(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5946943
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20160623BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20160623BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20160623BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20160623BHJP
H01L 23/50 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
H01L23/30 D
H01L23/28 A
H01L23/12 501T
H01L23/50 H
H01L23/50 R
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-139062(P2015-139062)
(22)【出願日】2015年7月10日
【審査請求日】2015年7月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 本願発明に係る半導体パッケージを、平成27年1月14日に東京ビックサイト(東京都江東区有明3−11−1)にて開催された「第16回半導体パッケージング技術展」に出品した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598056711
【氏名又は名称】アルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095717
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 博文
(72)【発明者】
【氏名】大内 勉
(72)【発明者】
【氏名】大内 淳平
(72)【発明者】
【氏名】紙崎 文昭
(72)【発明者】
【氏名】木村 公彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 孝訓
(72)【発明者】
【氏名】山岸 秀之
【審査官】
多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−294719(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0315379(US,A1)
【文献】
特開2007−250703(JP,A)
【文献】
特開2004−128399(JP,A)
【文献】
特開2012−077152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
23/28−23/31
23/48
23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に半導体チップを搭載するためのステージと、所定仕様に従って該ステージの周囲に複数個の外部接続端子を配置して1単位を構成し、この単位の複数個を配置して配線パターンを形成して成るリードフレームと、
該リードフレームのステージ上に搭載した半導体チップと、
該半導体チップと上記外部接続端子とを接続するワイヤと、
上記複数個から成る外部接続端子の実装時の接着面の裏面側にそれぞれ毎に独立して形成した応力緩和層と、
該応力緩和層及び前記接続したワイヤを含み、かつ前記半導体チップを搭載したリードフレームの面側を被覆封止してなるモールド樹脂体とから成り、
該モールド樹脂体を各1単位毎に切断分離して前記モールド樹脂体の反対側に外部接続端子の接着面を露出させて形成したことを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項2】
上記応力緩和層は、外部接続端子のワイヤ接続部の周辺を除いて形成したことを特徴とする請求項1記載の半導体パッケージ。
【請求項3】
上記外部接続端子及び応力緩和層の外側端面をモールド樹脂から露出させたことを特徴とする請求項1、又は2記載の半導体パッケージ。
【請求項4】
上記外部接続端子の下面に外側端面に通じる凹部を形成したことを特徴とする請求項1、2、又は3記載の半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、半導体パッケージの技術分野に属し、特に導電性材から成るリードフレームで所定仕様の配線パターンを形成し、これに半導体チップを搭載及びワイヤリング後に樹脂封止して成る半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体パッケージには小型化の要望があった。このため、基板に実装するために外部接続用リードが外側に突出した所謂ガルウィングタイプの半導体パッケージの代替として、ノンリードタイプのより小型化された半導体パッケージが開発されていた。
