【実施例1】
【0031】
図1に示すように、実施例1のパレット位置決め固定装置1(これが、「物体位置決め固定装置」に相当する。以下、位置決め固定装置という)は、ベース部材2の上に機械加工に供するワークを保持する為のワークパレット3(これが、位置決め固定される「対象物体」に相当する)を水平方向と鉛直方向に位置決めし、4本の固定用ボルト4,4Aにより固定するものである。
【0032】
この位置決め固定装置1は、ベース部材2の上面に形成された基準座面5と、ワークパレット3の下面に形成された当接面6と、ワークパレット3を水平方向に位置決め可能な第1位置決め機構7と、この第1位置決め機構7から離隔した位置に配置されワークパレット3が第1位置決め機構7を中心として水平面内で回転しないように規制する第2位置決め機構8と、ワークパレット3をベース部材2に押圧して固定可能な固定機構9とを備えている。
【0033】
ベース部材2とワークパレット3は、夫々、正方形又は長方形の厚手の鋼製の平板部材で構成されている。ベース部材2は、例えば工作機械のテーブル等の上に固定した状態にセットしておく。ワークパレット3には、図示外のクランプ装置やボルトにより1又は複数のワーク(図示略)を固定し、そのワークパレット3をベース部材2上に搬送し、水平方向と鉛直方向に位置決めし且つ固定してから、ワークパレット3上の1又は複数のワークに対して機械加工が施される。
【0034】
ベース部材2の上面のほぼ全域は、ワークパレット3を載置し、ワークパレット3の下面を着座させてワークパレット3を鉛直方向に位置決めする為の水平な基準座面5に形成されている。ワークパレット3の底面のほぼ全域は、基準座面5に面接触状に当接可能な水平な当接面6に形成されている。
【0035】
ベース部材2は、このベース部材2の対角関係にある1対の隅部の近傍部位に形成された鉛直方向向きの第1,第2嵌合孔11,12と、この第1,第2嵌合孔11,12の下端に連なる鉛直方向向きの1対の第1のボルト孔13と、ベース部材2の対角関係にある1対の隅部(上記1対の隅部とは異なる1対の隅部)の近傍部位に形成された鉛直方向向きの1対の第2のボルト孔14とを備えている。
【0036】
ワークパレット3は、ワークパレット3の対角関係にある1対の隅部の近傍部位に形成された鉛直方向向きの第1,第2装着穴15,16と、この第1,第2装着穴15,16の上端に連なる鉛直方向向きの1対の第2のボルト挿通孔18と、1対の第2のボルト挿通孔18の上部の頭部収容穴18aと、ベース部材2の対角関係にある1対の隅部(上記1対の隅部とは異なる1対の隅部)の近傍部位に形成された鉛直方向向きの1対の第3のボルト挿通孔19と、1対の第3のボルト挿通孔19の上部の頭部収容穴19aとを備えている。
【0037】
1対の第2のボルト挿通孔18は、ワークパレット3を板厚方向に貫通させて後述する第1,第2基準部材31,41の軸心と平行且つ同心状に形成されている。1対の第3のボルト挿通孔19は、ワークパレット3を板厚方向に貫通させて第2のボルト孔14と同心状に形成されている。尚、第1のボルト挿通孔17は、第1,第2基準部材31,41に形成されている。
【0038】
頭部収容孔18a,19aを形成することで、ボルト4,4Aの頭部の上面は、ワークパレット3の上面から微小距離低い位置に設定されているため、ワークパレット3の上面にワークをセットするのに有利である。尚、本明細書において、「ボルト挿通孔」はボルトを通すことができる孔を意味し、「ボルト孔」はボルトを螺合可能なネジ孔を意味する。
【0039】
次に、第1,第2位置決め機構7,8について説明する。
図1〜
図15に示すように、第1,第2位置決め機構7,8は、ベース部材2に形成された第1,第2嵌合孔11,12と、これら第1,第2嵌合孔11,12に装着された第1,第2基準部材31,41と、ワークパレット3に形成された第1,第2装着穴15,16と、これら第1,第2装着穴15,16に装着された第1,第2環状係合部材51,61等を夫々備えている。
