特許第5947140号(P5947140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

特許5947140プレストレストコンクリート構造の施工方法及びプレストレストコンクリート構造
<>
  • 特許5947140-プレストレストコンクリート構造の施工方法及びプレストレストコンクリート構造 図000002
  • 特許5947140-プレストレストコンクリート構造の施工方法及びプレストレストコンクリート構造 図000003
  • 特許5947140-プレストレストコンクリート構造の施工方法及びプレストレストコンクリート構造 図000004
  • 特許5947140-プレストレストコンクリート構造の施工方法及びプレストレストコンクリート構造 図000005
  • 特許5947140-プレストレストコンクリート構造の施工方法及びプレストレストコンクリート構造 図000006
  • 特許5947140-プレストレストコンクリート構造の施工方法及びプレストレストコンクリート構造 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947140
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】プレストレストコンクリート構造の施工方法及びプレストレストコンクリート構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/08 20060101AFI20160623BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   E04C5/08
   E04G21/12 104C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-170482(P2012-170482)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-29088(P2014-29088A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2014年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】是永 健好
(72)【発明者】
【氏名】稲田 博文
(72)【発明者】
【氏名】竹崎 真一
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】蓑輪 達男
(72)【発明者】
【氏名】小室 努
(72)【発明者】
【氏名】新谷 耕平
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−184871(JP,A)
【文献】 実開平03−079336(JP,U)
【文献】 特開2003−020754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/08
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱間に複数の梁が架設され、該複数の梁にプレストレスを導入する、プレストレストコンクリート構造の施工方法であって、
コンクリート部材に埋設されたシース管及び前記コンクリート部材の両端面に配設された支圧板に挿通されたPC鋼撚線を緊張して、前記コンクリート部材にプレストレスを導入する緊張工程と、
前記シース管内に充填材を充填する充填工程と、
前記充填剤の強度が発現した後、前記PC鋼撚線の緊張を解放して前記支圧板を撤去する解放工程と、を含み、
前記PC鋼撚線の一方端部には、前記シース管内に配置される金物が圧着されている一方、前記PC鋼撚線の他方端部には、前記金物が取付けられておらず、
前記PC鋼撚線の前記一方端部は、柱梁接合部に位置し、前記PC鋼撚線の前記他方端部は、前記梁の途中部位に位置していることを特徴とするプレストレストコンクリート構造施工方法。
【請求項2】
前記PC鋼撚線の一方端部に配置された前記シース管は、他の部分の前記シース管よりも肉厚が厚いか、又は、付着性が高い外形を有していることを特徴とする請求項1に記載のプレストレストコンクリート構造施工方法。
【請求項3】
複数の柱間に架設された複数の梁にプレストレスが導入された、プレストレストコンクリート構造において、
コンクリート部材に埋設されたシース管と、
前記シース管に挿通されPC鋼撚線と、
前記シース管内の前記PC鋼撚線の外周囲に充填された充填材と、を備え、
前記PC鋼撚線の一方端部は柱梁接合部に位置し、前記シース管内に配置され金物が圧着されており、かつ前記PC鋼撚線の他方端部は梁の途中部位に位置し、前記シース管内に前記金物が取付けられていないことを特徴とするプレストレストコンクリート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポストテンション方式のプレストレストコンクリート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プレストレストコンクリート構造は、大スパン・大空間を実現する有用な構造形式として土木および建築分野で広く普及している。その代表的プレストレシングシステムとして工事現場で緊張作業を行うポストテンション方式がある。ポストテンション方式の工法としては多種多様な工法が開発されているが、一般的には、プレストレスを加えるコンクリート部材の外部に突出して定着具(アンカーヘッド、支圧板、支圧補強用スパイラル筋等)が存在し(例えば、特許文献1及び非特許文献1)、モルタル等を後打ちして定着具が埋設される。
