(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒状ケーシングの先端に、吸込みライナ及び吸込みベルからなる吸込み部を連結した後、前記円筒状ケーシングに、羽根車が固定された主軸を回転自在に取り付けるポンプの製造方法であって、
金属板材を筒状に形成した後、該金属板材をスピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成して吸込みベルを作製するステップと、
前記吸込みライナと前記吸込みベルとを溶接により一体化するステップと、
前記吸込みライナと前記吸込みベルとが一体化された前記吸込み部を、前記円筒状ケーシングに連結するステップとを有し、
前記吸込みライナは、前記他端側から前記一端側に向かって拡径する筒状体部を含み、該筒状体部は前記羽根車の外周側に位置して該羽根車に対向する内面を有し、
前記一体化するステップでは、前記スピニングプレス加工によって形成された前記吸込みベルは、前記吸込みライナの前記筒状体部の前記他端側に溶接にて取り付けられることを特徴とするポンプの製造方法。
円筒状ケーシングの先端に、吸込みライナ及び吸込みベルからなる吸込み部を連結した後、前記円筒状ケーシングに、羽根車が固定された主軸を回転自在に取り付けるポンプの製造方法であって、
金属板材を筒状に形成した後、該金属板材をスピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成して吸込みベルを作製するステップと、
前記吸込みライナと前記吸込みベルとを溶接により一体化するステップと、
前記吸込みライナと前記吸込みベルとが一体化された前記吸込み部を、前記円筒状ケーシングに連結するステップとを有し、
前記吸込みライナと前記吸込みベルとを一体化するステップでは、前記吸込みライナにフランジを溶接するようにし、
前記吸込みライナと前記吸込みベルとが一体化された状態で、前記吸込みライナの内面を切削加工するステップをさらに有することを特徴とするポンプの製造方法。
円筒状ケーシングの先端に、吸込みライナ及び吸込みベルからなる吸込み部を連結した後、前記円筒状ケーシングに、羽根車が固定された主軸を回転自在に取り付けるポンプの製造方法であって、
金属板材を筒状に形成した後、該金属板材をスピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成して吸込みベルを作製するステップと、
前記吸込みライナと前記吸込みベルとを溶接により一体化するステップと、
前記吸込みライナと前記吸込みベルとが一体化された前記吸込み部を、前記円筒状ケーシングに連結するステップとを有し、
前記吸込みライナと前記吸込みベルとを一体化するステップでは、前記吸込みライナにフランジを溶接するようにし、
前記吸込みライナと前記吸込みベルとが一体化された状態で、前記吸込みライナの前記フランジの端面を切削加工した後、前記フランジにボルト穴を形成するステップをさらに有することを特徴とするポンプの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、
図7に示すような斜流ポンプが、発電プラントの循環ポンプや送水ポンプ等として広く用いられている。この斜流ポンプ100は、海水、河川水または排水等の液体を吸込む吸込み部101と、吸込み部101から鉛直方向上方に延びるケーシング部105とを有する。ケーシング部105は上部で屈曲管107に接続され、屈曲管107は不図示の吐出配管に接続されている。ケーシング部105内には主軸110が回転自在に取り付けられており、主軸110の先端には羽根車112が固定されている。吸込み部101は、ケーシング部105の下端に連結された吸込みライナ102と、吸込みライナ102の下端に連結された吸込みベル103とから構成される。
【0003】
一般的に、吸込みベルは、水頭損失を低減させるためにベルマウス形状となっている。すなわち、吸込みベルは、液体の流れが内周壁で剥離したり衝突したりすることを極力抑え、滑らかな流れを形成するような形状となっている。この吸込みベルの形状はポンプ効率に影響を与えるので、滑らかな曲面であることが求められ、従来は
図7に示すように鋳造で製造されることが多かった。
ところが、鋳造で製造された吸込みベルは、肉厚が厚くなるため重量が大きくなり、製造コストも嵩んでしまう。特に、海水ポンプのような大型のポンプは、吸込みベルの最下部直径が2mに達するものもあり、鋳造が難しく、製造コストも高くなる。
【0004】