【0003】
このノンリードタイプの半導体パッケージは、導電性の板材から成るリードフレームに配線パターンの複数個を一定の規則で配列形成し、所定位置に半導体チップを搭載してワイヤリング(配線処理)後に、これら全体を一括樹脂封止して成型し、固形後にダイシングブレード等により切断して1単位の半導体パッケージ毎に切り分けて(慣用的に、「個片化」と称されている。)構成されていた。
【0004】
上記構成のノンリードタイプの半導体パッケージの基板への具体的な実装としては、基板の表面の実装用ランドと外部接続端子の下側露出面を半田によって直付する電気的接続と固定を兼ねた面実装方式を採用していた。このような面実装方式を採用する半導体パッケージの例としては、特許文献1や特許文献2で開示された半導体パッケージがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−37236号公報
【特許文献2】特開2008−270690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体パッケージを実装した各種基板は、最近は自動車、建設機械、ロボット等の常に加速度や振動によって反りや曲げ等の機械的負荷を含めた様々なストレス(以下、「ストレス等」と称する。)が加わる環境での使用率が高まりつつある。このため、半導体パッケージの基板実装後の信頼性が重要となってきている。
【0007】
この基板実装後の信頼性向上の観点からみると、上記特許文献にて開示された半導体パッケージに関しては、以下の問題点があった。
【0008】
まず、特許文献1の半導体パッケージは、その下面側に露出した外部接続端子を半田にて基板に接着して実装するが、面どうしの接着のために回路基板へのストレス等の発生時に外れ易くなり信頼性に欠ける点があった。
【0009】
一方、特許文献2の外部接続端子の外側の下面側が所謂C面加工されているために、実装時には半田フィレットが形成され易く接着状態が強化されていた。しかし、接着状態が強化されたことによる弊害も発生していた。それは、基板にストレス等が加わると、半田フィレットが強固であるために金属である外部接続端子の上面側とモールド樹脂の接合部分に剥離やクラックが発生し易くなっていたことであった。このような剥離が発生すると導通破断が発生し、半導体パッケージの破損若しくはその性能が著しく低下するおそれがあった。
【0010】
そこで、本願発明は上述した問題点の解決を図るべく為されたものであり、ノンリードタイプの半導体パッケージにおいて、基板実装後のストレス等への耐久性が向上した新規な半導体パッケージを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本願発明にかかる半導体パッケージは、以下のように構成している。
【0012】
すなわち、上面に半導体チップを搭載するためのステージと、所定仕様に従って該ステージの周囲に複数個の外部接続端子を配置して1単位を構成し、この単位の複数個を配置して配線パターンを形成して成るリードフレームと、該リードフレームのステージ上に搭載した半導体チップと、該半導体チップと上記外部接続端子とを接続するワイヤと、
上記複数個から成る外部接続端子の実装時の接着面の裏面
側に
それぞれ毎に独立して形成した応力緩和層と、該応力緩和層及び前記接続したワイヤを含み、かつ前記半導体チップを搭載したリードフレームの面側を被覆封止してなるモールド樹脂体とから成り、該モールド樹脂体を各1単位毎に切断分離して前記モールド樹脂体の反対側に外部接続端子の接着面を露出させて形成したことを特徴としている。上記応力緩和層は、レジスト材で形成することが好適である。
【0013】
また、上記応力緩和層は、外部接続端子のワイヤ接続部の周辺を除いて形成したことを特徴としている。本願発明の半導体パッケージは外部接続端子の下面(実装側の面)がモールド樹脂から露出するため、この露出部分を除いて外部接続端子を囲うように形成することが好適である。
【0014】
さらに、上記外部接続端子及び応力緩和層の外側端面は、モールド樹脂から露出させたことを特徴としている。この形態とすることにより、配線パターン全体の狭小化に寄与し半導体パッケージの小型化が図れる。
【0015】
加えて、上記外部接続端子の下面には、外側端面に通じる凹部を形成したことを特徴としている。この凹部には、実装する際に半田が進入することになる。
【発明の効果】
【0016】
上記のように構成した本願発明にかかる半導体パッケージは、以下の効果を発揮する。
【0017】
下面に凹部を形成した外部接続端子をもって基板へ実装しているため、半導体パッケージの小型化と共に物理的に強固な面実装が可能となる。
【0018】
この面実装が強固な一方で、外部接続端子とモールド樹脂間に応力緩和層が介在した構成であるため、実装後の基板に機械的負荷等のストレスが作用しても応力緩和層が緩衝材として機能し、外部接続端子とモールド樹脂の接合部分の剥離や外部接続端子へのクラック発生による配線パターンの導通破断を抑制することができる。
