(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のタッチスイッチモジュールでは、指がパネルに接触した位置のみに基づいて電気機器の操作を行おうとしていることから、例えば、使用者の指等がパネルに接触した位置が振動等によりぶれた場合、操作情報が変動し易い。この場合、電気機器を安定して操作し難い。
【0006】
この点、上記特許文献2のタッチスイッチモジュールでは、スライド速度に基づいて電気機器の操作を行おうとしているため、特許文献1のタッチスイッチモジュールと比較し、電気機器を安定して操作し易いと考えられる。しかしながら、特許文献2には、どのようにそのスライド速度に基づいて電気機器を操作するのかの開示がない。このため、特許文献2のタッチスイッチモジュールにおいても、電気機器の操作性の向上を必ずしも期待できない。
【0007】
このような不具合は、電気機器が車両に搭載され、運転者等がその電気機器の操作を行う場合に顕著になる。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、電気機器の操作性をより確実に向上させることができるタッチスイッチモジュールを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のタッチスイッチモジュールは、
車両の空調装置の操作を指示するためのスライドバーが表示されたパネルと、
前記パネルに形成され、前記スライドバーへの接触を検知するタッチセンサと、
前記タッチセンサに接続され、前記接触に基づいて前記
空調装置を操作する操作情報を出力する制御手段とを備えたタッチスイッチモジュールにおいて、
前記制御手段は、前記スライドバーに沿って前記接触が移動するスライドの時間変化であるスライド速度を検出するスライド速度検出部と、
前記スライド速度を予め定めた閾値と比較し、前記スライド速度が前記閾値未満であれば前記操作情報として第1操作情報を出力し、前記スライド速度が前記閾値以上であれば前記操作情報として前記第1操作情報と異なる第2操作情報を出力する操作情報切替部とを有し、
前記第1操作情報
のみが前記
空調装置の稼働条件を第1物理量変化させ、
前記第2操作情報
のみが前記
空調装置の前記稼働条件を前記第1物理量より大きい第2物理量変化させることを特徴とする。
【0010】
本発明のタッチスイッチモジュールでは、制御手段のスライド速度検出部がスライドバーに沿って接触が移動するスライドの時間変化であるスライド速度を検出する。そして、制御手段の操作情報切替部は、スライド速度を予め定めた閾値と比較し、スライド速度が閾値未満であれば第1操作情報を出力し、スライド速度が閾値以上であれば第2操作情報を出力する。第2操作情報は第1操作情報と異なる。このため、電気機器を安定して操作することが可能である。
【0011】
例えば、使用者の指等がパネルに接触した位置が振動等によりぶれる場合のスライド速度の変化幅を閾値とすれば、そのぶれによって電気機器に誤った操作情報を出力しないようにすることができる。
【0012】
したがって、本発明のタッチスイッチモジュールでは、電気機器の操作性をより確実に向上させることができる。
【0013】
本発明のタッチスイッチモジュールにおいて、電気機器としては、空調装置、オーディオ機器、ナビゲーションシステム等、種々のものを採用することが可能である。特に、車両用の電気機器であることが好ましい。
【0014】
タッチセンサとしては、静電容量方式のセンサの他、機械式のボタンであってもよいし、表面弾性波方式、赤外線方式、抵抗膜方式等のセンサであってもよい。また、本発明において、接触は、スライドバーに触れた場合に限られず、信号が生成可能に近接する場合も含む。
【0015】
第1操作情報は電気機器の稼働条件を第1物理量変化させ得る。第2操作情報は電気機器の稼働条件を第1物理量より大きい第2物理量変化させることが好まし
い。例えば、電気機器が空調装置であれば、第1操作情報により、室内の目標温度が第1温度だけ変化するように空調装置に指令を行う。また、第2操作情報により、室内の目標温度が第1温度より絶対値の大きい第2温度だけ変化するように空調装置に指令を行う。この場合、操作情報切替部がスライド速度に合わせて電気機器の稼働条件を小さく変化させるか、大きく変化できるため、使用者の意図を適切に反映したより好ましい条件で電気機器を稼働できる。
【0016】
制御手段は、第1操作情報の出力後、所定時間内に閾値を高位に変更する閾値高位変更部を有していることが好まし
い。この場合、スライド速度と第1操作情報との間にヒステリシスが存在することとなる。このため、スライド途中にスライド速度が変化しても、第1操作情報が出力され易くなる。このため、電気機器をより安定して操作することが可能となる。
【0017】
制御手段は、第2操作情報の出力後、所定時間内に閾値を低位に変更する閾値低位変更部を有していることが好まし
い。この場合、スライド速度と第2操作情報との間にヒステリシスが存在することとなる。このため、スライド途中にスライド速度が変化しても、第2操作情報が出力され易くなる。このため、電気機器を安定して操作することが可能となる。
