(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(キトサンコーティング溶液)
本発明のキトサンコーティング溶液は、キトサンと、有機酸と、界面活性剤と、水とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
【0011】
<表面張力>
前記キトサンコーティング溶液のプレート法により測定した表面張力としては、20mN/m〜70mN/mであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25mN/m〜45mN/mであることが好ましい。
前記表面張力は、プレート法により測定される。
前記プレート法による表面張力γは、下記式(1)により求められる。
P=mg+Lγ・cosθ−shρg ・・・ 式(1)
前記式(1)中、Pは「つり合う力」、mは「プレートの質量」、gは「重力加速度」、Lは「プレートの周囲長」、γは「表面張力」、θは「プレートと液体との接触角」、sは「プレートの断面積」、hは「沈む深さ」、ρは「液体の密度」を示す。
前記表面張力の測定に用いる装置としては、プレート法により測定することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自動表面張力計 CBVP−A3型(協和界面科学株式会社製)が挙げられる。
前記表面張力の測定時の温度としては、15℃〜30℃とすることができる。
また、前記表面張力の測定値は、測定開始後、数値の変動が10秒間経過しても無かった時の数値とする。また、前記測定は、複数回行い、その平均値を算出した後、水の表面張力の理論値をもとに補正して、最終的な表面張力とする。
【0012】
<接触角>
前記キトサンコーティング溶液をフィルムとして測定した場合における前記フィルムに対する水の接触角としては、20°〜70°であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20°〜60°であることが好ましい。
前記接触角は、以下のようにして測定される。
シャーレに10gの前記キトサンコーティング溶液を入れ、前記シャーレを60℃の恒温器に入れて乾燥させる。前記乾燥により前記キトサンコーティング溶液は、フィルムとなる。前記フィルムを適当な大きさに切り、スライドガラスに貼り付ける。前記スライドガラスに貼り付けたフィルムに、パスツールピペットで純水を1滴垂らし、その直後に液滴を撮影する。
前記撮影した液滴画像について、Paint Shop Pro 7(コーレル社製)を用いて、前記液滴の範囲を指定し、前記液滴のピクセル数(h:高さ、2r:直径)を計測する。前記計測したピクセル数を下記式(2)に入力することにより、接触角θを求めることができる。
θ=2tan
−1(h/r) ・・・ 式(2)
前記式(2)中、θは「接触角」、hは「液滴の高さ」、rは「液滴の半径」を示す。
前記接触角の測定時の温度としては、15℃〜30℃とすることができる。
【0013】
<キトサン>
前記キトサンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記キトサンの脱アセチル化度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機酸への溶解性やコーティング法への適性の点で、70モル%以上が好ましい。
前記キトサンの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記キトサンの前記キトサンコーティング溶液における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1質量%〜20質量%が挙げられる。
【0014】
<有機酸>
前記有機酸を前記キトサンと共存させることにより、前記キトサンを水に容易に溶解させることができる。
前記有機酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、常圧において十分な揮発性を有する点で、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリクロロ酢酸が好ましい。これらの中でも、経済性、取り扱い性、安全性の点で、酢酸がより好ましい。
前記有機酸の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、キトサンのアミノ基当たり0.8モル当量〜2.0モル当量が好ましい。前記有機酸の使用量が、0.8モル当量未満であると、キトサンの溶解性が低く、2.0モル当量を超えると、酸の除去が効率良く行えず、耐水性を示すキトサン皮膜(キトサン含有層)を得ることが困難となることがある。
【0015】
<界面活性剤>
前記界面活性剤としては、医薬品、食品に使用可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン、サポニン等が挙げられる。これらの中でも、前記有機酸を効率良く除去することができる点で、グリセリン脂肪酸エステルが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記界面活性剤の前記キトサンコーティング溶液における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1質量%〜20質量%が挙げられる。
