(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947089
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】連続的な重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/00 20060101AFI20160623BHJP
C08F 10/10 20060101ALI20160623BHJP
C08F 255/08 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
C08F2/00 A
C08F10/10
C08F255/08
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-90304(P2012-90304)
(22)【出願日】2012年4月11日
(65)【公開番号】特開2013-216826(P2013-216826A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 祥道
【審査官】
繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−055407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合開始剤、第一のカチオン重合性単量体、第一の電子供与剤、および重合溶媒を含む溶液(A)と、ルイス酸触媒、第二の電子供与剤、および重合溶媒を含む溶液(B)とを、連続的に第一の混合部に供給し、引き続き混合部に接続した第一の反応部に供給することによりカチオン重合性単量体の重合を行うことを特徴とする重合体の製造方法。
【請求項2】
第一の電子供与剤および/または第二の電子供与剤がピリジン類、アミン類からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の重合体の製造方法。
【請求項3】
溶液(B)中の溶媒1kg当り、第二の電子供与剤を0.5mmol〜30mmol使用することを特徴とする請求項1または2に記載の重合体の製造方法。
【請求項4】
第一の電子供与剤が重合開始剤に対してモル比で0.2〜10倍量存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
【請求項5】
第一の反応部において、ルイス酸触媒が重合開始剤に対してモル比で10〜300倍量存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
【請求項6】
重合開始剤が、(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン、および1,3,5−トリス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
【請求項7】
第一のカチオン重合性単量体がイソブチレンを主成分とするカチオン重合性単量体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
【請求項8】
第一のカチオン重合性単量体がイソブチレンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のイソブチレン系重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6に記載の第一の反応部を通過した反応液と、第二のカチオン重合性単量体、および重合溶媒を含む溶液(C)とを、連続的に第二の混合部に供給し、引続き第二の混合部に接続した第二の反応部に供給することにより重合を行なうことを特徴とするブロック共重合体の製造方法。
【請求項10】
第一のカチオン重合性単量体と第二のカチオン重合性単量体のどちらか一方がイソブチレンを主成分とするカチオン重合性単量体であり、もう一方が芳香族ビニル化合物を主成分とするカチオン重合性単量体であることを特徴とする請求項9に記載のイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法。
【請求項11】
イソブチレンを主成分とするカチオン重合性単量体がイソブチレンであることを特徴とする請求項10に記載のイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法。
【請求項12】
