特許第5946907号(P5946907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5946907キャストポリアミド製造のための新規組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5946907
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】キャストポリアミド製造のための新規組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/20 20060101AFI20160623BHJP
【FI】
   C08G69/20
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-513124(P2014-513124)
(86)(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公表番号】特表2014-515425(P2014-515425A)
(43)【公表日】2014年6月30日
(86)【国際出願番号】EP2012059619
(87)【国際公開番号】WO2012163764
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2014年1月21日
(31)【優先権主張番号】11168080.7
(32)【優先日】2011年5月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511206984
【氏名又は名称】ライン・ケミー・ライノー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム・ラウファー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・ベヘム
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・パルツァー
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−218529(JP,A)
【文献】 特開平01−061215(JP,A)
【文献】 特開平03−056531(JP,A)
【文献】 特開平07−207019(JP,A)
【文献】 特開平11−349682(JP,A)
【文献】 特開平07−238164(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0245320(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第03007118(DE,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01975191(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00−69/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種のラクタムと、
b)ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の活性化剤とを含有する組成物であって、前記活性化剤が、式(I)
【化1】
(式中、Rはラクタムである)
の化合物を含有することを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記活性化剤が式(II)
【化2】
の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ラクタムが一般式(III)
【化3】
(式中、Rは3〜13個の炭素原子を有するアルキレン基である)
の化合物を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、ラクタムハロゲン化マグネシウム、アルカリ金属アルミノジラクタメート、アルカリ金属ラクタメート、及び/又はアルカリ土類金属ラクタメートからなる群から選択される少なくとも1種の触媒も含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、
a)94〜99.9%の少なくとも1種のラクタム、
b)0.1〜5%の、ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の活性化剤であって、式(I)
【化4】
(式中、Rはラクタムである)
の化合物を含有することを特徴とする、活性化剤、
c)0〜5%の少なくとも1種の触媒、
で構成され、前記構成成分a)〜c)全部を合わせると100%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物の前記構成成分であるa)と、b)とを、溶融物の形態で80〜160℃の温度で重合することを特徴とする、キャストポリアミドの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の組成物の前記構成成分であるa)と、b)と、c)とを、溶融物の形態で80〜160℃の温度で重合することを特徴とする、キャストポリアミドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャストポリアミド製造のための新規組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
