【実施例】
【0098】
以下、実施例によって本発明の具体例を示すが、以下の実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明は以下の実施例のみに限定されない。まず、以下の実施例・比較例における各種の測定及び評価の方法を説明する。
【0099】
〔スチレン系樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量の測定方法〕
本明細書において、スチレン系樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と略記する)を用いて測定した、ポリスチレン(PS)換算重量平均分子量を意味する。以下の実施例・比較例では、スチレン系樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量は、以下の方法で測定を行う。
【0100】
具体的には、スチレン系樹脂の試料4mgをテトラヒドロフラン(以下「THF」と略記する)4mLに溶解させ(溶解時間:6.0±0.5時間)、孔径0.45μmの非水系クロマトディスクで濾過後、GPC測定を行う。そのGPC測定により得られた溶出曲線と、予め標準ポリスチレンのGPC測定を行うことにより作成しておいた標準ポリスチレンの検量線とから、試料のポリスチレン換算重量平均分子量を求める。前記GPC測定の使用装置及び測定条件は、以下の通りである。
【0101】
GPC装置:東ソー株式会社製、商品名「HLC−8320GPC EcoSEC(登録商標)」(示差屈折率検出器(以下「RI検出器」と略記する)及び紫外吸収検出器を内蔵)
ガードカラム:東ソー株式会社製、商品名「TSKgel(登録商標) guardcolumn SuperMP(HZ)−H」(内径4.6mm×長さ2cm)×1本
リファレンス側カラム:東ソー株式会社製商品名「TSKgel(登録商標) SuperHZ 1000」(内径4.6mm×長さ15cm)×1本
試料(サンプル)側カラム:東ソー株式会社製商品名「TSKgel(登録商標) SuperMultiporeHZ−H」(内径4.6mm×長さ15cm)×2本
カラム温度:40℃
移動相:THF
試料側の移動相流量(S.PUMP):0.2mL/分
リファレンス側の移動相流量(R.PUMP):0.2mL/分
検出器:RI検出器
試料濃度:0.10重量%
試料注入量:20μL
測定時間:25分
サンプリングピッチ:200msec
検量線用標準ポリスチレン試料としては、昭和電工株式会社製、商品名「Shodex(登録商標) STANDARD」の重量平均分子量が5620000、3120000、1250000、442000、131000、54000、20000、7590、3450、及び1320である標準ポリスチレン試料を用いる。
【0102】
検量線の作成方法は、以下の通りである。まず、上記検量線用標準ポリスチレン試料をグループA(重量平均分子量が5620000、1250000、131000、20000、及び3450のもの)及びグループB(重量平均分子量が3120000、442000、54000、7590、及び1320のもの)にグループ分けする。グループAに属する重量平均分子量が5620000、1250000、131000、20000、及び3450である標準ポリスチレン試料をそれぞれ、2mg、3mg、4mg、10mg、及び10mg秤量した後にTHF30mLに溶解し、得られた溶液20μLを試料側カラムに注入する。グループBに属する重量平均分子量が3120000、442000、54000、7590、及び1320である標準ポリスチレン試料をそれぞれ、3mg、4mg、8mg、10mg、及び10mg秤量した後にTHF30mLに溶解し、得られた溶液20μLを試料側のカラムに注入する。これら標準ポリスチレン試料の保持時間から較正曲線(三次式)をHLC−8320GPC専用データ解析プログラム「GPCワークステーション(EcoSEC(登録商標)−WS)」(東ソー株式会社製)にて作成し、これをポリスチレン換算重量平均分子量測定の検量線として用いる。
【0103】
〔スチレン系樹脂粒子及び発泡成形体中のグラファイトの平均粒子径の測定方法〕
スチレン系樹脂粒子及び発泡成形体約0.1gをNALGENE(登録商標)遠沈管(12mL用)(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック株式会社製)に入れ、試薬(特級)トルエン5mLを加え、長さ2cm、最大径5mmの回転子を入れて蓋をし、アズワン株式会社製のマグネチックスターラー「HS−360」にて目盛り約1〜2のスピードで室温で30分程度攪拌し樹脂を溶解させる。この撹拌は、樹脂を溶解させるために実施しており、溶液が多少揺れる状態になれば良い。溶解後、株式会社久保田製作所製「ハイスピード冷却遠心機7930」にて設定温度17℃、回転数18000rpmで30分間遠心分離を行い、上澄みを除去後、再度、試薬(特級)トルエンを5mL加え、室温で30分攪拌する。さらに、先と同装置、同条件で遠心分離を行い上澄みを除去した後で、遠沈管底部の残渣をアセトンで洗浄しながら、20mlビーカーに移し室温または50〜70℃のホットプレート上で乾固させて粒子状のグラファイト(グラファイト粒子)を得る。
【0104】
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製「S−3000N」)にて、グラファイト粒子を100〜300倍に拡大して撮影する。走査型電子顕微鏡の簡易メジャー機能にてグラファイト粒子の平均粒子径を計測した。
【0105】
〔スチレン系樹脂粒子及びその表層部におけるグラファイトの含有率の測定方法及びグラファイトの偏在の評価方法〕
(1)スチレン系樹脂粒子の表層部におけるグラファイトの含有率の測定方法
スチレン系樹脂粒子の表層部におけるグラファイトの含有率をスチレン系樹脂粒子自体から測定することは困難であるため、この測定方法では、スチレン系樹脂粒子の表層部におけるグラファイトの含有率に代えてスチレン系樹脂粒子から得た発泡成形体の表層部におけるグラファイトの含有率を測定している。これは、発泡成形体の表層部が発泡粒子の表層部の連続体からなっており、かつ発泡粒子の表層部の組成がスチレン系樹脂粒子の表層部の組成を反映していることを利用している。
【0106】
