(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の新聞用紙の実施の形態を詳説する。
【0015】
本発明の新聞用紙は、填料として無機粒子が内添されている。当該新聞用紙は、パルプ及び填料等を含むパルプスラリーを抄紙して得られる。
【0016】
<パルプ>
上記パルプとしては、公知のものを用いることができ、古紙パルプ、バージンパルプ又はこれらの組み合わせたものを適宜用いることができる。なお、主成分として古紙パルプを用いることが、省資源化の観点からも好ましい。
【0017】
古紙パルプとしては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)又は離解・脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。
【0018】
これらの古紙パルプの中でも、新聞古紙由来の新聞古紙パルプ、雑誌古紙由来の雑誌古紙パルプ等が好ましく、新聞古紙パルプ及び雑誌古紙パルプを混合して用いることが特に好ましい。かかる新聞古紙パルプ及び雑誌古紙パルプは、古紙の回収率が高く、各製紙メーカーで新聞用紙、雑誌用紙を構成する原料パルプ種や填料類が近似していることから、原料構成の変動を抑えることができる点で好適である。特に、新聞古紙パルプは、新聞用紙には一般的に古紙パルプが既に50%以上配合され、バージンの機械パルプやクラフトパルプの含有量が少ないため、また、バージンの各種パルプが用いられていても、一度抄紙され、古紙処理により古紙パルプ化されているため、その性状は均質化し、ほぼ一定の性状を有している点で特に好ましい。
【0019】
バージンパルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ;ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的又は機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを使用することができる。
【0020】
これらのバージンパルプの中でも、新聞用紙の製造において、古紙パルプを用いることによる嵩の低下を補完する効果を有する機械パルプ(MP)が好ましく、古紙から得る古紙パルプの調整に好適なサーモメカニカルパルプ(TMP)が特に好ましい。
【0021】
原料パルプにおける古紙パルプの含有量としては、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が特に好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。原料パルプ中の古紙パルプの含有量を上記範囲とすることで、資源の有効利用等の環境性が向上し、さらにインキ着肉性等の印刷適性も向上する。逆に、原料パルプにおけるバージンパルプの含有量としては、10質量%以上が好ましく、20質量%以上が特に好ましい。バージンパルプの含有量が上記範囲未満の場合、当該新聞用紙の強度や嵩の調整が困難となって、搬送性や作業性が低下するおそれがある。
【0022】
<填料>
本発明においては、無機粒子を填料として用いる。この無機粒子としては、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、水和ケイ素、ホワイトカーボン、再生粒子、シリカ複合粒子等を挙げることができ、これらの中から1種又は2種以上を填料として用いることができる。これらの中でも、単体で以下に説明する粒度分布を有するシリカ複合炭酸カルシウム粒子及びシリカ複合再生粒子が特に好ましい。
【0023】
本発明で用いる上記無機粒子は、体積平均粒子径D50が2μm以上10μm以下であり、より好ましくは3μm以上8μm以下、さらに好ましくは4μm以上5μm以下である。無機粒子の体積平均粒子径が上記範囲未満の場合、無機粒子の歩留りが低下するおそれがある。逆に、無機粒子の体積平均粒子径が上記範囲を超える場合、紙力が低下するおそれがあるほか、無機粒子の分散性が十分得られず、当該新聞用紙の不透明度が低下するおそれがある。
【0024】
また上記無機粒子は、体積10%粒子径D10に対する体積90%粒子径D90の比D90/D10が2以上5以下であり、より好ましくは2.5以上4.5以下である。D90/D10が上記範囲を超える場合、無機粒子の粒子径のばらつきが大きく、無機粒子の分散性が得られず、その結果、当該新聞用紙の不透明度が低下するおそれがある。また、粒子径の大きい無機粒子の割合が高くなるため、紙粉のパイリング等が発生しやすくなるおそれがある。逆に、D90/D10が上記範囲未満の場合、粒子径のばらつきを極端に小さくする必要があり、無機粒子の製造コストが著しく上昇するおそれがある。
【0025】
またさらに上記無機粒子は、体積平均粒子径D50に対する体積90%粒子径D90の比D90/D50が1以上3以下であることが好ましく、1.5以上2.5以下であることがより好ましい。D90/D50が上記範囲を超える場合、粒子径の大きい無機粒子の割合が高くなるため、紙粉のパイリングが発生しやすくなるおそれや当該新聞用紙の強度や不透明度が低下するおそれがある。逆に、D90/D50が上記範囲未満の場合、粒子径のばらつきを極端に小さくする必要があり、無機粒子の製造コストが著しく上昇する。
【0026】
なお、無機粒子の粒子径(D50、D10、D90)は、填料が複数種の無機粒子を含む場合は、複数種の無機粒子を混合した填料全体の粒子径を計測したものをいう。
【0027】
<シリカ複合炭酸カルシウム粒子>
シリカ複合炭酸カルシウム粒子は、炭酸カルシウム粒子とこの炭酸カルシウム粒子の表面の少なくとも一部を被覆するシリカとを備える。上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子は、通常、シリカで被覆された炭酸カルシウム粒子が凝集した粒子と、シリカで被覆されているのみで凝集が生じていない炭酸カルシウム粒子とが混在して存在する粒子の集合体である。
【0028】
上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子は、このように炭酸カルシウム粒子にシリカ被覆することで、体積10%粒子径D10に対する体積90%粒子径D90の比D90/D10が2以上5以下と、通常の重質炭酸カルシウム粒子等の体積10%粒子径D10に対する体積90%粒子径D90の比より小さくしている。つまり、粒径のばらつきが大きい炭酸カルシウム粒子を、シリカの被覆により粒径のばらつきが小さい状態としている。このような粒子の集合体である上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子によれば、粒径の小さい粒子が少ないため、抄紙の際に繊維間に留りやすく、歩留りが向上すると共に、柔軟な性状により嵩高性にも寄与する。特に、シリカ含有率を2質量%以上30質量%以下に調整することで粒径の小さい粒子が選択的にシリカにより柔軟に凝集化されるため好ましい。また、上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子によれば元々粒径が大きく角張っていた粒子の表面がシリカで被覆されるためワイヤー磨耗度を下げることができる。さらに上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子は、シリカの表面への析出による被覆により多孔質形状となっており、吸油度が高く、印刷後不透明度を高めることができる。
【0029】
なお、シリカ複合前の炭酸カルシウム粒子の一次粒子における体積10%粒子径D10に対する体積90%粒子径D90の比D90/D10からのシリカ複合後のシリカ複合炭酸カルシウム粒子におけるD90/D10の減少幅としては、0.2以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。
【0030】
このように、シリカ複合前の炭酸カルシウム粒子の一次粒子におけるD90/D10からのシリカ複合後のシリカ複合炭酸カルシウム粒子におけるD90/D10の減少幅を0.2以上にすることで、粒子径の小さい粒子が選択的にシリカにより柔軟に凝集化されるとともに、粒子径の大きな粒子は凝集することなく表面にシリカ被覆されるため、不透明度の向上、ワイヤー磨耗度の低減効果が得られる。特に、炭酸カルシウムとして、重質炭酸カルシウムを用いると、シリカ被覆による炭酸カルシウム粒子の一次粒子とシリカ複合炭酸カルシウム粒子とにおけるD90/D10の減少幅を効果的に0.2以上にでき、上記効果を顕著に発揮できるため好ましい。
【0031】
<炭酸カルシウム粒子>
上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子に用いられる炭酸カルシウム粒子は、体積平均粒子径(一次粒子径)が0.5μm以上3μm以下のものが好ましく、0.8μm以上2.5μm以下であるものが更に好ましい。炭酸カルシウム粒子の体積平均粒子径をこのような範囲とすることで、後述するシリカによる凝集と相まって、上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子の歩留り及び不透明度等を高めることができる。
【0032】
また、この炭酸カルシウム粒子としては、上述の体積10%粒子径D10に対する体積90%粒子径D90の比D90/D10が、得られるシリカ複合炭酸カルシウム粒子の比よりも大きい値であるものが好適に用いられる。この体積10%粒子径D10に対する体積90%粒子径D90の比D90/D10が大きい炭酸カルシウム粒子を用いることで、粒径の小さいものはシリカの被覆と共に複数の粒子の凝集が進む一方、粒径の大きいものはシリカの被覆のみで凝集がほとんど生じていない状態となり、粒度分布の広い炭酸カルシウム粒子を粒度分布幅の狭いシリカ複合炭酸カルシウム粒子とすることができ、結果としてシリカ複合炭酸カルシウム粒子の歩留向上、吸油度や不透明度等を高めることができる。
【0033】
この炭酸カルシウム粒子(一次粒子)の上述の体積10%粒子径D10に対する体積90%粒子径D90の比D90/D10としては、5.1以上8以下が好ましく、5.3以上7以下がより好ましい。
【0034】
