特許第5947468号(P5947468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947468
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】ワイファイ接続損失予測のための方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/32 20090101AFI20160623BHJP
   H04W 36/14 20090101ALI20160623BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20160623BHJP
【FI】
   H04W36/32
   H04W36/14
   H04W84/12
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-546920(P2015-546920)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公表番号】特表2016-503979(P2016-503979A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】EP2013074681
(87)【国際公開番号】WO2014090564
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】12306590.6
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト,エマニュエル
【審査官】 ▲高▼橋 真之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−129001(JP,A)
【文献】 特開2010−4458(JP,A)
【文献】 特開2009−33682(JP,A)
【文献】 特開2000−197093(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0255856(US,A1)
【文献】 特開2012−114854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル・デバイスと、複数のワイヤレス短距離アクセス・ポイント(A31〜A44)のうちの1つのワイヤレス短距離アクセス・ポイント(A31〜A44)との間の接続性の損失を予測するための方法であって、
前記モバイル・デバイスが接続性の損失なしに連続的に関連付けられたアクセス・ポイント(A31〜A44)の識別子と、これらの関連付けの各々の持続時間とを収集するステップであって、その結果、前記モバイル・デバイスが接続性の損失なしに連続的に関連付けられた前記アクセス・ポイントのカバレッジ・エリアの内部のモバイル・デバイスの移動に対応する複数の経路を再生成し、各経路は、接続性が開始されるルート・アクセス・ポイントと、前記接続性が失われるデッド・エンド・アクセス・ポイントとを備えている、ステップと、
前記モバイル・デバイスが現在関連付けられている現在のアクセス・ポイントを検出するステップと、
前記現在のアクセス・ポイントを備えている前記経路を識別するステップと、
前記現在のアクセス・ポイントから前記ルート・アクセス・ポイントへの、または前記識別された経路の各々の前記デッド・エンド・アクセス・ポイントへの前記識別された経路の各々をたどるときに、前記接続性を失うリスクを計算するステップであって、第1のアクセス・ポイントから第2のアクセス・ポイントへの経路をたどるときに接続性を失うリスクは、前記第1のアクセス・ポイントから前記第2のアクセス・ポイントへの前記経路に含まれる前記アクセス・ポイントに対応する関連付けの前記収集された持続時間の合計の逆数である、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記モバイル・デバイスが現在関連付けられる前記アクセス・ポイントによって提供される前記接続性を使用した前記モバイル・デバイスにおける少なくとも1つのアプリケーションを識別するステップと、
前記識別されたアプリケーションについて、それより上では前記接続性が失われると考えられるしきい値を決定するステップと、
計算されたリスクが、前記決定されたしきい値よりも大きいときに、前記識別されたアプリケーションのハンドオーバをトリガするステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記しきい値は、前記識別されたアプリケーションによって使用される接続を別のワイヤレス短距離アクセス・ポイントへハンドオーバするために必要とされる時間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記しきい値は、前記識別されたアプリケーションによって使用される接続を長距離通信ネットワークへハンドオーバするために必要とされる時間である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記計算されたリスクは、事前定義されたパラメータによって重み付けされる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
モバイル・デバイスと、複数のワイヤレス短距離アクセス・ポイント(A31〜A44)のうちの1つのワイヤレス短距離アクセス・ポイント(A31〜A44)との間の接続性の損失を予測するためのシステムであって、
前記モバイル・デバイスが接続性の損失なしに連続的に関連付けられたアクセス・ポイント(A31〜A44)の識別子と、これらの関連付けの各々の持続時間とを収集するための手段であって、その結果、前記モバイル・デバイスが接続性の損失なしに連続的に関連付けられた前記アクセス・ポイントのカバレッジ・エリアの内部のモバイル・デバイスの移動に対応する複数の経路を再生成し、各経路は、接続性が開始されるルート・アクセス・ポイントと、前記接続性が失われるデッド・エンド・アクセス・ポイントとを備えている、手段と、
前記モバイル・デバイスが現在関連付けられている現在のアクセス・ポイントを検出するための手段と、
前記現在のアクセス・ポイントを備えている前記経路を識別するための手段と、