キャストポリアミドは分子量が非常に大きいポリアミドである。キャストポリアミドの製造では、ラクタムを少なくとも1種の触媒と少なくとも1種の活性化剤と共に鋳型に流し込み、次いで前記鋳型中でアニオン的に重合させる。この鋳型中に存在する出発化合物は、一般的には熱をかけられ重合される。この方法によって、結晶化度の点で押出成形ポリアミドよりも優れた、均質な材料が得られる。
【0003】
キャストポリアミドは複雑な部品の製造に好適な熱可塑性樹脂である。他の多くの熱可塑性樹脂とは異なり、これらは溶融させる必要がないが、大気圧下、120〜160℃でほんの数分行われる、鋳型中でのラクタムのアニオン重合によって製造される。これには、例えばインゴット鋳造、回転成形、遠心鋳造など、公知の鋳型方法のいずれも用いることができる。それぞれの場合に得られる最終製品は、高分子量の結晶性ポリアミドからなる、軽量で、高機械強度で、非常に良好な滑り性を有し、優れた耐薬品性を備えている成形品を含有しており、また、圧力をかけずに鋳型の中に原料が入れられることから、成形品はわずかな水準の内部応力しか有しない。キャストポリアミドは、切断、穿孔、圧延、粉砕、研磨、及び、印刷又はコーティングすることができる。このポリマーは、複雑な中空形状の製造のみならず、例えば乗用エレベーターの滑車、並びに、機械工業用及び自動車産業用の管、棒、シートなどの半製品の製造にも使用される。
【0004】
キャストポリアミド部品は、低粘度ラクタム溶融物と、触媒と、さらに活性化剤とから、活性化アニオン重合として知られている方法によって製造できることが知られている。これは通常、重合工程の前に、新たな液体溶融物の形態の、触媒とラクタムとの混合物、及び、又は、活性化剤とラクタムとの混合物の、互いに別個の2つの混合物を製造し、すぐにこれらを互いに混ぜ合わせ、次いで混合物を鋳型中で重合させることによって達成される。この方法は、望ましくない尚早な反応を確実に起こさないことが意図されている。
【0005】
従来技術で知られている組成物の欠点は、これらが低活性の固体活性化剤を含有しているか、溶媒含有液体ポリイソシアネートを含有しているかのいずれかであることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を有しない組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、今回、
a)少なくとも1種のラクタムと、
b)式(I)
【化1】
(式中、Rはラクタムであり、好ましくはカプロラクタムであり、先行技術の欠点を有しない)の、ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の活性化剤と
を含有する組成物が見出された。
【発明を実施するための形態】
【0008】
したがって、本発明は、
a)少なくとも1種のラクタムと、
b)ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の活性化剤であって、式(I)
【化2】
(式中、Rはラクタムであり、好ましくはカプロラクタムである)の化合物を含む活性化剤と
を含有する組成物を提供する。
【0009】
本発明の別の好ましい実施形態では、活性化剤は、式(II)
【化3】
の化合物を含有する。
【0010】
活性化剤は、好ましくはN,N’−ビス(3−イソシアナト−4−メチルフェニル)カルボジイミドを当業者によく知られている方法でカプロラクタムと反応させることによって得られる化合物を含有する。
【0011】
本製造方法は、好ましくは例えば石油スピリットなどの溶媒、又は例えばトルエンやキシレンなどのアルキルベンゼンの存在下で行われる。
【0012】
一般式(III)
【化4】
の化合物は本発明の目的のためのラクタムとして用いることができ、式中Rは3〜13個の炭素原子を有するアルキレン基である。カプロラクタム及び/又はラウロラクタムがこれに含まれることが好ましい。これらは例えばLanxess Deutschland GmbH社から購入することができる。
【0013】
上述の化合物は市販されており、例えばRhein Chemie Rheinau GmbH社やBayer MaterialScience AG社から入手可能である。
【0014】
本発明の別の実施形態では、組成物はラクタムハロゲン化マグネシウム、アルカリ金属アルミノジラクタメート、アルカリ金属ラクタメート、及び/又はアルカリ土類金属ラクタメートからなる群から選択される少なくとも1種の触媒も含有する。ここではナトリウムカプロラクタメートが特に好ましい。
【0015】
上述の触媒は市販されており、例えばRhein Chemie Rheinau GmbH社又はKatChem spol.s.r.o.社から入手可能である。
【0016】
本発明の別の実施形態では、組成物は以下の割合でa)〜c)、すなわち
a)94〜99.9%の少なくとも1種のラクタム、
b)0.1〜5%、好ましくは0.2〜2%、特に好ましくは0.2〜0.8%の少なくとも1種の活性化剤、
c)0〜5%の少なくとも1種の触媒、
を含有し、これら構成成分全部を合わせると100%である。
【0017】
百分率のデータは重量%である。
【0018】
