(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持部材の前記案内部の軸線方向長さをLとし、前記径方向における前記案内部と前記セパレータの前記外側面との間隙の大きさをGとした場合に、L≧4Gを満たすことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バネ片を保持部材の周壁部に設けることによって、セパレータの軸位置を周壁部の中央に求心させる効果は得られるが、軸そのものの傾きを補正する効果は得られにくい。また、バネ片はセパレータの弾性保持のため、撓みが許容される。ゆえにガスセンサの組み立て時において、セパレータが保持部材に対して軸を傾けた状態で周壁部内に挿入されると、一部のバネ片が撓むことによって、セパレータが傾いた状態のまま保持部材に保持される場合がある。その状態で保持部材が外筒に加締められてセパレータが外筒内で位置決めされると、セパレータ内に収容する端子金具やリード線が検出素子に対して斜めに傾いたまま位置決めされ、検出素子との電気的な接続の信頼性が低下する虞があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、保持部材に対するセパレータの軸ずれを防止して検出素子と端子金具の電気的接続の信頼性を確保することができるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施態様によれば、軸線方向に延び、特定ガスの濃度を検出するための検出素子と、前記検出素子の径方向周囲を取り囲んで保持する主体金具と、前記主体金具の後端側に取り付けられた筒状の外筒と、絶縁セラミックからなる円筒状に形成され、前記外筒内に配置されて、自身の内部に前記検出素子との電気的な接続を行う複数の端子金具を収容するセパレータと、前記外筒と前記セパレータとの間隙に配置され、自身の内部に前記セパレータを保持する筒状の保持部材であって、前記セパレータの外側面を取り囲む筒状の周壁部と、前記周壁部の後端から径方向内向きに延びると共に、前記セパレータを支持する支持部と、前記周壁部よりも径方向内側且つ前記支持部よりも先端側に配置され、前記セパレータの前記外側面に当接し、前記セパレータを前記周壁部内で弾性的に把持する板状の把持部と、を有する保持部材と、を備えるガスセンサにおいて、前記保持部材は、前記周壁部よりも径方向内側で、且つ軸線方向における前記支持部と前記把持部との間の位置に配置され、前記セパレータの前記外側面との間に間隙を有した状態で軸線方向に沿って延びると共に、前記保持部材を軸線方向に沿って見たときに、軸線を中心に周方向に三等分したそれぞれの領域に少なくとも1つずつ配置される板状の案内部を有するガスセンサが提供される。
【0009】
ガスセンサの製造過程でセパレータを保持部材内に配置する際にセパレータが軸線に対して傾いた状態で保持部材内に挿入された場合、軸線方向に延びる案内部にセパレータの外側面が当接する。しかしながら、セパレータが保持部材内に配置された際に、案内部とセパレータの外側面との間に間隙が設けられているため、セパレータが案内部に案内(挿入)されるにつれて、セパレータが保持部材内にて径方向に移動することができる。このため、セパレータは軸の傾きが保持部材の軸に沿うように矯正される。ゆえに、セパレータに収容する複数の端子金具を検出素子の電極に接触させて電気的な接続を行う際に、各端子金具と各電極との接触状態が偏ることなく均一になされるので、検出素子と端子金具の電気的接続の信頼性を確保することができる。
【0010】
また、案内部によってセパレータの軸の傾きを矯正できるので、ガスセンサの製造過程において治具を用いて軸が傾かないようにセパレータを保持しながら、そのセパレータを保持部材に保持させなくとも済む。たとえば保持部材へのセパレータの保持を手作業で行ったとしても、セパレータと保持部材とを、軸ずれすることなく容易に組み立てることができる。この場合、手順が簡易であり、治具も不要であるので、低コスト化を図ることができる。
【0011】
本実施態様のガスセンサにおいて、前記保持部材の前記案内部の軸線方向長さをLとし、前記径方向における前記案内部と前記セパレータの前記外側面との間隙の大きさをGとした場合に、L≧4Gを満たしてもよい。案内部の軸線方向長さLが間隙の大きさGの4倍以上であれば、案内部とセパレータの外側面との間隙の長さを十分に長く確保できる。ゆえに、セパレータの先端側が把持部に到達するまでに、セパレータは十分に径方向の移動を行うことができ、セパレータの傾きを確実に矯正することができる。