【0040】
次に、第1,第2嵌合孔11,12について説明する。
図5〜
図13,
図15に示すように、第1,第2嵌合孔11,12は互いに離隔した位置にベース部材2の基準座面5に開口するように夫々形成されている。第1,第2嵌合孔11,12は、平面視にて円形状にベース部材2に夫々直接形成されている。
【0041】
次に、第1,第2基準部材31,41について説明する。
図5〜14に示すように、第1,第2基準部材31,41は、第1,第2係合凸部32,42と、この第1,第2係合凸部32,42に一体形成され且つ第1,第2係合凸部32,42より小径の第1,第2嵌合筒部33,43と、第1,第2係合凸部32,42に一体形成された第1,第2基端当接面34,44とを夫々備えている。
【0042】
水平方向位置決めの為の第1,第2基準部材31,41は第1,第2嵌合孔11,12に夫々固定される。尚、第2基準部材41は、ワークパレット3が第1基準部材31を中心として水平面内において回転しないように回転規制(水平方向位置決め)する為のものである。
【0043】
第1,第2基準部材31,41の第1,第2係合凸部32,42の外周には上方に向って(ワークパレット3側に向って)小径化する第1,第2テーパ係合面31a,41aが形成されている。第1,第2係合凸部32,42の上端の外周部は断面円弧状に形成されている。第1,第2係合凸部32,42の第1,第2嵌合筒部33,43側の基端に、基準座面5に当接する環状の第1,第2基端当接面34,44が形成されている。但し、第1,第2テーパ係合面31a,41aは周方向に間欠的に形成した複数のテーパ係合面であってもよい。
【0044】
尚、第1,第2基準部材31,41の第1,第2基端当接面34,44が基準座面5に当接した固定状態では、第1,第2嵌合孔11,12の底面と第1,第2基準部材31,41の第1,第2嵌合筒部33,43の下端面との間には、小さな環状隙間が形成されている。第1,第2基準部材31,41は、第1,第2嵌合孔11,12に圧入固定されても良いし、圧入以外の固定手段で固定してもよい。
【0045】
第1,第2基準部材31,41の中央部には、鉛直方向向きの第1のボルト挿通孔17が夫々形成されている。ベース部材2には、1対の第1のボルト挿通孔17に対応する鉛直方向向きの1対の第1のボルト孔13が同心状に夫々形成されている。第1,第2基準部材31,41に対応するワークパレット3の部位には、第1のボルト挿通孔17に対応する第2のボルト挿通孔18が同心状に夫々形成されている。
【0046】
後述するように、ワークパレット3側の1対の第2のボルト挿通孔18とベース部材2側の1対の第1のボルト挿通孔17に挿入した2本のボルト4を、1対の第1のボルト孔13に夫々螺合することによりワークパレット3がベース部材2に固定される。
【0047】
次に、第1,第2装着穴15,16について説明する。
図5〜
図13,
図16に示すように、第1,第2装着穴15,16は互いに離隔した位置にワークパレット3の当接面6に開口するように夫々形成されている。第1装着穴15は、ベース部材3に平面視にて円形状に直接形成されている。第2装着穴16は、ワークパレット3に形成された円筒穴21に内嵌状に装着されたブッシュ部材22に形成されている(
図16参照)。円筒穴21は、平面視にて円形状に形成され、第1装着穴15の直径と略等しい直径又は僅かに大きい直径を有している。
【0048】
ブッシュ部材22は円筒状に構成され、円筒穴21に圧入固定されているが、圧入以外の固定手段で固定してもよい。ブッシュ部材22に形成された第2装着穴16は、平面視にて略長円形状(後述の中心線Lと平行な長軸を有する)に形成され、後述する第2環状係合部材61が第1,第2位置決め機構7,8の軸心同士を結ぶ中心線Lの方向へ移動可能に形成されている。第2装着穴16は、中心線Lの方向と平行な1対の規制面16aと、この1対の規制面16a間に浅溝状に形成され且つ中心線Lの方向に対向する外側に凸の1対の部分円筒面16bとを備えている。