この炭酸カルシウムとしては、軽質炭酸カルシウム又は重質炭酸カルシウムのいずれでもよいが、重質炭酸カルシウムを用いることが好ましい。重質炭酸カルシウム粒子は、一次粒子径の粒度分布が広い、すなわち様々な粒子径の炭酸カルシウム粒子の集合体からなるため、粒径の小さいものはシリカの被覆と共に複数の粒子の凝集が進む一方、粒径の大きいものはシリカの被覆のみで凝集がほとんど生じていない状態となる。そのため、シリカ複合炭酸カルシウム粒子に用いられる炭酸カルシウム粒子として重質炭酸カルシウム粒子を用いることで、上述のようなシャープな粒度分布を有する炭酸カルシウム粒子を容易かつ確実に得ることができる。
【0035】
この重質炭酸カルシウムは、天然の石灰石を粉砕・分級する方法で調製することができるし、粉粒体として入手できる市販の重質炭酸カルシウムを必要に応じて粉砕・分級して用いることもできる。ここでいう粉砕には、例えば、ロールミル、ジェットミル、乾式ボールミル、衝撃式粉砕機等の乾式粉砕機による粉砕、湿式ボールミル、振動ミル、撹拌槽型ミル、流通管型ミル、コボールミル等の湿式粉砕機による粉砕が挙げられ、これらの粉砕機を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0036】
また、分級方法としては、例えば、共振振動ふるい、ローヘッドスクリーン、電磁スクリーン等のふるい分け、ミクロンセパレーター、サイクロン等の乾式分級、デカンタ型遠心分離機、液体サイクロン、ドラッグ分級機等の湿式分級が挙げられ、これらの分級機を適宜組み合わせて使用することができる。
【0037】
<シリカ>
炭酸カルシウム粒子を被覆するシリカとしては、特に限定されず公知のものを用いることができ、後述するように水溶液中でシリカを析出し被覆させることで、効率的に炭酸カルシウム粒子に被覆させることができる。
【0038】
このシリカの含有率としては、2質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。シリカの含有率をこのような範囲とすることで、粒径の小さい炭酸カルシウム粒子に対しては、複数の粒子が柔軟に凝集するほど十分な表面へのシリカ析出量となり、粒径の大きい炭酸カルシウム粒子に対しては、表面、特に析出しやすいナイフエッジ等の先端部分へのシリカ析出に留まり、他の粒子との凝集が生じるほどの被覆が生じない。従って、上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子によれば、粒度分布の広い炭酸カルシウム粒子をこのような質量比のシリカで被覆することで、粒度分布の狭い凝集体状態に制御されやすくなり、結果としてシリカ複合炭酸カルシウム粒子の歩留向上、吸油度や不透明度を高め、ワイヤー磨耗度の低減を図ることができる。
【0039】
シリカの含有率が上記下限未満の場合は、炭酸カルシウム粒子を十分に凝集させることができず、得られるシリカ複合炭酸カルシウム粒子の粒度分布が狭まりにくく、その結果、歩留りが向上しないおそれがある。逆に、シリカ含有率が上記上限を超える場合は、粒径の比較的大きい炭酸カルシウム粒子の凝集までもが進みやすくなる。その結果、得られるシリカ複合炭酸カルシウム粒子において粒径が大きい粒子が増え、同様に粒度分布が狭まりにくく、不透明度向上能が十分ではなく、また、粒径の大きい粒子が多いため、紙力が低下したり、紙粉が生じやすくなるおそれがある。上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子を当該新聞用紙に填料として用いることにより、特に坪量が44g/m
2以下の低坪量であっても、粒子径がシャープな粒子がパルプ繊維中に均一に分散し、しかも歩留まりが高いため、不透明度が高く、インキ着肉性が良好で紙粉が少なく、引張強度にも良好な新聞用紙が得られるため好ましい。
【0040】
<シリカ複合炭酸カルシウム粒子の製造方法>
上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子の製造方法としては特に限定されないが、例えば、
(1)炭酸カルシウム粒子を珪酸アルカリ水溶液中に懸濁させて懸濁液を得る懸濁工程と、
(2)この懸濁液に鉱酸を添加し、炭酸カルシウム粒子の表面にシリカを析出し、被覆させて炭酸カルシウム粒子を凝集させる凝集工程と
を有する方法を挙げることができる。
【0041】
上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子の製造方法によれば、凝集工程において、炭酸カルシウム粒子のうち、粒径の小さいものはシリカの被覆と共に複数の粒子の凝集が進む一方、粒径の大きいものはシリカの被覆のみで、凝集がほとんど生じていない状態となり、粒度分布の広い炭酸カルシウム粒子を粒度分布の狭いシリカ複合炭酸カルシウム粒子とすることができる。従って、上記製造方法によれば、歩留り及び不透明度等が高く、かつ、ワイヤー磨耗度が低いシリカ複合炭酸カルシウム粒子を得ることができる。
【0042】
(1)懸濁工程
本工程においては、炭酸カルシウム粒子、好ましくは湿式粉砕された重質炭酸カルシウム粒子を珪酸アルカリ水溶液中に混合する。珪酸アルカリ水溶液は特に限定されないが、珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が入手に容易である点で好ましい。
【0043】
また、この炭酸カルシウム粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加分散した懸濁液の固形分濃度としては、3〜35質量%が好ましい。この濃度を上記範囲で調整することにより、得られるシリカ複合炭酸カルシウム粒子の粒径、粒度分布、シリカ含有率等を所望する範囲に制御しやすくなる。
【0044】
また、上記珪酸アルカリ水溶液中の珪酸分(SiO
2換算)と炭酸カルシウムの固形分比としては2:98〜30:70が好ましく、3:97〜20:80がより好ましい。このようにすることで、シリカ複合炭酸カルシウム粒子のシリカの含有率を好ましくは2質量%以上30質量%以下、より好ましくは3質量%以上20質量%以下にすることができる。珪酸アルカリ水溶液中の珪酸分(SiO
2換算)の炭酸カルシウムに対する固形分比が2:98より少ないと炭酸カルシウム粒子を十分に凝集させることができず、得られるシリカ複合炭酸カルシウム粒子の粒度分布が狭まりにくく、その結果、不透明度の向上能が十分でなく歩留りが向上しないおそれがある。一方、上記固体分比が30:70を超えると、粒径の比較的大きい炭酸カルシウム粒子の凝集までもが進みやすくなる。その結果、得られるシリカ複合炭酸カルシウム粒子において粒径が大きい粒子が増え、同様に粒度分布が狭まりにくく、不透明度向上能が十分ではなく、また、粒径の大きい粒子が多いため、紙力が低下したり、紙粉が生じやすくなったりするおそれがある。
【0045】
(2)凝集工程
本工程においては、上記懸濁液に鉱酸を添加し、炭酸カルシウム粒子の表面にシリカを析出し被覆させ、炭酸カルシウム粒子の少なくとも一部を凝集させる。
【0046】
上記鉱酸としては希硫酸、希塩酸、希硝酸等の鉱酸の希釈液等が挙げられるが、価格、ハンドリングの点で希硫酸が好ましい。さらに、希硫酸を使用する場合の添加時の濃度としては、0.2〜4.0モル%が好ましい。本発明の製造方法で好適に用いられる重質炭酸カルシウムは鉱物由来であるため、所定の範囲でカルシウム、アルミニウム等の不純物を構成元素として含有しており、過度の濃度の鉱酸添加は、得られるシリカ複合炭酸カルシウム粒子に変質が生じるおそれがある。
【0047】
また、鉱酸添加量が多いほど短時間内にシリカが析出するので、それらの条件に合わせて添加速度を調整することが好ましい。なお、5分以内の添加は、均一な反応系の構成が不十分になる。
【0048】
この凝集工程における反応温度としては、60℃以上100℃以下が好ましい。本発明者らの鋭意検討の結果から、本発明に使用する炭酸カルシウムとの反応温度はシリカの生成、結晶成長速度および形成された炭酸カルシウム−シリカ複合粒子の力学的強度に影響を及ぼす。反応温度が60℃未満ではシリカの生成・成長速度が遅く、形成された複合粒子の被覆性に劣り、被覆の剥落が生じやすく、印刷用紙の抄造時にかかる剪断力で被覆が壊れ易い。逆に100℃を超えると、水系反応であるためオートクレーブを使用しなければならないため反応工程が複雑になってしまう。なお、最適反応温度は65〜95℃である。
【0049】
この凝集工程においては、上述のように鉱酸の添加によりシリカゾルを生成させ、上記懸濁液を中性〜弱アルカリ性、好ましくはpHを8〜11の範囲に調整することによりシリカ複合炭酸カルシウム粒子を得ることができる。この際、上記懸濁液の温度が60℃以上100℃以下であるとともに、上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子におけるシリカ含有率が2質量%以上30質量%以下、より好適には3質量%以上20質量%以下となる範囲に上述の珪酸アルカリ水溶液中の珪酸分(SiO
2換算)と炭酸カルシウムの固形分比を調整し、鉱酸を最終反応液のpHが8〜11になるように添加するとよい。このような珪酸アルカリ水溶液中の珪酸分(SiO
2換算)と炭酸カルシウムの固形分比、温度及び鉱酸添加量に制御すること、より好適には、重質炭酸カルシウムに対するシリカの凝集工程での鉱酸の添加時間を60〜120分、より好適には70分から100分に保つことにより粒径の小さいものはシリカの被覆と共に複数の粒子の凝集が進んでいる一方、粒径の大きい炭酸カルシウム粒子に対しては、表面、特に析出しやすいナイフエッジ等の先端部分へのシリカ析出に留まり、他の粒子との凝集が生じるほどの被覆が生じないことによって、上述の粒度分布の狭いシリカ複合炭酸カルシウム粒子を効率的に得ることができる。鉱酸の添加時間が60分を下回ると、過度のシリカ被覆が生じ、過大な粒径のシリカ複合炭酸カルシウム粒子が生じるおそれがあり、120分を上回ると、粒径の小さな炭酸カルシウム粒子の凝集が不十分になるおそれがある。
【0050】
なお、本工程では、鉱酸を2段階以上で添加することが好ましい。鉱酸を2段階以上で添加する場合、第1段階目の鉱酸添加時のスラリー温度が60〜75℃であり、第2段階目以降の鉱酸添加時のスラリー温度が少なくとも第1段階目よりも10℃以上昇温することが望ましい。具体的には、第1段階の液温を60℃以上75℃未満、第2段階を70℃以上100℃未満とし、反応の最終段階で90℃以上98℃以下とすることが好ましい。これらの温度条件によって、より粒子径のシャープなシリカ複合炭酸カルシウム粒子を得ることができる。また、1段階目では、珪酸アルカリ水溶液の中和率が20〜50%となる鉱酸を添加し、その後5〜20分程度の保留時間後に第2段階目の鉱酸添加を行うことによって、さらにシリカの積層複合化を促進させることが可能になり、炭酸カルシウム粒子の表面に、より均一にシリカを複合することができる。
