特許第5947095号(P5947095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5947095導光板用ポリカーボネート樹脂組成物および導光板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947095
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】導光板用ポリカーボネート樹脂組成物および導光板
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/00 20060101AFI20160623BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20160623BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20160623BHJP
   C08K 5/527 20060101ALI20160623BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALN20160623BHJP
【FI】
   G02B6/00 331
   C08L71/02
   C08L69/00
   C08K5/527
   !G02F1/13357
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-104471(P2012-104471)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-231899(P2013-231899A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】松本 晋
【審査官】 鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−163070(JP,A)
【文献】 特開2009−013393(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/083635(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00
C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 − 101/14
G02F 1/1335 − 1/13363
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリエチレングリコール単独重合体及びポリプロピレングリコール単独重合体から選ばれるポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル(B)を0.01〜1質量部および下記一般式(I)で表されるリン系酸化防止剤(C)を0.005〜0.07質量部含有し、ポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル(B)とリン系酸化防止剤(C)の含有量の質量比が、(B):(C)で〜20:1の範囲にあることを特徴とする導光板用ポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
(式(I)中、Rは、アリール基またはアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
リン系酸化防止剤(C)がビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトである請求項1に記載の導光板用ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形して成る導光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導光板用ポリカーボネート樹脂組成物および導光板に関し、詳しくは、機械的性質、熱的性質、電気的性質、耐候性に優れ、更に、高透過率性および良好な色相を有する導光板用ポリカーボネート樹脂組成物およびそれを成形して成る導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、携帯電話等にて使用される液晶表示装置には、その薄型化、軽量化、省力化、高精細化の要求に対応するために、面状光源装置が組み込まれている。そして、この面状光源装置には、入光する光を液晶表示側に均一かつ効率的に導く役割を果たす目的で、一面が一様な傾斜面を有する楔型断面の導光板や平板形状の導光板が備えられている。また導光板の表面に凹凸パターンを形成して光散乱機能を付与するものもある。
【0003】
このような導光板は、熱可塑性樹脂の射出成形によって得られ、上記の凹凸パターンは入れ子の表面に形成された凹凸部の転写によって付与される。従来、導光板はポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂材料から成形されてきたが、最近では、より鮮明な画像を映し出す表示装置が求められ、光源近傍で発生する熱によって機器装置内が高温化する傾向にあるため、より耐熱性の高い芳香族ポリカーボネート樹脂材料に置き換えられつつある。
【0004】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、機械的性質、熱的性質、電気的性質、耐候性に優れるが、光線透過率は、PMMA等に比べて低いことから、芳香族ポリカーボネート樹脂製の導光板と光源とから面光源体を構成した場合、輝度が低いという問題がある。また最近では導光板の入光部と入光部から離れた場所の色度差を少なくすることが求められているが、芳香族ポリカーボネート樹脂はPMMA樹脂と比べて黄変しやすいという問題がある。
【0005】
従来から、芳香族ポリカーボネート樹脂製の導光板における輝度を高める方法が幾つか提案されている。
例えば、特許文献1には、蛍光増白剤とビーズ状架橋アクリル樹脂を併用し、蛍光増白剤により輝度を向上し、ビーズ状架橋アクリル微粒子により輝度のむらを少なくする方法、特許文献2には、アクリル樹脂および脂環式エポキシを添加することにより光線透過率および輝度を向上させる方法、特許文献3には、芳香族ポリカーボネート樹脂末端を変性し導光板への凹凸部の転写性を上げることにより輝度を向上させる方法、特許文献4には、脂肪族セグメントを有するコポリエステルカーボネートを導入して上記の転写性を向上させることにより輝度を向上させる方法、さらに、特許文献5には、ポリアルキレングリコール又はその脂肪酸エステルにより輝度を向上させる方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、部分的な輝度は上がるがビーズ状架橋アクリル樹脂や蛍光増白剤により光線透過率が低下するため、導光板の光源より遠い部分の輝度の低下が大きく、均一な輝度を得ることができない。特許文献2の方法は、アクリル樹脂の添加により色相は良好になるが、白濁するために光線透過率および輝度を上げることができず、脂環式エポキシを添加することにより、透過率が向上する可能性はあるが、色相の改善効果は認められない。特許文献3および特許文献4の場合、流動性や転写性の改善効果は期待できるものの、耐熱性が低下するという欠点がある。特許文献5の方法では、透過率や黄変(イェローインデックス:YI)等若干の改善は見られるものの、充分なレベルではない。
【0007】
特に最近、スマートフォンやタブレット型端末等の各種携帯端末においては、薄肉化や大型薄肉化が著しいスピードで進行しており、導光板への入光を直下型から横側エッジから行うエッジ型が採用されるようになり、超薄型の光源として十分な輝度が要求されてきている。このようなハイエンドの導光板においては、上記従来技術が達成する透過率やYIレベルでは要求スペックを満たさないというのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−20860号公報
