【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
実施例で用いた各成分の詳細は以下の通りである。
【0047】
・SBR1:未変性乳化重合スチレンブタジエンゴム、JSR(株)製「JSR1500」
・SBR2:アミノ基及びアルコキシシリル基が導入された末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、JSR(株)製「HPR350」
・SBR3ラテックス:スチレンブタジエンゴムラテックス、固形分濃度(DRC):50質量%、JSR(株)製「ローデックス」
・SBR3乾燥物:SBR3ラテックスを60℃オーブン中で水分率が0.8質量%になるまで凝固乾燥させて得られたスチレンブタジエンゴム
・BR:ポリブタジエンゴム、宇部興産株式会社製「BR150B」
・NR1:RSS#3
・NR2ラテックス:天然ゴムラテックス、固形分濃度(DRC):60質量%、レヂテックス(株)製「NRラテックス」
・NR2乾燥物:NR2ラテックスに蟻酸を添加しpH4に調整した後、60℃オーブン中で水分率0.8質量%になるまで乾燥させて得られた天然ゴム
【0048】
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」(BET=200m
2/g)
・カーボンブラック:三菱化学(株)製「ダイヤブラックN339」(比重=1.8)
・CNT:カーボンナノチューブ、(株)名城ナノカーボン製「SWNT APJ」(平均径=1.4nm、平均長=1〜5μm、比重=2.1)
・VGCF−H:気相法炭素繊維、昭和電工(株)製「VGCF−H」(平均径=150nm、平均長=8μm、比重=2.1)
・VGCF−X:気相法炭素繊維、昭和電工(株)製「VGCF−X」(平均径=10〜15nm、平均長=3μm、比重=2.1)
【0049】
・シランカップリング剤:デグサ社製「Si69」
・老化防止剤:6PPD、住友化学(株)製「アンチゲン6C」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1種」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・オイル:JOMOサンエナジー(株)製「プロセスP200」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤CZ:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・加硫促進剤D:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
【0050】
[実施例1]
バンバリーミキサーを使用し、100質量部のSBR2に、1.6質量部のCNTを添加し、混練(排出温度=120℃)することにより、CNTの含有率が0.7体積%であるマスターバッチMB1を得た。次いで、バンバリーミキサーを用い、下記表1に示す配合(質量部)に従って、ノンプロ混合段階で、マスターバッチMB1に、他のジエン系ゴムとともに、硫黄と加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し、4分間混練して約160℃にて排出した。次いで、得られたノンプロ混合物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し、約1.5分間混練して100℃以下で排出することにより、ゴム組成物を調製した。
【0051】
得られたゴム組成物は、
図1に示すように、SBR2を連続相とし、SBR1を分散相とする海−島構造を有するものであって、連続相にCNTが偏在していた。なお、補強性充填剤としてのシリカは、連続相と分散相の全体に分散していた。
【0052】
[実施例2]
バンバリーミキサーを使用し、100質量部のSBR2に、2.3質量部のVGCF−Hを添加し、混練(排出温度=120℃)することにより、VGCF−Hの含有率が1.0体積%であるマスターバッチMB2を得た。該マスターバッチMB2を用い、その他は実施例1と同様に、下記表1に示す配合(質量部)に従ってゴム組成物を調製した。
【0053】
[実施例3]
バンバリーミキサーを使用し、100質量部のSBR2に、12質量部のVGCF−Xを添加し、混練(排出温度=120℃)することにより、VGCF−Xの含有率が5.0体積%であるマスターバッチMB3を得た。該マスターバッチMB3を用い、その他は実施例1と同様に、下記表1に示す配合(質量部)に従ってゴム組成物を調製した。
【0054】
[比較例1]
バンバリーミキサーを用い、下記表1に示す配合(質量部)に従って、ノンプロ混合段階で、ジエン系ゴムに、硫黄と加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し、4分間混練して約160℃にて排出した。次いで、得られたノンプロ混合物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し、約1.5分間混練して100℃以下で排出することにより、ゴム組成物を調製した。
【0055】
[比較例2]
バンバリーミキサーを使用し、100質量部のSBR2に、42質量部のカーボンブラックを添加し、混練(排出温度=120℃)することにより、カーボンブラックの含有率が18体積%であるマスターバッチMB4を得た。該マスターバッチMB4を用い、その他は実施例1と同様に、下記表1に示す配合(質量部)に従ってゴム組成物を調製した。
【0056】
[比較例3]
バンバリーミキサーを用い、下記表1に示す配合(質量部)に従って、ノンプロ混合段階で、ジエン系ゴムにCNTとともに、硫黄と加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し、4分間混練して約160℃にて排出した。次いで、得られたノンプロ混合物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し、約1.5分間混練して100℃以下で排出することにより、ゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物は、SBR2を連続相とし、SBR1を分散相とする海−島構造を有するものであり、
