特許第5947426号(P5947426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5947426色収差が低減されたランプレンズおよびそれを用いた車両用ランプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947426
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】色収差が低減されたランプレンズおよびそれを用いた車両用ランプ
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20160623BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20160623BHJP
   F21V 5/00 20150101ALI20160623BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20160623BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20160623BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20160623BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20160623BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20160623BHJP
【FI】
   F21S8/10 172
   F21S2/00 330
   F21V5/00 320
   F21V5/00 610
   F21V5/04 100
   F21V5/04 400
   F21V5/04 550
   G02B5/26
   G02B5/28
   F21W101:10
   F21Y115:10
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-139380(P2015-139380)
(22)【出願日】2015年7月13日
(65)【公開番号】特開2016-72228(P2016-72228A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2015年7月13日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0125555
(32)【優先日】2014年9月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513013942
【氏名又は名称】ヒュンダイ・モービス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】ハン ソン ヨン
【審査官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−62001(JP,A)
【文献】 特表2007−533080(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/028686(WO,A1)
【文献】 特開2009−181845(JP,A)
【文献】 特開2009−199938(JP,A)
【文献】 特開2013−143361(JP,A)
【文献】 特開2014−102984(JP,A)
【文献】 実用新案登録第2548029(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10−8/12
F21S 2/00
F21V 5/00−5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプレンズの表面に所定物質が薄膜でコーティングあるいは蒸着され、
前記薄膜は前記ランプレンズの中央を基準にランプレンズの上下にランプレンズの直径対比30%以内に形成されることを特徴とする色収差が低減されたランプレンズ。
【請求項2】
前記薄膜は、前記ランプレンズの片面あるいは両面にコーティングされることを特徴とする、請求項1に記載の色収差が低減されたランプレンズ。
【請求項3】
前記薄膜によって所定波長領域帯の反射率が増大することを特徴とする、請求項1に記載の色収差が低減されたランプレンズ。
【請求項4】
前記薄膜はブルースペクトルの反射率を増加させ、イエロースペクトルの透過率を増大させることを特徴とする、請求項3に記載の色収差が低減されたランプレンズ。
【請求項5】
前記薄膜は100nm以下の厚さでコーティングされることを特徴とする、請求項1に記載の色収差が低減されたランプレンズ。
【請求項6】
前記薄膜は単層あるいは多層でコーティングされることを特徴とする、請求項1に記載の色収差が低減されたランプレンズ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のランプレンズ、および
LED光源
を含む車両用ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色収差が低減されたランプレンズに関し、より詳しくは、レンズの表面に色収差を減らすために所定物質で薄膜がコーティングされたランプレンズおよびそれを用いた車両用ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクター型前照灯やダイレクトプロジェクション型前照灯のように、投影レンズを通して前方に照射される光によって明暗境界線(CUT OFF LINE)を含む所定の配光パターンを形成するように構成された車両用前照灯においては、投影レンズの色収差によって明暗境界線付近に色滲みが発生すると知られている。
【0003】
