との間における進行方向を、第1の反射面における反射方向のまま維持させることができるので、第1の反射面から第2の面に到達する光の光レセプタクル本体の内部における屈折を考慮することを要しない簡便な光路設計が可能となる。また、光分離部を第2の反射面によって簡易に構成することができ、また、モニタ光を第2の反射面による反射を利用して簡便かつ確実に発生させることができるとともに、光ファイバの端面に結合すべき光の分離を、第1の反射面によって反射された発光素子の光を部分的に第2の反射面に入射させないことによって簡便かつ確実に実現することができ、さらに、第2の反射面に対する発光素子の光の入射面積の設計によってモニタ光と光ファイバの端面に結合すべき光との光量比を簡便に調整することができる。また、第2の反射面の傾斜角をレーザ光に対して臨界角よりも小さくしているので、臨界角より大きな入射角を確保するものに拘束されないため、モニタ光の出射方向および受光素子の配置位置についての設計の自由度を広げることができる。
更に、傾斜面上に反射膜がコーティングされているので、第2の反射面の傾斜角が発光素子の光に対して臨界角よりも大きな入射角を確保するものに拘束されないため、モニタ光の出射方向および受光素子の配置位置についての設計の自由度を広げることができる。
【0017】
さらに、請求項
2に係る光レセプタクルの特徴は、請求項
1において、更に、前記第2の反射面は
、前記光レセプタクル本体の傾斜面から
なる点にある。
【0018】
そして、この請求項
2に係る発明によれば、第2の反射面を光レセプタクル本体の傾斜
面によって形成することができるので、部品点数およびコストの削減ならびに製造の容易化が可能となる。
【0021】
さらにまた、請求項
3に係る光レセプタクルの特徴は、請求項1
または請求項2において、更に、前記第1の反射面は、前記第1の面に入射した前記発光素子の光が臨界角よりも大きな入射角で入射するような傾斜角を有する前記光レセプタクル本体の傾斜面からなり、入射した前記発光素子の光を全反射させる点にある。
【0022】
そして、この請求項
3に係る発明によれば、第1の反射面を光レセプタクル本体の傾斜面のみからなる全反射面に形成することができるので、部品点数およびコストの削減ならびに製造の容易化が可能となる。
【0023】
また、請求項
4係る光レセプタクルの特徴は、請求項1〜
3いずれか1項において、更に、前記第1の反射面は、前記光レセプタクル本体の傾斜面上に反射膜がコーティングされてなる点にある。
【0024】
そして、この請求項
6係る発明によれば、第1の反射面の傾斜角が発光素子の光に対して臨界角よりも大きな入射角を確保するものに拘束されないため、第1の反射面における発光素子の光の反射方向についての設計の自由度を広げることができる。
【0025】
さらに、請求項
5係る光レセプタクルの特徴は、請求項1〜
4のいずれか1項において、更に、前記第1の面に、前記発光素子の光を前記第1の反射面に向けて入射させる第1のレンズ面が形成され、前記第2の面に、前記光ファイバの端面に結合すべき光を前記光ファイバの端面に向けて出射させる第2のレンズ面が形成されている点にある。
【0026】
そして、この請求項
5係る発明によれば、第1のレンズ面および第2のレンズ面によって、発光素子と光ファイバの端面との光学的な結合を効率良く行うことができる。
【0029】
また、請求項
6に係る光モジュールの特徴は、請求項1〜
5のいずれか1項に記載の光レセプタクルと、請求項1に記載の光電変換装置とを備えた点にある。
【0030】
そして、この請求項
6に係る発明によれば、モニタ光の取得および光ファイバの端面における発光素子の光の基板に沿った方向への取り出しを適切に行うことができ、また、第1の反射面から第2の面に到達する光の光レセプタクル本体の内部における屈折を考慮することを要しない簡便な光路設計が可能となる。
【0031】
さらに、請求項
7に係る光モジュールの特徴は、請求項1
または請求項2に記載の光レセプタクルと、請求項1に記載の光電変換装置とを備え、光レセプタクル本体は、樹脂材料によって形成され、前記光レセプタクルの第2の反射面における第1の面側の端部に
形成されたR形状における前記発光素子の光の反射を想定して、この反射した光が前記光電変換装置の受光素子および発光素子に入射しないように、前記受光素子の大きさ、前記発光素子の位置および前記光レセプタクルの第1の反射面と前記第2の反射面との間隔が設定されている点にある。
【0032】
そして、この請求項
