特許第5947077号(P5947077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947077
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】光照射システム
(51)【国際特許分類】
   A61C 3/10 20060101AFI20160623BHJP
【FI】
   A61C3/10
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-72622(P2012-72622)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-202134(P2013-202134A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】509121488
【氏名又は名称】亀田 剛
(73)【特許権者】
【識別番号】501145136
【氏名又は名称】大熊 一夫
(73)【特許権者】
【識別番号】512078845
【氏名又は名称】株式会社プラコー
(73)【特許権者】
【識別番号】512078856
【氏名又は名称】長谷川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(74)【代理人】
【識別番号】100177699
【弁理士】
【氏名又は名称】野津 万梨子
(72)【発明者】
【氏名】亀田剛
(72)【発明者】
【氏名】大熊 一夫
(72)【発明者】
【氏名】荒澤 修
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕司
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−200627(JP,A)
【文献】 実開昭61−172591(JP,U)
【文献】 特開2005−168520(JP,A)
【文献】 特開2004−237081(JP,A)
【文献】 特開2001−198082(JP,A)
【文献】 特開平09−327327(JP,A)
【文献】 実開昭55−156715(JP,U)
【文献】 実開昭49−145876(JP,U)
【文献】 特開昭62−049847(JP,A)
【文献】 実開平03−024105(JP,U)
【文献】 特開平02−052630(JP,A)
【文献】 特開2010−194296(JP,A)
【文献】 特開平10−258021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 3/00 − 3/16
A61B 1/24
A61B 1/04
A61B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部光源(11)と,導光体(21)と,ピンセット型の器具(22)とを有し,
前記導光体(21)は,
前記外部光源(11)側に存在する光源側端部(23)と,
前記光源側端部(23)で受光した光が伝搬する導光体本体(24)と,
前記光源側端部(23)とは逆側の端部であって前記導光体本体(24)を伝搬した光が出力する部位である出力端部(25)とを有し,
前記器具(22)は,
前記ピンセット型の器具の中心部を長手方向に伸びる前記導光体(21)を挿入するための導光体挿入部(51)と,
前記外部光源(11)からの光を受けて発電する光電池(41)と,
前記光電池(41)により発光する内部光源(42)とを有し,
前記内部光源(42)から放射された光が前記導光体本体(24)を伝搬し前記出力端部(25)から出力され,前記外部光源(11)に由来する光とは異なる領域を照射し,
前記外部光源(11)は,前記器具(22)を介して前記出力端部(25)から出力した光を光硬化性樹脂(31)に照射することで,前記光硬化性樹脂(31)を硬化させる波長の光を発するものであり,
前記内部光源(42)から発せられる光は,前記外部光源(11)から発せられる光よりも強度が弱く,前記光硬化性樹脂(31)の周囲を明るくするために用いられる
光照射システム(1)。
【請求項2】
前記外部光源(11)は,歯科用又は医療用の術野照明用光源である,
請求項に記載の光照射システム(1)。
【請求項3】
前記導光体(21)は,前記導光体本体(24)中又は前記導光体本体(24)表面に設けられた導波路を有する,
請求項1又は2に記載の光照射システム(1)。
【請求項4】
請求項に記載の光照射システム(1)であって,
