(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946835
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】実質的に閉ループの方法およびシステムにおける多結晶シリコンの製造
(51)【国際特許分類】
C01B 33/03 20060101AFI20160623BHJP
C01B 33/039 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
C01B33/03
C01B33/039
【請求項の数】51
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-534917(P2013-534917)
(86)(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公表番号】特表2013-540095(P2013-540095A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】US2011052691
(87)【国際公開番号】WO2012054170
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年9月17日
(31)【優先権主張番号】12/910,553
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/910,540
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】392026316
【氏名又は名称】エムイーエムシー・エレクトロニック・マテリアルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEMC ELECTRONIC MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】サティシュ・ブサラプ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン・ユエ
(72)【発明者】
【氏名】プニート・グプタ
【審査官】
廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04092446(US,A)
【文献】
特公昭60−008969(JP,B2)
【文献】
特公昭62−028083(JP,B2)
【文献】
特開平11−049508(JP,A)
【文献】
特開昭55−027890(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102180467(CN,A)
【文献】
特開昭57−017415(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102030329(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
B02C 1/00−7/18
B02C 15/00−17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶シリコンを製造する実質的に閉ループの方法であって、
トリクロロシランおよび水素を流動床反応器に導入して、多結晶シリコンと、四塩化ケイ素、水素および未反応のトリクロロシランを含む排ガスとを生成すること;
前記排ガスからのある量の四塩化ケイ素および水素を水素化反応器に導入して、トリクロロシランおよび塩化水素を生成すること;
塩化水素とシリコンとを接触させて、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素を生成すること;ならびに
塩化水素とシリコンとを接触させることにより生成するトリクロロシランを前記流動床反応器に導入して、多結晶シリコンを生成すること
を含む、方法。
【請求項2】
塩化水素とシリコンとが、塩素化反応器に導入されて、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素を含む塩素化生成物ガスを生成し、前記方法が、該塩素化生成物ガスを精製システムに導入して精製したトリクロロシランストリームおよび精製した四塩化ケイ素ストリームを生成することを含み、該精製したトリクロロシランストリームが前記流動床反応器に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記排ガスを排ガス分離器に導入して、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素から水素を分離し、該トリクロロシランおよび四塩化ケイ素を前記塩素化生成物ガス精製システムに導入し、前記精製した四塩化ケイ素ストリームを前記水素化反応器に導入する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
排ガス分離器が気液分離器である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
四塩化ケイ素および水素を前記水素化反応器に導入して、トリクロロシラン、塩化水素、未反応の水素および未反応の四塩化ケイ素を含む水素化ガスを生成し、該水素化ガスを水素化ガス分離器に導入して、水素および未反応の塩化水素からトリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を分離し、該トリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を前記塩素化ガス精製システムに導入する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
水素化ガス分離器が気液分離器である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水素および塩化水素ガスを分離システムに導入して、水素と塩化水素とを分離し、分離した塩化水素を前記塩素化反応器に導入し、分離した水素を前記流動床反応器および前記水素化反応器の少なくとも一方に導入する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記塩素化生成物ガスが、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、水素および未反応の塩化水素を含み、前記精製システムが、塩素化ガス分離器、四塩化ケイ素分離器およびトリクロロシラン精製器を含み、
前記塩素化生成物ガスが塩素化ガス分離器に導入されて、水素および未反応の塩化水素からトリクロロシランおよび四塩化ケイ素を分離し、
分離したトリクロロシランおよび四塩化ケイ素が四塩化ケイ素分離器に導入されて、トリクロロシランから四塩化ケイ素を分離し、トリクロロシラン供給ガスを生成し、
トリクロロシラン供給ガスがトリクロロシラン精製器に導入されて、供給ガスから不純物を除去し、ならびに
精製したトリクロロシラン供給ガスが前記流動床反応器に導入されて、多結晶シリコンを生成する、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
塩素化ガス分離器が気液分離器であり、四塩化ケイ素分離器が蒸留塔であり、トリクロロシラン精製器が蒸留塔である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
分離した水素および未反応の塩化水素を分離システムに導入して、水素と塩化水素とを分離し、分離した塩化水素を前記塩素化反応器に導入し、分離した水素を前記流動床反応器および前記水素化反応器の少なくとも一方に導入する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記分離システムが、水素分離器、水素精製器および塩化水素精製器を含み、
水素および塩化水素が水素分離器に導入されて、水素リサイクルガスおよび塩化水素リサイクルガスを生成し、
水素リサイクルガスが水素精製器に導入されて、水素リサイクルガスから不純物を除去し、
塩化水素リサイクルガスが塩化水素精製器に導入されて、塩化水素ガスから不純物を除去し、ならびに
精製した水素リサイクルガスが、流動床反応器および水素化反応器の少なくとも一方に導入され、ならびに