芳香族ビニル化合物が、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレンからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項10または11に記載のイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リビングカチオン重合による重合体、およびブロック共重合体の連続的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リビング重合とは、狭義においては重合成長末端が常に活性を保ち続けて分子鎖が成長していく重合のことを言うが、一般には重合成長末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら分子鎖が成長していく擬リビング重合も含まれる。このようなリビング重合では、重合反応が同時に開始すれば分散度の小さい重合体が得られ、また、特定の官能基を重合体の活性末端に導入することや、2種以上のモノマーを用いることにより共重合体を合成することができる。
【0003】
工業的に実施されるリビング重合として、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のイソブチレンのリビングカチオン重合が挙げられる。リビングカチオン重合により得られるイソブチレン系重合体は、末端に官能基を導入するなどの構造制御が可能となるため産業的に有用である。また、イソブチレンと高Tg(ガラス転移点)の重合性単量体成分とを共重合したイソブチレン系ブロック共重合体は熱可塑性エラストマーとなり、これも産業的に有用である。
【0004】
特許文献1や特許文献2に記載されているように、リビングカチオン重合反応の操作形式は、撹拌槽型重合器を用い、反応原料を重合器に仕込んで回分式で行なわれる報告例が大多数を占める。しかしながら工業的な大量生産を踏まえると回分式には後述するような問題が多く存在する。
【0005】
回分式の重合方法では、生産性を向上させるためには重合器の大型化が必要となる。大型化すると、内部蛇管冷却方式、外部熱交換器循環方式、リフラックスコンデンサー方式などにより除熱面積を増大させる工夫が必要となり、この場合には、除熱設備の大型化、複雑化により設備コストが高騰してしまう。設備コストを抑えようとすると内温制御が困難になり、副反応が増加してリビング重合の特徴である分散度の小さい重合体が得られにくくなるといった問題が生じる。除熱設備の問題を回避するためにモノマーの逐次追加など半回分方式による重合方法も用いられることがあるが、初期モノマー濃度が回分式と比べると希薄なため副反応が生じやすい、生産性が悪いといった問題がある。
【0006】
一方、生産性の向上を目指して、原料を連続的に重合器に供給する連続式の重合方法についても検討がなされている。例えば、特許文献3は重合開始剤およびルイス酸触媒およびイソブチレンを1基の撹拌槽型重合器に連続的に供給することによりリビングカチオン重合を行なう方法を試みている。また、特許文献4ではシェルアンドチューブ型熱交換器を用いてイソブチレンの連続式のリビングカチオン重合を行なった後に、引き続き管型反応器内で重合体末端にビニル基を導入する方法を提案している。特許文献5、6、7ではイソブチレンのリビングカチオン重合を行うにあたり、連続的に流通式撹拌槽型重合器に原料を供給して重合を開始させ、引き続き、流通管型重合器に連続的に供給してリビングカチオン重合を進行させている。特許文献8では、原料を2流路から供給してスタティックミキサー(多数のミキシングエレメントからなる静止型混合器を1個以上組み込んだ管型混合器)と管型重合器とを直列に流通させてイソブチレンのリビングカチオン重合をおこなっている。また、特許文献9や特許文献10では原料を連続的に合流させて反応を開始させ引き続き細い流路に反応液を流通させることにより種々のリビングカチオン重合を行えるとしている。
【0007】
しかしながら、連続式の重合を行なう際にもいくつかの問題が残されている。特許文献3では1基の撹拌槽型重合器で連続式の重合を行なった結果、得られた重合体の分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.4〜1.8となり、回分式の重合における分散度よりも大きくなっている。このような傾向は、1基の撹拌槽で連続式の重合を行なうと、反応液の滞留時間が広い分布を持つ(すなわち槽内での滞留時間が重合体の分子ごとに異なる)ので、リビング重合によって成長する分子の長さも揃わなくなることが影響していると考えられる。また、連続式の重合においては副反応が問題になる場合もあり、滞留時間分布を狭くするのみでは分散度が充分に小さくならない。特許文献4では、管型重合器を用いているので反応液の滞留時間の分布がきわめて狭いと考えられるにも関わらず、得られた重合体の分散度が3.1と大きい。特許文献5、6、7では、撹拌槽型重合器を1基通過後に管型重合器を通すことで分散度が1.2〜1.3と分散度の点では改善されているが、撹拌槽を用いているため、生産性を向上するためスケールアップすれば槽内混合条件の複雑化、副反応制御、除熱効率の観点で課題が残る。特許文献8では、スタティックミキサーで混合後に管型重合器を用いているので、大規模な生産をするにはスタティックミキサーが大量に必要となるといった問題が残る。また、特許文献9や10では、管型重合器を用いているが、分子量が数千程度の重合体しか得られておらず、分子量5000以上の重合体を製造する場合には粘度の上昇に伴う閉塞等の課題があると推測される。また、分子量が5000〜300000程度の重合体が工業的には有用であると考えられるので、大きな分子量の重合体が得られないのは問題である。
