(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
オンオフ駆動する複数のスイッチング素子を有し、前記複数のスイッチング素子の駆動によって電流制御を実行するとともに、定常点灯モードでは入力直流電圧を連続的な矩形波交流電圧に変換し、再始動モードでは入力直流電圧を間欠的な矩形波交流電圧に変換する電圧変換回路と、
前記再始動モードにおいて前記電圧変換回路の出力電圧により高圧パルスを発生するパルス発生回路と、
前記パルス発生回路に接続された放電灯が点灯状態か否かを判別する点灯判別手段と、
前記複数のスイッチング素子のオンオフ駆動を制御する制御手段と、
を備えた放電灯点灯装置において、
前記点灯判別手段は、放電灯への印加電圧を検出電圧として検出可能であって、
前記制御手段は、前記検出電圧に応じて定常点灯モードにおける放電灯への印加電圧を最適な矩形波周波数に調整し、
さらに前記制御手段は、矩形波交流電圧の供給時間T1を計時する第1タイマー部と、
矩形波交流電圧の休止時間T2を計時する第2タイマー部と、
供給時間T1にわたる矩形波交流電圧の出力を1サイクルとして当該サイクル回数T3をカウントするカウンタと、
休止時間T2よりも長い休止時間T4を計時する第3タイマー部と、
前記点灯判別手段による判別結果に応じて動作する再始動モード実行部と、を有し、
前記再始動モード実行部は、前記点灯判別手段が点灯状態でないと判別したときに、休止時間ごとの供給時間T1の間に矩形波交流電圧を出力させて、矩形波交流電圧に重畳した高圧パルスを放電灯に印加させるとともに、
前記第1タイマー部による供給時間T1の計時終了の際、カウントされたサイクル回数T3が所定回数に達していない場合は、前記電圧変換回路を前記第2タイマー部による休止時間T2だけ休止させて、サイクル回数T3が所定回数に達している場合は、前記電圧変換回路を前記第3タイマー部による長い休止時間T4だけ休止させて、前記カウンタのサイクル回数T3をリセットすることを特徴とする放電灯点灯装置。
【背景技術】
【0002】
放電灯点灯装置は、その始動時および再始動時に、放電開始すなわちランプ電極間の絶縁破壊を行うための高圧パルス電圧を発生する。また、点灯後にはランプ電極間の電圧の急激な低下に伴う過剰電流の導通を抑制する役目を担っている。さらに、最近では放電灯のチラツキなどを防止するために高周波点灯や矩形波点灯が汎用されている。これらの点灯方式を実現するために半導体スイッチング素子によって形成されたPWM降圧回路やブリッジ回路などを備えた、いわゆる電子式安定器が汎用され、所望の周期で交番する矩形波交流電圧をランプに供給するようになっている。
【0003】
定常点灯中にランプの立ち消えなどが生じた場合、放電灯点灯装置は、再始動用の高圧パルスをランプに印加する再始動モードに移行する。ここで、従来の点灯装置のおける高圧パルスの発生の仕組みを簡単に説明する。まず、代表的な点灯装置は、整流回路、力率改善回路、PWM降圧回路、ブリッジ回路、および、スタータ回路を備えている。PWM降圧回路からは電流制御された直流電圧が出力され、ブリッジ回路によって矩形波電圧に変換される。定常点灯モードでは、PWM降圧回路の出力は点灯電圧に設定され、ブリッジ回路により所定の周波数(例えば、数10〜数100Hz)で交番する矩形波交流電圧に変換されて、
図4(A)に示すような点灯電圧がランプに供給される。
【0004】
再始動モードでは、
図4(B)のようにPWM降圧回路の出力は、無負荷電圧に設定され、ブリッジ回路により間欠的な矩形波交流電圧に変換されてランプに供給される。つまり、矩形波交流を印加する時間(供給時間)と、ランプに電圧を印加しない時間(休止時間)とを交互に繰り返す。無負荷電圧は、点灯電圧よりも高く設定されているため、スタータ回路にて高圧パルスを誘起する。そして、供給時間内で連続供給される矩形波のそれぞれに重畳した高圧パルス電圧が次々にランプに印加される。一方、休止時間には、無負荷電圧は供給されない。このように、定常点灯モードから再始動モードへの移行によって、ランプの供給電圧は変更される。また、再始動モードでの供給時間における矩形波交流電圧の周期は、定常点灯モードでの矩形波交流の周期と同じ(数10〜数100Hz)である。
