(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可動プラテンは、前記可動金型が取り付けられる金型取付部と、前記長リンクの一端部又は前記短リンクの一端部が回動自在に取り付けられるリンク取付部と、前記金型取付部と前記リンク取付部との型開閉方向と平行な方向における相対位置を調整可能に前記金型取付部と前記リンク取付部とを連結する調整機構部とを有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の射出成形機。
前記固定プラテンは、前記固定金型が取り付けられる金型取付部と、前記長リンクの一端部又は前記短リンクの一端部が回動自在に取り付けられるリンク取付部と、前記金型取付部と前記リンク取付部との型開閉方向と平行な方向における相対位置を調整可能に前記金型取付部と前記リンク取付部とを連結する調整機構部とを有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の射出成形機。
前記回動機構は、前記リンク支持部に一端部が回動自在に支持される第3リンクと、該第3リンクの他端部を回動自在に支持し、型開閉方向と平行に移動自在なスライダと、該スライダを移動させるスライダ駆動源とを有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の射出成形機。
前記回動機構は、前記リンク支持部に一端部が回動自在に支持される伸縮アクチュエータと、該伸縮アクチュエータの他端部を回動自在に支持する固定側支持部とを有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の射出成形機。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。また、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方として説明する。各図面において、X方向は型開閉方向と平行な方向、Y方向は短リンク21や長リンク22等の回動軸方向と平行な方向、Z方向はX方向及びY方向と互いに垂直な方向である。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態による射出成形機の型開き完了時の状態を示す図である。
図2は、第1実施形態による射出成形機の型閉じ完了時の状態を示す図である。
図3は、第1実施形態による射出成形機の型締め完了時の状態を示す図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5は、
図3の射出成形機を前方から見た図である。尚、
図5において便宜上、射出装置の図示を省略する。
図6は、型締め完了時に長リンクと短リンクとの連結を解除した場合の長リンクと短リンクとの関係を示す図である。
【0012】
射出成形機10は、
図1等に示すように、フレーム11と、フレーム11に固定された固定プラテン12と、フレーム11に固定されたガイドGdと、ガイドGdに沿って移動自在な可動プラテン13とを備える。固定プラテン12における可動プラテン13との対向面に固定金型14が、可動プラテン13における固定プラテン12との対向面に可動金型15が取り付けられる。固定金型14と可動金型15とで金型装置16が構成される。可動プラテン13が固定プラテン12に対して接離することで、金型装置16の型閉じ、型締め、及び型開きが行われる。
【0013】
射出成形機10は、固定プラテン12に対して一端部が回動自在に支持される短リンク21と、可動プラテン13に対して一端部が回動自在に支持され、短リンク21よりも長い長リンク22と、短リンク21の他端部と長リンク22の他端部とを回動自在に支持するリンク支持部23とをさらに備える。短リンク21の幅と、長リンク22の幅とは、
図3等に示すように同じでもよいし、異なってもよい。
【0014】
短リンク21は、固定側ピン24を介して固定プラテン12に支持される。短リンク21は、固定側ピン24の軸部24aを中心に回動自在である。固定側ピン24の軸部24aは、
図4に示すように固定プラテン12のピン孔及び短リンク21のピン孔に回動自在に挿通される。固定側ピン24の軸部24aの先端部にはねじ部が形成される。このねじ部に螺合される固定側ナット25と、固定側ピン24の頭部24bとで、短リンク21の抜け止めがなされ、短リンク21の回動軸方向(Y方向)への移動が制限されている。
【0015】
尚、本実施形態では、固定側ピン24の軸部24aが、短リンク21及び固定プラテン12と別に設けられるが、短リンク21の一部又は固定プラテン12の一部として設けられてもよい。