【0017】
前記界面活性剤のHLB値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5〜18が挙げられる。好ましい界面活性剤のHLB値としては、10〜15である。
【0018】
<水>
前記水の前記キトサンコーティング溶液における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、70質量%〜99質量%が挙げられる。
【0019】
<その他の成分>
前記キトサンコーティング溶液におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、可塑剤、フィラー等が挙げられる。
前記可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、などが挙げられる。これらの中でも、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましい。
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タルク、ベントナイト、炭素数10以上の有機酸の金属塩、などが挙げられる。
前記その他の成分の前記キトサンコーティング溶液における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1質量%〜20質量%が挙げられる。
【0020】
前記キトサンコーティング溶液の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶液温度23℃において、10mPa・s〜1,000mPa・sが挙げられる。
【0021】
(キトサンコーティング溶液の製造方法)
前記キトサンコーティング溶液の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明のキトサンコーティング溶液の製造方法が好ましい。
本発明のキトサンコーティング溶液の製造方法は、キトサン溶解液を調製する工程(以下、「キトサン溶解液調製工程」と称することがある。)と、前記キトサン溶解液に界面活性剤を加え、撹拌する工程(以下、「撹拌工程」と称することがある。)とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0022】
<キトサン溶解液調製工程>
前記キトサン溶解液調製工程は、水に、キトサンと、有機酸とを加え、キトサン溶解液を調製する工程である。
前記水に加えるキトサン及び有機酸は、キトサンを先に加えてもよいし、有機酸を先に加えてもよいし、両者を共に加えてもよい。
前記キトサン溶解液調製工程では、必要に応じて撹拌を行なってもよい。前記撹拌の方法、条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
<撹拌工程>
前記撹拌工程は、前記キトサン溶解液に、界面活性剤を加え、撹拌し、キトサンコーティング溶液とする工程である。
前記撹拌の方法、条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0025】
<用途>
前記キトサンコーティング溶液の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、食品及び医薬品分野向けの経口投与可能な製剤に用いることが好ましい。これらの中でも、後述する大腸ドラッグデリバリーシステム製剤に好適に用いることができる。
【0026】
(大腸ドラッグデリバリーシステム製剤)
本発明の大腸ドラッグデリバリーシステム製剤は、薬物含有固形体と、キトサン含有層と、腸溶性基材含有層とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記大腸ドラッグデリバリーシステム製剤は、前記薬物含有固形体の表面に、キトサン含有層と、腸溶性基材含有層とを、この順に被覆してなる。
【0027】
<薬物含有固形体>
前記薬物含有固形体は、薬物を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記薬物含有固形体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、顆粒、錠剤等が挙げられる。
前記薬物含有固形体の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0028】
−薬物−
前記薬物としては、生理活性があり大腸内で吸収が可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インスリンやカルシトニンなどの胃液や腸内プロテアーゼにより容易に分解される生理活性ポリペプチドホルモン、過敏性大腸炎に有効な5−アミノサリチル酸などの抗炎症薬、セファマイシンなどのセファ系抗生物質、等が挙げられる。
前記薬物の前記薬物含有固形体における含有量としては、特に制限はなく、薬物の種類に応じて適宜選択することができる。
【0029】
−その他の成分−