【0049】
1対の規制面16aは、平面視において前記中心線Lに直交する方向に対向状に形成されている。1対の規制面16aの中心線Lと平行な方向の長さは、第2装着穴16の周方向長さの約1/6〜1/8程度である。第2装着穴16の1対の部分円筒面16bの下側部分には、径方向内側に突出する円弧状凸部16cが周方向に沿って夫々形成されている。この1対の円弧状凸部16cにより、後述する第2環状係合部材61が搬送時や振動等により第2装着穴16から脱落するのを防止する。
【0050】
尚、ブッシュ部材22の下端が当接面6より下方へ突出しないように、ブッシュ部材22の高さ寸法は、円筒穴21の深さ寸法よりも幾分小さく設定され、ブッシュ部材22の上端は円筒穴21の上端壁面に当接している。尚、円筒穴21の上端壁面のうちブッシュ部材22の内側部分で第2装着穴16の環状受面16dを構成している。
【0051】
次に、第1,第2環状係合部材51,61について説明する。
図4〜
図13,
図15に示すように、第1,第2環状係合部材51,61は、第1,第2係合凸部32,42が係合可能であり、ワークパレット3に形成された第1,第2装着穴15,16に夫々装着されている。第1環状係合部材51は、第1装着穴15に圧入により嵌合固定されているが、圧入以外の固定手段で固定しても良い。第2環状係合部材61は、第2装着穴16に遊びをもって装着されている。
【0052】
第1,第2環状係合部材51,61は、第1,第2基準部材31,41の第1,第2係合凸部32,42に外嵌され且つボルト4の締結力を作用させるとき径拡大方向に弾性変形可能で且つ第1,第2係合凸部32,42の第1,第2テーパ係合面31a,41aに密着状に係合可能に夫々構成されている。
【0053】
そのため、第1,第2環状係合部材51,61の内周面が第1,第2テーパ係合面31a,41aに密着可能な第1,第2テーパ当接面51a,61aに夫々形成されている。第1,第2環状係合部材51,61の径方向の厚さは、水平方向の位置決めに必要な剛性を有する厚さであれば良い。
【0054】
次に、第2環状係合部材61の第1環状係合部材51と異なる構成について説明する。
図5〜
図13,
図15に示すように、第2環状係合部材61の外周面には、1対の規制面16aに密着可能な1対の被規制面61bと、第2装着穴16の1対の部分円筒面16bに対向する1対の部分円筒面61cとが形成されている。1対の被規制面61bの前記中心線Lと平行な方向の長さは、第2環状係合部材61の周方向長さの約1/6〜1/8程度である。第2環状係合部材61には、径方向への弾性変形促進用のスリット61dが形成されているが、このスリット61dは省略しても良い。
【0055】
第2環状係合部材61の1対の部分円筒面61cと第2装着穴16の1対の部分円筒面16bとの間に、1対の部分円筒状隙間25が形成されている(
図10参照)。1対の部分円筒状隙間25は、第2位置決め機構8の軸心を中心として中心線Lと平行な方向に±50μm程度の隙間となるように形成されているが、特にこの長さ限定する必要はない。第2環状係合部材61の下端が当接面6より下方へ突出しないように、第2環状係合部材61の高さ寸法は、第2装着穴16の深さ寸法よりも幾分小さく設定されている。
【0056】
尚、第2環状係合部材61が第2基準部材41に係合していない状態では、第2環状係合部材61の下端は第2装着穴16の1対の円弧状凸部16cにより係止され、第2環状係合部材61の上端の環状端面61eと第2装着穴16の上端壁面を形成する環状受面16dとの間に僅かな環状隙間が形成され、1対の被規制面61bと1対の規制面16aとの間に微小隙間が形成される。
【0057】
図11〜