【0018】
電気機器は車両の空調装置であってもよ
い。この場合、走行中、使用者によって車室内の温度調節が好適に行われる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のタッチスイッチモジュールでは、電気機器の操作性をより確実に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のタッチスイッチモジュールを具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1及び
図3に示すように、実施例の電気機器は車両の空調装置9であり、そのタッチスイッチモジュール1はその空調装置9を制御する。
図1に示すように、タッチスイッチモジュール1は、車室内で左右に延在しているインスツルメントパネル3の中央部の下方に搭載されている。なお、インスツルメントパネル3は、タッチスイッチモジュール1の他、カーナビゲーション5と、センターレジスタ7とを有している。
【0023】
タッチスイッチモジュール1は、
図3に示すように、パネル2を備えている。パネル2には、
図2に示すように、表示部2aが設けられているとともに、複数のタッチパッド2b及び左右のスライドバー2c、2dが表示されている。
【0024】
表示部2aは、パネル2の上方に位置し、車幅方向に延びている。表示部2aには、空調装置9の設定状態や現在の状態を表す種々の項目が表示されている。
【0025】
タッチパッド2bは、パネル2の下方に2段に表示されている。タッチパッド2bには、空調装置9を指で押圧して操作する種々の項目が設けられている。タッチパッド2bの各項目は、表示部2aに表示されている種々の項目に対応している。
【0026】
スライドバー2c、2dは、車両の運転者の他、助手席の搭乗者も使用者として指により操作できるように、タッチパッド2bの左右に位置している。スライドバー2c、2dにより、空調装置9が車室内に吹き出す風の温度を上下させることが可能である。
【0027】
タッチスイッチモジュール1は、
図3に示すように、上記パネル2の他、タッチセンサ11と制御手段としてのECU15とを備えている。
【0028】
タッチセンサ11は、パネル2のタッチパッド2b及びスライドバー2c、2dの裏面に設けられている。タッチセンサ11としては、静電容量方式が採用されている。
【0029】
ECU15はタッチセンサ11と接続されている。ECU15には、
図4に示すフローチャートを実行するためのプログラム等が格納されている。そして、ECU15は、
図3に示すように、スライド速度検出部17と操作情報切替部19とを有している。スライド速度検出部17は、タッチセンサ11がスライド速度を検出する。操作情報切替部19には閾値V
Sが格納されている。また、ECU15は、閾値高位変更部21と閾値低位変更部23とを有している。
【0030】
車室内の使用者は、車室内の温度に応じ、表示部2aに表示されている種々の項目を見ながら、パネル2を操作し、空調装置9を操作する。使用者がパネル2を操作した場合、ECU15が
図4に示すフローチャートをスタートする。
【0031】
ステップS1では、使用者がスライドを行ったかどうかを判断する。本実施例において、スライドとは、指をスライドバー2c、2dに接触し、スライドバー2c、2dに沿ってなぞる行為をいう。スライドがされている場合は、YESとなり、ステップS2に進む。ステップS2では、初期設定として、ノッチ数を絶対値に変換する。ここで、ノッチ数とは、一つのスライドの分解能をいう。ノッチ数は操作情報に相当する。
【0032】
続くステップS3において、タッチセンサ11は、スライドバー2c、2dに沿った使用者の指の位置を検知する。具体的には、スライドバー2c、2d上に指を触れた位置から、指をスライドさせた後の位置までを各制御単位時間ごとに検知する。そして、タッチセンサ11がスライドした距離を算出する。また、タッチセンサ11は、上方から下方に向けてなぞったか、又は下方から上方に向けてなぞったかという方向も検知する。
【0033】
続くステップS4において、
図3に示すECU15のスライド速度検出部17は、スライド速度V
Xを検出する。具体的には、スライドバー2c、2d上に指を触れた際の位置を検出した時間と、指をスライドさせた後の位置を検出した時間との差を経過時間として計算する。そして、スライドした距離と経過時間とからスライド速度V
Xを検出する。
【0034】
そして、ECU15は、
図4に示すステップS5において、スライド速度V
Xが閾値V
S以上であるか判断する。ステップS5において、スライド速度V
Xが閾値V
S未満である場合は、NOとなり、ステップS6に進む。
【0035】
ステップS6では、
図3に示す操作情報切替部19が
図5に示すノッチ数N
1を生成する。ノッチ数N
1が第1操作情報に相当する。ノッチ数N
1に変更温度を乗算した値が第1物理量に相当する。
【0036】