【0019】
この結果、面実装後の半導体パッケージの破損や機能低下の発生が抑制されて基板実装後の信頼性が格段に向上し、従来は難しかった機械的負荷等のストレスが大きく作用する過酷な環境下での半導体パッケージの使用が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本願発明に係る半導体パッケージの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1の半導体パッケージを反対側から示す斜視図(A)とP部分の拡大図(B)である。
【
図3】
図1のAA線断面図で示す半導体パッケージを基板に実装し、これに機械的負荷が作用した状態を示す説明図である。
【
図4】
図3の外部接続端子部分の部分拡大図(A)、(B)である。
【
図5】本願発明に係る半導体パッケージの実装強度試験方法を示す説明図(A)、(B)である。
【
図6】本願発明に係る半導体パッケージの製造工程の概略を示す説明図(A)〜(E)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本願発明に係る半導体パッケージの最良の実施形態例について、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施例の半導体パッケージ(以下、「本パッケージ」と略称する。)であって、所定の実装対象の基板7(以下、「実装基板」と称する。)の回路上に面実装される。本パッケージ1は、主に所定仕様に従って形成された配線パターン上に半導体チップ3を搭載すると共に、この搭載側の全域を熱硬化性のモールド樹脂5で被覆封止した構成である。なお、以下の説明では、便宜上、図面の上側を本パッケージ1の上面側、図面の下側を本パッケージ1の下面側と定義して用いる。また、モールド樹脂5については、説明の便宜上、透過させて図示する。
【0023】
上記配線パターンはリードフレーム2から構成している。リードフレーム2は、薄板状の導電板(本実施例では銅板)であり、中央部に形成した矩形状のステージ21と、ステージ21の外周の離隔位置に形成した8個の外部接続端子22と、から構成している。
【0024】
上記ステージ21の上面は半導体チップ3の搭載箇所である一方、下面はモールド樹脂5から全面を露出させ、実装基板7への固定や放熱板として機能する。ステージ21に搭載する半導体チップ3は所望の処理機能を有し、ステージ21に搭載後は外部接続端子22とワイヤ4による接続処理がなされる。
【0025】
外部接続端部22は、ステージ21の一方の対向辺の外周位置であって、ステージ21の端部から所定の離隔位置に片側4箇所、合計8箇所に形成している。外部接続端子22は、上面視においてステージ側に近い側を若干幅広とした凸型の呈を成し、外側端面22aと下面22bをモールド樹脂5から露出させている。また、下面22bには外側端面22aに連通する凹部22cを形成している。なお、この凹部22cは非貫通型かつ長孔状のビアホールを個片化する過程で半裁して形成したものである。また、上記の幅広部分の上面22dには、高導電性を得るため銀メッキ22eによる表面処理を施した上、金製のワイヤ4を接続して半導体チップ3との導通を確保している。
【0026】
次に、上記の外部接続端子22の銀メッキ22eを除いた上面22d及び両側の側面22fと、モールド樹脂5の間には帯状かつ積層状の応力緩和層6を形成している。本実施例における応力緩和層6は、エポキシ系樹脂又はアクリレート系樹脂を主成分とするレジスト材である。応力緩和層6は、上述したように外部接続端子22を側面22fから上面22d、そしてもう一方の側面22fと連続したコ字状に囲うと共に、外側の端面をモールド樹脂5から露出させて構成している。なお、応力緩和層6は、モールド樹脂5から露出させなくとも良く、外部接続端子22の上面22d又は両側面22fの一部を省略しても良い。
【0027】
上記構成の本パッケージ1は、外部接続端子22の下面22bを半田によって実装基板7の実装用ランド71に対して電気的及び物理的に接続し、いわゆる面実装がなされる。また、実装時には外部接続端子22の凹部22cに半田Hが進入するため、良好なフィレットH1が形成されることになる。
【0028】
上述のように面実装された本パッケージ1は、外部接続端子22と実装基板7と強固な接続状態を確保する一方、応力緩和層6が以下のように作用する結果、従来構成のパッケージに比べて面実装強度を向上させている。
【0029】
