(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルは、一般的に、光ファイバを内部に収納したスロット溝を有するスロットコアと、このスロットコアの周囲を被覆するシースとから構成されている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、細径、かつ、高密度な構造の光ファイバケーブルとして、
図7に示すように、光ファイバ素線の集合コア101を内部に収納した1つのスロット溝102を備えた1溝スロットコア(Cスロットコア)103と、この1溝スロットコア103の周囲を被覆するシース104とから構成された光ファイバケーブルが記載されている。1溝スロットコア103のスロット溝102は、1溝スロットコア103の一側部に開口して直線状に形成された溝である。この光ファイバケーブルにおいては、スロット溝102に対応する部分でのシース104の肉厚が、他の部分でのそれよりも厚くなっており、偏心シース構造が採られている。
【0004】
この光ファイバケーブルにおいては、機械的特性を満足するため、光ファイバ素線の集合コア101の周囲を、テープ体105によって覆っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述したような光ファイバケーブルにおいては、所定の止水特性を実現する必要がある。すなわち、このような光ファイバケーブルにおいては、一端側からシース内に浸水があったとしても、この水が他端側に流動しないようにする必要がある。
【0007】
しかしながら、1溝スロットコア103を用いて構成された光ファイバケーブルにおいては、所定の止水特性を実現することが困難な場合がある。すなわち、このような光ファイバケーブルにおいて、所定の止水特性の実現のためには、テープ体105の内側に集合コア101とともに止水材を入れることが考えられる。しかし、テープ体105の内側に止水材を入れても、1溝スロットコア103とテープ体105との間の間隙部に水が流れる現象が起こり、十分な止水特性を実現することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、光ファイバの集合コアを収納したシースを有して構成された光ファイバケーブルであって、十分な機械的特性を満足しつつ、所定の止水特性を実現することができる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る光ファイバケーブルは、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0010】
〔構成1〕
複数の光ファイバ素線からなる集合コアと、光ファイバ素線とともに集合コアを構成する止水材糸と、ケーブル長手方向に延在され集合コアを覆っているテープ体と、集合コア及び前記テープ体を被覆する円筒状のシースとを備え、テープ体は、
このテープ体に複数の開口部が形成されていることによって確保されている透水性を有し、テープ体の内側に浸水があった場合には止水材糸が溶解し、溶解した止水材が、テープ体を越えて、シース内に流出することを特徴とするものである。
【0011】
〔構成2〕
複数の光ファイバ素線からなる集合コアと、光ファイバ素線とともに集合コアを構成する止水材糸と、ケーブル長手方向に延在され集合コアを覆っているテープ体と、集合コア及びテープ体を被覆する円筒状のシースとを備え、テープ体は、このテープ体が多孔質材料からなることによって確保されている透水性を有し、テープ体の内側に浸水があった場合には止水材糸が溶解し、溶解した止水材が、テープ体を越えて、シース内に流出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る光ファイバケーブルは、構成1を有することにより、テープ体は、透水性を有し、テープ体の内側に浸水があった場合には止水材糸が溶解し、溶解した止水材が、テープ体を越えて、シース内に流出するので、テープ体の周囲の空隙に水分が存在しても、流出した止水材が水分を吸収し
て膨潤し、水の流れを堰き止める。
【0015】
この光ファイバケーブルにおいては
、テープ体の透水性は、このテープ体に複数の開口部を形成することによって確保することができる。
【0016】
この光ファイバケーブルにおいては、構成
2のように、テープ体の透水性は、このテープ体を多孔質材料から形成することによって確保することができる。
【0018】
すなわち、本発明は、光ファイバの集合コアを収納したシースを有して構成された光ファイバケーブルであって、十分な機械的特性を満足しつつ、所定の止水特性を実現することができる光ファイバケーブルを提供することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
【0022】
本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルは、