前記現在のアクセス・ポイントから前記ルート・アクセス・ポイントへの、または前記識別された経路の各々の前記デッド・エンド・アクセス・ポイントへの前記識別された経路の各々をたどるときに、前記接続性を失うリスクを計算するための手段であって、第1のアクセス・ポイントから第2のアクセス・ポイントへの経路をたどるときに接続性を失うリスクは、前記第1のアクセス・ポイントから前記第2のアクセス・ポイントへの前記経路に含まれる前記アクセス・ポイントに対応する関連付けの前記収集された持続時間の合計の逆数である、手段と
を備えているシステム。
【請求項7】
前記モバイル・デバイスが現在関連付けられる前記アクセス・ポイントによって提供される前記接続性を使用した前記モバイル・デバイスにおける少なくとも1つのアプリケーションを識別するための手段と、
前記識別されたアプリケーションについて、それより上では前記接続性が失われると考えられるしきい値を決定するための手段と、
計算されたリスクが、前記決定されたしきい値よりも大きいときに、前記識別されたアプリケーションのハンドオーバをトリガするための手段と
をさらに備えている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記識別されたアプリケーションは、切断の影響を受けやすいアプリケーションである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記経路は、サイト・マップから取得される、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項10】
前記ワイヤレス短距離アクセス・ポイントは、ワイファイ・アクセス・ポイントである、請求項6乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
コンピュータの処理装置の上で実施され、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法のステップに対応する命令を実行するためのコード・セクションを含むコンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短距離のワイヤレス・ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN:Wireless Local Area Network)接続性に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイファイ(WiFi)(IEEE802.11とも称されるワイヤレス・フィデリティを表す)は、今や、通信ランドスケープの中に完全に統合され、主要なワイヤレス・ローカル・エリア・ネットワーキング(WLAN:Wireless Local Area Networking)規格になっている。約50Mbpsまでの理論的スループットを有する数百メートルまでのカバレッジを提供する異なるバージョン(すなわち、802.11a/b/g/n)の形で開発されて、ワイファイ・ネットワークは、ビジネス環境、公共環境及び居住環境を含めた様々な環境にわたってばらまかれた非常に多数のワイファイ・アクセス・ポイント(AP:Access Points)を用いて広く展開されている。
【0003】
ワイファイ・アクセス・ポイントの範囲内でローミングする間、ワイファイ・インターフェースを装備したモバイル・デバイスは、遅延の制約を受けた通信サービス(ボイス・オーバーIP、IPTV、ストリーミングなど)を含む異なる通信サービスのための広域ネットワーク(インターネットやイントラネットなど)に対して、このアクセス・ポイントを通して、常に接続されたままでいることもある。
【0004】
しかしながら、モバイル・デバイスが、このワイファイ・アクセス・ポイントのカバレッジを離れるとすぐに、中断が発生し、ワイファイ・ネットワーク接続の損失を引き起こす。それゆえに、モビリティ中のシームレスな接続を保持するためのハンドオーバ技法が提案され、その結果、移動する間、ワイファイ・ユーザは、ワイファイ・アクセス・ポイントを経由して、彼らの進行中の通信において実質的な中断を経験することはない。
【0005】
それにもかかわらず、異なる問題解決手法が、ワイファイ・アクセス・ポイントの間のハンドオーバ・プロセスを改善するために提案されているが、ハンドオーバ・トリガリングは、多くの場合に、無線強度測定値(信号対干渉雑音比(Signal to Interference and Noise Ratio)SINRや受信信号強度(Received Signal Strength)RSSなど)に基づいている。実際に、無線強度レベルが、事前定義されたしきい値よりも低くなるときに、移動局は、別のワイファイ・アクセス・ポイントへとローミングするか、またはよりよい接続性を提供する別のネットワーク(例えば、LTE)へと現在のワイファイ接続を切り替えるかのいずれかとすることができる。
【0006】
無線強度測定値が、十分に正確でなく、また一般にハードウェア・プラットフォームに依存するので、そのような問題解決手法は、堅牢性を欠いている。さらに、無線強度レベルは、減衰およびフェージングにより(特に、複数経路の伝搬のために)急速に減少する可能性があり、移動局が現在のワイファイ接続を、それを中断せずに別の無線ネットワークの上に移動させるのに十分な時間を有さないというリスクを伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、既存のネットワーク・ストリームを保存し、またはよりよい接続性を提案する別のネットワークへと移動させるすべての必要なアクションを行うために、移動局と、ワイファイ・インフラストラクチャとの間のワイファイ接続損失を予測する方法およびアルゴリズムを提案することである。
【0008】
本発明の別の目的は、シームレスなモビリティのためにイントラ・ワイファイ・アクセス・ポイント・ハンドオーバのための方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、イントラ・ワイファイ・ハンドオーバのための効率的なトリガを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、遅延と、システム全体のスループットとの観点から利得を提供するイントラ・ワイファイ・アクセス・ポイント・ハンドオーバのためのメトリックを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
