(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、所定形状を有する基材にシート材を熱成形して被覆させるに際して、シート材におけるクラックや位置ずれの発生を抑制することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、型締めされたときに内部に形成される収容空間内で、所定形状を有する基材に対してシート材を熱成形して被覆させるために用いられる金型セットの特徴構成は、
第一本体部と、前記基材を載置するための載置部とを含む第一型部材と、
前記第一本体部に対して相対移動して前記第一本体部に密接可能な第二本体部と、前記第二本体部に対して熱伝達可能に設けられた加熱手段と、前記第二本体部における前記第一本体部と対向する側の面に形成された、前記基材の外面形状を模した形状の凹部とを含む第二型部材と、
を備える点にある。
【0008】
この特徴構成によれば、第二型部材の第二本体部は所定形状の凹部を有するので、シート材を加熱した状態で当該シート材を凹部の表面に吸着させることで、加熱状態のシート材を、基材への被覆前に、基材の外面形状に類似する形状に賦形することができる。これにより、基材形状によらずに、最終的に得られる成形品において、部位に応じたシート材の伸び量のばらつきを小さく抑えることができる。よって、成形品の外周側部分におけるクラックの発生や基材に対するシート材の位置ずれ等の発生を、有効に抑制することができる。
【0009】
以下、本発明に係る金型セットの好適な態様について説明する。
【0010】
1つの態様として、前記第一型部材は、前記第一本体部における前記第二本体部と対向する側の面に形成された凹部をさらに含み、型締め方向に見て、前記第一型部材の凹部の外縁が前記第二型部材の凹部の外縁を包含するように、前記第一型部材の凹部と前記第二型部材の凹部との位置関係が設定されていると好適である。
【0011】
この構成によれば、基材の外面形状に類似する形状に予め賦形された状態のシート材は、賦形部分の周囲に、型締め方向に見て第一型部材の凹部と重なる位置に、未だなお平面状を維持している平面状包囲部分を有する。この平面状包囲部分は、金型セット内でシート材(ここでは特に賦形部分)を移動させて基材に被覆させる際に、第一型部材の凹部の外縁を起点として当該凹部の底部側に向かって変位しながら伸びる。つまり、平面状包囲部分は、シート材における屈曲しながら伸延する屈伸部として機能する。これにより、予め賦形された状態のシート材の賦形部分を、その形状を保持したまま基材に被覆させやすい。結果的に、成形品の外周側部分におけるクラックの発生や基材に対するシート材の位置ずれ等の発生を、より有効に抑制することができる。
【0012】
1つの態様として、前記第一型部材の凹部の外縁と前記第二型部材の凹部の外縁との間の、前記第二本体部における前記第一本体部と対向する側の面に沿った離間長さが、前記第一型部材の凹部の深さの0.6倍〜2.5倍に設定されていると好適である。
【0013】
第一型部材の凹部の外縁と第二型部材の凹部の外縁との間の、第二本体部における第一本体部と対向する側の面に沿った離間長さは、上記の平面状包囲部分を型締め方向に見た場合の幅に相当する。平面状包囲部分の幅が第一型部材の凹部の深さに対して過小な場合には、当該平面状包囲部分は、屈曲しながら伸延する屈伸部としての機能を十分に発揮できない可能性がある。一方、平面状包囲部分の幅が第一型部材の凹部の深さに対して過大な場合には、基材に対する1回の被覆のために必要となるシート材のサイズが大きくなり、経済的ではない。そこで、これらの点を考慮して平面状包囲部分の幅を第一型部材の凹部の深さの0.6倍〜2.5倍に設定することで、過度な歩留まりの上昇を抑制しながら、クラックの発生や位置ずれ等の発生を有効に抑制することができる。
【0014】
1つの態様として、前記第二型部材は、当該第二型部材の凹部の表面にそれぞれ開口するとともに調圧機構に接続される複数の通気路をさらに含み、複数の前記通気路の経路長は、型締め方向に見た場合の開口位置が前記凹部の最深部から外縁側となるに従って長くなるように設定されていると好適である。
【0015】
この構成によれば、複数の通気路は、型締め方向に見た場合の開口位置が凹部の外縁部から最深部となるに従って、経路長が短くなるように設定される。このため、調圧機構がガス吸引を行う際には、加熱状態にあるシート材は、最深部から徐々に外縁部に向かって凹部形状に追従する。よって、シート材の賦形時における全体的な位置ずれを有効に抑制することができる。また、第二型部材とシート材との間を加圧する際にも、調圧機構から供給される圧縮ガスは、最深部で先行し、外縁部でやや遅れて噴出する。よって、基材に対して、最上部から徐々に外縁部に向かってシート材を被覆させることができる。つまり、予め賦形されたシート材の基材への被覆時における全体的な位置ずれをも有効に抑制することができる。従って、基材に対するシート材の高精度な位置合わせが可能となる。
【0016】
1つの態様として、複数の前記通気路のそれぞれが、前記第二型部材の凹部の表面に対して略直交する方向に開口すると好適である。
【0017】
この構成によれば、全ての通気路の凹部の表面への開口面積を、実質的に等しくすることができる。これにより、第二型部材(凹部)へのシート材の吸着や、第二型部材(凹部)からのシート材の吐出を、シート材の全体に亘って略均一化することができる。よって、例えば通気路の開口部の跡がシート材に残るのを抑制することができ、成形品の外観を良好に維持することができる。