前記薬物含有固形体におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、糖、糖アルコール、高分子化合物、無機化合物、ワックス、炭素数10以上の有機酸の金属塩、水不溶性成分等が挙げられる。
【0030】
前記糖としては、例えば、蔗糖、乳糖等が挙げられる。
前記糖アルコールとしては、例えば、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等が挙げられる。
前記高分子化合物としては、例えば、セルロース誘導体、デンプン類、合成高分子等が挙げられる。前記セルロース誘導体としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、エチルセルロース、等が挙げられる。前記デンプン類としては、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプンなどのほか、カルボキシメチルスターチナトリウムなどの誘導体等が挙げられる。前記合成高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポビドン等が挙げられる。
前記無機化合物としては、例えば、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
前記ワックスとしては、例えば、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油、硬化大豆油、硬化綿実油等が挙げられる。
前記炭素数10以上の有機酸の金属塩における炭素数10以上の有機酸としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。前記炭素数10以上の有機酸の金属塩における金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等が挙げられる。
【0031】
前記水不溶性成分としては、20℃の水への溶解性が「1g/10,000mL以下」であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高分子化合物、無機化合物、ワックス、炭素数10以上の有機酸の金属塩等が挙げられる。前記水不溶性成分は、ある程度水を吸水し、膨潤する成分であってもよい。
前記水不溶性成分は、水に溶解しないので、濃度勾配による製剤内から製剤外への溶出の流れが増長されない。そのため、たとえ水不溶性成分が吸水して膨張したとしても、薬物が製剤外へ溶出することはなく、また、水不溶性成分の膨張もキトサン含有層を破壊する前には飽和してしまうので、製剤が崩壊してしまうことがない。
前記水不溶性成分は、高分子化合物、及び無機化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましく、更にワックス、及び炭素数10以上の有機酸の金属塩を含有することがより好ましい。
【0032】
前記水不溶性成分である高分子化合物としては、例えば、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、トウモロコシデンプン、クロスポビドン等が挙げられる。これらの中でも、大腸に送達した際に薬物含有固形体の崩壊を促進させる効果がある点で、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、トウモロコシデンプン、クロスポビドンが好ましい。
前記水不溶性成分である無機化合物としては、例えば、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウムが好ましく、成形性や流動性の点で、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウムが、より好ましい。
前記水不溶性成分であるワックスとしては、例えば、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油、硬化大豆油、硬化綿実油等が挙げられる。これらの中でも、打錠を行う際に滑沢剤としても作用する点で、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油が好ましい。
前記水不溶性成分である炭素数10以上の有機酸の金属塩における炭素数10以上の有機酸としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。前記炭素数10以上の有機酸の金属塩における金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、打錠を行う際に滑沢剤としても作用する点で、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムが好ましい。
【0033】
前記添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記添加剤の中でも、薄いキトサン含有層でも、大腸到達前の崩壊の抑制、及び、低分子量の薬物であっても小腸での溶出を抑制することができる点で、前記水不溶性成分を用いることが好ましい。
【0034】