すなわち、図1に示すように、光源10から照射された光がレンズ20の上端部および下端部を通過する時に光の成分光は各々その波長が異なって屈折率が異なるようになるところ、長波長成分のレッド光(RED)は屈折率が小さく、短波長成分のブルー光(BLUE)は屈折率が大きく、中波長成分のグリーン光(GREEN)はレッド光とブルー光との間の屈折率を有することになり、各光の成分光に応じた屈折率の差によってレンズの上端部と下端部を通過した光は色滲みを誘発する。
【0004】
特に図2に示すように、最近多く適用されている合成樹脂(プラスチック)の投影レンズの場合、光学ガラス材質の投影レンズに比べて光の屈折および分散が大きいため、色収差に起因する色滲みが著しく現れる。
【0005】
また、最近、車両用ランプの光源として多く適用されているLEDの場合はブルースペクトルとイエロースペクトルに大きく分けられ、このような光波長特性を有したLED光がレンズを通過する場合に色収差の発生可能性を高めている。
前記のような色滲みは夜間に向かい側の車両の運転者に眩しさを誘発して危険な状況を招くことになる。
【0006】
したがって、レンズの色収差を低減するために様々な技術が開発されているところ、例えば、公開特許2014−0052645号(特許文献1)にはレンズ本体の内部に互いに隣り合うように配置された凸レンズと凹レンズに分離および非球面設計で色収差と球面収差を補正する第1分離空間が形成された構造の色収差が補正された車両用ヘッドライトが開示されている。
【0007】
また、公開特許2007−0004088号(特許文献2)の色収差を補正した投射型ランプ前照灯は、可視光を投射する光源、通常に前方の経路における光を配向させる前記光源付近の反射器、光を焦点に集まるビームパターンに反転して操縦するように前記前方経路に配置された光学レンズおよび近寄ってくる車両に対して防御するように前記焦点に集まったビームパターンに上部シェード領域を形成するために反射器およびレンズ間の前方経路の部分に配置され、前記焦点に集まったビームパターンに光−シェード境界を形成する上部エッジを有した不透明マスクであって、前記マスクは前記上部エッジの下方に投射された光のうち制限された量を通過させるように上部エッジ付近に転移領域を含めて投射された光の跡が焦点に集まったビームパターンの光−シェード境界上に導入されることによって前記光−シェード境界が視野内そして視野外に交差する時に近寄ってくる車両が光強度の急激な変化に直面しないようにする不透明マスクを含む構造が開示されている。
【0008】
また、レンズの表面にマイクロ光学技術を適用して色収差の発生を緩和する技術も提案されている。
【0009】
しかし、前記のような従来の車両のランプ用の色収差低減技術において、構造がより簡単で、色収差を効果的に低減して夜間運転の便宜性を提供し、交通事故の危険を減らせる方案が必要となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第2014-0052645号公報
【特許文献2】韓国公開特許第2007-0004088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記のようなことを考慮して導き出されたものであり、レンズの表面に所定材質の薄膜をコーティングして光がレンズを透過した後に光の各成分光の各波長に応じた反射率が異なるようにして色収差を効果的に低減した、色収差が低減されたランプレンズおよびそれを用いた車両用ランプを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施形態による色収差が低減されたランプレンズは、ランプレンズの表面に所定物質が薄膜でコーティングあるいは蒸着され、前記薄膜は前記ランプレンズの中央を基準にランプレンズの上下にランプレンズの直径対比30%以内に形成されることを特徴とする。
【0013】
前記薄膜は、前記ランプレンズの片面あるいは両面にコーティングされてもよい。
【0014】
前記薄膜によって所定波長領域帯の反射率が増大してもよい。
【0015】
前記薄膜はブルースペクトルの反射率を増加させ、イエロースペクトルの透過率を増大させてもよい。
【0016】
前記薄膜は100nm以下の厚さでコーティングされてもよい。
【0017】
前記薄膜は単層あるいは多層でコーティングされてもよい。
【0018】
本発明の他の実施形態による車両用ランプは、前記ランプレンズ、およびLED光源を含んでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態による色収差が低減されたランプレンズによれば、ランプレンズの中央部位において片面あるいは両面に所定化合物の薄膜が単層あるいは多層でコーティングされて色収差を効果的に低減することができる。
【0020】
すなわち、光源から照射されて前記薄膜を透過する光の特定領域帯の成分光の反射率を前記薄膜を通じて適切に調節して色収差を低減することができ、車両用ランプに適用する場合に向かい側の車両の運転者に眩しさを減らして夜間運転の便宜性を提供できるだけでなく、交通事故の危険を減らすことができる。
【0021】
発明の効果は以上で言及した効果に制限されず、言及していないまた他の効果は請求範囲の記載から当業者に明らかに理解できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術によるランプレンズを透過する光の色収差を説明するための図である。
図2】従来技術によるランプレンズが合成樹脂および光学ガラスから製作された場合のランプレンズを透過する光の波長に対する屈折率の対比比較グラフである。
図3】一般的な基板に薄膜がコーティングされた場合の屈折率を説明するための図である。
図4】様々な屈折率を有した基板(ランプレンズ)に屈折率1.38を有した物質をコーティングした場合の波長に応じた反射率を説明するグラフである。
図5】光学ガラス(BK7)の基板(ランプレンズ)にフッ化マグネシウム(MGF)がコーティングされた場合の光の波長に対する屈折率のグラフである。
図6】光学ガラス(BK7)の基板(ランプレンズ)に所定化合物の薄膜が3層でコーティングされた場合の光の波長に対する屈折率のグラフである。
