特許第5947747号(P5947747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947747
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】張力制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20160623BHJP
   B65H 23/14 20060101ALI20160623BHJP
   B65H 27/00 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   H01M4/04 A
   B65H23/14
   B65H27/00 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-109930(P2013-109930)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-229548(P2014-229548A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 秀宣
(72)【発明者】
【氏名】梅原 将一
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−84465(JP,A)
【文献】 特開平5−162912(JP,A)
【文献】 特開2002−179310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
B65H 23/14
B65H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の集電体の少なくとも一方の面に活物質層を設けた電池用基材を連続搬送する生産ラインにおいて、上記連続搬送中の電池用基材を両側から挟み込む一対のフィードロールと、該両フィードロールの一方を回転駆動させる駆動手段とを備え、該駆動手段で上記両フィードロールの一方の周速度を上記電池用基材の搬送速度に対して変化させることにより、上記両フィードロール間を通過する前後の上記電池用基材にかかる張力を変化させる張力制御装置であって、
上記両フィードロールの他方の外周面には、ロール周方向に延びる凹条溝がロール回転軸心方向に所定の間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする張力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用基材を連続搬送する生産ラインにおいて、連続搬送中の電池用基材にかかる張力を通過前後で変化させる張力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1には、連続搬送されるシート状の集電体に電極合剤を塗工して二次電池とする電池製造装置が開示され、該電池製造装置は、上記集電体を繰り出す繰出ロールと、該繰出ロールから繰り出された集電体が巻き掛けられ、回転動作により上記集電体を送り出すバックアップロールと、該バックアップロールに対向配置され、連続搬送される集電体に電極合剤を塗工するダイコーターとを備えている。そして、上記バックアップロールと上記繰出ロールとの間には、上記連続搬送中の集電体を挟み込むとともに回転動作によりその間を通過させる一対のフィードロールが設けられ、該フィードロール間を通過する前後において上記集電体にかかる張力を変化させるようにしている。
【0003】
ところで、特許文献1の如き製造装置を用いて、集電体に活物質層を貼り付けた電池用基材を連続搬送するとともに、上記活物質層に難燃剤を塗工して上記活物質層を被覆する保護層を形成する場合がある。そして、上記連続搬送する電池用基材は、近年、二次電池の容量を大きくするために、難燃剤を塗工する前の活物質層を上記集電体と共に一対のプレスロールにて圧縮して高密度化するのが一般的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−33426号公報(0010〜0031欄、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、活物質層を集電体と共に一対のプレスロールで圧縮すると、集電体が金属板であるため、上記集電体及び活物質層が波形状に湾曲してしまう。したがって、上述の如き両フィードロール間を上記集電体及び活物質層が通過する際に、当該集電体及び活物質層の湾曲した部分が両フィードロールで押し潰されて折れ曲がってしまい永久ジワとなるおそれがある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電池用基材を連続搬送する生産ラインにおいて、電池用基材に永久ジワを発生させずに電池用基材にかかる張力を調整できる張力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、フィードロールの外周面の形状に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、シート状の集電体の少なくとも一方の面に活物質層を設けた電池用基材を連続搬送する生産ラインにおいて、上記連続搬送中の電池用基材を両側から挟み込む一対のフィードロールと、該両フィードロールの一方を回転駆動させる駆動手段とを備え、該駆動手段で上記両フィードロールの一方の周速度を上記電池用基材の搬送速度に対して変化させることにより、上記両フィードロール間を通過する前後の上記電池用基材にかかる張力を変化させる張力制御装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、本発明では、上記両フィードロールの他方の外周面には、ロール周方向に延びる凹条溝がロール回転軸心方向に所定の間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明では、電池用基材を一対のフィードロールで挟み込んだ際、一方のフィードロール外周面と他方のフィードロールの凹条溝との間に空間が形成されるので、両フィードロールに挟み込まれて行き場のなくなった電池用基材の湾曲部分が上記空間に逃げ込む。したがって、電池用基材の湾曲部分が両フィードロール間で折れ曲がって永久ジワとなるのを防ぎながら一対のフィードロールで連続搬送中の電池用基材の張力を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る張力制御装置が配設された生産ラインのレイアウト図である。
図2図1のA−A線における断面図である。
