(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946880
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】LCLフィルタ保護機能を有するモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/12 20060101AFI20160623BHJP
H02M 7/12 20060101ALI20160623BHJP
H02M 1/00 20070101ALI20160623BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
H02M1/12
H02M7/12 B
H02M7/12 H
H02M1/00 R
H02P27/06
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-197587(P2014-197587)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-73029(P2016-73029A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2015年8月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太
【審査官】
安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−288161(JP,A)
【文献】
特開2013−138561(JP,A)
【文献】
特開2015−106948(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するPWM整流器と、
三相交流電源と前記PWM整流器との間に備えられるLCLフィルタと、
前記LCLフィルタを冷却するための冷却ファンと、
前記LCLフィルタの温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部の温度検出値が規定値以上の場合にアラーム状態を検出するアラーム検出部と、
前記PWM整流器の通常動作開始からの経過時間を計測する時間計測部と、
前記アラーム検出部からアラーム状態が通知された場合に、時間計測部が計測した経過時間に応じて、前記アラーム状態が前記LCLフィルタの動力線の逆接続によって発生したか、あるいは、前記アラーム状態が前記冷却ファンの停止によって生じたかのアラーム発生要因を判別し、該アラーム発生要因に応じた保護動作を行う保護部と、を有し、
前記保護部は、
前記アラーム検出部からアラーム状態が通知され、かつ、前記時間計測部が計測した経過時間が規定時間未満の場合に前記LCLフィルタの動力線が逆接続と判定し、
前記アラーム検出部からアラーム状態が通知され、かつ、前記時間計測部が計測した経過時間が規定時間以上の場合に前記冷却ファンの停止と判定する、
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
三相交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するPWM整流器と、
三相交流電源と前記PWM整流器との間に備えられるLCLフィルタと、
前記LCLフィルタを冷却するための冷却ファンと、
前記LCLフィルタの温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部の温度検出値が規定値以上の場合にアラーム状態を検出するアラーム検出部と、
前記PWM整流器の通常動作開始からの経過時間を計測する時間計測部と、
前記アラーム検出部からアラーム状態が通知された場合に、時間計測部が計測した経過時間に応じて、前記アラーム状態が前記LCLフィルタの動力線の逆接続によって発生したか、あるいは、前記アラーム状態が前記冷却ファンの停止によって生じたかのアラーム発生要因を判別し、該アラーム発生要因に応じた保護動作を行う保護部と、を有し、
前記PWM整流器の直流側である直流リンクに接続され、前記直流リンクにおける直流電力とモータの駆動電力もしくは回生電力である交流電力を相互電力変換する逆変換器と、
三相交流電源と前記LCLフィルタとの間に備えられる動力遮断部と、をさらに備え、
前記保護部は、
前記アラーム検出部からアラーム状態が通知され、かつ、前記時間計測部が計測した経過時間が規定時間未満の場合に前記LCLフィルタの動力線が逆接続と判定し、
前記PWM整流器にPWM停止指令を通知し、かつ、前記動力遮断部に供給遮断指令を通知し、
前記アラーム検出部からアラーム状態が通知され、かつ、前記時間計測部が計測した経過時間が規定時間以上の場合に前記冷却ファンの停止と判定し、
