(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車1の部分透視の側面図である。
図1の自動車1は、車体2を有する。
車体2の中央部には、ユーザが乗り込む乗車空間3が設けられる。
乗車空間3内には、ユーザが着座する座席4が2列で設けられている。
座席4は、ユーザが着座する座部5と、着座したユーザが寄り掛かる背面部6と、を有する。
【0020】
座席4の温度は、たとえば夏の暑い日射などにより上昇する。また、冬の冷気により、座席4の温度は、低下する。
ユーザは、乗車後、座席4の熱気または冷気に耐えて、座席4に着座しなければならない。一般的な自動車1では、乗車したユーザがイグニッションキーを操作して、自動車1のエンジンを始動し、さらに自動車1の空気調和装置を作動させ、これに伴ってコンプレッサを駆動することで空気調和装置の冷却サイクルが始動する、あるいはエンジンの冷却水温の上昇後、ヒータを駆動することで空気調和装置の暖房サイクルが始動することにより座席4が乗車空間3とともに適温になる。
しかしながら、このように空気調和装置を用いて乗車空間3とともに座席4が適温になるには、乗車空間の空気を通じて間接的に座席を冷却あるいは加温するため、ユーザが着座してから座面が適温になるまで時間がかかる。
そこで、本実施形態では、短時間で座面を確実に適温にするために、着座したユーザにより送風が阻害されない、座席に形成される溝部に特徴を持つ座席用送風装置10を用いる。
【0021】
図2は、
図1の自動車1に搭載される座席用送風装置10の概略構成図である。
図2の座席用送風装置10は、座席4へ空気を送り込み、座席4および着座したユーザから熱および湿気を取り除く。
座席用送風装置10は、座席4に形成された複数の溝部11および貫通孔12、ダクト13、送風機14、コントローラ15を有する。
【0022】
図3は、
図1の座席4の模式的な断面図である。
図3の座席4の座部5は、弾性部21、カバー部22、フレーム部23を有する。
また、座席4の背面部6は、弾性部24、カバー部25、フレーム部26を有する。
弾性部21,24は、たとえばウレタンなどの弾性材料で形成される。弾性部21,24は、所望の座面形状に形成される。
カバー部22,25は、たとえば通気性のあるメッシュ生地で形成される。カバー部22,25は、小さい貫通孔を多数形成した革シートで形成することもできる。
図3のカバー部は、弾性部21,24の周囲全体を覆う。
フレーム部23,26は、たとえばアルミニウムなどの軽量で高剛性の金属材料で形成される。フレーム部23,26は、たとえば衝突時に乗員を保護し得る強度に形成される。
【0023】
複数の溝部11および貫通孔12は、弾性部21,24に形成される。
複数の溝部11は、弾性部21,24についてのユーザが着座する着座面に形成される。
貫通孔12は、弾性部21,24において、たとえばその裏面から着座面に貫通して形成される。
なお、複数の溝部11および貫通孔12は、弾性部21,24の成形時に同時に形成されても、弾性部21,24の成形後の加工により形成されてもよい。
【0024】
図4は、
図3の座席4に形成される溝部11および貫通孔12の配置図である。
図4は、座席4の表面に、溝部11および貫通孔12の位置を模式的に表したものである。
溝部11および貫通孔12は、実際には、弾性部21,24の表面(着座面)に形成される。
【0025】
座部5の表面(着座面)には、着座したユーザの臀部の下となる位置に、貫通孔12による2個の送風口16が形成される。
各送風口16には、複数本の溝部11が接続される。
図1では、6本である。複数の溝部11は、座部5の表面(着座面)において、送風口16から分岐して形成される。
座部5において、並行に配置される複数本の溝部11は、一定間隔で互いに並行に延在するように、送風口16から座部5の前面までに至る長さで形成される。
残りの複数本の溝部11は、一定間隔で互いに並行に延在するように、送風口16から座部5の背面までに至る長さで形成される。
なお、各並行組の複数本の溝部11の中心間隔は、たとえば着座した太めのユーザの腿の太さの範囲内に当該本数が配列される程度であればよい。具体的にはたとえば3から6cmの間隔でよい。
【0026】