【0005】
一般的に、ランプの発光管内部の温度が未だ高い状態では、高圧パルスを繰り返し印加しても電極間の放電が生じないため、発光管内部の温度が下がるまで待たなければならない。また、放電したとしても点灯状態(アーク放電)に至らないで、矩形波電圧の供給時間の間、放電しない状態が続く場合がある。また、点灯に至らないで、グロー放電が継続することもあり、電極を損傷してしまう可能性がある。そのため、従来は、
図4(B)に示したように、供給時間において点灯状態に至らない場合は、矩形波を所定時間だけ休止させる。この休止時間の後、再び矩形波交流電圧を供給する。この間欠的な矩形波交流電圧に重畳する高圧パルスをランプに印加するようにしていた。
【0006】
これに関連する放電灯点灯装置が、例えば、特許文献1に示されている。この点灯装置も同様に、供給時間に矩形波交流電圧をランプに印加する。矩形波交流電圧が反転する毎に、スタータ回路による高圧パルス電圧が発生し、矩形波交流電圧に重畳した高圧パルスが繰り返してランプに印加される。また、矩形波交流電圧の供給時間の後、休止時間を設けている点も共通する。いずれの方法においても、供給時間と休止時間による間欠的な矩形波交流電圧の出力を所定期間継続して、点灯に至った場合は定常点灯モードに移行し、繰り返し点灯しない状態が所定時間継続した場合は、再始動モードを停止させていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の点灯装置では、間欠的な矩形波交流電圧に重畳した高圧パルスをランプに印加させることによって、ランプの再始動性の向上を図っていたが、ランプの種類や再始動の際の発光管内部の状態、パルス発生の回路方式などによっては、良好な再始動性が十分に得られない場合があった。
【0009】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は、ランプの種類や再始動の際の発光管内部の状態、パルス発生の回路方式などに左右されることなく、確実に再始動性を発揮することができる放電灯点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために本発明にかかる放電灯点灯装置は、
オンオフ駆動する複数のスイッチング素子を有し、前記複数のスイッチング素子の駆動によって電流制御を実行するとともに、定常点灯モードでは入力直流電圧を連続的な矩形波交流電圧に変換し、再始動モードでは入力直流電圧を間欠的な矩形波交流電圧に変換する電圧変換回路と、
前記再始動モードにおいて前記電圧変換回路の出力電圧により高圧パルスを発生するパルス発生回路と、
前記パルス発生回路に接続された放電灯が点灯状態か否かを判別する点灯判別手段と、
前記複数のスイッチング素子のオンオフ駆動を制御する制御手段と、を備える。
【0011】
ここで、制御手段は、矩形波交流電圧の供給時間T
1を計時する第1タイマー部と、
矩形波交流電圧の休止時間T
2を計時する第2タイマー部と、
供給時間T
1にわたる矩形波交流電圧の出力を1サイクルとして当該サイクル回数T
3をカウントするカウンタと、
休止時間T
2よりも長い休止時間T
4を計時する第3タイマー部と、
前記点灯判別手段による判別結果に応じて動作する再始動モード実行部と、を有する。
【0012】
そして、前記再始動モード実行部は、前記点灯判別手段が点灯状態でないと判別したときに、休止時間ごとの供給時間T
1の間に矩形波交流電圧を出力させて、矩形波交流電圧に重畳した高圧パルスを放電灯に印加させるとともに、
前記第1タイマー部による供給時間T
1の計時終了の際、カウントされたサイクル回数T
3が所定回数に達していない場合は、前記電圧変換回路を前記第2タイマーによる休止時間T
2だけ休止させて、サイクル回数T
3が所定回数に達している場合は、前記電圧変換回路を前記第3タイマーによる長い休止時間T