【0003】
しかし、例えば、定着具が柱梁接合部に位置する場合には、柱・梁の主筋やせん断補強筋等の配筋に干渉しないように定着具を設置する必要があると共に、鉄筋および金物が過密に配筋されているため、コンクリート充填性にも十分な配慮が必要となり、工事を煩雑なものとする。
【0004】
また、定着具の存在によって、柱梁接合部或いは柱や梁の部材寸法を大きくしなければならない場合がある。近年、免震・制振技術の普及に伴い、高強度材料を積極的に利用して部材断面を縮小化する傾向があるが、定着具の存在が設計・施工上の大きな課題となっている。
【0005】
そこで、定着具を必要としないポストテンション方式のプレストレシングシステムとして、PC鋼材とコンクリートの付着により部材に緊張力を導入するものであって、部材端面から一定の距離(プレテンション方式における定着長さ)で前述した付着抵抗力によって定着するものが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−131969号公報
【特許文献2】特開2011−184871号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「プレストレストコンクリート VSL工法設計施工基準」、VSL協会、2012年2月1日改訂
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の方式は、PC鋼材とコンクリートの付着作用によって部材に緊張力を導入するというプレテンション方式の力学原理を利用したものであるが、PC鋼撚線を利用した場合、定着長さが長くなる場合がある。例えば、PC鋼撚線の付着抵抗力で可能な定着長さは鋼材径によって異なるが、一般的に鋼材径に対して40〜70倍程度(φ15.2の撚線では1m以上)必要となり、柱梁接合部内で定着する場合には困難な場合が多い。
【0009】
本発明の目的は、必要な定着力を確保しつつ、定着部のコンパクト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、複数の柱間に複数の梁が架設され、該複数の梁にプレストレスを導入する、プレストレストコンクリート構造の施工方法であって、
コンクリート部材に埋設されたシース管及び前記コンクリート部材の両端面に配設された支圧板に挿通されたPC鋼撚線を緊張して、前記コンクリート部材にプレストレスを導入する緊張工程と、
前記シース管内に充填材を充填する充填工程と、
前記充填剤の強度が発現した後、前記PC鋼撚線の緊張を解放して前記支圧板を撤去する解放工程と、を含み、
前記PC鋼撚線の一方端部には、前記シース管内に配置される金物が圧着されている一方、前記PC鋼撚線の他方端部には、前記金物が取付けられておらず、
前記PC鋼撚線の前記一方端部は、柱梁接合部に位置し、前記PC鋼撚線の前記他方端部は、前記梁の途中部位に位置していることを特徴とするプレストレストコンクリート構造施工方法が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、複数の柱間に架設された複数の梁にプレストレスが導入された、プレストレストコンクリート構造において、コンクリート部材に埋設されたシース管と、前記シース管に挿通されPC鋼撚線と、前記シース管内の前記PC鋼撚線の外周囲に充填された充填材と、を備え、前記PC鋼撚線の一方端部は柱梁接合部に位置し、前記シース管内に配置され金物が圧着されており、かつ前記PC鋼撚線の他方端部は梁の途中部位に位置し、前記シース管内に前記金物が取付けられていないことを特徴とするプレストレストコンクリート構造が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、必要な定着力を確保しつつ、定着部のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は本発明の一実施形態に係る定着構造の説明図、(B)は図1(A)の線I−Iに沿う断面図。
図2】(A)及び(B)は本発明の一実施形態に係る製造方法の説明図、(C)は図2(B)の部分拡大断面図。
図3】(A)乃至(C)は上記製造方法の説明図。
図4】(A)及び(B)は上記製造方法の説明図、(C)は鋼管の別の配置例を示す図。
図5】(A)及び(B)は別例の説明図。
図6】比較例として従来の定着構造例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1(A)は本発明の一実施形態に係る定着構造Aの説明図であり、本発明の定着構造を柱(不図示)と梁101〜103との柱梁接合部100に適用した例を平断面図にて模式的に示した図である。なお、柱や梁101〜103の主筋やせん断補強筋等は図示を省略している。図1(B)は図1(A)の線I−Iに沿う断面図であり、鋼管30の配置部位におけるシース管10の断面図である。
【0015】