背面部6の表面には、着座したユーザの腰部の後ろとなる位置に、貫通孔12による2個の送風口16が形成される。
各送風口16には、複数本の溝部11が接続される。
図4では、6本である。複数の溝部11は、背面部6の表面において、送風口16から分岐して形成される。
背面部6において、並行に配置される複数本の溝部11は、一定間隔で互いに並行に延在するように、送風口16から背面部6の上端までに至る長さで形成される。
残りの複数本の溝部11は、一定間隔で互いに並行に延在するように、送風口16から背面部6の下面までに至る長さで形成される。
【0027】
背面部6の残りの複数本の溝部11と、座部5の残りの複数本の溝部11とは、
図4に示すように互いに重なり、座席4の背面に至る長さに形成される。
【0028】
図5は、
図4の溝部11の断面図である。
図5に示すように、溝部11は、第1凹部31と、第2凹部32とを有する。
【0029】
第1凹部31は、溝部11の全長にわたって形成される。
本実施形態の第1凹部31は、溝部11の全長において、一定の幅および一定の深さに形成される。第1凹部31は、矩形断面を有する。第1凹部31の幅および深さは、たとえば2cmずつであればよい。
第1凹部31の幅および深さを大きくするほど、後述するようにユーザの着座により弾性部21,24が変形していたとしても、第1凹部31による空気の送風路を確保できる。
しかし、第1凹部31の幅および深さを大きくすると、着座したユーザのホールド性能が低下する。
このため、第1凹部31の幅および深さは、たとえば1から3cmの範囲内とするとよい。
【0030】
第2凹部32は、第1凹部31より浅い深さで、溝部11の全長にわたって形成される。
また、
図5に示すように、第2凹部32は、第1凹部31の座席4の中央側に形成される。
本実施形態の第2凹部32は、溝部11の全長において、一定の幅および一定の深さに形成される。第2凹部32は、平たい長方形の断面を有する。第2凹部32の幅は、たとえば1cmであればよい。第2凹部32の深さは、たとえば0.5cmであればよい。
第2凹部32の幅および深さを大きくするほど、着座したユーザの体(たとえば臀部、腿)の広い範囲において、弾性部21,24を離間させることができる。
しかし、第2凹部32の幅および深さを大きくすると、着座したユーザのホールド性能が低下し、着座による圧縮時に第1凹部31による通気路を確保するように変形させる機能が低下する。
このため、第2凹部32の幅および深さは、たとえば0.3から1.5cmの範囲内とするとよい。第2凹部32は、第1凹部31より幅狭にしてよい。
【0031】
第1凹部31と第2凹部32は、溝部11の全長において隣接して形成される。
第1凹部31と第2凹部32は、溝部11の全長において
図5に示す一体化した溝を形成する。
本実施形態において、溝部11の断面は、その全長において
図5に示す形状となる。
溝部11の底面は、第1凹部31の底面と第2凹部32の底面とによる階段状の段差のある構造になる。
【0032】
図2に説明を戻す。
図2の座席用送風装置10のダクト13は、座席4の貫通孔12と送風機14とを接続する。
ダクト13は、その途中で、各貫通孔12毎に複数本に分岐される。分岐されたダクト13には、開閉弁18が設けられる。
開閉弁18は、コントローラ15により開閉制御される。
なお、送風機14が座席4に取り付けられる場合、ダクト13を省略し、貫通孔12と送風機14とを直接に接続してよい。
【0033】
送風機14は、座席4へ空気を供給する。
送風機14は、ファンを有し、吸気口17から吸引した空気をファンにより圧送する。
吸気口17は、たとえば乗車空間3に設けられても、車外に設けられてもよい。ただし、乗車空間3とともに冷却または暖房するために、乗車空間3に設けるのが望ましい。
送風機14は、たとえば自動車1のエンジンまたはバッテリなどの動力源51のエネルギを用いて動作する。
送風機14に冷暖房機能を設けてもよい。送風機14の冷暖房機能には、たとえば自動車1に設けられる空気調和装置53の冷暖房機能を利用してよい。
【0034】
コントローラ15は、送風機14、複数の開閉弁18に接続される。コントローラ15は、座席用送風装置10の動作を制御する。
コントローラ15は、複数の開閉弁18を開き、送風機14へ起動信号を出力する。