7に係る発明によれば、モニタ光の取得および光ファイバの端面における発光素子の光の基板に沿った方向への取り出しを適切に行うことができ、また、第1の反射面から第2の面に到達する光の光レセプタクル本体の内部における屈折を考慮することを要しない簡便な光路設計が可能となり、さらに、光分離部を簡易に構成することができ、さらにまた、モニタ光を簡便かつ確実に発生させることができるとともに、光ファイバの端面に結合すべき光の分離を簡便かつ確実に実現することができ、また、モニタ光と光ファイバの端面に結合すべき光との光量比を簡便に調整することができる。さらに、部品点数およびコストの削減ならびに製造の容易化、または、モニタ光の出射方向および受光素子の配置位置についての設計の自由度を広げることが可能となる。さらにまた、光レセプタクル本体を樹脂成形するための金型における第2の反射面の形状転写部の先端に、寸法誤差や摩耗・腐食等によるダレによってR形状が形成され、このR形状が第2の反射面の形状として成形品に転写されたとしても、このR形状を見越してR形状による反射光が発光素子および受光素子に迷光として入射しないように設計することができるので、光レセプタクル本体を、安価な樹脂材料によって光学性能上問題なく製造することができる。
【0033】
さらにまた、請求項
8に係る光モジュールの特徴は、請求項
7において、更に、前記第1の反射面は、前記第1の面に入射した前記発光素子の光が臨界角よりも大きな入射角で入射するような傾斜角を有する光レセプタクル本体の傾斜面からなり、入射した前記発光素子の光を全反射させる点にある。
【0034】
そして、この請求項
8に係る発明によれば、部品点数およびコストの削減ならびに製造の容易化が可能となる。
【0035】
また、請求項
9に係る光モジュールの特徴は、請求項
7において、更に、前記第1の反射面は、光レセプタクル本体の傾斜面上に反射膜がコーティングされてなる点にある。
【0036】
そして、この請求項
9に係る発明によれば、第1の反射面における発光素子の光の反射方向についての設計の自由度を広げることができる。
【0037】
さらに、請求項
10に係る光モジュールの特徴は、請求項
7〜9のいずれか1項において、更に、前記第1の面に、前記発光素子の光を前記第1の反射面に向けて入射させる第1のレンズ面が形成され、前記光レセプタクル本体の第2の面に、光ファイバの端面に結合すべき光を前記光ファイバの端面に向けて出射させる第2のレンズ面が形成されている点にある。
【0038】
そして、この請求項
10係る発明によれば、発光素子と光ファイバの端面との光学的な結合を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、発光素子の光を光ファイバの端面において基板に沿った方向に取り出すようなモニタをともなう光送信を、簡便かつ適正に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に係る光レセプタクルおよび光モジュールの実施形態を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係る光レセプタクルおよびこれを備えた光モジュールの実施形態について、
図1〜
図6を参照して説明する。
【0044】
図1は、本実施形態における光モジュール1の概要を本実施形態における光レセプタクル2の縦断面図とともに示す概略構成図である。また、
図2は、
図1に示す光レセプタクル2の平面図である。さらに、
図3は、
図1に示す光レセプタクル2の下面図である。
【0045】
図1に示すように、本実施形態における光レセプタクル2(光レセプタクル本体)は、光電変換装置3と光ファイバ5との間に配置されるようになっている。
【0046】
ここで、
図1の光電変換装置3は、基板実装型の光電変換装置3とされている。すなわち、
図1に示すように、光電変換装置3は、光レセプタクル2の下端面2aに対して平行に配置される半導体基板(回路基板)6における光レセプタクル2側の面(上面)に、この面に対して垂直方向(上方向)にレーザ光Laを出射(発光)させる1つの発光素子7を有しており、この発光素子7は、前述したVCSEL(垂直共振器面発光レーザ)を構成している。また、光電変換装置3は、半導体基板6における光レセプタクル2側の面上であって、発光素子7に対する
図1における右方位置に、発光素子7から出射されたレーザ光Laの出力(例えば、強度や光量)をモニタするためのモニタ光Mを受光する1つの受光素子8を有している。この受光素子8は、フォトディテクタであってもよい。さらに、図示はしないが、半導体基板6における光レセプタクル2側の面上には、受光素子8によって受光されたモニタ光Mの強度や光量に基づいて発光素子7から発光されるレーザ光Laの出力を制御する制御回路等の電子部品が実装されており、この電子部品は、配線を介して発光素子7および受光素子8に電気的に接続されている。このような光電変換装置3は、例えば、半導体基板6と光レセプタクル2との間に配置された接着剤(例えば、熱/紫外線硬化性樹脂)等の公知の固定手段によって光レセプタクル2に取り付けられることにより、光レセプタクル2とともに光モジュール1を構成するようになっている。