【特許文献2】特開平11−158364号公報
【特許文献3】特開2001−208917号公報
【特許文献4】特開2001−215336号公報
【特許文献5】特開2004−51700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の特性を何ら損なうことなく、更に、白濁や透過率の低下がなく、透過率および色相の良好な導光板用ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。また本発明の他の目的は、上記のポリカーボネート樹脂組成物製導光板に光源を備えてなる面光源体において、輝度および輝度均整度を向上し得る導光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、芳香族ポリカーボネートに特定量のポリアルキレングリコール又はその脂肪酸エステルとリン系酸化防止剤含有させ、その際、ポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステルとリン系酸化防止剤の含有量の質量比を特定の範囲とすることにより、驚くべきことに白濁や透過率の低下がなく、高度の透過率と極めて良好な色相を達成することができることを見出し、本発明の完成するに至った。
本発明は、以下の導光板用ポリカーボネート樹脂組成物および導光板を提供する。
【0011】
[1]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル(B)を0.01〜1質量部およびリン系酸化防止剤(C)を0.005〜0.2質量部含有し、ポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル(B)とリン系酸化防止剤(C)の含有量の質量比が、(B):(C)で3〜20:1の範囲にあることを特徴とする導光板用ポリカーボネート樹脂組成物。
[2]リン系酸化防止剤が亜リン酸エステルである上記[1]に記載の導光板用ポリカーボネート樹脂組成物。
【0012】
[3]リン系酸化防止剤が、下記一般式(I)または一般式(II)で表される亜リン酸エステルである上記[1]または[2]に記載の導光板用ポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
(式(I)中、Rは、アリール基またはアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【化2】
(式(II)中、R〜Rは、水素原子、アリール基または炭素数1〜20のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
[4]上記[1]〜[3]の何れかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形して成る導光板。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物によれば、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の特性を何ら損なうことなく、更に、白濁や透過率の低下がなく、透過率および色相の良好な、導光板用ポリカーボネート樹脂組成物が提供され、透過率および色相の良好な導光板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。
なお、本願明細書において、「〜」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0015】
[概要]
本発明の導光板用ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、ポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル(B)を0.01〜1質量部およびリン系酸化防止剤(C)を0.005〜0.2質量部含有し、ポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル(B)とリン系酸化防止剤(C)の含有量の質量比が、(B):(C)で3〜20:1の範囲にあることを特徴とする。
以下、本発明の樹脂組成物を構成する各成分、導光板等につき、詳細に説明する。
【0016】
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明の導光板用ポリカーボネート樹脂組成物に使用するポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を使用する。ポリカーボネート樹脂としては、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネート樹脂もあるが、本発明では、芳香族ポリカーボネート樹脂を用い、具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲン又は炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体又は共重合体が用いられる。
【0017】
該芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられる。また、ジヒドロキシ化合物の一部として、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、又はシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーもしくはオリゴマー等を併用すると、難燃性の高いポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0018】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の好ましい例としては、ジヒドロキシ化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、又は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とを併用した芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。本発明では、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)として、2種以上のポリカーボネート樹脂を併用しても良い。
【0019】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、好ましくは10,000〜30,000、より好ましくは11,000〜26,000である。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、且つ機械的強度の大きい成形品が得られる。芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の最も好ましい分子量範囲は12,000〜22,000である。
【0020】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融重合法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融重合法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂を使用するのも好ましい。