コントローラ15は、送風機14へ、送風能力を制御する信号を出力してよい。
コントローラ15は、各開閉弁18へ、開度制御信号を出力してよい。
コントローラ15は、送風機14へ停止信号を出力し、複数の開閉弁18を閉じる。
コントローラ15は、制御プログラムを記憶するメモリと、制御プログラムを実行する中央処理装置とを有する。コントローラ15は、独立したコントローラ15でよいが、自動車1のエンジンを制御するECU(Engine Control Unit)52の一部として実現されても、空気調和装置53のコントローラに実現されてもよい。
なお、コントローラ15は、時刻や時間を計測するタイマ、携帯電話機などと通信する無線通信部などを備えてよい。
【0035】
コントローラ15は、座席用送風装置10の動作を制御するために、たとえばECU52、空気調和装置53から信号が入力される。
このような信号としては、たとえばイグニッションキーの状態の検出信号、エンジンの起動信号若しくは停止信号、リモートコントロール開閉キーの検出信号、ドアパネルのロック開錠信号若しくは施錠信号、乗車検知信号がある。
この他にも、たとえば、空気調和装置53の冷暖房の開始信号がある。空気調和装置53は、一般的に温まったエンジンの排熱で暖房し、冷却されたエバポレータの冷気で冷房する。このため、エンジン始動時に空気調和装置53の動作が開始されたとしても、冷暖房された空気が乗車空間3へ供給され始めるまでに、時間を要する。
【0036】
次に、座席用送風装置10の動作を説明する。
ユーザが座席4に着座する際、コントローラ15は、送風制御を開始する。
コントローラ15は、たとえばECU52からの乗車検知信号、エンジンの起動信号により、ユーザが座席4に着座したと判断してよい。コントローラ15は、たとえば空気調和装置53の冷暖房動作開始信号により、ユーザが座席4に着座したと判断してもよい。
ユーザが座席4に着座して動作開始と判断すると、コントローラ15は、開閉弁18を開き、送風機14へ起動信号を出力する。送風機14は、送風動作を開始する。送風機14により送風された空気は、ダクト13、座席4の貫通孔12を通じて、座席4の着座面へ供給される。
図2の点線に示すように、ユーザが座席4に着座している場合、座席4の着座面の送風口16は、ユーザの臀部または腰部より略塞がれる。
この状態では、座席4の着座面へ供給された空気は、送風口16から噴き出ることができないので、座席4の着座面に形成された複数の溝部11へ流入する。
空気は、複数の溝部11を通って、複数の溝部11の先端部分から乗車空間3へ放出される。
一部の空気は、溝部11とユーザの体(たとえば腿)との隙間から、乗車空間3へ放出される。
【0037】
コントローラ15は、たとえばユーザが座席4から立つことにより送風が不要になったと判断すると、送風制御を終了する。
コントローラ15は、たとえばECU52からの降車検知信号、エンジンの停止信号により、ユーザが座席4から立ったと判断してよい。コントローラ15は、たとえば空気調和装置53の冷暖房動作終了信号により、ユーザが座席4から立ったと判断してもよい。
コントローラ15は、送風機14へ停止信号を出力し、開閉弁18を閉じる。送風機14は、動作を停止する。座席4への空気の送風が終了する。
【0038】
図6は、ユーザが着座した状態での、腿下の複数の溝部11の断面図である。
図6では、説明のために、座部5のカバー部22を図示していない。
図6に示すように、ユーザが着座することにより、並行な複数の溝部11は、腿により、その全体または一部が塞がれる。
この際、浅い第2凹部32は、腿の裏面で略つぶれる。
これに対して、深い第1凹部31は、その内側(中央側)に隣接して当該浅い第2凹部32が形成され、且つ腿が第2凹部32の底面に接するので、第2凹部32がつぶれた状態でも、略その形状を維持できる。
腿が第2凹部32の底面に押し付けられることにより、第2凹部32が座部5の中央側へ引き寄せられる。第1凹部31は広がる。
これにより、第1凹部31の下部に、空気の流路を確保できる。
着座面の送風口16から溝部11へ流入した空気は、第1凹部31を流れ、溝部11の先端部分から放出される。
ユーザが着座した状態でも、各溝部11に空気を流すことができる。溝部11に対応する箇所から、熱気および湿気を取り除くことができる。
【0039】
特に、