一方、近年は、機器の軽量化、低コスト化並びに環境負荷低減を目的として、板金構造が主流となっており、板金成形の技術も向上してきている。
この流れから、特許文献1には、吸込みベルを板金で形成したポンプが開示されている。この文献には、長尺の板金を溶接により中空円錐台形状に接合してリング部材を製作し、複数のリング部材をベルマウス形状に接合して吸込みベルを製造する技術が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、吸込みベルを鋳造で製造した場合、肉厚が厚くなるため重量が大きくなる。その上、鋳造に際して木型が必要となるため、これらの理由から製造コストが嵩んでしまうという問題があった。また、鋳造製の場合、木型製作、鋳込み、補修作業、荒加工、仕上げ加工の手順を踏む必要があり、製作期間が非常に長いという問題もあった。また、鋳造製の場合、必ず内在欠陥を含むため、最終加工時に欠陥補修が必要となる可能性がある。さらにまた、ポンプの経年使用により内在欠陥が顕在化する可能性もある。しかし、鋳物は溶接補修ができないため、補修が困難であった。
【0007】
そこで、特許文献1のように、板金から形成されるリング部材を複数溶接して吸込みベルを製造することによって、上記した問題点は解消される。しかしながら、今度は以下のような問題が発生する。すなわち、中空円錐台形状のリング部材を複数溶接してベルマウス形状を形成しているので、鉛直方向断面が滑らかな曲線とはならず、吸込みベルの内周壁に対する液体の摩擦損失や衝突損失等の水力損失が増加し、ポンプ効率を低下させてしまうことが考えられる。また、吸込みベルの表層流が不均一となり、振動が増大して主軸軸受の摩耗が促進されてしまう可能性もある。さらに、吸込みベルの溶接線が増えることから、形状精度を高く維持することが困難であった。さらにまた、現在、海水ポンプにおいては、ケーシング部や吸込み部に通電することによって、海生生物等の付着を防止する電気化学的な海洋生物付着防止システムが多く用いられているが、接合部分とその他の部分で生物付着状況が異なってしまうという問題もあった。
【0008】
一方、板金によって滑らかな曲面を形成する加工技術として、スピニングプレス加工が知られている。この加工方法は、へら絞り加工とも呼ばれ、トランペット等の楽器を製造する際に用いられてきた。しかし、スピニングプレス加工は、加工の難しさから小物の製造に限定されており、例えば肉厚が16mm程度の吸込みベルのような大物に使われた例は未だ存在しない。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、肉厚が薄く、且つ滑らかな断面形状を有する吸込みベルを備えたポンプ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るポンプは、円筒状ケーシング部の先端に吸込み部が連結され、羽根車が固定された主軸が回転自在に前記ケーシング部に取り付けられたポンプであって、前記吸込み部は、前記ケーシング部に一端側が連結された吸込みライナと、前記吸込みライナの他端側に連結され、筒状に形成した金属板材をスピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成してなる吸込みベルとから構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、吸込みベルが、筒状に形成した金属板材をスピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成した構成となっているため、肉厚を薄くでき、且つ滑らかな断面形状とすることができる。ここでいう断面とは、主軸に垂直な断面を除く断面である。なお、主軸に垂直な断面は、金属板材が筒状に形成された時点で既に湾曲形状を有している。また、筒状とは、円筒形状であってもよいし、中空円錐台形状であってもよく、軸方向の径は一定でなくてもよい。
【0011】
すなわち、吸込みベルが、筒状に形成した金属板材から形成されることから、鋳造製のものより肉厚を薄くでき、よって、軽量化及び低コスト化が可能となる。また、鋳造製のものに比べて製造期間を短縮でき、且つ内在欠陥が発生することがない。さらに、経年使用により生じる欠陥を溶接によって補修可能である。
また、吸込みベルが、スピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成されることから、滑らかな曲面を形成できるため、水力損失を低減でき、ポンプ効率を高くすることができる。これに加えて、吸込みベルの表層流が均一となるため、振動が低減でき、主軸軸受の摩耗を抑制できる。さらにまた、吸込みベルに通電した際にほぼ均一に電流が流れるため、海生生物等の生物付着を防止できる。