図4に示すように、ステップS5において、スライド速度V
Xが閾値V
S以上である場合は、YESとなり、ステップS7に進む。
【0037】
ステップS7では、
図3に示す操作情報切替部19が
図5に示すノッチ数N
2を生成する。ノッチ数N
2が第2操作情報に相当する。ノッチ数N
2に変更温度を乗算した値が第2物理量に相当する。
【0038】
続くステップS8では、ステップS3で検出されたスライドの方向から、使用者がスライドバー2c、2dを上方から下方に向ってなぞった場合を負とし、使用者がスライドバー2c、2dを下方から上方に向ってなぞった場合を正とする符号の決定を行う。例えば、使用者がスライドバー2c、2dを上方から下方に向ってなぞった場合、空調装置9から吹き出す風の温度は第1、2物理量に相当する温度だけ下降することとなる。また、使用者がスライドバー2c、2dを下方から上方に向ってなぞった場合、空調装置9から吹き出す風の温度は第1、2物理量に相当する温度だけ上昇することとなる。
【0039】
スライドにおいて、ステップS9では、ステップS6又はステップS7で生成されたノッチ数N
1又はノッチ数N
2を空調装置9に出力する。空調装置9にノッチ数N
1が出力されれば、空調装置9から吹き出される風の温度は、第1物理量に相当する温度だけ変化する。空調装置9にノッチ数N
2が出力されれば、空調装置9から吹き出される風の温度は、第2物理量に相当する温度だけ変化する。空調装置9から吹き出される風の温度変化を実現する空調装置9の条件が稼働条件に相当する。
【0040】
スライドでノッチ数N
1が生成されている場合は、ステップS10において、YESとなり、ステップS11に進む。ステップS11では、
図3に示す閾値高位変更部21によって閾値V
Sを高位の閾値V
SUに変更する。そして、
図4に示すステップS1に戻り、次の制御単位時間についてステップS1〜S9までを繰り返す。
【0041】
スライドでノッチ数N
2が生成されている場合は、ステップS10において、NOとなり、ステップS12に進む。ステップS12では、
図3に示す閾値低位変更部23によって閾値V
Sを低位の閾値V
SDに変更する。そして、
図4に示すステップS1に戻り、ステップS1〜S9までを繰り返す。なお、閾値V
SD、閾値V
SUは、スライド速度に応じて、それぞれ複数の値を設定することも可能である。
【0042】
ステップS1において、スライドがされていない場合は、タップや長押しとして検知する。本実施例において、タップとは、パネル2上の特定の位置に指等が瞬間的に触れる行為を言う。本実施例において、長押しとは、パネル2上の特定の位置に指が所定時間継続して触れる行為をいう。ステップS1において、スライドがされていない場合は、NOとなり、ステップS13に進む。
【0043】
ステップS13では、現在の閾値を閾値V
Sに戻し、スタートに戻す。続くステップS14では、
図3に示す操作情報切替部19が別処理を行う。具体的には、タップでは、所定のノッチ数に相当する温度が変化する。また、長押しでは、他のノッチ数に相当する温度が変化する。ステップS14の処理が終了すれば、スタートに戻る。
【0044】
このタッチスイッチモジュール1では、上記フローチャートに基づいて、ノッチ数N
1が空調装置9の稼働条件を第1物理量変化させ、ノッチ数N
2が空調装置9の稼働条件を第2物理量変化させる。言い換えれば、操作情報切替部19がスライド速度に合わせて空調装置9の稼働条件を小さく変化させるか、大きく変化させる。このため、使用者の意図を適切に反映したより好ましい条件で空調装置9を可動できる。
【0045】
また、このタッチスイッチモジュール1では、上記フローチャートに基づいて、ノッチ数N
1が所定時間内に連続して生成されれば、スライド速度とノッチ数N
1との間にヒステリシスを存在させている。このヒステリシスは、閾値V
Sを高位の閾値V
SUに変更している。このため、スライド途中にスライド速度が変化しても、ノッチ数N
1が生成され易くなる。
【0046】
ノッチ数N
2が所定時間内に連続して生成されても、スライド速度とノッチ数N
2との間にヒステリシスを存在させている。このヒステリシスは、閾値V
Sを低位の閾値V
SDに変更している。このため、スライド途中にスライド速度が変化しても、ノッチ数N
2が生成され易くなる。このため、例えば使用者が空調装置9から吹き出す風の温度をすばやく上昇又は下降させたいときには、当初のスライド速度が大きければ、スライド途中で多少スライド速度が弛んだとしても、すばやい温度上昇又は下降を実現させることができる。
【0047】
このため、スライド速度がばらついていても、空調装置9を安定して操作することが可能となる。
【0048】
したがって、このタッチスイッチモジュール1では、車両用の空調装置9の操作性をより確実に向上させることができる。
【0049】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0050】
例えば、操作情報として、ノッチ数N
1、ノッチ数N
2の他、ノッチ数N
3等、より多数設けてもよい。