まず、スチレン系樹脂粒子から得られた発泡成形体の表層部を、スライサー(冨士島工機株式会社製、型番「FK−4N」)によって、長さ200mm、幅200mmで、発泡成形体の厚さの1%に等しい厚さ(以下の実施例・比較例の発泡成形体では0.3mm)を有する直方体形状のスライスサンプルにスライスする。このスライスサンプルをスチレン系樹脂粒子の表層部として扱う。この測定法により測定される表層部のグラファイトの含有率は、スチレン系樹脂粒子における半径の30%に等しい厚さの表層におけるグラファイトの含有率に相当すると考えられる。
【0107】
上記スライスサンプルについてグラファイトの含有率(濃度)の測定を行う。グラファイトの含有率(濃度)は、示差熱熱重量同時測定装置「TG/DTA6200」型エスアイアイナノテクノロジー株式会社製を用いて測定した。サンプリング方法及び温度条件に関しては、以下のようにした。上記スライスサンプルより約15mgの試料を採取して精秤し、白金製測定容器の底に隙間のないよう試料を充てんして、アルミナを基準物質として測定した。温度条件としては、昇温速度10℃/min、窒素ガス流量250mL/minのもと30℃から520℃まで昇温後、昇温速度10℃/min、空気流量200mL/minのもとで520℃から900℃まで昇温させた。グラファイトの含有率(重量%)(濃度)の算出に関しては、専用データ解析ソフト「Muse」(エスアイアイナノテクノロジー株式会社製)を用いて以下のように行った。得られたTG(熱重量)曲線(縦軸:TG(%)、横軸:温度(℃))より、520℃から900℃まで昇温した時の試料重量の減量分を算出し、グラファイトの含有率(重量%)(濃度)とした。
【0108】
(2)スチレン系樹脂粒子全体におけるグラファイトの含有率の測定方法
スチレン系樹脂粒子から、又は、発泡成形体中の発泡粒子をできるだけ発泡粒子全体を含む形で切り出した試験片から、15mgの試料を採取して精秤する。そして、この試料を用いる以外は、表層部分におけるグラファイトの含有率の測定と同様の測定を実施し、スチレン系樹脂粒子全体におけるグラファイトの含有率を算出する。
【0109】
そして、スチレン系樹脂粒子全体におけるグラファイトの含有率をX重量%とし、表層部におけるグラファイトの含有率をY重量%とすると、X≧1.1×Yの関係を満たすスチレン系樹脂粒子を、表層部以外の部分(中心部)にグラファイトが十分に偏在していると評価する。
【0110】
〔スチレン系樹脂粒子の表層部及び中心部における吸光度比の測定方法及びメタクリル酸メチル等の偏在の評価方法〕
(1)スチレン系樹脂粒子の表層部における吸光度比の測定方法
スチレン系樹脂粒子の表層部における吸光度比A=D1730/D1600を次の要領で測定する。
【0111】
まず、無作為に選択した3個の各スチレン系樹脂粒子の表面について、減衰全反射(以下「ATR」と略記する)法による赤外分光分析を行って赤外吸収スペクトルを得る。この赤外分光分析では、スチレン系樹脂粒子の表層部の分析を行うことができ、スチレン系樹脂粒子における表面から数μm(約2μm)までの深さの範囲の表層部の赤外吸収スペクトルが得られる。
【0112】
各スチレン系樹脂粒子の表面の赤外吸収スペクトルの測定(吸光度D1730及びD1600の測定)は、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック株式会社(Nicolet社)から商品名「MAGNA 560」で販売されているフーリエ変換赤外分光分析装置に、ATRアクセサリーとしてスペクトラ・テック(Spectra−Tech)社製「サンダードーム」を用いて次の条件で行う。
【0113】
ATR結晶(高屈折率結晶)の種類:Ge(ゲルマニウム)
入射角:45°±1°
測定波数領域:4000cm
-1〜675cm
-1
測定深度の波数依存性:補正せず
反射回数:1回
検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器及びKBrビームスプリッター
分解能:4cm
-1
積算回数:32回
なお、ATR法では、試料とATR結晶との密着度合いによって測定で得られる赤外吸収スペクトルの吸光度が変化する。そのため、ATRアクセサリーである「サンダードーム」によって、「サンダードーム」で掛けられる最大荷重(クラッチ機構が働く荷重)を試料に掛けて、試料とATR結晶との密着度合いをほぼ均一にして、赤外吸収スペクトルの測定を行う。また、ATR結晶に何も接触させずに測定した赤外線吸収スペクトルをバックグラウンドの赤外線吸収スペクトルとする。
【0114】
そして、得られた各スチレン系樹脂粒子の表面の赤外吸収スペクトル曲線における波数1760cm
-1のプロットと、赤外吸収スペクトル曲線における波数1625cm
-1のプロットとを結ぶ直線をベースラインとする。波数1750cm
-1〜1650cm
-1の領域の赤外吸収スペクトル曲線における、ベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースラインの吸光度)の最大値を、波数1730cm
-1での吸光度D1730とする。なお、波数1730cm
-1付近の吸収ピークと他の吸収ピークとが重なっている場合でも、これらのピークの分離を実施せずに波数1730cm
-1での吸光度D1730を求める。
【0115】
また、得られた各スチレン系樹脂粒子の表面の赤外吸収スペクトル曲線における波数1620cm
-1のプロットと、赤外吸収スペクトル曲線における波数1560cm
-1のプロットとを結ぶ直線をベースラインとする。波数1610cm
-1〜1580cm
-1の領域の赤外吸収スペクトル曲線における、ベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースラインの吸光度)の最大値を、波数1600cm
-1での吸光度D1600とする。なお、波数1600cm
-1付近の吸収ピークと他の吸収ピークとが重なっている場合でも、これらのピークの分離を実施せずに波数1600cm
-1での吸光度D1600を求める。
【0116】
各スチレン系樹脂粒子の表面の赤外吸収スペクトルから吸光度比D1730/D1600をそれぞれ算出し、各スチレン系樹脂粒子の表面についての吸光度比D1730/D1600の相加平均を、スチレン系樹脂粒子の表層部における吸光度比Aとする。
【0117】
(2)スチレン系樹脂粒子の中心部における吸光度比の測定方法
スチレン系樹脂粒子の中心部における吸光度比B=Dc1730/Dc1600を次の要領で測定する。
【0118】
ウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製、商品名「LEICA ULTRACUT UCT」)を用い、無作為に選択した3個の各スチレン系樹脂粒子をプラスチック試料支持台(日新EM株式会社製)に固定し、ウルトラミクロトームのダイヤモンドナイフによって、スチレン系樹脂粒子の半径をRaとして、中心からRaの20%の範囲を通る部分を約10μmの厚みを有するスライスサンプルが得られるように調整してスライス加工する。
【0119】
得られたスライスサンプルの半径をRbとして、スライスサンプル中央からRbの20%の範囲をスチレン系樹脂粒子の中心部とし、その範囲内をATR法による顕微赤外分光分析を行ってスチレン系樹脂粒子の中心部の赤外吸収スペクトルを得る。赤外吸収スペクトルの測定(吸光度Dc1730及びDc1600の測定)は、パーキンエルマー(Perkin Elmer)社から商品名「Spectrum Spotlight 300」で販売されている高速赤外イメージングシステムを用いて、次の条件にて行う。
【0120】
[1]試料の測定
測定モード:ポイントATR法(Ge結晶)
測定波数領域:4000cm
-1〜680cm
-1
検出器:HgCdTe(MCT)検出器
分解能:8cm
-1
積算回数(スキャン):32回
アパチャーのサイズ:100μm×100μm
[2]バックグランドの測定
測定モード:ポイントATR法(Ge結晶)
測定波数領域:4000cm
-1〜680cm
-1
検出器:HgCdTe(MCT)検出器
分解能:8cm
-1
積算回数:32回
アパチャーのサイズ:100μm×100μm
なお、バックグランドの測定においては、ATR結晶に何も接触させずに測定した赤外吸収スペクトル(空気層の赤外吸収スペクトル)をバックグランドの赤外線吸収スペクトルとする。ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合いによって測定で得られる赤外吸収スペクトルの強度が変化するため、装置付随のモニターモードを使用して、波数748cm
-1の透過率が60%以下となり綺麗なスペクトルが得られるように、押し込みを調整する。装置の構造上、押し込みが強すぎるとスペクトルが歪んでしまうため、無理な押し込みは行わずに、得られるチャートは、波数748cm
-1ピークの吸光度が0.20〜0.35Absの範囲となるようなチャートであることが望ましい。
【0121】
前述したスチレン系樹脂粒子の表面の赤外吸収スペクトル曲線から波数1730cm
-1での吸光度D1730及び波数1600cm
-1での吸光度D1600を求める方法と同様にして、得られた各測定試料の赤外吸収スペクトル曲線(チャート)から波数1730cm
-1での吸光度Dc1730及び波数1600cm
-1での吸光度Dc1600を求める。
【0122】
各測定試料の赤外吸収スペクトルから吸光度比Dc1730/Dc1600をそれぞれ算出し、各測定試料についての吸光度比Dc1730/Dc1600の相加平均を、スチレン系樹脂粒子の中心部における吸光度比Bとする。
【0123】
そして、A>Bである場合、メタクリル酸メチル等のモノエステル単量体に由来する構成単位がスチレン系樹脂粒子の表層部に十分に偏在している(表中では偏在「有」と表す)と評価し、A≦Bである場合、メタクリル酸メチル等のモノエステル単量体に由来する構成単位がスチレン系樹脂粒子の表層部に十分に偏在していない(表中では偏在「無」と表す)と評価した。
【0124】
〔発泡成形体の嵩密度及び嵩倍率の測定方法〕
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例えば、75mm×300mm×35mmのサイズ)の重量(a)及び体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の嵩密度(kg/m
3)を求める。
【0125】
発泡成形体の嵩倍率(嵩倍数)は、発泡成形体の嵩密度の逆数である。
【0126】
〔発泡成形体の加熱寸法変化率の測定方法及び耐熱性(加熱寸法安定性)の評価方法〕
発泡成形体の加熱寸法変化率は、熱風循環式乾燥機の温度を85℃(JIS K 6767:1999では70℃±2℃)、加熱時間を7日間(JIS K 6767:1999では22時間)とすること以外はJIS K 6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」の「7.高温時の寸法安定性」に記載のB法に従って測定する。
【0127】
試験片は150mm×150mm×30mmのサイズとし、その試験片の中央部に縦方向及び横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔になるよう記入し、温度85±2℃の熱風循環式乾燥機の中に試験片を22時間置いた後に取り出し、標準状態(温度23±2℃、湿度50±5%)の場所に試験片を1時間放置した後、縦線及び横線の寸法を株式会社ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」を使用して1/100mmの単位まで測定する。そして、次式により加熱寸法変化率を算出する。
【0128】
S=(L
1−L
0)/L
0×100
式中、Sは加熱寸法変化率(%)を表し、L
0は初めの寸法(mm)を表し、L
1は加熱後の寸法(mm)表す。
【0129】
発泡成形体の加熱寸法変化率Sに基づき、以下の基準で発泡成形体の耐熱性(加熱寸法安定性)を評価する。−3≦S≦3である発泡成形体は、加熱寸法変化率が低く、加熱時の寸法安定性が良好であるので、耐熱性(加熱寸法安定性)が良好(表中では「○」で表す)と評価する。S<−3又はS>3である発泡成形体は、加熱時の寸法変化が著しく見られ、実用上使用不可能であるので、耐熱性(加熱寸法安定性)が不良(表中では「×」で表す)と評価する。
【0130】
なお、発泡成形体の加熱寸法変化率Sが小さいことは、発泡成形体の製造に用いたスチレン系樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、及び発泡粒子の(85℃での)耐熱性が高いことを示す。
【0131】
〔発泡性樹脂粒子の発泡性の評価方法〕
発泡性樹脂粒子を蒸気圧力0.02MPaにて1分単位で加熱し、加熱後の発泡性樹脂粒子(発泡粒子)の嵩密度を測定する。嵩密度10分間以内の加熱によって嵩密度が0.02g/cm
3以下となった発泡性樹脂粒子を良好(表中では「○」で表す)とし、10分間以内の加熱後にも嵩密度が0.02g/cm