図13に示すように、第2環状係合部材61が第2基準部材41に密着状に係合した状態では、第2環状係合部材61の環状端面61eは第2装着穴16の環状受面16dに密着状に当接し、第2環状係合部材61の弾性変形を介して1対の被規制面61bが第2装着穴16の1対の規制面16aに密着状に当接する。
【0058】
第2環状係合部材61を第2装着穴16に装着する場合、ブッシュ部材22を円筒穴21に嵌合固定する前に、第2環状係合部材61を1対の被規制面61bが1対の規制面16aに対して平行状態となるようにブッシュ部材22の第2装着穴16に挿入し、第2環状係合部材61の下端を1対の円弧状凸部16cに係止させた状態で、ブッシュ部材22を円筒穴21に下方から嵌合固定する。
【0059】
尚、第1環状係合部材51においては、第1環状係合部材51の下半部の外径は上半部の外径よりも僅かに小径に形成され、第1環状係合部材51の下半部の外周面と第1装着穴15の内周面との間に、第1環状係合部材51の径拡大方向への弾性変形を促進する為の環状隙間63が形成されている。第1環状係合部材51の下端が当接面6より下方へ突出しないように、第1環状係合部材51の高さ寸法は、第1装着穴15の深さ寸法よりも幾分小さく設定され、第1環状係合部材51の上端の環状端面は第1装着穴15の上端壁面を形成する環状端面に密着状に当接している。
【0060】
固定機構9は、第1,第2基準部材31,41の第1のボルト挿通孔17、ワークパレット3に形成された1対の第2のボルト挿通孔18と1対の第3のボルト挿通孔19、ベース部材2に形成された1対の第1のボルト孔13と1対の第2のボルト孔14、4つのボルト4,4A等より構成されている。
【0061】
次に、上記の位置決め固定装置1の作用について説明する。
ベース部材2は工作機械のテーブルの上に予めセットして固定されている。ワーク準備ステージにおいて、ワークパレット3に1又は複数のワークを取り付けた状態において、ワークパレット3をベース部材2の上方へ搬送して、ベース部材2の上面の基準座面5に近接状に載置する。
【0062】
この状態では、
図8,
図9に示すように、ワークパレット3側の第1,第2環状係合部材51,61が第1,第2基準部材31,41の第1,第2係合凸部32,42に軽く係合する。第1,第2基準部材31,41においては、第1,第2基端当接面34,44が基準座面5に当接した状態であり、第1環状係合部材51においては、その上端の環状端面が第1装着穴15の環状受面に当接し、その内周面のテーパ当接面51aが第1基準部材31の第1テーパ係合面31aに軽く当接した状態である。
【0063】
また、第2環状係合部材61においては、第2基準部材41の係合に伴い上方に移動され、その内周面のテーパ当接面61aが第2基準部材41の第2テーパ係合面41aに軽く当接し、その外周面の1対の被規制面61bが第2装着穴16の1対の規制面16aに軽く当接又は近接し、その上端の環状端面61eが第2装着穴16の環状受面16dに軽く当接した状態である。
【0064】
次に、
図12,
図13に示すように、2つのボルト4を1対の第2のボルト挿通孔18から夫々挿入して、第1,第2基準部材31,41の第1のボルト挿通孔17を夫々挿通させた状態で対応する第1のボルト孔13に夫々螺合締結することにより、第1,第2環状係合部材51,61を径拡大側へ弾性変形させて、それらの内周面の第1,第2テーパ当接面51a,61aを第1,第2テーパ係合面31a,41aに密着状に係合させて固定する。第1位置決め機構7においては、ワークパレット3の水平方向位置が決まり、第2位置決め機構8においては、ワークパレット3が第1位置決め機構7を中心として水平面内で回転しないように規制する。
【0065】
このとき、第2位置決め機構8の第2環状係合部材61において、2つのボルト4によりワークパレット3をベース部材2に押圧して固定した状態では、第2環状係合部材61が径拡大方向へ弾性変形して第2装着穴16に押圧され、第2環状係合部材61の1対の被規制面61bが第2装着穴16の1対の規制面16aに密着状に係合し、第2環状係合部材61の環状端面61eが第2装着穴16の環状受面16dに密着状に当接する。