4だけ休止させて、前記カウンタのサイクル回数T
3をリセットすることを特徴とする。
【0013】
また、矩形波交流電圧の供給時間T
1は、1秒以上、1分以下に設定され、前記パルス発生回路は、供給される矩形波交流電圧の各矩形波に高圧パルスを重畳させることが好適である。
【0014】
また、矩形波交流電圧の長い休止時間T
4は、3分以上、10分以内に設定されていることが好適である。
また、前記カウンタによってカウントされるサイクル回数T
3は、2回以上、10回以下に設定されていることが好適である。
【0015】
また、前記制御手段は、間欠的な矩形波交流電圧を供給する再始動モードの実行時間T
5を計時する第4タイマー部を有し、前記再始動モード実行部は、計時される実行時間T
5が所定時間に達した場合に再始動モードを終了することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明にかかる放電灯点灯装置では、休止時間T
2ごとの供給時間T
1の間に矩形波交流電圧を繰り返し出力する。そして、供給時間T
1にわたる出力を1サイクルとした場合に、そのサイクル回数T
3が所定回数に達したら、休止時間T
2よりも長い休止時間T
4の間、出力を停止させることにした。短い休止時間T
2ごとの間欠的な矩形波交流電圧の供給ではランプがスムーズに再始動しない場合でも、所定のサイクル回数T
3ごとに長い休止時間T
4を掛けてランプを再始動しやすい状態にすることで、スムーズな再始動に導きやすくなる。そして、再始動モードの実行時間内に、ランプを確実に点灯させることができる。その結果、本発明の放電灯点灯装置が、ランプの種類や再始動の際の発光管内部の状態、パルス発生の回路方式などに左右されることなく、確実にランプを再始動させることができる。
特に、ランプの発光管内部の温度が高い状態では、高圧パルスにより瞬間的に放電しても点灯状態(アーク放電)が維持されず放電がすぐに止んでしまったり、矩形波の供給時間の間、グロー放電が継続してしまったりすることが多く、ランプに掛かる負担が大きかった。これに対して、本発明のように長い休止時間T
4を設けて、次の高圧パルスによるランプの再始動性を高めたので、再始動モードにおけるランプの負担を大幅に軽減することができる。
【0017】
また、3分以上の休止時間T
4を掛ければ、ランプが再始動可能な状態に至りやすい。一方、10分以上の長い休止時間T
4を掛けてしまうと、再始動までの所要時間が長くなるばかりで、再始動性を向上させる効果が小さくなってしまう。そこで、矩形波交流電圧の長い休止時間T
4は、3分以上、10分以内に設定することが好ましい。
また、再始動において仮に最初の高圧パルス印加で点灯が失敗しても、短い休止時間T
2毎に速やかに2回目以降の高圧パルスを印加することによって点灯が成功することもある。そこで、最初の高圧パルスを短い休止時間T
2毎に少なくとも2回以上印加させた後に、長い休止時間T
4を掛けることにした。一方、点灯に至らない場合に、短い休止時間T
2毎の高圧パルスを繰り返し印加するのはランプへの負担が大きくなり、また、グロー放電が継続して生じることを許してしまい、電極保護の面から、サイクルの回数T
3を10回以下に設定することにした。このように、カウンタによってカウントされるサイクル回数T
3の上限を2回から10回の範囲に設定することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は一実施形態にかかる放電灯点灯装置10の概略構成を示している。放電灯点灯装置(単に安定器とも呼ばれる。)10の主な構成回路は、整流回路14、力率改善回路16、PWM降圧回路18、ブリッジ回路20、および、スタータ回路(パルス発生回路に相当する。)46である。このうち、PWM高圧回路18とブリッジ回路20を組合せた回路が、本発明の電圧変換回路に相当する。
【0020】