様々な実施形態は、上記で説明される1つまたは複数の問題の影響に対処することを対象としている。以下は、実施形態についての簡略化された概要を提示して、様々な実施形態のいくつかの態様についての基本的な理解を提供している。この概要は、これらの様々な実施形態についての網羅的な概説ではない。この概要は、不可欠な要素のうちの必須の手段を識別すること、またはこれらの様々な実施形態の範囲を示すことを意図してはいない。その唯一の目的は、後で考察されるより詳細な説明に対する前置きとして、簡略化された形態でいくつかの概念を提示することである。
【0012】
様々な実施形態は、モバイル・デバイスと、複数のワイヤレス短距離アクセス・ポイントのうちの1つのワイヤレス短距離アクセス・ポイントとの間の接続性の損失を予測するための方法であって、
− モバイル・デバイスが接続性の損失なしに連続的に関連付けられたアクセス・ポイントの識別子と、これらの関連付けの各々の持続時間とを収集するステップであって、その結果、前記モバイル・デバイスが接続性の損失なしに連続的に関連付けられた前記アクセス・ポイントのカバレッジ・エリアの内部のモバイル・デバイスの移動に対応する複数の経路を再生成し、各経路は、接続性が開始されるルート・アクセス・ポイントと、前記接続性が失われるデッド・エンド・アクセス・ポイントとを備えている、収集するステップと、
− モバイル・デバイスが現在関連付けられる現在のアクセス・ポイントを検出するステップと、
− 前記現在のアクセス・ポイントを備えている経路を識別するステップと、
− 前記現在のアクセス・ポイントからルート・アクセス・ポイントへの、または前記識別された経路の各々のデッド・エンド・アクセス・ポイントへの前記識別された経路の各々をたどるときに接続性を失うリスクを計算するステップであって、第1のアクセス・ポイントから第2のアクセス・ポイントへの経路をたどるときに接続性を失うリスクは、前記第1のアクセス・ポイントから前記第2のアクセス・ポイントへの前記経路に含まれるアクセス・ポイントに対応する関連付けの収集された持続時間の合計の逆数である、計算するステップと
を含む方法に関する。
【0013】
広範な一態様によれば、上記の方法は、
− 前記モバイル・デバイスが現在関連付けられるアクセス・ポイントによって提供される接続性を使用したモバイル・デバイスにおける少なくともアプリケーションの識別ステップと、
− 識別されたアプリケーションについて、それより上では接続性が失われると考えられるしきい値の値の決定ステップと、
− 計算されたリスクが、決定されたしきい値の値よりも大きいときに、識別されたアプリケーションのハンドオーバのトリガするステップと
をさらに含む。
【0014】
別の広範な態様によれば、しきい値の値は、別のワイヤレス短距離アクセス・ポイントに対して、識別されたアプリケーションによって使用される接続をハンドオーバするために必要とされる時間である。
【0015】
別の広範な態様によれば、しきい値の値は、長距離通信ネットワークに対して、識別されたアプリケーションによって使用される接続をハンドオーバするために必要とされる時間である。
【0016】
様々な実施形態は、モバイル・デバイスと、複数のそのようなワイヤレス・アクセス・ポイントのうちのワイヤレス短距離アクセス・ポイントとの間の接続性の損失を予測するためのシステムであって、
− モバイル・デバイスが接続性の損失なしに連続的に関連付けられたアクセス・ポイントの識別子と、これらの関連付けの各々の持続時間とを収集するための手段であって、その結果、前記モバイル・デバイスが接続性の損失なしに連続的に関連付けられた前記アクセス・ポイントのカバレッジ・エリアの内部のモバイル・デバイスの移動に対応する複数の経路を再生成し、各経路は、接続性が開始されるルート・アクセス・ポイントと、前記接続性が失われるデッド・エンド・アクセス・ポイントとを備えている、収集するための手段と、
− モバイル・デバイスが現在関連付けられる現在のアクセス・ポイントを検出するための手段と、
− 前記現在のアクセス・ポイントを備えている経路を識別するための手段と、
− 前記現在のアクセス・ポイントからルート・アクセス・ポイントへの、または前記識別された経路の各々のデッド・エンド・アクセス・ポイントへの前記識別された経路の各々をたどるときに接続性を失うリスクを計算するための手段であって、第1のアクセス・ポイントから第2のアクセス・ポイントへの経路をたどるときに接続性を失うリスクは、前記第1のアクセス・ポイントから前記第2のアクセス・ポイントへの前記経路に含まれるアクセス・ポイントに対応する関連付けの収集された持続時間の合計の逆数である、計算するための手段と
を含むシステムに関する。
【0017】
広範な一態様によれば、上記のシステムは、
− 前記モバイル・デバイスが現在関連付けられるアクセス・ポイントによって提供される接続性を使用したモバイル・デバイスにおける少なくともアプリケーションを識別するための手段と、
− 識別されたアプリケーションについて、それより上では接続性が失われると考えられるしきい値の値を決定するための手段と、
− 計算されたリスクが、決定されたしきい値の値よりも大きいときに、識別されたアプリケーションのハンドオーバをトリガするための手段と
をさらに含む。
【0018】
別の広範な態様によれば、経路は、サイト・マップから取得される。
【0019】
別の広範な態様によれば、ワイヤレス短距離アクセス・ポイントは、ワイファイ・アクセス・ポイントである。
【0020】
様々な実施形態は、さらに、上記の方法を実行するためのコンピュータ・プログラム製品に関する。
【0021】
様々な実施形態は、様々な修正形態と、代替的な形態との影響を受けやすいが、その特定の実施形態が、例として図面の中に示されている。しかしながら、特定の実施形態の本明細書における説明は、様々な実施形態を開示される特定の形態だけに限定することを意図してはいないことを理解すべきである。
【0022】
