特許第5946810号(P5946810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5946810電力システム及びその運転方法、並びに電力システムの制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946810
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】電力システム及びその運転方法、並びに電力システムの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/00 20060101AFI20160623BHJP
   H02J 3/36 20060101ALI20160623BHJP
   F03D 9/00 20160101ALI20160623BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20160623BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   H02P9/00 F
   H02J3/36 C
   F03D9/00 Z
   H02M7/12 H
   H02J3/16
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-216968(P2013-216968)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-80354(P2015-80354A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】若狭 強志
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸生
(72)【発明者】
【氏名】松田 聡
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0300510(US,A1)
【文献】 特開2005−051867(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/128968(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/078073(WO,A1)
【文献】 特表2003−501993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/00
F03D 9/00
H02J 3/16
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電端に対し交流電力を供給するように構成された少なくとも1つの発電システムと、
前記送電端に対し交流送電路を介して接続される受電端を有し、前記交流電力を直流電力に変換するように構成された順変換器と、
直流送電路を介して前記順変換器に接続され、前記直流電力を交流電力に変換するように構成された逆変換器と、
前記直流送電路の直流電圧が閾値を超えて上昇したときに前記受電端での交流電圧を低下させる保護動作を前記順変換器に実行させるように構成された保護装置と、
前記順変換器の保護動作に対応して、前記送電端への無効電力の供給量を増大させる安定化動作を前記少なくとも1つの発電システムに実行させるように構成された制御装置と
を備えることを特徴とする電力システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの発電システムは少なくとも1つの風力発電装置を含み、
前記少なくとも1つの風力発電装置は、風力を利用して発電するように構成された巻線界磁同期発電機を有する同期発電機付き風力発電装置からなり、
前記制御装置は、前記巻線界磁同期発電機の界磁制御を行うことにより前記同期発電機付き風力発電装置に前記安定化動作を実行させるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの発電システムは複数の風力発電装置を含み、
前記制御装置は、前記複数の風力発電装置のうちから選択された少なくとも1つの風力発電装置に前記安定化動作を実行させるように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記複数の風力発電装置の各々における有効電力の発電量に基づいて、前記複数の風力発電装置のうちから、前記安定化動作を実行する前記少なくとも1つの風力発電装置を選択するように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電力システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの発電システムは複数の発電システムからなり、
前記制御装置は、前記送電端から前記発電システムの各々までの送電距離に基づいて、前記発電システムのうちから前記安定化動作を実行させる発電システムを選択するように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電力システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの発電システムは複数の発電システムからなり、
前記制御装置は、前記複数の発電システムの各々の運転情報を収集するように構成されるとともに、収集された前記運転情報に基づいて、前記発電システムのうちから前記安定化動作を実行させる発電システムを選択するように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の電力システム。
【請求項7】
前記受電端での交流電圧に関連する情報を取得するように構成された第1センサを更に備え、
前記制御装置は、前記第1センサによって取得された情報に基づいて、前記少なくとも1つの発電システムに前記安定化動作を実行させるように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の電力システム。