【0021】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂を一定割合以上含有することが好ましい。
構造粘性指数Nとは、文献「化学者のためのレオロジー」(化学同人、1982年、第15〜16頁)にも詳記されているように、溶融体の流動特性を評価する指標である。通常、ポリカーボネート樹脂の溶融特性は、数式:γ=a・σにより表示することができる。なお、前記式中、γ:剪断速度、a:定数、σ:応力、N:構造粘性指数、を表す。
【0022】
上述の数式において、N=1のときはニュートン流動性を示し、Nの値が大きくなるほど非ニュートン流動性が大きくなる。つまり、構造粘性指数Nの大小により溶融体の流動特性が評価される。一般に、構造粘性指数Nが大きいポリカーボネート樹脂は、低剪断領域における溶融粘度が高くなる傾向がある。このため、構造粘性指数Nが大きいポリカーボネート樹脂を別のポリカーボネート樹脂と混合した場合、得られる成形品の燃焼時の滴下を抑制し、難燃性を向上させることができる。ただし、得られるポリカーボネート樹脂組成物の成形性を良好な範囲に維持するためには、このポリカーボネート樹脂の構造粘性指数Nは過度に大きくないことが好ましい。
【0023】
従って、本発明に使用するポリカーボネート樹脂組成物における芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、構造粘性指数Nが、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.25以上、さらに好ましくは1.28以上であり、また、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.7以下の芳香族ポリカーボネート樹脂を一定割合以上含有することが好ましい。
このように構造粘性指数Nが高いことは、ポリカーボネート樹脂が分岐鎖を有することを意味し、このように構造粘性指数Nが高いポリカーボネート樹脂を含有することにより、ポリカーボネート樹脂製導光板の燃焼時の滴下を抑制し、難燃性を向上させることができる。
【0024】
なお、構造粘性指数Nは、例えば特開2005−232442号公報に記載されているように、上述の式を誘導した、Logη=〔(1−N)/N〕×Logγ+Cによって表示することも可能である。なお、前記式中、N:構造粘性指数、γ:剪断速度、C:定数、η:見かけの粘度、を表す。この式から分かるように、粘度挙動が大きく異なる低剪断領域におけるγとηからN値を評価することもできる。例えば、γ=12.16sec−1及びγ=24.32sec−1でのηからN値を決定することができる。
【0025】
構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、特開平8−259687号公報、特開平8−245782号公報に記載されているように、溶融重合法(エステル交換法)によって芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを反応させる際、触媒の条件または製造条件を選択することにより、分岐剤を添加することなく、構造粘性指数が高く、加水分解安定性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0026】
また、構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂は、常法に従って、ホスゲン法あるいは溶融重合法(エステル交換法)で製造する際に、分岐剤を使用する方法によって製造することもできる。
分岐剤の具体例としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物、また3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノールなどが挙げられる。
その使用量は芳香族ジヒドロキシ化合物に対して0.01〜10モル%の範囲であり、特に好ましくは0.1〜3モル%の範囲である。
【0027】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、上述した構造粘性指数Nが所定範囲にあるポリカーボネート樹脂(以下、このポリカーボネート樹脂を「所定Nポリカーボネート樹脂」と称す場合がある。)を、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)中、通常20質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上含むことが望ましい。このように所定Nポリカーボネート樹脂と組合せることにより、必要以上に押出し時のトルク上昇を招かないため、生産性の低下を招きにくくなる。すなわち、成形性と生産性をいずれも顕著に発揮できることになる。
なお、ポリカーボネート樹脂(A)中の、所定Nポリカーボネート樹脂の含有量の上限に制限は無く、通常100質量%以下であるが、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下である。
また、所定Nポリカーボネート樹脂は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0028】
また、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、上述した所定Nポリカーボネート樹脂以外に、構造粘性指数Nが上記の所定範囲外であるポリカーボネート樹脂を含んでいてもよい。その種類に制限は無いが、なかでも直鎖状ポリカーボネート樹脂が好ましい。所定Nポリカーボネート樹脂と直鎖状ポリカーボネート樹脂とを組み合わせることにより、得られるポリカーボネート樹脂組成物の難燃性(滴下防止性)と成形性(流動性)のバランスをとりやすいという利点が得られる。この観点から、ポリカーボネート樹脂は、所定Nポリカーボネート樹脂と、直鎖状ポリカーボネート樹脂とから構成されるものを用いることが特に好ましい。なお、この直鎖状ポリカーボネート樹脂の構造粘性指数Nは通常1〜1.15程度である。
【0029】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が直鎖状ポリカーボネート樹脂を含む場合、ポリカーボネート樹脂に占める直鎖状ポリカーボネート樹脂の割合は、通常80質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下であり、また、通常0質量%より多く、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。芳香族ポリカーボネート樹脂(A)中の直鎖状ポリカーボネート樹脂の含有量を上記範囲とすることにより、難燃性、成形性に優れるポリカーボネート樹脂が得られやすいという利点が得られる。
【0030】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネート樹脂単独(ポリカーボネート樹脂単独とは、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のポリカーボネート樹脂を含む態様を含む意味で用いる。)で用いてもよく、芳香族ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのアロイ(混合物)とを組み合わせて用いてもよい。さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、芳香族ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
【0031】
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0032】