前記導光体(21)は,前記導光体本体(24)中又は前記導光体本体(24)表面に設けられた第1の導波路及び第2の導波路を有し,前記第1の導波路の出力端部(25)の太さは,前記第2の導波路の出力端部(25)の太さより大きい,
光照射システム(1)。
【請求項5】
前記光源側端部(23)及び前記出力端部(25)のいずれか又は両方は,光を集約する形状を有する,
請求項に記載の光照射システム(1)。
【請求項6】
前記光硬化性樹脂(31)は,歯科用又は医療用の光硬化性樹脂(31)である,
請求項に記載の光照射システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,術野照明の強力な光を効果的に利用し,器具を通じて術野や対象部位を明るくすることができる,電源を必要としない光照射システムに関する。本発明の好ましい利用態様は,そのような光照射システムにより,対象となる光硬化性樹脂を硬化させることのできるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012−11145号公報(特許文献1)には,励起光源からの励起光を有効照明光束に屈折する光学部材と,励起光が照射され,蛍光を励起発光する蛍光体,および照射された励起光を伝送する導波路を有する蛍光担体と,を有する医療機器が開示されている。
【0003】
この医療機器は,光を伝搬する導波路を有するものの,医療機器と一体化した励起光源を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−11145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで,本発明は,術野照明の強力な光を効果的に利用することで,器具本体に電池や電源コードを必要としない光照射システムを提供することを目的とする。
【0006】
また,本発明は,器具本来の機能を損なわずに,視野を明るくできるシステムを提供することを目的とする。
【0007】
更に,本発明は,環境光が届きにくい部位を明るくしつつ,適切な部位の光硬化性樹脂を選択的に硬化させることができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,術野照明といった強力な光源を有効利用して,器具を通じて術野や対象部位に光を伝えることで,器具が電池や電源コードを有していなくても,術野への証明に関しては特に口唇,歯又は器具により影となる部分を明るくすることができるという知見に基づくものである。そして,上記の課題の少なくとも一つは,以下の発明により解決される。
【0009】
本発明の第1の側面は,外部光源11と,導光体21を有する器具22とを有する光照射システム1に関する。そして,導光体21は,外部光源11側に存在する光源側端部23と,光源側端部23で受光した光が伝搬する導光体本体24と,光源側端部23とは逆側の端部であって導光体本体24を伝搬した光が出力する部位である出力端部25とを有する。そして,この器具22は,出力端部25から出力した光を対象物又は対象領域に照射させることができる。このシステムの具体的な用途の一つは,光硬化性樹脂31に出力端部25から出力した光を照射させることで,光硬化性樹脂31を硬化させるものである。
【0010】
本発明の第2の側面は,光硬化性樹脂を硬化させる方法に関する。この方法は,外部光源と,導光体を有する器具とを用いた光硬化性樹脂の硬化方法である。そして,外部光源からの光を,導光体を通じて,光硬化性樹脂へ照射することにより,器具を用いて光硬化性樹脂の形状を調整し,光硬化性樹脂の対象部分を視認しやすくしつつ光硬化性樹脂を硬化させるというものである。この方法によれば,例えば,対象部位の側面といった従来の照射器では照明できない方向から光を照射することができる。このため,この方法を用いれば,対象部位の側面や底面からも光硬化性樹脂の重合反応を始めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は,強力な医療用または歯科用の術野照明用光源からの光源を利用して対象領域に光を照射するため,器具本体に電池や電源コードを必要としない光照射システムを提供することができる。電池や電源を必要とする機器を使用すると,感電や破損により事故が起こる可能性が高くなる。また,電源コードがあると,施術や作業の際に邪魔になる場合がある。本発明は,器具本体に電池や電源コードを必要としないため,このような事故を防止することができる。