【0008】
以上のように、リビングカチオン重合を連続的に行う際に、攪拌槽型重合槽を用いる場合は滞留時間分布の広がりやスケールアップに懸念があり、管型重合器を用いる場合には、重合器への原料の供給直後の混合不充分さや高分子量の重合体を得られていないことに懸念があった。
【0009】
様々な重合反応のなかでもイソブチレン系重合体のリビングカチオン重合は、触媒や添加剤に特有の工夫を施すことによって系中に含まれるプロトン源開始の副反応を抑制し、かつ重合開始点となる開始剤からの開始反応を制御したり、低温にすることによって重合活性の低下を抑えたり、重合反応熱の除熱によって連鎖移動反応に代表される副反応の併発を抑えるため、連続式の重合を適用するのが比較的困難であったと推察される。
【0010】
特に、副反応により、得られる重合体の分散度が大きくなり、重合体の粘度が増大することは、重合体の用途によっては大きな問題となり、その用途開発に支障が生じることになる。さらに副反応が起こると、重合体の成長末端が制御されなくなり、イソブチレン系重合体が設計通りにならないという問題があり、これらはリビングカチオン重合でイソブチレン系重合体を製造する場合において、重要な問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−292038号公報
【特許文献2】特開平8−53514号公報
【特許文献3】米国特許第4568732号公報
【特許文献4】特開平6−298843号公報
【特許文献5】特開2001−55407号公報
【特許文献6】特開2001−55408号公報
【特許文献7】特開2001−55415号公報
【特許文献8】特開2010−241908号公報
【特許文献9】特開2008−001771号公報
【特許文献10】WO2009/133187
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記現状に鑑み、分散度が小さいリビング重合体を連続的に得ることができる製造方法を提供することを目的とするものである。また、本発明の目的は、重合器の内温を効果的に制御できるコンパクトな設備により実施可能な、リビング重合体の連続式の製造方法を提供することでもある。更に本発明の目的は、末端への官能基の導入や、ブロック共重合体の合成が本来の設計通りであるリビング重合体を得ることができる連続式の製造方法を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記事情に鑑み、発明者らが鋭意検討した結果、重合開始剤、第一のカチオン重合性単量体、および重合溶媒を含む溶液(A)と、ルイス酸触媒、および重合溶媒を含む溶液(B)とを用いる連続重合方法において、溶液(A)、溶液(B)の両方に電子供与剤を添加することにより、上記課題を解決するに到った。
【0014】
すなわち、本発明は、重合開始剤、第一のカチオン重合性単量体、第一の電子供与剤、および重合溶媒を含む溶液(A)と、ルイス酸触媒、第二の電子供与剤、および重合溶媒を含む溶液(B)とを、連続的に第一の混合部に供給し、引き続き混合部に接続した第一の反応部に供給することによりカチオン重合性単量体の重合を行うことを特徴とする重合体の製造方法に関する。
【0015】
好ましくは、第一の電子供与剤および/または第二の電子供与剤がピリジン類、アミン類からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする重合体の製造方法に関する。
【0016】
好ましくは、溶液(B)中の溶媒1kg当り、第二の電子供与剤を0.5mmol〜30mmol使用することを特徴とする重合体の製造方法に関する。
【0017】
好ましくは、第一の電子供与剤が重合開始剤に対してモル比で0.2〜10倍量存在することを特徴とする重合体の製造方法に関する。
【0018】
好ましくは、第一の反応部において、ルイス酸触媒が重合開始剤に対してモル比で10〜300倍量存在することを特徴とする重合体の製造方法に関する。
【0019】
好ましくは、重合開始剤が、(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン、および1,3,5−トリス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする重合体の製造方法に関する。
【0020】