【0047】
また、
図1に示すように、光ファイバ5は、端面5a側の所定長さの部位が、この部位を保持する円筒状のフェルール9とともに、光レセプタクル2に形成された筒状の光ファイバ取付部4内に着脱可能に取り付けられている。この取り付け状態において、光ファイバ5における端面5a側の部位は、半導体基板6に対して平行となっている。なお、光ファイバ5は、シングルモード光ファイバおよびマルチモード光ファイバのいずれであってもよい。
【0048】
そして、光レセプタクル2は、このような光電変換装置3と光ファイバ5との間に配置された状態で、発光素子7と光ファイバ5の端面5aとを光学的に結合させるようになっている。
【0049】
この光レセプタクル2について更に詳述すると、
図1に示すように、光レセプタクル2は、各種の光学面を有する主要部の外形が略直方体状に形成されている。すなわち、
図1〜
図3に示すように、光レセプタクル2の主要部は、下端面2a、上端面2b、右端面2c、左端面2d、前端面2eおよび後端面2fの各面によって大まかな外形を構成している。上下の端面2a、2bは互いに平行とされ、左右の端面2c、2dも互いに平行とされている。さらに、上下の端面2a、2bと左右の端面2c、2dとは、互いに垂直とされている。なお、前述した光ファイバ取付部4は、右端面2cから右方に延出するように形成されている。
【0050】
図1に示すように、光レセプタクル2の下端面2a上であって、左端面2d寄りの位置には、下端面2aに対して上方に凹入された断面略台形状の第1の凹部10が形成されている。そして、この第1の凹部10の内底面は、発光素子7からのレーザ光Laの入射および受光素子8に向けたモニタ光Mの出射が行われる第1の面S1とされている。
図1に示すように、第1の面S1は、下端面2aに対して平行に形成されている。このような第1の面S1上の
図1および
図3における左端部近傍位置には、
図1、
図3に示すように、1つの第1のレンズ面11が形成されている。
図1および
図3に示すように、第1のレンズ面11は、平面円形状に形成されているとともに、発光素子7側に凸面を向けた球面または非球面の凸レンズ面に形成されている。なお、第1のレンズ面11上における光軸OA(1)は、発光素子7から出射されるレーザ光La(光束)の中心軸(中心光線)に一致することが望ましい。また、光軸OA(1)の軸方向は、第1の面S1に対して垂直であってもよい。
【0051】
このような第1のレンズ面11には、
図1に示すように、光レセプタクル2に光電変換装置3が取り付けられた状態において、発光素子7から出射されたレーザ光Laが下方から入射する。そして、第1のレンズ面11は、入射したレーザ光Laを収束させて光レセプタクル2の内部へと進行させる。なお、第1のレンズ面11は、レーザ光Laをコリメートまたは発散させる面形状に形成されていてもよい。
【0052】
また、
図1および
図2に示すように、第1の面S1の反対側(
図1における上方)であって、第1のレンズ面11に対してレーザ光Laの進行方向側の位置(
図1における真上位置)には、上方に向かうにしたがって右方に傾くような第1の面S1に対する所定の傾斜角を有する第1の反射面14が形成されている。
図1に示すように、第1の反射面14は、上端面2b上に下方に向かって凹入形成された断面略台形状の第2の凹部15の内斜面のみからなる。
【0053】
このような第1の反射面14には、
図1に示すように、第1のレンズ面11に入射した発光素子7のレーザ光Laが、
図1における下方から臨界角より大きな入射角で内部入射する。そして、第1の反射面14は、内部入射した発光素子7のレーザ光Laを、
図1における右方に向かって全反射させる。
【0054】
なお、第1の反射面14の傾斜角は、設計および寸法精度測定の簡便化の観点から、第1の面S1を基準(0°)として
図1における反時計回りに45°としてもよく、または、入射角が一定ではない収束光束Laに含まれる全ての又は殆どの光線に対して臨界角よりも大きな入射角を確保する観点から、45°よりも大きい角度としてもよい。
【0055】
さらに、
図1および