そのような実際の任意の実施形態の開発において、実装形態特有の決定が、システムに関連した制約条件との準拠やビジネスに関連した制約条件との準拠など、開発者の特定の目標を達成するために行われるべきであることが、もちろん理解される可能性がある。そのような開発努力は、時間がかかってしまう可能性があるが、それにもかかわらず、本開示の恩恵を受ける当業者のための通常の理解になり得ることが、理解されるであろう。
【0023】
本発明の目的と、利点と、他の特徴とは、以下の開示と、特許請求の範囲とからより明らかになるであろう。好ましい実施形態についての以下の非限定的な説明は、添付の図面を参照して例示の目的のためだけに与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】様々な実施形態を展開するための環境を示す概略図である。
図2】様々な実施形態による、ハンドオーバ・トリガリングのための機能コンポーネントを示す概略図である。
図3】代表的な環境における様々な実施形態についての実装形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照すると、環境10の中に展開される複数のワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10が、示されている。これらのワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10は、住居もしくはビジネスのローカル・エリア接続性、および/または公共もしくは商用のホットスポット接続性のための任意のアクセス・ノードとすることができる。
【0026】
環境10の実例となる例として、人は、会社、大学、ホテル、空港、ショッピング・モール、ダウンタウン・ロケーション、歩行者用の通り、カルチャー・センタ、地域、あるいは複数のワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10によって少なくとも部分的にカバーされ得るより一般的な任意のエリアまたは建物に言及することができる。
【0027】
ワイファイ可能なモバイル・デバイス2を提供されるユーザ1は、環境10において、ビデオ・ストリーミング、インスタント・メッセージング、ウェブ・ブラウジング、ファイル転送プロトコル(ftp)、メッセージング(メール)、MMoIP(音声、データ、ビデオなどのマルチメディア・オーバーIP(Multimedia over IP))、アップローディング/ダウンローディング・ファイルなど、切断耐性のあるアプリケーションと切断の影響を受けやすいアプリケーションとの両方を含む異なる通信サービスから恩恵を受けることができる。
【0028】
「モバイル・デバイス」により、ここでは、ワイファイ・インターフェースを通して、ワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10にこのユーザ機器を自動的に接続することを許可する、ワイファイ・インターフェースと、ワイファイ接続マネージャとが提供される任意のユーザ機器を意味している。ラップトップ・コンピュータ、スマートフォン、モバイル電話、または携帯型個人情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)は、そのようなモバイル・デバイス2の例である。
【0029】
ワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10を通して少なくともアクティブな接続を保持しながら、ユーザ1が、環境10の中を移動するときに、この接続は、ユーザ1がそれらのそれぞれのカバレッジ・エリアを通して移動するワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10の間でハンドオフされる。その結果、環境10の中で移動しながら、ワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10のカバレッジ・エリアの内部のユーザ移動に対応する「経路」は、ユーザが関連付けられている(すなわち、それに接続されている)ワイファイ・アクセス・ポイントを表すノードから作られていることになる。これらの経路は、クロス・ロード・ノードにおいて互いに交差する。
【0030】
例えば、ユーザ1が、ワイファイ・アクセス・ポイントA10、A9、A7、A6の近くに連続的に移動し、またこれらのワイファイ・アクセス・ポイントを通して、ユーザが、それぞれ、ウェブ・ブラウジング・サービスを保持している(または単に、必ずしもアプリケーションによって使用されているとは限らずに、確立されたワイファイ接続を有している)場合、そのときには環境10の中のユーザ移動に対応する経路A10〜A9〜A7〜A6が、作られる。これらのアクセス・ポイントA10、A9、A7、A6は、接続のために手動的に、または自動的に選択されることもある。
【0031】
用語「移動する(move)」は、時間的に連続しているか、または離散的であるかを問わず、「鉄道の駅からオフィスへと歩くこと、オフィスにおいて働くこと、オフィスに近いレストランにランチのために行くこと、3階のフロアまでエレベータに乗ること、鉄道の駅まで戻ること」など、環境10の中のユーザ1のロケーションにおける任意の変化を含むように広範に理解されるべきである。
【0032】
ワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10のうちのいくつかは、カバレッジ・ホールに隣接して、または環境10の境界(環境10の入り口/出口の近くなど)に位置していることもあり、その結果、それらは、ユーザが環境10の内部でたどることができる経路の中の「デッド・エンド」アクセス・ポイントに対応することに注意すべきである。それに対して、他のアクセス・ポイントA1〜A10は、「安全な場所」(接続の観点から)に対応しており、ここでは、ユーザ1が、ワイファイ接続損失のリスクなしに(家やオフィスの中など)長い時間、滞在することが、検出されている。
【0033】