3を超えている発泡性樹脂粒子を不良(表中では「×」で表す)とする。
【0132】
加熱後の発泡性樹脂粒子(発泡粒子)の嵩密度は、発泡成形体の嵩密度の測定と同様にして、JIS K 6911:1995に準拠して測定する。具体的は、まず、予備発泡粒子を測定試料としてW(g)採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積V(cm
3)をJIS K 6911:1995に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。W(g)及びV(cm
3)を下記式
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm
3)=測定試料の重量(W)/測定試料の体積(V)
に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
【0133】
〔発泡成形体の融着性の評価方法〕
発泡成形体の表面にカッターナイフで深さ約5mmの切り込み線を入れる。この切れ込み線に沿って手で発泡成形体を二つに分割する。次に、発泡成形体の分割面(破断面)に面している発泡粒子について、100〜150個の任意の範囲について粒子内で破断されている発泡粒子の個数a及び破断されていない発泡粒子の個数bを数える。そして、個数a及び個数bを次式
{a/(a+b)}×100
に代入して得られた値を発泡成形体の融着率(%)とする。発泡成形体の融着率が80%以上である場合、発泡成形体中の発泡粒子同士が十分に融着した状態であり、発泡成形体の融着性が良好(表中では「○」で表す)であるものと評価する。発泡成形体の融着率が80%未満である場合、発泡成形体が実用上不可能な程度に発泡成形体の融着性が低く、発泡成形体の融着性が不良(×)であるものと評価する。
【0134】
なお、発泡成形体の融着率が高いことは、発泡成形体の製造に用いたスチレン系樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、及び発泡粒子の熱融着性が高いことを示す。
【0135】
〔発泡成形体の熱伝導率の測定方法〕
発泡成形体の熱伝導率は、英弘精機株式会社製の「熱伝導率測定装置HC−074/200(オートΛ)」を用い、JIS A 1412−2:1999「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法−第2部:熱流計法(HFM法)」記載の方法にて測定した。
【0136】
試験片は温度50℃のオーブンで1週間置いた後に取り出し、長さ200×幅200×厚み30mmに切り出し、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の標準状態にて24時間放置した後、平均温度23℃(高温側プレート温度38℃、低温側プレート温度8℃)、プレートの温度差30℃の条件にて測定を行った。なお、試験片として、スキン層(表皮)を持った試験片を測定した。校正の基準値として、装置に登録されているNIST(米国標準技術局)SRM1450Bを採用した。
【0137】
〔総合評価方法〕
発泡成形体の耐熱性、発泡性樹脂粒子の発泡性、及び発泡成形体の融着性が良好であり、かつ発泡成形体の熱伝導率が0.032W/m・K以下である場合に、総合評価が良好(表中では「○」で表す)と評価し、それ以外の場合を総合評価が不良(表中では「×」で表す)と評価した。
【0138】
〔実施例1〕
(マスターバッチの製造)
スチレン換算重量平均分子量が25万であるスチレン系樹脂(スチレン単独重合体)8000gと、鱗片状グラファイト(日本黒鉛工業株式会社製、商品名「J−CPB」)2000gとを二軸押出機に供給して、230℃で溶融混練して二軸押出機から直径3mmのストランド状に押し出した。得られたストランドを長さ6mm毎に切断して、グラファイトを20重量%含有する直径3mm、長さ6mmの円柱状のスチレン系樹脂マスターバッチを作製した。
【0139】
(種粒子の製造)
得られたスチレン系樹脂マスターバッチを二軸押出機に供給して、230℃で溶融混練して二軸押出機から直径0.5mmのストランド状に押し出した。得られたストランドを長さ1.5mm毎に切断して、グラファイトを20重量%含有する直径0.5mm、長さ1.5mmの円柱状のスチレン系樹脂種粒子を作製した。
【0140】
(重合工程)
まず、重合開始剤としてのtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート15g及びtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート3gと、連鎖移動剤としてのα−メチルスチレンダイマー2.25gとを、混合比が(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=11:4であるスチレンとメタクリル酸メチルとの混合モノマー140gに溶解させ、モノマー溶液を得た。
【0141】
次に、内容量5リットル攪拌機付き重合容器に、水性媒体としての水2000gと、前記スチレン系樹脂種粒子500gと、懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム6.0gと、アニオン界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.38gとを供給して、重合容器の内容物を攪拌しつつ、重合容器の内温を75℃に昇温した。
【0142】
続いて、前記モノマー溶液を重合容器内に供給して反応液を得た後、反応液の温度を75℃で60分間保持した。前記モノマー溶液の供給時点から60分間経過後、反応液の温度を250分間かけて108℃まで昇温しつつ、混合比が(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=11:4であるスチレンとメタクリル酸メチルとの混合モノマー1360gを250分間かけて重合容器内にポンプで一定量ずつ供給した。その後、反応液の温度を、110℃に昇温して110℃で2時間保持した後、冷却した。そして、重合容器内の反応液から固形物を分離することにより、グラファイトを含有したスチレン系樹脂粒子を得た。
【0143】