【0012】
また,本発明は,例えば,器具本体とは別に導光体を設けることもできるため,器具本来の機能を損なわずに,視野を明るくできるシステムを提供できる。
【0013】
更に,本発明は,例えば,導波路を2つ以上設けて,それぞれの光に対する作用を異ならせることで,1つの導波路により環境光が届きにくい部位を明るくしつつ,別の導波路により適切な部位の光硬化性樹脂を選択的に硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は,本発明のシステムを説明するための概念図である。
図2図2は,本発明の器具を説明するための概念図である。
図3図3は,本発明における器具の一例である導波路を有する器具を示す概念図である。
図4図4は,本発明における器具の一例である光を受けて発光する部位を有する器具を示す概念図である。
図5図5は,本発明の器具の一例を説明するための図である。
図6図6は,本発明の導光体の例を説明するための図である。
図7図7は,実施例1において計測に用いた樹脂を示す図面に替わる写真である。
図8図8は,実施例2における測定系の様子を示す概念図である。
図9図9は,実施例3における実体顕微鏡用ファイバーイルミネーションシステムの様子を示す概念図である。
図10図10は,実施例4における測定系の様子と測定結果を示す概念図である。
図11図11は,実施例5において測定に用いた器具を示す図である。
図12図12は,実施例5における測定系を示す図である。
図13図13は,実施例6における器具としてピンセットを用いた際の様子を示す図面に替わる写真である。
図14図14は,実施例6における器具としてピンセットを用いた際の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は,本発明のシステムを説明するための概念図である。図1に示されるように,本発明の第1の側面のシステムは,外部光源11と,導光体21を有する器具22とを有する光照射システム1である。図2は,本発明の器具を説明するための概念図である。図2に示される通り,導光体21は,外部光源11側に存在する光源側端部23と,光源側端部23で受光した光が伝搬する導光体本体24と,光源側端部23とは逆側の端部であって導光体本体24を伝搬した光が出力する部位である出力端部25とを有する。そして,この器具22は,出力端部25から出力した光を対象物又は対象領域に照射させることができる。このシステムの具体的な用途の一つは,光硬化性樹脂31に出力端部25から出力した光を照射させることで,光硬化性樹脂31を硬化させるものである。光源側端部23は,器具22の向きによっては,当然外部光源11側にない場合も存在する。一方,この器具22を用いて対象部位を照射する場合には,対象部位と逆側を向くため,出力端部25と区別するために,光源側端部23と命名したものであり,出力端部25とは異なる端部と同義である。また,このシステムは,歯科照明システム又は医療用照明システムとして利用できるのみならず,広く工業用の照明システムとしても利用することができる。
【0016】
外部光源11の例は,歯科用又は医療用の術野照明用光源である。例えば,歯科用の術野照明用光源は,3万ルクス〜3万5000ルクスの光強度がある。通常の読書に必要な明るさを提供する照明の光強度は,500ルクス〜1000ルクス程度である。このように強力な術野照明用光源を用いると,口腔内付近では,例えば2万8000ルクス〜3万2000ルクス程度の明るさを達成できる。一方,例えば,歯の裏側といった直接光が骨等によってさえぎられる箇所は,明るさが十分ではない。術野照明用光源の例は,キセノン光源,ハロゲン光源及びタングステン光源である。
【0017】
本発明は,上記のような強力な光強度を達成していながら,実際の作業部位には十分な光強度を供給できないことのある歯科用又は医療用の術野照明用光源を利用することが好ましい。また,光源は,LED(発光ダイオード)であってもよい。なお,本発明は,このような外部光源11からの光を受光し,効果的に術野等を明るくすることのできる器具自体をも提供するものである。
【0018】