整流回路14は、商用交流電源12の交流電流を整流し直流化する。力率改善回路16は、アクティブフィルタとも呼ばれ、整流回路14の出力する低電圧直流電流を十分に昇圧して出力直流電圧を一定に制御するとともに、入力電流の高調波成分を低減する。PWM降圧回路18は、スイッチング素子28のパルス幅変調により電流制御を行う。ブリッジ回路20は、PWM降圧回路18の出力する直流の点灯電力を、フルブリッジ構成されたスイッチング素子36,38,40,42により矩形波交流の点灯電力に変換する。スタータ回路46は、ランプ48に始動用の高圧パルス電圧を印加する。
【0021】
力率改善回路16やPWM降圧回路18の具体的な回路構成は、特に限定されない。例えば、力率改善回路16は、
図1のように昇圧トランス22、スイッチング素子24、ダイオードD1、出力側コンデンサC2、および、スイッチング素子用のドライバー26を備える回路であってもよい。ドライバー26によるスイッチング素子24の作動制御により出力側コンデンサC2の端子間に、昇圧された一定の直流電圧を発生させる。
【0022】
また、PWM降圧回路18は、例えば
図1のように、平均電流をパルス幅変調により制御するスイッチング素子28と、その変調電流を平滑化するチョークコイル30、ダイオードD2、出力側コンデンサ32、および、スイッチング素子用のドライバー34を備える回路であってもよく、スイッチング素子28をドライバー34により作動制御する。
【0023】
ブリッジ回路20は、ブリッジ接続されたスイッチング素子36,38,40,42と、該スイッチング素子のオン/オフを制御するドライバー44とを備え、定常点灯モードにおいては、一般的に数10〜数100Hzで交番する矩形波交流の点灯電力を出力する。
【0024】
また、始動モード(再始動モード含む)におけるPWM降圧回路18およびブリッジ回路20の動作について簡単に説明する。始動モードでは、ブリッジ回路20から間欠的な矩形波交流電圧が出力される。矩形波交流電圧の周波数は、定常点灯モードと同様に一般的に数10〜数100Hzである。一方、スタータ回路46を作動させるため、矩形波交流電圧は点灯電圧よりも高い無負荷電圧に設定されている。ブリッジ回路20は、矩形波交流電圧を休止時間(T
2,T
4)毎に間欠的に出力し、供給時間(T
1)にわたって矩形波交流電圧をスタータ回路46を介してランプ48に供給する。
【0025】
スタータ回路46としては、ランプ48に直列接続されたコイル、ランプに並列接続されたコンデンサなどを有するLC振動型回路を採用してもよい。再始動モードにおいてブリッジ回路20の出力電圧が所定値(無負荷電圧)に達すると、コンデンサに蓄積された電荷が一気に放出されてLC振動を生じ、コイルから高圧パルスが発せられるようになっている。その後、スタータ回路46のコンデンサが再充電されることによって次の高圧パルスが発せられるが、充電に必要な時間については、使用するコイルやコンデンサを変えて様々に設定できる。このようにして、矩形波交流電圧の各矩形波に重畳された高圧パルス電圧が次々にランプ48に印加される。
【0026】
なお、PWM降圧回路18とブリッジ回路20の両機能を合わせ持つ、フルブリッジ型のPWM降圧回路や、ハーフブリッジ型のPWM降圧回路を用いた放電灯点灯装置とすることもできる。これらの回路も本発明の電圧変換回路に相当する。また、各回路のスイッチング素子の駆動手段にドライバーを使用するのではなく、駆動手段としてアナログ制御ICを使用するものであってもよい。
【0027】
放電灯点灯装置10は、マイクロコンピュータ(マイコン)を用いた制御手段52と、点灯電圧を検出する電圧検知手段50とを備える。制御手段52は、各スイッチング素子のドライバー26,34,44にオン/オフのタイミング信号を与える。電圧検知手段50は、例えば、ブリッジ回路20の前段、すなわちPWM降圧回路18の出力する直流出力電圧をランプ48への印加電圧としてディジタル検出するADコンバータを有する。制御手段52はランプ電圧の検出値に応じて各ドライバーへのタイミング信号を演算して出力している。このようにして、接続されるランプ48に最適な電流値、電圧値および矩形波周波数がマイコンにより設定される。