【0066】
ところで、諸部材や第1,第2嵌合孔11,12や第1,第2装着穴15,16等の加工誤差(例えば、数10μm)などにより、第1,第2基準部材31,41の軸心間距離と第1,第2環状係合部材51,61の軸心間距離が等しくない場合がある。この位置決め固定装置1において、第2環状係合部材61は、1対の部分円筒状隙間25を介して中心線Lの方向へ移動可能であり、1対の規制面16aと1対の被規制面61bを介して中心線Lと直交する方向へは移動不能である。
【0067】
このため、ベース部材2の第1,第2基準部材31,41の軸心間距離と、ワークパレット3の第1,第2環状係合部材51,61の軸心間距離とに誤差がある場合、第1環状係合部材51に対して第2環状係合部材61が僅かに中心線Lに沿って移動することで、この誤差を吸収して軸心間を自動的に調整することができる。このとき、第2基準部材41と第2環状係合部材61及び基準座面5と当接面6との2面拘束に加えて、第2装着穴16の1対の規制面16aと第2環状係合部材61の1対の被規制面61b及び第2装着穴16の環状受面16dと第2環状係合部材61の環状端面61eとの2面拘束が行われるので、ワークパレット3をベース部材2に対して水平方向と鉛直方向に精度良く位置決めすることができる。
【0068】
そして、2つのボルト4Aを第3のボルト挿通孔18から夫々挿入して、ベース部材2の第2のボルト孔14に夫々螺合締結することにより、ワークパレット3の1対の隅部の近傍部がベース部材2に固定されて、より強固にワークパレット3がベース部材2に固定される。
【0069】
このように、第1環状係合部材51の第1テーパ当接面51aが、第1基準部材31の第1テーパ係合面31aに密着して水平方向に位置決めされ、第2環状係合部材61の第2テーパ当接面61aが、第2基準部材41の第2テーパ係合面41aに密着して第1基準部材31の軸心を中心として水平面内で回転しないように規制して水平方向へ位置決めする。こうして、ワークパレット3をベース部材2に対して鉛直方向及び水平方向へ精度良く位置決めし且つ水平面内で回転しないように規制することができる。
【0070】
次に、上記の位置決め固定装置1が奏する効果について説明する。
第1,第2基準部材31,41の軸心間距離と第1,第2環状係合部材51,61の軸心間距離に誤差がある場合でも、第2環状係合部材61が第2基準部材41に係合する際に第2環状係合部材61が中心線Lと平行な方向に自動的に移動してから固定されるので、第2基準部材41に対する第2環状係合部材61の位置ズレ(ピッチ間公差,例えば10〜100μm程度)を吸収することができる。それ故、第1,第2環状係合部材51,61の軸心間距離を高精度に設定せずとも、第2基準部材41の第2テーパ係合面41aに第2環状係合部材61の内周面を確実に密着させた状態にしてワークパレット3をベース部材2に位置決めして固定することができ、ワークパレット3の水平方向への位置決め精度と水平面内での回転を規制する精度を向上させることができる。
【0071】
また、第2環状係合部材61を中心線Lと平行な方向に移動可能に構成したので、第2基準部材41の第2テーパ係合面41aを環状に形成でき、第2環状係合部材61の内周面に密着状に確実に係合させることができるので、第2テーパ係合面41aが磨耗したりへたったりすることを防止し、第2位置決め機構8の耐久性を向上させることができる。
【0072】
さらに、第1,第2係合凸部32,42の第1,第2基端当接面34,44を基準座面5に当接させるため、基準座面5に対する第1,第2係合凸部32,42の高さ方向位置の精度を高めることができるから、ワークパレット3をベース部材2に対して水平方向に位置決めする位置決め精度を高めることができる。第1,第2基準部材31,41の第1,第2嵌合筒部33,43を第1,第2嵌合孔11,12に嵌合固定する構成とし、第1,第2嵌合筒部33,43は第1,第2係合凸部32,42よりも小さな外径を有するものであるため、第1,第2基準部材31,41の構造を簡単化・小型化して制作費(材料費、加工費、組付け費)を大幅に低減することができる。