【0051】
また、上記凝集工程前に、凝結剤等によって炭酸カルシウム粒子の凝結体を得る凝結工程をさらに備えるとよい。このように、シリカを複合する前に炭酸カルシウム粒子を凝結させることで、粒度分布がシャープで適度な粒径の炭酸カルシウム粒子の凝結体を得ることができ、この凝結体にシリカを複合させることによって、得られる複合粒子の歩留まりをさらに向上させることができる。この凝結剤としては、カチオン性凝結剤が好ましく、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、カチオン性ポリアクリルアミド等を用いることができる。
【0052】
上記凝結剤の質量平均分子量としては、10万以上150万以下が好ましく、20万以上80万以下がさらに好ましい。凝結剤の質量平均分子量が上記範囲未満の場合、十分な凝結力が得られないおそれがある。逆に、凝結剤の質量平均分子量が上記範囲を超える場合、過度に粒径が大きい炭酸カルシウム粒子の凝結体が形成され、粒度分布がブロードになって歩留まりが低下するおそれや、炭酸カルシウム粒子のスラリーに凝結剤を添加した場合に、粘度が高くなりすぎて作業性や歩留りが低下するおそれがある。特に、炭酸カルシウム粒子のスラリーの粘度が500cpsを超えると、炭酸カルシウム粒子のスラリーを移送するポンプの負荷が大きくなるおそれや、シリカ複合炭酸カルシウム粒子のパルプ原料との混合性が低下するおそれがある。また、抄紙系内の汚れが顕在化する不都合が生じるおそれがある。なお、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)を用いて測定した数値である。
【0053】
また、上記凝結剤のカチオン電荷密度としては、3meq/g以上25meq/g以下が好ましく、5meq/g以上25meq/g以下がさらに好ましい。凝結剤のカチオン電荷密度が上記範囲未満の場合、十分な凝結力が得られないおそれがある。逆に、凝結剤のカチオン電荷密度が上記範囲を超える場合、炭酸カルシウム粒子の表面全体がカチオン電荷を帯びることによって、電荷による反発で凝結が生じにくくなる場合があるほか、過度に粒径が大きい炭酸カルシウム粒子の凝結体が形成され、粒度分布がブロードになって歩留まりが低下するおそれがある。なお、このカチオン電荷密度は、凝結剤として複数の成分を用いる場合は、その凝結剤全体としてのカチオン電荷密度をいう。
【0054】
上記カチオン電荷密度は以下の方法で測定した値である。まず、試料をpH4.0の水溶液に調整した後、流動電位法に基づく粒子荷電測定装置(Muteck PCD−03)にて、1/1000規定のポリビニル硫酸カリウム水溶液を用いた滴定によって、アニオン要求量を測定する。得られたアニオン要求量を用いて下記式(1)によって、試料1gあたりのカチオン電荷密度(meq/g)を計算する。
カチオン電荷密度=A/B×1000 (1)
A:pH4.0に調整した凝結剤水溶液のアニオン要求量(μeq/l)
B:凝結剤水溶液の固形分濃度(g/l)
【0055】
<シリカ複合再生粒子>
シリカ複合再生粒子は、再生粒子とこの再生粒子の表面の少なくとも一部を被覆するシリカとを備える。上記シリカ複合再生粒子は、通常、シリカで被覆された再生粒子の凝集粒子と、シリカで被覆されているのみで凝集が生じていない再生粒子とが混在して存在する粒子の集合体である。再生粒子は、製紙スラッジを主原料とし、脱水、熱処理及び粉砕工程を経て得られたものである。このような工程を経て得られた再生粒子は、過燃焼が抑えられており、スラリー化の際の増粘を抑制することができる。なお、この再生粒子の好ましい製造方法については、後に詳述する。
【0056】
上記シリカ複合再生粒子は、このように再生粒子にシリカ被覆することで、つまり、上記シリカ複合再生粒子の製造において、粒径のばらつきが大きい再生粒子をもとに、シリカの被覆により粒径のばらつきが小さい状態とし、体積10%粒子径D10に対する体積90%粒子径D90の比D90/D10が2以上5以下としている。このような粒子の集合体である上記シリカ複合再生粒子によれば、粒径の小さい粒子が少ないため、抄紙の際に繊維間に留りやすく、歩留りが向上すると共に、柔軟な性状により嵩高性にも寄与する。さらにシリカ含有率を2質量%以上30質量%以下に調整することで粒径の小さい粒子が選択的にシリカにより柔軟に凝集化されるため好ましい。上記シリカ複合再生粒子によれば元々粒径が大きく角張っていた粒子の表面はシリカで被覆されているためワイヤー磨耗度を下げることができる。
【0057】
<再生粒子>
上記シリカ複合再生粒子に用いられる再生粒子は、体積平均粒子径(一次粒子径)が0.5μm以上3μm以下のものが好ましく、0.8μm以上2.5μm以下であるものが更に好ましい。再生粒子の体積平均粒子径をこのような範囲とすることで、後述するシリカによる凝集と相まって、上記シリカ複合再生粒子の歩留り及び不透明度等を高めることができる。
【0058】
<シリカ>
再生粒子を被覆するシリカとしては、特に限定されず公知のものを用いることができ、後述するように水溶液中でシリカを析出し被覆させることで、効率的に再生粒子に被覆させることができる。
【0059】
このシリカの含有率としては、2質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。シリカの含有率をこのような範囲とすることで、粒径の小さい再生粒子に対しては、複数の粒子が柔軟に凝集するほど十分な表面へのシリカ析出量となり、粒径の大きい再生粒子に対しては、表面、特に析出しやすいナイフエッジ等の先端部分へのシリカ析出に留まり、他の粒子との凝集が生じるほどの被覆が生じない。従って、上記シリカ複合再生粒子によれば、粒度分布の広い再生粒子をこのような質量比のシリカで被覆することで、粒度分布の狭い凝集体状態に制御されやすくなり、結果としてシリカ複合再生粒子の歩留向上、吸油度や不透明度を高め、ワイヤー磨耗度の低減を図ることができる。
【0060】
シリカの含有率が上記下限未満の場合は、再生粒子を十分に凝集させることができず、得られるシリカ複合再生粒子の粒度分布が狭まりにくく、その結果、歩留りが向上しないおそれがある。逆に、シリカ含有率が上記上限を超える場合は、粒径の比較的大きい再生粒子の凝集までもが進みやすくなる。その結果、得られるシリカ複合再生粒子において粒径が大きい粒子が増え、同様に粒度分布が狭まりにくく、不透明度向上能が十分ではなく、また、粒径の大きい粒子が多いため、紙力が低下したり、紙粉が生じやすくなるおそれがある。上記シリカ複合再生粒子を当該新聞用紙に填料として用いることにより、特に坪量が44g/m
2以下の低坪量であっても、粒子径がシャープな粒子がパルプ繊維中に均一に分散し、しかも歩留まりが高いため、不透明度が高く、インキ着肉性が良好で紙粉が少なく、引張強度にも良好な新聞用紙が得られるため好ましい。
【0061】
<シリカ複合再生粒子の製造方法>
上記シリカ複合再生粒子の製造方法としては特に限定されないが、シリカ複合炭酸カルシウム粒子と同様に、例えば、
(1)再生粒子を珪酸アルカリ水溶液中に懸濁させて懸濁液を得る懸濁工程と、
(2)この懸濁液に鉱酸を添加し、再生粒子の表面にシリカを析出し、被覆させて再生粒子を凝集させる凝集工程とを有する方法をあげることができる。
【0062】
上記シリカ複合再生粒子の製造方法によれば、凝集工程において、再生粒子のうち、粒径の小さいものはシリカの被覆と共に複数の粒子の凝集が進む一方、粒径の大きいものはシリカの被覆のみで、凝集がほとんど生じていない状態となり、粒度分布の広い再生粒子を粒度分布の狭いシリカ複合再生粒子とすることができる。従って、上記製造方法によれば、歩留り及び不透明度等が高く、かつ、ワイヤー磨耗度が低いシリカ複合再生粒子を得ることができる。
【0063】
(1)懸濁工程
本工程においては、再生粒子を珪酸アルカリ水溶液中に混合する。珪酸アルカリ水溶液は特に限定されないが、珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が入手に容易である点で好ましい。
【0064】
また、この再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加分散した懸濁液の固形分濃度としては、3〜35質量%が好ましい。この濃度を上記範囲で調整することにより、得られるシリカ複合再生粒子の粒径、粒度分布、シリカ含有率等を所望する範囲に制御しやすくなる。
【0065】
また、上記珪酸アルカリ水溶液中の珪酸分(SiO
2換算)と再生粒子の固形分比としては2:98〜30:70が好ましく、3:97〜20:80がより好ましい。このようにすることで、シリカ複合再生粒子のシリカの含有率を好ましくは2質量%以上30質量%以下、より好ましくは3質量%以上20質量%以下にすることができる。珪酸アルカリ水溶液中の珪酸分(SiO
2換算)の再生粒子に対する固形分比が2:98より少ないと再生粒子を十分に凝集させることができず、得られるシリカ複合再生粒子の粒度分布が狭まりにくく、その結果、不透明度の向上能が十分でなく歩留りが向上しないおそれがある。一方、上記固体分比が30:70を超えると、粒径の比較的大きい再生粒子の凝集までもが進みやすくなる。その結果、得られるシリカ複合再生粒子において粒径が大きい粒子が増え、同様に粒度分布が狭まりにくく、不透明度向上能が十分ではなく、また、粒径の大きい粒子が多いため、紙力が低下したり、紙粉が生じやすくなるおそれがある。
【0066】
(2)凝集工程
本工程においては、上記懸濁液に鉱酸を添加し、再生粒子の表面にシリカを析出し被覆させ、再生粒子の少なくとも一部を凝集させる。
【0067】
上記鉱酸としては希硫酸、希塩酸、希硝酸等の鉱酸の希釈液等が挙げられるが、価格、ハンドリングの点で希硫酸が好ましい。さらに、希硫酸を使用する場合の添加時の濃度としては、0.2〜4.0モル%が好ましい。本発明の製造方法で好適に用いられる再生粒子は鉱物由来であるがうえに、所定の範囲でカルシウム、アルミニウム等の不純物を構成元素として含有しており、過度の濃度の鉱酸添加は、得られるシリカ複合再生粒子に変質が生じるおそれがある。
【0068】
また、鉱酸添加量が多いほど短時間内にシリカが析出するので、それらの条件に合わせて添加速度を調整することが好ましい。なお、5分以内の添加は、均一な反応系の構成が不十分になる。