【0018】
1つの態様として、前記第二型部材の凹部が、その最深部に、前記載置部側に向かって局所的に突出する突出部を有すると好適である。
【0019】
この構成によれば、調圧機構がガス吸引を行う際に、加熱状態にあるシート材を、最深部から徐々に外縁部に向かって凹部形状に追従させることが容易となる。また、第二型部材とシート材との間を加圧する際に、基材に対して、最上部から徐々に外縁部に向かってシート材を被覆することが容易となる。よって、シート材の賦形時や、当該賦形されたシート材の基材への被覆時における位置ずれを、さらに有効に抑制することができる。従って、基材に対するシート材の位置精度をさらに高めることができる。
【0020】
1つの態様として、前記シート材は、図柄層を有する加飾シートであり、前記第二型部材が、当該第二型部材の凹部における前記基材の変曲部に対応する位置に設けられた断熱部材をさらに含むと好適である。
【0021】
シート材が、図柄層を有する加飾シートである場合には、部位に応じたシート材の伸び量のばらつきに起因して、基材に対するシート材の位置ずれの問題に加えて、意匠性が低下するという課題がある。例えば基材の変曲部付近では、シート材の伸び量が大きくなりやすく、図柄が歪んだりコントラストが大きくなったりする場合がある。この点、上記のように、凹部における基材の変曲部に対応する位置に断熱部材を設けることで、当該位置におけるシート材の伸びを抑制できる。よって、シート材の伸び量を調整することができ、加飾された成形品の意匠性を向上させることができる。
【0022】
1つの態様として、前記第一型部材が、前記載置部を取り囲むように前記第一本体部上に設けられた枠状の中間壁部をさらに含み、前記第二本体部が、前記中間壁部を介して前記第一本体部に密接可能とされていると好適である。
【0023】
この構成によれば、第一型部材が中間壁部を含まずに構成される場合に比べて、第二型部材の凹部の深さが浅くなる。よって、第二型部材における凹部以外の部分にシート材を添わせたとき、シート材と凹部の表面との離間距離が短くなるので、短時間でシート材を加熱することができる。その結果、シート材の加熱からシート材の賦形、さらには基材に対するシート材の被覆までの全体のサイクルタイムを短縮することができる。
【0024】
本発明に係る熱成形装置の特徴構成は、
上述した金型セットと、
前記シート材をロール巻きされた状態で保持するシート保持部と、
前記シート材の端部を把持して当該シート材を引き出すシート引出部と、
前記第一型部材を、型締め方向に見て前記第二型部材と重なる重複位置と前記第二型部材とは重ならない非重複位置との間でスライド移動させるスライド機構と、
前記収容空間よりもシート送り方向の上流側で前記シート材を切断するシート切断部と、
を備える点にある。
【0025】
この特徴構成によれば、所定形状を有する基材にシート材を熱成形して被覆させる場合において、クラックの発生や基材に対するシート材の位置ずれを抑制しつつ、ロールtoシートの連続処理により効率的に成形品を得ることができる。
【0026】
以下、本発明に係る熱成形装置の好適な態様について説明する。
【0027】
1つの態様として、前記第一型部材に対して接触及び離間可能な状態で設けられた冷却機構をさらに備えると好適である。
【0028】
この構成によれば、第一型部材と冷却機構とが離間した状態で、例えば基材に対するシート材の被覆時に、基材とシート材とを適切に粘着させることができる。一方、基材にシート材を粘着させた後は、第一型部材と冷却機構とを接触させることで、基材とシート材とを効率的に冷却して接着させることができる。よって、成形品が得られるまでのサイクルタイムを短縮することができる。
【0029】
本発明に係る、型締めされたときに内部に収容空間を形成する一対の第一型部材及び第二型部材を備える金型セットを用いて、前記収容空間内で所定形状を有する基材に対してシート材を熱成形して被覆させる熱成形方法の特徴構成は、
前記第一型部材は、前記基材を載置するための載置部を含み、
前記第二型部材は、加熱可能に構成されているとともに前記基材の外面形状を模した形状の凹部を含み、
前記第二型部材における前記凹部以外の部分に接するように配置された前記シート材を加熱する加熱工程と、
前記シート材と前記第二型部材との間を減圧し、加熱状態の前記シート材を前記凹部に吸着させて当該凹部に沿うように賦形する賦形工程と、
前記シート材と前記第一型部材との間を減圧し、前記シート材と前記第二型部材との間を加圧して、前記基材に前記シート材を被覆させる被覆工程と、
を備える点にある。
【0030】
この特徴構成によれば、第二型部材は所定形状の凹部を有するので、賦形工程においてシート材を凹部に沿うように吸着させることで、加熱工程により加熱された状態のシート材を、基材への被覆前に、基材の外面形状に類似する形状に賦形することができる。その後、被覆工程を実行することで、基材形状によらずに、最終的に得られる成形品において、部位に応じたシート材の伸び量のばらつきを小さく抑えることができる。よって、成形品の外周側部分におけるクラックの発生や基材に対するシート材の位置ずれ等の発生を、有効に抑制することができる。
【0031】