前記その他の成分の前記薬物含有固形体における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%以上99質量%以下が好ましく、15質量%以上99質量%以下がより好ましく、20質量%以上99質量%以下が特に好ましい。前記薬物含有固形体における水不溶性成分の含有量が、10質量%未満であると、水溶解性成分が多いために薬物含有固形体への水の浸入が大きくなり吸水率が上昇する場合がある。
【0035】
<キトサン含有層(キトサン皮膜)>
前記キトサン含有層は、本発明の前記キトサンコーティング溶液を用いて形成される。
【0036】
前記キトサン含有層の厚みとしては、特に制限はなく、前記薬物含有固形体の形状や質量に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記薬物含有固形体が直径8mmの錠剤である場合、その質量に対して、キトサンの質量が1.0質量%〜10.0質量%に相当する厚みが好ましく、1.5質量%〜6.0質量%に相当する厚みがより好ましく、1.5質量%〜3.0質量%に相当する厚みが特に好ましい。前記厚みが、1.0質量%に相当する厚み未満であると、キトサン含有層が十分な厚みとなっていないため、小腸内において腸溶性基剤含有層が崩壊した後に、薬物含有固形体が大腸へ送達する前にキトサン含有層が崩壊してしまう場合があり、10.0質量%に相当する厚みを超えると、薬物含有固形体の表面にキトサン含有層を形成するためにコーティングを行う際、コーティング時間が長期化する恐れがある。一方、前記厚みが前記のより好ましい範囲内であると、薬物含有固形体の大腸への送達が可能となり、必要なキトサン含有層を得るためのコーティング時間の短縮が図れる点で、有利である。
【0037】
前記キトサン含有層におけるキトサンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30質量%〜95質量%が好ましい。前記キトサンの含有量が、30質量%未満であると、得られるキトサン皮膜の強度が充分でなく、実用的でなく、95質量%を超えると、有機酸残存量の低下が充分でなかったり、キトサン皮膜の耐水性が低くなったりすることがある。一方、前記キトサンの含有量が前記好ましい範囲内であると、キトサン含有層の厚みを薄くすることができる点で、有利である。
【0038】
前記キトサン皮膜における前記界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、キトサンの質量に対して、5質量%〜200質量%が、有機酸の残存量を低下させることができる点で、好ましい。前記界面活性剤の含有量が、5質量%未満であると、有機酸残存量の低下が充分でなく、キトサン皮膜の耐水性が低くなることがあり、200質量%を超えると、得られるキトサン皮膜の強度が充分ではなく、実用的でない。
【0039】
また、前記界面活性剤により、キトサンコーティング溶液をキトサン皮膜形成前、又は形成時に強力に攪拌することにより直径数μm程度の大きさの泡を安定して含ませることができる。この時、泡を含むことでキトサンコーティング溶液の体積は増大するが、この泡を含む溶液体積を、元の泡を入れる前の溶液体積で除した値を発泡倍率とし、発泡倍率が1.0倍を超えて4.0倍以下の範囲にある時、更に酸の残存量の低下が認められ、より良い耐水性や経時安定性を有するキトサン皮膜が得られる。なお、発泡倍率が4.0倍を超えることは難しく現実的でない。この泡は、キトサン皮膜形成時にもミスト中に含まれることから、乾燥時の表面積が増大し有機酸を非常に良く揮発する。よって、キトサン皮膜中の有機酸残存量を、泡を含まない場合よりも更に低減することができる。
【0040】
<腸溶性基材含有層>
前記腸溶性基材含有層は、腸溶性基材を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記腸溶性基材含有層は、前記キトサン含有層表面に腸溶性基材を少なくとも含む腸溶性基材含有溶液を、塗布したり、噴霧したりする等により、形成することができる。
【0041】
−腸溶性基材含有溶液−
前記腸溶性基材含有溶液は、少なくとも腸溶性基材を含有し、必要に応じてその他の成分を含有する。
【0042】
−−腸溶性基材−−
前記腸溶性基材は、胃で溶解せず、小腸で溶解する皮膜を形成する成分である。
前記腸溶性基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、メタクリル酸コポリマー、ヒプロメロースフタル酸エステル(HPMCP)、水性シェラック等が挙げられる。これらの中でも、CMECやHPMCPが、薬物含有固形体内部への水の浸入を最も防ぐことができる点で、好ましい。
【0043】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水不溶性の添加剤を含有することが好ましい。
製剤は、小腸内で腸溶性基材含有層が溶解した後、キトサン含有層を経由して薬物含有固形体に水分が浸入することを述べたが、腸溶性基材含有層が溶解する前でも、ある程度の水分は腸溶性基材含有層を経由してキトサン含有層に浸入してくる。よって、腸溶性基材含有層をより疎水化したり、水不溶性成分を含有させたりすることにより、腸溶性基材含有層を経由してくる水分量を抑えることができるため、キトサン含有層を経由した薬物含有固形体への水の浸入を抑制することができる。