【0069】
この凝集工程における反応温度としては、60℃以上100℃以下が好ましい。本発明者らの鋭意検討の結果から、本発明に使用する再生粒子との反応温度は、シリカの生成、結晶成長速度および形成された再生粒子−シリカ複合粒子の力学的強度に影響を及ぼす。反応温度が60℃未満ではシリカの生成・成長速度が遅く、形成された複合粒子の被覆性に劣り、被覆の剥落が生じやすく、新聞用紙の抄造時にかかる剪断力で被覆が壊れ易い。逆に100℃を超えると、水系反応であるためオートクレーブを使用しなければならないため反応工程が複雑になってしまう。なお、最適反応温度は65〜95℃である。
【0070】
この凝集工程においては、上述のように鉱酸の添加によりシリカゾルを生成させ、上記懸濁液を中性〜弱アルカリ性、好ましくはpHを8〜11の範囲に調整することによりシリカ複合再生粒子を得ることができる。この際、上記懸濁液の温度が60℃以上100℃以下であるとともに、上記シリカ複合再生粒子におけるシリカ含有率が2質量%以上30質量%以下、より好適には3質量%以上20質量%以下となる範囲に上述の珪酸アルカリ水溶液中の珪酸分(SiO
2換算)と再生粒子の固形分比を調整し、鉱酸を最終反応液のpHが8〜11になるように、より好ましくはpHが8.5〜10.5になるように添加するとよい。pHが上記範囲未満の場合は、鉱酸の過剰添加により、再生粒子に含まれるカルシウム成分が水酸化カルシウムに変化しやすくなり、スラリーの粘度が増大するおそれがある。また、シリカゾルではなくホワイトカーボンが生成し、シリカ複合再生粒子の白色度、不透明度及び吸油度が低下するおそれがある。逆に、pHが上記範囲を超える場合は、珪酸アルカリと鉱酸との反応が鈍って再生粒子の表面にシリカが析出されにくくなるため、シリカ複合再生粒子の不透明性が低下するおそれがある。このような珪酸アルカリ水溶液中の珪酸分(SiO
2換算)と再生粒子の固形分比、温度及び鉱酸添加量に制御すること、より好適には、再生粒子に対するシリカの凝集工程での鉱酸の添加時間を60〜120分、より好適には70分から100分に保つことにより粒径の小さいものはシリカの被覆と共に複数の粒子の凝集が進んでいる一方、粒径の大きい再生粒子に対しては、表面、特に析出しやすいナイフエッジ等の先端部分へのシリカ析出に留まり、他の粒子との凝集が生じるほどの被覆が生じないことによって、上述の粒度分布の狭いシリカ複合再生粒子を効率的に得ることができる。鉱酸の添加時間が60分を下回ると、過度のシリカ被覆が生じ、過大な粒径のシリカ複合再生粒子が生じるおそれがあり、120分を上回ると、粒径の小さな再生粒子の凝集が不十分になるおそれがある。
【0071】
なお、本工程では、鉱酸を2段階以上で添加することが好ましい。鉱酸を2段階以上で添加する場合、第1段階目の鉱酸添加時のスラリー温度が60〜75℃であり、第2段階目以降の鉱酸添加時のスラリー温度が少なくとも第1段階目よりも10℃以上昇温することが望ましい。具体的には、第1段階の液温を60℃以上75℃未満、第2段階を70℃以上100℃未満とし、反応の最終段階で90℃以上98℃以下とすることが好ましい。これらの温度条件によって、より粒子径のシャープなシリカ複合再生粒子を得ることができる。また、1段階目では、珪酸アルカリ水溶液の中和率が20〜50%となる鉱酸を添加し、その後5〜20分程度の保留時間後に第2段階目の鉱酸添加を行うことによって、さらにシリカの積層複合化を促進させることが可能になり、再生粒子の表面に、より均一にシリカを複合することができる。
【0072】
<シリカ複合粒子の品質等>
上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子及びシリカ複合再生合粒子(以下シリカ複合粒子と称する)の体積平均粒子径(D50)は、2μm以上10μm以下であり、3μm以上8μm以下がさらに好ましい。上記シリカ複合粒子の体積平均粒子径をこのような範囲とすることで、当該新聞用紙の不透明度等を効率的に高めることができる。上記シリカ複合粒子の体積平均粒子径が上記下限未満の場合は、歩留りが十分に向上しないおそれがあり、また、不透明度向上能も十分ではないおそれがある。一方、この体積平均粒子径が上記上限を超えると、パルプ繊維間の強度を低下させる結果、紙力が低下したり、ワイヤー磨耗度が高まるおそれがあり、また、粒径が大きいことで、スラリー中での均一分散性が低下し、不透明度及び印刷不透明度が低下するおそれがある。
【0073】
シリカ複合粒子の吸油量としては、30mL/100g以上150mL/100g以下が好ましく、60mL/100g以上100mL/100g以下がより好ましい。このような吸油量を有するシリカ複合粒子を内添填料として使用すると、紙層中においてこのシリカ複合粒子が紙層中に含浸されるインクのビヒクル分や有機溶剤等を吸収するため、当該新聞用紙の印刷不透明度が低下するのを抑制し、インクの乾燥性を向上させ、さらにニジミを防止することができる。シリカ複合粒子の吸油量が上記範囲未満の場合、上記効果が十分得られず、シリカ複合粒子がインクの吸収性及び乾燥性を阻害するおそれがある。逆に、シリカ複合粒子の吸油量が上記範囲を超える場合、インクの吸収性が高くなりすぎ、インクの沈みこみが発生して当該新聞用紙の発色性が低下するおそれがある。
【0074】
上記シリカ複合粒子の添加量の下限としては、原料パルプに対して、1質量%が好ましく、2質量%が特に好ましい。また、シリカ複合粒子の添加量の上限としては、9質量%が好ましく、6質量%が好ましい。シリカ複合粒子の添加量が上記下限より小さいと、シリカ複合粒子による不透明度向上効果やインキ着肉性の向上効果が充分に発揮されないおそれがある。逆に、シリカ複合粒子の含有量が上記上限を超えると、添加量が多すぎるため、填料の脱落による紙粉パイリングが生じるおそれや填料の増大によりパルプ繊維間の密着性を弱め、その結果、当該新聞用紙の強度が低下するおそれがある。
【0075】
<その他の添加剤>
上記パルプスラリー(当該新聞用紙の原料)には、上記パルプ及び填料の他に、例えば、澱粉類、ポリアクリルアミド、エピクロルヒドリン等の紙力増強剤、ロジン、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水コハク酸)、中性ロジン等の内添サイズ剤、硫酸バンド、ポリエチレンイミン等の凝結剤、ポリアクリルアミドやその共重合体等の凝集剤などを含有することができる。
【0076】
<表面処理剤>
当該新聞用紙は、両面に表面処理剤が塗工されていることが好ましい。上記表面処理剤としては、特に限定されず、澱粉類、セルロース類、水溶性合成接着剤等、公知のものを適宜用いることができるが、酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉(HES)を含有することが好ましい。
【0077】
当該新聞用紙において、原紙の両面に塗布する表面処理剤として、このように酸化澱粉とヒドロキシエチル化澱粉とを含むものを用いていると、この表面処理剤の塗布の際、上記2種の澱粉が原紙内部にまで浸透せず、表面で強固な被膜を形成する。従って、当該新聞用紙は、表面強度が高く、紙粉の発生を抑制できるため、印刷作業性に優れる。また、当該新聞用紙によれば、印刷の際のネッパリトラブルの発生も抑制される。
【0078】
上記2種の澱粉を用いることで原紙内部まで澱粉が浸透せず、表面で強固な被膜を形成する原因は定かではないが、酸化澱粉が有するカルボキシル基等と、ヒドロキシエチル化澱粉が有する水酸基とが結合(エステル化反応等)し架橋することで高分子化し内部まで浸透しにくくなることが考えられる。また、この2種の澱粉を混合することで、適度な粘度になること、上記エステル化によりこの澱粉とパルプ繊維を構成するセルロースとの親和性が低下し、浸透しにくくなることも原因と考えられる。なお、上記粘度の低下は、2種の澱粉の反応が原因とも考えられる。さらに、当該新聞用紙のネッパリトラブルの発生の抑制も上記エステル化等による澱粉の親水性低下が原因とも考えられる。
【0079】
特に、当該新聞用紙において、上記シリカ複合粒子を内添する場合には、酸化澱粉とヒドロキシエチル化澱粉とを含む表面処理剤を塗布することで表面でより強固な被膜が形成されるため、印刷適性等をさらに高めることができる。なお、上記シリカ複合粒子を用いることで、表面強度が高まる理由は定かではないが、上記シリカ複合粒子が各種酸化物等から形成される混合物であることで、何らかの成分が、上記2種の澱粉のエステル化反応等の触媒的機能を果たし、表面処理剤を塗布した際に、この触媒作用により、表面の被膜形成性が向上することなどが考えられる。なお、このシリカ複合粒子は不定形かつ多孔質形状を有すため、この形状が上記触媒機能を高めていることも考えられる。
【0080】
加えて、当該新聞用紙によれば、このように表面処理剤が内部まで浸透せず、表面で被膜を形成していることで、紙内部に空隙を残存させることができる。当該新聞用紙によれば、この空隙のため紙内部での光の散乱度合いが高まり、その結果、白紙不透明度及び印刷不透明度を高めることができる。
【0081】
上記酸化澱粉としては、例えば次亜塩素酸ナトリウム等による酸化反応によって、分子中へのカルボキシル基等の導入が行われたものがあげられる。この酸化澱粉の質量平均分子量としては50万以上100万以下であるとよい。また、上記ヒドロキシエチル化澱粉の質量平均分子量としては120万以上200万以下であるとよい。2種の澱粉の分子量を上記範囲とすることで表面処理剤の粘性を好適な範囲に制御でき、塗布性を高めるとともに、澱粉の紙内部への浸透をより低減させることができる。なお、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)を用いて測定した数値である。
【0082】
酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉の質量平均分子量が上記範囲未満の場合、塗布の際に、原紙内部にまでこの澱粉が浸透しやすくなり、その結果、表面強度が十分に向上しない場合がある。逆に、これらの質量平均分子量が上記範囲を超える場合、粘性が高まり、塗布性が低下するおそれがある。
【0083】
上記酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉の含有比は、質量基準で1:9以上9:1以下が好ましく、5:5以上7:3以下がより好ましい。2種の澱粉の含有比を上記範囲とすることで、好適な粘度に調製することができ、また、上述のエステル化反応等が効率的に進行することができると考えられる。その結果、澱粉の原紙内部への浸透を抑え、表面に強固な被膜を形成することができる。