【請求項8】
前記第1センサは、前記受電端での前記交流電圧を測定するように構成された電圧計からなる
ことを特徴とする請求項7に記載の電力システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記保護動作に対応して、前記送電端に供給する有効電力を減少させる出力低減動作を前記少なくとも一つの発電システムに実行させるように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の電力システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記受電端での交流電圧及び前記直流送電路での直流電圧のうち一方又は両方に応じて、前記送電端に供給する有効電力を減少させるように構成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の電力システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの発電システムは複数の発電システムからなり、
前記複数の発電システムの各々は、洋上に配置された複数の風力発電装置を含み、
前記順変換器は洋上に配置され、
前記逆変換器は陸上に配置され、
前記直流送電路の少なくとも一部は海に敷設されている
ことを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の電力システム。
【請求項12】
前記順変換器の保護動作の実行に関する情報、または、前記直流送電路の直流電圧の情報に繋がるような需要者側の事故情報を検出するように構成された第2センサを更に備え、
前記制御装置は、前記第2センサによって取得された情報に基づいて、前記少なくとも1つの発電システムに前記安定化動作を実行させるように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の電力システム。
【請求項13】
送電端に対し交流電力を供給するように構成された少なくとも1つの発電システムと、
前記送電端に対し交流送電路を介して接続される受電端を有し、前記交流電力を直流電力に変換するように構成された順変換器と、
直流送電路を介して前記順変換器に接続され、前記直流電力を交流電力に変換するように構成された逆変換器と、
前記直流送電路の直流電圧が閾値を超えて上昇したときに前記受電端での交流電圧を低下させる保護動作を前記順変換器に実行させるように構成された保護装置とを備える電力システムの運転方法において、
前記順変換器の保護動作に対応して、前記送電端への無効電力の供給量を増大させる安定化動作を前記少なくとも1つの発電システムに実行させる安定化動作ステップ
を備えることを特徴とする電力システムの運転方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの発電システムは少なくとも1つの風力発電装置を含み、
前記少なくとも1つの風力発電装置は、風力を利用して発電するように構成された巻線界磁同期発電機を有する同期発電機付き風力発電装置からなり、
前記安定化動作ステップにおいて、前記巻線界磁同期発電機の界磁制御を行うことにより前記同期発電機付き風力発電装置に前記安定化動作を実行させる
ことを特徴とする請求項13記載の電力システムの運転方法。
【請求項15】
前記安定化動作ステップの後に、前記送電端に供給する有効電力を減少させる出力低減動作を前記少なくとも一つの発電システムに実行させる出力低減ステップを更に備える
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の電力システムの運転方法。
【請求項16】
送電端に対し交流電力を供給するように構成された少なくとも1つの発電システムと、
前記送電端に対し交流送電路を介して接続される受電端を有し、前記交流電力を直流電力に変換するように構成された順変換器と、
直流送電路を介して前記順変換器に接続され、前記直流電力を交流電力に変換するように構成された逆変換器と、
前記直流送電路の直流電圧が閾値を超えて上昇したときに前記受電端での交流電圧を低下させる保護動作を前記順変換器に実行させるように構成された保護装置とを備える電力システムの制御装置であって、
前記順変換器の保護動作に対応して、前記送電端への無効電力の供給量を増大させる安定化動作を前記少なくとも1つの発電システムに実行させるように構成されている
ことを特徴とする電力システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システム及びその運転方法、並びに電力システムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧直流(HVDC:High Voltage Direct Current)システムは、電力システムの一部として用いられており、交流電力を直流電力に変換して伝送する機能を有する。
具体的には、HVDCシステムは、順変換器(SEC:Sending End Converter)と、直流送電路と、逆変換器(REC:Receiving End Converter)とを有している。順変換器は、交流電力を直流電力に変換して直流送電路に供給し、逆変換器は、直流送電路から受け取った直流電圧を交流電圧に変換する。
【0003】
ところで近年、発電システムやHVDCシステムには、FRT(Fault
Ride Through)要求を満たすことが求められている。すなわち、発電システムやHVDCシステムには、瞬間的な停電(瞬時電圧低下(Fault))が発生しても、それを乗り越えること(Ride−Through)が求められている。
【0004】
このようなFRT要求を満たすために、特許文献1が開示するHVDCシステムの制御方法によれば、制御装置は、瞬時電圧低下に起因する直流送電路での電圧上昇を検知すると、順変換器の交流側の交流電圧を低下させる保護動作を順変換器に実行させる。