前記水不溶性の添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タルク、ベントナイト、炭素数10以上の有機酸の金属塩等が挙げられる。これらの中でも、ベントナイトが、腸溶性基材含有溶液への分散が容易であるという点で、好ましい。
【0044】
前記腸溶性基材含有溶液の粘度としては、特に制限はなく、コーティング装置に応じて適宜選択することができるが、溶液温度23℃において、10mPa・s〜1,000mPa・sが好ましい。
前記腸溶性基材含有溶液における前記腸溶性基材の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%〜20質量%が好ましい。
【0045】
前記腸溶性基材含有層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記腸溶性基材含有層における前記腸溶性基材、及び前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0046】
<その他の成分>
前記大腸ドラッグデリバリーシステム製剤における前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
(大腸ドラッグデリバリーシステム製剤の製造方法)
前記大腸ドラッグデリバリーシステム製剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の大腸ドラッグデリバリーシステム製剤の製造方法が好ましい。
本発明の大腸ドラッグデリバリーシステム製剤の製造方法は、薬物含有固形体を調製する工程(以下、「薬物含有固形体調製工程」と称することがある。)と、キトサン含有層を形成する工程(以下、「キトサン含有層形成工程」と称することがある。)と、腸溶性基材含有層を形成する工程(以下、「腸溶性基材含有層形成工程」と称することがある。)とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0048】
<薬物含有固形体調製工程>
前記薬物含有固形体調製工程は、薬物含有固形体を調製する工程である。
前記薬物含有固形体を調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記薬物と、前記添加剤とを含有する粉体混合物を造粒し、顆粒とする方法、前記粉体混合物及び前記造粒した顆粒の少なくともいずれかを打錠し、錠剤とする方法等が挙げられる。
【0049】
−造粒−
前記粉体混合物を造粒し、顆粒とする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、処方された各粉体成分を混合機により充分混合し、次に湿式造粒機、又は乾式造粒機を用いて造粒して顆粒とする方法が挙げられる。
前記混合機としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、V型混合機等が挙げられる。
前記湿式造粒機としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、攪拌造粒機(グラニュマイスト:フロイント産業株式会社製)、流動層造粒コーティング装置(フローコーター:フロイント産業株式会社製)、遠心転動造粒コーティング装置(CFグラニュレーター、グラニュレックス:フロイント産業株式会社製)、複合型造粒コーティング装置(スパイラフロー:フロイント産業株式会社製)等が挙げられる。前記湿式造粒を用いて造粒する際のバインダーとしては、一般的に湿式造粒に用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて使用することができる。
前記乾式造粒機としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、ローラーコンパクター(フロイント産業株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
−打錠−
前記粉体混合物及び前記造粒した顆粒の少なくともいずれかを打錠し、錠剤とする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記打錠は、一般的に使用される打錠機を用い、ホッパーに前記粉体混合物及び前記造粒した顆粒の少なくともいずれかを投入して行う。打錠を行う場合は、処方中に滑沢剤を含有させると、打錠機への付着が抑制される点で、好ましい。
前記滑沢剤としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができる。
【0051】
<キトサン含有層形成工程>
前記キトサン含有層形成工程は、前記薬物含有固形体の表面にキトサン含有層を形成する工程である。
前記キトサン含有層形成工程では、前記本発明のキトサンコーティング溶液を用いる。
前記キトサン含有層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記薬物含有固形体の表面に前記キトサンコーティング溶液を、塗布する方法、噴霧する方法等が挙げられる。
前記塗布する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