好ましくは、第一のカチオン重合性単量体がイソブチレンを主成分とするカチオン重合性単量体であることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
【0021】
好ましくは、第一のカチオン重合性単量体がイソブチレンであることを特徴とするイソブチレン系重合体の製造方法に関する。
【0022】
前記に記載の第一の反応部を通過した反応液と、第二のカチオン重合性単量体、および重合溶媒を含む溶液(C)とを、連続的に第二の混合部に供給し、引き続き混合部に接続した第二の反応部に供給して第二の重合性単量体を重合させることを特徴とするブロック共重合体の製造方法に関する。
【0023】
好ましくは、第一のカチオン重合性単量体と第二のカチオン重合性単量体のどちらか一方がイソブチレンを主成分とするカチオン重合性単量体であり、もう一方が芳香族ビニル化合物を主成分とするカチオン重合性単量体であることを特徴とするイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法に関する。
【0024】
好ましくは、イソブチレンを主成分とするカチオン重合性単量体がイソブチレンであることを特徴とするイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法に関する。
【0025】
好ましくは、芳香族ビニル化合物が、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレンからなる群から選ばれるすくなくとも一種であることを特徴とするイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の溶液(A)、溶液(B)の両方に電子供与剤を添加する連続製造方法によって、開始点となる化合物の生成を抑制することができ、添加した重合開始剤から高収率で重合体が得られるため、重合体の分散度が小さくなり、また機械特性に優れた重合体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に使用される重合体の連続製造装置の一例(概略図)
【
図2】本発明に使用されるブロック共重合体の連続製造装置の一例(概略図)
【発明を実施するための形態】
【0028】
<適用できる反応系>
本発明の製造方法に適用できる重合方法はカチオン重合であればいずれでも構わないが、特にリビングカチオン重合に有効である。リビングカチオン重合としては、例えばJ.P.Kennedyらの著書(CarbocationicPolymerization, John Wiley & Sons, 1982)やK.Matyjaszewskiらの著書(Cationic Polymerizations, Marcel Dekker, 1996)に記載されている合成などが適用され得る。
【0029】
<重合方法>
本発明は、重合開始剤、第一のカチオン重合性単量体、第一の電子供与剤および重合溶媒を含む溶液(A)と、ルイス酸触媒、第二の電子供与剤、および重合溶媒を含む溶液(B)とを、連続的に第一の混合部に供給し、引き続き混合部に接続した第一の反応部に供給することによりカチオン重合性単量体の重合を行う重合体の製造方法であり、溶液(A)、および溶液(B)の両方に電子供与剤を添加することに特徴がある。
【0030】
ルイス酸触媒と溶媒中の微量水分とが反応して生成するハロゲン化水素化合物は、プロトン開始反応の開始剤として知られており、重合開始剤として作用する。したがって、あらかじめ添加している重合開始剤以外からの開始点となるハロゲン化水素化合物を除去しなければ、所望の分子量や分子量分布を持つ重合体を得ることは困難となる。本発明においては、溶液(B)中で生成したハロゲン化水素化合物を電子供与剤との反応により重合前にあらかじめ除去する。また溶液(B)中への第二の電子供与剤の量は、生成するハロゲン化水素化合物を除去できる量とする必要があり、必要以上の量を添加するとルイス酸触媒との相互作用により活性が低下し、分子量分布が広がる傾向にある。そのため、(A)と(B)混合後の重合に必要な電子供与剤は、溶液(A)に添加しておく。
【0031】
さらに、上記第一の反応部を通過した反応液と第二のカチオン重合性単量体、および重合溶媒を含む溶液(C)とを連続的に第二の混合部に供給し、引続き第二の混合部に接続した第二の反応部に供給して重合を行なうことにより、ブロック共重合体も得られる。
【0032】
(重合開始剤)
リビングカチオン重合の開始反応を効率的に行う方法として、3級炭素に結合した塩素原子を有する化合物やα位に芳香環を有する塩素化合物などの化合物を重合開始剤として用いるイニファー法が開発されており(米国特許4276394号)、この方法を本発明に適用することができる。イニファー法に用いる重合開始剤としてはその機能を発揮するものであれば良く、代表例としては下記の構造を有するものを示すことができる。
(X−CR
1R
2)
nR