【0084】
上記表面処理剤には、上記2種の澱粉以外に適宜、他の澱粉、PVA(ポリビニールアルコール)、ポリアクリルアミド、消泡剤、耐水化剤、表面サイズ剤、防腐剤等を含有することができる。これらの中でも、サイズ性を向上させるため、表面サイズ剤が含有されるとよい。
【0085】
なお、表面サイズ剤として、上記2種の澱粉と表面サイズ剤とを共に用いることで、表面サイズ剤が表面に留りやすくなり、表面サイズ剤の添加量を低減することができる。また、表面サイズ剤の過剰添加により発生するオフセット印刷機での紙面汚れを抑制することができる。
【0086】
上記表面サイズ剤としては、公知のものが用いられ、例えば、スチレン系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、ロジン等を使用することができるが、高いサイズ性、オフセット輪転印刷におけるインクとの相性、及び填料の脱落防止効果の点から、スチレン系サイズ剤が好ましい。酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉の含有比が質量基準で1:9以上9:1以下の澱粉に表面サイズ剤として、スチレン系サイズ剤を用いると、より澱粉を均一に塗工でき、表面強度を向上させ、填料の脱落を防止できるとともにスチレン系サイズ剤が紙表面に留り、サイズ効果を高めることができる。
【0087】
酸化澱粉及びヒドロキシエチル化澱粉を合わせた澱粉全体に対するスチレン系サイズ剤の配合比は、固形分で澱粉100質量部に対し、5質量部以上30質量部以下が好ましい。スチレン系サイズ剤の配合比が上記範囲未満の場合、紙のサイズ性及び表面強度の向上効果が充分に得られにくい。逆に、スチレン系サイズ剤の配合比が上記範囲を超える場合、当該新聞用紙の製造コストが高くなるほか、不透明度やインク乾燥性の低下を招くおそれがある。
【0088】
スチレン系サイズ剤としては、スチレンアクリル酸共重合体、スチレン(メタ)アクリル酸共重合体(なお、(メタ)アクリル酸は、「アクリル酸、及び/又はメタクリル酸」を意味する。)、スチレン(メタ)アクリル酸(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレンマレイン酸共重合体、スチレンマレイン酸半エステル共重合体、スチレンマレイン酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0089】
上記表面処理剤のB型粘度としては、5cps以上80cps以下が好ましく、10cps以上40cps以下がさらに好ましい。当該新聞用紙によれば、塗布の際の表面処理剤の粘度を上記範囲とすることで、塗布性をさらに高めることができるとともに、澱粉の紙内部への浸透をより低減させることができる。表面処理剤の粘度が上記範囲未満の場合、塗布の際に澱粉等を含むこの表面処理剤が紙内部にまで浸透しやすく、その結果、表面強度の高い新聞用紙が得られにくくなるおそれがある。逆に、この濃度が上記範囲を超える場合、塗布時の作業性が低下したり、均一な塗布が困難になったりするおそれがある。
【0090】
表面処理剤の塗布量としては、原紙の表裏面に片面あたりの乾燥質量で0.1g/m
2以上2.0g/m
2以下が好ましく、0.3g/m
2以上1.5g/m
2以下がより好ましい。塗布量が上記範囲未満の場合、澱粉等による充分な被膜を得ることが困難となり、充分な紙の表面強度が得られない場合がある。逆に、塗布量が上記範囲を超える場合、塗布設備周辺に澱粉など表面処理剤のミストが多量に発生し、周辺機器を汚損するとともに、汚れに起因する断紙や紙の欠陥が生じるおそれがある。
【0091】
<品質等>
当該新聞用紙の坪量としては、37g/m
2以上44g/m
2以下が好ましい。坪量が上記範囲未満の場合、当該新聞用紙の強度が低下して輪転印刷機での印刷が困難となるおそれや、印刷不透明度が低下するおそれがある。逆に、坪量が上記範囲を超える場合、新聞用紙の軽量化及び省資源化に逆行するおそれがある。
【0092】
当該新聞用紙の灰分としては、5%以上13%以下が好ましく、7%以上12%以下がより好ましい。灰分を上記範囲とすることによって、当該新聞用紙の不透明度(白紙不透明度及び印刷不透明度)を高めることができ、また、本発明の粒度分布を有する填料によれば均一に分散した填料によって繊維の空隙が埋められて表面処理剤の浸透が抑えられるため、より表面強度を高めることができる。その結果、当該新聞用紙は、優れた印刷作業性を発揮することができる。
【0093】
当該新聞用紙の白紙不透明度としては、90%以上96%以下が好ましく、92%以上95%以下がより好ましい。白紙不透明度が上記範囲未満の場合、裏抜けが生じやすくなる。逆に、白紙不透明度が上記範囲を超える場合、填料の添加量を増大させる必要があるため、パルプ繊維間の密着性が低下して当該新聞用紙の強度が低下するおそれがある。
【0094】
当該新聞用紙の印刷不透明度としては、90%以上96%以下が好ましく、91%以上95%以下がより好ましい。印刷不透明度が上記範囲未満の場合、裏抜けが生じやすくなるおそれがある。逆に、印刷不透明度が上記範囲を超える場合、填料の添加量を増大させる必要があるため、パルプ繊維間の密着性が低下して当該新聞用紙の強度が低下するおそれがあるほか、紙表面からの填料の脱落によって印刷時に発生する紙紛が増加するおそれや、製造工程におけるマシン系内の汚れが増大して操業性が悪化するおそれがある。
【0095】
当該新聞用紙の白色度としては、52%以上57%以下が好ましく、53%以上56%以下がより好ましい。白色度を上記範囲とすることによって、購読者の眼精疲労を防止することができる。
【0096】
当該新聞用紙の引張強度としては、2.0kN/m以上が好ましく、2.2kN/m以上がより好ましい。引張強度が上記範囲未満の場合、当該新聞用紙の取扱い性及び生産性が低下するおそれがあるほか、輪転印刷機での印刷が困難となるおそれがある。
【0097】
<新聞用紙の製造方法>
当該新聞用紙は、公知の製造方法によって製造することができる。
【0098】
まず、原料パルプ及び上述の填料を含有するパルプスラリーを調整して抄紙して、原紙を得る。この抄紙は、公知の抄紙機等を用いて行うことができる。
【0099】
次に、上記抄紙により得られた原紙の両面に、上記表面処理剤を塗布する。表面処理剤の塗布には、製紙分野で一般に使用されている塗布装置、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ブレードコータ、バーコータ、ゲートロールコータ、ロッドコータ、エアナイフコータ等を用いることができる。
【0100】
上記表面処理剤の塗布の際の原紙の温度としては、35℃以上85℃以下が好ましく、40℃以上75℃以下がさらに好ましい。このような比較的高温の原紙の両面に表面処理剤を塗布することで、表面処理剤が原紙と接触した際に、2種の澱粉の結合反応等が生じることなどによって、紙内部の澱粉の浸透が抑えられ、表面に薄く高強度の被膜を形成することができる。原紙の温度が上記範囲未満の場合、澱粉が内部まで染み込みやすくなり、表面強度を十分に高めることができない場合がある。逆に、この温度が上記範囲を超える場合、塗布性が低下し、均一な被膜を形成できないおそれがある。
【0101】
表面処理剤を塗布し、乾燥した後には、一般に印刷適性(例えば、高平滑や高光沢)を付与する目的で、カレンダに通紙して加圧仕上げが施される。この場合のカレンダ装置としては、例えばスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトコンパクトカレンダ等の金属ロールと弾性ロールとの組み合わせからなる各種カレンダが、オンマシン又はオフマシン仕様で適宜使用できる。
【0102】
<再生粒子の製造方法>
ここで、本発明で填料として用いるシリカ複合粒子の原料として好適に用いることができる再生粒子の製造方法について、原料並びに脱水、熱処理及び粉砕の各工程の順に詳説する。なお、熱処理工程と粉砕工程との間に、配合・スラリー調製工程を有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の工程を設けることができる。
【0103】
(原料)
再生粒子の原料としては、主原料として製紙スラッジが用いられ、製紙スラッジの中でも、脱墨フロスが好適に用いられる。脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程でパルプ繊維から分離されるものをいう。製紙における古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも古紙中に未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が含まれていた場合も、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去される。したがって、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等の、他の工程で発生する製紙スラッジと比べて、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための原料となる。
【0104】
(脱水工程)
脱水工程は、脱墨フロス等の原料の水分を所定割合まで除去する工程である。例えば、古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、公知の脱水設備により脱水される。
【0105】
脱水工程の一例としては、以下の工程が挙げられる。まず一の脱水手段であるスクリーンによって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。このスクリーンにおいて水分率を90%〜97%に脱水した脱墨フロスは、別の脱水手段である例えばスクリュープレスに送り、更に所定の水分率まで脱水する。
【0106】
脱水後の原料(脱墨フロス)は、40%以上、好ましくは40%以上90%未満、より好ましくは45%以上70%以下、特に好ましくは50%超60%以下の高含水状態とするとよい。
【0107】