また、特許文献1には、順変換器の交流側の交流電圧を低下させるために、風力発電機からHVDCシステムに供給される電力を減少させることが記載されている。具体的には、特許文献1には、風力発電機のロータシャフトのトルク制御や、翼のピッチ角制御について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0300510号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたHVDCシステムの制御方法のように、順変換器の交流側の交流電圧を低下させた場合、発電システムによって供給される交流電圧と有効電力の関係を表すP−V曲線において安定な運転点が無くなり、電圧崩壊が生じて発電システムがトリップ(停止)する虞がある。つまり、HVDCシステムはFRT要求を満たしても、発電システムがFRT要求を満たすことができない虞がある。
そして、このような虞は、特許文献1に記載されているように発電システムから順変換器に供給される電力を減少させても、電力の減少量や減少速度が順変換器の交流側の交流電圧の低下量や低下速度に追いつかないことがあるため、なお存在する。
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態の目的は、順変換器の保護動作による発電システムのトリップが抑制される電力システム及び電力システムの運転方法、並びに電力システムの制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る電力システムは、
送電端に対し交流電力を供給するように構成された少なくとも1つの発電システムと、
前記送電端に対し交流送電路を介して接続される受電端を有し、前記交流電力を直流電力に変換するように構成された順変換器と、
直流送電路を介して前記順変換器に接続され、前記直流電力を交流電力に変換するように構成された逆変換器と、
前記直流送電路の直流電圧が閾値を超えて上昇したときに前記受電端での交流電圧を低下させる保護動作を前記順変換器に実行させるように構成された保護装置と、
前記順変換器の保護動作に対応して、前記送電端への無効電力の供給量を増大させる安定化動作を前記少なくとも1つの発電システムに実行させるように構成された制御装置と
を備える。
【0009】
この構成によれば、順変換器の保護動作に対応して、発電システムが安定化動作を実行し、発電システムから送電端に無効電力が供給される。このため、送電端における交流電圧と有効電力の関係を表すP−V曲線において安定な運転点が確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0010】
幾つかの実施形態では、
前記少なくとも1つの発電システムは少なくとも1つの風力発電装置を含み、
前記少なくとも1つの風力発電装置は、風力を利用して発電するように構成された巻線界磁同期発電機を有する同期発電機付き風力発電装置からなり、
前記制御装置は、前記巻線界磁同期発電機の界磁制御を行うことにより前記同期発電機付き風力発電装置に前記安定化動作を実行させるように構成されている。
【0011】
この構成によれば、巻線界磁同期発電機の界磁制御を行うことにより、巻線界磁同期発電機が出力する無効電力を迅速に増加させることができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0012】
幾つかの実施形態では、
前記少なくとも1つの発電システムは複数の風力発電装置を含み、
前記制御装置は、前記複数の風力発電装置のうちから選択された少なくとも1つの風力発電装置に前記安定化動作を実行させるように構成されている。
【0013】
この構成によれば、複数の風力発電装置のうちから選択された少なくとも1つの風力発電装置に安定化動作を実行させることで、送電端に必要十分な無効電力を供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0014】
幾つかの実施形態では、
前記制御装置は、前記複数の風力発電装置の各々における有効電力の発電量に基づいて、前記複数の風力発電装置のうちから、前記安定化動作を実行する前記少なくとも1つの風力発電装置を選択するように構成されている。
【0015】
この構成によれば、有効電力の発電量に基づいて安定化動作を実行する少なくとも1つの風力発電装置を選択することにより、送電端に必要十分な無効電力を確実に供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0016】
幾つかの実施形態では、
前記少なくとも1つの発電システムは複数の発電システムからなり、
前記制御装置は、前記送電端から前記発電システムの各々までの送電距離に基づいて、前記発電システムのうちから前記安定化動作を実行させる発電システムを選択するように構成されている。
【0017】
この構成によれば、送電距離に基づいて安定化動作を実行する少なくとも1つの発電システムを選択することにより、送電端に必要十分な無効電力を確実に供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0018】
幾つかの実施形態では、
前記少なくとも1つの発電システムは複数の発電システムからなり、
前記制御装置は、前記複数の発電システムの各々の運転情報を収集するように構成されるとともに、収集された前記運転情報に基づいて、前記発電システムのうちから前記安定化動作を実行させる発電システムを選択するように構成されている。
【0019】
この構成によれば、制御装置が、収集された運転情報に基づいて安定化動作を実行させる発電システムを選択することにより、送電端に必要十分な無効電力を確実に供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0020】
幾つかの実施形態では、
電力システムは、前記受電端での交流電圧に関連する情報を取得するように構成されたセンサを更に備え、
前記制御装置は、前記センサによって取得された情報に基づいて、前記少なくとも1つの発電システムに前記安定化動作を実行させるように構成されている。