また、上記の特徴構成によれば、被覆工程において、シート材と第一型部材との間を減圧し、シート材と第二型部材との間を加圧することで、シート材の基材への押付け力を増大させることができる。よって、基材形状によらずに、基材とシート材との間にエアーが残留することが抑制され、高品質な成形を実現することができる。
【0032】
以下、本発明に係る熱成形方法の好適な態様について説明する。
【0033】
1つの態様として、前記金型セットと、前記第一型部材に対して接触及び離間可能な状態で設けられた冷却機構と、を備える熱成形装置を用いるとともに、前記冷却機構を前記第一型部材に接触させて前記基材を冷却する冷却工程をさらに備え、前記冷却工程を、前記賦形工程の開始時以後であってかつ前記被覆工程の開始時前に開始すると好適である。
【0034】
この構成によれば、第一型部材と冷却機構とが離間した状態で、例えば被覆工程において、基材とシート材とを適切に粘着させることができる。一方、基材にシート材を粘着させた後は、冷却工程において第一型部材と冷却機構とを接触させることで、基材とシート材とを効率的に冷却して接着させることができる。よって、成形品が得られるまでのサイクルタイムを短縮することができる。また、この構成によれば、冷却工程の開始時期が、賦形工程の開始時以後であってかつ被覆工程の開始時前であるので、基材に対するシート材の接着が完了するまでの時間を短縮することができる。よって、成形品が得られるまでのサイクルタイムを有効に短縮することができる。
【0035】
なお、本発明は、上述した金型セットを用いて製造された熱成形品も、権利の対象とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
1.第一の実施形態
本発明に係る金型セット並びにこれを用いた熱成形装置及び熱成形方法の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、金型セット5を用いて、収容空間R(
図5を参照)内で所定形状を有する基材3に対してシート材2を熱転写して被覆させる熱転写装置1(熱転写方法)を例として説明する。この熱転写装置1は、ロール状に保持されたシート材2の端部を引き出し、金型セット5に配置された基材3に対してシート材2を供給して、金型セット5内に形成される収容空間Rで基材3への模様の転写を連続的に行う装置である。熱転写装置1は、ロールtoシートの連続処理を行う装置として構成されている。金型セット5は、第一型部材50と第二型部材60とを備え、型締めされたときに内部に形成される収容空間R内で、所定形状を有する基材3に対してシート材2を熱転写して被覆させるために用いられる。
【0038】
なお、本実施形態では、引き出されるシート材2が順次送られる方向を「シート送り方向F」と定義する。このシート送り方向Fは、シート材2の長手方向に平行である。また、本実施形態では、「上流」及び「下流」の用語は、シート送り方向Fを基準として定義する。すなわち、シート送り方向Fに沿って、相対的にシート保持部10側(
図1における左上側)を「上流側」と表し、その反対側(
図1における右側)を「下流側」と表す。
【0039】
図1に示すように、熱転写装置1は、金型セット5と、シート保持部10と、シート引出部20と、スライド機構30と、シート切断部40とを備えている。また、熱転写装置1は、金型セット5に接続された調圧機構70を備えている。
【0040】
シート保持部10は、シート材2をロール巻きされた状態で保持している。シート保持部10は、基台上に固定された保持台11と、シート材2の幅方向(シート送り方向Fに直交する方向)の両側で対向するように保持台11に立設された一対の保持板12と、一対の保持板12の間に架け渡された支軸13とを有する。シート材2は、支軸13にロール巻きされた状態で保持されている。シート材2は、シート送り方向Fの下流側の端部が、シート引出部20を構成する可動狭持部22によって挟持されて引き出される(
図4を参照)。シート材2は、ガイドローラ14によって案内されて金型セット5(第一型部材50と第二型部材60との間)に供給される。
【0041】
シート材2は、基体シート2Aと、この基体シート2Aに形成された転写層2Bとを有する。基体シート2Aは、長尺状のシート体であり、このシート体上に断続的に形成される複数の転写層2Bを支持している。基体シート2Aは、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂等の合成樹脂を用いて構成することができる。これらの樹脂の共重合体や混合物を用いて構成しても良い。また、基体シート2Aは、単層シートとして構成しても良いし、複数の単層シートを積層してなる積層シートとして構成しても良い。
【0042】
本実施形態では、シート材2として、図柄層を有する加飾シートを用いる。つまり、転写層2Bは図柄層を含んでいる。この図柄層は、例えば着色インキや金属薄膜等を含み、文字や図柄、金属光沢等を表現する。また、転写層2Bは、基材3と図柄層との接着性を向上させるための接着層や、表面強度を向上させて耐擦傷性を付与するためのハードコート層、層間密着性を向上させるためのアンカー層等をさらに有しても良い。さらに、基体シート2Aと転写層2Bとの間に、基体シート2Aからの転写層2Bの剥離性を向上させるための離型層が備えられても良い。これらの各層は、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、及びオフセット印刷法等の印刷法や、グラビアコート法、ロールコート法、及びコンマコート法等のコート法等により形成することができる。