また、電圧検知手段50は、検出値に基づいて、ランプ48が点灯状態か否かを判別して、その結果を制御手段52に送る。例えば、定常点灯モードにおいて点灯電圧が無負荷検出電圧の所定値まで急上昇した場合、ランプ48が点灯していないと判別される。そして、制御手段52は、再始動モードへの移行を実行する。この電圧検知手段50は本発明の点灯判別手段として機能する。
【0028】
スイッチング素子用のドライバー26,34,44は、タイミング信号に基づいて、そのタイミングでオン/オフする駆動電圧をスイッチング素子のゲートに印加する。
【0029】
本発明で特徴的なことは、再始動モードにおいて無負荷電圧の矩形波を所望のパターンで出力できるようにするために、制御手段52が複数のタイマー(第1タイマー〜第4タイマー)およびカウンタを有していることである。第1タイマーは、矩形波交流電圧の供給時間T
1を計時する。第2タイマーは、その後の矩形波の休止時間T
2を計時する。これによって、ブリッジ回路20は、休止時間T
2ごとの供給時間T
1の間に矩形波交流電圧を出力することができる。再始動モードでの矩形波交流電圧の供給は、休止時間T
2ごとの間欠的なものになる。カウンタは、供給時間T
1にわたる矩形波交流電圧の出力を1サイクルとして、当該サイクル回数T
3をカウントする。
【0030】
また、第3タイマーは、休止時間T
2よりも長い休止時間T
4を計時する。
第1タイマーによって供給時間T
1の計時が終了した際に、カウンタによってカウントされたサイクル回数T
3が所定回数(ここでは4回)に達していない場合は、ブリッジ回路20を休止時間T
2だけ休止させる。その後の供給時間T
1の計時が終了した際に、サイクル回数T
3が所定回数に達したならば、ブリッジ回路20を第3タイマーによる長い休止時間T
4だけ休止させるとともに、カウンタのサイクル回数T
3をリセットする。そして、長い休止時間T
4の後、矩形波交流電圧の供給を再開する。つまり、カウンタのサイクル回数T
3が所定回数に達するごとに、休止時間をT
3からT
4に移行させる。そしし、カウンタのリセットにより、長い休止時間T
4をかけて休止した後は、再び短い休止期間T
3に戻るようになっている。実際の動作では、供給時間T
1と休止時間T
2を交互に繰り返し、サイクル回数T
3が4回に達すると、一回分だけ休止時間が長いT
4になり、その後、再び供給時間T
1と休止時間T
2を交互に繰り返す。
【0031】
このような再始動モードは、再始動モードの実行時間T
5だけ継続する。実行時間T
5は、第4タイマーによって計時される。このようにしてブリッジ回路20から出力される矩形波のパターンを
図2(A)のタイムチャートで示す。
【0032】
放電灯点灯装置10は、定常点灯中にランプの立ち消えなどが起きた場合に、自動的に定常点灯モードから再始動モードに移行して、再始動用の高圧パルス電圧を発生させるようになっている。ここでは、ランプが未だ高温状態である場合の再始動について説明する。なお、通常の始動においても、ランプが高温状態である場合には、同様の方法を用いてランプを始動させることができる。
【0033】
まず、立ち消えなどでランプ電極間の放電がなくなると、ブリッジ回路20の出力電圧が無負荷検出電圧まで上昇する。ランプ毎に無負荷検出電圧が設定されており、ランプへの点灯電圧がこの設定値に達した場合には、ランプが点灯状態ではないと判断する。この無負荷検出電圧は一般的な放電灯の場合、通常200V以上であり、本実施形態においては240Vに設定されている。そして、再始動の必要が判断されると、制御手段52は、再始動用の間欠的な矩形波交流電圧を出力するように、ブリッジ回路20の各スイッチング素子のオンオフ駆動のパターンを変更する。オンオフ駆動のパターン変更は、第1タイマーから第4タイマーおよびカウンタの作動に応じてなされる。
【0034】
そして、前述の