導光体21は,受光した光を伝搬できるものであればよい。導光体21の例は,透明高分子からなるものである。導光体21は,例えば,透明なプラスチックを用いてもよい。導光体21は,外部光源11側に存在する光源側端部23と,光源側端部23で受光した光が伝搬する導光体本体24と,光源側端部23とは逆側の端部であって導光体本体24を伝搬した光が出力する部位である出力端部25とを有する。光源側端部23は,通常,対象物又は対象領域と反対側の端部分に設けられる。光源側端部23は,導光体本体24の端の部分であってもよいし,導光体本体24の端に設けられ導光体本体24より径が大きい部分であってもよい。出力端部25の形状は,導光体本体24と同様でもよいし,多角形状部分を含んでもよい。また,出力端部25は先端に進むほど狭くなる形状であってもよい。出力端部25は先端に進むほど狭くなるテーパー状であってもよい。
【0019】
図3は,本発明における器具の一例である導波路を有する器具を示す概念図である。図3に示される通り,導光体21は,導光体本体と異なる屈折率を有する導波路26を有するものであってもよい。導波路26は,例えば,導光体本体24の内部又は導光体本体24の表面に設けられる。この場合,導波路を伝搬する光が導光体21を伝搬する際に外部へ放出される割合を低く抑えることができる。導波路26は,1本でもよいし,2本以上の導波路26が設けられてもよい。2つ以上の導波路26が設けられる場合,第1の導波路26は光硬化性樹脂を硬化させるためのものであり,第2の導波路26は例えば視野を明るくするためのものであってもよい。この場合,例えば,第1の導波路26と第2の導波路26は別々の出力端部25を有し,しかも第2の導波路26の出力端部25の幅は,第1の導波路26の出力端部25の幅の1.2倍以上5倍以下(又は1.5倍以上4倍以下)となっているものが好ましい。一方,出力端部25以外の部分(例えば,両端部以外の部分)の太さは,第1の導波路26と第2の導波路26で同じであってもよい。すると,第1の導波路26により強く狭い領域に強い光を照射しつつ,第2の導波路26により弱く広い領域に光を照射することができる。なお,第2の導波路26は,導光体21の導波路以外の部分であってもよい。そのような例は,光ファイバである。この場合,第1の導波路と第2の導波路の屈折率が異なることとなる。
【0020】
導光体21の例は,LN基板上に,Ti拡散のニオブ酸リチウム導波路を形成しても良いし,シリコン(Si)基板上に二酸化シリコン(SiO)導波路26を形成しても良い。また,導光体21として,InPやGaAs基板上にInGaAsP導波路又はGaAlAs導波路を形成した光半導体導波路を形成してもよい。
【0021】
器具22の例は,施術者が手で把持して作業を行う器具である。そのような器具の例は,ピンセット,メス,探針,薬物塗布棒,エスカベータ,及び鏡である。器具22自体が導光体であってもよい。つまり,導光体となりうる透明の材質で器具22を製造してもよい。
【0022】
図4は,本発明における器具の一例である光を受けて発光する部位を有する器具を示す概念図である。図4に示されるように,この器具22は,光電池41と,光電池41により発光する内部光源42とを更に有するものである。光電池41は,光を受けて発電する電池である。すなわち,外部光源42からの光を受けて光電池41が発電する。内部光源42は,器具に取り付けられた光源である。この内部光源42の強度は,外部光源11の強度に比べて著しく弱いものであってもよい。内部光源42からの光は導光体を通じて,出力端部25から出力されてもよい。また,内部光源42が,器具の先端部に設けられており,内部光源42からの光が直接術野などを照射するものでもよい。
【0023】
内部光源から放射された光も導光体本体を伝搬し出力端部から光硬化性樹脂へ照射される。この場合,例えば,外部光源からの光を,光硬化性樹脂を硬化させるために用い,内部光源からの光を硬化させる周辺部位を明るくするために用いてもよい。つまり,内部光源から放射された光も導光体本体を伝搬し出力端部から出力され,外部光源に由来する光とは異なる領域を照射する。
【0024】
上記の通り,本発明のシステムを用いることで,例えば強力な光を照射する術野照明用光源からの光を有効に活用し,対象領域を照らすことができる。そして,本発明のシステムを用いれば,別途光源を用いて対象領域を明るくする必要なく,通常用いる器具を通常通り用いても,対象領域を明るくすることができる。なお,本発明のシステムを用いて,硬化性樹脂を硬化させることは,本発明の好ましい用途であるため,以下光硬化性樹脂について説明する。
【0025】