【0012】
上記ポンプにおいて、前記吸込みベルの端部と前記吸込みライナの前記他端側とが溶接されることによって、前記吸込みベルと前記吸込みライナとが一体化されていることが好ましい。
このように、吸込みベルと吸込みライナとが一体化されていることによって、吸込み部の取り扱いが容易となり、ポンプの組立作業が簡易化する。また、吸込みベル及び吸込みライナの継ぎ目において、流れの剥離や衝突や滞留が起こりにくくなるので、より一層ポンプ効率を高くすることが可能となる。
【0013】
この場合、前記吸込みベル、前記吸込みライナ及び該吸込みライナに設けられたフランジが溶接により一体化された状態で、前記吸込みライナの内面を切削加工してもよい。
通常、吸込みライナの内周面と羽根車との隙間は、流体の逆流量を最小限に抑えるために、僅少に保つ必要がある。そこで、吸込みライナの内面を切削して、この隙間を微調整することが行われている。しかし、吸込みライナの内面を切削加工した後に溶接を行うと、溶接ひずみによって隙間が変化し、羽根車が内面に接触したり、流体の逆流量が増大してしまうおそれがある。
したがって、吸込みベル、吸込みライナ及びフランジを溶接により一体化した後に、吸込みライナの内面を切削加工することによって、溶接歪みを加味した精度の高い切削加工を行うことができ、また切削加工後に変形することがない。
【0014】
また、前記吸込みベル、前記吸込みライナ及び該吸込みライナに設けられたフランジが溶接によって一体化された状態で、前記フランジの端面を切削加工し、該フランジにボルト穴を形成してもよい。
これは、上記と同様に、吸込みベル、吸込みライナ及びフランジを溶接により一体化した後に、フランジの端面を切削加工しているので、フランジ端面の加工精度を高くできる。さらに、フランジの端面を切削加工した後、ボルト穴を形成しているので、吸込み部をケーシング部と連結した際に、吸込み部の中心軸とケーシング部の中心軸とを精度よく一致させることができる。
【0015】
上記ポンプにおいて、前記吸込みベル及び前記吸込みライナの少なくとも一方は、高耐食性材料で形成された内周壁と、前記内周壁とは異なる材料で形成された外周壁とが接合されて構成されていることが好ましい。
このように、吸込みベル及び吸込みライナの少なくとも一方において、内周壁と外周壁とを異なる材料で形成し、内周壁は高耐食性材料で形成するようにしたので、内周壁が腐食することを抑制して流体の流れを安定させながら、高コストの高耐食性材料は内周壁のみに留め、コストを抑えることが可能となる。
【0016】
本発明に係るポンプの製造方法は、円筒状ケーシングの先端に、吸込みライナ及び吸込みベルからなる吸込み部を連結した後、前記円筒状ケーシングに、羽根車が固定された主軸を回転自在に取り付けるポンプの製造方法であって、金属板材を筒状に形成した後、該金属板材をスピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成して吸込みベルを作製するステップと、前記吸込みライナと前記吸込みベルとを溶接により一体化するステップと、前記吸込みライナと前記吸込みベルとが一体化された前記吸込み部を、前記ケーシング部に連結するステップとを有することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、金属板材を筒状に形成した後、該金属板材をスピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成して吸込みベルを作製するようにしたので、吸込みベルの肉厚を薄くでき、且つ滑らかな断面形状とすることができる。
また、吸込みライナと吸込みベルとを溶接により一体化した後、吸込み部をケーシング部に連結するようにしたので、吸込み部の取り扱いが容易となり、ポンプの組立作業が簡易化する。また、吸込みベル及び吸込みライナの継ぎ目において、流れの剥離や衝突や滞留が起こりにくくなるので、より一層ポンプ効率を高くすることが可能となる。
【0018】
上記ポンプの製造方法において、前記吸込みライナと前記吸込みベルとを一体化するステップでは、前記吸込みライナにフランジを溶接するようにし、前記吸込みライナと前記吸込みベルとが一体化された状態で、前記吸込みライナの内面を切削加工するステップをさらに有することが好ましい。
このように、吸込みベル、吸込みライナ及びフランジを溶接により一体化した後に、吸込みライナの内面を切削加工することによって、溶接歪みを加味した精度の高い切削加工を行うことができ、また切削加工後に変形することがない。