それに応じて、モバイル・デバイス2が、接続性の損失なしに連続的に関連付けられたアクセス・ポイントA1〜A10の識別子と、これらの関連付けの各々の持続時間とは、収集され、その結果、モバイル・デバイス2が、接続性の損失なしに連続的に関連付けられたアクセス・ポイントA1〜A10のカバレッジ・エリアの内部のモバイル・デバイス2の移動に対応する複数の経路を再生成しており、各経路は、接続性が開始されるルート・アクセス・ポイントと、この接続性が失われるデッド・エンド・アクセス・ポイントとを備えている。それゆえに、環境10の内部のユーザ1がたどる経路と、これらの経路のノード(すなわち、アクセス・ポイント)の各々に対するモバイル・デバイス2の関連付けの持続時間とは、収集され、また登録される。
【0034】
環境10の中のユーザ1が以前にたどった経路(すなわち、収集された経路)のトポロジは、
− ワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10の接続を検出するワイファイ接続性マネージャによって自動的に、また漸進的にのいずれかで作られ、また記憶され、
− サーバからダウンロードされ、または
− ユーザによって手動的に構成されることさえもある。
【0035】
有利なことに、経路のトポロジが、モバイル・デバイス2によって自動的に作られる場合、これらの経路は、モバイル・デバイスの無線性能と整合しており、またユーザの動きに対して整合している。
【0036】
さらに、ユーザは、環境10の中で移動しているが、ワイファイ接続性マネージャは、ユーザ1がたどる経路と、モバイル・デバイス2の上で実行されるアプリケーションによって使用される進行中のネットワーク・ストリームのタイプとを絶えず、または間欠的に検査して、少なくとも進行中のネットワーク・ストリームの損失を開始する前に、別のワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10に向かって(あるいは、代わりに、3Gワイヤレス・ネットワークや4Gワイヤレス・ネットワークなど、別の無線アクセス・ネットワークに向かって)、ハンドオーバ・プロシージャをトリガすべきかどうかを決定するように構成されている。
【0037】
次いで、現在の経路の各ノードにおいて(言い換えれば、モバイル・デバイス2が、現在、関連付けられる各ワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10において、このワイファイ・アクセス・ポイントは、進行中の経路のうちの最初のノード、中間のノード、または最後のノードとすることができる)、ワイファイ接続性マネージャは、新しいワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10が検出される場合に、経路をアップデートし、またはたどるべき最大の確率を有する経路を推定するように構成されている。
【0038】
その目的を達成するために、モバイル・デバイス2が、現在関連付けられる現在のアクセス・ポイントは、検出され、また現在のアクセス・ポイントを備えている経路が、収集された経路から識別される。次いで、現在のアクセス・ポイントからルート・アクセス・ポイントへの、または識別された経路の各々についてのデッド・エンド・アクセス・ポイントへの識別された経路の各々をたどるときに接続性を失うリスクが、計算される。第1のアクセス・ポイントから第2のアクセス・ポイントへの経路をたどるときに接続性を失うリスクは、第1のアクセス・ポイントから第2のアクセス・ポイントへのこの経路に含まれるアクセス・ポイントに対応する関連付けの収集された持続時間の合計の逆数である。
【0039】
言い換えれば、環境10の中を移動しながら、ユーザ1がたどる現在の経路の各ノードにおいて、ワイファイ接続性マネージャは、失われるべき現在の接続性のリスクを算出する。このリスクは、モバイル・デバイス2が、関連付けられる現在のワイファイ・アクセス・ポイントからルート・ワイファイ・アクセス・ポイントへと、または現在のワイファイ・アクセス・ノードを備えている各々収集された経路のデッド・エンド・ワイファイ・アクセス・ポイントへと(すなわち、接続性が、開始され、または接続損失が、発生させられる場合のユーザ1が以前にたどった経路における最後のワイファイ・アクセス・ポイント、および最初のワイファイ・アクセス・ポイント)進むために必要な遅延に依存する。関連付けの持続時間の合計によって与えられるこの遅延は、RSSIの変動で評価される可能性のあるユーザの移動速度によって除算された、経路の中のワイファイ・アクセス・ポイント(すなわち、ノード)の間の距離に基づいて算出されることもある。さらに、この遅延は、以前の経路中に測定される遅延の手段を使用して算出されることもある。例えば、アクセス・ポイントA1からアクセス・ポイントA2へと進むために必要な遅延は、
− アクセス・ポイントA1からアクセス・ポイントA2へと進む遅延、および
− アクセス・ポイントA2からアクセス・ポイントA1へと進む(すなわち、逆の経路)遅延
の数値計算手段とすることができる。
【0040】
リスクは、モバイル・デバイス2と、ワイファイ・アクセス・ポイントA1〜A10との間の確立されたワイファイ接続を失う確率を推定する動的値である。このリスクは、各々の現在の経路について算出され、また現在のユーザ・ロケーションと速度とに依存する。値は、動的であり、また各々の新しいワイファイ・アクセス・ポイントの関連付けにおいて算出される。
【0041】
一実施形態においては、計算された瞬間的なリスクは、1日のうちの時間帯と、週日(例えば、公休日であるか否か)とに依存することもある事前定義された外部パラメータによって重み付けされる。
【0042】
各算出の後に、現在のユーザ・ロケーションと速度とから、各経路のリスクは、しきい値の値と比較される。リスクが、このしきい値以上になる場合に、進行中のネットワーク・ストリームのハンドオーバが、トリガされることになる。このしきい値は、動的であり、またワイファイ接続を現在利用しているアプリケーションに依存する。このしきい値は、接続損失と、これらのアプリケーションに対する接続損失の影響(すなわち、ワイファイ切断耐性アプリケーションであるか否か)との場合に、これらのアプリケーションを適切に取り扱うために必要な時間に基づいて算出される。
【0043】