精製した塩化水素リサイクルガスが塩素化反応器に導入される、請求項7または10に記載の方法。
【請求項12】
水素分離器がバブラーであり、水素精製器が吸着器であり、塩化水素精製器が蒸留塔である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
補充として加えられる塩素と、生成する多結晶シリコン生成物とのモル比が、約2:1より少ない、約1:1より少ない、約1:1.2より少ない、約1:1.5より少ない、約1:2より少ない、約1:2.5より少ない、約2:1〜1:5または約1:1〜約1:5である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
補充として加えられる水素と、生成する多結晶シリコン生成物とのモル比が、約1:1より少ない、約1:2より少ない、約1:3より少ない、約1:5より少ない、約1:10より少ない、約1:1〜1:20または約1:2〜約1:10である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
水素を補充ストリームとして前記方法に加えない、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
多結晶シリコンを製造する実質的に閉ループの方法であって、
トリクロロシランおよび水素を第1の流動床反応器に導入して、多結晶シリコンと、四塩化ケイ素、水素および未反応のトリクロロシランを含む第1の排ガスとを生成すること、
シリコンと、排ガスからのある量の四塩化ケイ素および水素とを第2の流動床反応器に導入して、トリクロロシランおよび未反応の水素および未反応の四塩化ケイ素を含む第2の排ガスを生成すること、
塩化水素とシリコンとを接触させて、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素を生成すること、ならびに
塩化水素とシリコンとを接触させることにより生成するトリクロロシランを第1の流動床反応器に導入して、多結晶シリコンを生成すること
を含む、方法。
【請求項17】
塩化水素とシリコンとが、塩素化反応器に導入されて、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素を含む塩素化生成物ガスを生成し、前記方法が、該塩素化生成物ガスを精製システムに導入して、精製したトリクロロシランストリームおよび精製した四塩化ケイ素ストリームを生成することを含み、該精製したトリクロロシランストリームが第1の流動床反応器に導入される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1の排ガスを第1の排ガス分離器に導入して、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素から水素を分離し、該トリクロロシランおよび四塩化ケイ素を前記塩素化ガス精製システムに導入し、前記精製した四塩化ケイ素ストリームを第2の流動床反応器に導入する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第1の排ガス分離器が気液分離器である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第2の排ガスを第2の排ガス分離器システムに導入して、水素からトリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を分離し、該トリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を塩素化ガス精製システムに導入する、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
第2の排ガス分離器が気液分離器である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第2の排ガスが水素および塩化水素を含み、トリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を水素および塩化水素から分離し、該水素および塩化水素を分離システムに導入して水素と塩化水素とを分離し、分離した塩化水素を塩素化反応器に導入し、分離した水素を第1の流動床反応器および第2の流動床反応器の少なくとも一方に導入する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
塩素化生成物ガスがトリクロロシラン、四塩化ケイ素、水素および未反応の塩化水素を含み、精製システムが、塩素化ガス分離器、四塩化ケイ素分離器およびトリクロロシラン精製器を含み、
塩素化生成物ガスが塩素化ガス分離器に導入されて、水素および未反応の塩化水素からトリクロロシランおよび四塩化ケイ素を分離し、
分離したトリクロロシランおよび四塩化ケイ素が四塩化ケイ素分離器に導入されて、トリクロロシランから四塩化ケイ素を分離し、トリクロロシラン供給ガスを生成し、
トリクロロシラン供給ガスがトリクロロシラン精製器に導入されて、供給ガスから不純物を除去し、
精製したトリクロロシラン供給ガスが第1の流動床反応器に導入されて、多結晶シリコンを生成する、請求項17〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
塩素化ガス分離器が気液分離器であり、四塩化ケイ素分離器が蒸留塔であり、トリクロロシラン精製器が蒸留塔である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
分離した水素および未反応の塩化水素を分離システムに導入して、水素と塩化水素とを分離し、分離した塩化水素を塩素化反応器に導入し、分離した水素を第1の流動床反応器および第2の流動床反応器の少なくとも一方に導入する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
分離システムが、水素分離器、水素精製器および塩化水素精製器を含み、
水素および塩化水素が水素分離器に導入されて、水素リサイクルガスおよび塩化水素リサイクルガスを生成し、
水素リサイクルガスが水素精製器に導入されて、水素リサイクルガスから不純物を除去し、
塩化水素リサイクルガスが塩化水素精製器に導入されて、塩化水素ガスから不純物を除去し、
精製した水素リサイクルガスが、第1の流動床反応器および第2の流動床反応器の少なくとも一方に導入され、ならびに
精製した塩化水素リサイクルガスが塩素化反応器に導入される、請求項22または25に記載の方法。
【請求項27】
水素分離器がバブラーであり、水素精製器が吸着器であり、塩化水素精製器が蒸留塔である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
補充として加えられる塩素と、生成する多結晶シリコン生成物とのモル比が、約2:1より少ない、約1:1より少ない、約1:1.2より少ない、約1:1.5より少ない、約1:2より少ない、約1:2.5より少ない、約2:1〜1:5または約1:1〜約1:5である、請求項16〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
補充として加えられる水素と、生成する多結晶シリコン生成物とのモル比が、約1:1より少ない、約1:2より少ない、約1:3より少ない、約1:5より少ない、約1:10より少ない、約1:1〜1:20または約1:2〜約1:10である、請求項16〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
水素を補充ストリームとして前記方法に加えない、請求項16〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
トリクロロシランの分解により多結晶シリコンを製造するシステムであって、システムはトリクロロシランに関して実質的に閉ループであり、
塩化水素をシリコンに接触させてトリクロロシランおよび四塩化ケイ素を生成する塩素化反応器、
トリクロロシランが分解して多結晶シリコンが生成する流動床反応器、ならびに
四塩化ケイ素および水素が導入されてトリクロロシランを生成する水素化反応器
を含む、システム。
【請求項32】
トリクロロシランを水素化反応器から流動床反応器に搬送するための搬送装置、および