【0019】
上記ポンプの製造方法において、前記吸込みライナと前記吸込みベルとを一体化するステップでは、前記吸込みライナにフランジを溶接するようにし、前記吸込みライナと前記吸込みベルとが一体化された状態で、前記吸込みライナの前記フランジの端面を切削加工した後、前記フランジにボルト穴を形成するステップをさらに有することが好ましい。
このように、吸込みベル、吸込みライナ及びフランジを溶接により一体化した後に、フランジの端面を切削加工しているので、フランジ端面の加工精度を高くできる。さらに、フランジの端面を切削加工した後、ボルト穴を形成しているので、吸込み部をケーシング部と連結した際に、吸込み部の中心軸とケーシング部の中心軸とを精度よく一致させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、吸込みベルが、筒状に形成した金属板材をスピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成した構成となっているため、肉厚を薄くでき、且つ滑らかな断面形状とすることができる。
さらにまた、吸込みベルが、筒状に形成した金属板材から形成されることから、鋳造製のものより肉厚を薄くでき、よって、軽量化及び低コスト化が可能となる。また、鋳造製のものに比べて製造期間を短縮でき、且つ内在欠陥が発生することがない。さらに、経年使用により生じる欠陥を溶接によって補修可能である。
また、吸込みベルが、スピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成されることから、滑らかな曲面を形成できるため、水力損失を低減でき、ポンプ効率を高くすることができる。これに加えて、吸込みベルの表層流が均一となるため、振動が低減でき、主軸軸受の摩耗を抑制できる。さらにまた、吸込みベルに通電した際にほぼ均一に電流が流れるため、海生生物等の生物付着を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
[第1実施形態]
図1を参照して、本発明の実施形態に係るポンプの全体構成について説明する。なお、ここでは一例として、本発明を斜流ポンプに適用した場合について説明している。
図1に示すように、ポンプ1は、流体が流れる通路として、ケーシング部2と、屈曲管3と、吸込みライナ4及び吸込みベル5からなる吸込み部6とを有する。
【0024】
ケーシング部2は、上部ケーシング21と下部ケーシング22とから構成される。上部ケーシング21は、内ケーシング21a及び外ケーシング21bが図示しないステイにより連結されて構成される。内ケーシング21aと外ケーシング21bとの間には、流体が流れる通路の一部が形成されている。上部ケーシング21及び下部ケーシング22には、その両端の外周部にフランジ21c、21d、22c、22dが設けられている。これらのフランジ21c、21d、22c、22dは、上部ケーシング21及び下部ケーシング22に、溶接によって接合されている。そして、上部ケーシング21の下端のフランジ21cと、下部ケーシング22の上端のフランジ22cとがボルト25で締結されることによって、上部ケーシング21と下部ケーシング22とが鉛直方向に連結されている。
【0025】
下部ケーシング22は、上記上部ケーシング21と同様に、内ケーシング22a及び外ケーシング22bが図示しないステイにより連結されて構成される。内ケーシング22aと外ケーシング22bとの間には、流体が流れる通路の一部が形成されている。また、内ケーシング21a、22aは、不図示の締結部材によって互いに連結されている。なお、内ケーシング21a、22aは、締結以外にも、溶接等の接合手段によって連結されていてもよいし、予め一体成形されていてもよい。
下部ケーシング22の下方には吸込み部6が連結されている。吸込み部6の構成については後述する。
【0026】
一方、上部ケーシング21の上方には屈曲管3が連結されている。
屈曲管3は、一端側が下方に開口し、他端側が水平方向に開口し、これらの開口の間が屈曲した形状となっている。両端部の外周部には、ケーシング部2と同様に、フランジ31、32が設けられている。これらのフランジ31、32は、屈曲管3に、溶接によって接合されている。そして、屈曲管3の下端のフランジ32と、上部ケーシング21の上端のフランジ21dとがボルト26で締結されることによって、屈曲管3と上部ケーシング21とが略鉛直方向に連結されている。一方、屈曲管3の側方端のフランジ31は、不図示の吐出配管に接続されている。