前記逆変換器にモータ停止指令を通知し、その後、モータが停止したら、前記PWM整流器にPWM停止指令を通知し、かつ、前記動力遮断部に供給遮断指令を通知する、
ことを特徴とするモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置に関し、特に、LCLフィルタの保護機能を有するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、ロボット等のモータを駆動するモータ制御装置では、三相交流電源の交流電力を直流電力に変換する整流器、及び整流器の出力した直流電力をモータ駆動用の交流電力に変換する逆変換器が用いられる。
【0003】
近年、電源高調波及び無効電力低減への要求からパルス幅変調(PWM)を用いた整流器(PWM整流器)の適用が広がっている。
【0004】
上記のようなPWM整流器は、PWMによるスイッチング制御を行うため、三相交流電源との間の経路に、数kHz以上の高周波を含む矩形波の交流電圧を出力する。矩形波のうち電源周波数成分のみを通過させるため、一般的に、PWM整流器と三相交流電源との間にローパスフィルタが備えられる。
【0005】
図1に従来のモータ制御装置の構成図を示す。従来のモータ制御装置1000は、三相交流入力電源20からの交流電力を直流電力に変換するPWM整流器110と、直流電力を、モータ30を駆動するための交流電力に変換する逆変換器180と、を備えている。さらに、三相交流電源20とPWM整流器110との間に、ローパスフィルタとして、ダンピング抵抗123及びコンデンサ124を直列接続し、ダンピング抵抗123の一端にインダクタンスA部121及びインダクタンスB部122を備えたLCLフィルタ120が設けられている。また、LCLフィルタ120の各素子を冷却するための冷却ファン130が備えられることも多い。
【0006】
このLCLフィルタ120は、PWM整流器110の側から流入する高周波電流のリップルを抑制しながら、LCLフィルタ120の体積やコストを低減するため、一般的にPWM整流器110側のインダクタンスB部122のインダクタンスが大きく、三相交流電源側のインダクタンスA部121のインダクタンスが小さい、非対称な構成をとることが多い。
【0007】
LCLフィルタ120の三相交流電源20側とPWM整流器110側の電圧及び電流の波形を
図2(a)〜(d)に示す。
図2(a)は、三相交流電源側の電圧の時間的変化を示すグラフであり、
図2(b)は、三相交流電源側の電流の時間的変化を示すグラフであり、
図2(c)は、PWM整流器側の電圧の時間的変化を示すグラフであり、
図2(d)は、PWM整流器側の電流の時間的変化を示すグラフである。
【0008】
非対称な構成のLCLフィルタ120の動力線を
図1とは逆に接続してしまった場合、即ち、PWM整流器110の側にインダクタンスが小さなインダクタンスA部121を接続し、三相交流電源20の側にインダクタンスが大きなインダクタンスB部122を接続した場合、PWM整流器110の側から流入される高周波電流のリップルを十分に抑制することができないため、LCLフィルタ120の発熱が大きくなってしまう。
【0009】
上記のようなモータ制御装置において、LCLフィルタ120の動力線を正常に接続した場合の電流波形を
図3(a)に示し、逆に接続してしまった場合の電流波形を
図3(b)に示す。
図3(b)に示す通り、LCLフィルタの動力線を逆に接続してしまった場合、リップルの抑制できていない電流が流れることが分かる。このような電流が流れ続けた場合、元々リップルが含まれない電流が流れることを想定して設計したインダクタンスA部121のコア部からの異音や、異常発熱が生じると共に、リップルの流れ込むダンピング抵抗123やコンデンサ124にもダメージや異常発熱が生じる可能性がある。
【0010】
この場合の温度上昇は急激であるため、できるだけ早くPWM整流器の動作を停止させる必要がある。そこで従来は、LCLフィルタ内の素子の温度を検出する温度検出部を設けて、LCLフィルタの異常を検出していた(例えば、特許文献1)。
図4は従来のモータ制御装置の他の例であるモータ制御装置2000の構成図である。
図4に示すように、LCLフィルタ120は、ダンピング抵抗123とコンデンサ124を直列接続し、ダンピング抵抗123の一端にインダクタンスA部121及びインダクタンスB部122を備えている。温度センサ125は、例えば、ダンピング抵抗123の近傍に設置され、検出した温度に関する情報を温度検出部140に出力する。温度検出部140が検出した温度検出結果は判定部150に送信され、判定部150は温度検出結果に基づいてPWM整流器110を制御する。例えば、温度検出部140にて検出された温度が規定値(もしくは、記憶しておいた正常時の温度)を超えた場合、PWM整流器110の動作を停止させ、LCLフィルタ120の保護を行う。
【0011】