【0021】
この構成によれば、受電端での交流電圧に関連する情報に基づいて、少なくとも1つの発電システムに安定化動作を実行させることにより、順変換器の保護動作に的確に対応して、送電端に無効電力を供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0022】
幾つかの実施形態では、
前記センサは、前記受電端での前記交流電圧を測定するように構成された電圧計からなる。
この構成によれば、受電端での交流電圧に基づいて、少なくとも1つの発電システムに安定化動作を実行させることにより、順変換器の保護動作に的確に対応して、送電端に無効電力を供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0023】
幾つかの実施形態では、
前記制御装置は、前記保護動作に対応して、前記送電端に供給する有効電力を減少させる出力低減動作を前記少なくとも一つの発電システムに実行させるように構成されている。
【0024】
保護動作は、受電端での交流電圧を低下させる動作であるのに対し、安定化動作は、受電端での交流電圧を上昇させる動作である。従って、安定化動作と保護動作は相反する作用を有し、安定化動作を優先しすぎると、保護動作の作用が抑制されてしまう。ここで、安定化動作は、受電端での交流電圧の急速な低下により送電端での電圧と有効電力とのバランスが崩れ、発電システムの運転点が短期間失われることを防止することを目的としている。安定化動作によって保護動作の初期に運転点を確保することができれば、安定化動作以外の方法で運転点を維持することが可能である。そこでこの構成では、安定化動作に加え、出力低減動作を実行することで、送電端での電圧と有効電力とのバランスを図って運転点を維持し、安定化動作が保護動作に与える影響を解消している。この結果として、直流送電路や順変換器が過電圧から確実に保護されながら、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0025】
幾つかの実施形態では、
前記制御装置は、前記受電端での交流電圧及び前記直流送電路での直流電圧のうち一方又は両方に応じて、前記送電端に供給する有効電力を減少させるように構成されている。
【0026】
この構成によれば、受電端での交流電圧及び前記直流送電路での直流電圧のうち一方又は両方に応じて、送電端に供給する有効電力を減少させるように構成されているので、発電システムから送電端を介して受電端に供給される電力と、順変換器から直流送電路に供給される電力との間でバランスを的確に確保することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0027】
幾つかの実施形態では、
前記少なくとも1つの発電システムは複数の発電システムからなり、
前記複数の発電システムの各々は、洋上に配置された複数の風力発電装置を含み、
前記順変換器は洋上に配置され、
前記逆変換器は陸上に配置され、
前記直流送電路の少なくとも一部は海に敷設されている。
【0028】
この構成によれば、洋上に配置された複数の風力発電装置から、直流送電路を介して陸上に電力を効率的に送電しながら、FRT要求を満たすことができる。
【0029】
本発明の少なくとも一実施形態の電力システムの運転方法は、
送電端に対し交流電力を供給するように構成された少なくとも1つの発電システムと、
前記送電端に対し交流送電路を介して接続される受電端を有し、前記交流電力を直流電力に変換するように構成された順変換器と、
直流送電路を介して前記順変換器に接続され、前記直流電力を交流電力に変換するように構成された逆変換器と、
前記直流送電路の直流電圧が閾値を超えて上昇したときに前記受電端での交流電圧を低下させる保護動作を前記順変換器に実行させるように構成された保護装置とを備える電力システムの運転方法において、
前記順変換器の保護動作に対応して、前記送電端への無効電力の供給量を増大させる安定化動作を前記少なくとも1つの発電システムに実行させる安定化動作ステップ
を備える。
【0030】
この構成によれば、順変換器の保護動作に対応して、発電システムが安定化動作を実行し、発電システムから送電端に無効電力が供給される。このため、送電端における交流電圧と有効電力の関係を表すP−V曲線において安定な運転点が確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0031】
幾つかの実施形態では、
前記少なくとも1つの発電システムは少なくとも1つの風力発電装置を含み、
前記少なくとも1つの風力発電装置は、風力を利用して発電するように構成された巻線界磁同期発電機を有する同期発電機付き風力発電装置からなり、
前記安定化動作ステップにおいて、前記巻線界磁同期発電機の界磁制御を行うことにより前記同期発電機付き風力発電装置に前記安定化動作を実行させる。
【0032】
この構成によれば、巻線界磁同期発電機の界磁制御を行うことにより、巻線界磁同期発電機が出力する無効電力を迅速に増加させることができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0033】
幾つかの実施形態では、
電力システムの運転方法は、前記安定化動作ステップの後に、前記送電端に供給する有効電力を減少させる出力低減動作を前記少なくとも一つの発電システムに実行させる出力低減ステップを更に備える。
【0034】
この構成によれば、安定化動作を少なくとも1つの発電システムに実行させた後に、出力低減動作を少なくとも一つの発電システムに実行させることで、発電システムから送電端を介して受電端に供給される電力と、順変換器から直流送電路に供給される電力との間でバランスを確保することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0035】
本発明の少なくとも一実施形態の電力システムの制御装置は、
送電端に対し交流電力を供給するように構成された少なくとも1つの発電システムと、