さらに、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生された芳香族ポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、再生された芳香族ポリカーボネート樹脂は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
【0033】
[ポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル(B)]
本発明の導光板用ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル(B)を含有する。
ポリアルキレングリコールとしては、アルキレングリコールの単独重合物、共重合物及びその誘導体が含まれる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの炭素数が2〜6のポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのランダム又はブロック共重合物、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのグリセリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンのモノブチルエーテルなどの共重合物等が挙げられる。
中でも好ましくは、オキシエチレン単位を有する重合体、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合物及びそれらの誘導体である。
また、ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、通常500〜500,000、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは1,000〜50,000である。
【0034】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸エステルとしては、直鎖状又は分岐状脂肪酸エステルのいずれも使用でき、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。また、一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものも使用できる。
脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数10以上の1価又は2価の脂肪酸、例えば、1価の飽和脂肪酸、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチレン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸や、炭素数10以上の1価の不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、セトレイン酸、エルカ酸などの不飽和脂肪酸、また炭素数10以上の二価の脂肪酸、例えば、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、タプシア酸及びデセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸である。これらの脂肪酸は一種又は二種以上組み合せて使用できる。前記脂肪酸には、1つ又は複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸も含まれる。
【0035】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、ポリエチレングリコールモノパルミチン酸エステル、ポリエチレングリコールジパルミチン酸エステル、ポリエチレングリコールモノステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールジステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)エステル、ポリプロピレングリコールモノパルミチン酸エステル、ポリプロピレングリコールジパルミチン酸エステル、ポリプロピレングリコールモノステアリン酸エステル、ポリプロピレングリコールジステアリン酸エステル、ポリプロピレングリコール(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)エステル等が挙げられる。
【0036】
ポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1質量部である。好ましい含有量は0.02質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、好ましくは0.9質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、さらに好ましくは0.7質量部以下、特には0.6質量部以下である。0.01質量部を下回ると、色相や黄変の改善が十分でなく、1質量部を超えると、黄変が悪化したり、光線透過率が低くなる。
【0037】
[リン系酸化防止剤(C)]
本発明に用いるリン系酸化防止剤(C)としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、ホスファイト、ホスホナイト等の亜リン酸エステルが好ましい。
【0038】
本発明において、好ましいリン系酸化防止剤(C)としては、以下の一般式(I)で表される亜リン酸エステルが挙げられる。
【化3】
(式(I)中、Rは、アリール基またはアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(I)中、Rがアリール基である場合、Rは以下の一般式(a)及び(b)で表される基ならびに式(c)で表されるアリール基が好ましい。
【0039】
【化4】
(式(a)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
【0040】
【化5】
(式(b)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表す。)
【0041】
【化6】
【0042】
が一般式(a)で表されるアリール基である亜リン酸エステルとしては、例えば、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられ、これは(株)ADEKAより「アデカスタブPEP−24G」の商品名で市販されている。Rが一般式(b)で表される亜リン酸エステルとしては、例えば、Rがtert−ブチル基である、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられ、これは(株)ADEKAより「アデカスタブPEP−36」の商品名で市販されている。Rが式(c)で表されるアリール基である亜リン酸エステルとしては、例えば、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられ、これはドーバーケミカル(株)より「ドーバホスS−9228」の商品名で市販されている。
【0043】
一般式(I)中、Rのアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。かかる亜リン酸エステルの具体例としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジノニルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらの中では、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