図6の左側の溝部11では、溝部11の外端が腿から離れているので、空気が漏れる。これにより、溝部11の外の腿外部分に空気を当てて、熱気および湿気を取り除くことができる。
また、
図6の左側の溝部11では、第2凹部32の底面の全体に、腿が密着していない。第2凹部32の底面と腿との間に、若干の隙間が確保されている。当該第2凹部32に対応する腿裏部分にも空気を当てて、熱気および湿気を取り除くことができる。
【0040】
図7は、ユーザが着座した状態での、座部5の断面図である。
図7では、説明のために、カバー部等を図示していない。
【0041】
図7に示すように、ユーザが着座することにより、着座面の送風口16は、ユーザの臀部により塞がれる。また、ユーザの裏腿に、第1凹部31による流路を確保できる。
これにより、着座面の送風口16から溝部11へ流入した空気は、第1凹部31内を流れ、溝部11の先端部分から放出される。
【0042】
ユーザの腿は、たとえばアクセルペダルどの操作の際に上下に移動する。
これにより、ユーザの腿により塞がれる範囲が変化する。溝部11に対して、腿の上下動による空気のポンピング効果が期待できる。
このポンピング効果により、ユーザの腿裏に流れる空気量を変動させ、熱および湿度を好適に取り除くことができる。
【0043】
図8は、
図4の連結用溝部33の断面図である。
図8(A)は、無荷重状態での、連結用溝部33の断面図である。
連結用溝部33とは、溝部11のうちの、着座面の送風口16と複数本の溝部11とを接続する部分をいう。
図4の連結用溝部33は、並列な3本の溝部11のうちの外側2本の溝部11に共通する部分になっている。
【0044】
また、
図8に示すように、弾性部21,24には、連結用溝部33において、複数の溝部11を分断するスリット34が形成される。
スリット34は、
図4に示すように、弾性部21,24の前後長さ方向の全長に渡って形成される。
このスリット34により、弾性部21,24の表面は、スリット34に挟まれた中央部と、その左右両側の両端部とに分断される。
このため、たとえば中央部がユーザの荷重により沈み込んだとしても、両端部がそれとともに沈み込まないようになる。
スリット34は、
図8に示すように、連結用溝部33に接続された複数本の溝部11の間に形成される。
【0045】
図8(B)は、荷重状態での、連結用溝部33の断面図である。
着座した細身のユーザの腿の荷重により、弾性部21,24の中央部は沈み込む。
これに対して、荷重されていない弾性部21,24の両端部は沈み込まない。
その結果、
図8(B)に示すように、スリット34において中央部の連結用溝部33と両端部の連結用溝部33とがずれる。
連結用溝部33の有効な開口断面が、スリット34において減る。
弾性部21,24の外側に形成された溝部11へ流入する空気の量が減る。
【0046】
これに対して、たとえば太いユーザが着座すると、当該ユーザの腿の荷重により、弾性部21,24の中央部とともに、両端部が沈み込む。
その結果、スリット34において、中央部の連結用溝部33と両端部の連結用溝部33とがずれない。
連結用溝部33の有効な開口断面が、スリット34において減らない。
弾性部21,24の外側に形成された溝部11へ流入する空気の量が減らない。
【0047】
以上のように、本実施形態では、座席4の着座面において、送風口16から分岐させた複数の溝部11を設ける。
送風口16から着座面へ供給された空気は、分岐した複数の溝部11により、送風口16の周囲へ広がる。
溝部11は、送風口16から座部5の前面または後面に至る長さに形成される。
ユーザが座席4に着座した状態において、座席4の着座面に空気の流路を確保できる。
送風口16がユーザにより塞がれたとしても、送風口16へ送り込まれた空気は、複数の溝部11の先端から放出される。
本実施形態では、ユーザが着座した状態において、送風口16から広がってユーザの広い範囲に当たって流れる空気により、当該ユーザおよび座席の広い範囲から、次第に発生してくる熱や湿気を効果的に除去できる。
【0048】
本実施形態では、複数の溝部11は、着座面に着座するユーザの腿に沿って、所定の間隔で並べて延在している。
また、平行な複数本の溝部11を共通の連結用溝部33で着座面の送風口16に接続し、その共通の連結用溝部33を中央部と外側部分とに分断するスリット34を設ける。