定着構造Aは、PC(プレストレストコンクリート)梁部材である梁101の定着部を構成している。梁101にはシース管10がその長手方向の略全域に渡って埋設されており、梁101にプレストレスを導入するPC鋼撚線20の挿通空間を形成している。シース管10は例えばスパイラルシース管であり、梁101の端部に位置する定着部10aと、中間部10bと、を含む。本実施形態の場合、中間部10bから定着部10aへ向かって徐々に拡径しているが、シース管10の全体が同径であってもよい。
【0016】
本実施形態の場合、柱や梁101〜103並びに柱梁接合部100に高強度コンクリートを使用して一般的なPC部材より断面寸法を小さくした場合を想定しており、例えば、柱は600mm角程度、梁101の幅は400mm程度である。
【0017】
このようなコンクリート強度に見合うだけの高プレストレスレベルを想定して、1セットのシース管10内に挿入されるPC鋼撚線20はφ15.2mmのものを7本挿入した場合を想定しているが(1セットの緊張荷重は約1200 kN)、PC鋼撚線20の径や本数は設計内容に合わせて適宜選択される。なお、PC鋼撚線20の端部付近にはモルタル100’が後打ちされている。
【0018】
各PC鋼撚線20には、鋼製グリップとして鋼管30が事前圧着されており、かつ、シース管10内(定着部10a内)に位置している。なお、本実施形態では、鋼管30を事前圧着したが、PC鋼撚線に圧着可能な金物であればよく、鋼管に限られるわけではない。
【0019】
また、シース管10内には充填材40が充填されている。充填材40は、部材コンクリートの強度以上の強度を有するグラウト材が好ましい。近年では超高強度のグラウト材(Fc150)も開発、商品化されており、従来のFc30クラスからFc150まで様々なものがある。グラウト材の強度は設計条件や性能条件等に応じて適宜使い分けることができる。
【0020】
係る構成からなる本実施形態の定着構造Aでは、鋼管30と充填材40との支圧効果によって、シース管10内でPC鋼撚線20を定着することができる。その際、シース管10のフープテンション効果も期待できる。鋼管30はシース管10内に存在するため、対象コンクリート部材の外部に定着具が存在しない。
【0021】
このため、例えば、VSL工法のように定着具が埋設されるものに比べて定着部のコンパクト化を図れる。図6は比較例として、同様の事例における、VSL工法による従来の定着構造例の説明図である。図6の例では、柱梁接合部100内にスパイラル筋1、支圧板2、アンカーヘッド3及び鋼管スリーブ4が埋設されており、本実施形態と同等のかぶり厚を得るためには、柱梁接合部100を大型化する必要がでてくる。また、主筋等の配設スペースが小さいと共に、柱梁接合部100の後打ち部分100”もその範囲が大きくなっている。
【0022】
定着構造Aでは上述した通り、各PC鋼撚線20に事前圧着した鋼管30から、充填材40及びシース管10を介してコンクリートに応力伝達されるため、支圧板2等は最終的に不要となる。また、シース管10がスパイラル筋1の役割を担うため、これも必要はなく、定着部付近の配筋を簡略化できる。定着構造Aはこのように定着具が埋設されない点でコンパクト化が図れると共に、配筋も有利である。
【0023】
次に、例えば、PC鋼材と充填材との付着抵抗力のみを利用した従来技術と比べると、より短い定着長で必要な定着力を確保できる。
【0024】
こうして本実施形態では、必要な定着力を確保しつつ、定着部のコンパクト化を図ることができる。
【0025】
なお、本実施形態では、鋼管30と充填材40との支圧効果により、緊張力を部材(梁101)に導入しようとしているため、シース管10のうち、鋼管30が内部に存在する定着部10aには、PC鋼撚線20自体の膨張および鋼管30による充填材40の支圧応力が増大し、その付近のシース管10内面には周方向に圧縮応力が生じる。
【0026】
そこで、それをシース管10のフープテンションにより拘束し、鋼管30付近の充填材40の膨張を抑止する目的で、定着部10aの肉厚を中間部10bの肉厚よりも厚く(シース用の薄帯鋼を厚く)してもよい。或いは、シース管10から部材コンクリートへの応力伝達を確実にするために、定着部10aは中間部10bよりもコンクリートの付着性が高い外形(例えばの表面の凹凸が密或いは深い)有していてもよい。
【0027】
次に、定着構造Aを採用したPC部材の製造方法について図2図5を参照して説明する。
【0028】
図2(A)は、プレストレスを導入する対象であるコンクリート部材BにPC鋼撚線20を挿通した状態を示す。コンクリート部材BはPCa部材でも現場打ちの部材であってもよく、シース管10が埋設されて一端から他端へ貫通した孔が形成されている。コンクリート部材Bが所定の強度に達した後、この孔にPC鋼撚線20を挿通する。PC鋼撚線20の本数が多く、全長が長い場合には、ワイヤロープに、複数本束ねたPC鋼撚線20を連結し、手動あるいは電動ウインチで挿通作業を行ってもよい。
【0029】
PC鋼撚線20には鋼管30が事前圧着されており、シース管10内に位置している。鋼管30は、定着部となるコンクリート部材Bの端部に位置するように位置調整して配設される。
【0030】