【0027】
上部ケーシング21の外周部には、据付用フランジ24が設けられている。このフランジ25は、上部ケーシング21に、溶接によって接合されている。据付用フランジ24は、架台11上に設置されて固定されている。フランジ24及び屈曲管3の上方には、支柱13が立設されている。そして、屈曲管3の周壁を貫通してケーシング部2の中央を通るように主軸12が配設されている。主軸12は、軸受14を介して支柱13に回転自在に支持されているとともに、軸受15を介して屈曲管3の貫通部に回転自在に支持されている。
【0028】
主軸12は、下端部にハブ16が固定されている。ハブ16の外周部には、周方向に等間隔で複数のブレード17が固定されることで、羽根車18が構成されている。一方、主軸12は、上端部に継手19を介して、図示しない駆動モータの駆動軸20が連結されている。この駆動モータを駆動すると主軸12が回転し、主軸12の先端部に設けられた羽根車18を駆動回転することができる。
【0029】
ここで、
図2を参照して、吸込み部6の具体的な構成について説明する。
吸込み部6は、吸込みライナ4と吸込みベル5とから構成され、これらが溶接によって一体化されている。
吸込みライナ4は、吸込み側端部46(
図1にて下方側)から吐出側端部45(
図1にて上方側)に向けて拡径する筒状体41と、筒状体41の吐出側端部45の外周部に設けられたフランジ42とを有している。フランジ42には、周方向に複数のボルト穴43が形成されている。なお、筒状体41は、ディフューザ機能を有するように、吸込み側が縮径した中空円錐台形状であることが好ましい。ここで、筒状体41は、弧状の金属板材を溶接線44で溶接することによって、円錐台形状に形成されたものである。
【0030】
吸込みベル5は、吸込みライナ4の吸込み側端部46に、溶接によって連結される。吸込みベル5は、筒状に形成した金属板材をスピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成した構成となっている。ここでいう断面とは、主軸12に垂直な断面を除く断面である。なお、主軸12に垂直な断面は、金属板材が筒状に形成された時点で既に湾曲形状を有している。また、筒状とは、円筒形状であってもよいし、中空円錐台形状であってもよく、軸方向の径は一定でなくてもよい。筒状体51は、弧状の金属板材を溶接線52で溶接することによって、筒状に形成されたものである。ここで、吸込みベル5は、ベルマウス形状を有することが好ましい。これにより、吸込みベル5の摩擦損失や衝突損失等の水力損失を低く抑え、吸込みベル5の表層流が均一になり、流体の滑らかな流れを形成することができる。
【0031】
吸込みライナ4の吸込み側端部46と吸込みベル5の吐出側端部53とは溶接される。これらの溶接には、例えば、TIG溶接やMIG溶接やMAG溶接等のアーク溶接、レーザ溶接、プラズマアーク溶接、摩擦撹拌接合等の各種の溶接手法を用いることができる。また、アーク溶接を用いる場合、溶接継手としては、V形、X形等の各種の開先を用いることができるが、両面からの溶接によって強度を確保するため、特にX形開先を用いることが好ましい。
【0032】
吸込みライナ4と吸込みベル5が一体化された吸込み部6は、ケーシング部2の下端に連結される。具体的には、下部ケーシング22の下端のフランジ22dと、吸込みライナ4のフランジ43とをボルト27で締結することによって、ケーシング部2に吸込み部6を連結する。
なお、吸込み部6の外周面に、主軸方向に補強用のリブ61を設けてもよい。この場合、リブ61は、吸込み部6の外周面に、周方向に所定間隔で複数設けられる。さらに、リブ61には、吸込み部6を移動する際に、吸込み部の吊上げ用のワイヤを係止する係止穴62が設けられていてもよい。
【0033】
次に、本発明の実施形態に係るポンプの製造方法について説明する。
最初に、第1ステップで、金属板材を筒状に形成した後、該金属板材をスピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成して吸込みベル5を作製する。ベルマウス形状を有する吸込みベル5を作製する場合、
図3に示すように、まず、弧状の金属板材を溶接線52で溶接することによって、中空円錐台形状の筒状体51’を形成する。溶接した後に、グラインダーでビード肉盛部を削り取ることが好ましい。これによって、後段のスピニングプレス加工を円滑に行える。
【0034】