図7】光学ガラス(BK7)の基板(ランプレンズ)に所定化合物の薄膜が4層でコーティングされた場合の光の波長に対する屈折率のグラフである。
図8】所定化合物の薄膜に対する屈折率と光の透過範囲の説明図である。
図9】本発明の実施形態によるランプレンズの薄膜コーティング範囲を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。先ず、各図面の構成要素に参照符号を付する際に同一の構成要素に対しては、たとえ他の図面上に表示される時にも可能な限り同一の符号を付するようにしていることに留意しなければならない。また、本発明を説明するにおいて、関連の公知構成または機能に関する具体的な説明が本発明の要旨を不要に濁す恐れがあると判断される場合にはその詳細な説明は省略する。また、以下では本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明の技術的思想はそれに限定または制限されず、当業者によって変形されて多様に実施できることは勿論である。
【0024】
本発明の実施形態による色収差が低減されたランプレンズは、ランプレンズの表面に特定物質を薄膜でコーティングしてランプレンズを通して光が透過する時に光の各成分光の反射率を適切に調節して色収差を低減することを特徴とする。
【0025】
特に波長の短いブルー波長領域帯の反射率を高めて色収差を低減することを特徴とする。
すなわち、車両用ランプにおいて不要な波長領域のブルー光の反射を増加させ、必要な波長領域のイエロー光の透過を増加させて色収差を低減することを特徴とする。
【0026】
図3を参照すれば、一般的に基板に所定物質を薄膜コーティングした場合に屈折率(R)は次の式1により決定される。
【0027】
R=(Ns−Nc/(Ns+Nc 式(1)
【0028】
ここで、Ncはコーティング膜の屈折率であり、Nsは基板の屈折率である。
【0029】
ランプレンズに所定物質を薄膜コーティングした場合にランプレンズを透過する光の各成分光の反射率を調整するためにコーティング膜の厚さを次の式2により決定する。
【0030】
NcT=δ/4 式(2)
【0031】
ここで、Ncはコーティング膜の屈折率であり、Tはコーティング膜の厚さであり、δは反射を最小にする光の波長である。
【0032】
一方、コーティング膜の屈折率とコーティング膜を透過する光の反射率の相関関係は、コーティング膜の屈折率が基板(レンズ)の屈折率より小さい場合は式(2)のコーティング膜の厚さ(T)を満たす光の波長において反射は最小となり、コーティング膜の屈折率が基板(レンズ)の屈折率より大きい場合は式(2)のコーティング膜の厚さ(T)を満たす光の波長において反射は最大となる。
【0033】
前記原理を利用してレンズを透過する光の特定波長領域帯の反射率を容易に調節することができる。
例えば、450nm波長領域帯の光の反射率を最大にし、550nm波長領域帯の光の反射率を最小に調節することができる。
【0034】
図4には様々な基板(ランプレンズ)に屈折率1.38を有した物質をコーティングした場合、様々な基板の屈折率(n)に対する反射率(Reflection)の相関関係が示されているところ、基板の屈折率(n)が小さいほど光の各波長(Wavelength)領域帯において反射率の差は低いが、基板の屈折率(n)が増加するほど光の各波長領域帯において反射率の差は増加し、特に550nmの波長領域帯において反射率が最小となる。
【0035】
図5には光学ガラス(BK7、n=1.47)でランプレンズを製作し、その表面にフッ化マグネシウム(MGF、屈折率n=1.38)薄膜を蒸着(コーティング)した場合に光の波長(Wavelength)に対する反射率の相関関係が示されているところ、550nmの波長領域帯の光の反射率が最小となることが分かる。
【0036】
図6には光学ガラス材質(BK7)のランプレンズに3層薄膜(酸化珪素(SiO)とフッ化マグネシウム(MGF))を蒸着した場合に光の波長(Wavelength)に対する反射率の相関関係が示されているところ、単層の薄膜コーティングに比べて反射率が大きく減少することが分かる。
【0037】
図7にはランプレンズに薄膜を多層((a)は4層、(b)は5層))でコーティングした場合の光の波長(Wavelength)に対する反射率の相関関係が示されているところ、屈折率が大きい物質と小さい物質を交互にコーティングして所望の波長領域帯の反射率を容易に調節することができる。
【0038】
図8は薄膜コーティング化合物の屈折率と使用可能な透過範囲を示す。屈折率を考慮して適宜なコーティング化合物を選定することができる。
【0039】
図9を参照すれば、ランプレンズ100のセンターライン(L)を基準に上下に直径対比30%(ランプレンズの中央部分)にかけて単層あるいは多層の薄膜をコーティングすることができ、ランプレンズの片面あるいは両面をコーティングすることができる。
【0040】
前記薄膜は適宜な厚さ、例えば、100nm以下の厚さでコーティングすることができる。
【0041】
以上の説明は本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者であれば、本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲内で様々な修正、変更および置換をすることができる。
【0042】
したがって、本発明に開示された実施形態および添付された図面は本発明の技術思想を限定するためのものでなく説明するためのものであり、このような実施形態および添付された図面によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は下記の請求範囲によって解釈しなければならず、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は本発明の権利範囲に含まれると解釈しなければならない。
【符号の説明】
【0043】
10 ・・・光源
20 ・・・ランプレンズ
100 ・・・ランプレンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9