【0043】
シート引出部20は、ロール巻きされた状態のシート材2の端部を把持して、当該シート材2を引き出す。シート引出部20は、シート送り方向Fの所定位置に固定された固定挟持部21と、シート送り方向Fに沿って移動可能に構成された可動狭持部22とを有する。固定挟持部21は、金型セット5よりもシート送り方向Fの上流側に配置されている。可動狭持部22は、固定挟持部21よりもシート送り方向Fの下流側を、金型セット5の全長以上に亘ってシート送り方向Fにスライド移動するように構成されている。固定挟持部21及び可動狭持部22は、それぞれ上側挟持部と下側挟持部とを有する棒状のクランプとして構成されている。シート引出部20は、可動狭持部22がシート材2の端部を挟持し、かつ、固定挟持部21が開放された状態で、可動狭持部22が下流側に向かってスライドすることで、ロール状に保持されたシート材2を引き出す。
【0044】
金型セット5は、型締めされたときに内部に基材3を収容するための収容空間R(
図5を参照)を形成する第一型部材50と第二型部材60とを備えている。なお、収容空間Rは、例えば射出成型に用いられる金型セットが型締めされたときに内部に形成されるキャビティ等とは異なり、基材3の周囲に広い余裕スペースを有する大収容空間である。金型セット5は、固定挟持部21よりもシート送り方向Fの下流側に配置されている。第一型部材50と第二型部材60とは、互いに近接して型締めされ、また、互いに離間して型開きされるように、型締め方向C(本例では上下方向)に相対移動可能に構成されている。第二型部材60は、型締め方向Cに見てシート材2と重なる位置に設けられている。
【0045】
スライド機構30は、第一型部材50をシート材2の幅方向に沿ってスライド移動させる。本実施形態では、スライド機構30は、幅方向に沿って互いに平行となるように基台上に配置された複数のガイドレール31と、このガイドレール31上をスライド可能な架台32とを有する。架台32に、第一型部材50が固定されている。これにより、第一型部材50は、ガイドレール31に沿って、型締め方向Cに見て第二型部材60と重なる重複位置と、型締め方向Cに見て第二型部材60とは重ならない非重複位置との間でスライド可能となっている。第一型部材50の非重複位置で、当該第一型部材50に基材3を新たに載置したり、転写後の基材3を取り出したりすることができる。また、その後、重複位置に第一型部材50をスライド移動させることで、第一型部材50と第二型部材60とを上下に対向させることができる。なお、
図2は、第二型部材60を取り除いた状態での熱転写装置1の平面図を示している。
【0046】
シート切断部40は、収容空間Rよりもシート送り方向Fの上流側でシート材2を切断する。本実施形態では、シート切断部40は、シート送り方向Fにおける固定挟持部21と金型セット5との間に設けられている。シート切断部40は、固定挟持部21と金型セット5との間に保持されたシート材2を、幅方向に切断する。シート切断部40は、シート材2の幅方向の全域に亘ってスライド可能なカッター41(例えば、ロータリーカッターやヒートカッター等)により構成されている。なお、収容空間Rよりも上流側において第一型部材50及び第二型部材60のいずれかに内在されたカッター等により、シート切断部40が構成されても良い。
【0047】
図1、
図3及び
図4等に示すように、第一型部材50は、第一本体部51と、基材3を載置するための載置部56とを含む。第一本体部51は、金属材料を用いて構成されている。
図3に示すように、第一本体部51は、型締め方向Cに見て略矩形状に形成されている。なお、
図3は、第一型部材50及び第二型部材60のそれぞれを、パーティング面側から見た図である。
図3では、本来は互いに対向する2つの面(第一型部材50の上面及び第二型部材60の下面)を、上下に並べて同一平面状に表示している。第一本体部51は、第二本体部61に対して型締め方向C(上下方向)に相対移動して外縁部が第二本体部61に密接可能に構成されている(
図5を参照)。
【0048】
第一本体部51の中央部には、載置部56が固定されている。載置部56は、基材3の形状に対応する外面形状を有している。本実施形態では、一例として、例えば多機能携帯電話(スマートフォン)の筐体として用いられる合成樹脂製の半ケースを基材3としている。本実施形態では、基材3は、平板状に形成された略矩形状の平板部3Aと、この平板部3Aの四方を取り囲むように一体的に形成された側壁部3Bとを有する(
図4及び
図8を参照)。載置部56は、基材3の平板部3Aの下面及び各側壁部3Bの内面を支持するように構成されている。
【0049】
本実施形態では、第一型部材50は、第一本体部51における第二型部材60と対向する側の面(本例では上面)に形成された第一凹部54をさらに含む。第一本体部51は、載置部56の周囲を取り囲むように形成された周壁部52を有しており、この周壁部52の内面(本例では傾斜面53として形成されている)と、底部の表面とにより、第一凹部54が画定されている。
図3に示すように、第一凹部54は、型締め方向Cに見て略矩形状(丸みを帯びた角を有する矩形状)に形成されている。第一凹部54は、型締め方向Cに見て、載置部56と同心状に(中心部が揃った状態で)配置されている。第一凹部54の大きさは、載置部56の大きさに比べて1.5倍〜3倍程度に設定されている。また、第一凹部54の深さは、載置部56及び基材3を合わせた全体の高さよりも僅かに大きく設定されている。