【0012】
本実施態様のガスセンサにおいて、前記保持部材の前記案内部は、前記支持部と前記把持部とを連結しつつ、前記把持部と一体に形成されていてもよい。把持部と案内部を一体に形成するので、形成が容易で生産コストを低減できる。
【0013】
本実施態様のガスセンサにおいて、前記保持部材の前記案内部は、前記支持部の径方向内側の端部に連結すると共に、前記把持部は、前記周壁部から径方向内向きに延び、前記案内部とは別体に形成されていてもよい。把持部と案内部を別体に形成するので、ガスセンサの製造過程において加締めによって周壁部が径方向内向きに応力を受けて変形し、周壁部から延びる把持部がその加締めの影響を受けた場合であっても、案内部は影響を受けにくく、保持部材内でのセパレータの姿勢を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化したガスセンサの実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、一例としてのガスセンサ1の構造について、
図1を参照して説明する。
図1において、ガスセンサ1の軸線O方向(一点鎖線で示す)を上下方向として図示し、内部に保持する検出素子10の先端部11側をガスセンサ1の先端(前方)側、後端部12側をガスセンサ1の後端(後方)側として説明する。
【0016】
図1に例示するガスセンサ1は、自動車の排気管(図示外)に取り付けられるものである。ガスセンサ1は、内部に保持する検出素子10の先端部11が排気管内を流通する排気ガス中に晒されて、その排気ガス中の酸素の有無を検出する、いわゆるλ型の酸素センサである。ガスセンサ1は、主に、検出素子10、主体金具50、プロテクタ30、セパレータ60、保持部材70、栓部材90、外筒80を備える。
【0017】
まず、検出素子10について説明する。検出素子10は、軸線O方向に延びる細幅で板状形状(短冊状)の素子である。なお
図1は、紙面左右方向を検出素子10の厚み方向、紙面表裏方向を検出素子10の幅方向として図示する。検出素子10は、軸線O方向に延びる板状形状に形成された素子部18と、同じく軸線O方向に延びる板状形状に形成されたヒータ部19とが積層されて形成される。
【0018】
素子部18は、板状の固体電解質体の両面に、固体電解質体を挟むように一対の多孔質電極を配置させた公知の検知部(図示外)を有する。固体電解質体は、イットリアまたはカルシアを安定化剤として固溶させたジルコニアから形成され、多孔質電極はPtを主体に形成される。検知電極および基準電極は、検出素子10の後端部12の外表面に配置される4つの電極パッド13(
図1ではそのうちの2つを示す)のうちのそれぞれ一つに接続される。
【0019】
ヒータ部19は、アルミナを主体とする絶縁基板の間に、Ptを主体とする発熱抵抗体パターン(図示外)が挟み込まれて形成される。発熱抵抗体パターンも、両端が、電極パッド13のうちのそれぞれ一つに接続される。また、検出素子10は、排ガスに晒される検知電極の表面を含む先端部11全面が保護層9に覆われる。
【0020】
次に、主体金具50は、排気管に固定するためのネジ部51が外表面に形成された金属製の筒状体であり、軸線O方向に貫通する筒孔59を有する。筒孔59内の先端側には、径方向内側に突出する後方向きのテーパ面として形成された棚部57が設けられる。主体金具50は、筒孔59に挿通された検出素子10の径方向周囲を取り囲んで保持するよう構成される。詳細に、検出素子10は、素子部18の検知部(図示外)が設けられた先端部11が筒孔59の先端から突出され、電極パッド13が設けられた後端部12が筒孔59の後端から突出された状態で、主体金具50内に固定される。
【0021】