【0044】
また、本発明において、他の好ましいリン系酸化防止剤(C)は、以下の一般式(II)で表される亜リン酸エステルである。この亜リン酸エステルは、特にエステル交換法で製造された芳香族ポリカーボネート樹脂に対して好ましい安定剤である。
【0045】
【化7】
(式(II)中、R〜Rは、水素原子、アリール基または炭素数1〜20のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0046】
上記一般式(II)中の、R〜Rにおけるアリール基またはアルキル基としては、フェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ、特に、R、Rがtert−ブチル基であり、R、R、Rが水素原子である、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、これは、(株)ADEKAより「アデカスタブ2112」の商品名で市販されている。
【0047】
リン系酸化防止剤(C)は、1種が含有されていてもよく、2種類以上を混合して含有することができるが、リン系酸化防止剤(C)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して0.005〜0.2質量部である。好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.02質量部以上であり、好ましくは0.15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下、特には0.07質量部以下である。0.005質量部未満では熱安定剤としての効果が不十分であり、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、また0.2質量部を越えると、分子量の低下、色相悪化が更に起こりやすくなる。
【0048】
本発明の樹脂組成物においては、ポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル(B)とリン系酸化防止剤(C)の含有量の質量比が、(B):(C)で3〜20:1の範囲にあることを特徴とする。このような範囲の質量比とすることで、白濁や透過率の低下がなく、透過率および色相の良好な導光板用ポリカーボネート樹脂組成物を初めて達成することができる。(B)と(C)の質量比が、(B):(C)で3を下回ると黄変の充分な改善が見られず、20を超えると黄変が大きくなり、光線透過率が低くなる。
(B):(C)は、好ましくは3.5以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは15以下であり、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。
【0049】
[その他の添加剤]
本発明の導光板用ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、難燃剤、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
【0050】
・難燃剤
難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、金属塩系難燃剤、無機フィラー系難燃剤が挙げられるが、これらの中では、金属塩系難燃剤が好ましく、有機金属塩化合物がより好ましく、有機スルホン酸金属塩化合物が特に好ましい。有機スルホン酸金属塩化合物を選択することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性、熱物性が良好なものになる。
このような、有機スルホン酸金属塩化合物の中では、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム等の含フッ素脂肪族スルホン酸アルカリ金属塩や、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸ナトリウム、(ポリ)スチレンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸セシウム、(分岐)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム等の芳香族スルホン酸アルカリ金属塩を好適に用いることができる。
【0051】
難燃剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常20質量部以下、好ましくは10質量部以下である。難燃剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、難燃性の改良効果が不十分となる可能性があり、難燃剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、透明性や機械物性、熱物性の低下を招く可能性がある。
さらに、難燃剤に金属塩化合物を選択する場合には、通常0.05質量部以上、1質量部以下とすることが特に好ましい。
【0052】
・離型剤
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0053】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0054】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族又は脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0055】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0056】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0057】
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
【0058】
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0059】
・紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0060】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、(株)ADEKA製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
【0061】
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−n−ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられ、このようなベンゾフェノン化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM−40」、BASF社製「ユビヌルMS−40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、アデカ社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA−51」等が挙げられる。
【0062】
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4−tert−ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
【0063】
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビヌルN−35」、「ユビヌルN−539」等が挙げられる。