前記噴霧する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動層造粒コーティング装置(フローコーター:フロイント産業株式会社製)、遠心転動造粒コーティング装置(CFグラニュレーター、グラニュレックス:フロイント産業株式会社製)、複合型造粒コーティング装置(スパイラフロー:フロイント産業株式会社製)、糖衣フィルムコーティング装置(ハイコーター、アクアコーター:フロイント産業株式会社製)などの各種コーティング装置を用いて、前記薬物含有固形体を装置内で流動させ、乾燥空気を給気させつつスプレーなどを用いて前記薬物含有固形物表面に前記キトサンコーティング溶液を噴霧し、コーティングする方法が挙げられる。
前記キトサン含有層の形成(コーティング)における給気温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜95℃が好ましい。前記給気温度が、40℃未満であると、有機酸の除去が充分ではないため、キトサン皮膜に耐水性が付与できず、100℃を超えると、キトサン皮膜に着色や変形などの外観上の問題が生じるため、好ましくない。また、水系のコーティングで給気温度が100℃を超えることは一般的ではなく、コーティング装置にかかる負担も大きくなるため、現実的ではない。
前記キトサン含有層の形成(コーティング)における排気温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、30℃〜90℃が挙げられる。
【0052】
<腸溶性基材含有層形成工程>
前記腸溶性基材含有層形成工程は、前記キトサン含有層の表面に腸溶性基材含有層を形成する工程である。
前記腸溶性基材含有層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記キトサン含有層の表面に前記腸溶性基材含有溶液を、塗布する方法、噴霧する方法等が挙げられる。
前記塗布する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
前記噴霧する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動層造粒コーティング装置(フローコーター:フロイント産業株式会社製)、遠心転動造粒コーティング装置(CFグラニュレーター、グラニュレックス:フロイント産業株式会社製)、複合型造粒コーティング装置(スパイラフロー:フロイント産業株式会社製)、糖衣フィルムコーティング装置(ハイコーター、アクアコーター:フロイント産業株式会社製)等の各種コーティング装置を用いて、前記キトサン含有層が形成された薬物含有固形体を装置内で流動させ、乾燥空気を給気させつつスプレー等を用いて前記キトサン含有層表面に前記腸溶性基材含有溶液を噴霧し、コーティングする方法が挙げられる。
前記腸溶性基材含有層の形成(コーティング)における給気温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜95℃が好ましい。前記給気温度が、40℃未満であると、乾燥効率が低いことから送液速度を低く抑えなければならず、コーティング時間が長期化することがある。
前記腸溶性基材含有層の形成(コーティング)における排気温度としては、30℃〜90℃であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0053】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
(実施例A−1)
95.26gの精製水に、脱アセチル化度が81モル%のキトサン(片倉チッカリン社製)2.13gと、0.61gの酢酸とを加え、キトサン溶解液を調製した。前記キトサン溶解液に、1.00gのグリセリンと、界面活性剤であるグリセリン脂肪酸エステル(HLB8.4;SY グリスター MS−3S、阪本薬品工業株式会社製)1.00gとを加え、200rpmで攪拌し、100.00gのキトサンコーティング溶液1を得た。
【0056】
<評価1:表面張力>
前記キトサンコーティング溶液1の表面張力を、自動表面張力計 CBVP−A3型(協和界面科学株式会社製)用いてプレート法により測定した。結果を表1に示す。
前記表面張力測定は、27℃で3回行った。表面張力の数値は、測定開始後、数値の変動が10秒間経過しても無かった時の数値とした。前記3回の測定の平均値を算出した後、水の表面張力の理論値をもとに補正して、最終的な表面張力とした。
【0057】
<評価2:接触角>
以下のようにして、前記キトサンコーティング溶液1をフィルムとし、前記フィルムに対する水の接触角を測定した。結果を表1に示す。
10gの前記キトサンコーティング溶液1をシャーレに入れ、前記シャーレを60℃の恒温器に入れて乾燥させ、キトサンコーティング溶液1のフィルムを作製した。次いで、前記フィルムを適当な大きさに切り、スライドガラスに貼り付け、前記スライドガラスに貼り付けたフィルムに、パスツールピペットで純水を1滴垂らし、その直後に液滴を撮影した。撮影した液滴画像を
図1に示す。
前記撮影した液滴画像について、Paint Shop Pro 7(コーレル社製)を用いて、前記液滴の範囲を指定し、前記液滴のピクセル数(h:高さ、2r:直径)を計測した。前記計測したピクセル数を下記式(2)に入力することにより、接触角θを求めた。