本例では、スチレン系樹脂種粒子500gは、グラファイト100g及びスチレン単独重合体400gで構成され、混合モノマー1500gは、スチレン1100g及びメタクリル酸メチル400gで構成される。したがって、得られたスチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂粒子全体に対して、スチレンに由来する構成単位の量が75重量%、メタクリル酸メチルに由来する構成単位の量が20重量%、グラファイトの量が5重量%である。また、得られたスチレン系樹脂粒子は、X≧1.1×Yの関係を満たし、表層部以外の部分にグラファイトが十分に偏在していた。
【0144】
(含浸工程)
次に、別の内容量5リットルの攪拌機付重合容器に、水性媒体としての水3000gと、前記スチレン系樹脂粒子2000gと、懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム10.5gと、アニオン系界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.38gとを供給して撹拌し、分散液を得た。次いで、重合容器の内温を60℃に昇温した。
【0145】
続いて、発泡助剤としてのアジピン酸イソブチル20gと、難燃剤としてのテトラブロモシクロオクタン18gと、難燃助剤としてのジクミルパーオキサイド6gとを前記分散液中に供給した後、重合容器を密閉して、重合容器の内温を100℃に昇温した。
【0146】
さらに、重合容器内に発泡剤としてのn−ブタン176gを圧入して6時間に亘って保持し、スチレン系樹脂粒子にn−ブタンを含浸させた後、重合容器の内部を30℃に冷却した。その後、重合容器内の分散液を取り出し、分散液から固形分を分離して乾燥させた。乾燥された固形分を15℃の恒温室内に5日間静置して、発泡性樹脂粒子(発泡性スチレン系樹脂粒子)を得た。
【0147】
(予備発泡工程)
前記発泡性樹脂粒子の表面に表面処理剤としてのステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを被覆処理した。次いで、被覆処理された発泡性樹脂粒子を予備発泡装置にて嵩密度0.02g/cm
3(嵩倍率50倍)に予備発泡した後、20℃で24時間熟成して予備発泡粒子(発泡粒子)を得た。
【0148】
(発泡成形体製造工程)
内寸が長さ400mm×幅300mm×厚さ30mmの直方体形状のキャビティを有する成形型を備えた発泡ビーズ自動成形機(株式会社積水工機製作所製、商品名「エース3型」)のキャビティ内に前記予備発泡粒子を充填し、ゲージ圧力0.07MPaの水蒸気で15秒間加熱成形を行った。次に、前記成形型のキャビティ内の発泡成形体を5秒間水冷した後、減圧下にて放冷(冷却)して、長さ400mm×幅300mm×厚さ30mmの直方体形状の発泡成形体(嵩密度0.02g/cm
3、嵩倍率50倍)を得た。得られた発泡成形体は、収縮も無く、融着性の良好なものであった。
【0149】
〔実施例2〕
重合工程において使用する混合モノマーの混合比を(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=3:2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、スチレン系樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、及び発泡成形体(嵩密度0.02g/cm
3、嵩倍率50倍)を作製した。
【0150】
本例では、スチレン系樹脂種粒子500gは、グラファイト100g及びスチレン単独重合体400gで構成され、混合モノマー1500gは、スチレン900g及びメタクリル酸メチル600gで構成される。したがって、得られたスチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂粒子全体に対して、スチレンに由来する構成単位の量が65重量%、メタクリル酸メチルに由来する構成単位の量が30重量%、グラファイトの量が5重量%である。得られたスチレン系樹脂粒子は、X≧1.1×Yの関係を満たし、表層部以外の部分にグラファイトが十分に偏在していた。
【0151】
〔実施例3〕
重合工程において使用する混合モノマーの混合比を(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=7:8に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、スチレン系樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、及び発泡成形体(嵩密度0.02g/cm
3、嵩倍率50倍)を作製した。
【0152】
本例では、スチレン系樹脂種粒子500gは、グラファイト100g及びスチレン単独重合体400gで構成され、混合モノマー1500gは、スチレン700g及びメタクリル酸メチル800gで構成される。したがって、得られたスチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂粒子全体に対して、スチレンに由来する構成単位の量が55重量%、メタクリル酸メチルに由来する構成単位の量が40重量%、グラファイトの量が5重量%である。得られたスチレン系樹脂粒子は、X≧1.1×Yの関係を満たし、表層部以外の部分にグラファイトが十分に偏在していた。
【0153】
〔実施例4〕
(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体粒子の製造)
内容量5リットルの攪拌機付き重合容器に、水性媒体としての水2000gと、懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム7gと、アニオン界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.7gとを供給し、重合容器の内容物を攪拌しながら、混合比が(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=5:1であるスチレンとメタクリル酸メチルとの混合モノマー2000gと、重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド9.45g及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート2gとを添加した。さらに重合容器の内容物を攪拌しながら、重合容器の内温を90℃に昇温して重合を行った。そして、重合容器の内温を90℃に6時間保持し、さらに重合容器の内温を125℃に昇温して125℃に2時間保持した後、重合容器を冷却した。そして、重合容器の内容物から固形物を分離することにより、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体粒子を得た。