主体金具50の筒孔59の内部には、検出素子10の径方向周囲を取り囲む状態で、金属ホルダ55、セラミックホルダ56、充填層53、58、スリーブ20が、この順に、ガスセンサ1の先端側から後端側に向けて積層される。金属ホルダ55は有底筒状に形成され、筒底の縁部分が主体金具50の棚部57に配置されており、筒孔59内で位置決めされる。金属ホルダ55の筒底には空孔が設けられており、その孔に、検出素子10が挿通される。セラミックホルダ56は環状に形成され、環内に検出素子10を挿通させた状態で、金属ホルダ55内の筒底に配置される。また、金属ホルダ55の開口側には、滑石粉末からなる充填層53の一部が圧縮状態で充填される。充填層53によって検出素子10は金属ホルダ55内で固定されるとともに、金属ホルダ55の内面と検出素子10の外面との間の気密性が確保される。
【0022】
充填層58は、筒孔59内で金属ホルダ55よりも後端側に圧縮状態に充填される。これにより、検出素子10は主体金具50内で固定されるとともに、筒孔59の内面と検出素子10の外面との間の気密性が確保される。充填層58の後端側に配置されるスリーブ20は、検出素子10の径方向周囲を取り囲むように配置されるセラミック製の筒状体である。スリーブ20と主体金具50の後端部54との間には、加締リング21が配置される。主体金具50の後端部54は、加締リング21を介してスリーブ20をガスセンサ1の先端側に押し付けるように、加締められる。そして加締めによって、充填層53、58は、スリーブ20と、棚部57に係止された金属ホルダ55内のセラミックホルダ56との間で圧縮される。
【0023】
スリーブ20には、軸線O方向に沿って後端側に向かう一対(
図1ではそのうちの1つを示す)のガイド部23が、筒状部分の後端から突設される。各ガイド部23の内側面には、検出素子10が挿通される溝25が設けられる。溝25は、スリーブ20の筒状部分の孔の内周に連続して形成されており、検出素子10の幅方向(
図1の紙面表裏方向)の両端を案内する。なお、スリーブ20が主体金具50に収容された状態において、検出素子10の後端部12に設けられた4つの電極パッド13は、一対のガイド部23の間から露出される。
【0024】
また、主体金具50の先端側外周には、有底筒状の二重のプロテクタ30(外部プロテクタ31および内部プロテクタ36)が溶接等によって取り付けられる。外部プロテクタ31および内部プロテクタ36は、それぞれ複数の孔部を有する金属(例えば、ステンレスなど)から形成され、検出素子10の先端部11に設けられた検出部(図示外)を覆って保護する。
【0025】
次に、セパレータ60は、円筒形状を有するアルミナ製の筒体である。セパレータ60は、軸線O方向の先端側にスリーブ20のガイド部23ごと検出素子10の後端部12を収容する第一収容部61を有する。第一収容部61はセパレータ60の前向き面に開口する。第一収容部61は、軸線O方向の後端側において4つに分けて設けられた第二収容部65にそれぞれ接続される。各第二収容部65は、セパレータ60の後向き面にそれぞれ開口する。すなわち、セパレータ60は、第一収容部61、第二収容部65を介して軸線O方向に貫通する。また、セパレータ60は、外側面62の後端側に、径方向外向きに突出する鍔部63が形成される。
【0026】
セパレータ60は、検出素子10の電極パッド13との電気的な接続を行う4つの端子金具40(
図1ではそのうちの2つを示す)を収容する。各端子金具40の先端部は第一収容部61内で互いに非接触となるように配置され、それぞれ各電極パッド13に接触する。各端子金具40の後端部はそれぞれ個々の第二収容部65に収容され、互いが絶縁される。また、第二収容部65内で、各端子金具40の後端部は、ガスセンサ1から引き出され、外部機器(図示外)との接続を担う4本のリード線66の芯線にそれぞれ接続される。
【0027】
セパレータ60は、外側面62が筒状の保持部材70に取り囲まれて保持される。保持部材70は、筒状に形成される金属製の部材である。保持部材70は外筒80に固定され、外筒80内で位置決めされる。これにより、保持部材70に保持されるセパレータ60も、外筒80内で位置決めされる。なお、保持部材70の構造の詳細については後述する。
【0028】
外筒80は、金属製で筒状に形成され、先端部が、主体金具50の後端側(
図1における上側)の外周にレーザ溶接などにより接合され、固定される。外筒80の後端部は外径が細められており、後端側の開口にフッ素系ゴム製の栓部材90が嵌め込まれる。栓部材90は外筒80の後端部の加締めによって外筒80に固定されるとともに、後端側の開口を閉塞する。栓部材90には、セパレータ60の第二収容部65から引き出された4本のリード線66を外部に取り出すための4つの挿通孔91(