前記送電端に対し交流送電路を介して接続される受電端を有し、前記交流電力を直流電力に変換するように構成された順変換器と、
直流送電路を介して前記順変換器に接続され、前記直流電力を交流電力に変換するように構成された逆変換器と、
前記直流送電路の直流電圧が閾値を超えて上昇したときに前記受電端での交流電圧を低下させる保護動作を前記順変換器に実行させるように構成された保護装置とを備える電力システムの制御装置であって、
前記順変換器の保護動作に対応して、前記送電端への無効電力の供給量を増大させる安定化動作を前記少なくとも1つの発電システムに実行させるように構成されている。
【0036】
この構成によれば、順変換器の保護動作に対応して、発電システムが安定化動作を実行し、発電システムから送電端に無効電力が供給される。このため、送電端における交流電圧と有効電力の関係を表すP−V曲線において安定な運転点が確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【発明の効果】
【0037】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、順変換器の保護動作による発電システムのトリップが抑制される電力システム及び電力システムの運転方法、並びに電力システムの制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】幾つかの実施形態に係る電力システムの構成を概略的に示す図である。
図2】幾つかの実施形態に係る電力システムの制御装置が実行する制御方法の概略的な手順を示すフローチャートである。
図3】幾つかの実施形態における送電端での交流電圧と有効電力との関係を示すP−V曲線を、発電システムから供給される有効電力とともに示すグラフであり、(a)は正常状態、(b)は順変換器が保護動作を実行した直後、そして、(c)は発電システムが安定化動作を実行した直後のP−V曲線を示すグラフである。
図4】幾つかの実施形態に係る発電システムの構成を、制御装置とともに概略的に示す図である。
図5】巻線界磁同期発電機における励磁電流と電機子電流との関係を示すグラフである。
図6】幾つかの実施形態に係る発電システムの構成を、制御装置とともに概略的に示す図である。
図7】幾つかの実施形態に係る電力システムの制御装置が実行する制御方法の概略的な手順を示すフローチャートである。
図8】幾つかの実施形態に係る電力システムの構成を概略的に示す図である。
図9】幾つかの実施形態に係る風力発電装置の構成を概略的に示す図であり、(a)は巻線誘導形同期発電機を有する構成を示し、(b)は巻線界磁同期発電機が主軸に直結されている構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状及びその相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0040】
図1は、幾つかの実施形態に係る電力システムの全体構成を概略的に示す図である。
電力システムは、少なくとも1つの発電システム10と、順変換器12と、逆変換器14と、保護装置16と、制御装置18とを有する。
【0041】
発電システム10は、送電端20に対し交流電力を供給するように構成されている。
順変換器12は交直変換器である。順変換器12は受電端22を有し、受電端22は送電端20に対し交流送電路24を介して接続される。なお、発電システム10と送電端20との間には、送電用変圧器26が設けられていてもよく、順変換器12と送電端20との間には、変換用変圧器28が設けられていてもよい。
【0042】
逆変換器14は直交変換器である。逆変換器14は、直流送電路30を介して順変換器12に接続され、直流電力を交流電力に変換するように構成されている。順変換器12から出力された交流電力は、交流送電路32を介して需用者に送られる。なお、交流送電路32には、変換用変圧器34が設けられていてもよい。
【0043】
保護装置16は、直流送電路30の直流電圧Vdcが閾値Vth1を超えて上昇したときに、受電端22での交流電圧を低下させる保護動作を順変換器12に実行させるように構成されている。幾つかの実施形態では、直流送電路30の直流電圧Vdcの上昇を検知するために、直流送電路30に電圧計36が接続され、電圧計36によって測定された直流電圧Vdcが保護装置16に入力される。
【0044】
制御装置18は、順変換器12の保護動作に対応して、送電端20への無効電力の供給量を増大させる安定化動作を少なくとも1つの発電システム10に実行させるように構成されている。従って、制御装置18は、少なくとも1つの発電システム10における無効電力の発電量を調整するように構成された無効電力調整部37を有する。幾つかの実施形態では、順変換器12の保護動作を検知するために、交流送電路24に電圧計38が接続され、電圧計38によって測定された交流電圧Vacが制御装置18に入力される。
なお、保護動作に対応して安定化動作を実行させることには、保護動作の実行直後に安定化動作を実行させること以外に、保護動作の実行直前に安定化動作を実行させることや、保護動作の実行と同時に安定化動作を実行させることも含まれる。
【0045】
ここで、図2は、制御装置18が実行する電力システムの制御方法の一例の概略的な手順を示すフローチャートである。
図2の制御方法では、制御装置18は、予め設定された閾値電圧Vth2を読み込む(読込ステップS10)。それから、制御装置18は、受電端22の交流電圧Vacを取得し(交流電圧取得ステップS12)、交流電圧Vacが読み込んだ閾値電圧Vth2を下回っているか否か判定する(判定ステップS14)。
【0046】
判定ステップS14の結果、交流電圧Vacが閾値電圧Vth2を下回っている場合(はいの場合)、制御装置18は、発電システム10に安定化動作を実行させる(安定化動作実行ステップS16)。
この後、制御装置18は、再び受電端22の交流電圧Vacを取得し(交流電圧取得ステップS18)、閾値電圧Vth2を下回っているか否か判定する(判定ステップS20)。
