【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る電力システムは、
送電端に対し交流電力を供給するように構成された少なくとも1つの発電システムと、
前記送電端に対し交流送電路を介して接続される受電端を有し、前記交流電力を直流電力に変換するように構成された順変換器と、
直流送電路を介して前記順変換器に接続され、前記直流電力を交流電力に変換するように構成された逆変換器と、
前記直流送電路の直流電圧が閾値を超えて上昇したときに前記受電端での交流電圧を低下させる保護動作を前記順変換器に実行させるように構成された保護装置と、
前記順変換器の保護動作に対応して、前記送電端への無効電力の供給量を増大させる安定化動作を前記少なくとも1つの発電システムに実行させるように構成された制御装置と
を備える。
【0009】
この構成によれば、順変換器の保護動作に対応して、発電システムが安定化動作を実行し、発電システムから送電端に無効電力が供給される。このため、送電端における交流電圧と有効電力の関係を表すP−V曲線において安定な運転点が確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0010】
幾つかの実施形態では、
前記少なくとも1つの発電システムは少なくとも1つの風力発電装置を含み、
前記少なくとも1つの風力発電装置は、風力を利用して発電するように構成された巻線界磁同期発電機を有する同期発電機付き風力発電装置からなり、
前記制御装置は、前記巻線界磁同期発電機の界磁制御を行うことにより前記同期発電機付き風力発電装置に前記安定化動作を実行させるように構成されている。
【0011】
この構成によれば、巻線界磁同期発電機の界磁制御を行うことにより、巻線界磁同期発電機が出力する無効電力を迅速に増加させることができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0012】
幾つかの実施形態では、
前記少なくとも1つの発電システムは複数の風力発電装置を含み、
前記制御装置は、前記複数の風力発電装置のうちから選択された少なくとも1つの風力発電装置に前記安定化動作を実行させるように構成されている。
【0013】
この構成によれば、複数の風力発電装置のうちから選択された少なくとも1つの風力発電装置に安定化動作を実行させることで、送電端に必要十分な無効電力を供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0014】
幾つかの実施形態では、
前記制御装置は、前記複数の風力発電装置の各々における有効電力の発電量に基づいて、前記複数の風力発電装置のうちから、前記安定化動作を実行する前記少なくとも1つの風力発電装置を選択するように構成されている。
【0015】
この構成によれば、有効電力の発電量に基づいて安定化動作を実行する少なくとも1つの風力発電装置を選択することにより、送電端に必要十分な無効電力を確実に供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0016】
幾つかの実施形態では、
前記少なくとも1つの発電システムは複数の発電システムからなり、
前記制御装置は、前記送電端から前記発電システムの各々までの送電距離に基づいて、前記発電システムのうちから前記安定化動作を実行させる発電システムを選択するように構成されている。
【0017】
この構成によれば、送電距離に基づいて安定化動作を実行する少なくとも1つの発電システムを選択することにより、送電端に必要十分な無効電力を確実に供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0018】
幾つかの実施形態では、
前記少なくとも1つの発電システムは複数の発電システムからなり、
前記制御装置は、前記複数の発電システムの各々の運転情報を収集するように構成されるとともに、収集された前記運転情報に基づいて、前記発電システムのうちから前記安定化動作を実行させる発電システムを選択するように構成されている。
【0019】
この構成によれば、制御装置が、収集された運転情報に基づいて安定化動作を実行させる発電システムを選択することにより、送電端に必要十分な無効電力を確実に供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0020】
幾つかの実施形態では、
電力システムは、前記受電端での交流電圧に関連する情報を取得するように構成されたセンサを更に備え、
前記制御装置は、前記センサによって取得された情報に基づいて、前記少なくとも1つの発電システムに前記安定化動作を実行させるように構成されている。
【0021】
この構成によれば、受電端での交流電圧に関連する情報に基づいて、少なくとも1つの発電システムに安定化動作を実行させることにより、順変換器の保護動作に的確に対応して、送電端に無効電力を供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0022】
幾つかの実施形態では、
前記センサは、前記受電端での前記交流電圧を測定するように構成された電圧計からなる。
この構成によれば、受電端での交流電圧に基づいて、少なくとも1つの発電システムに安定化動作を実行させることにより、順変換器の保護動作に的確に対応して、送電端に無効電力を供給することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0023】
幾つかの実施形態では、
前記制御装置は、前記保護動作に対応して、前記送電端に供給する有効電力を減少させる出力低減動作を前記少なくとも一つの発電システムに実行させるように構成されている。
【0024】