θ=2tan
−1(h/r) ・・・ 式(2)
前記式(2)中、θは「接触角」、hは「液滴の高さ」、rは「液滴の半径」を示す。
前記接触角の測定時の温度は、27℃とした。
なお、前記液滴の撮影は2回行い、接触角の値が大きかったほうを採用した。
【0058】
(実施例A−2)
実施例A−1において、界面活性剤をグリセリン脂肪酸エステル(HLB11.6;SY グリスター MS−5S、阪本薬品工業株式会社製)に代えた以外は、実施例A−1と同様にして、キトサンコーティング溶液2を得た。前記キトサンコーティング溶液2について、前記実施例A−1と同様にして、表面張力、及び接触角を測定した。結果を表1に示す。また、接触角の評価における撮影した液滴画像を
図2に示す。
【0059】
(実施例A−3)
実施例A−1において、界面活性剤をグリセリン脂肪酸エステル(HLB12.9;SY グリスター MO−7S、阪本薬品工業株式会社製)に代えた以外は、実施例A−1と同様にして、キトサンコーティング溶液3を得た。前記キトサンコーティング溶液3について、前記実施例A−1と同様にして、表面張力、及び接触角を測定した。結果を表1に示す。また、接触角の評価における撮影した液滴画像を
図3に示す。
【0060】
(実施例A−4)
実施例A−1において、界面活性剤をグリセリン脂肪酸エステル(HLB12;ポエム J−0081HV、理研ビタミン株式会社製)に代えた以外は、実施例A−1と同様にして、キトサンコーティング溶液4を得た。前記キトサンコーティング溶液4について、前記実施例A−1と同様にして、表面張力、及び接触角を測定した。結果を表1に示す。また、接触角の評価における撮影した液滴画像を
図4に示す。
【0061】
(実施例A−5)
実施例A−1において、界面活性剤をグリセリン脂肪酸エステル(HLB16;リョートー(登録商標)ポリグリエステル L−10D、三菱化学フーズ株式会社製)に代えた以外は、実施例A−1と同様にして、キトサンコーティング溶液5を得た。前記キトサンコーティング溶液5について、前記実施例A−1と同様にして、表面張力、及び接触角を測定した。結果を表1に示す。また、接触角の評価における撮影した液滴画像を
図5に示す。
【0062】
(実施例A−6)
実施例A−1において、界面活性剤をショ糖脂肪酸エステル(HLB11;リョートー(登録商標)シュガーエステル S1170、三菱化学フーズ株式会社製)に代えた以外は、実施例A−1と同様にして、キトサンコーティング溶液6を得た。前記キトサンコーティング溶液6について、前記実施例A−1と同様にして、表面張力、及び接触角を測定した。結果を表1に示す。また、接触角の評価における撮影した液滴画像を
図6に示す。
【0063】
(比較例A−1)
実施例A−1において、界面活性剤を用いず、グリセリンの量を1.00gから2.00gに変えた以外は、実施例A−1と同様にして、キトサンコーティング溶液7を得た。前記キトサンコーティング溶液7について、前記実施例A−1と同様にして、表面張力、及び接触角を測定した。結果を表1に示す。また、接触角の評価における撮影した液滴画像を
図7に示す。
【0064】
(比較例A−2)
実施例A−1において、界面活性剤を用いず、プロピレングリコールを1.00g用いた以外は、実施例A−1と同様にして、キトサンコーティング溶液8を得た。前記キトサンコーティング溶液8について、前記実施例A−1と同様にして、表面張力、及び接触角を測定した。結果を表1に示す。また、接触角の評価における撮影した液滴画像を
図8に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
(実施例B−1)
<薬物含有固形体>
薬物としてエテンザミド(エーピーアイコーポレーション社製)を5.0質量部、リン酸水素カルシウムを94.0質量部、ステアリン酸マグネシウムを1.0質量部の処方の粉体混合物を調製し、単発打錠機(FY−SS−7、富士薬品機械)を用いて、200mg/錠、直径8mm、10R、錠剤硬度60N以上の素錠を作製し、薬物含有固形体を得た。
【0067】
<キトサン含有層>
前記実施例A−1で得られたキトサンコーティング溶液1を、フィルムコーティング装置ハイコーターHC−LABO 20型パン(フロイント産業株式会社製)を用いて、前記薬物含有固形体にフィルムコーティングし、キトサンの質量が薬物含有固形体の質量に対して、1.5%に相当する厚みのキトサン含有層を形成した。
なお、コーティング条件は、以下の通りである。
−−コーティング条件−−
仕込量:300g
液速:2.7g/分間〜3.0g/分間
給気温度:85℃
風量:0.5m
3/分間
品温:60℃
【0068】
<腸溶性基材含有層>
−腸溶性基材含有溶液−
腸溶性基材として、HPMCP(HP−55、信越化学工業)を8質量%の濃度となるように80質量%エタノール水溶液に溶解し、腸溶性基材含有溶液を得た。
【0069】
−腸溶性基材含有層の形成−
前記腸溶性基材含有溶液を、フィルムコーティング装置ハイコーターHC−LABO 20型パン(フロイント産業株式会社製)を用いて、前記キトサン含有層を形成した錠剤にフィルムコーティングし、腸溶性基材含有層の質量がキトサン含有層を有する錠剤の質量に対して、8%に相当する厚みの錠剤を得た。
なお、コーティング条件は、以下の通りである。
−−コーティング条件−−