図2(A)に示すパターンで、ブリッジ回路20からの240Vの矩形波交流電圧が、スタータ回路46を介してランプ48に供給される。この際、スタータ回路46は、ランプ48に直列接続されたコイルとランプに並列接続されたコンデンサとによるLC振動を生じて、スタータ回路46のコイルにおいて高圧パルス電圧を発する。この高圧パルスは、矩形波交流電圧の各矩形波に重畳してランプ48に印加される。
【0035】
ここで、
図2(B)に再始動モードでランプ48に印加される電圧波形を模式的に示す。再始動モードでは、供給時間T
1の間に出力される矩形波交流電圧の各矩形波に1つの高圧パルスが重畳される。従って、矩形波が交番するごとに高圧パルスが生じて、次々とランプに高圧パルスが印加される。この高圧パルス電圧は2.5〜25kVになる。
【0036】
供給時間T
1にわたる矩形波交流電圧の出力を1サイクルとした場合に、最初の1サイクルによってランプが無事に放電すれば、ランプ電圧の急激な低下に伴って、高圧パルスの発生は自動的に停止する。また、ランプ電圧が所定値まで下降した状態が維持されることを確認したら、定常点灯モードに移行する。
しかし、ランプが十分に冷えておらず、ランプが点灯しない場合は、休止時間T
2ごとに矩形波交流電圧の出力サイクルを繰り返す。もし、サイクル回数T
3が4サイクルに達しても、ランプが点灯しない場合は、次に長い休止時間T
4をかけてランプが冷えるのを待つ。
長い休止時間T
4をかけることで、ランプの再始動性は向上し、その後、再び供給時間T
1の出力サイクルを実行することで、ランプが点灯しやすくなる。もし、長い休止時間T
4の後の最初の出力サイクルで点灯しなければ、短い休止時間T
2の後の2回目の出力サイクル、または、3回目の出力サイクルによって、ランプが点灯する可能性が高い。
【0037】
なお、再始動モードの実行時間T
5が経過するまで、点灯できない場合は、別の原因などが考えられ、そのまま再始動を続けるのは好ましくない。よって、ランプが点灯しない場合は、実行時間T
5が経過するタイミングで、再始動を停止させる。
【0038】
以下、休止時間T
4の最適な設定値を決定するための試験内容について説明する。この試験では、本実施形態に示した放電灯点灯装置10を用いて、定常点灯状態にあるランプ48を消灯後、所定時間が経過したら再始動用パルスを印加させるという方法を用いた。ランプの立ち消えが生じてからどの程度の時間を待ってから高圧パルスを印加させれば、ランプが無事に再始動するのかを調べるためである。消灯後、最初の矩形波交流電圧の出力サイクルの開始までの時間条件を幾通りか変更して、1回目の出力サイクルで点灯が成功するか否かを確認した。また、ランプの種類を代えて同様の評価試験を行った。なお、試験に用いたランプの定格は150Wである。
さらに、例えば消灯までの定常点灯時間を何通りか変えることにより、消灯時のランプの発光管内部の温度条件を変更して、同様の評価試験を行った。
【0039】
試験結果を
図3(A)〜(B)に基づいて説明する。
(1)消灯から1回目の出力サイクルまでの時間条件を1分以上、3分未満にした場合、ランプの点灯が成功した。
(2)消灯から1回目の出力サイクルまでの時間条件を3分以上、5分未満にした場合、ランプの点灯は失敗した。
(3)消灯から1回目の出力サイクルまでの時間条件を5分以上にした場合、ランプの点灯が成功した。
【0040】
以上の試験結果から、発光管の内部温度によって、ランプが始動しにくい時間帯が存在し、その時間帯がランプ消灯後の3〜5分間であることが判った。本実施形態では、この知見に基づき、始動しにくい時間帯を避けるようにして、出力サイクルのパターンを決めた。ランプの立ち消えには、例えば、外部電源12の停電を原因とするケースも含まれる。放電灯点灯装置10がトンネル用の照明機器として用いられている場合、外部電源12の停電は、一般的に1分程度で復旧すると言われている。しかし、その他の要因などが重なって、実際に再始動を実行できるまでに1分以上を必要とする可能性もある。このような様々な使用状況を考慮すると、立ち消えから再始動用パルスの印加までの時間が3分以上、5分未満になることが十分に想定できる。