【0073】
固定機構9は、第1,第2基準部材31,41に夫々形成された第1のボルト挿通孔17と、この第1のボルト挿通孔17に対応するようにワークパレット3に夫々形成された第2のボルト挿通孔18と、第1,第2のボルト挿通孔18に対応するようにベース部材2に夫々形成された第1のボルト孔13とを備えたので、第1,第2基準部材31,41にボルト締結力が直接作用しないため、第1,第2嵌合孔11,12に対して第1,第2基準部材31,41の第1,第2嵌合筒部33,43が移動する虞がないから、第1,第2基準部材31,41による水平方向位置決め精度を確保する上で有利である。
【0074】
第2環状係合部材61に径方向への弾性変形促進用のスリット61dを形成したので、第2環状係合部材61に形成したスリット61dを介して第2環状係合部材61の弾性変形を促進することができる。
第2装着穴16は、ワークパレット3に形成された円筒穴21に内嵌状に装着されたブッシュ部材22に形成されたので、第2装着穴16の製作が容易である。
【実施例3】
【0082】
次に、実施例1の位置決め固定装置1における第2位置決め機構8の第2装着穴16と第2環状係合部材61を部分的に変更した実施例3の第2位置決め機構8Bの第2装着穴16Bと第2環状係合部材61Bについて説明する。
【0083】
先ず、第2装着穴16Bについて説明する。
図23〜
図27,
図29に示すように、第2装着穴16Bは、第2環状係合部材61Bの環状本体部81が水平方向へ移動可能に収容される本体装着穴71と、この本体装着穴71に連通し且つ第2環状係合部材61Bの環状小径部82が中心線Lの方向へ移動可能に収容される小径部装着穴72とを備えている。
【0084】
本体装着穴71は、ワークパレット3の当接面6に開口し且つ平面視にて円形状に直接形成されている。本体装着穴71の当接面6側の下端部に、抜け止めリング46が装着可能な環状溝部71aが全周に亙って形成され、この環状溝部71aに抜け止めリング46が嵌合固定されている。この抜け止めリング46により、第2環状係合部材61Bが搬送時や振動等により第2装着穴16Bから脱落するのを防止する。
【0085】
小径部装着穴72は、平面視にて略長円形状に形成され、内周部に形成され且つ第2係合凸部42から離隔する程相接近するように傾斜した1対のテーパ規制面72aと、この1対のテーパ規制面16aの間に形成され且つ外側に凸の1対の部分円筒面72bとを備えている。1対のテーパ規制面72aは、平面視において前記中心線Lに直交する方向に対向状に形成されている。1対のテーパ規制面72aの中心線Lと平行な方向の長さは、小径部装着穴72の周方向長さの約1/6〜1/8程度である。
【0086】
次に、第2環状係合部材61Bについて説明する。
図23〜
図28に示すように、第2環状係合部材61Bは、第2係合凸部42が係合する環状本体部81と、この環状本体部81の一方と反対側端部から一方と反対側へ延びるように一体形成され且つ環状本体部81よりも小径の環状小径部82とを備えている。第2環状係合部材61Bの環状本体部81の外径は、本体装着穴71の直径より小径に形成され、環状本体部81の外周面と本体装着穴71の内周面との間には円筒状隙間85が形成されている。
【0087】
環状本体部81は、第2係合凸部42に外嵌され且つボルト4の締結力を作用させると径拡大方向に弾性変形可能であり、その内周面が第2係合凸部42の第2テーパ係合面41aに密着状に係合可能な第2テーパ当接面81aに形成されている。環状本体部81の径方向の厚さは、水平方向の位置決めに必要な剛性を有する厚さであれば良い。
【0088】