【0016】
長リンク22は、可動側ピン26を介して可動プラテン13に支持される。長リンク22は、可動側ピン26の軸部26aを中心に回動自在である。可動側ピン26の軸部26aは、
図4に示すように可動プラテン13のピン孔及び長リンク22のピン孔に回動自在に挿通される。可動側ピン26の軸部26aの先端部にはねじ部が形成される。このねじ部に螺合される可動側ナット27と、可動側ピン26の頭部26bとで、長リンク22の抜け止めがなされ、長リンク22の回動軸方向(Y方向)への移動が制限されている。
【0017】
可動側ピン26は、可動プラテン13と共に型開閉方向に移動自在である。可動側ピン26の移動経路と同一平面上に、固定側ピン24が配置される。
図3に示すように短リンク21と長リンク22とがY方向視で略一直線上に重なるとき、短リンク21及び長リンク22が型開閉方向と略平行になる。
【0018】
尚、本実施形態では、可動側ピン26の軸部26aが、長リンク22及び可動プラテン13と別に設けられるが、長リンク22の一部又は可動プラテン13の一部として設けられてもよい。
【0019】
長リンク22は、
図4及び
図5に示すように、短リンク21よりも、固定金型14及び可動金型15の中心線から遠い位置に配置される。長リンク22が可動側ピン26を中心に回動するとき、固定側ピン24と接触するのを防止することができる。
【0020】
リンク支持部23は、例えばリンクピン28で構成される。リンクピン28の軸部28aは、
図4に示すように短リンク21のピン孔及び長リンク22のピン孔に回動自在に挿通される。短リンク21と、長リンク22とは、リンクピン28の軸部28aを中心に相対回動自在である。
【0021】
尚、本実施形態では、リンクピン28の軸部28aが、短リンク21及び長リンク22と別に設けられるが、短リンク21の一部又は長リンク22の一部として設けられてもよい。また、リンクピン28の軸部28aが、後述の第3リンク31の一部として設けられてもよい。
【0022】
尚、短リンク21と長リンク22との配置は逆であってもよく、短リンク21の一端部が可動側ピン26を介して可動プラテン13に対して回動自在に支持され、長リンク22の一端部が固定側ピン24を介して固定プラテン12に対して回動自在に支持されてもよい。この場合、型締め完了時にY方向視で、短リンク21及び長リンク22の固定側ピン24から前方に突き出す部分が短く、固定金型14の前方に設置される射出装置移動装置の設計の自由度が高い。射出装置移動装置は、固定金型14に対して射出装置40を接離させる装置である。一方、
図1に示す配置の場合、型開き完了時に可動プラテン13に対して一端部が回動自在に支持される長リンク22の長手方向とX方向とのなす角が小さい。そのため、型開き開始時に長リンク22から可動プラテン13に加えられる推進力が大きなX方向成分を有し、可動プラテン13の始動が円滑に行われる。
【0023】
短リンク21及び長リンク22は、型閉じ完了時に、長手方向にほとんど伸縮しておらず、自然長となっている。型閉じ完了時に、
図2に示すように、長リンク22の両端部の回動中心間の距離L1(以下、「長リンクの長さL1」という)は、短リンク21の両端部の回動中心間の距離L2(以下、「短リンクの長さL2」という)よりも長い(L2<L1)。また、型閉じ完了時に、長リンク22の長さL1は、固定側ピン24の中心と可動側ピン26の中心との間の距離L3(以下、「プラテン間距離L3」という)よりも長い(L3<L1)。さらに、型閉じ完了時に、長リンク22の長さL1は、短リンク21の長さL2と、プラテン間距離L3との和よりも僅かに短い(L1<L2+L3)。これにより、詳しくは後述するが、型締め完了時に、短リンク21と長リンク22とがY方向視で略一直線上に重なり、短リンク21に圧縮力が作用し、長リンク22に引張力が作用する。
【0024】
射出成形機10は、固定側ピン24の軸部24aを中心にリンク支持部23を回動させる回動機構30をさらに備える。回動機構30は、例えば
図1等に示すように、リンク支持部23に対して一端部が回動自在に支持される第3リンク31と、第3リンク31の他端部が回動自在に支持され、型開閉方向と平行に移動自在なスライダ32と、スライダ32を移動させるスライダ駆動源としての型締めモータ33とを有する。
【0025】
第3リンク31は、リンクピン28の軸部28aを中心に回動自在である。リンクピン28の軸部28aは、