図1ではそのうちの2つを示す)が形成されている。
【0029】
セパレータ60は、後向き面が栓部材90の前向き面に当接し、鍔部63が、後述する保持部材70の支持部72(
図2参照)に当接する。この状態で、外筒80の外周が加締められることにより、保持部材70が外筒80内で位置決めされて固定される。よってセパレータ60も、鍔部63から後向き面にかけての部分が、保持部材70の支持部72と栓部材90の前向き面とで挟まれて、軸線O方向において外筒80内に位置決めされる。また、後述する保持部材70の把持部73によってセパレータ60の外側面62が弾性的に把持され、セパレータ60は、径方向においても外筒80内に位置決めされる。
【0030】
次に、
図2、
図3を参照し、保持部材70について説明する。なお、
図2、
図3に示す保持部材70は、ガスセンサ1の組み立て過程において、保持部材70内にセパレータ60を挿入した形態のものである。便宜上、保持部材70の軸線方向を一点鎖線Pで示す。また、説明の簡易化のため、セパレータ60は輪郭線のみを二点鎖線で示す。
図2では、ガスセンサ1に組み付けた場合の保持部材70の先端側を紙面下側とし、後端側を紙面上側として説明する。
【0031】
図2、
図3に示す、保持部材70は、筒状に形成される金属製の部材である。保持部材70は、ガスセンサ1の組み立て時に、セパレータ60の外側面62を取り囲む筒状の周壁部71を有する。周壁部71は、外径が、外筒80(
図1参照)の内径よりも若干小さく形成される。また、周壁部71の高さ(軸線P方向の長さ)は、セパレータ60の鍔部63よりも軸線O方向先端側の部位の大きさと同程度となっている。
【0032】
周壁部71の後端側の開口は、径方向内向きに折り返されている。この径方向内向きに延びる部分を支持部72と称する。支持部72はセパレータ60を軸線O方向に支持する部位として機能する。より具体的に、ガスセンサ1を組み立てた場合、支持部72はセパレータ60の鍔部63の前向き面に当接する。前述したように、支持部72は栓部材90の前向き面との間でセパレータ60の鍔部63から後向き面にかけての部分を挟み、セパレータ60を軸線O方向に位置決めする。
【0033】
保持部材70は、周壁部71よりも径方向内側、且つ支持部72よりも軸線P方向の先端側に、把持部73を備える。把持部73は板状をなし、周壁部71の周方向において6カ所に設けられている。把持部73は基端77が後述する案内部74の先端に接続し、先端76が基端77よりも径方向内側へ向けて突出する。把持部73の先端76は、保持部材70にセパレータ60を組み付ける前の状態において、セパレータ60の組み付け後に外側面62が配置される位置よりも径方向内側に位置する。なお、詳細については後述するが、把持部73の基端77は、セパレータ60の組み付け後の外側面62の位置よりも径方向外側に配置される。把持部73は先端76を基端77に対して保持部材70の径方向に撓ませることができ、径方向内向きに付勢力を生ずる。把持部73は、保持部材70にセパレータ60を組み付けた場合に、先端76が外側面62に当接し、セパレータ60を周壁部71内で弾性的に把持する。
【0034】
保持部材70は、さらに、周壁部71よりも径方向内側で、且つ軸線P方向における支持部72と把持部73の間の位置に、案内部74を備える。案内部74は、保持部材70にセパレータ60を組み付ける上で、保持部材70の軸線Pに対するセパレータ60の軸の傾きを矯正するために設けられた部位である。案内部74は軸線P方向に沿って延び、後端が支持部72に接続する。案内部74の先端は把持部73の基端77に接続する。案内部74は周壁部71の周方向の6カ所に設けられる。具体的に、
図3に示すように、軸線Pを中心に、保持部材70を周方向に三等分した領域をA、B、Cとする。案内部74は、領域A〜Cのそれぞれに2つずつ配置される。なお、案内部74は、領域A〜Cのそれぞれに少なくとも1つずつ配置されるように形成されると好ましい。
【0035】
図2に示すように、案内部74は、上記のように軸線P方向における支持部72と把持部73の間の位置に配置される。保持部材70にセパレータ60を組み付けた場合、案内部74は外側面62との間に間隙Gを有する。言い換えると、