一実施形態においては、リアル・タイム通信アプリケーションが、実行されていない場合、しきい値は、無限大である。これは、例えば、ブラウジング・アプリケーションの場合である。それに対して、実行されているアプリケーションが、音声通信やビデオ通信などのリアル・タイム・アプリケーションである場合、このしきい値は、使用可能な(データ・セルラー方式ネットワークなどの)場合には別の無線接続の上でセッションを転送し、またはそれらのセッション(例えば、音声/ビデオ・メッセージング・システムの上のリダイレクション(redirection))を適切に終了するために必要な時間に対応する可能性がある。
【0044】
実行されているアプリケーションが、一時的なネットワーク接続損失によってあまり深く影響を受けない場合には、しきい値は、セッションを再確立するために必要な遅延に、ユーザが、サービスが使用可能ではないことを受け入れる間の遅延を加えたものとして推定される可能性がある。例えば、「インスタント・メッセージング」アプリケーションについてのしきい値は、10分の1秒(a tenth of seconds)とすることができる。
【0045】
算出されたリスクが、しきい値よりも大きくなるときに、ワイファイ接続性マネージャは、適切な決定を行うことにより、ワイファイ接続損失を予測する。これらの決定は、
− ユーザに警告し、
− ハンドオーバ・プロシージャをトリガし、すなわち、現在のメディア・ストリームを別の、またより安全な無線接続性へと切り替え、その結果、それらが失われないようになり、
− この接続損失によって損傷を受ける可能性のあるアプリケーションを停止し、延期し、またはハイバネートする。
【0046】
それに応じて、しきい値の現在の値は、対応する現在のしきい値の値が適用されるべきアクティブなアプリケーションと、それらの進行中のネットワーク・ストリームを検出することにより推定される。各々のアクティブなアプリケーションのために、または各々の進行中のネットワーク・ストリーム(アプリケーションは、インスタント・メッセージング・アプリケーションなどの、すなわち、テキスト、オーディオ、ビデオなどの1つよりも多いネットワーク・ストリームを有することができる)のために、しきい値は、アプリケーションを損なうことになるハンドオーバ遅延の逆数に対応する。例えば、ワイファイ・アクセス・ポイントと、セルラー方式ネットワークとの間のウェブ・ブラウジング・サービスのハンドオーバが、5秒よりも短い間しか続かない(D_ブラウジング_ハンドオーバ=5)場合、そのときにはしきい値は、T_ブラウジング=1/5になるであろう。より一般的には、人は、
− D_MMoIP_ハンドオーバ=1秒を有することができ、そのときにはIPアプリケーションT_MMoIPの上のマルチメディアについてのしきい値は、1に等しく、
− D_ビデオ_ストリーミング_ハンドオーバ=2秒を有することができ、そのときにはビデオ・ストリーミング・アプリケーションT_ビデオ_ストリーミングについてのしきい値は、0,5に等しい。この値は、バッファ長に依存することもあり、
− D_チャット_ハンドオーバ=5秒を有することができ、そのときにはチャット・アプリケーションT_チャットについてのしきい値は、0,2に等しく、
− D_メール_ハンドオーバ=10秒を有することができ、そのときにはメール・アプリケーションT_メールについてのしきい値は、0,1に等しい。
【0047】
一実施形態においては、アプリケーションのしきい値は、デフォルト値に基づいて、かつ/または実際のハンドオーバ中に行われる測定値に基づいて計算される。デフォルト値は、一般的なユーザ経験に対応する。
【0048】
図2は、ワイファイ接続性マネージャ30についての実例となる一実施形態を示すものである。実際に、ワイファイ接続性マネージャ30は、ワイファイ接続損失を予測し、また別のワイファイ・アクセス・ポイント、または別の通信ネットワークに向かって、ハンドオーバを連続的にトリガするように構成されている。その目的を達成するために、ワイファイ接続性マネージャ30は、
− しきい値算出が、現在のアクティブなストリームに基づいている、それより上でハンドオーバがトリガされるべきしきい値を推定することを担当するしきい値推定器22(これらのアクティブなストリームの検出は、アクティブなソケットを識別するネットワーク・レベルで、またはアクティブなストリームを示すためにアプリケーションによって使用されるAPIを用いたモバイル・デバイス・レベルで行われることもある。代わりに、しきい値推定器は、モバイル・デバイスのOSフレームワーク・ファシリティを使用して、アクティブなストリームを検出し、またはストリームの中のQoSマーカを使用して、それらのリアル・タイム依存性を識別し、またそれに応じて対応するしきい値の値を決定する。)と、
− ワイファイ接続性を失うリスクをリアル・タイムに算出することを担当するリスク算出器24と、
− 現在推定されたしきい値と算出されたリスクとを比較し、またその後に適切な決定を行うように構成されたハンドオーバ・デシジョン・メーカー23(ひとたび、計算されたリスクが、推定されたしきい値よりも大きくなった後に、ハンドオーバ・デシジョン・メーカー23は、ワイファイ・レイヤ26を経由してワイファイ・アクセス・ポイントに向かって、またはセルラー方式PHY/MACレイヤ27を経由してセルラー方式モバイル通信ネットワークに向かってハンドオーバを実行するためのハンドオーバ管理モジュール28をトリガする。)と、
− ワイファイ・レイヤ26を通して、ユーザがたどっている経路を収集すること、および検出することを担当する経路検出器25と
を備えている。
【0049】
もちろん、上記で説明されたワイファイ接続性マネージャ30は、モバイル・デバイスの異なるモジュールとの他のインターフェースを含むことができる。
【0050】
一実施形態においては、経路検出器25は、ユーザによって提供される経路を供給され、かつ/またはサイト・マップからダウンロードされる。
【0051】
一実施形態においては、しきい値推定器22は、ワイファイ接続性を経由して、進行中のネットワーク・ストリーム(アップローディング/ダウンローディング、ウェブ・ブラウジング、ビデオ・ストリーミングなど)を検出するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を埋め込む。次いで、アクティブなアプリケーション当たりの、またはより一般的には進行中のネットワーク・ストリーム211〜213当たりのしきい値の値(例えば、MMoIP、チャット、ビデオ・ストリーミング、ブラウジング、メール、ソーシャル・ネットワーク)が、与えられる。しきい値推定器22は、さらに、しきい値の値を指定する能力をユーザに提供することができることに注意すべきである。