トリクロロシランを塩素化反応器から流動床反応器に搬送するための搬送装置
を含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
トリクロロシランおよび四塩化ケイ素が導入されて、トリクロロシランと四塩化ケイ素とを分離する精製システムを含む、請求項31または32に記載のシステム。
【請求項34】
トリクロロシランを精製システムから流動床反応器に搬送するための搬送装置、および
四塩化ケイ素を精製システムから水素化反応器に搬送するための搬送装置
を含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
流動床反応器からの排ガスが導入される排ガス分離器を含み、排ガスは、四塩化ケイ素、水素および未反応のトリクロロシランを含み、排ガス分離器は、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素から水素を分離する、請求項33または34に記載のシステム。
【請求項36】
トリクロロシランおよび四塩化ケイ素を排ガス分離器から精製システムに搬送するための搬送装置を含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
水素化反応器からの水素化ガスが導入される水素化ガス分離器を含み、水素化ガスは、トリクロロシラン、塩化水素、未反応の水素および未反応の四塩化ケイ素を含み、水素化ガス分離器は、水素および未反応の塩化水素からトリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を分離する、請求項33〜36のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項38】
トリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を精製システムに搬送するための搬送装置を含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
水素化ガス分離器からの水素および塩化水素が導入されて、水素と塩化水素とを分離する分離システムを含む、請求項37または38に記載のシステム。
【請求項40】
塩化水素を分離システムから塩素化反応器に搬送するための搬送装置、および
水素を分離システムから流動床反応器および水素化反応器の少なくとも一方に搬送するための搬送装置
を含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
トリクロロシランの分解により多結晶シリコンを製造するシステムであって、システムはトリクロロシランに関して実質的に閉ループであり、
塩化水素をシリコンに接触させてトリクロロシランおよび四塩化ケイ素を生成する塩素化反応器、
トリクロロシランが分解して多結晶シリコンを生成する第1の流動床反応器、ならびに
四塩化ケイ素を水素および粒子状のシリコンに接触させてトリクロロシランを生成する第2の流動床反応器
を含む、システム。
【請求項42】
トリクロロシランを塩素化反応器から第1の流動床反応器に搬送するための搬送装置を含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
トリクロロシランおよび四塩化ケイ素が導入されて、トリクロロシランと四塩化ケイ素とを分離する精製システムを含む、請求項41または42に記載のシステム。
【請求項44】
トリクロロシランを精製システムから第1の流動床反応器に搬送するための搬送装置、および
四塩化ケイ素を精製システムから第2の流動床反応器に搬送するための搬送装置
を含む、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
第1の流動床反応器からの排ガスが導入される第1の排ガス分離器を含み、排ガスは、四塩化ケイ素、水素および未反応のトリクロロシランを含み、第1の排ガス分離器は、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素から水素を分離する、請求項43または44に記載のシステム。
【請求項46】
トリクロロシランおよび四塩化ケイ素を第1の排ガス分離器から精製システムに搬送するための搬送装置を含む、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
第2の流動床反応器からの第2の排ガスが導入される第2の排ガス分離器システムを含み、第2の排ガスは、トリクロロシラン、未反応の四塩化ケイ素および未反応の水素を含み、第2の排ガス分離器は、未反応の水素からトリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を分離する、請求項43〜46のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項48】
トリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を精製システムに搬送するための搬送装置を含む、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
第2の排ガス分離器からの水素および塩化水素が導入されて、水素と塩化水素とを分離する分離システムを含む、請求項47または48に記載のシステム。
【請求項50】
塩化水素を分離システムから塩素化反応器に搬送するための搬送装置、および
水素を分離システムから第1の流動床反応器および第2の流動床反応器の少なくとも一方に搬送するための搬送装置
を含む、請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
塩素化反応器が流動床反応器である、請求項41〜50のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、実質的に閉ループの方法における多結晶シリコンの製造、特に、冶金グレードのシリコンから製造されるトリクロロシランの分解を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコンは、例えば集積回路および光起電(即ち、太陽)電池を含む、多数の市販の製品を製造するのに用いられる不可欠な原料である。多結晶シリコンはしばしば、化学蒸着メカニズムによって製造され、化学蒸着メカニズムにおいて、シリコンは、熱分解性シリコン化合物から、流動床反応器においてシリコン粒子へと又はシーメンス型反応器においてシリコンロッドへと析出する。種粒子(またはシード粒子)は、それらが多結晶シリコン生成物(即ち、「粒状」多結晶シリコン)として反応器を出るまで、サイズが連続的に大きくなる。適切な分解性シリコン化合物としては、例えば、シランおよびトリクロロシラン等のハロシランが挙げられる。
【0003】
トリクロロシランは、下記の反応
Si+3HCl→SiHCl
3+H
2 (1)
に示すように塩化水素をシリコン源に接触させることにより、または下記の反応
Si+3SiCl
4+2H
2→4SiHCl
3 (2)
に示すように、四塩化ケイ素および水素をシリコン源に接触させることにより製造してよい。塩化水素および四塩化ケイ素は、トリクロロシランに基づく多結晶シリコン製造において比較的高価な成分である。
【0004】
常套的な方法と比較して水素および塩素の使用量が低減される、トリクロロシランの熱分解による多結晶シリコンの製造方法、ならびに塩化水素に対して実質的に閉ループの方法で多結晶シリコンが製造可能な方法に対して、継続的な要求が存在している。そのような方法を利用した多結晶シリコンを製造するシステムに対しても、継続的な要求が存在している。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一の態様は、多結晶シリコンを製造する実質的に閉ループの方法を対象としている。トリクロロシランおよび水素を流動床反応器に導入して、多結晶シリコンと、四塩化ケイ素、水素および未反応のトリクロロシランを含む排ガスとを生成する。排ガスからのある量の四塩化ケイ素および水素を水素化反応器に導入して、トリクロロシランおよび塩化水素を生成する。塩化水素とシリコンとを接触させてトリクロロシランおよび四塩化ケイ素を生成する。塩化水素とシリコンとを接触させることにより生成するトリクロロシランを流動床反応器に導入して、多結晶シリコンを生成する。
【0006】
