(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947071
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】バッテリ冷却装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20060101AFI20160623BHJP
B60K 6/28 20071001ALI20160623BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
B60K1/04 ZZHV
B60K6/28
B60K11/06
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-64987(P2012-64987)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-193635(P2013-193635A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成毛 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】川口 誠司
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−035942(JP,A)
【文献】
特開2013−086582(JP,A)
【文献】
特開2000−306564(JP,A)
【文献】
特開平11−329517(JP,A)
【文献】
特開2008−114706(JP,A)
【文献】
特開2012−144244(JP,A)
【文献】
特開2005−047489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60K 6/28
B60K 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室を備える車両に配設されたバッテリを冷却するバッテリ冷却装置であって、
前記車両の車体に取り付けられて前記バッテリを収容するバッテリケースを備え、
前記バッテリケースは、前記バッテリを収容するインナケースと、該インナケースを収容するアウタケースとを有して2重に形成され、
前記バッテリと前記インナケースとの間、及び該インナケースと前記アウタケースとの間には、隙間が形成され、
前記車室の空気は、前記インナケースの一端側に形成された吸気口から前記インナケース内に送られ、前記バッテリと前記インナケースとの間の隙間により形成される冷却流路を流れて前記バッテリを冷却し、
前記バッテリ冷却後の空気は、前記インナケースの他端側に形成された開口部から前記アウタケース内に流入し、前記インナケースと前記アウタケースとの隙間により形成される排出流路を流れ、前記開口部と反対側の前記アウタケースの壁部に設けられる排気口から前記車室に流入し又は前記車両外に放出される
ことを特徴とするバッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記バッテリケースは、前記車両の前記車体の下部に配設され、
前記排出流路は、前記アウタケース内の少なくとも下側に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項3】
前記バッテリは、複数のバッテリセルを有してなり、
前記複数のバッテリセルは、該バッテリセルの長手方向の一辺が前記吸気口と前記開口部とを繋ぐ仮想線に対して略平行に延びて配設され、
前記冷却流路の前記吸気口は、前記バッテリセルの長手方向一端側に対向する前記インナケースの壁部に設けられ、
前記冷却流路の前記開口部は、前記バッテリセルの長手方向他端側に対向する前記インナケースの壁部に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項4】
前記バッテリは、複数のバッテリセルを有してなり、
前記複数のバッテリセルは、該バッテリセルの長手方向の一辺が前記吸気口と前記開口部とを繋ぐ仮想線に対して交差する方向に延びて配設され、
前記冷却流路の吸気口は、前記バッテリセルの短手方向一端側に対向する前記インナケースの壁部に設けられ、
前記冷却流路の前記開口部は、前記バッテリセルの短手方向他端側に対向する前記インナケースの壁部に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項5】
前記冷却流路及び前記排出流路のいずれかに空気を循環させるファンが設けられている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のバッテリ冷却装置。
【請求項6】