【0154】
(スチレン系樹脂種粒子の製造)
得られたスチレン−メタクリル酸メチル共重合体粒子2000gと、鱗片状グラファイト(日本黒鉛工業株式会社製、商品名「J−CPB」)500gとを二軸押出機に供給して、230℃で溶融混練して二軸押出機から直径0.5mmのストランド状に押し出した。得られたストランドを長さ1.5mm毎に切断して、グラファイトを20重量%含有する直径0.5mm、長さ1.5mmの円柱状のスチレン系樹脂種粒子を作製した。
【0155】
さらに、この円柱状のスチレン系樹脂種粒子を実施例1のスチレン系樹脂種粒子に代えて使用したこと、及び重合工程において使用する混合モノマーの混合比を(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=9:5に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、スチレン系樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、及び発泡成形体(嵩密度0.02g/cm
3、嵩倍率50倍)を作製した。
【0156】
本例では、スチレン系樹脂種粒子500gは、グラファイト100gと、スチレン333g及びメタクリル酸メチル67gからなる混合モノマーに対応するスチレン−メタクリル酸メチル共重合体400gとで構成され、重合工程において使用する混合モノマー1500gは、スチレン964g及びメタクリル酸メチル536gで構成される。したがって、得られたスチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂粒子全体に対して、スチレンに由来する構成単位の量が65重量%、メタクリル酸メチルに由来する構成単位の量が30重量%、グラファイトの量が5重量%である。得られたスチレン系樹脂粒子は、X≧1.1×Yの関係を満たし、表層部以外の部分にグラファイトが十分に偏在していた。
【0157】
〔実施例5〕
重合工程において、混合比が(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=11:4であるスチレンとメタクリル酸メチルとの混合モノマーに代えて、混合比が(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量):(メタクリル酸イソボルニルの重量)=9:5:1であるスチレンとメタクリル酸メチルとメタクリル酸イソボルニルとの混合モノマーを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、スチレン系樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、及び発泡成形体(嵩密度0.02g/cm
3、嵩倍率50倍)を作製した。
【0158】
本例では、スチレン系樹脂種粒子500gは、グラファイト100g及びスチレン単独重合体400gで構成され、混合モノマー1500gは、スチレン900g、メタクリル酸メチル500g、及びメタクリル酸イソボルニル100gで構成される。したがって、得られたスチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂粒子全体に対して、スチレンに由来する構成単位の量が65重量%、メタクリル酸メチルに由来する構成単位の量が25重量%、メタクリル酸イソボルニルに由来する構成単位の量が5重量%、グラファイトの量が5重量%である。得られたスチレン系樹脂粒子は、X≧1.1×Yの関係を満たし、表層部以外の部分にグラファイトが十分に偏在していた。
【0159】
〔比較例1〕
重合工程において、スチレンとメタクリル酸メチルとの混合モノマーに代えてスチレンのみを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、スチレン系樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、及び発泡成形体(嵩密度0.02g/cm
3、嵩倍率50倍)を作製した。
【0160】
得られたスチレン系樹脂粒子は、X≧1.1×Yの関係を満たし、表層部以外の部分にグラファイトが十分に偏在していた。しかしながら、得られた発泡成形体は、十分な耐熱性(加熱寸法安定性)を持っておらず、また、熱伝導率が0.032W/m・Kを上回っており、断熱性も不十分であった。
【0161】
〔比較例2〕
重合工程において使用する混合モノマーの混合比を(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=13:2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、スチレン系樹脂粒子、発泡性樹脂粒子、予備発泡粒子、及び発泡成形体(嵩密度0.02g/cm
3、嵩倍率50倍)を作製した。
【0162】
本例では、スチレン系樹脂種粒子500gは、グラファイト100g及びスチレン単独重合体400gで構成され、混合モノマー1500gは、スチレン1300g及びメタクリル酸メチル200gで構成される。したがって、得られたスチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂粒子全体に対して、スチレンに由来する構成単位の量が85重量%、メタクリル酸メチルに由来する構成単位の量が10重量%、グラファイトの量が5重量%である。
【0163】
得られたスチレン系樹脂粒子は、X≧1.1×Yの関係を満たし、表層部以外の部分にグラファイトが十分に偏在していた。また、得られた発泡成形体は、熱伝導率が0.032W/m・Kよりも低いものであった。しかしながら、得られた発泡成形体は、加熱寸法変化率が高く、十分な耐熱性(加熱寸法安定性)を持っていなかった。
【0164】
〔比較例3〕
重合工程において使用する混合モノマーの混合比を(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=1:2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、スチレン系樹脂粒子及び発泡性樹脂粒子を作製した。