本開示のもう一つの態様は、多結晶シリコンを製造する実質的に閉ループの方法を対象としている。トリクロロシランおよび水素を第1の流動床反応器に導入して、多結晶シリコンと、四塩化ケイ素、水素および未反応のトリクロロシランを含む第1の排ガスとを生成する。シリコンと、排ガスからのある量の四塩化ケイ素および水素とを第2の流動床反応器に導入して、トリクロロシランおよび未反応の水素および未反応の四塩化ケイ素を含む第2の排ガスを生成する。塩化水素とシリコンとを接触させてトリクロロシランおよび四塩化ケイ素を生成する。塩化水素とシリコンとを接触させることにより生成するトリクロロシランを第1の流動床反応器に導入して、多結晶シリコンを生成する。
【0007】
本開示の更なる態様は、トリクロロシランの分解により多結晶シリコンを製造するシステムを対象としている。システムは、トリクロロシランに関して実質的に閉ループである。システムは、塩化水素をシリコンに接触させてトリクロロシランおよび四塩化ケイ素を生成する塩素化反応器を含む。システムは、トリクロロシランを分解して多結晶シリコンを生成する流動床反応器を含む。システムは、四塩化ケイ素および水素が導入されてトリクロロシランを生成する水素化反応器も含む。
【0008】
本開示の更にもう一つの態様は、トリクロロシランの分解により多結晶シリコンを製造するシステムを対象としている。システムは、トリクロロシランに関して実質的に閉ループである。システムは、塩化水素をシリコンに接触させてトリクロロシランおよび四塩化ケイ素を生成する塩素化反応器を含む。システムは、トリクロロシランを分解して多結晶シリコンを生成する第1の流動床反応器を含む。システムは、四塩化ケイ素を水素および粒子状のシリコンと接触させてトリクロロシランを生成する第2の流動床反応器を含む。
【0009】
本開示の上述の態様に関連して言及される特徴の種々の改良が存在する。更なる特徴も同様に、本開示の上述の態様に組み込まれてよい。これらの改良および追加の特徴は、独立して又は任意の組み合わせで存在してよい。例えば、本開示の説明される実施形態のいずれかに関連して以下に論じる種々の特徴は、単独でまたは任意の組み合わせで、本開示の上述の態様のいずれかに組み込まれてよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施形態による、トリクロロシランの熱分解によって多結晶シリコンを製造するシステムのフローチャートである。
【
図2】
図2は、本開示の第2の実施形態による、トリクロロシランの熱分解によって多結晶シリコンを製造するシステムのフローチャートである。
【
図3】
図3は、本開示の第1の実施形態による、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素を含有する排ガスを精製する精製システムのフローチャートである。
【
図4】
図4は、本開示の第1の実施形態による、水素と塩化水素とを分離および精製する分離システムのフローチャートである。
【
図5】
図5は、四塩化ケイ素を水素化するための第2の流動床反応器から排出される第2の排ガスを精製する第2の排ガス分離システムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
対応する参照記号は、図面全体にわたって対応する部材を示す。
【0012】
本開示によれば、トリクロロシランから多結晶シリコンを製造する実質的に閉ループの方法およびシステムが提供される。本明細書において使用する場合、語句「実質的に閉ループの方法」または「実質的に閉ループのシステム」は、システムまたは方法が化合物に関して実質的に閉ループである、その化合物が、不純物として以外でシステムまたは方法に引き込まれず、かつ補充(make−up)ストリームとして以外でシステムまたは方法に供給されない方法またはシステムを指す。本明細書において使用する場合、システムおよび方法は、シリコン以外の全ての化合物、例えば、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、塩化水素および/または水素等に関して実質的に閉ループである。
【0013】
[多結晶シリコンを製造する閉ループの方法]
本開示のいくつかの実施形態において、また、
図1に示すように、シリコン源3と、塩化水素6とを塩素化反応器7に導入して接触させ、塩素化生成物ガス10を生成する。塩素化生成物ガス10は、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素、ならびに水素および未反応の塩化水素を含む。トリクロロシランおよび四塩化ケイ素は、下記の反応に従って塩素化反応器7において生成してよい。
Si+3HCl→SiHCl
3+H
2 (3)
SiHCl
3+HCl→SiCl
4+H
2 (4)
【0014】
これに関連して、本明細書において用いられる場合、2以上の反応性化合物の「接触」は概して、成分の反応をもたらし、用語「接触する」および「反応する」は、これらの用語の派生語であるので同義であり、これらの用語およびそれらの派生語は、限定的な意味で考慮されるべきでないことが理解されるべきである。通常、シリコン源3は冶金グレードのシリコンであるが、他のシリコン源、例えば、砂(即ちSiO
2)、石英、フリント(flint)、硅藻岩、ケイ酸金属塩、フルオロケイ酸塩およびこれらの混合物等を用いてよいことが理解されるべきである。シリコンの粒子サイズが約10μm〜約750μmまたは約50μm〜約250μmであることが好ましい。粒子サイズが増加すると反応速度が低下し、一方、サイズが小さいほど、直径がより小さい粒子の間で凝集力が増大する結果として、より多くの粒子が使用済みの反応器ガスに同伴され、流動化が困難になる。
【0015】
塩素化反応器7は、入ってくる塩化水素ガス6においてシリコン3が懸濁している流動床反応器であってよい。反応器7は、少なくとも約250℃、他の実施形態において少なくとも約300℃(例えば、約250℃〜約450℃または約300℃〜約400℃)の温度で操作してよい。反応(3)および(4)の発熱性を考慮して、塩素化反応器7は、反応器の温度を制御するのに役立つ冷却手段(例えば、反応器床と熱的に連通している冷却コイルまたは冷却ジャケット)を含んでよい。これに関連して、塩素化反応器7が流動床反応器であってよいことが理解されるべきであり、一方、本明細書において用いられる場合、塩素化反応器は、下記の「第1の流動床反応器」および「第2の流動床反応器」と区別されるべきであることが理解されるべきである。
【0016】
反応器7は、少なくとも約1バール、例えば、約1バール〜約10バール、約1バール〜約7バールまたは約2バール〜約5バール等の圧力(即ち、塔頂(overhead)ガス圧力)で操作してよい。入ってくる塩化水素ストリーム6は、クロロシラン(例えば、四塩化ケイ素および/またはトリクロロシラン)等のある量の不純物を含んでよい。本開示の種々の実施形態において、塩化水素ストリーム6は、少なくとも約80体積%の塩化水素、少なくとも約90体積%、少なくとも約95体積%または更に少なくとも約99体積%の塩化水素(例えば、約80体積%〜約99体積%または約90体積%〜約99体積%)を含む。
【0017】
塩素化反応器7は、塩素化生成物ガス10において、四塩化ケイ素の生成と比較してトリクロロシランの生成を促進するために、ある量の触媒を含んでよい。例えば、塩素化反応器7は、米国特許第5,871,705号(関連し且つ一致する全ての目的のために、参照することにより本明細書に包含される)に開示されるように、VIII族の金属触媒(例えば、鉄、コバルト、ニッケル、バナジウムおよび/または白金)またはアルミニウム、銅またはチタン金属を含有する触媒を含んでよい。反応器7は、トリクロロシランに向かう選択性(または選択率、selectivity)を増大させるために、ある量の1以上のアルカリ金属化合物(例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化ルビジウム、硫酸ナトリウムおよび/または硝酸ナトリウム)を含んでもよい。反応器7は、最小流動化速度の約1.1倍〜約8倍、または最小流動化速度の約1.5〜約4倍で操作してよい。
【0018】