図4に示すように第3リンク31のピン孔に回動自在に挿通される。リンクピン28の軸部28aの先端部にはねじ部が形成される。このねじ部に螺合されるリンク支持ナット29と、リンクピン28の頭部28bとが、短リンク21及び長リンク22の第3リンク31に対する回動軸方向(Y方向)への移動を制限する。また、第3リンク31は、短リンク21及び長リンク22に対して、リンクピン28の軸部28aを中心に相対回動自在である。
【0026】
第3リンク31は、一対の短リンク21の間に配設される。第3リンク31は、一対のリンク支持部23を介して、一対の長リンク22の回動軸方向(Y方向)における相対移動を制限する。
【0027】
第3リンク31は、スライダピン34を介して、スライダ32に支持される。第3リンク31は、スライダピン34の軸部34aを中心に回動自在である。スライダピン34の軸部34aは、
図4に示すようにスライダ32のピン孔及び第3リンク31のピン孔に回動自在に挿通される。スライダピン34の軸部34aの先端部にはねじ部が形成される。このねじ部に螺合されるナットと、スライダピン34の頭部34bとで、第3リンク31の回動軸方向(Y方向)への移動が制限されている。
【0028】
第3リンク31の両端部の回動中心間の距離L4(以下、「第3リンク31の長さL4」という、
図2参照)は、長リンク22と短リンク21とが型締め完了時にY方向視で略一直線上に重なるように適宜設定される。例えば、第3リンク31の長さL4は、短リンク21の長さL2と同じであってよい。
【0029】
スライダ32は、フレーム11に固定されるガイド36に沿って進退自在である。スライダ32と、型締めモータ33との間には、型締めモータ33の回転運動を直線運動に変換してスライダ32に伝達する伝達機構としてのボールねじ機構37が設けられている。
【0030】
ボールねじ機構37は、例えば型締めモータ33の出力軸33aに固定されるボールねじナット37aと、ボールねじナット37aに螺合されるボールねじ軸37bとで構成される。ボールねじ軸37bは、円筒状の出力軸33aを貫通し、出力軸33aの軸方向に移動自在となっている。ボールねじ軸37bの先端は、スライダ32に固定される。型締めモータ33の出力軸33aが正逆回転すると、ボールねじナット37aが正逆回転し、ボールねじ軸37bが進退し、スライダ32が進退する。
【0031】
尚、本実施形態では、スライダ駆動源として型締めモータ33が用いられ、ボールねじ機構37が型締めモータ33の回転運動を直線運動に変換してスライダ32に伝達するが、スライダ駆動源の種類は特に限定されない。例えば、スライダ駆動源としてリニアモータ又は流体圧シリンダが用いられてもよく、ボールねじ機構37がなくてもよい。
【0032】
また、本実施形態のボールねじ機構37は、ボールねじナット37aが正逆回転し、ボールねじ軸37bが進退する機構であるが、ボールねじ軸が回転し、ボールねじナットが進退する機構であってもよく、その機構は特に限定されない。
【0033】
次に、上記構成の射出成形機の動作について説明する。
【0034】
図1に示す型開き完了の状態で、型締めモータ33がスライダ32を前進させると、リンク支持部23及び短リンク21が固定側ピン24を中心に反時計回りに回動する。このとき、長リンク22は、可動側ピン26を中心に反時計回りに回動しながら前進し、可動プラテン13が前進し、型閉じが行われる。このとき、短リンク21と長リンク22とのなす角θ(
図7参照)が徐々に小さくなり、短リンク21と長リンク22とが徐々に閉じる。短リンク21と長リンク22とが徐々に閉じることにより、可動金型15が固定金型14に接近する。可動金型15が固定金型14と当接すると、型閉じが完了する。
【0035】
型閉じ完了時に、短リンク21と長リンク22とは、
図2に示すようにY方向視で略一直線上に重なる直前の状態である。型閉じ完了時に、長リンク22の長さL1は、短リンク21の長さL2と、プラテン間距離L3との和よりも僅かに短い(L1<L2+L3)。型閉じ完了の状態から、リンク支持部23、短リンク21、及び長リンク22が反時計回りにさらに回動すると、型締力が生じる。
【0036】
図7は、型開閉方向及び回動軸方向と垂直な方向(Z方向)にリンク支持部23を押す力Pと、型開閉方向と平行な方向(X方向)に可動側ピン26を押す力Fとの関係を示す模式図である。
【0037】
リンク支持部23をZ方向に押す力Pと、可動側ピン26をX方向に押す力Fとの増力比F/Pは、下記式(1)で表される。
F/P=sinα×sinβ/sin(α+β)・・・(1)
式(1)中、αは短リンク21の長手方向とZ方向とのなす角、βは長リンク22の長手方向とZ方向とのなす角を表す。
【0038】
式(1)から明らかなように、α及びβが90°に近づくほど、増力比F/Pが大きくなり、大きな型締力が得られることがわかる。
【0039】