判定ステップS20の結果、交流電圧Vacが閾値電圧Vth2を下回っている場合(はいの場合)、交流電圧Vacが閾値電圧Vth2を下回るまで、交流電圧取得ステップS18と判定ステップ20が繰り返される。
【0047】
一方、判定ステップS20の結果、交流電圧Vacが閾値電圧Vth2以上である場合(いいえの場合)、制御装置18は発電システム10の安定化動作を停止させ、一連の手順が終了する。また、判定ステップS14の結果、交流電圧Vacが閾値電圧Vth2以上である場合(はいの場合)にも、一連の手順が終了する。
そして、一連の手順が終了すると、制御装置18は、電力システムの稼働中、図2の制御方法を繰り返し実行する。
【0048】
上述した電力システムによれば、逆変換器14よりも需用者側で何らかの異常が発生し、直流送電路30の直流電圧Vdcが閾値Vth1を超えて上昇すると、順変換器12が保護動作を実行する。
ここで図3は、送電端20での交流電圧と有効電力との関係を示すP−V曲線を、発電システム10から供給される有効電力Psとともに示すグラフであり、(a)は正常状態、(b)は順変換器12が保護動作を実行した直後、そして、(c)は発電システム10が安定化動作を実行した直後のP−V曲線を示すグラフである。
【0049】
図3(a)では、P−V曲線と有効電力Psとの交点(運転点)が存在しており、当然のことながら正常状態では、発電システム10は安定に動作する。
これに対し、図3(b)では、順変換器12の保護動作により図3(a)に比べてP−V曲線の右方への膨らみが小さくなり、P−V曲線と有効電力Psとの交点(運転点)が存在していない。従って、順変換器12が保護動作を実行すると、発電システム10の動作が不安定になり、電圧崩壊が生じて発電システム10がトリップする虞がある。
【0050】
そこで、図1の電力システムや図2の電力システムの制御方法では、順変換器12の保護動作に対応して、発電システム10が安定化動作を実行する。安定化動作によって、発電システム10から送電端20に供給される無効電力が増大されると、図3(c)に示したように、図3(b)に比べてP−V曲線の右方への膨らみが大きくなり、送電端20におけるP−V曲線と有効電力Psとの交点(運転点)が確保される。このため、順変換器12の保護動作にかかわらずに発電システム10の動作が安定し、発電システム10のトリップが抑制される。
【0051】
図4は、幾つかの実施形態に係る発電システム10の構成を、制御装置18とともに概略的に示す図である。
発電システム10は、少なくとも1つの発電装置を有し、幾つかの実施形態では、図4に示したように、風力を利用して発電するように構成された少なくとも1つの風力発電装置40を有する。
風力発電装置40は、少なくとも1つの翼42と、翼42とともに回転するように構成された主軸44と、主軸44のトルクを利用して発電する発電機46とを有する。
【0052】
幾つかの実施形態では、風力発電装置40は、主軸44のトルクを発電機46に伝達するための動力伝達機構として、油圧トランスミッション48を有する。油圧トランスミッション48は、主軸44のトルクにより作動油の圧力を上昇させる油圧ポンプ50と、作動油の圧力を利用して発電機46の回転子を駆動する油圧モータ52とを有する。
【0053】
幾つかの実施形態では、発電機46は巻線界磁同期発電機であり、風力発電装置40は、励磁電流を調整するための励磁機54と、風力発電装置40の制御を行うように構成された風車制御器56を有する。風車制御器56は、励磁機54を制御するための励磁制御部58を有する。
ここで、図5は、巻線界磁同期発電機における励磁電流と電機子電流との関係を示すグラフである。図5に示したように、発電機46が巻線界磁同期発電機の場合、励磁電流を増加させることにより遅れ電流が増大し、発電機46から供給される遅れ無効電力を増大させることができる。
そこでこの構成では、制御装置18の無効電力調整部37が、順変換器12の保護動作に対応して風車制御器56に無効電力の発電量を増大させるように命令すると、風車制御器56の励磁制御部58が、励磁電流が増加するように励磁機54の制御(界磁制御)を行う。
【0054】
この構成によれば、安定化動作として巻線界磁同期発電機の界磁制御を行うことにより、巻線界磁同期発電機が出力する無効電力を迅速に増加させることができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システム10のトリップが抑制される。
【0055】
幾つかの実施形態では、発電システム10は複数の風力発電装置40を含み、制御装置18は、複数の風力発電装置40のうちから選択された少なくとも1つの風力発電装置40に安定化動作を実行させるように構成されている。
【0056】
この構成によれば、複数の風力発電装置40のうちから選択された少なくとも1つの風力発電装置40に安定化動作を実行させることで、送電端20に必要十分な無効電力を供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システム10のトリップが抑制される。
【0057】
幾つかの実施形態では、制御装置18は、複数の風力発電装置40の各々における有効電力の発電量に基づいて、複数の風力発電装置40のうちから、安定化動作を実行する少なくとも1つの風力発電装置40を選択するように構成されている。
【0058】
この構成によれば、有効電力の発電量に基づいて安定化動作を実行する少なくとも1つの風力発電装置40を選択することにより、送電端20に必要十分な無効電力を確実に供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システム10のトリップが抑制される。
幾つかの実施形態では、制御装置18は、複数の風力発電装置40のうちから、有効電力の発電量がより小さいものに、安定化動作を実行させる。
【0059】
幾つかの実施形態では、電力システムは、複数の発電システム10を有し、制御装置18は、送電端20から発電システム10の各々までの送電距離に基づいて、発電システム10のうちから安定化動作を実行させる発電システム10を選択するように構成されている。