図2に示すように、第1の面S1の反対側であって、第1の反射面14に対して発光素子7のレーザ光Laの反射方向側の位置(右方位置)には、第1の反射面14によって反射された発光素子7のレーザ光Laを、第1の面S1に向かうモニタ光Mと光ファイバ5の端面5aに結合すべきレーザ光Lcとに分離する光分離部としての第2の反射面16が配置されている。
図1に示すように、第2の反射面16は、第1の面S1に対して、上方に向かうにしたがって左方に傾くような所定の傾斜角を有している。また、
図1に示すように、第2の反射面16は、上端面2b上に下方に向かって第2の凹部15よりも浅く凹入形成された断面略台形状の第3の凹部17の内斜面のみからなる。なお、第2の反射面16の傾斜角は、第1の面S1を基準(0°)として
図1における時計回りに45°であってもよい。
【0056】
このような第2の反射面16における第1の面S1側(下端部側)の所定範囲の部位には、
図1に示すように、第1の反射面14によって反射された発光素子7のレーザ光La(光束)のうちの上側の一部の光が、左方から臨界角よりも大きな入射角で内部入射する。そして、第2の反射面16は、内部入射した一部の光を、モニタ光Mとして第1の面S1に向けて全反射させる。一方、発光素子7のレーザ光Laのうちの第2の反射面16に内部入射しなかった光は、光ファイバ5の端面5aに結合すべきレーザ光Lcとして、進行方向を維持したまま右方に向かって進行(直進)する。ただし、光ファイバ5の端面5aに結合すべきレーザ光Lcは、光分離前のレーザ光Laが収束光であることによって、右方への進行にしたがって光束断面の大きさが徐々に小さくなる。
【0057】
さらにまた、
図1に示すように、光レセプタクル2の右端面2c上における光ファイバ5の端面5aに対向する位置には、左方に向かって第4の凹部18が凹入形成されており、この第4の凹部18の内底面は、第2の面S2を兼ねた1つの第2のレンズ面12とされている。この第2のレンズ面12は、第1のレンズ面11よりも小径の平面円形状に形成されているとともに、光ファイバ5の端面5a側に凸面を向けた球面または非球面の凸レンズ面に形成されている。なお、第2のレンズ面12上における光軸OA(2)は、光ファイバ5の端面5aの中心軸に一致してもよい。
【0058】
このような第2のレンズ面12には、
図1に示すように、第2の反射面16によってモニタ光Mと分離された光ファイバ5の端面5aに結合すべきレーザ光Lcが、左方から内部入射する。そして、第2のレンズ面12は、内部入射したレーザ光Lcを、収束させて光ファイバ5の端面5aに向けて出射させる。
【0059】
また、
図1に示すように、本実施形態においては、前述した第2の反射面16の構成上、第1の反射面14から第2のレンズ面12(第2の面S2)に到達する光、すなわち、レーザ光Laのうちの第2の反射面16に入射しないものと、これに連続する光ファイバ5の端面5aに結合すべきレーザ光Lcとの一連の光は、第1の反射面14と第2のレンズ面12との間における進行方向が、第1の反射面14における反射方向のまま維持されるようになっている。
【0060】
さらに、
図1に示すように、第1の面S1上の
図1および
図3における右端部近傍位置には、
図1、
図3に示すように、1つの第3のレンズ面13が形成されている。
図1および
図3に示すように、第3のレンズ面13は、第1のレンズ面1よりも小径の平面円形状に形成されているとともに、受光素子8側に凸面を向けた球面または非球面の凸レンズ面に形成されている。なお、第3のレンズ面13上における光軸OA(3)の軸方向は、第1の面S1に対して垂直であってもよい。
【0061】
このような第3のレンズ面13には、
図1に示すように、第2の反射面16によって反射されたモニタ光Mが、上方から内部入射する。そして、第3のレンズ面13は、内部入射したモニタ光Mを、収束させて受光素子8に向けて出射させる。
【0062】
以上の構成によれば、第1の面S1に入射した発光素子7のレーザ光Laを、第1の反射面14によって全反射させた上で、光分離部としての第2の反射面16によってモニタ光Mと光ファイバ5の端面5aに結合すべきレーザ光Lcとに分離し、モニタ光Mについては、第1の面S1から受光素子8側に出射させ、光ファイバ5の端面5aに結合すべきレーザ光Lcについては、第2の面S2から光ファイバ5の端面5a側に出射させることができる。これにより、モニタ光Mの取得および光ファイバ5の端面5aにおけるレーザ光Lcの基板6に沿った方向への取り出しを簡便かつ適切に行うことができる。また、第1の反射面14から第2の面S2に到達する光の第1の反射面14と第2の面S2との間における進行方向を、第1の反射面14における反射方向のまま維持させることができるので、第1の反射面14から第2の面S2に到達する光の光レセプタクル2の内部における屈折を考慮することを要しない簡便な光路設計が可能となる。