この中空円錐台形状の筒状体51’の内周面に内ローラ(不図示)を当接させて固定し、筒状体51’ごと図中矢印A方向に回転させる。そして、筒状体51’を回転させながら、筒状体51’の外周面に図中矢印B方向に回転する外ローラ71を押し当てて、外ローラ71を図中矢印C方向に移動させ、所定の曲率が得られるように調整しながら筒状体51’を塑性変形させ、徐々にベルマウス形状に成形していく。このとき、吸込みベル5の吐出側端部53と、吸込みライナ4の吸込み側端部46とが一致するように形成する。
【0035】
続いて、第2ステップにて、第1ステップで作製した吸込みベル5と、予め作製しておいた中空円錐台形状の吸込みライナ4とを、溶接により一体化する。なお、吸込みライナ4のフランジ42は、このステップで筒状体41に溶接してもよいし、予め筒状体41に溶接しておいてもよい。
【0036】
第3ステップでは、吸込みライナ4と吸込みベル5とが一体化された状態で、吸込みライナ4の内面47(
図2参照)を切削加工する。この切削加工は、吸込みライナ4をケーシング部2に連結した際に、吸込みライナ4の内面47と羽根車18との隙間が最適化されるように、内面47を切削する。最適化の条件は、吸込み部6に流入する流体の吸込み側への逆流量を最小限に抑え、且つポンプ1が振動しても羽根車18が吸込みライナ4の内面に接触しないような隙間とする。
このように、吸込みベル5、吸込みライナ4及びフランジ42を溶接により一体化した後に、吸込みライナ4の内面47を切削加工することによって、溶接歪みを加味した精度の高い切削加工を行うことができ、また切削加工後に変形することがない。
【0037】
第4ステップでは、吸込みライナ4のフランジ42の端面を切削加工して水平面を形成した後、フランジ42にボルト穴43を形成する。
このように、吸込みベル5、吸込みライナ4及びフランジ42を溶接により一体化した後に、フランジ42の端面を切削加工しているので、フランジ端面の加工精度を高くできる。さらに、フランジ42の端面を切削加工した後、ボルト穴43を形成しているので、吸込み部6をケーシング部2と連結した際に、吸込み部6の中心軸とケーシング部2の中心軸とを精度よく一致させることができる。
なお、第3ステップと第4ステップは順番が入れ替わってもよいし、同時に行われてもよい。
【0038】
最後に、第5ステップで、吸込みライナ4と吸込みベル5とが一体化された吸込み部6を、ボルト27によってケーシング部2に連結する。
このように、吸込みベル5と吸込みライナ4とが一体化されていることによって、吸込み部6の取り扱いが容易となり、ポンプ1の組立作業が簡易化する。また、吸込みベル5及び吸込みライナ4の継ぎ目において、流れの剥離や衝突や滞留が起こりにくくなるので、より一層ポンプ効率を高くすることが可能となる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、吸込みベル5が、筒状に形成した金属板材をスピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成した構成となっているため、肉厚を薄くでき、且つ滑らかな断面形状とすることができる。
すなわち、吸込みベル5が、筒状に形成した金属板材から形成されることから、鋳造製のものより肉厚を薄くでき、よって、軽量化及び低コスト化が可能となる。また、鋳造製のものに比べて製造期間を短縮でき、且つ内在欠陥が発生することがない。さらに、経年使用により生じる欠陥を溶接によって補修可能である。
また、吸込みベル5が、スピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成されることから、滑らかな曲面を形成できるため、水力損失を低減でき、ポンプ効率を高くすることができる。これに加えて、吸込みベルの表層流が均一となるため、振動が低減でき、主軸軸受の摩耗を抑制できる。さらにまた、吸込みベル5に通電した際にほぼ均一に電流が流れるため、海生生物等の生物付着を防止できる。
【0040】
なお、上述の実施形態において、吸込みライナ4及び吸込みベル5を形成する金属板は、例えば鋼板、ニッケル合金板、高炭素鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板等を用いることができ、特に限定されるものではないが、次のように構成してもよい。