すなわち、面実装された本パッケージ1に対し実装基板の「曲げ」や「反り」等の機械的負荷S(ストレス)が作用した場合、銅製のリードフレーム2の外部接続端子22と樹脂製のモールド樹脂5の境界では、両者の線膨張係数の違いで発生する垂直方向の応力(矢印v)が軽減される。これは、外部接続端子22とモールド樹脂5の両者間に介在する応力緩和層6が弾性を有するレジスト材で伸縮(矢印a)するからである。また、水平方向の応力(矢印h)についても、外部接続端子22とモールド樹脂5との境界に応力緩和層6が介在するため、応力緩和層6の境界両面が反対方向に追随(矢印b)し、水平方向の応力が軽減されている。まとめると、応力緩和層6は、外部接続端子22とモールド樹脂5の間でいわゆる緩衝材として機能し、本パッケージ1に作用する機械的負荷(ストレス)の多くを吸収することが可能となっている。また、外部接続端子22のモールド樹脂5の露出側の3面、具体的には上面22dと両側の側面22fをコ字状に囲っているため、上述のように垂直及び水平方向の応力だけでなく、捻じれ方向の応力も軽減している。
【0030】
なお、本パッケージ1について、実装強度の確認試験を実施し、面実装強度の向上を確認している。具体的には、確認試験の仕様は
図5(A)に示すように、本パッケージ1を実装した実装基板7を支持具8で支持し、実装基板7の裏面側から押し治具9をもって本パッケージ1の導通破断まで押し込む「基板限界曲げ試験」を行った(参考規格:JEITA ET-7409/104)。この結果、応力緩和層6の有無の違いで破断までの押し込み量が69.2%増加した。また、
図5(B)に示すように、支持具8で支持した実装基板7の一部を開孔し、この開孔部72から押し治具9をもって本パッケージ1の裏面側を導通破断まで押し込む「押し強度試験」も行っている(参考規格:JIS:C60068-2-21)。この結果、応力緩和層6の有無の違いで破断までの押し強度は62.8%増加した。
【0031】
次に、上述した構成の本パッケージ1の製造工程(製造方法)の概略について、以下に説明する(
図6参照)。
【0032】
先ず、薄板状銅板のリードフレーム2に本パッケージ1に仕様に対応させたステージ21及び外部接続端子22から成る配線パターンの多数個を行列状に一定の規則性をもって形成する。この配線パターンにおいては隣接する本パッケージ間で外部接続端子22を共有する配置構成としている。隣り合う外部接続端子22の共有可能な下面側の位置には、所定厚さを残した凹部22c(非貫通型かつ長孔状のビアホール)を形成している。
【0033】
(A)銀メッキ処理、応力緩和層の形成
次に、上記構成のリードフレーム2の外部接続端子22の上面22dの幅広部に銀メッキ22eによる処理を行う。その後、銀メッキ処理部を除いた上面22d、及び両側の側面22fに連続する帯状の応力緩和層6を形成する。この応力緩和層6は隣接する本パッケージ間で共有する外部接続端子22を横断又は跨るように被覆形成し、1単位の本パッケージ1に分割する線上に沿って形成する。この応力緩和層6は半導体製造過程で一般的に用いられるレジスト材を塗布又は印刷等により形成している。
【0034】
(B)半導体チップ搭載
応力緩和層6の形成後には、ステージ21に半導体チップ3を搭載して固定する。
【0035】
(C)ワイヤリング
半導体チップ3を搭載してステージ21へ固定が完了した後、半導体チップ3と外部接続端子22とをワイヤ4によって接続するワイヤリング処理を行う。外部接続端子22の接続部は上記の銀メッキ処理部となる。
【0036】
(D)樹脂封止
半導体チップ3の搭載及びワイヤリング処理後には、リードフレーム2をモールド金型(図示省略)にセットし、モールド樹脂5を半導体チップ搭載側に充填して樹脂封止を行う。
【0037】
(E)個片化
モールド樹脂5の硬化後には、リードフレーム全体を分割線に沿って、ダイシングブレードD等の切断手段によって分割して個片化処理する。この個片化処理により、各外部接続端子22、下面側の凹部22c及び応力緩和層6は帯状の中心線に沿って半裁される。
【0038】
上記製造工程の結果、本パッケージ1の側端面には外部接続端子22とその上面及び両側の側面を覆う応力緩和層6が露出することとなる。
【符号の説明】
【0039】
1 本パッケージ
2 リードフレーム
21 ステージ
22 外部接続端子
22a 外側端面
22b 下面
22c 凹部
22d 上面
22e 銀メッキ
22f 側面
3 半導体チップ
4 ワイヤ
5 モールド樹脂
6 応力緩和層
7 実装基板
71 実装用ランド
72 開孔部
8 支持具
9 押し治具
H 半田
H1 フィレット
D ダイシングブレード
【要約】
【課題】ノンリードタイプの半導体パッケージにおいて、基板実装後の機械的負荷等への耐久性が向上した新規な半導体パッケージを提供する。
【解決手段】所定仕様に従ってステージ21と外部接続端子22とから配線パターンを形成したリードフレームと、リードフレームのステージ上に搭載した半導体チップ3と、半導体チップと外部接続端子を接続するワイヤ4と、ワイヤ、半導体チップ、及び該半導体チップ搭載側のリードフレームの全域を被覆封止したモールド樹脂5と、から成る半導体パッケージ1において、外部接続端子とモールド樹脂間に応力緩和層6を形成する。応力緩和層は、外部接続端子の銀メッキ22eで処理したワイヤ接続部周辺及び下面を除いた部分であって、上面と両側面に連続した略コ字状に当接するように形成する。また、外部接続端子の下面には、外側端面22aに通じる凹部22cを形成する。
【選択図】
図1