仕込量:300g
液速:3.5g/分間
給気温度:58℃〜60℃
風量:0.5m
3/分間
品温:42℃〜45℃
以上により、前記薬物含有固形体の表面に、キトサン含有層と、腸溶性基材含有層とを、この順に被覆してなる大腸ドラッグデリバリーシステム製剤1を得た。
【0070】
<評価3:崩壊試験>
前記大腸ドラッグデリバリーシステム製剤1について、日本薬局方崩壊試験法に準じて試験を行った。具体的には、崩壊試験第1液へ2時間浸漬し(ディスク無)、次いで崩壊試験第2液へ3時間浸漬し(ディスク有)、その後、大腸想定液へ1時間浸漬した(ディスク有)。前記大腸想定液には、pH3.5の酢酸緩衝液(Michaelisの緩衝液)を使用した。
前記試験の結果、前記大腸ドラッグデリバリー製剤1は、前記崩壊試験第1液及び第2液で崩壊することがなく、前記大腸想定液で崩壊されることが確認された。
【0071】
(実施例B−2)
前記実施例B−1において、キトサンコーティング溶液1を用いていた点を、実施例A−2で得られたキトサンコーティング溶液2に代えた以外は、実施例B−1と同様にして、大腸ドラッグデリバリーシステム製剤2を得た。
前記大腸ドラッグデリバリーシステム製剤2について、前記実施例B−1と同様にして、崩壊試験を行った。
前記試験の結果、前記大腸ドラッグデリバリー製剤2は、前記崩壊試験第1液及び第2液で崩壊することがなく、前記大腸想定液で崩壊されることが確認された。
【0072】
(実施例B−3)
前記実施例B−1において、キトサンコーティング溶液1を用いていた点を、実施例A−3で得られたキトサンコーティング溶液3に代えた以外は、実施例B−1と同様にして、大腸ドラッグデリバリーシステム製剤3を得た。
前記大腸ドラッグデリバリーシステム製剤3について、前記実施例B−1と同様にして、崩壊試験を行った。
前記試験の結果、前記大腸ドラッグデリバリー製剤3は、前記崩壊試験第1液及び第2液で崩壊することがなく、前記大腸想定液で崩壊されることが確認された。
【0073】
(実施例B−4)
前記実施例B−1において、キトサンコーティング溶液1を用いていた点を、実施例A−4で得られたキトサンコーティング溶液4に代えた以外は、実施例B−1と同様にして、大腸ドラッグデリバリーシステム製剤4を得た。
前記大腸ドラッグデリバリーシステム製剤4について、前記実施例B−1と同様にして、崩壊試験を行った。
前記試験の結果、前記大腸ドラッグデリバリー製剤4は、前記崩壊試験第1液及び第2液で崩壊することがなく、前記大腸想定液で崩壊されることが確認された。
【0074】
(実施例B−5)
前記実施例B−1において、キトサンコーティング溶液1を用いていた点を、実施例A−5で得られたキトサンコーティング溶液5に代えた以外は、実施例B−1と同様にして、大腸ドラッグデリバリーシステム製剤5を得た。
前記大腸ドラッグデリバリーシステム製剤5について、前記実施例B−1と同様にして、崩壊試験を行った。
前記試験の結果、前記大腸ドラッグデリバリー製剤5は、前記崩壊試験第1液及び第2液で崩壊することがなく、前記大腸想定液で崩壊されることが確認された。
【0075】
(実施例B−6)
前記実施例B−1において、キトサンコーティング溶液1を用いていた点を、実施例A−6で得られたキトサンコーティング溶液6に代えた以外は、実施例B−1と同様にして、大腸ドラッグデリバリーシステム製剤6を得た。
前記大腸ドラッグデリバリーシステム製剤6について、前記実施例B−1と同様にして、崩壊試験を行った。
前記試験の結果、前記大腸ドラッグデリバリー製剤6は、前記崩壊試験第1液及び第2液で崩壊することがなく、前記大腸想定液で崩壊されることが確認された。
【0076】
(比較例B−1)
前記実施例B−1において、キトサンコーティング溶液1を用いていた点を、比較例A−1で得られたキトサンコーティング溶液7に代えた以外は、実施例B−1と同様にして、大腸ドラッグデリバリーシステム製剤7を得た。
前記大腸ドラッグデリバリーシステム製剤7について、前記実施例B−1と同様にして、崩壊試験を行った。
前記試験の結果、前記大腸ドラッグデリバリー製剤7は、前記崩壊試験第2液で崩壊してしまった。
【0077】
(比較例B−2)
前記実施例B−1において、キトサンコーティング溶液1を用いていた点を、比較例A−2で得られたキトサンコーティング溶液8に代えた以外は、実施例B−1と同様にして、大腸ドラッグデリバリーシステム製剤8を得た。
前記大腸ドラッグデリバリーシステム製剤8について、前記実施例B−1と同様にして、崩壊試験を行った。
前記試験の結果、前記大腸ドラッグデリバリー製剤8は、前記崩壊試験第2液で崩壊してしまった。
【0078】
上記実施例A−1からA−6、及びB−1からB−6、並びに比較例A−1からA−2、及びB−1からB−2の結果から、本発明の所定の表面張力、及び接触角を有するキトサンコーティング溶液を用いた大腸ドラッグデリバリー製剤は、前記崩壊試験第1液及び第2液で崩壊することがなく、前記大腸想定液で崩壊されることが確認されたので、本発明のキトサンコーティング溶液は、薬物等を含有する固形体に対するコーティング性能に優れ、かつ、キトサン皮膜を形成した後、腸溶性基材を含有するコーティング溶液等により、容易にコーティングされることができ、ムラが少なく、高品質のキトサン皮膜を効率よく形成できることが示された。