前記アウタケースは、前記車体に対して移動自在に支持されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のバッテリ冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動力を受けて走行可能な車両に搭載されたバッテリを冷却するバッテリ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動力のみで走行する電気車両やエンジンとモータの駆動力で走行するハイブリッド車両では、バッテリから供給される電力によってモータを駆動して車両が走行する。このバッテリは、作動時に発熱を伴うが、バッテリの温度が高くなると、充放電性能が低下し、寿命が短くなる虞がある。
【0003】
そこで、バッテリを冷却する冷却装置が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の冷却装置は、内側に主空気通路が形成されてバッテリを収容する車両用電装ユニットを備える。車両用電装ユニットは、車両の車室内の床とシートとの間に設置されている。車両用電装ユニットの一方側の端部には、主空気通路に車室内の空気を導入可能な吸気口が設けられ、車両用電装ユニットの他方側の端部には、主空気通路を流通する空気を電装ユニットの外へ排出可能な排気口が設けられている。車両用電装ユニットの下側には、主空気通路の他端側に連通する副空気通路が形成されている。副空気通路には主空気通路の一端側に対して接続・遮断可能な第1シャッタが設けられている。副空気通路の第1シャッタが開くと、主空気通路に接続されて閉回路を構成する。主空気通路の他端側には、主空気通路に空気の流れを生じさせるファンが設けられている。バッテリの冷却時には、車室内の空気が吸気口から主空気通路に導入されてバッテリからファンに向けて流れた後に、排気口から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−47489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載の冷却装置の副空気通路は、その周囲を包囲する専用の壁部がなく、副空気通路の下側はフロアパネルによって仕切られ、上側はシートクッションによって仕切られ、前側はハウジングの後端板によって仕切られ、後側はボディクロスメンバによって仕切られている。このため、副空気通路のフロアパネルが路面やエンジンルーム内からの熱気を受けると、副空気通路内の空気の温度が上昇し、この暖められた空気によって主空気通路を介してバッテリが受熱して許容温度を超える虞がある。そこで、バッテリの受熱を避けるために、冷却装置に断熱材を設けたり断熱加工したりすると、製造コストが高くなるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、バッテリの受熱を防止するとともに、製造コストを安価にするバッテリ冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明のバッテリ冷却装置は、
車室を備える車
両に配設されたバッテリを冷却するバッテリ冷却装置であって、車両の車体に取り付けられてバッテリを収容するバッテリケースを備え、バッテリケースは、バッテリを収容するインナケースと、該インナケースを収容するアウタケースとを有して2重に形成され、バッテリとインナケースとの間、及び該インナケースとアウタケースとの間には、隙間が形成され、
車室の空気は、インナケースの一端側に形成された吸気口からインナケース内に送ら
れ、バッテリとインナケースとの間の隙間
により形成される冷却流路を流れてバッテリを冷却し
、バッテリ冷却後の空気は
、インナケースの他端側に形成された開口部からアウタケース内に流入し、インナケースとアウタケースとの隙間
により形成される排出流路を流れ
、開口部と反対側のアウタケースの壁部に設けられる排気口から車室に流入し又は車両外に放出され
る。
【0008】
好適には、バッテリケースは、車両の車体の下部に配設され、排出流路は、アウタケース内の少なくとも下側に形成されている、とよい。
【0010】
好適には、バッテリは、複数のバッテリセルを有してなり、複数のバッテリセルは、該バッテリセルの長手方向の一辺が吸気口と開口部とを繋ぐ仮想線に対して略平行に延びて配設され、冷却流路の吸気口は、バッテリセルの長手方向一端側に対向するインナケースの壁部に設けられ、冷却流路の開口部は、バッテリセルの長手方向他端側に対向するインナケースの壁部に設けられ、排出流路の排気口は、冷却流路の開口部と反対側のアウタケースの壁部に設けられている
、とよい。
【0011】
好適には、バッテリは、複数のバッテリセルを有してなり、複数のバッテリセルは、該バッテリセルの長手方向の一辺が吸気口と開口部とを繋ぐ仮想線に対して交差する方向に延びて配設され、冷却流路の吸気口は、バッテリセルの短手方向一端側に対向するインナケースの壁部に設けられ、冷却流路の開口部は、バッテリセルの短手方向他端側に対向するインナケースの壁部に設けられ、排出流路の排気口は、冷却流路の開口部と反対側のアウタケースの壁部に設けられている
、とよい。