光硬化性樹脂の例は,歯科用又は医療用の光硬化性樹脂である。また,本発明は,光硬化性樹脂を一般的な工業における用途で硬化させることができる。光硬化性樹脂は既に知られているため公知の物を用いることができる。光硬化性樹脂の用途例は,歯科用充填物又は骨模型における骨の一部を製造する際に用いるものである。光硬化性樹脂の例は,光重合性オリゴマー(モノマーを含む),反応性希釈剤および光重合開始剤を含むものである。光硬化性樹脂組成物は,硬化の反応機構により大別して二つに分類することができる。一つはラジカル重合反応により硬化するタイプであり,もう一つはカチオン重合反応により硬化するタイプである。前者はアクリロイル基やビニル基が官能基であり,後者はエポキシ基やビニルエーテル基が官能基となる。
【0026】
モノマーは,重合してプラスチックを形成する有機材料である。オリゴマーは,モノマーを予めいくつか反応させてあるもので,モノマーと同様重合してプラスチックを形成する。モノマーやオリゴマーは,簡単に重合を開始しない。そこで,光重合開始剤が添加されて光硬化性樹脂組成物となる。モノマーとしては,アクリレート,メチルメタクリレート(MMA),ジメタクリレート,ジメタクリレートのウレタン系置換物,ジメタクリレートの脂肪族系置換物,ジメタクリレートの芳香族系置換物,およびこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0027】
図5は,本発明の器具の一例を説明するための図である。この器具22は,導光体21が取り外しできるようにされている。そして,この器具22は,導光体21を挿入するための導光体挿入部51を有している。この導光体挿入部51の形状は,導光体21を収容するための穴部であってもよい。この場合,導光体21の導光体本体24は,円柱状の形状を有するものが好ましい。この場合は,別の器具がこの器具22と同じ形状の導光体挿入部51を有している。このため,導光体21を複数の器具で使いまわすことができる。
【0028】
図6は,本発明の導光体の例を説明するための図である。図中符号52は,光を示す。図6に示されるように,本発明の導光体21の光源側端部23は,光源からの光52を集約できる形状となっていることが好ましい。例えば,光源側端部23は,球面レンズ又は非球面レンズ状の外形を有していてもよい。また,光源側端部23は,凸レンズ状の外形を有していてもよい。導光体21が円筒状の場合,光源からの光がほぼ直進する。一方,図6の導光体を用いた場合は,光源側端部23が光源からの光52を集約できる形状となっているため,光を集約することができ,明るくしたい個所を効果的に明るくすることができる。光源側端部23で受光した光が伝搬する導光体本体24の好ましい例は,図6に示されるように,出力端部25に近づくほど細くなるものである。このように,光源側端部23から出力端部25に近づくほど細くなる導光体を用いることで,光源側端部23に入射した光を効果的に出力端部25へ導くことができる。さらに,図6に示されるように,導光体21の出力端部25は,導光体本体24を伝搬した光を集約できる形状となっていることが好ましい。例えば,出力端部25は,球面レンズ又は非球面レンズ状の外形を有していてもよい。また,出力端部25は,凸レンズ状の外形を有していてもよい。このように,出力端部25が,導光体本体24を伝搬した光を集約できる形状となっているため,光を集約することができ,明るくしたい個所を効果的に明るくすることができる。
【0029】
本発明の第2の側面は,光硬化性樹脂を硬化させる方法に関する。この方法は,外部光源と,導光体を有する器具とを用いた光硬化性樹脂の硬化方法である。そして,外部光源からの光を,導光体を通じて,光硬化性樹脂へ照射することにより,器具を用いて光硬化性樹脂の形状を調整し,光硬化性樹脂の対象部分を視認しやすくしつつ光硬化性樹脂を硬化させるというものである。
【0030】
本発明を歯科用充填物の製造方法として用いる場合は,以下の様にして製造すれば良い。まず,光硬化性樹脂を含むペーストを取り出して窩洞(又は歯形の窩洞)に填入する。その際,例えばピンセットにはその中心部を長手方向に伸びる導光体が設けられている。又はピンセット本体が導光体であってもよい。術野照明用光源から放出された光は,導波体を伝搬して,光硬化性樹脂に照射される。この際,器具は,例えば,光硬化性樹脂の形状を整えるため,又は歯を抑えるために使用される。導光体からの光を,光硬化性樹脂に照射する。このようにして,例えば歯科用充填物を得ることができる。
【0031】
以下,実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0032】
樹脂製器具によるデンタルユニットの照明の活用