環状小径部82の中央部には、鉛直方向向きのボルト挿通孔82aが形成されている。環状小径部82は、その外周面に形成され且つ1対のテーパ規制面72aに密着可能な1対のテーパ被規制面82bと、この1対のテーパ被規制面82bの間に形成された1対の部分円筒面82cとを備えている。第2環状係合部材61Bの1対の部分円筒面82cと第2装着穴16Bの1対の部分円筒面72bとの間に1対の部分円筒状隙間86が形成されている(
図25参照)。
【0089】
環状本体部81の下端が当接面6より下方へ突出しないように、環状本体部81の高さ寸法は、本体装着穴71の深さ寸法よりも幾分小さく設定され、環状小径部82の上端が小径部装着穴72の上端壁面に当接しないように、環状小径部82の高さ寸法は、小径部装着穴72の深さ寸法よりも幾分小さく設定されている。
【0090】
尚、第2環状係合部材61Bが第2基準部材41に係合していない状態では、環状本体部81の下端は抜け止めリング46により係止され、環状本体部81の上端の環状端面81bと本体装着穴71の環状受面71bとの間に僅かな環状隙間が形成され、環状小径部82の1対のテーパ被規制面82bと小径部装着穴72の1対のテーパ規制面72aとの間に微小隙間が形成される。
【0091】
図26,
図27に示すように、第2環状係合部材61Bが第2基準部材41に密着状に係合した状態では、環状本体部81の環状端面81bは本体装着穴71の環状受面71bに密着状に当接し、第2環状係合部材61Bの弾性変形を介して1対のテーパ被規制面82bは小径部装着穴72の1対のテーパ規制面72aに密着状に当接する。
【0092】
第2環状係合部材61Bは、環状本体部81と、この環状本体部81よりも小径の環状小径部82とを備え、第2装着穴16Bは、環状本体部81が収容される本体装着穴71と、環状小径部82が収容される小径部装着穴72とを備え、前記実施例1,2の1対の規制面16a,16Aaに相当するものが、小径部装着穴72の内周部に第2係合凸部42から離隔する程相接近するように傾斜した1対のテーパ規制面72aに形成され、1対の被規制面61bは、1対のテーパ規制面72aに密着可能に環状小径部82に形成されたので、第2環状係合部材61Bを嵌合固定する為の既存の装着穴に追加加工を施すことで、第1,第2環状係合部材51,61Bのピッチ間公差を吸収可能な構成にすることができる。その他の構成、作用及び効果は実施例1と同様であり、実施例1と同様のものに同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【実施例4】
【0093】
次に、実施例1の位置決め固定装置1を部分的に変更した実施例4の位置決め固定装置1Cについて説明する。尚、実施例4の位置決め固定装置1Cは、ワークパレット3C側に第1,第2基準部材31,41を取り付け、ベース部材2C側に第1,第2環状係合部材51,61を取り付けたものである。
【0094】
図30に示すように、位置決め固定装置1Cにおいては、第1,第2基準部材31,41をワークパレット3Cに形成した第1,第2嵌合孔11,12に装着し、第1,第2環状係合部材51,61をベース部材2Cに形成した第1,第2装着穴15,16に装着している。第2装着穴16は、実施例1と同様にベース部材2Cに形成された円筒穴21に内嵌状に装着されたブッシュ部材22に形成されている。即ち、実施例4の第1,第2位置決め機構7C,8Cは、実施例1のものと比較して逆構造に構成されている。
【0095】
この場合、第1,第2基準部材31,41に対応する位置において、ワークパレット3Cには第2のボルト挿通孔18と、その頭部収容穴18aとが形成され、第1,第2基準部材31,41には、第1のボルト挿通孔17が形成され、ベース部材2Bには、第1,第2基準部材31,41の第1のボルト挿通孔17に対応する第1のボルト孔13が形成される。その他の構成、作用及び効果は実施例1と同様であり、実施例1と同様のものに同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0096】