脱水後の原料の水分率が70%を超えると、熱処理工程における処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料の燃焼ムラが生じやすくなり均一な燃焼を進め難くなる。また、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくなる不都合を有する。一方で、脱水後の原料の水分率が40%未満と低いと、脱墨フロスの過剰燃焼の原因となる。また、脱水処理エネルギーの削減にも反する。
【0108】
上述のように、原料(脱墨フロス)の脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
【0109】
脱水工程のための設備は、再生粒子の他の工程の設備に隣接することが生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行った物を搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から熱処理工程に供給することもできる。
【0110】
脱水後の原料は、熱処理工程に供給する前に、粉砕機(又は解砕機)等により、平均粒子径40mm以下、好ましくは平均粒子径3mm〜30mm、より好ましくは平均粒子径5mm〜20mmに粒子径を揃えると好適であり、また、粒子径50mm以下の割合が70質量%以上となるように粒子径を揃えると好適である。平均粒子径が3mm未満では過燃焼になりやすい。逆に、平均粒子径が40mmを超えると原料芯部まで均一に燃焼を図るのが困難になる。
【0111】
上記脱水工程及び後述する各熱処理工程における平均粒子径は、JIS−Z−8801−2:2000に基づき、金属製の板ふるいにて測定したものであり、粒子径の割合は、ふるいわけた後に粒子径ごとの重量を測定して算出した値である。
【0112】
(熱処理工程)
熱処理工程は、脱水された原料の更なる水分除去のための乾燥と、比較的低温の第1の燃焼とを一連で行う第1熱処理工程、及び第1熱処理工程で得られた熱処理物を再度、第1熱処理工程より高温で熱処理(燃焼)する第2熱処理工程を含む。このように順に温度を上げていく2段階の熱処理工程を経ることで、原料の過燃焼を抑え、得られる再生粒子をスラリー化した際の増粘を抑制することができる。また、熱処理温度としては、比較的低温で行うことで、同様に原料の過燃焼を抑え、得られる再生粒子をスラリー化した際の増粘を抑制することができる。熱処理温度の上限としては、具体的には780℃が好ましく、750℃がさらに好ましい。
【0113】
(第1熱処理工程)
脱水工程を経た原料は、第1熱処理工程として、例えば本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉を用いて、熱処理される。
【0114】
この内熱キルン炉においては、熱風発生炉にて生成された熱風が、排出口側から原料の流れと向流するように送り込まれる。この内熱キルン炉の一方側には排ガスチャンバーが、他方側には排出チャンバーが設けられている。排出チャンバーを貫通して熱風が内熱キルン炉の他方側から吹き込まれ、上記一方側から装入され、内熱キルン炉の回転に伴って上記他方側へ順次移送される原料の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
【0115】
このように第1熱処理工程においては、原料を、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥と有機分の燃焼とを行うことができ、熱処理物の微粉化が抑制され、凝集体形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する原料の燃焼度合いの制御と、粒揃えとを、安定的に行うことができる。なお、乾燥を別工程に分割し、例えば吹上げ式の乾燥機によって乾燥させることもできる。
【0116】
第1熱処理工程における熱処理温度(例えば、内熱キルン炉の炉内温度)は、300℃以上500℃未満、好ましくは400℃以上500℃未満、より好ましくは400℃以上450℃以下が好適である。第1熱処理工程においては、容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼し難い残カーボンの生成を抑える目的から、上記範囲の温度で熱処理するのが好ましい。過度に温度が低いと、有機物の燃焼が不十分であり、他方、過度に温度が高いと過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解によって酸化カルシウムが生成し易くなる。また、温度が500℃以上の場合は、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の粒揃えが進行するよりも早くに乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面と粒子内部との未燃率の差を少なくし、均一にするのが困難になる。
【0117】
第1熱処理工程は、原料に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、上記条件下で、30分〜90分の滞留(熱処理)時間で熱処理させるのが好ましい。熱処理時間が30分未満では、十分な燃焼が行われず残カーボンの割合が多くなる。他方、熱処理時間が90分を超えると、脱水物の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、また、得られる再生粒子が極めて硬くなる。有機物の燃焼及び生産効率の面では、40分〜80分の滞留時間で熱処理させるのが好ましい。恒常的な品質を確保するためには、50分〜70分の滞留時間で熱処理燃焼させるのが好ましい。
【0118】
(第2熱処理工程)
第1熱処理工程を経た原料は、第2熱処理工程として、例えば本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケットを有する外熱キルン炉を用いて、熱処理される。このように、第1及び第2熱処理工程を経ることで、原料中の有機分が燃焼除去され、無機物を熱処理物として排出することができる。
【0119】
第2熱処理工程においては、第1熱処理工程で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1熱処理工程において供給される原料の粒子径よりも小さい粒子径に調整された熱処理物を用いることが好ましい。第1熱処理工程後の熱処理物の粒揃えは、平均粒子径10mm以下となるように調整するのが好ましく、平均粒子径1〜8mmとなるように調整するのがより好ましく、平均粒子径1〜5mmとなるように調整するのが特に好ましい。第2熱処理工程における外熱キルン炉入口での平均粒子径が1mm未満では過燃焼の危惧があり、平均粒子径10mm超では、残カーボンの燃焼が困難であり、芯部まで燃焼が進まず得られる再生粒子の白色度が低下するおそれがある。
【0120】
外熱キルン炉の外熱源としては、外熱キルン炉内の温度制御が容易で、かつ長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の熱源が好適であり、したがって、電気ヒーターによる外熱キルン炉が好ましい。外熱源に電気を使用することにより、炉内の温度を細かく、かつ均一にコントロールすることができ、凝集体の形成、硬い・柔らかい等のさまざまな性質を有する熱処理物の燃焼度合いの制御と、粒揃えとを、安定的に行うことができる。また、電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、熱処理物の温度を一定時間、一定温度に保持することができ、第1熱処理工程を経た熱処理物中の残留有機分、特に残カーボンを第2熱処理工程で炭酸カルシウムの分解を来たすことなく限りなくゼロに近づけることができ、例えば重質炭酸カルシウムと比べて低いワイヤー摩耗度でありながら、高白色度の再生粒子を得ることができる。
【0121】
第2熱処理工程における熱処理温度は、好ましくは550℃〜780℃、より好ましくは600℃〜750℃である。第2熱処理工程では、先に述べたように、第1熱処理工程で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1熱処理工程よりも高温で熱処理するのが好ましく、熱処理温度が550℃未満では、十分に残留有機物の燃焼を図ることができないおそれがあり、熱処理温度が780℃を超えると、熱処理物中の炭酸カルシウムの脱炭酸が進行し、粒子が硬くなるおそれがある。
【0122】
第2熱処理工程としての外熱キルン炉における滞留(熱処理)時間としては、好ましくは60分以上、より好ましくは60分〜240分、特に好ましくは90分〜150分、最適には120分〜150分が、残カーボンを完全に燃焼させるに望ましい。特に残カーボンの燃焼は炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に燃焼させる必要があり、滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不十分であり、他方、滞留時間が240分を超えると、炭酸カルシウムが分解するおそれがある。また、熱処理物の安定生産を行うにおいては、滞留時間を60分以上、過燃焼防止、生産性確保のためには、滞留時間を240分以下とするのが好適である。
【0123】
第2熱処理工程としての外熱キルン炉から排出される熱処理物の平均粒子径は、10mm以下、好ましくは1mm〜8mm、より好ましくは1mm〜5mmに調整すると好適である。この調整は、例えば、熱処理物を一定のクリアランスを持った回転する2本ロールの間を通過させること等により行うことができる。
【0124】
第2熱処理工程を経た熱処理物は、好適には凝集体であり、例えば冷却機により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機により選別され、燃焼品サイロに一時貯留される。この後、配合・スラリー調製工程及び粉砕工程で目的の粒子径に調整された後、再生粒子として填料等の用途先に仕向けられる。
【0125】
なお、以上では、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他の製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とすることなどもできる。
【0126】
(配合・スラリー調製工程)
配合・スラリー調製工程は、上記第2熱処理工程から排出される熱処理物に酸及び/又は塩を配合し、その熱処理物を水中に懸濁させてスラリー化させる工程である。