図3に示すように、案内部74は、セパレータ60の組み付け後に外側面62が配置される位置よりも、間隙Gの大きさ分、径方向外側に配置される。
【0036】
このような構造を有するガスセンサ1の製造過程では、セパレータ60は、保持部材70の後端側から周壁部71内に挿入される際に、案内部74によってセパレータ60の軸の傾きが矯正された上で、把持部73によって把持される。
図1に示すように、セパレータ60にはリード線66に接続された端子金具40が収容される。セパレータ60を保持する保持部材70は、栓部材90とともに外筒80内に配置される。保持部材70の周壁部71は、外径が、外筒80の内径とほぼ同じ大きさとなっており、保持部材70は、外筒80内に配置された状態で、軸線Pが、ガスセンサ1の軸線Oとほぼ同軸となる。
【0037】
セパレータ60に、栓部材90の挿通孔91を挿通するリード線66に接続された端子金具40が収容され、栓部材90とともに、保持部材70は、外筒80内に配置される。外筒80の外周が径方向内向きに加締められることによって、保持部材70は外筒80内に位置決めされて固定される。保持部材70の周壁部71は外筒80の加締めによって外筒80の内周面に密着した状態で変形する。これにより、保持部材70は、外筒80内での移動が規制される。保持部材70の案内部74および把持部73は、支持部72によって周壁部71よりも径方向内側に配置されており、周壁部71とは接していない。ゆえに周壁部71が加締めによって変形しても案内部74と把持部73は変形しない。よって、案内部74とセパレータ60と間隙Gは維持される。同様に、周壁部71が変形しても、把持部73によるセパレータ60の把持状態は維持される。
【0038】
端子金具40を収容するセパレータ60と保持部材70を介して一体となった外筒80は、検出素子10を保持した主体金具50の後端側からはめ込まれる。その際に、検出素子10の後端部12がセパレータ60の第一収容部61に収容され、検出素子10の電極パッド13と端子金具40とが電気的に接続される。上記のように、保持部材70の軸線Pに対する傾きが矯正された状態で保持部材70に保持されるセパレータ60は、保持部材70の軸線Pがガスセンサ1の軸線Oとほぼ同軸となることから、同様に、軸線Oとほぼ同軸になる。よって、第一収容部61に収容する4つの端子金具40は、検出素子10の4つの電極パッド13に対し、片当たりすることなく略均一に接触し、電気的接続の安定性が確保される。ガスセンサ1は、上記のように主体金具50にはめ込んだ外筒80の先端部の外周を加締め、さらにレーザ溶接することで一体に接合し、完成する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のガスセンサ1は、製造過程でセパレータ60を保持部材70内に配置する際にセパレータ60が軸線Pに対して傾いた状態で保持部材70内に挿入された場合、軸線P方向に延びる案内部74にセパレータ60の外側面62が当接する。しかしながら、セパレータ60が保持部材70内に配置された際に、案内部74とセパレータ60の外側面62との間に間隙Gが設けられているため、セパレータ60が案内部74に案内(挿入)されるにつれて、セパレータ60が保持部材70内にて径方向に移動することができる。このためセパレータ60は軸の傾きが保持部材70の軸線Pに沿うように矯正される。ゆえに、セパレータ60に収容する複数の端子金具40を検出素子10の電極パッド13に接触させて電気的な接続を行う際に、各端子金具40と各電極パッド13との接触状態が偏ることなく均一になされるので、検出素子10と端子金具40の電気的接続の信頼性を確保することができる。
【0040】
また、案内部74によってセパレータ60の軸の傾きを矯正できるので、ガスセンサ1の製造過程において治具を用いて軸が傾かないようにセパレータ60を保持しながら、そのセパレータ60を保持部材70に保持させなくとも済む。たとえば保持部材70へのセパレータ60の保持を手作業で行ったとしても、セパレータ60と保持部材70とを、軸ずれすることなく容易に組み立てることができる。この場合、手順が簡易であり、治具も不要であるので、低コスト化を図ることができる。
【0041】
また、