体格が異なるユーザが着座した場合、そのユーザの体格に合わせて空気を流す溝部11の本数、複数本の溝部11の間での流量の比率を変化させることができる。
ユーザの荷重がかかっていない溝部11への空気の流量を減らし又は無くして、空気を有効に且つ無駄なく使用できる。
【0049】
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態に係る連結用溝部33の断面図である。
第2実施形態では、スリット34により分断された連結用溝部33のうち、両端側の部分が、弾性部21,24の表面ではなく、弾性部21,24の内部に形成されている。
第2実施形態に係る座席用送風装置10の、これ以外の構成および動作は第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0050】
以上のように、本実施形態では、スリット34により分断された連結用溝部33のうち、両端側の部分が、弾性部21,24の表面ではなく、弾性部21,24の内部に形成されている。
この場合、着座したユーザにより、スリット34の間に位置する弾性部21,24の中央部のみが沈み込むと、連結用溝部33の中央部と両端部とが連通する。
細見のユーザの腿の外側に対して、外側の溝部11から空気を供給できる。
また、着座したユーザにより、弾性部21,24の中央部および両端部が沈み込むと、連結用溝部33の両端部に中央部が連通されないので、腿のより中心の部分から高い圧力で空気を供給できる。
【0051】
[第3実施形態]
図10は、本発明の第3実施形態に係る溝部11の断面図である。
図10(A)に示すように、溝部11の流路の途中には、開閉弁35が形成される。
開閉弁35は、弾性部21,24の一部として、ウレタン材料により形成される。
開閉弁35は、
図10(B)に示すように、無荷重時に、その中央部に閉じたスリット形状の開口部36を有する。
ユーザの着座により開閉弁35に荷重が作用すると、
図10(C)に示すように、スリット形状の開口部36が押し広げられて開く。
第3実施形態に係る座席用送風装置10の、これ以外の構成および動作は第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0052】
以上のように、本実施形態では、溝部11に、絞り構造またはバルブ構造の開閉弁35が設けられる。
そして、開閉弁35は、荷重が作用することにより、開く。
開閉弁35が開くと、溝部11の先端側へ空気が流れる。
このような開閉弁35を、たとえば着座面に着座したユーザの腿と並行な複数の溝部11のうちの、内側(中央側)の溝部11に設けることにより、腿の内側へ吹き出す空気の流量を減らすことができる。
【0053】
[第4実施形態]
図11は、本発明の第4実施形態に係る溝部11の断面図である。
図11(A)に示すように、溝部11の流路の途中には、流路へ突出した突起部37が形成される。
突起部37は、弾性部21,24の一部として、ウレタン材料により形成される。
突起部37は、
図11(A)に示すように、無荷重時に、溝部11の底面から離間している。
ユーザの着座により突起部37に荷重が作用すると、
図11(B)に示すように、突起部37が溝部11の底面に押し付けられる。
第4実施形態に係る座席用送風装置10の、これ以外の構成および動作は第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0054】
以上のように、本実施形態では、溝部11に、突起部37が設けられる。
そして、突起部37は、荷重が作用することにより、溝部11の流路を閉じる。
突起部37が閉じると、溝部11の先端側へ空気が流れ難くなる。
このような突起部37を、たとえば着座面に着座したユーザの腿と並行な複数の溝部11のうちの、外側の溝部11に設けることにより、腿の外側へ吹き出す空気の流量を減らすことができる。
また、本実施形態の突起部37を外側の溝部11に設け、第3実施形態の開閉弁35を内側(中央側)の溝部11に設けることにより、ユーザの荷重のかかり方に応じて、平行な複数の溝部11での空気の流路を、内側と外側との間で切り替えることができる。
【0055】
[第5実施形態]
図12は、本発明の第5実施形態に係る溝部11の断面図である。