【0041】
そうすると、上記の試験結果より、再始動用パルスの印加までの時間が3分以上、5分未満になるような場合には、1回目の矩形波交流電圧の出力サイクルでの点灯が失敗する可能性が高いと言える。そこで、1回目の出力サイクルで点灯が失敗した場合は、次の出力サイクルまでの休止時間を長め(T
4に相当する時間)に設定して、少なくとも立ち消えから3分以上(好ましくは5分以上)経過してから次の出力サイクルを実行するようにした。当然、1回目の出力サイクルで点灯が成功する場合もあるので、1回目の出力サイクルは遅らせることなく、停電の復旧後は速やかに1回目の出力サイクルを実行する。
【0042】
しかし、1回目の出力サイクルでランプが点灯しない場合、2回目の出力サイクルまでに長い休止時間(T
4)を掛けるというのは、いたずらに再始動を遅らせてしまう可能性がある。1回目の出力サイクルで点灯しなくても、短い休止時間T
2後に速やかに2回目の出力サイクルを実行すれば、点灯が成功する場合もある。そこで、本実施形態では、1回目の出力サイクルの後に短い休止時間T
2毎の出力サイクルを1回以上行うことにした。
図2(A)に示したパターンでは4回にした。すなわち、供給時間T
1の間に1回分の出力サイクルを実行して、その後、短い休止時間T
2ごとに出力サイクルを繰り返す。そして、合計4回の出力サイクルを実行してもランプが点灯しない場合には、長い休止時間T
4を掛けるようにした。
【0043】
また、点灯しない場合に、短い休止時間T
2ごとの出力サイクルの実行回数が多過ぎると、電極間にグロー放電が繰り返し生じる可能性も高くなる。そこで、短い休止時間T
2でのサイクル回数T
3の設定値については少なくとも2回とし、上限を10回とした。点灯しない場合であっても、サイクル回数T
3毎に、長い休止時間T
4があるので、グロー放電の継続時間が長期化するのを防ぐことができて、グロー放電による電極の摩耗を低減させることができる。従って、電極の保護の面でも有効である。
【0044】
本発明の実施例1に係る設定条件は表1の通りである。
(表1)
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用途 :トンネル照明用
ランプの種類 :HIDランプ
ランプ出力定格 :150W
パルス電圧 :10kV以上
矩形波交流電圧の印加パターン
供給時間 T
1: 6秒
休止時間 T
2: 24秒
T
2毎の出力サイクルのサイクル数T
3: 3サイクル
長い休止時間 (T
2<)T
4: 5分
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1では、ランプの発光管内部の状態によっては、最初の出力サイクルで、ランプが点灯しない現象が稀に生じた。しかし、出力サイクルを3回繰り返した後、休止時間を、短い時間(T
2=24秒)から長い時間(T
4=5分)に変えたことにより、その後の出力サイクルで確実に点灯させることができた。
【0045】
本発明の実施例2に係る設定条件は表2の通りである。
(表2)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
用途 :一般照明用(ダウンライト用)
ランプの種類 :HIDランプ
ランプ出力定格 :35〜150W
パルス電圧 :2kV〜5kV
矩形波交流電圧の印加パターン
供給時間 T
1: 30秒
休止時間 T
2: 1分
T
2毎の出力サイクルのサイクル数T
3: 2サイクル
長い休止時間 (T
2<)T
4: 4分
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実施例2では、2サイクル分の矩形波交流電圧の印加後のサイクルにおいて、休止時間を短い時間(T
2=1分)から長い時間(T
4=4分)に変更したことで、その後の出力サイクルによって確実に点灯させることができた。また、点灯までの時間が短縮されるので、グロー放電の継続時間が減少し、電極の摩耗を低減させるという効果も確認できた。