図3図1のB−B線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態の生産ライン1を示す。該生産ライン1は、連続搬送するシート状の電池用基材10の両面にそれぞれ難燃剤を塗工して2〜5μmの保護層10cを形成するようになっていて、上記生産ライン1の上流側から、上記電池用基材10を繰り出す基材繰出工程2と、該基材繰出工程2から繰り出された上記電池用基材10の張力を通過前後で変更させる第1張力変更工程3と、上記電池用基材10に塗工を施す塗工工程4と、上記電池用基材10の蛇行搬送を抑制する蛇行抑制工程5と、塗工された電池用基材10を乾燥させる乾燥工程6と、該乾燥工程6を通過した上記電池用基材10の張力を通過前後で変更させる第2張力変更工程7と、上記保護層10cが形成された電池用基材10を巻き取る基材巻取工程8とが順に設けられ、上記電池用基材10は複数のガイドロール11に巻き掛けられて連続搬送されている。
【0014】
上記電池用基材10は、図2及び図3に示すように、厚み10〜20μm程度の銅箔からなる集電体10aと、該集電体10a両面の基材搬送方向に連続して貼り付けられた厚み50〜100μm程度の活物質層10bとからなっている。
【0015】
上記電池用基材10は、上記活物質層10bを高密度化するために図示しない一対のプレスロールで挟み込んで圧縮されたものであり、その幅方向両端部分には、無塗工領域10dが基材搬送方向に連続している。尚、図2及び図3では、便宜上、集電体10a、活物質層10b及び保護層10cの厚みを誇張して記載している。
【0016】
上記基材繰出工程2には、図1に示すように、正面視で略三角形状の支持フレーム2aと、該支持フレーム2aに回転自在に支持され、上記電池用基材10がロール状に巻かれた操出ロール2bとが配置されている。
【0017】
上記塗工工程4には、上記電池用基材10の各面にそれぞれ対向する2つの塗工ユニット4aが配置され、該各塗工ユニット4aは、上記電池用基材10の各面に難燃剤を塗工するようになっている。
【0018】
上記蛇行抑制工程5には、上記無塗工領域10dを上下から挟み込む一対の挟持ローラ5aが各無塗工領域10d毎に設けられ、上記各挟持ローラ5aにより、上記乾燥工程6に搬送される電池用基材10の蛇行(ばたつき)を抑制するようになっている。
【0019】
上記乾燥工程6には、上記蛇行抑制工程5を通過した略水平方向に搬送される電池用基材10を乾燥させるフローティングドライヤ6aが配置され、該フローティングドライヤ6aは、電池用基材10に向かって空気を吐出する複数のノズル6bを備えている。
【0020】
該各ノズル6bは、略水平方向に搬送される電池用基材10の上下両側に基材搬送方向に間隔をあけ、且つ、電池用基材10両側で交互に基材搬送方向に千鳥状にずれて配置されている。
【0021】
そして、上記フローティングドライヤ6aは、上記電池用基材10を搬送する過程で上記各ノズル6bから空気を上記電池用基材10両面に向かって吐出することにより、上記電池用基材10を浮かせた状態で蛇行させながら搬送して難燃剤を乾燥させるようになっている。
【0022】
上記基材巻取工程8には、正面視で略三角形状の支持フレーム8aと、該支持フレーム8aに回転自在に支持され、上記電池用基材10がロール状に巻き取られた巻取ロール8bとが配置されている。
【0023】
上記第1及び第2張力変更工程3、7の各々には、張力制御装置9が配置されている。
【0024】
該張力制御装置9は、連続搬送中の上記電池用基材10を上下両側から挟み込む一対のフィードロール9a、9bを備え、上記電池用基材10は上側に位置するフィードロール9aに巻き掛けられている。
【0025】
上記フィードロール9aは、図3に示すように、鋼材からなる円筒状をなしている。
【0026】
一方、上記フィードロール9bは、炭素繊維強化プラスチックからなる円筒状のロール本体91を備え、該ロール本体91の外周には、ゴム材料で形成された表皮層92が形成されている。
【0027】
該表皮層92には、ロール周方向に延びる凹条溝92aがロール回転軸心方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0028】
上記フィードロール9aには、図1に示すように、当該フィードロール9aをサーボモータ制御により回転駆動させる駆動装置(駆動手段)9cが接続され、該駆動装置9cで上記フィードロール9aの周速度を上記電池用基材10の搬送速度に対して変化させることにより、上記両フィードロール9a、9b間を通過する前後の上記電池用基材10にかかる張力を変化させるようになっている。
【0029】
以上より、本発明の実施形態によると、電池用基材10を一対のフィードロール9a、9bで挟み込んだ際、上側に位置するフィードロール9a外周面と下側に位置するフィードロール9bの凹条溝92aとの間に空間が形成されるので、両フィードロール9a、9bに挟み込まれて行き場のなくなった電池用基材10の湾曲部分W(図3参照)が上記空間に逃げ込む。したがって、電池用基材10の湾曲部分Wが両フィードロール9a、9b間で折れ曲がって永久ジワとなるのを防ぎながら一対のフィードロール9a、9bで連続搬送中の電池用基材10の張力を調整することができる。
【0030】
尚、本発明の実施形態では、表皮層92をゴム材料で形成しているが、これに限らず、金属材料や樹脂材で形成してもよい。
【0031】
また、本発明の実施形態では、ロール本体91を炭素繊維強化プラスチックで形成しているが、これに限らず、金属材料やゴム材料で形成してもよい。
【0032】
また、本発明の実施形態では、フィードロール9aを金属材料で形成しているが、これに限らず、樹脂材やゴム材料で形成してもよい。
【0033】
また、本発明の実施形態では、フィードロール9aを駆動装置9cで回転駆動させているが、フィードロール9bを駆動装置9cで駆動させるとともに、フィードロール9aの外周面に複数の凹条溝92aを形成するようにしてもよい。
【0034】
また、本発明の実施形態では、集電体10aの基材搬送方向に連続して活物質層10bが貼り付けられた電池用基材10を搬送する生産ライン1において上記張力制御装置9が適用されているが、集電体10aの基材搬送方向に一定の間隔をあけて活物質層10bが貼り付けられた電池用基材10を搬送する生産ラインにおいても上記張力制御装置9を適用することができる。
【0035】
また、本発明の実施形態では、集電体10aの両面に活物質層10bが貼り付けられた電池用基材10が連続搬送される生産ライン1において上記張力制御装置9が適用されているが、集電体10aの少なくとも一方の面に活物質層10bが貼り付けられた電池用基材10が連続搬送される生産ラインにおいても上記張力制御装置9を適用することができる。
【0036】
また、本発明の実施形態では、シート状の電池用基材10に難燃剤を塗工する生産ライン1に上記張力制御装置9を適用したが、これに限らず、シート状の電池用基材10を搬送する生産ラインであれば、上記張力制御装置9を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、電池用基材を連続搬送する生産ラインにおいて、連続搬送中の電池用基材にかかる張力を通過前後で変化させる張力制御装置に適している。
【符号の説明】
【0038】
1 生産ライン
9 張力制御装置
9a、9b フィードロール
9c 駆動装置(駆動手段)
10 電池用基材
10a 集電体
10b 活物質層
92a 凹条溝
図1
図2
図3