尚、第2装着穴16は、ベース部材2Cに形成された円筒穴21に装着されたブッシュ部材22に形成されているが、実施例2と同様に第2装着穴16をベース部材2Cに直接形成しても良い。
【0097】
次に、前記実施例1〜4を部分的に変更した形態について説明する。
[1]前記第1,第2環状係合部材51,61の径拡大方向への弾性変形を促進するため、
図31に示すように、第1,第2環状係合部材51D,61Dの例えば下半分に、ベース部材2側に向って開口する深溝状の環状溝51b,61bを形成し、第1,第2環状係合部材51D,61Dのうちの環状溝51b,61bより内側の部分に径拡大側へ弾性変形可能な環状係合壁部51c,61cを形成する。尚、第2環状係合部材61に環状溝61bを形成する場合、スリット61dは省略しても良い。
【0098】
この構成によれば、第1,第2環状係合部材51D,61Dの外周面と第1,第2テーパ当接面51a,61aとの間の少なくとも一部に第1,第2環状係合部材51D,61Dの弾性変形を促進する為のベース部材2側に向って開口した環状溝51b,61bを形成したので、第1,第2環状係合部材51D,61Dに形成した環状溝51b,61bを介して第1,第2環状係合部材51D,61Dの弾性変形を促進することができる。尚、第1,第2環状係合部材51,61がベース部材2に装着されている場合は、ワークパレット3側に向って開口した環状溝51b,61bを形成すれば良い。
【0099】
[2]前記第1,第2環状係合部材51,61の径拡大方向への弾性変形を促進するため、第1,第2環状係合部材51,61の周方向の1箇所を分断する分断部(実施例1のスリット61dと同様のもの)、又は第1,第2環状係合部材51,61の周方向の複数箇所を部分的に分断する部分分断部を形成しても良い。
【0100】
[3]前記第1,第2基準部材31,41に前記第1,第2環状係合部材51,61を係合させてボルト4を締結した際に、第1,第2基準部材31,41を径縮小側へ弾性変形させるように構成しても良い。この場合、第1,第2環状係合部材51,61と第1,第2基準部材31,41の両方を弾性変形可能に構成しても良く、第1,第2基準部材31,41だけを弾性変形可能に構成しても良い。
【0101】
[4]前記基準座面5は、必ずしもベース部材2の上面の全域に形成する必要はなく、ベース部材2の上面の複数部位に形成しても良い。同様に、基準座面5に当接する当接面6は、必ずしもワークパレット3の下面の全域に形成する必要はなく、ワークパレット3の下面の複数部位に形成しても良い。
【0102】
[5]前記ボルト4,4Aの頭部は、頭部収容穴18a,19aに必ずしも収容することなく、これら頭部収容穴18a,19aを省略して、ワークパレット3の上面から突出させても良い。
【0103】
[6]
図32に示すように、第2基準部材41Eと第2環状係合部材61Eとで第2位置決め機構8Eを構成し、この第2位置決め機構8Eとは別の位置で、ワークパレット3にボルト挿通孔81を形成すると共に、ベース部材2にはボルト挿通孔81に対応するボルト孔82を形成し、ボルト挿通孔81に挿通させた固定用ボルト83をボルト孔82に螺合させることにより、ワークパレット3をベース部材2に固定する。ボルト挿通孔81とボルト孔82とボルト83とで固定機構9Eが構成されている。
【0104】
[7]前記対象物体は、ワークパレット3に限定するものではなく、種々の物品や部材や工具等を位置決め固定する装置に適用することができる。例えば、ワーク等を固定するバイスの爪部材(対象物体)をベース部材2に位置決めして固定する構造にも本発明を適用することができる。また、旋盤のチャック装置の爪部材(対象物体)をベース部材2に位置決めして固定する構造にも本発明を適用することができる。
【0105】
[8]その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。