【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態に係る風車ロータは、
ハブと、
前記ハブを覆うスピナーと、
前記ハブに取り付けられる少なくとも2枚の主ブレードとを備える風車ロータであって、
前記風車ロータの回転方向において隣り合う2枚の前記主ブレードの翼根部間の領域の少なくとも一部を覆うように設けられ、前記ハブ又は前記スピナーから前記風車ロータの径方向外方に延出し、前記主ブレードよりも翼長が短い少なくとも一枚の副ブレードを備え、
各々の前記副ブレードは、該副ブレードの翼長方向位置xに対応する前記風車ロータの半径位置rにおける前記主ブレードの最適コード長をC
optとし、前記半径位置rにおける前記主ブレードのコード長をC
mainとしたときに、該主ブレードのコード長C
mainが0.5C
opt以上となる範囲(C
main≧0.5C
opt)における前記副ブレードの前記翼長方向位置xにおいて、C
opt−C
main≦C
s≦0.5C
optで表わされるコード長C
sを有し、
前記主ブレードの最適コード長C
optは以下の式(1)
(但し、C
l:揚力係数、N:主ブレードの翼枚数、λ;翼先端周速比、R:主ブレード半径、μ;r/Rである。)
で表わされることを特徴とする。
【0010】
一般的な風車翼の場合と同様に上記風車ロータの主ブレードに上述の制約条件(例えば翼旋回輪軸受への取付け構造上の制約)が適用されると、主ブレードの翼根部におけるコード長は、最適な空力性能を実現し得るコード長よりも短くなる。この場合、風車ロータの内側セクションでは風のエネルギーを風車ロータの回転エネルギーに効率的に変換することが難しくなる。そこで、上記風車ロータでは、隣り合う2枚の主ブレードの翼根部間の領域の少なくとも一部を覆うように副ブレードを設けている。また、副ブレードは、翼長方向位置xにおけるコード長C
sがC
opt−C
main≦C
s≦0.5C
optとなるように構成している。これにより、風車ロータの半径位置rにおける最適コード長C
optに対する主ブレードのコード長C
mainの不足分を補うことができ、主ブレード及び副ブレードの組み合わせによって、風車ロータ全体としての内側セクションにおける空力性能を向上させることができる。よって、風車ロータにおける翼効率の効果的な改善が図れる。
【0011】
幾つかの実施形態において、各々の前記副ブレードのコード長は、翼根側から翼先端側へ向けて単調減少するように構成される。
これにより、全ブレード(主ブレード及び副ブレード)のコード長の総和を風車ロータの半径位置毎に性能最適となる値により一層近づけることができ、風車ロータの空力性能の更なる向上が可能となる。また、上記実施形態によれば副ブレードの翼根側のコード長が大きくなる。すなわち、ハブ又はスピナへ取り付けられる副ブレードの翼根側の構造強度を高くすることができる。
【0012】
幾つかの実施形態において、各々の前記副ブレードの翼長は、前記主ブレードの翼根部から該主ブレードの最大コード長の半径位置までの距離よりも短い。
このように、空力性能が他の部位よりも低い主ブレードの翼根部側領域に副ブレードが設置され、空力性能が比較的良好に確保される主ブレードの翼先端部側領域まで副ブレードが延在しないように風車ロータを構成することによって、風車ロータの大幅な重量増大を防ぎながらも空力性能の改善が可能となる。
【0013】
幾つかの実施形態において、各々の前記副ブレードのツイスト角βは以下の式(2)
(但し、λ
design:主ブレードの設計翼先端周速比、μ;r/R、r:風車ロータの半径位置、R:主ブレード半径、α
design:副ブレードの設計迎角である。)
で表され、上記式(2)において、λ
designは7以上12以下であり、α
designは5°以上10°以下である。
一般に、ブレードの局所周速比(local tip speed ratio, λr=λ×μ)は半径位置によって異なるので、最適な空力性能が得られる条件はブレードの半径位置によって異なる。そのため、各半径位置における副ブレードのツイスト角を規定する上記式(2)において、主設計翼先端周速比及び副ブレードの迎角を上記範囲内に設定することにより、副ブレードの任意の翼長方向位置において高い効率を実現することができる。