【0050】
第一型部材50は、第一本体部51の表面に開口する少なくとも1つの第一通気路58をさらに含む。本実施形態では、複数の第一通気路58が、第一本体部51における第一凹部54の表面にそれぞれ開口するように形成されている。第一通気路58は、載置部56の外側であって載置部56の近傍(基材3の端部付近)に開口するように形成されている。第一通気路58は、配管等を介して調圧機構70に接続されている。
【0051】
図1、
図3及び
図4等に示すように、第二型部材60は、第二本体部61と、この第二本体部61に対して熱伝達可能に設けられた加熱手段66と、第二本体部61における第一本体部51と対向する側の面(本例では下面)に形成された第二凹部64とを含む。第二本体部61は、金属材料を用いて構成されている。第二本体部61は、型締め方向Cに見て略矩形状に形成されている(
図3を参照)。第二本体部61は、第一本体部51に対して型締め方向C(上下方向)に相対移動して外縁部が第一本体部51(本例では周壁部52の上端部)に密接可能に構成されている。本実施形態では、第一本体部51と第二本体部61とは、直接的に密接可能とされている。
【0052】
加熱手段66は、第二本体部61を加熱する。加熱手段66は、例えば抵抗熱ヒータ、赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ、誘導加熱装置、及びマイクロ波加熱装置等により構成することができる。本実施形態では、加熱手段66は第二本体部61の上面に固定されることで、第二本体部61に対して熱伝達可能となっている。ただし、このような構成に限定される訳ではなく、例えば加熱手段66が第二本体部61の内部に埋め込まれることで、第二本体部61に対して熱伝達可能とされても良い。
【0053】
第二凹部64は、基材3の外面形状を模した形状を有するように形成されている。ここで、「基材3の外面形状を模した形状」とは、基材3の外面形状に沿う形状、又は基材3の外面形状を概略的に表した形状を意味する。これは、基材3の外面形状に完全に沿うことを要求する概念ではなく、基材3の外面形状に概ね対応していれば足りる概念である。
図4に示すように、本実施形態では、基材3の平板部3A及び側壁部3Bに沿うように、第二凹部64も、水平面に沿う平面部分とその四方の側面部分とを有するように形成されている。
【0054】
図3に示すように、第二凹部64は、型締め方向Cに見て略矩形状(丸みを帯びた角を有する矩形状)に形成されている。第二凹部64は、型締め方向Cに見て、載置部56及び第一凹部54と同心状に配置されている。第二凹部64の大きさは、載置部56の大きさよりも大きく、かつ、第一凹部54の大きさよりも小さく設定されている。つまり、型締め方向Cに見て、第一凹部54の外縁54Eが第二凹部64の外縁64Eを包含するように、第一凹部54と第二凹部64との位置関係が設定されている。さらに、型締め方向Cに見て、第二凹部64の外縁64Eが載置部56の外縁を包含し、かつ、第一凹部54の外縁54Eが第二凹部64の外縁64Eを包含するように、載置部56と第一凹部54と第二凹部64との位置関係が設定されている。
【0055】
このような構成では、第二本体部61は、当該第二本体部61の下面における第二凹部64の外縁64Eと第一凹部54の外縁54Eに対応する位置との間に、第二凹部64を包囲するように形成される枠状包囲面61Aを有する。なお、
図3では、この枠状包囲面61Aに色を付して表示している。枠状包囲面61Aは、型締め方向Cに見て、所定幅を有する帯状に形成されている。図示の例では、長手方向に沿う辺と短手方向に沿う辺とで枠状包囲面61Aの幅が異なるように設定されているが、等しく設定されていても良い。
【0056】
枠状包囲面61Aの幅は、第一凹部54の外縁54Eと第二凹部64の外縁64Eとの間の、第二本体部61の下面に沿った離間長さに相当し、第一凹部54と第二凹部64との大きさの差に応じた値となる。枠状包囲面61Aの幅は、金型セット5の全体の大きさから見て有意に識別可能な値となるように設定されることが好ましい。枠状包囲面61Aの幅は、例えば第一凹部54の深さの0.6倍〜2.5倍の大きさとなるように設定することができる。この場合、第一凹部54における第二凹部64の外縁64Eに対応する位置(
図4における点P)と第一凹部54の外縁54Eとを結ぶ仮想平面と、第一凹部54の外縁54Eを通る鉛直面とのなす角θは、およそ30°〜70°となる。さらに、枠状包囲面61Aの幅は、例えば第一凹部54の深さの0.8倍〜2倍に設定することができ、この場合、上記なす角θは、およそ40°〜60°となる。また、枠状包囲面61Aの幅は、例えば基材3の長手方向の長さに対して10%〜30%程度の大きさとなるように設定することができる。枠状包囲面61Aの幅は、第一凹部54の深さや基材3のサイズにもよるが、例えば12mm〜50mmとなるように設定することができる。
【0057】
第二型部材60は、第二本体部61の表面に開口する少なくとも1つの第二通気路68をさらに含む。本実施形態では、複数の第二通気路68が、少なくとも第二本体部61における第二凹部64の表面にそれぞれ開口するように形成されている。また、本実施形態では、複数の第二通気路68のうちの一部は、第二本体部61の下面における第二凹部64の周囲の領域(上述した枠状包囲面61A)にそれぞれ開口するように形成されている。第二通気路68は、配管等を介して調圧機構70に接続されている。