型締め完了時に、短リンク21と長リンク22とは、
図3に示すようにY方向視で略一直線上に重なり、α及びβが略90°となる。従って、短リンク21と長リンク22とで型締めモータ33の駆動力を倍力することができ、大きな型締力を得ることができる。また、従来必要であったトグルサポートやタイバーが不要となるので、射出成形機10の全長の短縮、射出成形機10の軽量化が可能である。
【0040】
型締め完了時に、金型装置16には型締力が生じ、その反作用として、短リンク21には圧縮力が生じ、長リンク22には引張力が生じる。型締め完了時に、リンク支持部23による短リンク21と長リンク22との連結を解除した場合、
図6に示すように、短リンク21は伸びて自然長に戻り、長リンク22は縮んで自然長に戻る。
【0041】
尚、型閉じ完了時から型締め完了時までの間に、プラテン間距離はほとんど変化しない。固定プラテン12、可動プラテン13、及び金型装置16は、長リンク22や短リンク21よりも高い剛性を有し、型締力によってほとんど弾性変形しない。
【0042】
型締め完了時に、短リンク21及び長リンク22は、
図3に示すように型開閉方向と略平行になる。従って、金型装置16に作用する型締力と、短リンク21に作用する圧縮力、及び長リンク22に作用する圧縮力とが略平行となる。これにより、Y方向視での回転モーメントの発生が抑えられる。
【0043】
型締め完了時に、短リンク21に生じる圧縮力と、長リンク22に生じる引張力とによって、Z方向視でリンク支持部23に回転モーメントが生じる。このとき、一対のリンク支持部23は第3リンク31を介して連結されており、一対のリンク支持部23のY方向における相対移動が制限できる。これにより、型締め完了時にリンク支持部23、長リンク22、短リンク21の意図しない変形を抑制することができる。
【0044】
型締め完了の状態で、固定金型14と可動金型15との間に
図4に示すキャビティ空間Cが形成される。キャビティ空間Cに射出装置40から溶融した樹脂が充填され、固化されて成形品となる。
【0045】
続いて、型締めモータ33がスライダ32を後退させると、リンクピン28及び短リンク21が固定側ピン24を中心に時計回りに回動する。このとき、長リンク22が可動側ピン26を中心に時計回りに回動しながら後退し、可動プラテン13が後退し、型開きが行われる。
【0046】
その後、エジェクタ装置が金型装置16から成形品を突き出す。突き出された成形品は、成形品取り出し機によって射出成形機10の外部に取り出される。
【0047】
型開き完了時に、長リンク22が、
図1に示すように型開閉方向に対して傾斜する。そのため、金型装置の側方に設置される成形品取り出し機が成形品を容易に取り出しできる。
また、金型装置16の交換が容易である。金型装置16の交換は、成形品の種類の変更、メンテナンスなどの目的で行われる。
【0048】
ところで、金型装置16が交換されると、金型装置16の厚さ(固定金型14の厚さと可動金型15の厚さとの合計)が変わることがある。金型装置16の厚さは、金型装置16の温度変化によっても変わる。金型装置16の厚さが変わると、型閉じ完了時における短リンク21と長リンク22とのなす角θ(
図7参照)が変わり、型締力が変わる。
【0049】
そこで、可動プラテン13は、可動金型15が取り付けられる金型取付部としての金型固定板41と、長リンク22の一端部が回動自在に取り付けられるリンク取付部としての箱形部材42と、調整機構部43とを備える。
【0050】
金型固定板41は、フレーム11上に敷設されるガイドGdに沿って進退自在である。金型固定板41における固定プラテン12との対向面に可動金型15が取り付けられる。
【0051】
箱形部材42は前方に開放されており、箱形部材42の内部には型開き後に金型装置16から成形品を突き出すためのエジェクタ装置が配設される。
【0052】
箱形部材42は、可動側ピン26の軸部26aを介して、長リンク22の一端部を回動自在に支持する長リンク支持部47を有する。長リンク支持部47は、可動側ピン26の軸部26aを回動自在に支持する一対の取付板部47a、47bで構成される。一対の取付板部47a、47bの間に長リンク22の一端部が挿入されている。型締め完了時に可動側ピン26を介して長リンク22から箱形部材42に加わる負荷が一対の取付板部47a、47bに分散するので、箱形部材42の変形を抑えることができる。また、型締め完了時にZ方向視で可動側ピン26の回転を抑えることができる。
【0053】