図2に示すように、案内部74の軸線P方向長さをLとすると、長さLと間隙Gとの関係が、L≧4Gを満たす。案内部74の軸線P方向長さLが間隙の大きさGの4倍以上であれば、案内部74とセパレータ60の外側面62との間隙Gの長さを十分に長く確保できる。ゆえに、セパレータ60の先端側が把持部73に到達するまでに、セパレータ60は十分に径方向の移動を行うことができ、セパレータ60の傾きを確実に矯正することができる。また、把持部73と案内部74を一体に形成するので、形成が容易で生産コストを低減できる。
【0042】
具体的には、セパレータ60を保持部材70の周壁部71内に、軸合わせのための治具を用いずに(たとえば手で)挿入する場合、セパレータ60の軸方向が保持部材70の軸線P方向に沿わず、傾いた状態のまま、押し込まれることがある。後述する実施例1によると、L≧4Gであれば、挿入時にセパレータ60が傾いていても、セパレータ60の外側面62が案内部74を通過する際に案内部74に当接することで、セパレータ60の傾きが確実に矯正される。すなわち、セパレータ60は、軸方向が、保持部材70の軸線P方向に沿うように確実に矯正された状態で、把持部73に押し込まれる。把持部73によって外側面62が把持されたセパレータ60は、その軸が、保持部材70の軸線Pにほぼ一致する。
【0043】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、保持部材70の案内部74は周方向の6カ所に設けたが、3カ所以上に設ければよい。この場合に案内部74は、軸線Pを中心に保持部材70を周方向に三等分した領域(A、B、C)のそれぞれに、少なくとも1つずつ配置されればよい。支持部72は周壁部71の後端側の開口を径方向内向きに折り返し、周方向に一周して形成したが、案内部74の形成位置にあわせて周方向に部分的に形成してもよい。また、案内部74の後端を支持部72に接続したが、案内部74と支持部72とは接続していなくともよい。例えば支持部72とは独立に周壁部71の後端側の開口から径方向内向きに延びる部位を形成し、その部位に、案内部74を接続して、案内部74が周壁部71よりも径方向内側に配置されるようにしてもよい。また、案内部74と把持部73との接続部位の剛性が少なくとも案内部74より低くなるように、例えばその接合部位の厚みを案内部74の厚みより薄くなるようにしてもよい。
【0044】
また、
図4に示す、保持部材170のように、案内部174と把持部173とが別体に形成されてもよい。本実施形態と同様、軸線Pに沿って板状に延びる案内部174は、周壁部171後端側開口を内向きに折り返した支持部172に接続する。把持部173は、周壁部171軸線P方向先端側の部位において矩形の後端側の一辺を基端177として残す切り欠きを形成し、切り欠きの先端側を先端176として径方向内向きに押し込んで形成される。把持部173は案内部174よりも軸線P方向先端側に位置し、把持部173の先端176は、案内部174よりも径方向内側に位置する。このような形態の保持部材170において、案内部174は、本実施形態と同様に、周壁部171の周方向に三等分した領域のそれぞれに、少なくとも1つずつ配置されればよい。把持部173は、周壁部171の周方向において案内部174と同じ位置に形成してもよいし、異なる位置に形成してもよい。
【0045】
このように、把持部173と案内部174とを別体に形成すれば、ガスセンサ1の製造過程において加締めによって周壁部171が径方向内向きに応力を受けて変形し、周壁部171から延びる把持部173がその加締めの影響を受けた場合であっても、案内部174は影響を受けにくく、保持部材170内でのセパレータ60の姿勢を維持することができる。
【0046】
また、
図5に示す、保持部材270のように、案内部274と把持部273とが別体に形成され、案内部274は直接支持部272に接続し、把持部273は延長部278を介して支持部272に接続する形態であってもよい。支持部272は、本実施形態と同様に、周壁部271の後端側開口を内向きに折り返して形成される。案内部274も同様に、軸線Pに沿って板状に延び、支持部272に接続する。把持部273は、延長部278と一体に、軸線P方向に延びる板状に形成され、延長部278が支持部272に接続する。延長部278は軸線P方向において支持部272から案内部274の先端よりも先端側の位置まで延び、把持部273に接続する。把持部273の先端276は、案内部274よりも軸線O方向先端側に位置し、且つ、案内部274よりも径方向内側に位置する。