このように、従来はLCLフィルタの温度情報を取得し、温度が規定値以上の場合に異常を検出して、PWM整流器の動作を停止させていた。
【0012】
また、
図4に示すように、LCLフィルタ120には冷却用ファン130が備えられていることも多い。LCLフィルタの動力線の逆接続時だけではなく、冷却用ファン130の停止によってもLCLフィルタ120の温度は上昇し、異常な温度になってしまう可能性がある。
【0013】
冷却ファン130の停止による温度上昇は、冷却ファン130が高性能であるほど大きい。また、LCLフィルタ120の動力線の逆接続による温度上昇は、インダクタンスA部121とインダクタンスB部122のインダクタンスの大きさの比が大きい程大きくなる。
【0014】
LCLフィルタ120の体積やコスト低減を考えた場合、冷却ファン130は必要最小限の性能を備えるのに対し、インダクタンスA部121とインダクタンスB部122のインダクタンスの大きさはなるべく大きくなるように設計されることが多い。その結果、LCLフィルタ120の動力線の逆接続時の損失は、冷却ファン130の停止時の損失よりも大きくなり、LCLフィルタ120の動力線の逆接続による温度上昇は、冷却ファン130の停止による温度上昇に比べて大きくなる。
【0015】
そのため、温度検出部140が検出したLCLフィルタ120内の素子の温度が規定値を超えた状態(アラーム状態)を検出してからLCLフィルタ120内の素子が破損してしまう温度に到達するまでの時間は、LCLフィルタ120の動力線の逆接続時の方が、冷却ファン130の停止時よりも短くなる。LCLフィルタ120の動力線の逆接続時にPWM整流器110の動作を継続していると、LCLフィルタ120内の素子が破損してしまう可能性が高い。
【0016】
上記の通り、LCLフィルタ120の動力線の逆接続時にはPWM整流器110を即時停止させる必要があるのに対し、冷却ファン130の停止時には必ずしも即時停止させる必要はない。即ち、冷却ファン130が停止したことによってLCLフィルタ120内の素子が異常な温度になったとしても、その場合の温度上昇は急激ではないため、モータ30の制御停止を行う程度の短い時間であれば、PWM整流器110の動作を即時停止させる必要はない。また、PWM整流器110を即時停止させると、モータ制御装置を使用した加工に何らかの障害(ワークやツールの破損等)が発生する可能性が高いため、PWM整流器の即時停止は極力避けることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特願2013−246683号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、従来のモータ制御装置では、LCLフィルタが異常な温度になった要因がどのような要因であるかに関わらず、PWM整流器を即時停止させるため、モータ制御装置を使用した加工に何らかの障害が発生する可能性が高くなってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一実施例に係るモータ制御装置は、三相交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換するPWM整流器と、三相交流電源とPWM整流器との間に備えられるLCLフィルタと、LCLフィルタを冷却するための冷却ファンと、LCLフィルタの温度を検出する温度検出部と、温度検出部の温度検出値が規定値以上の場合にアラーム状態を検出するアラーム検出部と、PWM整流器の通常動作開始からの経過時間を計測する時間計測部と、アラーム検出部からアラーム状態が通知された場合に、時間計測部が計測した経過時間に応じて、アラーム状態がLCLフィルタの動力線の逆接続によって発生したか、あるいは、アラーム状態が冷却ファンの停止によって生じたかのアラーム発生要因を判別し、該アラーム発生要因に応じた保護動作を行う保護部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施例に係るモータ制御装置によれば、PWM整流器の即時停止に伴う、モータ制御装置を使用した加工の障害を最小限に抑えつつ、LCLフィルタの保護を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】LCLフィルタの三相交流電源側とPWM整流器側の電圧及び電流の波形を示す図である。
【
図3】LCLフィルタの動力線を正常に接続した場合と、逆に接続してしまった場合の電流波形を示す図である。
【
図4】従来のモータ制御装置の他の例に係る構成図である。
【
図5】本発明の実施例に係るモータ制御装置の構成図である。
【
図6】本発明の実施例に係るモータ制御装置における異常要因判定手順を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本発明の実施例に係るモータ制御装置における保護動作手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明に係るモータ制御装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0023】