調整機構部43は、金型固定板41と箱形部材42との型開閉方向と平行な方向における相対位置を調整可能に、金型固定板41と箱形部材42とを連結する。調整機構部43は、例えば、金型固定板41に固定される複数(例えば4本)の調整ロッド44、及び調整ロッド44に形成されるねじ軸部45と螺合される調整ナット46等で構成される。複数の調整ロッド44に対応して、複数の調整ナット46が用いられる。
【0054】
調整ロッド44の軸方向は型開閉方向と平行である。調整ロッド44の前端は、金型固定板41の後端面に固定される。調整ロッド44は、箱形部材42を貫通する。
【0055】
調整ナット46は、箱形部材42に対して回転自在に、且つ進退不能に支持されている。例えば、調整ナット46は、箱形部材42の底壁部を貫通する円筒部、及び該円筒部の両端部に形成されるフランジ部等で構成される。2つのフランジ部の間に箱形部材42の底壁部が配設される。円筒部と各フランジ部とは一体に形成されてもよいし、別途形成され係合されてもよい。
【0056】
調整ナット46及びねじ軸部45によって運動方向変換部が構成され、該運動方向変換部において、調整ナット46の回転運動が調整ロッド44の直進運動に変換される。調整ナット46を回転させる調整用駆動源としての型厚モータは、箱形部材42に固定されている。
【0057】
複数の調整ナット46が同期して回転すると、複数の調整ロッド44が箱形部材42に対して進退する。箱形部材42と金型固定板41との型開閉方向における相対位置が金型装置16の厚さに応じて最適化され、型閉じ完了時における短リンク21と長リンク22とのなす角θが所望の値に保たれる。よって、型締め完了時に適切な型締力が得られる。
【0058】
型厚調整には、長リンク22の長さL1、又は短リンク21の長さL2を可変とする機構を用いてもよいが、本実施形態の機構の方がより高い耐久性を有する。
【0059】
[第2実施形態]
上記第1実施形態の回動機構は、第3リンク31、スライダ32、及び型締めモータ33等で構成される。これに対して、本実施形態の回動機構は、伸縮アクチュエータ、及びアクチュエータ支持部等で構成される点で相違する。以下、相違点について主に説明する。
【0060】
図8は、本発明の第2実施形態による射出成形機の型開き完了時の状態を示す図である。
図9は、第2実施形態による射出成形機の型閉じ完了時の状態を示す図である。
図10は、第2実施形態による射出成形機の型締め完了時の状態を示す図である。
【0061】
本実施形態の回動機構130は、
図8等に示すように、リンク支持部23に対して一端部が回動自在に支持される伸縮アクチュエータ131と、伸縮アクチュエータ131の他端部を回動自在に支持する固定側支持部132とを有する。
【0062】
伸縮アクチュエータ131は、例えば流体圧シリンダで構成され、シリンダ本体133と、シリンダ本体133から伸縮可能に突出するシリンダロッド134と、シリンダロッド134の先端に形成されるリング部135とを有する。
【0063】
尚、本実施形態の伸縮アクチュエータ131は、流体圧シリンダで構成されるが、例えばボールねじ機構を用いた機械式のアクチュエータでもよく、伸縮アクチュエータ131の構成は特に限定されない。
【0064】
伸縮アクチュエータ131は、
図4に示すリンクピン28の軸部28aを中心に回動自在である。リンクピン28の軸部28aは、リング部135のピン孔に回動自在に挿通される。リンクピン28の軸部28aの先端部にはねじ部が形成される。このねじ部に螺合されるリンク支持ナット29と、リンクピン28の頭部28bとで、短リンク21及び長リンク22のリング部135に対する回動軸方向(Y方向)への移動が制限されている。
【0065】
固定側支持部132は、フレーム11に対して固定される。固定側支持部132は、例えば、シリンダ本体133のピン孔に回動自在に挿通されるシリンダピン136、シリンダピン136を回動自在に支持する一対のシリンダ支持板137等で構成される。一対のシリンダ支持板137の間にシリンダ本体133が配設される。
【0066】
図8に示す型開き完了の状態で、伸縮アクチュエータ131が伸びると、リンク支持部23及び短リンク21が固定側ピン24を中心に反時計回りに回動する。このとき、長リンク22は、可動側ピン26を中心に反時計回りに回動しながら前進し、可動プラテン13が前進し、型閉じが行われる。このとき、短リンク21と長リンク22とのなす角θ(
図7参照)が徐々に小さくなり、短リンク21と長リンク22とが徐々に閉じる。短リンク21と長リンク22とが徐々に閉じることにより、可動金型15が固定金型14に接近する。可動金型15が固定金型14と当接すると、型閉じが完了する。
【0067】
型閉じ完了時に、短リンク21と長リンク22とは、