保護動作は、受電端での交流電圧を低下させる動作であるのに対し、安定化動作は、受電端での交流電圧を上昇させる動作である。従って、安定化動作と保護動作は相反する作用を有し、安定化動作を優先しすぎると、保護動作の作用が抑制されてしまう。ここで、安定化動作は、受電端での交流電圧の急速な低下により送電端での電圧と有効電力とのバランスが崩れ、発電システムの運転点が短期間失われることを防止することを目的としている。安定化動作によって保護動作の初期に運転点を確保することができれば、安定化動作以外の方法で運転点を維持することが可能である。そこでこの構成では、安定化動作に加え、出力低減動作を実行することで、送電端での電圧と有効電力とのバランスを図って運転点を維持し、安定化動作が保護動作に与える影響を解消している。この結果として、直流送電路や順変換器が過電圧から確実に保護されながら、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0025】
幾つかの実施形態では、
前記制御装置は、前記受電端での交流電圧及び前記直流送電路での直流電圧のうち一方又は両方に応じて、前記送電端に供給する有効電力を減少させるように構成されている。
【0026】
この構成によれば、受電端での交流電圧及び前記直流送電路での直流電圧のうち一方又は両方に応じて、送電端に供給する有効電力を減少させるように構成されているので、発電システムから送電端を介して受電端に供給される電力と、順変換器から直流送電路に供給される電力との間でバランスを的確に確保することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0027】
幾つかの実施形態では、
前記少なくとも1つの発電システムは複数の発電システムからなり、
前記複数の発電システムの各々は、洋上に配置された複数の風力発電装置を含み、
前記順変換器は洋上に配置され、
前記逆変換器は陸上に配置され、
前記直流送電路の少なくとも一部は海に敷設されている。
【0028】
この構成によれば、洋上に配置された複数の風力発電装置から、直流送電路を介して陸上に電力を効率的に送電しながら、FRT要求を満たすことができる。
【0029】
本発明の少なくとも一実施形態の電力システムの運転方法は、
送電端に対し交流電力を供給するように構成された少なくとも1つの発電システムと、
前記送電端に対し交流送電路を介して接続される受電端を有し、前記交流電力を直流電力に変換するように構成された順変換器と、
直流送電路を介して前記順変換器に接続され、前記直流電力を交流電力に変換するように構成された逆変換器と、
前記直流送電路の直流電圧が閾値を超えて上昇したときに前記受電端での交流電圧を低下させる保護動作を前記順変換器に実行させるように構成された保護装置とを備える電力システムの運転方法において、
前記順変換器の保護動作に対応して、前記送電端への無効電力の供給量を増大させる安定化動作を前記少なくとも1つの発電システムに実行させる安定化動作ステップ
を備える。
【0030】
この構成によれば、順変換器の保護動作に対応して、発電システムが安定化動作を実行し、発電システムから送電端に無効電力が供給される。このため、送電端における交流電圧と有効電力の関係を表すP−V曲線において安定な運転点が確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0031】
幾つかの実施形態では、
前記少なくとも1つの発電システムは少なくとも1つの風力発電装置を含み、
前記少なくとも1つの風力発電装置は、風力を利用して発電するように構成された巻線界磁同期発電機を有する同期発電機付き風力発電装置からなり、
前記安定化動作ステップにおいて、前記巻線界磁同期発電機の界磁制御を行うことにより前記同期発電機付き風力発電装置に前記安定化動作を実行させる。
【0032】
この構成によれば、巻線界磁同期発電機の界磁制御を行うことにより、巻線界磁同期発電機が出力する無効電力を迅速に増加させることができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0033】
幾つかの実施形態では、
電力システムの運転方法は、前記安定化動作ステップの後に、前記送電端に供給する有効電力を減少させる出力低減動作を前記少なくとも一つの発電システムに実行させる出力低減ステップを更に備える。
【0034】
この構成によれば、安定化動作を少なくとも1つの発電システムに実行させた後に、出力低減動作を少なくとも一つの発電システムに実行させることで、発電システムから送電端を介して受電端に供給される電力と、順変換器から直流送電路に供給される電力との間でバランスを確保することができる。この結果として、安定な運転点が確実に確保され、発電システムのトリップが抑制される。
【0035】
本発明の少なくとも一実施形態の電力システムの制御装置は、
送電端に対し交流電力を供給するように構成された少なくとも1つの発電システムと、
前記送電端に対し交流送電路を介して接続される受電端を有し、前記交流電力を直流電力に変換するように構成された順変換器と、
直流送電路を介して前記順変換器に接続され、前記直流電力を交流電力に変換するように構成された逆変換器と、
前記直流送電路の直流電圧が閾値を超えて上昇したときに前記受電端での交流電圧を低下させる保護動作を前記順変換器に実行させるように構成された保護装置とを備える電力システムの制御装置であって、
前記順変換器の保護動作に対応して、前記送電端への無効電力の供給量を増大させる安定化動作を前記少なくとも1つの発電システムに実行させるように構成されている。
【0036】
この構成によれば、順変換器の保護動作に対応して、発電システムが安定化動作を実行し、発電システムから送電端に無効電力が供給される。このため、送電端における交流電圧と有効電力の関係を表すP−V曲線において安定な運転点が確保され、発電システムのトリップが抑制される。