3
(式中、Xはハロゲン原子を表す。R
1およびR
2は、同一または異なって、炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表す。R
3は、炭素数1〜20のn価の炭化水素基を表す。nは1〜4の整数である。)
上記重合開始剤としては、(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン(以下p−DCC)、および1,3,5−トリス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン(以下TCC)が好ましい。これらを単独あるいは混合物として使用することができる。このように芳香環を含んだ開始剤がより好ましい。p−DCCのように二官能開始剤は二官能重合体を必要とするときに選定する事が出来る。その他に一官能、TCCなどの三官能、多官能の開始剤を必要に応じて用いる事が出来る。重合開始剤とモノマーとの仕込み比に応じて、重合体の分子量を自由に設定することができる。
【0033】
(カチオン重合性単量体)
本発明で用いるカチオン重合性単量体成分は、重合開始剤とルイス酸触媒を用いることにより重合体が得られるものであればいずれでも構わない。
【0034】
カチオン重合に用いられる重合性単量体としては、炭素数3〜12のオレフィン類、共役ジエン類、ビニルエーテル類、芳香族ビニル化合物類などが挙げられる。これらの中で、炭素数3〜12のオレフィン類および共役ジエン類が好ましい。具体例としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−2−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、5−エチリデンノルボルネン、ビニルシクロヘキサン等の炭素数3〜12のオレフィン類;ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等の共役ジエン類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、β−ピネン、インデン等の芳香族ビニル化合物類;が挙げられる。これらの中で、イソブチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、インデン、イソプレン、シクロペンタジエンなどが好適である。
【0035】
本発明の第一の重合性単量体成分としては、上記単量体のなかでも、イソブチレンを主成分とするカチオン重合性単量体である事が好ましく、イソブチレンである事がより好ましい。イソブチレンを主成分とするカチオン重合性単量体とは、イソブチレンを30%以上含んでいる重合性単量体成分であり、好ましくは50%以上含んでいる重合性単量体成分である。イソブチレン以外のカチオン重合性単量体は、上記のイソブチレン以外の単量体の中から一種または数種選択してもよい。
【0036】
また、ブロック共重合体を得る場合、第一の重合性単量体成分または第二の重合性単量体成分の少なくとも一方がイソブチレンを主成分とするカチオン重合性単量体であることが好ましく、第二の重合性単量体成分は、第一の重合性単量体成分とは異なる化合物および/または組成を有するものである。
【0037】
さらに、第一の重合性単量体、第二の重合性単量体の一方がイソブチレンを主成分とするカチオン重合性単量体成分であり、もう一方が芳香族ビニル化合物を主成分とするカチオン重合性単量体成分であることがより好ましい。イソブチレンを主成分とするカチオン重合性単量体としてはイソブチレンである事が好ましい。また、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレンからなる群から選ばれる少なくてとも一種であることが好ましい。
【0038】
芳香族ビニル系単量体を主成分とするカチオン重合性単量体とは、芳香族ビニル化合物を30%以上含んでいる重合性単量体成分であり、好ましくは50%以上含んでいる重合性単量体成分である。芳香族ビニル化合物以外のカチオン重合性単量体は、上記の芳香族ビニル化合物以外の単量体の中から一種または数種選択してもよい。
【0039】
(ルイス酸触媒)
リビングカチオン重合に用いる触媒はルイス酸触媒であり、その具体例としては、TiCl
4、AlCl
4、BCl
3、ZnCl
2、SnCl
4、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、SnBr
4などが挙げられる。ルイス酸触媒の使用量は、第一の反応部において重合開始剤に対してモル比で10〜300倍量とすることが好ましく、100〜300倍量とすることがより好ましい。ルイス酸触媒の量が少なすぎると重合反応速度が著しく抑制され、カチオン重合反応に長時間を要することとなり生産性が低下する。逆にルイス酸触媒が多すぎると副反応が多くなる傾向があり、プロトン開始反応や連鎖移動反応が起こることによって分散度が大きくなる。