【0013】
好適には、冷却流路及び排出流路のいずれかに空気を循環させるファンが設けられている
、とよい。
【0014】
好適には、アウタケースは、車体に対して移動自在に支持されている
、とよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、上記特徴を有することで、バッテリの受熱を防止するとともに、製造コストを抑制可能なバッテリ冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態に係わるバッテリ冷却装置が設けられたハイブリッド車両の側面側の説明図を示す。
【
図2】本発明の一実施の形態に係わるバッテリ冷却装置の内部構造図を示し、同図(a)はバッテリ冷却装置の平面視における内部構造図であり、同図(b)はバッテリ冷却装置の側面視における内部構造図である。
【
図3】本発明の他の実施の形態に係わるバッテリ冷却装置の平面視における内部構造図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のバッテリ冷却装置の好ましい実施の形態を
図1から
図3に基づいて説明する。本実施例では、エンジン及びモータの駆動力を受けて走行可能なハイブリッド車両(自動車)に搭載されるバッテリ冷却装置を例にして説明する。なお、本発明のバッテリ冷却装置は、自動車の他に輸送機械等に適用することができる。
【0018】
ハイブリッド車両は、バッテリからの電力供給によってモータを駆動し、又はエンジンの出力によって走行し、またエンジンの出力又は車両の運動エネルギーの一部を、モータを介してバッテリに蓄電するものである。このバッテリは、前述したように受熱して許容温度を超えると、充放電性能が低下する虞があり、本願のバッテリ冷却装置はバッテリの受熱を防止するものである。なお、バッテリは車両のフロアパネルの下方に配設されている。
【0019】
バッテリ冷却装置20は、
図1(側面側説明図)に示すように、ハイブリッド車両1(以下、単に「車両1」と記す。)の前輪2及び後輪3との間であって車体4の下部に設けられたフロアパネル5の下方に配設されている。バッテリ冷却装置20は、
図2(a)(平面側内部構造図)及び
図2(b)(側面側内部構造図)に示すように、フロアパネル5の下部に取り付けられてバッテリ10を収容するバッテリケース21を備えている。
【0020】
先ず、バッテリケース21を説明する前に、バッテリケース21に収容されるバッテリ10について概説する。バッテリ10は、4つのバッテリセル11からなる。バッテリセル11は直方体状に形成され、4つのバッテリセル11がバッテリケース21内に保持された状態で収容されている。なお、バッテリセル11の形状は直方体状に限るものではく、またバッテリケース21内に収容されるバッテリセル11の数は、3つ以下又は5つ以上でもよい。
【0021】
バッテリケース21は、バッテリセル11を収容する直方体状に形成されたインナケース22と、インナケース22を収容する直方体状に形成されたアウタケース26とを有して2重に形成されている。インナケース22とアウタケース26は、熱伝導性が良い金属材料(例えば、板金等)で形成されている。インナケース22は、バッテリセル11を上下2段で且つインナケース幅方向に2つ並べることが可能な大きさを有するとともに、バッテリセル11同士間及び、インナケース22の内面22aとバッテリセル11の外面11aとの間に隙間23が形成可能な大きさを有している。この隙間23は、バッテリセル11の外面11aに沿って外面11aの一端側から他端側へ延びて、インナケース22内に送られた空気を流す冷却流路23aとして形成されている。なお、バッテリセル11のインナケース22に対する配設方向については後述する。
【0022】
インナケース22の前側の壁部22cの幅方向中央部には冷却流路23aの吸気口23bが設けられ、この吸気口23bに車室6(
図1参照)内の空気を導入する導入流路40が接続されている。またインナケース22の後側の壁部22dの幅方向中央部には開口部23cが設けられ、この開口部23cを介してインナケース22とアウタケース26との間の隙間27で形成される後述する排出流路27aに連通している。つまり、開口部23cは、インナケース22に対して吸気口23bと反対側に設けられている。
【0023】
バッテリセル11は、この長手方向の一辺11bが吸気口23bと開口部23cを繋ぐ仮想線Lに沿って略平行に延びるように配設されている。このため、バッテリ冷却装置20の幅Wは、バッテリセル11の短手方向長さによるので、バッテリ冷却装置20の幅Wを小さくすることができる。
【0024】
アウタケース26は、インナケース22を収容可能な大きさを有するとともに、アウタケース26の内面26aとインナケース22の外面22bとの間に隙間27が形成可能な大きさを有している。この隙間27は、インナケース22の全周囲に設けられてインナケース22の外面22bに沿って外面22bの後端側から前端側へ延びて、バッテリセル11の冷却後の空気を流す排出流路27aとして形成されている。つまり、排出流路27aは、インナケース22の上方、下方、前後方向及び幅方向の両側に形成されている。