図2に示すようにCNTは連続相と分散相の全体に分散していた。
【0057】
[比較例4]
バンバリーミキサーを使用し、100質量部のSBR1に、2.3質量部のCNTを添加し、混練(排出温度=120℃)することにより、CNTの含有率が1.0体積%であるマスターバッチMB5を得た。該マスターバッチMB5を用い、その他は実施例1と同様に、下記表1に示す配合(質量部)に従ってゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物は、SBR2を連続相とし、SBR1を分散相とする海−島構造を有するものであり、
図3に示すようにCNTは分散相に偏在していた。
【0058】
得られた実施例及び比較例の各ゴム組成物について、加工性を評価するとともに、160℃×30分間で加硫した試験片について、低燃費性能と電気抵抗を測定・評価した。各測定・評価方法は以下の通りである。
【0059】
・加工性:JIS K6300に準拠して東洋精機(株)製ロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴムを100℃で1分間予熱後、4分後のトルク値をムーニー単位で測定し、比較例1の値を100とした指数で示した。指数が小さいほど、加工性に優れている。
【0060】
・低発熱性能:東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、静歪み10%、動歪み±1%、周波数10Hz、温度60℃の条件下で損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほどtanδが小さく、従って、発熱しにくく、低発熱性能に優れることを意味する。
【0061】
・電気抵抗:(株)三菱化学アナリテック製「ハイレスターUP」により電気体積抵抗値を測定した。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示すように、シリカ配合で導電性物質を添加していない比較例1では、ゴム組成物の導電性に劣っていた。比較例1に対し、カーボンブラック(ファーネスブラック)をマスターバッチ化して添加した比較例2では、導電性は多少改良されたものの不十分であり、また、加工性及び低燃費性能が大幅に損なわれた。また、カーボンナノチューブをマスターバッチ化せずに配合した比較例3では、粘度が著しく高く、tanδも上昇して低燃費性能に劣っていた。また、カーボンナノチューブを連続相ではなく分散相に偏在させた比較例4では、電気抵抗改良効果がみられなかった。
【0064】
これに対し、カーボンナノチューブや気相法炭素繊維を連続相に偏在させた実施例1〜3であると、比較例1に対して、加工性と低燃費性能の悪化を小さく抑えながら、導電性が大幅に改善されており、1×10
9Ω・cm未満という目標性能を満足していた。
【0065】
[実施例4]
バンバリーミキサーを使用し、100質量部のSBR2に、3.4質量部のVGCF−Hを添加し、混練(排出温度=120℃)することにより、VGCF−Hの含有率が1.5体積%であるマスターバッチMB6を得た。次いで、バンバリーミキサーを用い、下記表2に示す配合(質量部)に従って、ノンプロ混合段階で、マスターバッチMB6に、他のジエン系ゴムとともに、硫黄と加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し、4分間混練して約160℃にて排出した。次いで、得られたノンプロ混合物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し、約1.5分間混練して100℃以下で排出することにより、ゴム組成物を調製した。
【0066】
得られたゴム組成物は、SBR2を連続相とし、SBR1、BR及びNR1を分散相とする海−島構造を有するものであって、連続相にVGCF−Hが偏在していた。なお、補強性充填剤としてのシリカは、連続相と分散相の全体に分散していた。
【0067】
[比較例5]
バンバリーミキサーを用い、下記表2に示す配合(質量部)に従って、ノンプロ混合段階で、ジエン系ゴムに、硫黄と加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し、4分間混練して約160℃にて排出した。次いで、得られたノンプロ混合物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し、約1.5分間混練して100℃以下で排出することにより、ゴム組成物を調製した。
【0068】
[比較例6]
バンバリーミキサーを用い、下記表2に示す配合(質量部)に従って、ノンプロ混合段階で、ジエン系ゴムにVGCF−Hとともに、硫黄と加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し、4分間混練して約160℃にて排出した。次いで、得られたノンプロ混合物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し、約1.5分間混練して100℃以下で排出することにより、ゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物は、SBR2を連続相とし、SBR1、BR及びNR1を分散相とする海−島構造を有するものであり、連続相と分散相の全体にVGCF−Hが分散していた。
【0069】
[比較例7]
バンバリーミキサーを使用し、100質量部のSBR1に、3.4質量部のVGCF−Hを添加し、混練(排出温度=120℃)することにより、VGCF−Hの含有率が1.5体積%であるマスターバッチMB7を得た。該マスターバッチMB7を用い、その他は実施例4と同様に、下記表2に示す配合(質量部)に従ってゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物は、SBR2を連続相とし、SBR1、BR及びNR1を分散相とする海−島構造を有するものであり、分散相のSBR1にVGCF−Hが偏在していた。