【0127】
この熱処理物は、後工程である粉砕工程において、効果的な粉砕を図るために、ミキサー等を使用して水中に懸濁させ、スラリーとした後に粉砕するのが好ましい。この際のスラリー濃度(スラリー全体に対する添加された熱処理物の質量比)の下限としては、15%が好ましく、20%がさらに好ましい。また、このスラリー化濃度の上限としては、50%が好ましく、40%がさらに好ましい。スラリー化濃度が上記下限未満であると最終的に得られた粒子を固形状とする際に、多大なエネルギーが生じるなど生産効率が低下する。逆に、スラリー化濃度が上記上限を超えると、のちの粉砕工程において効果的な粉砕が困難となる、また凝固、固化が生じやすくなるなどのおそれがある。
【0128】
上記酸及び/又は塩は、カルシウムイオンの存在下でカルシウム塩を析出し得るものである。当該酸及び/又は塩によれば、過燃焼によって生じた酸化カルシウムやメタカオリンに起因しスラリー中に溶け出したカルシウムイオンと反応し、カルシウム塩を析出させることで、カルシウムイオンとスラリー中に共存する珪酸イオンやアルミン酸イオンとの反応を抑え、硬化物質の生成を抑制させることができる。この結果、この酸及び/又は塩を用いることで、スラリーの凝固、固化を抑えることができる。以下その理由について説明する。
【0129】
製紙スラッジの構成成分である炭酸カルシウムとカオリンから、熱処理工程等における過燃焼により酸化カルシウム、メタカオリンなどが生じる。この酸化カルシウムは、水と混合すると(スラリー中では)水酸化カルシウムとなり、この水酸化カルシウムに起因するカルシウムイオンに誘引されて珪酸イオンやアルミン酸イオンがスラリーを凝固、固化させる要因となっている。この理由としては定かではないが、このカルシウムイオンがスラリー中に共存する珪酸イオンやアルミン酸イオンと反応し、この珪酸イオンやアルミン酸イオンなどの水和硬化反応(エトリンガイト等の水和物の生成)を促進させることなどが考えられる。なお、この珪酸イオンやアルミン酸イオンは過燃焼によって生じるメタカオリン等に由来するものである。
【0130】
ここで上記酸及びその塩が、スラリー中に添加されていると、スラリー中のカルシウムイオンと反応してカルシウム塩となる。このカルシウム塩の水への溶解度が低いと固体として析出し、スラリー中のカルシウムイオンを減少させ、メタカオリン等による珪酸イオンやアルミナイオンの生成を抑える。この結果、スラリー中において、水和硬化性物質の生成を生じないためスラリーの凝固、固化を防ぐことができると考えられる。
【0131】
このような酸及び/又は塩としては、カルシウム塩の状態における20℃での水100gに対する溶解度が1g以下であるものが好ましい。このような水への低い溶解度を有する酸及び/又は塩によれば、通常の再生粒子の製造工程における配合・スラリー調製工程中のスラリーにおいて、カルシウムイオンと反応し、その反応によって生じるカルシウム塩が、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムを含む粒子の表面に析出することでスラリーの凝固、固化を効果的に防ぐことができる。
【0132】
また、この酸及び/又は塩によれば、得られる再生粒子の白色度を高めることができる。酸又はその塩から得られるカルシウム塩は白色度が高いものが多い。そのため、これらのカルシウム塩が酸化カルシウムを含む粒子を被覆することで得られる再生粒子の白色度を高めることができる。
【0133】
この酸及び/塩としては、カルシウムイオンの存在下でカルシウム塩を析出し得るものであり、好ましくはカルシウム塩の状態における20℃での水100gに対する溶解度が1g以下であるものが好ましく、有機酸又はその塩であっても、無機酸又はその塩であってもよい。なお、このカルシウムイオンの存在下でカルシウム塩を析出するとは、一般的な再生粒子の製造工程におけるスラリー中で、カルシウム塩を析出し得ることをいう。
【0134】
この酸としては、具体的には、硫酸(硫酸カルシウム二水和物の溶解度0.21g/100g)、フッ化水素酸(フッ化カルシウムの溶解度0.0016g/100g)、クエン酸(クエン酸カルシウムの溶解度0.025g/100g)、リン酸(リン酸三カルシウムの溶解度0.0025g/100g)、炭酸(炭酸カルシウムの溶解度0.0014g/100g)、ホスホン酸等を挙げることができる。また、その塩としては、上記各酸のカルシウム塩、カリウム塩、アルミニウム塩、ナトリウム塩等を挙げることができる。上記酸又はその塩の中でも、作業性、経済性及び得られる再生粒子の均質性の点から、製紙工場で一般的に利用されている、硫酸カルシウム、炭酸カリウム、リン酸、硫酸、硫酸バンド(Al
2(SO
4)
3)及びホスホン酸が好ましく、リン酸又は希硫酸が特に好ましく、リン酸がさらに特に好ましい。
【0135】
また、この酸及び/又は塩としては、酸又は加水分解した際に酸性を示す塩であることが、スラリーのpHの低減の点から好ましい。pHが高い再生粒子は、他の薬品と反応して品質低下を招くおそれがあるため、酸の添加によりpHを低減させることは効果的である。
【0136】
この酸及び/又は塩の熱処理物への配合(配合工程)は、熱処理物のスラリー化(スラリー調製工程)より前又は同時に行うことが好ましい。熱処理物をスラリー化した後に、酸及び/又は塩を添加すると、既に熱処理物中の酸化カルシウムが水酸化カルシウムに変化し、発生したカルシウムイオン等を原因とする水和硬化反応が既に開始されているため、凝固や固化の抑制効果を得られない、又はその効果が低下するおそれがある。
【0137】
熱処理物のスラリー化より前の、酸及び/又は塩の熱処理物への配合方法としては、粉体状体の熱処理物に固体の上記酸の塩(硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム等)等を混合する方法などを挙げることができる。熱処理物のスラリー化と同時の、酸及び/又は塩の熱処理物への添加方法としては、(1)水に酸及び/又は塩を溶かし、その水溶液中に熱処理物を懸濁させる方法、(2)水に酸及び/又は塩と、熱処理物とを同時に混合させる方法などを挙げることができる。熱処理物のスラリー化と同時の、酸及び/又は塩の熱処理物への添加方法によれば、酸及び/又は塩が水溶液中でしか存在しない場合(炭酸等)や、水溶液以外での扱いが困難な場合(硫酸等)においても、不都合なく配合することができる。
【0138】
この酸及び/又は塩の配合量の下限としては、熱処理物100質量部に対して、0.01質量部が好ましく、0.1質量部がさらに好ましく、0.3質量部が特に好ましい。一方、この配合量の上限としては、10質量部が好ましく、7質量部がさらに好ましい。酸及び/又は塩の配合量が0.01質量部未満の場合には、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムを含む粒子及び/又はこの粒子から発生するカルシウムイオンとの接触確率が低く、硬化反応抑制効果が得られないおそれがある。逆に、10質量部を超えても、硬化反応抑制効果が頭打ちとなってしまうおそれがある。
【0139】
(粉砕工程)
粉砕工程は、上記工程にて得られたスラリーを粉砕し、微粒子化することで再生粒子を得る工程である。この粉砕工程においては、公知の粉砕装置等を用いることができる。この粉砕工程を経て、スラリーを適宜必要な粒子径に微細粒化することで、得られる再生粒子を塗工用の顔料、内添用の填料等として好適に使用することができる。
【0140】
(その他の工程)
再生粒子の製造方法においては、原料の凝集工程、造粒工程や、各工程間における分級工程、スラリーを炭酸化する炭酸化工程等を設けてもよい。
【0141】
(炭酸化工程)
得られた再生粒子のスラリーは、そのままではpHが12以上とアルカリ性を呈し、例えば、塗工用顔料用途における塗工液調整工程で他の薬品と反応して品質低下を招くおそれがある。従って、熱処理物又は再生粒子中の酸化カルシウムを炭酸カルシウムに戻してpHを低減させるために、第1熱処理燃焼工程や第2熱処理工程において排出された排ガス中の二酸化炭素を利用して、例えばpHを7〜9に調整すると好適である。
【0142】
なお、この炭酸化工程は、配合・スラリー調製工程と粉砕工程との間、粉砕工程と同時、又は粉砕工程の後に行ってもよい。なお、この二酸化炭素の吹き込みは、他の酸及び/又は塩の配合に替えて、又は加えて、炭酸の配合として、配合・スラリー調製工程とすることもできる。
【0143】
炭酸化に際しては、反応槽の底部にガス吹き込み口を設けるとともに、槽内のpHを測定するpH計を設け、バッチ処理で、スラリーのpHが所定の値以下になるまで槽中のスラリーに対してガスを吹き込むことで実施することが出来る。また、VFポンプのような歯車が噛み合う部分にガス吹き込み口を設け、スラリーに対して粉砕とガスの吹き込みを同時に実施することが出来る。
【0144】
炭酸化のための二酸化炭素としては、CO
2分離工程として、例えばPSA型分離装置等の二酸化炭素分離装置を用いて排ガスから二酸化炭素を分離して用いることができる。また、排ガスを直接利用したり、市販の二酸化炭素ガスを利用、併用したりすることもできる。
【0145】
二酸化炭素の吹き込み速度は、一定とすることも、また可変とすることも可能であり、可変とする場合、pHの推移に応じて適宜調整すること等ができる。
【0146】
本形態において、再生粒子のさらなる品質安定化を図るためには、被処理物の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることで、より品質の安定化を図ることができる。
【0147】
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロス(脱水物)を造粒することが好ましく、更には造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用できるが、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
【実施例】
【0148】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下においては、特に断りのない限り、%は質量%を、薬品添加量はパルプ絶乾質量(t)当たりの固形分質量(kg)を意味する。
【0149】
本実施例における各測定値は、以下の方法にて測定した値である。
【0150】
[体積粒子径(単位:μm)]