【0025】
アウタケース26の前側の壁部26bの幅方向中央部の下側には、排出流路27aの排気口27bが設けられている。つまり、排気口27bは、冷却流路23aの開口部23cと反対側に設けられている。この排気口27bは車室6(
図1参照)内に連通する帰還流路30に接続されている。冷却流路23aの開口部23cには、冷却流路23a内の空気を排出流路27aに排出するファン32が設けられている。なお、ファン32は、車室6内の空気を冷却流路23aから排出流路27aに流して車室6内に戻すことができれば、開口部23以外の冷却流路23a及び排出流路27a内のいずれかの位置に設けられてもよい。
【0026】
次に、バッテリ冷却装置20によってバッテリセル11を冷却する作動について、
図2(a)及び
図2(b)を参照しながら説明する。先ず、ファン32が駆動すると、車室6内の空気がインナケース22に繋がる導入流路40に流れ、インナケース22の吸気口23bを通ってインナケース22内に流入する。インナケース22内に流入した空気は、冷却流路23aを流れてバッテリセル11を冷却する。なお、冷却流路23aは各バッテリセル11の周囲の外面に沿って延びているので、バッテリセル11の全体を効率的に冷却することができる。
【0027】
バッテリセル11の冷却後の空気は、開口部23cを通って排出流路27aに流入して排出流路27aの排気口27b側へ流れる。ここで、バッテリ冷却装置20は、車両1のフロアパネル5の下部に取り付けられ、路面に近くまたエンジンルームに近い位置にある。このため、路面やエンジンルームからの熱気Hによりバッテリセル11の温度が高くなる虞がある。
【0028】
しかしながら、バッテリ冷却装置20の排出流路27aは、インナケース22の側方や上方のみならずインナケース22の下側の外面22bに沿って配設されているので、路面からの熱気Hや車両のエンジンルーム内の熱気Hがアウタケース26の下側の側面に作用しても、インナケース22の下方に延びる排出流路27aに流れる空気が路面等からの熱気Hを吸収して帰還流路30を介して車室6内に戻る。このため、路面等からの熱気Hがバッテリセル11に作用してバッテリセル11の温度を上昇させる事態を未然に防止することができ、バッテリセル11を適温に維持することができる。また、バッテリ冷却装置20は、バッテリ10が収容されたインナケース21をアウタケース26内に収容して形成され、構造が容易である。このため、バッテリ冷却装置20の製造コストを安価にすることができる。
【0029】
なお、前述した実施例では、インナケース22内に配設されたバッテリセル11はこの長手方向の一辺11bが吸気口23bと開口部23cとを繋ぐ仮想線Lに対して略平行に延びるように配設された場合を示したが、
図3に示すように、バッテリセル11の長手方向の一辺11bが吸気口23bと開口部23cとを繋ぐ仮想線Lに対して略直交する方向に延びるように配設してもよい。このようにすると、バッテリ冷却装置20の前後方向の長さLがバッテリセル11の短手方向長さによるので、バッテリ冷却装置20の前後方向の長さLを小さくすることがで、またフロアパネル5の下方の状況に応じたバッテリ冷却装置20の配置の自由度を向上することができる。
【0030】
また、前述した実施例では、アウタケース26はフロアパネル5に対して固定された場合を示したが、アウタケース26をフロアパネル5に対して上下方向に移動自在に保持するようにしてもよい。このようにすると、車両1の走行時にアウタケース26が障害物等に接触すると、アウタケース26が上方に移動して、アウタケース26、インナケース22、バッテリセル11が損傷する虞を少なくすることができる。
【0031】
また、前述した実施例では、排出流路27aはバッテリセル11の下方の他に、バッテリセル11の側方や上方を流れる場合を示したが、排出流路27aがバッテリセル11の少なくとも下方を流れるようにしてもよい。さらに、排出流路27aを流れる空気は帰還流路30を流れて車室6内に戻される場合を示したが、排出流路27aを流れる空気を車両1の外部に放出するようにしてもよい。また、前述した実施例では、バッテリ冷却装置20がフロアパネル5の下方に配設された場合を示したが、バッテリ冷却装置20の設置位置はこれに限定されるものではなく、車室内、エンジンルーム内等の車体4でもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 ハイブリッド車両(車両)
4 車体
6 車室
10 バッテリ
11 バッテリセル
11a、22b 外面
11b 一辺
20 バッテリ冷却装置
21 バッテリケース
22 インナケース
22c、22d、26b 壁部
23、27 隙間
23a 冷却流路
23b 吸気口
23c 開口部
26 アウタケース
27a 排出流路
27b 排気口
32 ファン
L 仮想線