【0058】
調圧機構70は、第一通気路58及び第二通気路68にそれぞれ接続され、第一型部材50と第二型部材60との間に形成される収容空間R(
図5を参照)の内部の圧力を調整する。調圧機構70は、収容空間Rの内部を減圧することもできるし、加圧することもできるように構成されている。このため、調圧機構70は、真空タンク71に接続された真空ポンプ72と、圧力タンク73に接続されたコンプレッサ74とを含む。調圧機構70と第一通気路58及び第二通気路68との間の配管の所定位置には複数のバルブが設けられている。制御ユニット(図示せず)からの指令に応じて各バルブが開閉することで、所望のタイミングで収容空間Rの内部が減圧及び/又は加圧される。
【0059】
次に、金型セット5を含む熱転写装置1を用いて行われる熱転写方法について説明する。本実施形態に係る熱転写方法は、載置工程、シート引出工程、型締工程、加熱工程、賦形工程、被覆工程、シート切断工程、及び取出工程を備えている。載置工程及びシート引出工程、型締工程、加熱工程、賦形工程、被覆工程、取出工程は、記載の順に実行される。なお、載置工程とシート引出工程とは順不同で実行されて良い。また、シート切断工程は、型締工程以後であればいずれのタイミングで実行されても良い。以下、順を追って説明する。
【0060】
載置工程は、第一型部材50の載置部56に基材3を載置する工程である。載置工程では、架台32に固定された第一型部材50がガイドレール31に沿って側方に引き出され、非重複位置においてその載置部56に基材3が載置される。その後、第一型部材50はガイドレール31に沿って第二型部材60の下方に戻される。これにより、第二型部材60と基材3が載置された状態の第一型部材50とが、所定間隔を隔てて上下に対向した状態となる。
【0061】
シート引出工程は、ロール巻きされた状態のシート材2を引き出す工程である。シート引出工程では、可動狭持部22が第一型部材50及び第二型部材60よりも上流側までスライド移動して、固定挟持部21によって挟持された状態でその下流側にはみ出たシート材2の端部を挟持する。その後、固定挟持部21による挟持状態が解除され、
図4に示すように可動狭持部22が第一型部材50及び第二型部材60よりも下流側までスライド移動することで、シート材2が引き出される。これにより、所定間隔を隔てて上下に対向した第一型部材50と第二型部材60との間に、シート材2が配置される。なお、基材3とシート材2の転写層2Bとの位置合わせは、第一型部材50又は第二型部材60に光センサ(図示せず)を設けておき、この光センサによる検出結果に基づいて行う。光センサは、金型セット5から独立して設けられても良い。
【0062】
型締工程は、第一型部材50と第二型部材60との型締めを行う工程である。
図5に示すように、型締工程では、第一型部材50と第二型部材60とが互いに近接するように相対移動して、型締めされる。この型締めにより、第一型部材50と第二型部材60との間に、収容空間Rが形成される。このとき、シート材2は、第一型部材50の周壁部52の上端部と第二型部材60の下面の周縁部との間に挟持された状態となる。なお、この状態では、シート材2は平面状の形態を維持している。このため、シート材2は、第二型部材60(第二本体部61)の下面における第二凹部64以外の平面部分に接するように配置された状態となる。また、第一型部材50と第二型部材60との間の収容空間Rは、シート材2よりも第一型部材50側に画定される第一空間R1と、シート材2よりも第二型部材60側に画定される第二空間R2とに区画される。
【0063】
加熱工程は、第二本体部61の下面における第二凹部64以外の平面部分に接するように配置されたシート材2を加熱する工程である。加熱工程では、加熱手段66(
図1を参照)の熱が第二本体部61に伝達され、さらに加熱状態にある第二本体部61の熱が、接触部位を介して直接的にシート材2に伝達される。また、加熱状態にある第二本体部61の熱は、第二空間R2に存在する空気を介して、輻射熱として間接的にシート材2に伝達される。加熱工程は、所定時間継続して実行され、その結果、シート材2は部位によらずに全体が概ね均一に加熱される。
【0064】
賦形工程は、シート材2と第二型部材60との間(第二空間R2)を減圧し、加熱状態のシート材2を、第二凹部64に吸着させて当該第二凹部64に沿うように賦形する工程である。賦形工程では、第二通気路68と真空タンク71(
図1を参照)との間の配管に設けられたバルブが開状態とされ、
図6に示すように、第二通気路68を介して第二空間R2内の空気が真空吸引される。これにより、収容空間Rにおける第二空間R2が高度に減圧され、シート材2を挟んで第一空間R1と第二空間R2との間に圧力差が生じる。その結果、加熱により軟化したシート材2が、第二凹部64の表面に沿って吸着される。なお、このとき、シート材2と第二型部材60とが密着するため、収容空間Rは実質的に第一空間R1のみとなる。
【0065】
このとき、
図6に示すように、加熱状態のシート材2は、第二凹部64の外縁64Eを起点として屈曲しつつ、第二凹部64に沿うように(すなわち、基材3の外面形状に類似する形状となるように)賦形される。つまり、賦形工程を実行することにより、基材3の外面形状に類似する形状を有する凸状の賦形部分2D(