本発明の別の実施形態では、本発明の組成物は、例えばポリエーテルアミンコポリマーや連続フィラメント又は他のガラス繊維や炭素繊維やアラミド繊維などの耐衝撃性改良剤、及び/又は例えば高分子量ポリオールなどの加工助剤、例えばAerosil製品などの増粘剤、UV安定剤、熱安定剤、例えば黒鉛やグラファイトなどの導電性向上剤、イオン液体、マーキング物質、及び/又は着色剤などの他の添加剤も含有する。
【0019】
本発明は、本発明の組成物の溶融形態の構成成分であるa)と、b)と、任意選択的なc)とを、80〜160℃の温度で重合する、キャストポリアミドの製造方法も更に提供する。
【0020】
本発明の組成物が他の添加剤も含有する場合、これらは重合工程の前及び/又は重合中に添加することができる。
【0021】
添加剤の量は使用目的に応じて決定され、そのため必要に応じて変更することができる。
【0022】
重合は、例えばKunststoffhandbuch[Plastics Handbook],vol.3/4,Technische Thermoplaste[Engineering Thermoplastics],Hanser Fachbuch,pp.413−430に記載されているような、当業者によく知られている方法によって達成される。この際混合物は好ましくは混合される。この目的のために例えば撹拌槽などの混合装置を用いることができる。
【0023】
本発明は、キャストポリアミドを製造するための本発明の組成物の使用も更に提供する。
【0024】
上述した本発明の組成物は、好ましくは例えば自動車産業や電気工学部品製造における、及び電気的用途のための金属の代替品として、シート、棒、管、ケーブル滑車、歯車、及び軸受の製造のため、並びに/又は容器の製造のため、使用される。
【0025】
本発明の範囲は、上述した、及び以降に記載する、又は好ましい範囲の中で述べた、部分の定義、指数、パラメーター、及び説明の全てを、互いに組み合わせて、網羅している。すなわち、それぞれの範囲及び好ましい範囲を含むあらゆる望ましい組み合わせも網羅している。
【0026】
以下の実施例は、本発明の解釈のためのものであり、結果としていかなる限定効果ももたらさない。
【実施例】
【0027】
試薬
Lanxess Deutschland GmbH社から入手した無水カプロラクタム(凝固点>69℃)。
使用した触媒は、Rhein Chemie Rheinau GmbH社から入手したAddonyl(登録商標)Kat NL(カプロラクタム中に約18%のナトリウムカプロラクタメート)を含有している。
使用した活性化剤は、
1)(本発明の)式(II)のカプロラクタムでブロックされた、N,N’−ビス(3−イソシアナト−4−メチルフェニル)カルボジイミド(実施例1参照)、
2)Rhein Chemie Rheinau GmbH社から購入可能な、脂肪族ポリイソシアネート溶液であるAddonyl(登録商標)8108(実施例2参照)、
3)Brueggemann GmbH社から購入可能な、カプロラクタム中に存在する、カプロラクタムでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートである、Brueggolen(登録商標)C20 P(実施例3参照)、
4)トリレン2,4−ジイソシアネートをベースとした単量体カルボジイミドである、N,N’−ビス(3−イソシアナト−4−メチルフェニル)カルボジイミド(実施例4参照)、
5)1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジイソシアナト−ベンゼンをベースとする芳香族ポリカルボジイミドである、Stabaxol(登録商標)P(実施例5参照)、
6)二量体TDIウレトジオンであるAddolink(登録商標)TT(実施例6参照)、
を含有している。
【0028】
装置
溶融合成に使用した装置は、
・オイルバス中で加熱された2個の三口フラスコ(500ml)
・スリーブを備えた2台の精密ガラスグランドスターラー
・1つはバルブを有し、1つはバルブを有していない、2つのガスキャップ
・冷却トラップと圧力計を備えた1台の真空ポンプ
から構成されていた。
【0029】
温度測定に使用した装置は、
・例えばIRシリアルインターフェイスを備えたTesto 175−T3である温度測定装置
・硬化した試験片中に残しておくための熱電対ワイヤー
・600mlのガラスビーカー(トール型)
・ガラスビーカー用加熱装置(金属ブロック、オイルバス)
から構成されている。
【0030】
測定及び評価
196.8gのカプロラクタムと活性化剤とをフラスコAに入れ、192gのカプロラクタムと8gのNL−Neu触媒とをフラスコBに入れた。オイルバス中に20分間入れて、真空下(<15mbar)、122℃(±2℃)でフラスコA及びB由来の溶融物を調製した。窒素を導入し、次いでフラスコA及びフラスコB由来の成分を三口フラスコで混ぜ合わせ、軽く撹拌し、600mlのガラスビーカーに移した。鋳型(ガラスビーカー)の温度は160℃であった。重合時間は通常10〜20分であった。
【0031】
表1に結果を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例は、本発明の組成物によれば非常に低い活性化剤濃度でもキャストポリアミド部品が製造できることを示している。同様の良好な結果を得るための唯一の方法は、活性剤成分としてポリイソシアネート溶液を使用することである。しかし、これらは溶媒を含有しているという欠点を有している。