さらに、光分離部を第2の反射面16によって簡易に構成することができ、また、モニタ光Mを第2の反射面16による反射を利用して簡便かつ確実に発生させることができるとともに、光ファイバ5の端面5aに結合すべきレーザ光Lcの分離を、第1の反射面14によって反射された発光素子7のレーザ光Laを部分的に第2の反射面16に入射させないことによって簡便かつ確実に実現することができる。さらにまた、第2の反射面16に対する発光素子7のレーザ光Laの入射面積の設計によってモニタ光Mと光ファイバ5の端面5aに結合すべきレーザ光Lcとの光量比を簡便に調整することができる。ここで、光量比は、1:1としてもよいし、または、レーザ光Lcの光量を相対的に大きくしてもよい。また、本実施形態によれば、第1の反射面14および第2の反射面16を、光レセプタクル2の傾斜面のみからなる全反射面に形成することができるので、部品点数およびコストの削減ならびに製造の容易化が可能となる。さらに、第1のレンズ面11および第2のレンズ面12によって、発光素子7と光ファイバ5の端面5aとの光学的な結合を効率良く行うことができ、また、第3のレンズ面13によって、モニタ光Mを受光素子8に効率良く結合させることができる。
【0063】
なお、本発明は、以上の構成に限定されるものではなく、種々の変形例を採用することができる。
【0064】
(第1の変形例)
例えば、
図4に示すように、第2の反射面16を、前述のような光レセプタクル2の傾斜面のみからなる全反射面に形成する代わりに、光レセプタクル2の傾斜面上に反射膜20をコーティングすることによって形成してもよい。反射膜20の材料としては、Au、Ag、Al等を挙げることができる。
【0065】
このような構成によれば、第2の反射面16の傾斜角がレーザ光Laに対して臨界角よりも大きな入射角を確保するものに拘束されないため、モニタ光Mの出射方向および受光素子8の配置位置についての設計の自由度を広げることができる。例えば、
図4においては、モニタ光Mが、第2の反射面16に対して
図1のように真下ではなく左斜め下方側に出射されている。また、
図4においては、第3のレンズ面13が形成されておらず、第1の面S1によってモニタ光Mの出射が行われている。
【0066】
(第2の変形例)
また、
図5に示すように、第1の反射面14についても、全反射面に形成する代わりに、光レセプタクル2の傾斜面上に反射膜20をコーティングすることによって形成してもよい。
【0067】
このような構成によれば、第1の反射面14の傾斜角がレーザ光Laに対して臨界角よりも大きな入射角を確保するものに拘束されないため、第1の反射面14における発光素子7のレーザ光Laの反射方向についての設計の自由度を広げることができる。
【0068】
(第3の変形例)
さらに、光レセプタクル2をポリエーテルイミド等の安価な樹脂材料によって形成する場合には、金型を用いた射出成形が行われることになる。この場合、金型は、例えば、第1の面S1、第1のレンズ面11および第3のレンズ面13を含めた第1の凹部10の形状転写面を有する第1の金型と、第1の反射面14を含めた第2の凹部15の形状転写面および前記2の反射面16を含めた第3の凹部17の形状転写面を有する第2の金型と、第2のレンズ面12(第2の面S2)および光ファイバ取付部4の形状転写面を有する第3の金型とによって構成してもよい。
【0069】
そして、このような金型による樹脂成形によって光レセプタクル2を得る場合には、金型における第2の反射面16の形状転写部の先端に寸法誤差や摩耗・腐食等によるダレによってR形状が形成され、このR形状が第2の反射面16の形状として成形品に転写され得る虞がある。このようなR形状による反射光は、モニタ光のような正規の反射光とは異なる迷光であるため、発光素子7および受光素子8に入射することは好ましくない。そこで、このようなR形状における発光素子7のレーザ光Laの反射を想定して、この反射した光が受光素子8および発光素子7に入射しないように、受光素子8の大きさ、発光素子7の位置および第1の反射面14と第2の反射面16との間隔等を設計してもよい。
【0070】
このように構成すれば、
図6に示すように、第2の反射面16の下端部にR形状が形成されたとしても、このR形状による反射光Lrが受光素子8および発光素子7に入射することを確実に防止することができる。
【0071】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 光モジュール
2 光レセプタクル
3 光電変換装置
5 光ファイバ
5a 端面
7 発光素子
8 受光素子
14 第1の反射面
16 第2の反射面