【0064】
トリアジン化合物としては、例えば1,3,5−トリアジン骨格を有する化合物等が挙げられ、このようなトリアジン化合物としては、具体的には例えば、(株)ADEKA製「LA−46」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「チヌビン1577ED」、「チヌビン400」、「チヌビン405」、「チヌビン460」、「チヌビン477−DW」、「チヌビン479」等が挙げられる。
【0065】
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物としては、具体的には例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
【0066】
マロン酸エステル化合物としては、2−(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物としては、具体的には例えば、クラリアントジャパン社製「PR−25」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「B−CAP」等が挙げられる。
【0067】
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常3質量部以下、好ましくは1質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0068】
・染顔料
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
【0069】
有機顔料および有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料などが挙げられる。
【0070】
これらの中では、熱安定性の点から、酸化チタン、シアニン系、キノリン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系化合物などが好ましい。
なお、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0071】
染顔料の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。染顔料の含有量が多すぎると耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。
【0072】
・蛍光増白剤
本発明においては、本発明の効果を損ねない範囲で、従来公知の任意の蛍光増白剤を用いてもよい。この様な蛍光増白剤には、種々のものがあるが、具体的にはクマリン誘導体、ナフトトリアゾリルスチルベン誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体及びジアミノスチルベン−ジスルホネート誘導体等が挙げられる。また、市販品としては、ハコール産業から商品名ハッコールPSR(3−フェニル−7−(2H−ナフト(1.2−d)−トリアゾール−2−イル)クマリン)、ヘキストAGから商品名HOSTALUX KCB(ベンズオキサゾール誘導体)、住友化学社から商品名WHITEFLOUR PSN CONC(オキサゾール系化合物)として、入手することができる。
【0073】
蛍光増白剤の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.005〜0.1質量部である。含有量が0.005質量部未満であると増白効果が少なく、0.1質量部を超えると黄味が強くなりやすい。蛍光増白剤の含有量は、より好ましくはポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.05質量部である。
【0074】
・滴下防止剤、
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、滴下防止剤として、フッ素系樹脂を、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜1質量部含有することも好ましい。このようにフッ素系樹脂を含有することで、樹脂組成物の溶融特性を改良することができ、具体的には燃焼時の滴下防止性を向上させることができる。
【0075】
フッ素系樹脂の含有量は、0.01質量部より少ないと、フッ素系樹脂による難燃性向上効果が不十分になりやすく、1質量部を超えると、熱可塑性樹脂組成物を成形した成形品の外観不良や機械的強度の低下が生じやすい。含有量の下限は、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上であり、また、含有量の上限は、より好ましくは0.75質量部以下、さらに好ましくは0.6質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以下である。
【0076】
フッ素系樹脂としては、なかでもフルオロオレフィン樹脂が好ましい。フルオロオレフィン樹脂は、通常フルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体であり、懸濁重合法、あるいは乳化重合法で製造されたものが主として使用される。具体例としては、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられるが、なかでもテトラフルオロエチレン樹脂が好ましい。
また、このフッ素系樹脂としては、フィブリル形成能を有するものが好ましく、具体的には、フィブリル形成能を有するフルオロオレフィン樹脂が挙げられる。このように、フィブリル形成能を有することで、燃焼時の滴下防止性が著しく向上する傾向にある。
【0077】
フィブリル形成能を有するフルオロオレフィン樹脂としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」、ダイキン化学工業社製「ポリフロン(登録商標)F201L」、「ポリフロン(登録商標)F103」、「ポリフロン(登録商標)FA500」などが挙げられる。さらに、フルオロオレフィン樹脂の水性分散液の市販品として、例えば、三井デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)30J」、「テフロン(登録商標)31−JR」、ダイキン化学工業社製「フルオン(登録商標)D−1」等が挙げられる。
【0078】
さらに、有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂も好適に使用することができる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂を用いることで、分散性が向上し、成形品の表面外観が向上し、表面異物を抑制できる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂は、公知の種々の方法により製造でき、例えば(1)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、等が挙げられる。
【0079】
フルオロオレフィン樹脂を被覆する有機系重合体としては、特に制限されるものではなく、このような有機系重合体を生成するための単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;
アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;
【0080】
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;
無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;
グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;
エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;
ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等を挙げることができる。なお、これらの単量体は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0081】
なかでもフルオロオレフィン樹脂を被覆する有機系重合体を生成するための単量体としては、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する際の分散性の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性が高いものが好ましく、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体がより好ましい。
【0082】
また、有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂中のフルオロオレフィン樹脂の含有比率は、通常30質量%以上、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下である。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂中のフルオロオレフィン樹脂の含有比率を、上述の範囲とすることで、難燃性と成形品外観のバランスに優れる傾向にあるため好ましい。
【0083】
このような有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂としては、具体的には、三菱レイヨン社製「メタブレン(登録商標)A−3800」、GEスペシャリティケミカル社製「ブレンデックス(登録商標)449」、PIC社製「Poly TS AD001」等が挙げられる。
なお、フッ素系樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0084】
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、ポリアルキレングリコールまたはその脂肪酸エステル(B)及びリン系酸化防止剤(C)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
【0085】
[成形品]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記したポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットを各種の成形法で成形して導光板を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して導光板にすることもできる。
【0086】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、出成形した多目的試験片を用い300mmの光路長で測定した際のイェローインデックス(YI)が、好ましくは25以下である。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、このように長い光路長にて測定されるYIが25以下であり、優れた色調を保持することができる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、JIS K7153に準拠して射出成形した多目的試験片を用い300mmの光路長で測定した際の光線透過率が高く、導光板の輝度が向上する。
ここで、YI及び光線透過率を測定する多目的試験片の成形は、後記実施例に記載の方法に従って行われる。
【0087】
[導光板]
導光板は、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の中で、LED等の光源の光を伝えるためのものであり、側面または裏面等からから入れた光を、通常表面に設けられた凹凸により拡散させ、均一の光を出す。その形状は、通常平板状であり、表面には凹凸を有していても有していなくてもよい。
導光板の成形は、通常、好ましくは射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法などにより行われる。
本発明の樹脂組成物を用いて成形した導光板は、白濁や透過率の低下がなく、透過率および色相が極めて良好である。
【0088】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物による導光板は、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の分野で好適に使用できる。このような装置の例としては、携帯電話、モバイルノート、ネットブック、スレートPC、タブレットPC、スマートフォン、タブレット型端末等の携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、各種ディスプレイ、照明機器等が挙げられる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例及び比較例で使用した原料および評価方法は次の通りである。
【0090】
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、ウベローデ粘度計を用いて塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し、以下の式より求めた。
[η]=1.23×10−4×(Mv)0.83
【0091】
【表1】
【0092】
(実施例1〜7[但し、実施例2は参考例]、比較例1〜7)
[樹脂組成物ペレットの製造]
上記した各成分(A)〜(C)を、表2及び表3に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、スクリュー径40mmのベント付単軸押出機(田辺プラスチック機械社製「VS−40」)により、シリンダー温度240℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
【0093】
[色相(YI)と光線透過率の測定]
得られたペレットを120℃で5〜7時間、熱風循環式乾燥機により乾燥した後、JIS K7135に準拠して、射出成形機(東芝機械社製「EC100SX−2A」)により、樹脂温度340℃、金型温度80℃で長光路成形品(300mm×7mm×4mm)を成形した。
この長光路成形品について、300mmの光路長でYIと光線透過率(420nm、440nm及び460nmの測定を行った。測定には長光路分光透過色計(日本電色工業社製「ASA 1」)を使用した。
以上の評価結果を以下の表2および表3に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
表2から明らかなように、実施例の成形品は光路長の長い300mmのYIが小さく、黄変が少ないことを示している。さらに光線透過率も高い
一方、表3の比較例のものは300mmのYIが実施例のものに較べて、極めて悪いことが分かる。さらに光線透過率も低い。
したがって、本発明の、透過率および色相の良好な導光板用ポリカーボネート樹脂組成物を提供するという目的は、本発明の要件を全て満たして、はじめて達成されるということが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、透過率および色相が極めて良好なので、導光板に極めて好適に利用でき、産業上の利用性は非常に高い。