【0052】
次に図3を参照すると、上記の開示の実例となる一実施形態が、どのようにしてリスクとしきい値とが、算出され得るかと、どのようにして切断の影響を受けやすいアプリケーションが、取り扱われ得るかとを教示するために提示される。
【0053】
図3の例においては、環境は、複数のワイファイ・アクセス・ポイントA31〜A44を備えている建物30である。
【0054】
ユーザが、建物30に入り、また経路P1(破線)に沿ってユーザのオフィス31へと歩き、そこで、ユーザは、仕事を開始し、ユーザのモバイル・デバイスは、それが、A41の無線カバレッジの下に入るとすぐに、自動的にA41に関連付けられる。ワイファイ接続性マネージャは、(モバイル・デバイスを切断された状態から接続された状態へと変更して)ルート・アクセス・ポイントA41から開始される新しい経路P1を記録する。このワイファイ・アクセス・ポイントA41は、そのBSSID(基本サービス・セットID(Basic Service Set ID))を有する経路P1の中で識別される。その後に、タイマーは、ワイファイ接続性が、この関連付けの持続時間を測定するために確立されるとすぐに、装備される。ユーザは、ユーザのオフィス31へと歩く。モバイル・デバイスは、ハンドオーバによって知られているプロセスに従って、アクセス・ポイントA31と、A32と、A33とを通して、連続的にワイファイ接続を保持する。スマートフォンが、A41の関連付けを失って、A31を通した、よりよい接続性を確立するときに、A31は、A41の関連付けを用いて上記で初期化される経路に追加される。タイマーが、停止させられ、またA31に到達するために必要な遅延に対応する値D1_31が、経路の内部に記憶される(すなわち、A41に対する関連付けの持続時間)。ワイファイ接続性マネージャは、今や、経路P1を取るときに、A41からA31へと進むことは、およそD1_31かかることを知っている。ユーザが、ユーザのオフィス31にいるときに、経路P1は、遅延[D1_31、D1_32、D1_33]を有するA41〜A31〜A32〜A33から成る。
【0055】
ある種の期間(例えば、1時間または2時間)中に、ユーザの電子メールをチェックした後に、ユーザは、ユーザのオフィス31から会議室32へと進む。これは、遅延[D2_34、D2_35]を有するアクセス・ポイントA33〜A34〜A35から成る経路P2(点線)を作り出す。ワイファイ・アクセス・ポイントA33に対する接続の期間が、非常に長い(すなわち、数時間)ので、A33は、「安全な場所」として考えられる。逆方向の経路P2r(すなわち、会議室32からオフィス31への)は、自動的に作り出される。P2rは、対応する遅延[D2_35、D2_34]を有するA35〜A34〜A33である。
【0056】
経路P2(それぞれ、P2r)は、A33(それぞれ、A35)によってカバーされる「安全な場所」から開始される単一の経路、または新しい経路をもたらす経路P1(それぞれ、P2)の連続性とすることができる。
【0057】
例えば、2時間の会議の後に、ユーザは、ユーザのオフィス31に戻ってくる。会議室32と、オフィス31との間のワイファイ接続性を保証するアクセス・ポイントが、同じA35〜A34〜A33であるので、これは、新しい経路を作り出さない。この新しい値は、実際に、A34からA33へと歩くのに必要な時間に対応するのに対して、第1の値は、ユーザが、ユーザのオフィス31に到着した瞬間と、ユーザが、ユーザのオフィス31を離れた瞬間との間で経過した時間に対応するので、A34と、A33との間の遅延を使用して、D2_34をアップデートする。同じ理由のために、ステップ2において測定される遅延D2_35は、およそ会議の持続時間に対応する新しい値でアップデートされる。しかし、この長い値は、A35が、「安全な場所」として考えられ得ることを示している。
【0058】
ユーザは、建物30を離れて、ワイファイ・アクセス・ポイントA38の無線カバレッジ(破線および点線)の下の出口を通してランチに行く。これは、対応する遅延[D3_34、D3_35、D3_36、D3_37、D3_38、D3_38損失]を有する新しい経路P3 A33〜A34〜A35〜A36〜A37〜A38を作り出す。A34と、A35との間で測定される新しい遅延D3_35(すなわち、A34に対する関連付けの持続時間)は、D2_35と比較され、また両方の経路は、新しい値が、以前の値に比べてかなり小さくもなく、また大きくもない場合に、平均の遅延でアップデートされる。D3_34は、経路P2において測定される遅延、すなわち、D2_34である。最後の遅延D3_38損失は、モバイル・デバイスが、デッド・エンド・アクセス・ポイントA38に関連付けられる時刻と、ワイファイ接続が、失われる時刻との間で測定される遅延である。逆方向の経路P3rが、すなわち、遅延[D3_38、D3_37、D3_36、D3_35、D3_34]を有するP3r=A38〜A37〜A36〜A35〜A34〜A33が、自動的に作り出される。A38とのワイファイ接続性が失われるときに、このアクセス・ポイントは、デッド・エンド・アクセス・ポイントとして考えられる。この接続性が失われる1日の時間帯(すなわち、A38に対する関連付けの持続時間)は、ワイファイ接続性マネージャによって登録される。これを使用して、ユーザの習慣に基づいてリスクを重み付けすることができる。
【0059】
ユーザは、ランチから帰ってくる。ユーザは、同じドアを通して建物30に入り、また経路P3に沿ってユーザのオフィス31へと歩く。A38とA37との間の遅延と、A37とA36との間の遅延と、A36とA35との間の遅延と、A35とA34との間の遅延と、A34とA33との間の遅延とは、上記と同じアルゴリズムに従ってアップデートされ、すなわち、新しい値が、以前の値に比べてかなり大きい場合、それは、考慮に入れられない。新しい値が、以前の値よりもかなり小さい場合、新しい値は、以前の値を置換する。そうでない場合には、新しい値は、以前の値と、現在の値との平均である。
【0060】