各種透明樹脂(約20cm)の尾部からデンタルユニットの照明を用いて,口腔付近の明るさである30000ルクスの光を実体顕微鏡用ファイバーイルミネーションシステム(NIKON)で照らした時の先端での光量を計測した。なお,計測は暗室にて行った。入射光は,通常光(30.0klx)と光硬化型レジン用光源(400klx以上)を用いた。
【0033】
実施例1において計測に用いた樹脂を図7に示す。また,測定結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【実施例2】
【0035】
光ファイバーによるデンタルユニットの照明の活用
歯科用ピンセットにアクリル製光ファイバー(三菱化学,エスカΦ1.5mm)を装着し,尾部からデンタルユニットの照明の口腔付近の明るさである28000〜32000ルクスの光を実体顕微鏡用ファイバーイルミネーションシステム(NIKON)で照らしたときの,ピンセット先端での光ファイバーからの光量を計測した。なお,計測は暗室にて行った。
【0036】
実施例2における測定系の様子を図8に示す。また,測定結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【実施例3】
【0038】
電源として,カード型計算機(GS−402S,ダイソー)を分解し,その太陽電池を直列で2つ接続して使用した。太陽電池に接続したLEDはLED−1として3mm丸型白色LED(UW3804X)およびLED−2として5mm丸型白色LED(NSPW500GS−K1,日亜化学工業)をそれぞれ別に接続した。光源としてファイバーイルミネーター(C−FI115,Nikon)を使用し,照度計(LX2,Sanwa)で各光の強さを測定・設定し,その光による発電量とその電力によって点灯したLEDの明るさ(lux)を計測した
【0039】
実施例3における実体顕微鏡用ファイバーイルミネーションシステムの様子を図9に示す。また,測定結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
【実施例4】
【0041】
樹脂製器具によるデンタルユニットの照明の活用―材質の検討―
ピンセットと同型のポリカーボネイトおよびPMMA板の尾部からデンタルユニットの照明を口腔付近の明るさである30000ルクスの光を実体顕微鏡用ファイバーイルミネーションシステム(NIKON)で照らしたときの,先端での光量を計測した。なお,計測は暗室にて行った。
【0042】
実施例4における測定系の様子と測定結果を表4及び図10に示す。
【0043】
【表4】
【実施例5】
【0044】
樹脂製器具によるデンタルユニットの照明の活用―形態の検討―
ピンセットと同型のポリカーボネイトの尾部からデンタルユニットの照明を口腔付近の明るさである30000ルクスの光を実体顕微鏡用ファイバーイルミネーションシステム(NIKON)で照らしたときの,先端での光量を計測した。なお,計測は暗室にて行った。
【0045】
実施例5において測定に用いた器具を図11に示す。また,実施例5における測定系を図12に示す。
【実施例6】
【0046】
光ファイバーによる光重合レジン用照射機の光の活用
ピンセットと同型のポリカーボネイトおよびPMMA板の尾部から光重合レジン用照射機(LIGHTEL−II,モリタ)の光を照らしたときの,ピンセット先端での光ファイバーからの光量を計測に光重合レジン(3M,Z100,Rrestorative A3)が硬化するかどうかを調べた。なお,実験は暗室にて行った。
【0047】
実施例6における測定系の様子を図12に示す。また,測定結果を表4に示す。
【0048】
実施例6における器具としてピンセットを用いた際の様子を図13に示す。また,測定結果を表5に示す。実施例6における器具としてピンセットを用いた際の様子を図14に示す。また,測定結果を表6に示す。
【0049】
【表5】

【表6】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は,照明器具や医療機器の分野において利用され得る。すなわち,上記では歯科における光照明システムを中心に説明した。しかしながら,本発明は,医療用照明のみならず,工業用照明の分野においても利用され得る。
【符号の説明】
【0051】
1 光照射システム;
11 外部光源;
21 導光体; 22 器具; 23 光源側端部; 24 導光体本体; 25 出力端部;
31 光硬化性樹脂;
41 光電池; 42 内部光源;
51 導光体挿入部; 52 光
図1
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