図8に示すようにY方向視で略一直線上に重なる直前の状態である。型閉じ完了時に、第1実施形態と同様に、長リンク22の長さL1は、短リンク21の長さL2と、プラテン間距離L3との和よりも僅かに短い(L1<L2+L3)。型閉じ完了の状態から、リンク支持部23、及び短リンク21が反時計回りにさらに回動すると、型締力が生じる。
【0068】
型締め完了時に、短リンク21と長リンク22とは、
図9に示すように略平行となり、
図7に示すα及びβが略90°となる。従って、大きな型締力が得られる。このとき、短リンク21には圧縮力が生じ、長リンク22には引張力が生じる。
【0069】
本実施形態では、短リンク21と長リンク22とで伸縮アクチュエータ131の駆動力を倍力することができ、大きな型締力を得ることができる。また、従来必要であったトグルサポートやタイバーが不要となるので、射出成形機110の全長の短縮、射出成形機110の軽量化が可能である。
【0070】
[第3実施形態]
上記第1実施形態では、長リンク22が単一のリンクで構成される。これに対し、本実施形態では長リンクが複数のリンクで構成される点で相違する。以下、相違点について主に説明する。尚、本実施形態の内容は、第2実施形態に適用可能である。
【0071】
図11は、本発明の第3実施形態による射出成形機の型開き完了時の状態を示す図である。
図12は、第3実施形態による射出成形機の型閉じ完了時の状態を示す図である。
図13は、第3実施形態による射出成形機の型締め完了時の状態を示す図である。
図14は、第3実施形態による射出成形機の金型交換時の状態を示す図である。
【0072】
射出成形機210は、
図11等に示すように、フレーム11、固定プラテン12、可動プラテン213、短リンク21、長リンク222、第1リンクロック機構260、及びプラテンロック機構270などを備える。
【0073】
可動プラテン213は、フレーム11上に敷設されるガイド(例えばガイドレール)Gdに沿って移動自在とされ、固定プラテン12に対して接離自在とされる。可動プラテン213は、第1実施形態と同様に、可動金型15が取り付けられる金型取付部としての金型固定板241と、長リンク222の一端部が回動自在に取り付けられるリンク取付部としての箱形部材242と、調整機構部243とを備える。調整機構部243は、金型固定板241と箱形部材242との間隔を調整することで、型厚調整を行う。
【0074】
箱形部材242は、前方に開放された箱形本体248と、箱形本体248から後方に突出する長リンク支持部247と、箱形本体248の側面に設けられるストッパ部249とを有する。箱形本体248内にはエジェクタ装置が配設される。長リンク支持部247は、可動側ピン226を介して長リンク222の一端部を回動自在に支持する。ストッパ部249は長リンク222の一端部に当接する。
【0075】
長リンク222は、可動プラテン213に対して一端部が回動自在に支持されるプラテン側リンク251と、短リンク21に対して一端部が回動自在に支持される短リンク側リンク252とを含む。プラテン側リンク251の他端部と、短リンク側リンク252の他端部とは連結ピン253などで回動自在に連結される。
【0076】
プラテン側リンク251は、可動プラテン213に対して可動側ピン226を中心に回動自在とされる。プラテン側リンク251は、短リンク21の長さと同程度の長さを有してよく、長手方向に対して垂直な突起部254を有してよい。
【0077】
短リンク側リンク252は、プラテン側リンク251に対して連結ピン253を中心に回動自在とされ、短リンク21に対してリンク支持部23(リンクピン28)を中心に回動自在とされる。短リンク側リンク252は、短リンク21よりも長くてよい。
【0078】
図15は、
図13のXV−XV線に沿った断面図である。
図15において、図面を簡略化するため、型厚調整に用いられる調整機構部などの図示を省略する。
図15において、実線は第1リンクロック機構のロック状態を示し、一点鎖線は第1リンクロック機構のロック解除状態を示す。
【0079】
第1リンクロック機構260は、可動プラテン213に対するプラテン側リンク251の回動を制限するロック状態と、制限を解除するロック解除状態とに切り替え可能である。第1リンクロック機構260は、例えば、図示されないギヤモータなどのモータ、回動板261、連結ロッド262、ウェッジ263、及びウェッジガイド264などで構成される。
【0080】
回動板261は、円板状の回動板261の中心線を中心に両方向に回動自在とされる。回動板261の回動方向は、モータの回転方向を切り替えることで切り替えできる。回動板261の中心線は型開閉方向(X方向)に平行とされてよい。
【0081】