図4に示すように、吸込みライナ4及び吸込みベル5の少なくとも一方を、高耐食性材料で形成された内周壁と、内周壁とは異なる材料で形成された外周壁とを接合した金属板とする。同図では、一例として吸込みライナ4のみを内周壁41aと外周壁41bの異なる材料で形成した場合を示している。この場合、例えば内周壁41aは高耐食性を有するステンレス鋼で形成し、外周壁41bは安価な鋼板で形成する。これらの2層の金属板は、溶接等によって接合してもよい。また、上記構成を吸込みベル5に適用する場合には、スピニングプレス加工時に、2層の金属板が剥離しないように金属板同士を溶接によって接合することが好ましい。なお、内周壁と外周壁との間に、他の金属板を挟持させてもよい。このように、複数層の金属板の合板から構成することもできる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、
図5を参照して、第2実施形態に係るポンプについて説明する。本実施形態のポンプは、吸込みライナと吸込みベルとを別体としたことを除けば、既に説明した第1実施形態のポンプ1と同様の構成である。したがって、ここでは、第1実施形態と共通する部材には同一の符号を付してその説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0042】
図6に示すように、本実施形態では、吸込みライナ4と吸込みベル5とが、別体で構成されている。
吸込みライナ4には、吐出側端部45の外周部にフランジ42が設けられているとともに、吸込み側端部46の外周部にもフランジ48が設けられている。フランジ48には、円周方向に複数のボルト穴49が形成されている。
一方、吸込みベル5には、吐出側端部53の外周部に、フランジ58が設けられている。フランジ58には、吸込みライナ4のボルト穴49に対応して、円周方向に複数のボルト穴59が形成されている。
【0043】
吸込み部6は、吸込みライナ4のフランジ48と、吸込みベル5のフランジ59とをボルト68で締結することによって連結される。
このようにして、吸込みライナ4と吸込みベル5とが連結された吸込み部6は、ケーシング部2の下端に、ボルト27によって連結される。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、吸込みベル5が、筒状に形成した金属板材をスピニングプレス加工によって断面湾曲形状に形成した構成となっているため、肉厚を薄くでき、且つ滑らかな断面形状とすることができる。
また、本実施形態では、吸込みライナ4と吸込みベル5とが別体で構成されているので、部分的な交換や補修が容易である。さらにまた、ケーシング部2への取り付け作業の自由度が大きくなる。
【0045】
なお、上述の実施形態において、第1実施形態と同様に、吸込みライナ4及び吸込みベル5の少なくとも一方を、2層以上の金属板材を接合して構成してもよい。ここで、
図6は2層金属複合材の適用例を示す図であり、(A)はフランジの断面図で、(B)は2層金属複合材の断面図である。
また、
図6(A)に示すように、吸込みライナ4のフランジ48と、吸込みベル5のフランジ58の間にOリング75を介装することが好ましい。このとき、フランジの剛性を向上させるために、フランジ基部からOリング75までの間に、異なる2層の金属板材を接合した2層金属材を配置してもよい。
図6(A)では一例として、吸込みライナ4のフランジ48に2層金属複合材76を配置した場合を示している。この2層金属複合材76は、例えば、高耐食性で且つ高剛性を有するステンレス鋼材と、SS400等の安価な鋼材とが接合されて構成される。
【0046】
また、
図6(B)に示すように、ステンレス鋼材46a及び鋼材46bからなる2枚の金属板材同士を面接触させ、板の縁部を開先溶接し、2層金属複合材76を形成してもよい。これにより、市販の2層金属複合材を購入するより安価で且つ所望の組み合わせの複合材を形成することができる。ただし、この場合、2枚の金属板材同士の間に隙間ができるので、一方の板材76bに、所定間隔で隙間まで到達する孔79を穿孔し、この穴を溶接で埋めることが好ましい。これによって、開先溶接部78に欠陥があり、海水等の液体が侵入した場合であっても、穴79に充填された溶接材によってそれ以上の液体の侵入を阻止できる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
例えば、第1実施形態(
図1参照)で説明したポンプは、架台より上方に吐出配管が配設されているが、架台より下方に吐出配管が位置するように吊り下げられた斜流ポンプに適用しても、同様の作用効果を得ることができる。
また、上述の各実施形態では、本発明のポンプを、縦型斜流ポンプに適用した場合について説明したが、本発明が適用されるポンプの種類は特に限定されるものではない。例えば、斜流ポンプの他に、軸流ポンプや遠心ポンプなどの他の種類のポンプにも適用可能である。