【0165】
本例では、スチレン系樹脂種粒子500gは、グラファイト100g及びスチレン単独重合体400gで構成され、混合モノマー1500gは、スチレン500g及びメタクリル酸メチル1000gで構成される。したがって、得られたスチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂粒子全体に対して、スチレンに由来する構成単位の量が45重量%、メタクリル酸メチルに由来する構成単位の量が50重量%、グラファイトの量が5重量%である。得られたスチレン系樹脂粒子は、X≧1.1×Yの関係を満たし、表層部以外の部分にグラファイトが十分に偏在していた。
【0166】
この発泡性樹脂粒子を用いて予備発泡を行ったところ、発泡性樹脂粒子は、嵩密度0.1g/cm
3(嵩倍率10倍)までしか発泡せず、良好な発泡粒子を得ることができなかった。したがって、良好な発泡成形体を得ることができなかった。
【0167】
〔比較例4〕
(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体粒子の製造)
内容量5リットルの攪拌機付き重合容器に、水性媒体としての水2000gと、懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム7gと、アニオン界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム2.7gとを供給し、重合容器の内容物を攪拌しながら、混合比が(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=13:6であるスチレンとメタクリル酸メチルとの混合モノマー2000gと、重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド9.45g及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート2gとを添加した。さらに重合容器の内容物を攪拌しながら、重合容器の内温を90℃に昇温して重合を行った。そして、重合容器の内温を90℃に6時間保持し、さらに重合容器の内温を125℃に昇温して125℃に2時間保持した後、重合容器を冷却した。そして、重合容器の内容物から固形物を分離することにより、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体粒子を得た。
【0168】
(スチレン系樹脂種粒子の製造)
得られたスチレン−メタクリル酸メチル共重合体粒子2000gと、鱗片状グラファイト(日本黒鉛工業株式会社製、商品名「J−CPB」)500gとを二軸押出機に供給して、230℃で溶融混練して二軸押出機から直径0.5mmのストランド状に押し出した。得られたストランドを長さ1.5mm毎に切断して、グラファイトを20重量%含有する直径0.5mm、長さ1.5mmの円柱状のスチレン系樹脂種粒子を作製した。
【0169】
さらに、この円柱状のスチレン系樹脂種粒子を実施例1のスチレン系樹脂種粒子に代えて使用したこと、及び重合工程において使用する混合モノマーの混合比を(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=13:6に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、スチレン系樹脂粒子及び発泡性樹脂粒子を作製した。
【0170】
本例では、スチレン系樹脂種粒子500gは、グラファイト100gと、スチレン274g及びメタクリル酸メチル126gからなる混合モノマーに対応するスチレン−メタクリル酸メチル共重合体400gとで構成され、重合工程において使用する混合モノマー1500gは、スチレン1026g及びメタクリル酸メチル474gで構成される。したがって、得られたスチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂粒子全体に対して、スチレンに由来する構成単位の量が65重量%、メタクリル酸メチルに由来する構成単位の量が30重量%、グラファイトの量が5重量%である。得られたスチレン系樹脂粒子は、X≧1.1×Yの関係を満たし、表層部以外の部分にグラファイトが十分に偏在していた。
【0171】
この発泡性樹脂粒子を用いて予備発泡を行ったところ、嵩密度0.05g/cm
3(嵩倍率20倍)までしか発泡せず、良好な発泡粒子を得ることができなかった。したがって、良好な発泡成形体を得ることができなかった。
【0172】
〔比較例5〕
重合工程において、混合比が(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=11:4であるスチレンとメタクリル酸メチルとの混合モノマーに代えて、混合比が(スチレンの重量):(ジビニルベンゼンの重量)=3:2であるスチレンとジビニルベンゼンとの混合モノマーを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、スチレン系樹脂粒子及び発泡性樹脂粒子を作製した。
【0173】
本例では、スチレン系樹脂種粒子500gは、グラファイト100g及びスチレン単独重合体400gで構成され、混合モノマー1500gは、スチレン900g及びジビニルベンゼン600gで構成される。したがって、得られたスチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂粒子全体に対して、スチレンに由来する構成単位の量が65重量%、ジビニルベンゼンに由来する構成単位の量が30重量%、グラファイトの量が5重量%である。得られたスチレン系樹脂粒子は、X≧1.1×Yの関係を満たし、表層部以外の部分にグラファイトが十分に偏在していた。
【0174】
この発泡性樹脂粒子を用いて予備発泡を行ったところ、嵩密度0.1g/cm
3(嵩倍率10倍)までしか発泡せず、良好な発泡粒子を得ることができなかった。したがって、良好な発泡成形体を得ることができなかった。
【0175】
〔比較例6〕
重合工程において、混合比が(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=11:4であるスチレンとメタクリル酸メチルとの混合モノマーに代えて、混合比が(スチレンの重量):(メタクリル酸イソボルニルモノマーの重量)=3:2であるスチレンとメタクリル酸イソボルニルとの混合モノマーを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、スチレン系樹脂粒子及び発泡性樹脂粒子を作製した。