リスク計算の実例となる例として、ユーザは、クライアントと、通信しているが、鉄道の駅へと行って、列車に乗る必要がある。この使用の場合のまさに初めにおいて、ユーザは、ユーザのオフィス31の中に座っている。コールは、ビデオ・セッションであり、またワイファイ・アクセス・ポイントA33によって提供されるワイファイ接続の上でSIPにおいて確立されている。
【0061】
その時には、ユーザがたどることができる3つの経路が、すなわち、P1r(P1の逆方向の経路)と、P2と、P3とが、存在している。
【0062】
一実施形態においては、これらの経路の各々についてのリスクは、次のように、算出される。すなわち、
− P1rをたどるときのリスクR1rは、1/(D1_41損失+D1_33+D1_32+D1_31)によって与えられる。D1_41損失は、A41に接続されるときにそれは、まだ接続損失を経験していないので、この場合には、ヌルである。ここで、D1_31は、D1_41損失を含んでいる。
− P2をたどるときのリスクR2は、P2の終わりにデッド・エンド・アクセス・ポイントが、存在していないので、ヌルである。そのときには、R2は、0に等しい。
− P3をたどるときのリスクR3は、1/(D3_38損失+D3_37+D3_36+D3_35+D3_34)によって与えられる。
【0063】
これらの3つの値は、現在実行されている接続ベースのアプリケーション211〜213に基づいて算出されるしきい値と比較される。それに応じて、これらのしきい値は、進行中のストリームの特性を考慮に入れる。実際に、各ストリームのために必要とされるQoSは、ハンドオーバしきい値に対して影響を与える。リアル・タイム・ストリームは、データ損失を回避する早期の、また迅速なハンドオーバを必要とするが、ブラウジングなど、他のストリームは、切断耐性がある。例えば、しきい値Tは、1/D_ビデオ_ハンドオーバに近い可能性があり、ここではD_ビデオ_ハンドオーバは、ワイファイ・ネットワークからセルラー方式データ・ネットワークへと現在のビデオ・セッションを切り替えるために必要な遅延である(D_ビデオ_ハンドオーバは、例えば、約1秒である)。
【0064】
一実施形態においては、アプリケーション・タイプ当たりのこれらのしきい値についての初期値またはデフォルト値が、選択され、その結果、すべてのリスクは、これらの初期のしきい値の値より低くなる。
【0065】
第1のステップにおいて、ユーザが、建物の出口に向かって移動し、またモバイル・デバイスが、ワイファイ・アクセス・ポイントA32に関連付けられるときに、ユーザが移動している速度を表す瞬間的な経路Pi=A3〜A2と、関連する遅延Di_32とが、作り出される。この瞬間的な経路Piは、すべての履歴の経路(すなわち、P1、P1r、P2、P2r、P3、P3r)のうちのP1rに含まれるにすぎないので、そのときにはこの経路P1rは、たどられる可能性が最も高いものである。
【0066】
第2のステップにおいて、新しいリスクは、今や、R1r=1/(D1_41損失+D1_32+D1_31)であり、また進行中のネットワーク・ストリーム(例えば、ビデオのストリーム)に対してしきい値Tと比較される。Tは、ビデオ・コールが、依然としてモバイル・デバイスの上で実行されているので、変化していない。ユーザが、以前に算出される平均値よりも速く移動しているか、またはゆっくり移動しているかどうかを推定するために、測定されたDi_31は、D1_32と比較される可能性があり、それによってリスクR1rの精度を改善している。
【0067】
第3のステップにおいて、モバイル・デバイスは、ワイファイ・アクセス・ポイントA31に関連付けられる。経路P1のトポロジによれば、ワイファイ接続性が失われる前に、ただ1つのアクセス・ポイントが、残されているだけである。リスクは、アクセス・ポイントA31に関連付けられるときに、R1r=1/(D1_41損失+D1_31)であり、このリスクは、急速に大きくなる。その結果として、モバイル・デバイスが、ワイファイ・アクセス・ポイントA31に関連付けられるときに、ワイファイ接続性マネージャは、この関連付け以来の遅延Diを測定するタイマーを開始させる。リスクは、以下の式、すなわち、R1r=1/(D1_41損失+(D1_31−Di_a))に従って算出される。
【0068】
第4のステップにおいて、現在のリスクが、しきい値T以上になるときに、ワイファイ接続性マネージャは、セルラー方式データ・ネットワークの上で切断の影響を受けやすいアプリケーション211〜213(ビデオ・コールなど)のハンドオーバをトリガする。これは、端末が、依然としてワイファイ・アクセス・ポイントA31を通して接続されている間に、またはデッド・エンド・ワイファイ・アクセス・ポイントA41に接続されるときのいずれかに起こる可能性がある(A41に関連付けられるときに、R1rは、最初に、第3のステップの式を使用して算出され、またタイマーは、P1r算出アップデートのためにD1_41損失を測定するためにA41の関連付けにおいて開始される)。
【0069】
代わりに、リスク・レベルは、環境の内部のロケーションに依存して、ユーザによって構成されることもある。
【0070】
一実施形態においては、環境10の内部のモバイル・デバイスの移動に関連した情報は、ロケーション・ベースのアプリケーションと、「移動ベースの」アプリケーションとに相互に関連付けられ、またハンドオーバだけではない。「移動ベースの」アプリケーションは、ユーザ・ロケーションに依存するだけではなく、ユーザが歩いている方向と、ユーザがそのために使用している速度とにも依存するアプリケーションである。
【0071】
有利なことに、上記で説明された方法およびシステムは、ハンドオーバについてのトリガリング・ポイントのセキュリティ保護された決定を可能にし、任意のマルチメディア通信損失を防止し(すなわち、これらのストリームを失う前にマルチメディア・ストリームのハンドオーバをトリガしており)、またマルチメディア・セッションの連続性(マルチメディア・アプリケーション・プロバイダにとって特に興味のある)を保証している。さらに、提案されたシステムは、それが、進行中のアプリケーションの特性(切断の影響を受けやすい、または切断耐性のある)を考慮に入れるので、正確なハンドオーバの決定を保証している。
【0072】
上記で説明された方法およびシステムは、ワイファイの場合と同じやり方で、どのような他のワイヤレスLAN規格の場合にも適用され得ることに注意すべきである。
図1
図2
図3