塩素化反応器7における塩化水素の転化率(または転化)は、反応条件に応じて様々であってよく、通常は、少なくとも約50%、少なくとも約65%、少なくとも約80%、少なくとも約90%であろう。いくつかの実施形態において、転化率は100%に近くなってよい(例えば、約50%〜約100%または約80%〜約100%)。トリクロロシランに向かう選択率(または選択性)は、少なくとも約50%、少なくとも約65%または更に少なくとも約80%(例えば、約50%〜約90%または約70%〜約90%)であってよい。
【0019】
塩素化生成物ガス10を精製システム4に導入して精製したトリクロロシランストリーム20および精製した四塩化ケイ素ストリーム22を生成する。精製システム4は、精製したトリクロロシラン20および精製した四塩化ケイ素22から水素および塩化水素26を分離してもよく、また、ガスストリーム20、22から種々の金属不純物(例えば金属塩化物)を分離してよい。トリクロロシランストリーム20は、約10体積%より少ない、トリクロロシラン以外の化合物(例えば、四塩化ケイ素)を含有するように精製してよく、好ましくは、より少ない量の不純物、例えば、約5体積%より少ない、約1体積%より少ない、約0.1体積%より少ない又は更に約0.001体積%より少ない、トリクロロシラン以外の成分を含む。通常、精製した四塩化ケイ素ストリーム22は、少なくとも約50重量%の四塩化ケイ素を含み、いくつかの実施形態において、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%または更に少なくとも約90重量%の四塩化ケイ素を含む。これに関連して、四塩化ケイ素ストリームは後述のように更に処理されてトリクロロシランを形成するので、四塩化ケイ素ストリーム22が比較的不純である(例えば、純度が50重量%の低さである又は更に低い)ことが許容されることが理解されるべきである。
【0020】
精製したトリクロロシランストリーム20を流動床反応器30に導入し、その流動床反応器30において、それは、成長するシリコン種粒子を流動化させて、多結晶シリコン生成物27として反応器30から取り出してよい多結晶シリコンを生成する。多結晶シリコン27は、下記の反応に従って、四塩化ケイ素の副生成物の生成と共に、トリクロロシラン20から製造される。
SiHCl
3+H
2→Si+3HCl (5)
SiHCl
3+HCl→SiCl
4+H
2 (6)
【0021】
トリクロロシラン20に加えて、水素29を、キャリアガスとして、また、多結晶シリコン27への転化(または転化率)全体を向上させるために、流動床反応器30に導入する。流動床反応器30は、米国特許出願第12/910,465号(出願日:2010年10月22日、米国特許出願公開第
2012/0100059号として公開、関連し且つ一致する全ての目的のために、参照することにより本明細書に包含される)に従って操作してよい。例えば、トリクロロシラン20は、反応器30のコア領域に向けられてよく、また、反応器に導入されるトリクロロシランの全体の濃度は、少なくとも約20体積%(例えば、約20体積%〜約50体積%)であってよい。入ってくる供給ガスは、約350℃より低い温度であってよい。反応器30は、約90%より小さい平衡で、約10秒より短い滞留時間で操作してよい。反応器30は、約3バール〜約8バールの圧力で操作してよく、反応ガスは、少なくとも約700℃(例えば、約700℃〜約1300℃)の温度に加熱してよい。流動床反応器30を通るガスの速度は通常、流動床内の粒子を流動化するのに必要な最小流動化速度の約1〜約8倍の速度に保持してよい。反応器30から取り出される粒子状多結晶シリコンの平均径は、約800μm〜約1200μmであってよい。反応器から排出される前の排ガス32の温度を低下させてシリコン塵(または粉末、dust)の形成を抑制するために、クエンチガスを反応器30(例えば反応器のフリーボード(freeboard)領域において)に導入してよい。流動床反応器は、外殻を含んでよく、その外殻において、プロセスガスが反応チャンバー内の亀裂および穴を通って流れないことを確保するために、不活性ガスが、プロセスガスの圧力より高い圧力(例えば、約0.005バール〜約0.2バールの範囲内の圧力)で保持される。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態において、流動床反応器におけるトリクロロシランの転化率は、少なくとも約40%、少なくとも約55%、少なくとも約70%または更に少なくとも約80%(例えば、約40〜約90%または約55%〜約90%)であってよい。析出したシリコンに向かう選択率は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%または更に少なくとも約30%(例えば、約15%〜約40%または約20%〜約30%)であってよい。
【0023】
反応器30を出る排ガス32は、四塩化ケイ素、未反応のトリクロロシランおよび水素を含む。排ガス32は、少量の他のガス(例えば塩化水素)およびシリコン塵も含んでよい。本開示のいくつかの実施形態において、排ガス32は、少なくとも約10体積%の四塩化ケイ素、少なくとも約15体積%、少なくとも約20体積%または少なくとも約30体積%の四塩化ケイ素(例えば、約10体積%〜約40体積%または約10体積%〜約20体積%の四塩化ケイ素)を含んでよい。排ガス32は、少なくとも約10体積%の未反応のトリクロロシラン、少なくとも約15体積%、少なくとも約20体積%または少なくとも約30体積%の未反応のトリクロロシラン(例えば、約10体積%〜約40体積%または約10体積%〜約20体積%の未反応のトリクロロシラン)を含んでよい。排ガスの残りのバルクは通常、水素である。例えば、流動床反応器30を出る排ガス32は、少なくとも約40体積%の水素、少なくとも約50体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約70体積%、少なくとも約80体積%または更に少なくとも約90体積%の水素(例えば、約40体積%〜約90体積%または約60体積%〜約80体積%)を含んでよい。排ガス32中の塩化水素の量は、約5体積%より少なくてよく、通常は、約1体積%より少ない(例えば、約0.1体積%〜約5体積%)。排ガス中のシリコン塵の量は、約0.1重量%〜約5重量%であってよい。これに関連して、記載された成分に関する上述のパーセンテージの包含は例示的なものであり、本開示の範囲から逸脱することなく、他の相対量の成分を用いてよいことが理解されるべきである。
【0024】
排ガス32を排ガス分離器50に導入して、四塩化ケイ素および未反応のトリクロロシラン36から水素(および存在する場合には塩化水素)31を分離する。排ガス分離器50に導入する前に、ガスを粒子分離器(図示せず)に通して、トリクロロシランの熱分解副生成物として生成するシリコン塵を除去してよい。分離された四塩化ケイ素およびトリクロロシラン36は、更に使用するために、精製システム4に戻してリサイクルしてよい。水素(および任意の塩化水素)31を分離システム52に導入して、水素54と塩化水素6とを分離し、このことは、以下により十分に説明する。
【0025】
分離器50は、当業者に理解されるように、ガス状成分を分離する方法のいずれかに従って構成してよい。いくつかの実施形態において、分離器50は気液分離器である。そのような気液分離器の例として、入ってくるガスの圧力および/または温度を低下させて、それにより、沸点のより低いガス(例えば、四塩化ケイ素およびトリクロロシラン)が凝縮して沸点のより高いガス(例えば、水素および塩化水素)から分離される容器が挙げられる。適切な容器として、当該技術分野において一般に「ノックアウトドラム(knock−out drum)」とよばれる容器が挙げられる。オプションで、容器を冷却してガスの分離を促進してよい。別法として、分離器50は1以上の蒸留塔であってよい。
【0026】
精製システム4から取り出される四塩化ケイ素22を水素化反応器60に導入して、トリクロロシランを生成する。精製システム4から排出される四塩化ケイ素22は、塩素化反応器7において副生成物として生成し、また、多結晶シリコン流動床反応器30において副生成物として生成する四塩化ケイ素を含む。四塩化ケイ素22に加えて、分離システム52からの水素57を水素化反応器60に導入する。精製システム
4から取り出される四塩化ケイ素
22は、以下の反応に従ってトリクロロシランへと転化する。
SiCl
4+H
2→SiHCl
3+HCl (7)
【0027】