図1に示すように、光ファイバ素線11からなる集合コア1と、光ファイバ素線11とともに集合コア1を構成する止水材糸(吸水ヤーン)12と、ケーブル長手方向に延在され集合コア1を覆っているテープ体2と、ケーブル長手方向に沿う直線状のスロット溝3を有するスロットコア4とを備える。
【0023】
光ファイバ素線11は、光ファイバの上に紫外線硬化樹脂を被覆したものである。この光ファイバ素線11は、平行に複数本が並べられて紫外線硬化樹脂で被覆されて光ファイバテープ心線を構成していてもよい。また、光ファイバテープ心線は、ケーブル長手方向について一定間隔ごとに間欠的に光ファイバ素線11同士が接着固定されている間欠固定テープ心線であってもよい。この実施の形態では、複数本の光ファイバ素線11からなる集合コア1をテープ体2で覆ってスロット溝3内に収納している。
【0024】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの集合コアの構成を示す斜視図である。
【0025】
集合コア1は、
図2に示すように、複数の光ファイバ素線11と複数の止水材糸12とが撚り合わされて構成されている。止水材糸12は、例えば、アクリレート系繊維及びポリエステル繊維よりなる繊維束を、ポリエステルフィラメント糸で束ねたものである。この止水材糸12は、吸水性を有し、吸水すると
、膨潤する。また、止水材糸12は、吸水するとともに水分中に溶解し、水分とともに流動しつつ
、膨潤する。この集合コア1は、テープ体2により覆われている。
【0026】
テープ体2としては、プラスチックのテープを用いることができる。このテープ体2は、この光ファイバケーブルの機械的特性を確保するために使用されている。このテープ体2は、スロット溝3内において集合コア1を覆っている。このテープ体2は、透水性を有する。すなわち、テープ体2の内側に浸水があった場合には止水材糸12が溶解し、溶解した止水材が、テープ体2を越えて、シース5内、すなわち、テープ体2とスロット溝3の内面部との間に流出するようになっている。
【0027】
スロットコア4は、
図1に示すように、集合コア1をスロット溝3内に収納して保持する保持部材であり、スロット溝3に、テープ体2に覆われた集合コア1を収納して保持する。スロットコア4は、外周が略円筒形状に形成されている。スロット溝3は、円筒状に形成され、スロットコア4の中心線からずれた位置に中心線を有している。
【0028】
このスロットコア4は、金型に樹脂を流して成形する押出し成形により形成され、長手方向に垂直な断面形状がC形の形状となっている。このスロットコア4は、肉厚が均一ではなく、スロット溝3の開口部が形成された部位から、スロットコア4の外周に沿って、開口部とは反対側の部位へ行くにしたがって徐々にその肉厚が厚くなっている。すなわち、スロットコア4は、スロット溝3の底部に対応する部位からスロット溝3の開口部が形成された部位に行くにしたがって、徐々にその肉厚が薄くなっている。
【0029】
そして、この光ファイバケーブルは、スロット溝3の開口部を含めてスロットコア4全体を被覆する円筒状のシース5を備える。シース5は、円筒状のチューブとして形成されている。かかるシース5は、集合コア1を収納したスロットコア4の周囲全体をポリエチレン樹脂で被覆するようにして形成する押し出し成形により形成される。なお、シース5の成形時には、スロット溝3内にシース用ポリエチレン樹脂が入り込まないようにするため、押さえテープによりスロット溝3の開口部を塞ぐようにしてもよい。
【0030】
このようにして形成されるシース5は、スロット溝3の開口部と対向する部位(
図1における上部)で最も肉厚とされ、スロットコア4の外周に沿って、底部へ行くに従って徐々に肉薄となり、スロットコア4の最底部に隣接する部位である最底部において最も肉薄となるように成形されている。
【0031】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルのテープ体の構成を示す斜視図である。
【0032】
テープ体2の透水性は、
図3に示すように、このテープ体2に複数の開口部を形成することによって確保することができる。この開口部は、
図3中の(a)に示すように、透孔13であってもよいし、
図3中の(b)に示すように、スリット14であってもよい。
【0033】
〔第2の実施の形態〕
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
【0034】
本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルは、
図4に示すように、スロットコア4を有しない構成としてもよい。この光ファイバケーブルは、集合コア1を合成樹脂材料からなる外被(シース)5によって被覆している。
【0035】
集合コア1は、複数の光ファイバ心線11と複数の止水材糸12とが撚り合わされて構成されている。止水材糸12は、前述した第1の実施の形態におけるものと同様のものであり、吸水性を有し、吸水すると
、膨潤する。また、止水材糸12は、吸水するとともに水分中に溶解し、水分とともに流動しつつ