【0040】
(電子供与剤)
前述したイニファー法を用いる際、連鎖移動反応やプロトン開始反応などの副反応を抑制して良好な重合体を得るためには、電子供与剤を用いることが効果的であることは知られている(特開平2−245004号公報、特開平1−318014号公報、特開平3−174403号公報)。電子供与剤としては特に限定されないが、例えば、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、または、金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等を挙げることができる。具体的には、ピリジン、2−メチルピリジン(ピコリンまたはα−ピコリンと略記)、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアセトアミド(DMAcと略記)、ジメチルスルホキシド(DMSOと略記)、酢酸エチル(EtOAcと略記)、Ti(OiPr)
4などが好適に使用される。この中で、本発明の第一の電子供与剤および/または第二の電子供与剤としては、ピリジン類、アミン類からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である事が好ましく、ピリジン、α−ピコリン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミンがより好ましい。
【0041】
本発明の第二の電子供与剤の量は、溶液(B)中の溶媒1kg当り、0.5mmol〜30mmol使用することが好ましく、1mmol〜10mmol使用することがより好ましい。0.5mmolより少ないと溶液(B)中で生成したハロゲン化水素化合物の除去が不十分となることがあり、30mmolより多くなると、ルイス酸触媒との相互作用により活性が低下し、得られた重合体の分子量分布が広がる傾向にあるため好ましくない。
【0042】
また、本発明の第一の電子供与剤の量は、重合開始剤に対してモル比で0.2〜10倍量存在させるのが好ましい。電子供与剤の量が少なすぎると副反応が多くなる傾向があり、プロトン開始反応や連鎖移動反応が起こることによって分散度が大きくなる。逆に電子供与剤が多すぎると重合反応速度が著しく抑制され、カチオン重合反応に長時間を要することとなり生産性が低下する。
【0043】
(重合溶媒)
本発明の方法では、重合溶媒として、ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素、および芳香族炭化水素からなる群から選ばれる単独溶媒またはそれらの混合溶媒を用いることができる。
【0044】
ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、1−クロロプロパン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルブタン、1−クロロ−3−メチルブタン、1−クロロ−2,2−ジメチルブタン、1−クロロ−3,3−ジメチルブタン、1−クロロ−2,3−ジメチルブタン、1−クロロペンタン、1−クロロ−2−メチルペンタン、1−クロロ−3−メチルペンタン、1−クロロ−4−メチルペンタン、1−クロロヘキサン、1−クロロ−2−メチルヘキサン、1−クロロ−3−メチルヘキサン、1−クロロ−4−メチルヘキサン、1−クロロ−5−メチルヘキサン、1−クロロヘプタン、1−クロロオクタン、2−クロロプロパン、2−クロロブタン、2−クロロペンタン、2−クロロヘキサン、2−クロロヘプタン、2−クロロオクタン、クロロベンゼン等が使用でき、これらの中から選ばれる溶剤は単独であっても、二種以上の成分からなるものであっても良い。
【0045】
脂肪族炭化水素としては、ブタン、ペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンが好ましく、これらの中から選ばれる溶剤は単独であっても、二種以上の成分からなるものであっても良い。
【0046】
芳香族炭化水素としてはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンが好ましく、これらの中から選ばれる溶剤は単独であっても、二種以上の成分からなるものであっても良い。
【0047】
とりわけハロゲン化炭化水素と脂肪族炭化水素の混合溶媒、ハロゲン化炭化水素と芳香族炭化水素の混合溶媒は、反応制御および溶解度の観点からより好適に使用される。その中でも、炭素数3〜8の1級および/または2級のモノハロゲン化炭化水素と、脂肪族および/または芳香族系炭化水素を組み合わせた混合溶媒であることが好ましい。さらにn−ブチルクロライドとn−ヘキサンの混合溶媒であることが好ましい。
【0048】