【0014】
幾つかの実施形態において、各々の前記副ブレードは、前記主ブレードより風上側に設けられている。
これにより、副ブレードが主ブレードの後流の影響を受けることなく風車ロータの内側セクションにおける所期の空力性能改善効果を享受できる。
【0015】
幾つかの実施形態において、各々の前記副ブレードは、前記隣り合う2枚の主ブレードの翼長方向の二等分線に沿って設けられている。
これにより、主ブレードと副ブレードとの距離を十分に確保することができ、副ブレードが主ブレード周囲の風の流れの影響を受け難くなるため風車ロータの内側セクションにおける所期の空力性能改善効果を享受できる。
【0016】
一実施形態において、各々の前記副ブレードは、前記ハブの風上側の面に取り付けられている。
一般的に、主ブレードはハブの回転軸を中心とした外周に沿って取り付けられる。そのため、ハブの風上側の面に副ブレードを取り付けると主ブレードは副ブレードより風下側に位置することとなる。これにより、副ブレードが主ブレードの後流の影響を受けることなく、風車ロータの内側セクションの所期の空力性能改善効果を享受できる。また、ハブの風上側の面には主ブレードが取り付けられることが少ないため、副ブレードを取り付けるための設計自由度が高くなる。
【0017】
一実施形態において、各々の前記副ブレードは、前記ハブの風上側の面から前記風車ロータの半径方向に延出するように前記ハブに一体的に設けられる。
このように、副ブレードはハブの風上側の面から延出した構成であるため、副ブレードが主ブレードの後流の影響を受けることなく、風車ロータの内側セクションの所期の空力性能改善効果を享受できる。また、副ブレードがハブに一体的に設けられているので、副ブレードの構造強度を高くできるとともに副ブレードの回転エネルギーをハブへ効率よく伝達可能となる。
【0018】
幾つかの実施形態において、各々の前記副ブレードには耐雷レセプタが取り付けられている。
これにより、副ブレードの耐雷性能の向上が図れる。
【0019】
幾つかの実施形態において、各々の前記副ブレードは、該副ブレードの翼先端部から翼根部にわたる全領域において断面翼型形状を有する。
このように、副ブレードが、翼先端部から翼根部にわたる全領域において断面翼型形状を有するように構成することで、副ブレードの空力性能を高く維持し、風車ブレードの内側セクションにおける効率をより一層向上させることができる。
【0020】
本発明の少なくとも一実施形態に係る風力発電装置は、
風車ロータと、
前記風車ロータの回転エネルギーを電力に変換するための発電機とを備え、
前記風車ロータは、
ハブと、
前記ハブを覆うスピナーと、
前記ハブに取り付けられる少なくとも2枚の主ブレードと、
前記風車ロータの回転方向において隣り合う2枚の前記主ブレードの翼根部間の領域の少なくとも一部を覆うように設けられ、前記ハブ又は前記スピナーから前記風車ロータの径方向外方に延出し、前記主ブレードよりも翼長が短い少なくとも一枚の副ブレードを備え、
各々の前記副ブレードは、該副ブレードの翼長方向位置xに対応する前記風車ロータの半径位置rにおける前記主ブレードの最適コード長をC
optとし、前記半径位置rにおける前記主ブレードのコード長をC
mainとしたときに、該主ブレードのコード長C
mainが0.5C
opt以上となる範囲(C
main≧0.5C
opt)における前記副ブレードの前記翼長方向位置xにおいて、C
opt−C
main≦C
s≦0.5C
optで表わされるコード長C
sを有し、
前記主ブレードの最適コード長C
optは以下の式(1)
(但し、C
l:揚力係数、N:主ブレードの翼枚数、λ;翼先端周速比、R:主ブレード半径、μ;r/Rである。)
で表わされることを特徴とする。
【0021】
上記風力発電装置によれば、隣り合う2枚の主ブレードの翼根部間の領域の少なくとも一部を覆うように設けられた副ブレードを備えているので、風車ロータの半径位置rにおける最適コード長C
optに対する主ブレードのコード長C
mainの不足分を補うことができ、主ブレード及び副ブレードの組み合わせによって、風車ロータの内側セクションにおける空力性能を向上させることができる。よって、風車ロータにおける翼効率の効果的な改善が図れる。