このような形態の保持部材270においても同様に、案内部274は周壁部271の周方向に三等分した領域のそれぞれに、少なくとも1つずつ配置されればよい。また、把持部273は、周壁部271の周方向において案内部274と同じ位置に形成してもよいし、異なる位置に形成してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、本発明に係るガスセンサの一態様として、λ型の酸素センサであるガスセンサ1を例示した。例えば、酸素ガスセンサ、全領域空燃比センサ、NOxセンサやHCセンサなど、検出素子の出力を取り出すための接続端子をセパレータ内に収容し、そのセパレータを外筒内で保持する保持部材を用いるガスセンサに、本発明を適用してもよい。
【実施例1】
【0048】
保持部材70にセパレータ60を組み付けた場合の案内部74と外側面62との間隙Gと、案内部74の軸線P方向長さLとの関係がL≧4Gを満たすとよい点について確認するため、評価試験を行った。評価試験では、案内部74の長さLが1.4mmで間隙Gが0.15mmとなるように作成した保持部材70のサンプル1と、長さLが0.6mmで間隙Gが0.15mmのサンプル2とをそれぞれ10個ずつ用意した。また、比較例として、間隙Gが0.0mm(長さLは0.6mmとした)の保持部材70のサンプル3を10個用意した。サンプル1は、長さLが間隙Gの略9.3倍である。サンプル2は、長さLが間隙Gの4倍である。サンプル3は、間隙G、すなわちクリアランスが0である。
【0049】
別途用意したサンプル個数分のセパレータ60を、治具を用いずに手で各サンプル1〜3に挿入し、把持部73に把持させた後、保持部材70ごと、セパレータ60を先端側から撮影した。撮影画像において、セパレータ60の前向き面におけるセパレータ60の軸位置と、保持部材70の軸線Pの位置とを確認し、両者の位置のずれを測定した。この評価試験の結果を
図6のグラフに示す。
【0050】
図6に示すように、クリアランスのないサンプル3は、軸ずれの大きさが0.17〜0.47mmの範囲でばらつき、サンプル10個の平均は0.34mmであった。一方、L/G=4のサンプル2は、軸ずれの大きさが0.12〜0.27mmの範囲でばらつき、サンプル10個の平均は0.20mmであり、サンプル3と比べて軸ずれの大きさが小さくなった。L/G=9.3のサンプル1は、軸ずれの大きさが0.007〜0.23mmの範囲でばらつき、サンプル10個の平均は0.16mmであり、サンプル3と比べて軸ずれの大きさがさらに小さくなった。
【0051】
保持部材70にセパレータ60を手で挿入する際に、案内部74と外側面62との間にクリアランスがある場合、外側面62が案内部74に密着する部位と密着しない部位とが生ずる。ゆえに、セパレータ60が径方向に移動し、セパレータ60の傾きを変えることができる。これに対し、サンプル3はクリアランスがないため、セパレータ60の傾きの如何にかかわらず、外側面62が全周にわたって案内部74に密着する。セパレータ60は径方向に移動できないため、傾きの矯正を行うことができない。ゆえに、サンプル3の場合、セパレータ60が軸線Pに対し傾いたままの状態で作業者がセパレータ60を押し込んでしまい、把持部73が、傾いたままのセパレータ60を把持してしまう場合がある。
【0052】
案内部74の長さLが間隙Gの4倍の大きさのサンプル2は、案内部74と外側面62との間隙Gの長さが十分に長い。ゆえに、セパレータ60の先端側が把持部73に到達するまでに、セパレータ60は径方向への移動が十分に可能となり、セパレータ60の傾きの矯正を確実に行うことができる。よって傾きが矯正された状態のセパレータ60を作業者が押し込むことで、把持部73は、軸線Pに対するセパレータ60の軸ずれがサンプル3と比べてより小さい状態で、セパレータ60を把持することができる。
【0053】
さらに、案内部74の長さLが間隙Gの9.3倍の大きさのサンプル1も、サンプル2と同様であり、案内部74と外側面62との間隙Gが十分に長い。軸線Pに対するセパレータ60の軸ずれはサンプル2と比べてさらに小さくできるが、その差はサンプル2とサンプル3との差異に比べて小さい。よって、案内部74の長さLとして間隙Gの4倍以上の大きさがあれば、セパレータ60の軸の傾きの矯正により十分な効果があることがわかった。