まず、本発明の実施例に係るモータ制御装置について図面を用いて説明する。
図5は、本発明の実施例に係るモータ制御装置の構成図である。本発明の実施例に係るモータ制御装置101は、三相交流電源20から供給された交流電力を直流電力に変換するPWM整流器1と、三相交流電源20とPWM整流器1との間に備えられるLCLフィルタ2と、LCLフィルタ2を冷却するための冷却ファン3と、LCLフィルタ2の温度を検出する温度検出部4と、温度検出部4の温度検出値が規定値以上の場合にアラーム状態を検出するアラーム検出部5と、PWM整流器1の通常動作開始からの経過時間を計測する時間計測部6と、アラーム検出部5からアラーム状態が通知された場合に、時間計測部6が計測した経過時間に応じて、アラーム状態がLCLフィルタ2の動力線の逆接続によって発生したか、あるいは、アラーム状態が冷却ファン3の停止によって生じたかのアラーム発生要因を判別し、該アラーム発生要因に応じた保護動作を行う保護部7と、を有する。
【0024】
本発明の実施例に係るモータ制御装置101は、PWM整流器1の直流側である直流リンクに接続され、直流リンクにおける直流電力とモータの駆動電力もしくは回生電力である交流電力を相互電力変換する逆変換器8と、三相交流電源20とLCLフィルタ2との間に備えられる動力遮断部9と、をさらに備え、保護部7は、アラーム検出部5からアラーム状態が通知され、かつ、時間計測部6が計測した経過時間が規定時間未満の場合にLCLフィルタ2の動力線が逆接続と判定し、PWM整流器1にPWM停止指令を通知し、かつ、動力遮断部9に供給遮断指令を通知し、アラーム検出部5からアラーム状態が通知され、かつ、時間計測部6が計測した経過時間が規定時間以上の場合に冷却ファン3の停止と判定し、逆変換器8にモータ停止指令を通知し、その後、モータ30が停止したら、PWM整流器1にPWM停止指令を通知し、かつ、動力遮断部9に供給遮断指令を通知する。
【0025】
温度検出部4は、温度センサ25を用いてLCLフィルタ2の素子の温度を検出する。具体的には、LCLフィルタ2の動力線の逆接続時に温度上昇の大きい、インダクタンスA部21、インダクタンスB部22、ダンピング抵抗23、コンデンサ24のいずれか、もしくはその近傍の温度を検出する。
図5においては、温度センサ25をダンピング抵抗23の近傍に設けた例を示したが、これには限られない。
【0026】
温度検出部4が検出した温度検出値が規定値以上になった場合、アラーム検出部5は保護部7に対してアラーム状態を通知する。ここで、規定値は、LCLフィルタ2の素子の耐量に応じた値を設定する。
【0027】
時間計測部6は、PWM整流器1が通常動作を開始してからの経過時間を計測する。
【0028】
LCLフィルタ2にPWMによる高周波電流が流れるのは、PWM整流器1が通常動作を開始した後であるため、保護部7はアラーム検出部5からアラーム状態が通知された場合に、経過時間に応じてLCLフィルタ2が異常になった要因を切り分ける。
【0029】
前述の通り、LCLフィルタ2の動力線の逆接続による温度上昇は、冷却ファン3の停止による温度上昇に比べて大きくなるため、以下のようにLCLフィルタ2内の素子の温度が異常となった要因を判定する。
アラーム検出部5がアラーム状態を通知し、かつ、経過時間が規定時間未満の場合:LCLフィルタ2の動力線の逆接続
アラーム検出部5がアラーム状態を通知し、かつ、経過時間が規定時間以上の場合:冷却ファン3の停止
【0030】
ここで、規定時間は、LCLフィルタ2を構成するインダクタンスA部21のインダクタンスの大きさに対するインダクタンスB部22のインダクタンスの大きさの比、及び、冷却ファン3の性能に応じて設定する。
【0031】
上記のようにして、LCLフィルタ2内の素子の温度が異常となった要因の判定時に、保護部7は以下の保護動作を行う。
【0032】
LCLフィルタ2内の素子の温度が異常となった要因がLCLフィルタ2の動力線の逆接続の場合、保護部7はPWM整流器1にPWM停止指令を通知すると共に、動力遮断部9に供給遮断指令を通知して、PWM整流器1の即時停止を行う。
【0033】
一方、LCLフィルタ2内の素子の温度が異常となった要因が冷却ファン3の停止の場合、保護部7は逆変換器8にモータ停止指令を通知する。その後、逆変換器8からモータ停止状態が通知されたら、PWM整流器1にPWM停止指令を通知すると共に、動力遮断部9に供給遮断指令を通知して、PWM整流器1の停止を行う。
【0034】
本発明のモータ制御装置を用いて保護動作を行うことにより、PWM整流器1の即時停止の必要のない冷却ファンの停止時には、モータを制御停止させることが可能になり、その場合はモータ制御装置を使用した加工に障害が生じる可能性がなくなる。