、膨潤する。この集合コア1は、テープ体2により覆われている。
【0036】
テープ体2としては、プラスチックのテープを用いることができる。このテープ体2は、透水性を有する。すなわち、テープ体2の内側に浸水があった場合には止水材糸12が溶解し、溶解した止水材が、テープ体2を越えて、シース5内に流出するようになっている。
【0037】
外被5は、熱可塑性合成樹脂材料からなる。外被5には、集合コア1を挟んで互いに対峙する位置に、金属線等からなる2本の抗張力体(テンションメンバ)7,7が内包されている。これら抗張力体7,7は、集合コア1に平行に配置されている。
【0038】
外被5には、光ファイバ心線1を挟んで互いに対峙する両側面部に、平行な溝状の一対の引き裂き紐8,8が内包されている。外被5は、これら引き裂き紐8,8を両側に引き離すことにより、容易に引き裂くことが可能となっている。端末部分の外被5を引き裂くことにより、集合コア1の端末部分を外部に引き出す、いわゆる口出し作業を行うことにより、他の光ファイバケーブルの光ファイバ心線との接続を行うことができる。
【0039】
〔第3の実施の形態〕
テープ体2の透水性は、このテープ体2を多孔質材料から形成することによっても確保することができる。
【0040】
〔第4の実施の形態〕
テープ体2の透水性は、このテープ体2が集合コア1の外周の全面を覆わずに、集合コア1の外周の一部を外方に露出させるようにすることによっても確保することができる。
【実施例】
【0041】
〔実施例1〕
本発明の実施例1として、集合コア1の外径を約5mmとして、前述の第1の実施の形態において示した構成の光ファイバケーブルを作成した。テープ体2は、直径約1mmの透孔13が50mm間隔で形成され、透水性を有するものを用いた。
【0042】
また、比較例として、テープ体2として透水性を有しないものを用いて、同様の構成を有する光ファイバケーブルを作成した。
【0043】
図5は、本発明の実施例1に係る光ファイバケーブルにおける光ファイバの伝送損失量を示すグラフである。
【0044】
実施例1の光ファイバケーブルの伝送損失の温度特性は、
図5に示すように、良好であることが確認された。
【0045】
図6は、光ファイバケーブルの止水特性の測定方法を示す斜視図である。
【0046】
実施例1及び比較例の光ファイバケーブルについて、止水特性の測定を行った。測定方法は、
図6に示すように、両端が切断されシース5内の構成物の断面が外方に臨んだ光ファイバケーブルを被検体として、この光ファイバケーブルの一端部よりシース5内に注水し、注水した水がシース5内を流動して、この水が光ファイバケーブルの他端部にまで達するか否かによって判断する。
【0047】
被検体の光ファイバケーブルの長さは、40mとする。シース5内への注水は、人工海水を用いて、常に深さ1mの水圧が光ファイバケーブルの一端部に加わるようにする。すなわち、光ファイバケーブルの一端部上に深さ1mの人工海水の水柱が存在する状態に容器を構成し、シース5内への浸水や蒸発によって水柱の深さが減った場合には、人工海水を補充して、常に1mの深さを保つようにする。この状態で、10日後において、他端部より人工海水の流出が無いものを合格とし、10日未満で他端部より人工海水が流出したものを不合格とする。止水特性の測定結果を表1に示す。
【表1】
【0048】
実施例1の光ファイバケーブルは、合格となり、比較例の光ファイバケーブルは、測定開始後5日目に他端部より人工海水が流出し、不合格となった。
【0049】
実施例1の光ファイバケーブルにおいては、止水材がテープ体2内の水分に溶解して、透孔13を通って、テープ体2とスロット溝3との間や、スロットコア4とシース5との間に流出し
て膨潤し、これらの部分に流れる水を堰き止めたと考えられる。
【0050】
一方、比較例の光ファイバケーブルにおいては、止水材がテープ体2内の水分に溶解しても、透孔13がないため、テープ体2とスロット溝3との間や、スロットコア4とシース5との間には流出しないので、これらの部分に流れる水が堰き止められなかったと考えられる。
【0051】
〔実施例2〕
本発明の実施例2として、集合コア1の外径を約5mmとして、光ファイバケーブルを作成した。テープ体2は、長さ約5mmのスリット14が50mm間隔で形成され、透水性を有するものを用いた。
【0052】
また、比較例として、テープ体2として透水性を有しないものを用いて、同様の構成を有する光ファイバケーブルを作成した。
【0053】
この実施例2の光ファイバケーブルについて、実施例1と同様の測定を行ったところ、実施例1の光ファイバケーブルと同様に、伝送損失の温度特性が良好であることが確認され、また、止水特性の測定についても合格となった。比較例の光ファイバケーブルは、不合格となった。
【0054】
実施例2の光ファイバケーブルにおいては、止水材がテープ体2内の水分に溶解して、スリット14を通って、テープ体2とスロット溝3との間や、スロットコア4とシース5との間に流出し
て膨潤し、これらの部分に流れる水を堰き止めたと考えられる。