図8も参照)が、被覆工程の実行前にシート材2に形成される。なお、賦形部分2Dの周囲の部分(型締め方向Cに見て第一凹部54と重なる位置にある部分)は、未だなお平面状を維持する。この部分を、ここでは“平面状包囲部分2E”と称する。この平面状包囲部分2Eは、賦形工程の完了時においては、第二本体部61の下面における枠状包囲面61A(
図3を参照)に接する部分である。
【0066】
ところで、シート材2は、第二凹部64に沿うように賦形される際に若干の伸びを伴う。この伸びの影響で、転写層2Bを構成する図柄層もある程度は伸びることになる。但し、シート材2は、収容空間R内で部位によらずに略均一な伸び率で伸びながら賦形される。このため、賦形部分2Dの内側に形成された転写層2Bの文字や図柄も、均一性を維持する。
【0067】
被覆工程は、シート材2と第一型部材50との間(第一空間R1)を減圧し、シート材2と第二型部材60との間(第二空間R2)を加圧して、基材3にシート材2を被覆させる工程である。被覆工程では、まず、第二通気路68と真空タンク71との間の配管に設けられたバルブが閉状態とされるとともに、第二通気路68を介して第二空間R2が大気開放される。これと並行して、第一通気路58と真空タンク71との間の配管に設けられたバルブが開状態とされ、
図7に示すように、第一通気路58を介して第一空間R1内の空気が真空吸引される。これにより、収容空間Rにおける第一空間R1が高度に減圧され、シート材2を挟んで第一空間R1と第二空間R2との間に、賦形工程における圧力差とは反対方向の圧力差が生じる。その結果、それまで第二凹部64の表面に沿っていたシート材2が、第一型部材50側(基材3側)に向かって移動し始める。
【0068】
このとき、収容空間R内において、シート材2は第一凹部54の外縁54Eを起点として屈曲しつつ賦形部分2Dの周囲の部分(平面状包囲部分2E)が伸びて、賦形部分2Dはその形状を保持したままで基材3側に向かって移動する。また、賦形部分2Dは、基材3に対して平行姿勢を保持したままで基材3側に向かって移動する。つまり、平面状包囲部分2Eがシート材2における屈曲しながら伸延する屈伸部として機能することで、賦形部分2Dは、その形状を保持したまま基材3に向かって平行移動する(
図8及び
図9も参照)。
【0069】
図9に示すように、基材3の平板部3Aに対しては賦形部分2Dにおける平面状の頂上部分が先に密着するのに対して、基材3の側壁部3Bと賦形部分2Dの側壁部分との間には僅かに隙間が残る。そこで、被覆工程では、第一空間R1の減圧動作と並行して(或いは、減圧動作を停止しても良い)、第二空間R2の加圧動作を行う。つまり、第二通気路68と圧力タンク73との間の配管に設けられたバルブが開状態とされ、
図10に示すように、第二通気路68を介して第二空間R2内に圧縮空気が導入される。なお、この圧縮空気は、加熱された加熱圧縮空気であっても良い。これにより、収容空間Rにおける第二空間R2が高度に加圧され、第一凹部54及び基材3の表面に沿ってシート材2が押し付けられて密着する。なお、このとき、収容空間Rは実質的に第二空間R2のみとなる。このようにして、基材3の表面にシート材2が被覆される。
【0070】
圧空により基材3の表面に完全に沿うようにシート材2を被覆させる段階では、平面状包囲部分2E以外に、それ以前の段階で未だ基材3に密接していない賦形部分2Dの側壁部分も、ある程度は伸びる。しかし、本実施形態では、賦形工程において予め賦形部分2Dが形成され、この賦形部分2Dは、平面状の頂上部分も含めて、略均一な伸び率で既に伸びている。このため、圧空による被覆段階で賦形部分2Dの側壁部分にさらなる伸びが生じるとは言っても、その伸び量は僅かである。最終的には、賦形部分2Dの部位毎の伸び率に大きなばらつきは生じない。しかも、賦形部分2Dは基材3の外面形状に類似する形状に賦形されているので、基材3の外面形状によらずに、賦形部分2Dの部位毎の伸び率のばらつきを小さく抑えることができる。その結果、成形品の外周側部分におけるクラックの発生や基材3に対するシート材2の位置ずれ等の発生を、有効に抑制することができる。また、図柄層の部位毎の伸び率のばらつきも抑制されるので、加飾された成形品の意匠性を高く維持することができる。
【0071】
また、被覆工程において第二空間R2の加圧も利用することで、シート材2の基材3への押付け力を増大させることができる。よって、基材3の外面形状によらずに、基材3とシート材2との間にエアーが残留することが抑制され、高品質な転写を実現することができる。
【0072】
また、本実施形態では、金型セット5内に基材3を収容する収容空間Rが、第一型部材50の第一凹部54と第二型部材60の第二凹部64との両方によって画定されている。このため、例えば第一型部材50の第一本体部51が凹部を有さない平板状に形成され、収容空間Rが第二型部材60の第二凹部64のみによって画定される場合に比べて、一定の大きさの収容空間Rを確保するための第二凹部64の深さを浅くすることができる。よって、加熱工程において、第二空間R2に存在する空気を介して輻射熱によりシート材2を加熱する際に、シート材2を十分かつ略均一に加熱できるまでの所要時間を比較的短く抑えることができる。その結果、サイクルタイムの長期化を抑えつつ、上述したような各種の効果を得ることができる。