水素化反応器60は、水素57が液体の四塩化ケイ素22を通って泡立てられてトリクロロシランを生成するバブラー(または気泡放出管、bubbler)であってよい。別法として、四塩化ケイ素22を蒸発させて、水素57および四塩化ケイ素22を、加圧した反応容器において加熱して反応させる。これに関連して、当業者に理解されるように、水素化反応に適した任意の容器を限定されることなく使用してよい。反応容器の内容物を、少なくとも約800℃の温度に加熱して、四塩化ケイ素をトリクロロシランに転化してよい。いくつかの実施形態において、四塩化ケイ素22および水素57を、少なくとも約900℃、少なくとも約1000℃または更に少なくとも約1100℃(例えば、約800℃〜約1500℃、約800℃〜約1200℃または約1000℃〜約1200℃)の温度に加熱する。好ましくは、反応容器を加圧してトリクロロシランの生成を促進する。例えば、水素化反応器60は、少なくとも約2バールの圧力で操作してよく、他の実施形態において、少なくとも約5バール、少なくとも約10バールまたは更に少なくとも約15バール(例えば、約2バール〜約20バールまたは約8バール〜約15バール)の圧力で操作してよい。反応器60に導入される四塩化ケイ素に対する水素の比は、反応条件に応じて様々であってよい。通常、化学量論的に過剰な水素を使用することにより、トリクロロシランへの転化率が増大する。種々の実施形態において、水素と、四塩化ケイ素とのモル比は、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1または更に少なくとも約3:1(例えば、約1:1〜約5:1または約1:1〜約3:1)である。
【0028】
通常、水素化反応器60において、少なくとも約20%の四塩化ケイ素がトリクロロシランに転化し、少なくとも約30%、少なくとも約40%または更に少なくとも約50%の転化率が可能である(例えば、約20%〜約60%の転化率)。得られる水素化ガス63は、トリクロロシラン、未反応の四塩化ケイ素、未反応の水素および塩化水素を含む。反応器に加えられる過剰の水素57の量に応じて、水素化ガス63中のトリクロロシランの量は、少なくとも約5体積%であってよく、他の実施形態において、少なくとも約10体積%、少なくとも約25体積%または少なくとも約40体積%(例えば、約5体積%〜約40体積%、約5体積%〜約20体積%または約5体積%〜約10体積%)であってよい。同様に、水素化ガス中の塩化水素の量は、少なくとも約5体積%であってよく、他の実施形態において、少なくとも約10体積%、少なくとも約25体積%または少なくとも約40体積%(例えば、約5体積%〜約40体積%、約5体積%〜約20体積%または約5体積%〜約10体積%)であってよい。未反応の四塩化ケイ素の量は、水素化ガスストリームの少なくとも約10体積%、少なくとも約20体積%または少なくとも約30体積%または少なくとも約40体積%(例えば、約10体積%〜約40体積%、約10体積%〜約30体積%または約15体積%〜約25体積%)であってよい。水素化ガス63の残りは通常、水素である。例えば、水素化ガス63は、少なくとも約40体積%の水素、または他の実施形態において、少なくとも約50体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約70体積%または更に少なくとも約80体積%の水素(例えば、約40体積%〜約90体積%、約50体積%〜約80体積%または約60体積%〜約80体積%)を含んでよい。
【0029】
水素化ガス63を水素化ガス分離器70に導入して、水素および未反応の塩化水素75からトリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素73を分離する。トリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素73をガス精製システム4に導入して、トリクロロシラン20を回収し、四塩化ケイ素73を水素化反応器60に再導入する。分離した水素および塩化水素75を、以下に説明する分離システム52に導入する。水素化ガス分離器70は、分離器50に関連して上述したように、ノックアウトドラム等の気液分離器であってよく、または蒸留塔であってよい。
【0030】
分離システム52は、塩化水素6から水素54を分離する。水素54は、水素化反応器60および/または流動床反応器30において使用してよい。塩化水素6は、塩素化反応器7において使用される。分離システム52に導入される水素および塩化水素のスチームは、精製システム4からの水素および/または塩化水素26、分離器50からの水素および/または塩化水素31、ならびに水素化ガス分離器70からの水素および/または塩化水素を含む。
【0031】
多結晶シリコンを製造する別の実施形態を
図2に示す。これに関連して、
図1のプロセススチームおよび装置に類似した、
図2に示すプロセススチームおよび装置は、
図1の対応する参照番号に「100」を加えた番号によって指定される(例えば、要素4は要素104になる)ことに留意するべきである。
図2の方法は、
図1の方法と実質的に同じであるが、
図2は、水素化反応器60(
図1)ではなく、第2の流動床反応器180を含む。これに関連して、方法は、特定の実施形態において、本開示の範囲から逸脱することなく、直列または並列で操作される水素化反応器60(
図1)および第2の流動床反応器180(
図2)の両方を用いてよいことが理解されるべきである。
【0032】
図2の方法において、精製システム104から取り出される四塩化ケイ素122を、第2の流動床反応器180に導入する。分離システム152からの水素157を、キャリアガスとして流動床反応器180に導入する。シリコン源185も、第2の流動床反応器180に導入する。粒子状のシリコン185は、反応器180に導入される水素157および四塩化ケイ素ガス122によって流動化される。シリコン源を流動床反応器180に導入することにより、下記の反応に従って四塩化ケイ素を直接水素化してトリクロロシランを生成することが可能になる。
3SiCl
4+2H
2+Si→4SiHCl
3 (8)
【0033】
直接的な水素化反応(8)は、米国特許第4,526,769号または米国特許第4,676,967号(これらは両方とも、関連し且つ一致する全ての目的のために、参照することにより本明細書に包含される)に記載の操作パラメータ等の、公知の操作パラメータに従って実施してよい。流動床反応器180は、少なくとも約500℃、いくつかの実施形態において、少なくとも約550℃、少なくとも約600℃、少なくとも約650℃または少なくとも約700℃(例えば、約500℃〜約750℃または約550℃〜約650℃)の温度で操作してよい。四塩化ケイ素122および/または水素157は、流動床反応器180に導入する前に予熱してよく、かつ/または外部加熱手段を使用することにより熱を外部から(extraneously)反応器180に加えてよい。流動床反応器180は、少なくとも約3バールまたは少なくとも約6バールの圧力等の高い圧力で操作してよいが、少なくとも約20バール、少なくとも約25バール、少なくとも約30バールまたは少なくとも約35バール(例えば、約20バール〜約35バール)等の比較的高い圧力を、腐食を最小限にし、トリクロロシランの収率を増加させるのに用いてよい。
【0034】
シリコン源185は冶金グレードのシリコンであってよいが、他のシリコン源、例えば、砂(即ちSiO
2)、石英、フリント、硅藻岩、ケイ酸金属塩、フルオロケイ酸塩およびこれらの混合物等を用いてよいことが理解されるべきである。シリコンの粒子サイズは、約10μm〜約500μmまたは約50μm〜約300μmであってよい。シリコン185、四塩化ケイ素122および水素157は、実質的に等モル量で加えてよいが、水素をキャリアガスとして用いてよく、化学量論的に過剰に加えてよい。水素と、四塩化ケイ素とのモル比は、少なくとも約2:3、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1または少なくとも約5:1(例えば、約2:3〜約5:1)であってよい。
【0035】
本開示のいくつかの実施形態において、触媒を流動床反応器180に加えて、トリクロロシランへのより高い転化(または転化率)を達成してよい。いくつかの実施形態において、銅含有触媒を第2の流動床反応器180に加えてよい。そのような触媒の例としては、例えばCuO、Cu
2O、CuClおよびCuCl