連結ロッド262は、回動板261の回動運動をウェッジ263のY方向の直線運動に変換する。連結ロッド262の一端部は回動板261の外周部に対してピンなどで回動自在に支持され、連結ロッド262の他端部は円板状のウェッジ263に対してピンなどで回動自在に支持される。
【0082】
ウェッジ263は、可動プラテン213に対してプラテン側リンク251の回動を制限するロック位置と、制限を解除するロック解除位置との間で移動自在とされる。ウェッジ263の直線運動は、ウェッジガイド264によって案内される。
【0083】
ウェッジ263は、ウェッジ263の移動方向に対して斜めの傾斜面部265を有し、当該傾斜面部265でプラテン側リンク251の突起部254と接触する。ウェッジ263のY方向の移動に伴って、Z方向にプラテン側リンク251が移動する。
図15に示すように、ウェッジ263が箱形本体248の端部に配設でき、図示されないエジェクタ装置が箱形本体248の中央部に配設できる。
【0084】
プラテン側リンク251の突起部254は、ウェッジ263の移動方向に対して斜めの傾斜面部255を有してよい。プラテン側リンク251の傾斜面部255と、ウェッジ263の傾斜面部265とが面接触することで、運動方向の変換が安定化する。
【0085】
尚、本実施形態では、ウェッジ263及びプラテン側リンク251の両方がウェッジ263の移動方向に対して斜めの傾斜面部を有するが、いずれか一方がウェッジ263の移動方向に対して斜めの傾斜面部を有してもよい。ウェッジ263のY方向の移動に伴って、Z方向にプラテン側リンク251が移動できる。
【0086】
ウェッジ263は、ロック解除位置(
図15に一点鎖線で示す位置)からロック位置(
図15に実線で示す位置)に移動すると、プラテン側リンク251と接触し、プラテン側リンク251をストッパ部249に押し付ける。これにより、可動プラテン213に対するプラテン側リンク251の回動が制限される。
【0087】
左右一対のウェッジ263は、それぞれのロック位置に移動して、左右一対のプラテン側リンク251の回動を制限する。このとき、左右一対のウェッジ263と回動板261とを連結する2本の連結ロッド262は回動板261の中心線を挟んで略一直線上に並ぶ。2本の連結ロッド262から回動板261に作用する反力が相殺され、モータの回転トルクが軽減できる。
【0088】
プラテンロック機構270は、固定プラテン12に対する可動プラテン213の移動を制限するロック状態と、制限を解除するロック解除状態とに切り替え可能である。プラテンロック機構270は、例えば可動プラテン213に設けられ、ガイド(ガイドレール)Gdをクランプするガイドクランパなどで構成される。
【0089】
次に、
図11〜
図13を再度参照して、上記構成の射出成形機210の射出成形時の動作について説明する。射出成形時には、第1リンクロック機構260はロック状態とされ、プラテンロック機構270はロック解除状態とされる。
【0090】
図11に示す型開き完了の状態で、型締めモータ33がスライダ32を前進させると、短リンク21が固定側ピン24を中心に回動する。このとき、短リンク側リンク252が連結ピン253を中心に回動しながら前進し、可動プラテン213が前進し、型閉じが行われる。可動金型15が固定金型14と当接すると、型閉じが完了する。
【0091】
型閉じ完了時に、短リンク21と短リンク側リンク252とは、
図12に示すようにY方向視で略一直線上に重なる直前の状態である。型閉じ完了の状態から、型締めモータ33がスライダ32をさらに前進させると、型締力が生じる。
【0092】
型締め完了時に、短リンク21と長リンク222とは、
図13に示すようにY方向視で略一直線上に重なる。短リンク21に作用する圧縮力及び長リンク222に作用する引張力に対応する型締力が金型装置16に作用する。
【0093】
型締め完了時に、短リンク21及び長リンク222は、
図13に示すように型開閉方向と略平行になる。従って、金型装置16に作用する型締力と、短リンク21に生じる圧縮力、及び長リンク222に生じる圧縮力とが略平行となる。これにより、Y方向視での回転モーメントの発生が抑制できる。
【0094】
型締め完了の状態で、固定金型14と可動金型15との間にキャビティ空間が形成される。射出装置40がキャビティ空間に樹脂を充填し、充填した樹脂が固化され成形品になる。
【0095】
続いて、型締めモータ33がスライダ32を後退させると、短リンク21が固定側ピン24を中心に回動する。このとき、短リンク側リンク252が連結ピン253を中心に回動しながら後退し、可動プラテン213が後退し、型開きが行われる。
【0096】