さらに、n−ブチルクロライドとn−ヘキサンの混合溶媒比についても、重合反応が完結するまで重合体の溶解性を維持できる混合比であればよいが、反応速度及び生産性の観点からn−ブチルクロライド/n−ヘキサンの混合比(体積比)としては、60/40〜100/0が好ましく、さらに、80/20〜100/0が好ましい。
【0049】
重合溶媒の量は、重合反応が完結するまで重合体の溶解性を維持できる量であればよいが、生産性の観点から溶液(A)と溶液(B)の混合後のモノマー濃度が5〜50wt%であることが好ましく、さらに10〜30wt%であることが好ましい。
【0050】
(重合反応温度)
重合反応温度は−100〜0℃の範囲とすることができる。比較的高い温度条件では反応速度が遅く、連鎖移動反応などの副反応が起こるので、−10℃よりも低い温度を選定することが好ましい。しかし反応温度が−100℃より低いと反応に関与する物質(原料又は重合体)が析出する場合があり、また工業的に実施するには経済的でない。より好ましい反応温度は−80〜−10℃である。
【0051】
<重合体の分子量>
本発明の方法により製造される重合体の数平均分子量は特に限定されるものではないが、イソブチレン系重合体または、イソブチレン系ブロック共重合体の場合は、分子量が短すぎるとゴム弾性や熱可塑性などイソブチレン系重合体、イソブチレン系ブロック共重合体の特性が発揮されないため、工業的に有益な材料との観点では通常5000〜500000、より好ましくは10000〜300000である。
【0052】
<連続重合装置>
本発明の連続重合装置の一例を
図1に示す。第一の重合性単量体用耐圧タンク1中の溶液(A)と、触媒用耐圧タンク2中の溶液(B)を連続的に第一の混合部4に供給し、引き続き混合部に接続した第一の反応部5に供給することによりカチオン重合性単量体の重合を行う。
【0053】
また、ブロック共重合体を重合する連続重合装置の1例を
図2に示す。
図1の第一の反応部5を通過した反応液と第二の重合性単量体用耐圧タンク6中の溶液(C)を第二の混合部7に供給し、引き続き混合部に接続した第二の反応部8に供給することによりカチオン重合性単量体の重合を行い、ブロック共重合体が得られる。
【0054】
上記第一の混合部、および第二の混合部としては、特に制限されるものではないが、工業的に使用可能なものとして例えば、管継手型の混合方法が挙げられる。管継手型の混合方法とは、内部に形成された流路を備え、必要に応じて前記内部に形成された流路と、チューブとを接続する接続手段を備える。前記接続手段における接続方式としては、特に制限はなく、公知のチューブ接続方式の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ねじ込み式、ユニオン式、突合わせ溶接式、差込み溶接式、ソケット溶接式、フランジ式、食込み式、フレア式、メカニカル式などが挙げられる。前記管継手型の混合部の内部には、前記流路以外に、前記流路に連通し、前記流路に複数の液体を導入する導入路が形成されていることが好ましい。即ち、前記導入路の数に応じて、前記流路の上流側が分岐された構成が好ましい。前記導入路の数が2つである場合には、前記管継手型のマイクロミキサーとして例えばT字型やY字型を用いることができ、前記導入路の数が3つである場合には、例えば、十字型を用いることができる。
【0055】
上記第一の反応部、および第二の反応部としては、特に制限されるものではないが、例えば、管型反応器や表面に複数の溝部が形成されたプレート状構造体を積層してなる構造を有する積層型反応器が使用可能である。この反応器は、混合部で迅速に混合された溶液が、その後の反応を行うために必要な時間を精密に制御(滞留時間制御)するための反応器である。管型反応器の内径、外径や長さ及び材質、積層型反応器表面の溝部の深さや幅などの構成は、特に制限はなく反応に応じて適宜選択することができる。管型反応器や積層型反応器の材質としては、特に制限はなく、耐熱性、耐圧性、耐溶剤性、及び加工容易性などの要求に応じて、適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、チタン、銅、ニッケル、アルミニウム、シリコン、及びテフロン(登録商標)、PFA(パーフロロアルコキシ樹脂)などのフッ素樹脂、TFAA(トリフルオロアセトアミド)などが挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0057】
本実施例に示す重合体は以下に示す方法で分析、評価した。
【0058】
(分子量及び分子量分布の分析)
Waters社製GPCシステム(カラム:昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)とK−802.5(ポリスチレンゲル)を直列に2本使用、移動相:クロロホルム、1ml/min)により測定した。なお、分子量はポリスチレン換算で表記した。
【0059】
(機械強度の測定方法)