2等の酸化銅および塩化銅が挙げられる。触媒を使用するか否かに関わらず、四塩化ケイ素の少なくとも約20%が、第2の流動床反応器180においてトリクロロシランに転化され、少なくとも約30%、少なくとも約40%または更に少なくとも約50%の転化率が可能である(例えば約20%〜約60%の転化率)。
【0036】
図2に示すように、第2の流動床反応器180からの第2の排ガス164を、第2の排ガス分離システム190に導入する。第2の排ガス164は、トリクロロシラン、未反応の四塩化ケイ素、未反応の水素を含み、塩化水素およびジクロロシラン等の他の成分を含んでよい。本開示のいくつかの実施形態において、
図5に示すシステム190を用いてよい。システム190は、第2の流動床反応器180の外に運ばれるシリコン粒子(例えば塵)193を除去する粒子分離器192を含む。適切な粒子分離器としては、例えば、バグフィルター、サイクロン分離器および液体スクラバが挙げられる。シリコン塵193は、トリクロロシランへと更に転化するために、第2の流動床反応器180に戻してリサイクルしてよい。塵が激減した排ガス194を分離器195に導入する。分離器195は、分離器50(
図1)に関連して上述したように、気液分離器であってよく(例えば、ノックアウトドラム)、または蒸留塔であってよい。分離器195は、水素および塩化水素(存在する場合)175からトリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素173を分離する。トリクロロシランおよび
未反応
の四塩化ケイ素173をガス精製システム104(
図2)に導入して、トリクロロシラン120を回収し、四塩化ケイ素122を第2の流動床反応器180に再導入する。分離した水素および塩化水素175を分離システム152に導入する。
【0037】
本開示の実施形態において用いられる例示的精製システム4を
図3に示す。これに関連して、精製システム104(
図2)は、本開示の範囲から逸脱することなく、
図3に示す精製システム4と同じであってよく又は類似してよいことが理解されるべきである。精製システム4は、トリクロロシランの分解の間に生成する塩素化生成物ガス10からのシリコン塵13を除去する粒子分離器11を含む。適切な粒子分離器としては、例えば、焼結金属フィルター、バグフィルター、サイクロン分離器および液体スクラバが挙げられる。シリコン塵13は、廃棄物として取り出されてよく、または第1の流動床反応器30へとリサイクルしてよい。塵が激減した塩素化生成物ガス19を塩素化ガス分離器16に導入して、水素および未反応の塩化水素26からトリクロロシランおよび四塩化ケイ素12を分離する。塩素化ガス分離器16は、分離器50(
図1)に関連して上述した気液分離器(例えば、ノックアウトドラム)であってよく、または蒸留塔であってよい。水素および未反応の塩化水素26を分離システム52(
図1)に導入して水素と塩化水素とを分離する。分離したトリクロロシランおよび四塩化ケイ素12を四塩化ケイ素分離器18に導入して、トリクロロシランから四塩化ケイ素22を分離し、トリクロロシラン供給ガス17を生成する。四塩化ケイ素分離器18は、蒸留塔、またはトリクロロシランから四塩化ケイ素を除去するのに適した任意の他の装置であってよい。トリクロロシラン供給ガス17をトリクロロシラン精製器(purifier)15に導入して、供給ガスから不純物を除去する。精製器15もまた、蒸留塔、またはトリクロロシラン含有ガスから不純物14を除去するのに適した任意の他の装置であってよい。不純物14は、廃棄物として除去してよく、または(例えば分離器システム52に導入することによって)リサイクルしてよい。精製したトリクロロシラン供給ガス20を流動床反応器30(
図1)に導入して多結晶シリコン27を生成する。
【0038】
分離器システム52の一の実施形態を
図4に示す。これに関連して、分離器システム152(
図2)は、
図4に示す分離器システム52と同じであってよく又は類似してよいことが理解されるべきである。精製システム4からの水素および塩化水素26、分離器50からの水素および塩化水素31、ならびに水素化ガス分離器70からの水素および塩化水素75を水素分離器42に導入して水素リサイクルガス45および塩化水素リサイクルガス47を生成する。これに関連して、水素および塩化水素ガス26、31、75の1以上を、水素分離器42に導入する前に、まず、水素および塩化水素を、(例えば、四塩化ケイ素、トリクロロシランおよび/またはジクロロシラン等の塩化物を除去することにより)精製するための蒸留塔等の精製器(図示せず)に導入してよいことが理解されるべきである。そのような精製器が用いられる実施形態において、塩化物は精製システム4へとリサイクルしてよい。
【0039】
水素リサイクルガス45を水素精製器49に導入して、水素リサイクルガス45から不純物41を除去する。不純物41は、廃棄物としてシステムから除去してよく、またはリサイクルしてよい(例えば、精製システム4に導入してよい)。精製した水素リサイクルガス54を、流動床反応器30または水素化反応器60(
図1)もしくは第2の流動床反応器180(
図2)に導入する。塩化水素リサイクルガス47を、塩化水素精製器44に導入して、塩化水素リサイクルガス47から不純物42を除去する。不純物42(例えばクロロシラン)は廃棄物としてシステムから除去してよく、またはリサイクルしてよい(例えば、精製システム4に導入してよい)。精製した塩化水素リサイクルガス6は、塩素化反応器7へとリサイクルする。
【0040】
水素分離器42は、塩化水素から水素を分離するのに適した任意の種類の分離器であってよい。例示的分離器42は、水素および塩化水素が、流体(例えば水)の入った容器を通って泡立てられ、通常は流体が連続的に導入(図示せず)および除去されるバブラーである。塩化水素は流体(例えば水)内に吸着され、他方、分離された水素はガスとして容器から除去される。水素45は水素精製器49に送られ、水素精製器49は、吸着器、または水素ガスから不純物を除去するのに適した任意の他の装置であってよい。塩化水素精製器44は、1以上の蒸留塔であってよい。これに関連して、上述の方法および装置以外に、水素と塩化水素とを分離および精製する他の方法および装置を、本開示の範囲から逸脱することなく任意の組み合わせ(例えば、直列または並列)で使用してよいことが理解されるべきである。
【0041】
本開示のいくつかの実施形態において、補充として加えられる塩素(塩素ガス自体、および補充ストリームに加えられる他の塩素含有化合物(例えば、HCl、SiHCl
3および/またはSiCl
4)の一部を成す塩素原子を含む)と、生成する多結晶シリコン生成物(シリコン塵を含まない)とのモル比(即ち、2原子ガス(Cl
2)のモルよりむしろ、塩素原子(Cl)のモルに基づく)は、約2:1より少なく、他の実施形態において、約1:1より少なく、約1:1.2より少なく、約1:1.5より少なく、約1:2より少なく、または約1:2.5より少ない(例えば、約2:1〜1:5または約1:1〜約1:5)。加えて又は別法として、補充として加えられる水素(水素ガス自体、および補充ストリームに加えられる他の水素含有化合物(例えば、HCl、SiHCl
3および/またはSiH
4)の一部を成す水素原子を含む(但し、バブラー型システムにおいて塩化水素から水素を分離するのに用いられる水の中に含まれる水素を除く))のモル比(即ち、2原子ガス(H
2)のモルよりむしろ、水素原子(H)のモルに基づく)は、約1:1より少なくてよく、他の実施形態において、約1:2より少なく、約1:3より少なく、約1:5より少なく、約1:10より少なくてよい(例えば、約1:1〜1:20または約1:2〜約1:10)。いくつかの実施形態において、水素を補充ストリームとして方法に加えない。更に、いくつかの実施形態において、トリクロロシランまたは四塩化ケイ素をシステムに加えない。むしろ、これらの化合物は、システム自体の内部で生成および消費される。
【0042】
[多結晶シリコンを製造するための閉ループのシステム]
上述の方法は、多結晶シリコンを製造するための実質的に閉ループのシステムに組み込んでよい。上記の方法は、トリクロロシラン、水素および/または塩化水素に関して実質的に閉ループであってよい。本開示のいくつかの実施形態において、また、