【0070】
得られた実施例及び比較例の各ゴム組成物について、加工性を評価するとともに、160℃×30分間で加硫した試験片について、低燃費性能と電気抵抗を測定・評価した。各測定・評価方法は実施例1と同様である(但し、加工性と低燃費性能では、比較例1の代わりに、比較例5の値を100とした)。
【0071】
【表2】
【0072】
表2に示すように、コントロールである比較例5に対し、気相法炭素繊維をマスターバッチ化せずに配合した比較例6では、粘度が著しく高く、tanδも上昇して低燃費性能に劣っていた。また、気相法炭素繊維を連続相ではなく分散相に偏在させた比較例7では、電気抵抗改良効果がみられなかった。これに対し、気相法炭素繊維を連続相に偏在させた実施例4であると、比較例5に対して、加工性と低燃費性能の悪化を小さく抑えながら、導電性が大幅に改善されていた。
【0073】
[実施例5]
高圧ホモジナイザーを用いて、CNTを水に分散させて1.6質量%の水分散液を得た。得られた水分散液を、100質量部(DRC換算)のNR2ラテックスに添加し、凝固装置としてカワタ製スーパーミキサーSM−20を使用し、せん断羽根を周速24m/sで回転させ凝固物を生成した。なお回転開始後4分経過後に凝固剤としてギ酸10質量%水溶液を添加し、pH3〜4に調整しさらに2分間攪拌した。その後 固形分を60℃オーブン中で水分が0.8質量%になるまで乾燥させて、CNTの含有率が0.7体積%であるマスターバッチMB8を得た。次いで、バンバリーミキサーを用い、下記表3に示す配合(質量部)に従って、ノンプロ混合段階で、マスターバッチMB8に、他のジエン系ゴムとともに、硫黄と加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し、4分間混練して約160℃にて排出した。次いで、得られたノンプロ混合物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し、約1.5分間混練して100℃以下で排出することにより、ゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物は、NR2を連続相とし、SBR1を分散相とする海−島構造を有するものであり、連続相にCNTが偏在していた。
【0074】
[比較例8]
バンバリーミキサーを用い、下記表3に示す配合(質量部)に従って、ノンプロ混合段階で、ジエン系ゴムに、硫黄と加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し、4分間混練して約160℃にて排出した。次いで、得られたノンプロ混合物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し、約1.5分間混練して100℃以下で排出することにより、ゴム組成物を調製した。
【0075】
得られた実施例及び比較例の各ゴム組成物について、加工性を評価するとともに、160℃×30分間で加硫した試験片について、低燃費性能と電気抵抗を測定・評価した。各測定・評価方法は実施例1と同様である(但し、加工性と低燃費性能では、比較例1の代わりに、比較例8の値を100とした)。
【0076】
【表3】
【0077】
表3に示すように、コントロールである比較例8に対し、カーボンナノチューブを連続相に偏在させた実施例5であると、加工性と低燃費性能の悪化を小さく抑えながら、導電性が大幅に改善されていた。
【0078】
[実施例6]
高圧ホモジナイザーを用いて、CNTを水に分散させて2.1質量%の水分散液を得た。得られた水分散液を、100質量部(DRC換算)のSBR3ラテックスに添加し、凝固装置としてカワタ製スーパーミキサーSM−20を使用し、せん断羽根を周速24m/sで回転させ凝固物を生成した。なお回転開始後4分経過後に凝固剤としてギ酸10質量%水溶液を添加し、pH3〜4に調整しさらに2分間攪拌した。その後 固形分を60℃オーブン中で水分が0.8質量%になるまで乾燥させて、CNTの含有率が0.9体積%であるマスターバッチMB9を得た。次いで、バンバリーミキサーを用い、下記表4に示す配合(質量部)に従って、ノンプロ混合段階で、マスターバッチMB9に、他のジエン系ゴムとともに、硫黄と加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し、4分間混練して約160℃にて排出した。次いで、得られたノンプロ混合物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し、約1.5分間混練して100℃以下で排出することにより、ゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物は、SBR3を連続相とし、NR1を分散相とする海−島構造を有するものであり、連続相にCNTが偏在していた。
【0079】
[比較例9]
バンバリーミキサーを用い、下記表4に示す配合(質量部)に従って、ノンプロ混合段階で、ジエン系ゴムに、硫黄と加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し、4分間混練して約160℃にて排出した。次いで、得られたノンプロ混合物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し、約1.5分間混練して100℃以下で排出することにより、ゴム組成物を調製した。
【0080】
得られた実施例及び比較例の各ゴム組成 物について、加工性を評価するとともに、160℃×30分間で加硫した試験片について、低燃費性能と電気抵抗を測定・評価した。各測定・評価方法は実施例1と同様である(但し、加工性と低燃費性能では、比較例1の代わりに、比較例9の値を100とした)。
【0081】
【表4】
【0082】
表4に示すように、コントロールである比較例9に対し、カーボンナノチューブを連続相に偏在させた実施例6であると、加工性と低燃費性能の悪化を小さく抑えながら、導電性が大幅に改善されていた。