図12に示すように、溝部11の流路の途中には、開閉弁38が形成される。
開閉弁38は、弾性部21,24の一部として、ウレタン材料により形成される。
開閉弁38は、溝部11の内周に沿って形成された枠部39と、当該枠部39の下流側に配置された可撓性を有する封止板40とを有する。
溝部11を流れる空気の圧力が低い場合、
図12に示すように、溝部11の流路は、封止板40により閉塞される。
溝部11を流れる空気の圧力が高い場合、風圧に押されて封止板40が変形し、枠部39から離れる。封止板40と枠部39との間に隙間が形成される。
第5実施形態に係る座席用送風装置10の、これ以外の構成および動作は第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0056】
以上のように、本実施形態では、溝部11を閉塞するように設けた封止板40が、溝部11を流れる空気の圧力により変形し、溝部11の下流側へ空気が流れる。
溝部11を流れる空気の流量や圧力により、溝部11での空気の流れを可変できる。
なお、溝部11を流れる空気の流量や圧力は、たとえば
図2のダクト13の開閉弁18の開度を制御することにより調整可能である。
コントローラ15が複数の開閉弁18の開度を個別に設定することで、複数の溝部11での空気の流れを切り替えることができる。
【0057】
[第6実施形態]
図13は、本発明の第6実施形態に係る溝部11の断面図である。
図13に示すように、溝部11の流路の途中には、開閉弁41が形成される。
開閉弁41は、弾性部21,24の一部として、ウレタン材料により形成される。
開閉弁41は、溝部11の内周に沿って形成された枠部43と、当該枠部43の上流側に離して配置された可撓性を有する封止板42とを有する。
溝部11を流れる空気の圧力が低い場合、
図13に示すように、枠部43から封止板42が離れている。
溝部11を流れる空気の圧力が高い場合、風圧に押されて封止板42が変形し、枠部43に接する。封止板42と枠部43との間に、隙間が無くなる。
第6実施形態に係る座席用送風装置10の、これ以外の構成および動作は第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0058】
以上のように、本実施形態では、溝部11において枠部43から離間して設けた封止板42が、溝部11を流れる空気の圧力により変形し、溝部11の下流側への空気の流れを止める。
溝部11を流れる空気の流量や圧力により、溝部11での空気の流れを可変できる。
なお、溝部11を流れる空気の流量や圧力は、たとえば
図2のダクト13の開閉弁18の開度を制御することにより調整可能である。
コントローラ15が複数の開閉弁18の開度を個別に設定することで、複数の溝部11での空気の流れを切り替えることができる。
【0059】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0060】
たとえば上記実施形態は、スリット34で分断された連結用溝部33の周囲の弾性部21,24が荷重により変形したり、開閉弁35,38,41または突起部37自体が荷重または風圧により変形したりすることにより、溝部11での空気の流れを変化させている。
この他にも例えば、荷重または風圧を検出し、この検出に基づいて機構的に開閉動作する弁を可変部として使用してもよい。ただし、このような機構的に開閉動作する弁を着座面に設けた場合、弁が着座したユーザに当たり、ユーザに対して固いものが当たっている印象を与える。
ユーザに対してこのような違和感を与えないようにするためには、上記実施形態のように変形する可変部とするとよい。
【0061】
上記実施形態では、座席用送風装置10は、自動車1に搭載されている。
この他にもたとえば、座席用送風装置10は、バス、電車などのその他の車両に搭載されてよい。
座席用送風装置10は、車両から分離された単独の装置として形成されてよい。この場合、たとえば座席4に載せて使用するカバー部の着座面に、送風孔12および複数の溝部11を形成すればよい。
送風機14の駆動源に電動モータを使用することで、座席用送風装置10は、エンジン7の駆動力を動力源とすることなく送風動作できる。座席用送風装置10は、車両のバッテリ、太陽光発電パネル、家庭用電源の電力により動作できる。