型開き完了後、エジェクタ装置が金型装置16から成形品を突き出す。突き出された成形品は、成形品取り出し機によって射出成形機210の外部に取り出される。
【0097】
次に、
図14などを参照して、上記構成の射出成形機210の金型交換時の動作について説明する。先ず、型閉じ完了の状態(
図12に示す状態)で、第1リンクロック機構260がロック状態からロック解除状態へ切り替えられ、プラテンロック機構270がロック解除状態からロック状態へ切り替えられる。
【0098】
その後、型締めモータ33がスライダ32を後退させると、短リンク21が固定側ピン24を中心に回動する。このとき、プラテン側リンク251が可動側ピン226を中心に回動し、
図14に示すように短リンク側リンク252が重力によって金型装置16の下方に退避する。
【0099】
次いで、作業者は、可動プラテン213に対する可動金型15の固定を解除し、固定プラテン12に対する固定金型14の固定を解除する。その後、作業者は、可動プラテン213と固定プラテン12との間に側方(Y方向)から別の金型装置を挿入し、別の金型装置で元の金型装置を押し出す。続いて、作業者は、挿入した可動金型を可動プラテン213に、挿入した固定金型を固定プラテン12にそれぞれボルトなどで固定する。
【0100】
本実施形態によれば、長リンク222がプラテン側リンク251及び短リンク側リンク252を含み、第1リンクロック機構260が可動プラテン213に対するプラテン側リンク251の回動を制限するロック状態とロック解除状態とに切り替えられる。第1リンクロック機構260は、射出成形時にロック状態とされ、金型交換時にロック解除状態とされる。
図13に示すように型締め時にY方向視で長リンク222と短リンク21とが一直線上に重なる。また、
図14に示すように金型交換時に短リンク側リンク252が金型装置16よりも下方に退避でき、可動プラテン213と固定プラテン12との間に側方(Y方向)から別の金型装置が挿入できる。金型装置をクレーンなどで吊り下げる手間が省け、金型交換が短時間で済む。
【0101】
また、本実施形態によれば、プラテンロック機構270は、固定プラテン12に対する可動プラテン213の移動を制限するロック状態とロック解除状態とに切り替えらえる。プラテンロック機構270は、射出成形時にロック解除状態とされ、金型交換時にロック状態とされる。よって、射出成形時に可動プラテン213が進退でき、型閉じ、型締め、および型開きが実施できる。また、金型交換時に可動プラテン213が停止でき、可動プラテン213と固定プラテン12との間隔が一定のまま、短リンク側リンク252が金型装置16よりも下方に退避できる。固定プラテン12と可動プラテン213との間隔が最小限で済み、可動プラテン213の移動時間が少なく、金型交換が短時間で済む。
【0102】
尚、本実施形態では、型閉じ完了の状態で金型交換が行われるが、金型装置16が僅かに開いた状態で金型交換が行われてもよい。
【0103】
尚、短リンク21と長リンク222との配置は逆であってもよい。短リンク21の一端部が可動側ピン226を介して可動プラテン213に対して回動自在に支持され、長リンク222の一端部が固定側ピン24を介して固定プラテン12に対して回動自在に支持されてもよい。
【0104】
以上、本発明の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、置換が可能である。
【0105】
例えば、上記実施形態では、可動プラテンが型厚調整機構を有するが、固定プラテンが型厚調整機構を有してもよく、両方が型厚調整機構を有してもよい。つまり、固定プラテンが、固定金型を固定する金型固定板と、長リンクの一端部又は短リンクの一端部が回動自在に取り付けられるリンク取付部と、金型固定板とリンク取付部との型開閉方向と平行な方向における間隔を調整可能に、金型固定板とリンク取付部とを連結する調整機構部とを備えてよい。
【0106】
また、上記第3実施形態の射出成形機は、第1リンクロック機構に代えて、プラテン側リンク251と短リン
ク側リンク252との相対的な回動を制限するロック状態とロック解除状態とに切り替えられる第2リンクロック機構を備えてもよい。第2リンクロック機構は、射出成形時にロック状態とされ、金型交換時にロック解除状態とされる。型締め時にY方向視で長リンク222と短リンク21とが一直線上に重なる。また、金型交換時に短リンク側リンク252が金型装置16よりも下方に退避でき、可動プラテン213と固定プラテン12との間に側方(Y方向)から別の金型装置が挿入できる。金型装置をクレーンなどで吊り下げる手間が省け、金型交換が短時間で済む。射出成形機は、第1リンクロック機構と、第2リンクロック機構とを両方備えてもよい。