【0060】
この構成によれば、送電距離に基づいて安定化動作を実行する少なくとも1つの発電システム10を選択することにより、送電端20に必要十分な無効電力を確実に供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システム10のトリップが抑制される。
【0061】
幾つかの実施形態では、制御装置18は、複数の発電システム10のうちから、送電端20までの送電距離がより短い発電システム10に、安定化動作を実行させる。これにより、送電路のキャパシタンスによる損失が抑制され、送電端20に必要十分な無効電力を確実に供給することができる。
【0062】
図6は、幾つかの実施形態に係る発電システム10の構成を、制御装置18とともに概略的に示している。また、図7は、図6の電力システムにおいて、制御装置18が実行する制御方法の一例の概略的な手順を示すフローチャートである。
図6に示したように、幾つかの実施形態では、制御装置18は有効電力調整部60を有し、有効電力調整部60は、保護動作に対応して、送電端20に供給する有効電力を減少させる出力低減動作を少なくとも一つの発電システム10に実行させるように構成されている。
【0063】
図7の制御方法では、制御装置18は、安定化動作実行ステップS16の後に、発電システム10に出力低減動作を実行させているが(出力低減動作実行ステップS30)、出力低減動作実行ステップS30は、安定化動作実行ステップS16と同時に実行されてもよい。
また、図7のフローチャートでは、制御装置18は、安定化動作停止ステップS22の後に、出力低減動作を停止させているが(出力低減動作停止ステップS32)、出力低減動作停止ステップS32は、安定化動作停止ステップS22と同時に実行されてもよい。
【0064】
保護動作は、受電端22での交流電圧Vacを低下させる動作であるのに対し、安定化動作は、受電端22での交流電圧Vacを上昇させる動作である。従って、安定化動作と保護動作は相反する作用を有し、安定化動作を優先しすぎると、保護動作の作用が抑制されてしまう。ここで、安定化動作は、受電端22での交流電圧Vacの急速な低下により送電端20での交流電圧と有効電力Psとのバランスが崩れ、発電システム10の運転点が短期間失われることを防止することを目的としている。安定化動作によって保護動作の初期に運転点を確保することができれば、安定化動作以外の方法で運転点を維持することが可能である。
【0065】
そこで図6及び図7の構成では、発電システム10が、安定化動作に加え、出力低減動作を実行する。出力低減動作は、図3(c)では有効電力Psを左側に移動させるものであり、送電端20での電圧と有効電力Psとのバランスを図って運転点を維持し、安定化動作が保護動作に与える影響を解消することができる。この結果として、直流送電路30や順変換器12が過電圧から確実に保護されながら、安定な運転点が確実に確保され、発電システム10のトリップが抑制される。
【0066】
幾つかの実施形態では、図6に示したように、油圧ポンプ50及び油圧モータ52は可変容量タイプであり、風車制御器56は、油圧ポンプ50及び油圧モータ52のうち一方又は両方の容量を制御するように構成された容量制御部62を有する。容量制御部62は、油圧ポンプ50及び油圧モータ52ののうち一方又は両方の容量を制御することにより、油圧モータ52から発電機46に入力されるトルクを増減させ、発電機46における有効電力Psの発電量を増減させることができる。従って、制御装置18は、油圧ポンプ50及び油圧モータ52の容量制御を利用して、発電システム10に出力低減動作を実行させることができる。
【0067】
幾つかの実施形態では、図6に示したように、風力発電装置40は、翼42のピッチ角を調整するように構成されたピッチ角調整部64を有し、風車制御器56は、ピッチ角調整部64を制御するピッチ角制御部66を有する。ピッチ角制御部66は、翼42のピッチ角を制御することによって、主軸44から油圧ポンプ50に入力されるトルクを増減させ、発電機46における有効電力Psの発電量を増減させることができる。従って、制御装置18は、ピッチ角制御を利用して、発電システム10に出力低減動作を実行させることができる。
【0068】
図8は、幾つかの実施形態に係る電力システムの概略的な構成を示している。
図8に示したように、幾つかの実施形態では、電力システムは、複数の発電システム10を有する。そして、制御装置18は、複数の発電システム10の各々の運転情報を収集するように構成された情報収集部68を有し、収集された運転情報に基づいて、発電システム10のうちから安定化動作を実行させる発電システム10を選択するように構成されている。
【0069】
この構成によれば、制御装置18が、収集された運転情報に基づいて、安定化動作を実行させる発電システム10を選択することにより、送電端20に必要十分な無効電力を確実に供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システム10のトリップが抑制される。
【0070】
幾つかの実施形態では、電力システムは、図8に示したように、発電システム10の運転情報として発電システム10の出力電圧を測定する電圧計70を有していてもよい。
【0071】
幾つかの制御装置では、電力システムは、複数の発電システム10に対応して、図8に示したように複数の制御装置18を有していてもよい。この場合、複数の制御装置18は、他の制御装置18から収集した運転情報に基づいて、制御下にある発電システム10に安定化動作や出力低減動作を実行させることができる。
あるいは、複数の制御装置18のうち一つの制御装置18が中央制御装置として機能し、いずれかの発電システム10に安定化動作や出力低減動作を実行させることができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、制御装置18は、受電端22での交流電圧Vac及び直流送電路30での直流電圧Vdcのうち一方又は両方に応じて、送電端20に供給する有効電力を減少させるように構成されている。