破断強度の値は、2mm厚プレスシートをダンベル3号型に打ち抜いてJIS K 6251に準拠した引張試験を行い求めている。
【0060】
(実施例1)
容積3Lの耐圧タンクを2槽用意し、耐圧タンク2槽ならびに管型重合器を窒素置換した後、一方のタンクには、重合溶媒(n−ブチルクロライド、n−ヘキサンを体積比にして9:1で混合)を1080ml、重合開始剤としてp−DCCを1.67g、第一の電子供与剤として2−メチルピリジンを反応部での重合開始剤に対するモル比が5となるように投入し、第一の重合性単量体としてイソブチレンを470ml投入した。もう一方の耐圧タンクには、重合溶媒(n−ブチルクロライド、n−ヘキサンを体積比にして9:1で混合)を1400ml、第二の電子供与剤として、2,6−ジ−t−ブチルピリジンを0.64g(3.3mmol)、触媒としてTiCl
4を混合後の重合開始剤に対するモル比が200となるように投入した。耐圧タンク2槽ならびに重合器を−50℃の冷却浴に浸すことで冷却を行った。重合器の混合部には内径3mmのT字ミキサー、反応部には内径3mm、管長10mの単管を使用した。T字ミキサーにはイソブチレン溶液、触媒溶液をそれぞれ35ml/minで供給した。重合器の出口より採取した反応液中の触媒を失活して水洗除去した後に溶媒を除去して重合体を得た。
得られた重合体のピーク分子量(Mp)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)をGPC法により測定した。その結果を表1に示す
(実施例2)
実施例1のうち、第二の電子供与剤としてトリエチルアミン0.32g(3.3mmol)を使用した以外は同じとした。表1に結果を示す。
【0061】
(実施例3)
実施例1のうち、第一の電子供与剤として2−メチルピリジンを反応部での重合開始剤に対するモル比が1となるように投入した以外は同じとした。表1に結果を示す。
【0062】
(比較例1)
実施例1のうち、第二の電子供与剤である2,6−ジ−t−ブチルピリジンを添加しなかった以外は同じとした。表1に結果を示す。
【0063】
(比較例2)
実施例2のうち、第二の電子供与剤である2,6−ジ−t−ブチルピリジンを添加しなかった以外は同じとした。表1に結果を示す。
【0064】
(比較例3)
実施例1のうち、第一の電子供与剤である2−メチルピリジンを添加しなかった以外は同じとした。表1に結果を示す。
【0065】
(実施例4)
装置の概略を
図2に示す。具体的には、第二の混合部には内径8.6mmのT字ミキサー、第二の反応部には内径4.35mm、管長2mの単管を使用した。第二の重合性単量体用耐圧タンクを窒素置換してスチレンを151ml仕込んだ。実施例1と同じ条件で第一の重合性単量体の重合を行い、引き続き、第二の混合部に第二の重合性単量体としてスチレンを第一の重合性単量体に対してモル比で0.174となるように供給した。重合器の出口より採取した反応液中の触媒を失活して水洗除去した後に溶媒を除去して重合体を得た。
得られた重合体のピーク分子量(Mp)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)をGPC法により測定した。表1に結果を示す。また、得られた重合体の機械強度を測定した。第一のモノマー重合体と第二のモノマー重合体とがブロック共重合していれば機械強度は高くなるが、ブロック共重合していなければ低くなり、場合によっては測定自体が不可能となる。表2に結果を示す。
【0066】
(実施例5)
実施例4と同様に、第二の混合部には内径8.6mmのT字ミキサー、第二の反応部には内径4.35mm、管長2mの単管を使用した。第二の重合性単量体用耐圧タンクを窒素置換してスチレンを151ml仕込んだ。実施例2と同じ条件で第一の重合性単量体の重合を行い、引き続き、第二の混合部に第二の重合性単量体としてスチレンを第一の重合性単量体に対してモル比で0.174となるように供給した。重合器の出口より採取した反応液中の触媒を失活して水洗除去した後に溶媒を除去して重合体を得た。
得られた重合体のピーク分子量(Mp)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)をGPC法により測定した。表1に結果を示す。
【0067】
(比較例4)
比較例1と同じ条件で第一の重合性単量体の重合を行い、引き続き、第二の混合部に第二の重合性単量体としてスチレンを第一の重合性単量体に対してモル比で0.174となるように供給した。表1に結果を示す。また、得られた重合体の機械強度を測定した。表2に結果を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【符号の説明】
【0070】
1.第一の重合性単量体用耐圧タンク
2.触媒用耐圧タンク
3.送液ポンプ
4.第一の混合部
5.第一の反応部
6.第二の重合性単量体用耐圧タンク
7.第二の混合部
8.第二の反応部