【0035】
次に、本発明の実施例に係るモータ制御装置を用いたLCLフィルタの異常要因を判定する手順について、
図6に示したフローチャート用いて説明する。まず、ステップS101において、PWM整流器1が通常動作を行ってモータ30を動作させる。
【0036】
次に、ステップS102において、時間計測部6が、PWM整流器1が通常動作を開始してからの経過時間を計測する。時間計測部6が計測した経過時間は保護部7に通知される。
【0037】
次に、ステップS103において、アラーム検出部5から保護部7にアラーム状態が通知されたか否かを判断する。アラーム検出部5から保護部7にアラーム状態が通知されていない場合は、温度検出部4からのLCLフィルタ2に設置した温度センサ25の温度検出結果が、LCLフィルタ2内の素子の温度が異常な温度とはなっていないことを示していると判断できる。この場合は、ステップS103に戻って、アラーム検出部5から保護部7へのアラーム状態の通知の有無を判断することにより、LCLフィルタ2内の素子の温度の監視を継続して行う。
【0038】
一方、アラーム検出部5から保護部7にアラーム状態が通知された場合は、温度検出部4からのLCLフィルタ2に設置した温度センサ25の温度検出結果が、LCLフィルタ2内の素子の温度が異常な温度となっていることを示していると判断できる。この場合は、LCLフィルタ2内の素子の温度が異常な温度となった要因が、LCLフィルタ2の動力線の逆接続によるものであるのか、冷却ファン3の停止によるものであるのかを切り分ける。
【0039】
そこで、ステップS104において、PWM整流器1が通常動作を開始してからの経過時間が規定時間未満であるか否かを判断する。PWM整流器1が通常動作を開始してからの経過時間が規定時間未満である場合は、ステップS105において、LCLフィルタ2内の素子の温度が異常な温度となった要因は、LCLフィルタ2の動力線の逆接続によるものと判定する。
【0040】
一方、PWM整流器1が通常動作を開始してからの経過時間が規定時間以上である場合は、ステップS106において、LCLフィルタ2内の素子の温度が異常な温度となった要因は、冷却ファン3の停止によるものと判定する。
【0041】
以上のようにして、LCLフィルタ2内の素子の温度が異常な温度となった要因を判定した後、この判定結果に基づいて、保護部7がLCLフィルタ2の保護動作を行う。
【0042】
次に、本発明の実施例に係るモータ制御装置を用いた、LCLフィルタの保護動作の手順について、
図7に示したフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS201において、LCLフィルタ2内の素子の温度が異常な温度となった要因が、LCLフィルタ2の動力線の逆接続によるものであるか否かを判定する。判定手順は上述の通りである。
【0043】
LCLフィルタ2内の素子の温度が異常な温度となった要因が、LCLフィルタ2の動力線の逆接続によるものである場合は、ステップS202において、保護部7はPWM整流器1にPWM停止指令を通知すると共に、動力遮断部9に供給遮断指令を通知して、PWM整流器1の即時停止を行う。
【0044】
一方、LCLフィルタ2内の素子の温度が異常な温度となった要因が、LCLフィルタ2の動力線の逆接続によるものではない場合、即ち、冷却ファン3の停止によるものである場合は、ステップS203において、保護部7は逆変換器8にモータ停止指令を通知する。
【0045】
次に、ステップS204において、保護部7が逆変換器8からモータ停止状態が通知されたか否かを判断する。保護部7が逆変換器8からモータ停止状態が通知されていない場合は、保護部7は逆変換器8からモータ停止状態が通知されるのを待つ。
【0046】
一方、保護部7が逆変換器8からモータ停止状態が通知された場合は、保護部7は、PWM整流器1にPWM停止指令を通知すると共に、動力遮断部9に供給遮断指令を通知して、PWM整流器1の停止を行う。
【0047】
以上のように、本発明の実施例に係るモータ制御装置によれば、PWM整流器の通常動作開始からの経過時間に応じて、LCLフィルタが異常な温度になった要因を判定し、PWM整流器の動作を即時停止させる必要のない冷却ファン停止時には、モータを制御停止してからPWM動作の停止や動力遮断を行っている。そのため、モータ制御装置を使用した加工の障害を最小限に抑えつつ、LCLフィルタの保護も行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
1 PWM整流器
2 LCLフィルタ
3 冷却ファン
4 温度検出部
5 アラーム検出部
6 時間計測部
7 保護部
8 逆変換器
9 動力遮断部
21 インダクタンスA部
22 インダクタンスB部
23 ダンピング抵抗
24 コンデンサ
25 温度センサ
30 モータ