無機粒子のサンプル10mgを超音波分散機(出力:80W)で3分間分散させた。この溶液を用いて、レーザー粒径分布測定装置(型番:SA−LD−2200、株式会社島津製作所製)により、体積平均粒子径(D50)、体積10%粒子径(D10)及び体積90%粒子径(D90)を測定した。
【0151】
[坪量(g/m
2)]
JIS−P8124(1998)に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0152】
[灰分(%)]
灰分はJIS−P8251(2003)に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準拠して測定した。
【0153】
[白紙不透明度(単位:%)]
JIS−P8149(2000)に記載の「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」に準拠して測定した。
【0154】
[印刷不透明度(単位:%)]
JAPAN TAPPI No.45(2000)「新聞用紙−印刷後不透明度試験方法」に準拠し、測定機器ISO白色度計(スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。
【0155】
[白色度(単位:%)]
JIS−P8148(2001)に記載の「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠して測定した。
【0156】
[引張強度(縦)(単位:kN/m)]
JIS−P8113(2006)に記載の「紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法」に準拠して新聞用紙の縦目方向について測定した。
【0157】
[インキ着肉性]
オフセット印刷機(型番:小森SYSTEMC−20、株式会社小森コーポレーション製)を使用し、新聞インキ(商品名:ニューズゼットナチュラリス(墨)、DIC株式会社製)にて連続10000部の印刷を行った。得られた印刷物について、画像の鮮明さ及び濃淡ムラを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
5:画像が鮮明で濃淡ムラが全くなく、インキ着肉性に優れる。
4:画像が鮮明で濃淡ムラが殆どなく、インキ着肉性が良好である。
3:一部に、画像が不鮮明な箇所及び濃淡ムラがややある。
2:一部に、画像が不鮮明な箇所及び濃淡ムラがあり、インキ着肉性が良好でない。
1:全体的に、画像が不鮮明で濃淡ムラが著しく、インキ着肉性に劣る。
【0158】
[ブランケット紙粉パイリング]
オフセット輪転印刷機(型番:LITHOPIA BTO−4、三菱重工業株式会社製)を使用して50連巻きの新聞用紙にて両出し10万部の印刷を行い、印刷紙面のカスレとブランケット非画像部における紙粉の発生及び堆積の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
5:紙面カスレと紙粉の発生が全く認められない。
4:紙面カスレがわずかに認められるがブランケット上での堆積は全く認められない。
3:紙面カスレがやや認められブランケット上での堆積が少し認められる。
2:紙面カスレの発生が認められ、ブランケット上に堆積している。
1:紙面カスレとブランケット上での紙粉の堆積が著しい。
【0159】
(実施例1)
重質炭酸カルシウム粒子(体積平均粒子径1.6μm)のスラリー(濃度20質量%)10,000kgを撹拌機付タンクに入れ、撹拌しながら珪酸ナトリウム水溶液(3号珪酸ナトリウム:SiO
2濃度29wt/wt%、Na
2O濃度9wt/wt%)770kgを添加して、珪酸分(SiO
2換算)と炭酸カルシウムとの固形分比を10:90とし、希釈水を加え、珪酸アルカリと重質炭酸カルシウム粒子とからなるスラリーの濃度を10質量%に調製した。スラリーの撹拌は公知のミキサーを使用した。次に加熱撹拌して、スラリーの液温を89℃に調製した。その後、希硫酸(1規定)を反応終了pH8.8になるまで70分かけて添加し、実施例1のシリカ複合炭酸カルシウム粒子を得た。得られたシリカ複合炭酸カルシウム粒子の体積平均粒子径D50、体積10%粒子径D10及び体積90%粒子径D90、並びにD90/D10及びD90/D50については表1に示すとおりである。
【0160】
次に、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)を80質量%、サーモメカニカルパルプ(TMP)を20質量%配合し、レファイナーでフリーネスを120mLC.S.F(JIS−P8121に準拠)に調整したパルプスラリーを得た。このパルプスラリーに対し、上記シリカ複合炭酸カルシウム粒子を絶乾パルプに対し固形分で45kg/パルプトン添加し、硫酸バンドでpHを6〜7に調整後、絶乾パルプに対し固形分で600ppmのカチオン性ポリマー(BASFジャパン株式会社製、ポリミンPR8150)を添加してツインワイヤー抄紙機で坪量40.8g/m
2の新聞用原紙を抄造した。
【0161】
更に、表面処理剤として酸化澱粉(日本食品加工株式会社製 質量平均分子量70万)90質量部及びヒドロキシエチル化澱粉(HES、ペンフォード社製 質量平均分子量155万)10質量部を混合した澱粉液にスチレン系サイズ剤(星光PMC株式会社製、SS2712)を固形分で澱粉100質量部に対し15質量部配合した(固形分濃度6%、B型粘度22cps)。この表面処理剤を表面温度50℃の上記原紙の両面に乾燥質量で1.2g/m
2(片面あたりそれぞれ0.6g/m
2)塗工して実施例1の新聞用紙を得た。
【0162】
(実施例2、3)
実施例1と同様のパルプスラリーに、実施例1と同様のシリカ複合炭酸カルシウム粒子を表1に示すとおり添加し、実施例1と同様の製法にて新聞用紙を製造した。
【0163】
(実施例4)
実施例1で用いたシリカ複合炭酸カルシウム粒子の製造において、珪酸ナトリウム水溶液の添加量を2,956kgとし、珪酸分(SiO
2換算)と炭酸カルシウムの固形分比を30:70とした以外は、実施例1と同様にして実施例4のシリカ複合炭酸カルシウム粒子を製造した。この実施例4のシリカ複合炭酸カルシウム粒子を用いた以外は、実施例1と同様の製法にて実施例4の新聞用紙を製造した。なお、この実施例4のシリカ複合炭酸カルシウム粒子の体積平均粒子径D50、体積10%粒子径D10及び体積90%粒子径D90、並びにこれらの比は表1に示したとおりである。
【0164】
(実施例5)
実施例1で用いたシリカ複合炭酸カルシウム粒子の製造において、珪酸ナトリウム水溶液の添加量を363kgとし、珪酸分(SiO
2換算)と炭酸カルシウムの固形分比を5:95とした以外は、実施例1と同様にして実施例5のシリカ複合炭酸カルシウム粒子を製造した。この実施例5のシリカ複合炭酸カルシウム粒子を用いた以外は、実施例1と同様の製法にて実施例5の新聞用紙を製造した。なお、この実施例5のシリカ複合炭酸カルシウム粒子の体積平均粒子径D50、体積10%粒子径D10及び体積90%粒子径D90、並びにこれらの比は表1に示したとおりである。
【0165】
(実施例6)
実施例1と同様のパルプスラリーに、シリカ複合再生粒子を表1に示すとおり添加し、実施例1と同様の製法にて新聞用紙を製造した。
【0166】
このシリカ複合再生粒子の製造条件は次の通りである。まず、原料として脱墨フロスを用い、水分率が45質量%、平均粒径が10mm、また、50mm以下の粒子の割合が90質量%となるように脱水工程を行った。この脱水物を、第1熱処理工程、その後、第2熱処理工程を以下の条件で行い熱処理物を得た。
第1熱処理工程条件
燃焼形式:内熱キルン
燃焼温度:500℃
酸素濃度:10%
滞留時間:50分
第2熱処理工程条件
燃焼形式:外熱キルンと内熱キルンの併用
入口の平均粒子径:5mm
燃焼温度:700℃
酸素濃度:14%
滞留時間:140分
出口の平均粒子径:5mm
【0167】
得られた熱処理物100質量部に対して、配合・スラリー化工程として、硫酸カルシウム二水和物0.3質量部を添加し、この添加物を水中に懸濁させて、濃度(スラリーの全質量に対する熱処理物の質量比)35質量%のスラリーを得て、粉砕装置にて粉砕した。この粉砕物を分級した体積平均粒子径D50が2μmの再生粒子を得た。この再生粒子のスラリー(濃度20質量%)10,000kgを撹拌機付タンクに入れ、撹拌しながら珪酸ナトリウム水溶液(3号珪酸ナトリウム:SiO
2濃度29wt/wt%、Na
2O濃度9wt/wt%)363kgを添加して、珪酸分(SiO
2換算)と再生粒子との固形分比を5:95とし、希釈水を加え、珪酸アルカリと再生粒子とからなるスラリーの濃度を10質量%に調製後、加熱撹拌してスラリーの液温を60℃に調整した。スラリーの撹拌は公知のミキサーを使用した。その後、希硫酸(1規定)を22分かけて珪酸アルカリ中和率が33%となるまで撹拌しながら添加して1次反応を行った。更に、スラリーの液温が93℃になるまで加熱撹拌した後10分間保持した。その後、希硫酸(1規定)をpHが8.5になるまで45分かけて添加し、実施例6のシリカ複合再生粒子を得た。
【0168】
このシリカ複合再生粒子の体積平均粒子径D50、体積10%粒子径D10及び体積90%粒子径D90、並びにこれらの比は表1に示したとおりである。
【0169】
(比較例1、2、3)
実施例1と同様のパルプスラリーに、比較例1ではホワイトカーボン(エリエールペーパーケミカル株式会社製)を、比較例2では重質炭酸カルシウム(備北粉化工業株式会社製、ハイドロカーブ75F)を、比較例3では軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業株式会社製、TP121−6S)を表1に示すとおり添加した以外は、実施例1と同様の製法にて新聞用紙を製造した。この各填料の体積平均粒子径D50、体積10%粒子径D10及び体積90%粒子径D90、並びにこれらの比は表1に示したとおりである。
【0170】
(評価)
得られた各新聞用紙について、上記方法にて坪量、灰分、白紙不透明度、印刷不透明度、白色度及び縦目方向の引張強度を計測し、また、インキ着肉性及びブランケット紙粉パイリングについて評価した。評価結果については、表1に示す。
【0171】
【表1】
【0172】
上記表1に示されるように、本発明の新聞用紙は、不透明度(白紙不透明度及び印刷不透明度)が高く、また、インキ着肉性及びブランケット紙粉パイリングの評価も高く印刷適性が高いことがわかる。さらに、本発明の新聞用紙は、引張強度も高い。