【0176】
本例では、スチレン系樹脂種粒子500gは、グラファイト100g及びスチレン単独重合体400gで構成され、混合モノマー1500gは、スチレン900g及びメタクリル酸イソボルニル600gで構成される。したがって、得られたスチレン系樹脂粒子は、スチレン系樹脂粒子全体に対して、スチレンに由来する構成単位の量が65重量%、メタクリル酸イソボルニルに由来する構成単位の量が30重量%、グラファイトの量が5重量%である。得られたスチレン系樹脂粒子は、X≧1.1×Yの関係を満たし、表層部以外の部分にグラファイトが十分に偏在していた。
【0177】
この発泡性樹脂粒子を用いて予備発泡を行ったところ、嵩密度0.033g/cm
3(嵩倍率30倍)までしか発泡せず、良好な発泡粒子を得ることができなかった。したがって、良好な発泡成形体を得ることができなかった。
【0178】
〔比較例7〕
(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体粒子の製造)
内容量5リットルの攪拌機付き重合容器に、水性媒体としての水2000gと、懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム7gと、アニオン界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム2.7gとを供給し、重合容器の内容物を攪拌しながら、混合比が(スチレンの重量):(メタクリル酸メチルの重量)=15:4であるスチレンとメタクリル酸メチルとの混合モノマー2000gと、重合開始剤としてのベンゾイルパーオキサイド9.45g及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート2gとを添加した。さらに重合容器の内容物を攪拌しながら、重合容器の内温を90℃に昇温して重合を行った。そして、重合容器の内温を90℃に6時間保持し、さらに重合容器の内温を125℃に昇温して125℃に2時間保持した後、重合容器を冷却した。そして、重合容器の内容物から固形物を分離することにより、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体粒子を得た。
【0179】
(スチレン系樹脂種粒子の製造)
得られたスチレン−メタクリル酸メチル共重合体粒子1800gと、鱗片状グラファイト200g(日本黒鉛工業株式会社製、商品名「J−CPB」)とを二軸押出機に供給して、230℃で溶融混練して二軸押出機から直径0.5mmのストランド状に押し出した。得られたストランドを長さ1.0mm毎に切断して、グラファイトを5重量%含有する直径1.0mmの球状のスチレン系樹脂種粒子を作製した。
【0180】
さらに、この円柱状のスチレン系樹脂種粒子を実施例1のスチレン系樹脂種粒子に代えて含浸工程をおこない、スチレン系樹脂粒子及び発泡性樹脂粒子を作製した。得られたスチレン系樹脂粒子は、X<1.1×Yであり、表層部以外の部分へのグラファイトの十分な偏在は見られなかった。
【0181】
この発泡性樹脂粒子を用いて予備発泡を行ったところ、嵩密度0.033g/cm
3(嵩倍率30倍)までしか発泡せず、良好な発泡粒子を得ることができなかった。また、熱融着性の低下により、良好な発泡成形体を得ることができなかった。
【0182】
各実施例及び各比較例について、スチレン系樹脂粒子の表層部の吸光度比A及び中心部の吸光度比B、発泡成形体の加熱寸法変化率、並びに発泡成形体の熱伝導率を測定し、スチレン系樹脂粒子の表層部へのメタクリル酸メチル等に由来する構成単位の偏在を評価し、発泡成形体の耐熱性(加熱寸法安定性)、発泡性、及び融着性を評価し、総合評価を行った。これら測定結果及び評価結果を、各実施例及び各比較例の組成と共に表1に示す。なお、表1の評価の項中における「─」という記載は、嵩倍率の高い良好な発泡成形体を成形できなかったため、測定又は評価を行わなかったことを示す。
【0183】
【表1】
【0184】
実施例1〜3と比較例1及び2との比較により、コモノマー(メタクリル酸メチル)に由来する構成単位の量をスチレン系樹脂粒子全体に対して20〜40重量%とすることにより、コモノマー(メタクリル酸メチル)に由来する構成単位の量がスチレン系樹脂粒子全体に対して20重量%未満である場合と比較して、発泡成形体の加熱寸法変化率を小さくすることができ、発泡成形体の耐熱性を向上できることが分かった。
【0185】
また、実施例1〜3と比較例3との比較により、コモノマー(メタクリル酸メチル)に由来する構成単位の量をスチレン系樹脂粒子全体に対して20〜40重量%とすることにより、コモノマー(メタクリル酸メチル)に由来する構成単位の量がスチレン系樹脂粒子全体に対して40重量%を超える場合と比較して、発泡性樹脂粒子の発泡性を向上でき、嵩倍率の高い発泡粒子及び発泡成形体を得ることができることが分かった。
【0186】
また、実施例2及び4と比較例4との比較により、吸光度比A及び吸光度比Bの関係をA>Bとすることにより、吸光度比A及び吸光度比Bの関係がA≦Bである場合(比較例4)と比較して、発泡性樹脂粒子の発泡性を向上でき、嵩倍率の高い発泡粒子及び発泡成形体を得ることができることが分かった。
【0187】
また、実施例2及び5と比較例5及び6との比較により、コモノマー(メタクリル酸メチル)の主成分をメタクリル酸メチルとすることにより、コモノマーの主成分がメタクリル酸メチル以外のコモノマー(ここでは、メタクリル酸イソボルニル又はジビニルベンゼン)である場合と比較して、発泡性樹脂粒子の発泡性を向上でき、嵩倍率の高い発泡粒子及び発泡成形体を得ることができることが分かった。
【0188】
また、実施例1と比較例7との比較により、吸光度比A及び吸光度比Bの関係をA>Bとすることにより、吸光度比A及び吸光度比Bの関係がA≦Bである場合(比較例7)と比較して、発泡性樹脂粒子の発泡性を向上でき、嵩倍率の高い発泡粒子及び発泡成形体を得ることができること、及び、スチレン系樹脂粒子全体におけるグラファイトの含有率X重量%とスチレン系樹脂粒子の表層部におけるグラファイトの含有率をY重量%とがX≧1.1×Yの関係式を満たすことにより、X<1.1×Yである場合(比較例7)と比較して、発泡成形体の融着性を向上できることが分かった。