次に、図2(B)に示すように、コンクリート部材Bの孔の端部に、流出防止材50を充填する。流出防止材50は、後にシース管10内に充填する充填材の漏れを防止するシール材等であり、例えば、発砲ウレタン等のように後工程で除去しやすいものであれば良い。また、コンクリート部材Bの両端面に、支圧板51を配設してPC鋼撚線20を挿通し、更に、支圧板51の外側にジャッキチェア52、アンカーヘッド53、緊張グリッパ54を順次配置する。緊張側にはグリッパ用チェア55も配置する。図2(C)を参照してアンカーヘッド53及び緊張グリッパ54について説明する。
【0031】
緊張グリッパ54は外形がテーパ形状で内径は円形断面の鋼製スリーブである。各PC鋼撚線20には、この緊張グリッパ54を挿通させる。アンカーヘッド53には各PC鋼撚線20が挿通する孔が形成されているが、この孔の一方端部は緊張グリッパ54が食い込むテーパ形状に形成されている。PC鋼撚線20の緊張を解放した際、PC鋼撚線20の収縮に伴って緊張グリッパ54はアンカーヘッド53の孔に引き込まれそうになるが、テーパによってPC鋼撚線20に対する圧縮圧着力が増大して、PC鋼撚線20の緊張状態が維持されることになる。なお、このようなPC鋼撚線20の緊張状態の維持機構はこれに限られず、様々な公知技術が採用可能である。
【0032】
グリッパ用チェア55の一方端面には緊張グリッパ54の配設スペースとなる凹部が形成されており、その周縁がアンカーヘッド53に当接する一方、凹部底面が緊張グリッパ54に当接するようになっている。
【0033】
次に、図3(A)に示すように、緊張側にジャッキ56を配置する。そして、PC鋼撚線20を緊張して、コンクリート部材Bにプレストレスを導入する(緊張工程)。ジャッキ56はPC鋼撚線20を緊張させると共にグリッパ用チェア55を介して緊張側の緊張グリッパ54をアンカーヘッド53側に押圧する。プレストレスの導入が終了するとジャッキ56を撤去する。上記の仕組みで、PC鋼撚線20の緊張状態及びコンクリート部材Bのプレストレス導入状態が維持される。
【0034】
次に、図3(B)に示すようにシース管10内に充填材40を充填する(充填工程)。充填剤40の強度が発現した後、PC鋼撚線20の緊張を解放して支圧板51等を撤去する作業に移る(解放工程)。まず、図3(C)に示すように、適当な部位(同図では線Lの位置)において、PC鋼撚線20を切断する。切断は、ガスやカッター等で行うことができる。PC鋼撚線20は、多数の細径素線で構成されており、それら細径素線を一本ずつ、或いは、数本ずつ切断することで、比較的緊張解放の衝撃が少なく、効率的に作業が可能である。その後、支圧板51、ジャッキチェア52、アンカーヘッド53を撤去する。
【0035】
次に、図4(A)に示すように、流出防止材50を撤去すると共にPC鋼撚線20の端部がコンクリート部材Bから突出しないように、これを切断する。最後に、図4(B)に示すように、PC鋼撚線20が挿通している孔の端部にモルタルB’を充填して完了である。
【0036】
このように本実施形態の製造方法では、支圧板51、ジャッキチェア52、アンカーヘッド53といった定着具を残存させる必要がなく、その使い回しも可能であり、施工コストの削減が図れる。また、緊張作業(図3(A))も1回で足りる。
【0037】
なお、本実施形態では、各鋼管30がシース管10の径方向に重なる位置(PC鋼撚線20の線方向で同じ位置)に配置したが、PC鋼撚線20の線方向にずらして配置してもよい。図4(C)はその一例を示す。このように鋼管30の位置をずらすことで、より小径のシース管10を採用可能となり、定着部のコンパクト化を更に図れる。なお、全ての鋼管30の位置を互いにずらす必要はなく、少なくとも隣接する鋼管30の位置がずれていればよい。
【0038】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、緊張側、固定側の双方の定着部において、鋼管30を配置したが、いずれか一方(例えば緊張側)のみに鋼管30を配置するようにしてもよい。例えば、定着長が長くとれる部位においては、鋼管30を設けずに、PC鋼撚線20と充填材30との付着抵抗力で定着力を確保するようにしてもよい。図5(A)及び図5(B)を参照してその一例について説明する。
【0039】
図5(A)は、複数の柱201間に複数の梁200が架設されている構造例において、複数の梁200全域に渡るPC鋼撚線20でプレストレスを導入している場合を想定している。符号P1は定着部を示しており、一連の梁200の最端部の2か所となっている。
【0040】
このように複数スパンに渡って緊張力を導入する構造例の場合、矢印で示すように柱梁の接合部において、不静定2次応力が大きくなり非効率となる場合がある。このような場合、図5(B)に示すように中間部で区切って、2つのグループ単位でPC鋼撚線20でプレストレスを導入することとし、グループ間の区間Sは後施工のRC造として接合する。これにより、不静定2次応力を低下できる。なお、柱201はスライド可能に仮止めしておき、プレストレスを導入後に固定することで、不静定2次応力を低下することも可能である。
【0041】
図5(B)の構造例の場合、定着部としては定着部P1、P2が存在するが、定着部P2は最寄りの柱201までの距離が長くなっている。そこで、定着部P1については鋼管30を用いた定着構造Aとし、定着部P2については鋼管30を用いず、PC鋼撚線20と充填材30との付着抵抗力で定着力を確保するようにしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6