【0073】
この構成によれば、受電端22での交流電圧Vac及び直流送電路30での直流電圧Vdcのうち一方又は両方に応じて、送電端20に供給する有効電力を減少させるように構成されているので、発電システム10から送電端20を介して受電端22に供給される電力と、順変換器12から直流送電路30に供給される電力との間でバランスを的確に確保することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システム10のトリップが抑制される。
【0074】
幾つかの実施形態では、複数の発電システム10の各々は、洋上に配置された複数の風力発電装置40を含み、順変換器12は洋上に配置され、逆変換器14は陸上に配置され、直流送電路30の少なくとも一部は海に敷設されている。
【0075】
この場合、図8に例示したように、複数の発電システム10の各々は、洋上ウインドファーム72を構成している。制御装置18及び送電用変圧器26は、洋上ウインドファーム72に対応して洋上に設置され、洋上変電所74を構成している。制御装置18は、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)と称される監視制御装置によって構成することができる。
【0076】
順変換器12及び変換用変圧器28は、順変換器12を制御するための順変換器制御装置76とともに洋上に設置され、洋上変換所78を構成している。なお、保護装置16は、順変換器制御装置76の一部であってもよい。逆変換器14及び変換用変圧器34は、逆変換器14を制御するための逆変換器制御装置80とともに陸上に設置され、陸上変換所82を構成している。
【0077】
この構成によれば、洋上に配置された複数の風力発電装置40から、直流送電路30を介して陸上に電力を効率的に送電しながら、FRT要求を満たすことができる。
【0078】
本発明は、上述した幾つかの実施形態に限定されることはなく、上述した幾つかの実施形態に変形を加えた形態や、上述した幾つかの実施形態を組み合わせた形態も含む。
例えば、幾つかの実施形態では、電力システムは、受電端22での交流電圧Vacに関連する情報を取得するように構成されたセンサとして、電圧計38を有していたけれども、センサはこれに限定されることはない。
【0079】
例えば、制御装置18は、保護装置16が出力した保護動作の実行に関する情報(保護動作実行情報)を検知するセンサを有していてもよい。或いは、制御装置18は、直流送電路30の直流電圧Vdcの上昇に繋がるような需用者側における事故情報を検知するセンサを有していてもよい。また制御装置18は、順変換器制御装置76や逆変換器制御装置80から、直流送電路30の直流電圧Vdcの上昇に繋がるような需用者側の事故情報を直接受け取ってもよい。
【0080】
なお、受電端22での交流電圧Vacに関連する情報に基づいて、少なくとも1つの発電システム10に安定化動作を実行させることにより、順変換器12の保護動作に的確に対応して、送電端20に無効電力を供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システム10のトリップが抑制される。
特に電圧計38によれば、順変換器12の保護動作に的確に対応して、送電端20に無効電力を供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システム10のトリップが抑制される。
【0081】
幾つかの実施形態では、風力発電装置40は、発電機46として巻線界磁同期発電機を有していたけれども、図9(a)に示したように巻線形誘導発電機を有していてもよい。図9(a)の構成はDFIG(Double−Fed
Induction Generaor)と称され、巻線形誘導発電機の巻線が、発電機側インバータ86、DCバス88及び系統側インバータ90からなる電力変換器を介して送電路に接続される。一方、発電機46は、機械式ギヤからなるトランスミッション91を介して主軸44に連結される。
【0082】
幾つかの実施形態では、風力発電装置40の発電機46としての巻線界磁同期発電機は、油圧トランスミッションを介して主軸44に連結されていたが、図9(b)に示したように、主軸44に直結されていてもよい。この場合、巻線界磁同期発電機は、コンバータ92、DCバス94及びインバータ96からなる電力変換器を介して送電路に接続される。
また、図9(b)の構成において、発電機46は、永久磁石を用いた永久磁石同期発電機であってもよく、このような構成はFC(Full−Converter)と称される。
【0083】
図9(a)や(b)に示した風力発電装置40を用いた場合でも、制御装置18が電力変換器を制御することによって、図4の風力発電装置40と同様に、機械的な動作を要さずに電気的な動作のみで無効電力の供給量を変化させることができ、迅速に無効電力の供給量を変化させることができる。
ただし、図9(a)に示した風力発電装置40に比べ、図4の風力発電装置40は、無効電力の調整範囲が広く、より多くの無効電力を供給することができる。
また、図9(b)に示した風力発電装置40に比べ、図4の風力発電装置40は、電力変換器を有していないため制御上の制約が少なく、大きな無効電力を瞬時に供給することができる。
【0084】
最後に、発電システム10の発電装置は、風力発電装置40に限定されることはなく、発電システム10は、火力発電装置、水力発電装置、原子力発電装置、太陽光発電装置及び潮力発電装置等を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 発電システム
12 順変換器
14 逆変換器
16 保護装置
18 制御装置
20 送電端
22 受電端
24 交流送電路
26 送電用変圧器
28 変換用変圧器
30 直流送電路
32 交流送電路
34 変換用変圧器
36 電圧計
38 電圧計
40 風力発電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9