図1に示すように、システムは、塩化水素をシリコンに接触させてトリクロロシランおよび四塩化ケイ素を生成する塩素化反応器7を含む。システムは、トリクロロシランが分解して多結晶シリコンを生成する流動床反応器30、ならびに四塩化ケイ素および水素が導入されてトリクロロシランを生成する水素化反応器60も含む。システムは、トリクロロシランを水素化反応器60から流動床反応器30に搬送するための搬送装置、およびトリクロロシランを塩素化反応器7から流動床反応器30に搬送するための搬送装置を含んでよい。
【0043】
システムは、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素が導入されてトリクロロシランと四塩化ケイ素とを分離する精製システム4を含んでもよい。システムは、トリクロロシランを精製システム4から流動床反応器30に搬送するための搬送装置、および四塩化ケイ素を精製システム4から水素化反応器60に搬送するための搬送装置を含む。
図1を更に参照して、システムは、流動床反応器30からの排ガスが導入される排ガス分離器50を含んでよく、排ガス分離器50は、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素から水素を分離する。搬送装置は、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素を排ガス分離器50から精製システム4に搬送する。
【0044】
システムは、水素化反応器からの水素化ガスが導入される水素化ガス分離器70を含む。水素化ガス分離器70は、水素および未反応の塩化水素からトリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を分離する。搬送装置は、トリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を精製システム4に搬送する。
【0045】
システムは、水素化ガス分離器からの水素および塩化水素が導入されて水素と塩化水素とを分離する分離システム52を含んでもよい。搬送装置は、塩化水素を分離システム52から塩素化反応器7に搬送する。搬送装置は、水素を分離システム52から流動床反応器30および水素化反応器60の少なくとも一方に搬送する。
【0046】
本開示の第2の実施形態による多結晶シリコンを製造するシステムを
図2に示す。このシステムは、
図1のシステムに類似しているが、
図2のシステムは、シリコンを加えて上述の反応(8)に従ってトリクロロシランを生成する第2の流動床反応器180を含む。システムは、塩化水素をシリコンに接触させてトリクロロシランおよび四塩化ケイ素を生成する塩素化反応器107を含む。システムは、トリクロロシランが分解して多結晶シリコンを生成する第1の流動床反応器130、および四塩化ケイ素がトリクロロシランへと転化する第2の流動床反応器180も含む。搬送装置は、トリクロロシランを塩素化反応器107から第1の流動床反応器130に搬送する。
【0047】
システムは、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素が導入されてトリクロロシランと四塩化ケイ素とを分離する精製システム104を含む。搬送装置は、トリクロロシランを精製システム104から第1の流動床反応器130に搬送し、搬送装置は、四塩化ケイ素を精製システム104から第2の流動床反応器180に搬送する。
【0048】
システムは、第1の流動床反応器130からの排ガスが導入される第1の排ガス分離器150を含んでよい。排ガス分離器150は、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素から水素を分離する。搬送装置は、トリクロロシランおよび四塩化ケイ素を第1の排ガス分離器150から精製システム104に搬送する。
【0049】
システムは、第2の流動床反応器180からの第2の排ガスが導入される第2の排ガス分離器システム190を含む。第2の排ガス分離器190は、未反応の水素からトリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を分離する。搬送装置は、トリクロロシランおよび未反応の四塩化ケイ素を精製システム104に搬送する。
【0050】
本開示の第2の実施形態によるシステムは、第2の排ガス分離器190からの水素および塩化水素が導入されて水素と塩化水素とを分離する分離システム152を含んでもよい。搬送装置は、塩化水素を分離システム152から塩素化反応器107に搬送し、搬送装置は、水素を分離システム152から第1の流動床反応器1
30および第2の流動床反応器180の少なくとも一方に搬送する。
【0051】
これに関連して、
図1および
図2のシステムにおいて使用するのに適した搬送装置は、当該技術分野において常套的であり且つ周知である。ガスを輸送するのに適した搬送装置としては、例えば、再循環ファンまたは送風機が挙げられ、固体を輸送するのに適した搬送装置としては、例えば、抗力(drag)、スクリュー、ベルトおよび空気コンベヤが挙げられる。これに関連して、本明細書における語句「搬送装置」の使用は、システムの一のユニットからもう一つのユニットへの直接的な輸送を意味することは意図されず、むしろ、材料が、任意の数の間接的な輸送要素および/または機構(またはメカニズム)によって、一のユニットからもう一つのユニットに輸送されることのみを意味することが意図されることが理解されるべきである。例えば、一のユニットからの材料は、更なる処理ユニット(例えば精製)に搬送されてよく、その後、第2のユニットに搬送されてよい。この例において、中間処理装置を含む各輸送ユニット自体を「搬送装置」と見なしてよく、語句「搬送装置」は、限定的な意味で考慮するべきでない。
【0052】
好ましくは、多結晶シリコンを製造するシステムにおいて用いられる全ての装置は、システム内で用いられる及び生成する化合物に対する曝露を含む、環境における腐食に対して耐性を有する。構造物の適切な材料は、本発明の分野において常套的であり且つ周知であり、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、モネル(MONEL)合金、インコネル(INCONEL)合金、ハステロイ(HASTELLOY)合金、ニッケル、グラファイト(例えば、押出成形またはイソモールド(iso−molded))および炭化ケイ素(例えば、転化(converted)グラファイトまたは押出成形)が挙げられる。
【0053】
図1および
図2に示すように、システムおよび方法は、システムが入口ストリーム3(および
図2におけるストリーム103、185)において水素、塩化水素またはトリクロロシランを含まないので、また、これらの化合物が出口ストリーム27(または
図2における127)においてシステムから除去されないので、水素、塩化水素およびトリクロロシランに関して実質的に閉ループである。これに関連して、ある量の水素、塩化水素またはトリクロロシランを、パージストリームにおいてシステムから除去してよく、補充ストリームにおいてシステムまたは方法に供給してよいことが理解されるべきである。これらの化合物の補充は、当業者によって決定し得るように、化合物を任意のプロセスストリームに加えることにより達成してよい。
【0054】
本開示の範囲から逸脱することなく、上述の方法およびシステムは記載されたユニット(例えば、反応器および/または分離ユニット)のいずれかを1以上含んでよいこと、ならびに複数のユニットを直列および/または並列で操作してよいことが理解されるべきである。更にこれに関連して、記載される方法およびシステムは例示的なものであり、方法およびシステムは、限定されることなく追加の機能を担う追加のユニットを含んでよいことが理解されるべきである。
【0055】
本開示または本開示の(1または複数の)好ましい実施形態の構成要素を導入する際、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、その構成要素が1以上存在することを意味することが意図される。用語「含む」、「含有する」および「有する」は、包含的であることが意図され、列挙された構成要素の他に追加の構成要素が存在してよいことを意味することが意図される。
【0056】
本開示の範囲から逸脱することなく、上述の装置および方法に種々の変更を行うことが可能であるので、上述の説明に含まれる全ての事項および添付の図面に示される全ての事項は例示を目的とするものと解され、限定を意味するものとは解されないことが意図される。