【0073】
シート切断工程は、シート材2を切断する工程である。
図11に示すように、シート切断工程では、固定挟持部21もシート材2を挟持し、固定挟持部21及び金型セット5の双方によってシート材2が挟持される。その後、固定挟持部21と金型セット5との間で、カッター41によってシート材2が幅方向に切断される。こうして、長尺状のシート材2からその下流側端部の一部が切り離される。
【0074】
取出工程は、シート材2が接着された基材3を取り出す工程である。取出工程では、まず、第一型部材50と第二型部材60とが互いに離間するように相対移動して、型開きされる。その後、架台32に固定された第一型部材50がガイドレール31に沿って側方に引き出される。そして、非重複位置において、シート材2が接着された状態の基材3が、載置部56から取り出される。なお、その後、載置部56に、新たな基材3が載置される。つまり、取出工程において第一型部材50を非重複位置に引き出す動作は、上述した載置工程における同様の動作と共通化される。
【0075】
以後、上記の各工程を繰り返すことで、加飾成形品としてのシート材2付きの基材3を、連続的に(断続的に)製造することができる。特に本実施形態では、特徴的な賦形工程を備えることで、加飾成形品の外周側部分におけるクラックの発生や基材3に対するシート材2の位置ずれ等の発生を有効に抑制しながら、意匠性に優れた加飾成形品を効率良く製造することができる。加飾成形品においては、その後、基体シート2Aの剥離や不要部分のトリミング等が行われて良い。
【0076】
2.第二の実施形態
本発明に係る金型セット並びにこれを用いた熱成形装置及び熱成形方法の第二の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態でも、金型セット5を用いて、収容空間R(
図17を参照)内で所定形状を有する基材3に対してシート材2を熱転写して被覆させる熱転写装置1(熱転写方法)を例として説明する。本実施形態では、第一型部材50及び第二型部材60の具体的構成が、上記第一の実施形態とは一部異なっている。また、本実施形態では、熱転写装置1が冷却機構80をさらに備えている点で、上記第一の実施形態とは異なっている。さらに、これらの相違点に基づき、金型セット5を含む熱転写装置1を用いて行われる熱転写方法の具体的手順が、上記第一の実施形態とは一部異なっている。そこで以下では、主に上記第一の実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、上記第一の実施形態と同様とする。
【0077】
図12〜
図14に示すように、第一型部材50は、第一本体部51と載置部56とを含む。載置部56は、第一本体部51の中央部に固定されている。本実施形態では、第一型部材50は、クランプ59をさらに含んでいる。一方、本実施形態に係る第一本体部51は、その中央部に、上記第一の実施形態の第一型部材50が有するような第一凹部54(
図1等を参照)を含んでいない。型締め方向Cに見て矩形状に形成される第一本体部51は、本実施形態では、その外周側領域に、クランプ59を収容するためのクランプ収納部51Aを有する。クランプ収納部51Aは、第一本体部51における第二本体部61に対向する側の面(上面)の四辺のそれぞれを各辺に沿って切り欠いて形成されている。すなわち、クランプ収納部51Aは、切欠状凹部として形成されている。クランプ59及びクランプ収納部51Aは、型締め方向Cに見て矩形枠状に形成されている。
【0078】
クランプ59は、複数の付勢部材59Aを介して第一本体部51に固定されている。付勢部材59Aとしては、コイルばねや板バネ等の弾性部材を用いることができる。或いは、アキュムレータ等の流体圧システムを利用しても良い。本実施形態では、付勢部材59Aとしてコイルばねを用いている。付勢部材59Aによって第二本体部61側に向かって付勢されたクランプ59は、外力が作用していない状態で、その上端部が基材3の上端部よりも第二本体部61側に位置する。また、付勢部材59Aによる付勢力よりも十分に大きな外力が作用した状態で、クランプ59は、クランプ収納部51Aに収納されて第一本体部51と面一状態となる(
図17を参照)。
【0079】
図12〜
図14に示すように、第二型部材60は、第二本体部61と第二凹部64と加熱手段(図示せず)とを含む。本実施形態では、加熱手段は第二本体部61の内部に埋め込まれている。これにより、加熱手段は第二本体部61に対して熱伝達可能となっている。本実施形態では、第一本体部51が直方体状に形成されていることに対応して、第二凹部64の深さが、上記第一の実施形態における第二凹部64の深さよりも浅く設定されている。
【0080】
第二型部材60は、第二本体部61の表面に開口する複数の第二通気路68をさらに含む。本実施形態では、第二通気路68は、第二本体部61の下面における第二凹部64の周囲の領域には開口していない。つまり、全ての第二通気路68が、第二凹部64の表面にそれぞれ開口するように形成されている。それぞれの第二通気路68は、第二本体部61の内部に形成された共通の緩衝空間69に連通している。緩衝空間69は、型締め方向Cに対して直交する平面に沿うように形成されている。第二通気路68は、緩衝空間69及び配管等を介して、調圧機構70に接続されている。本実施形態では、第二通気路68が本発明における「通気路」に相当する。
【0081】
複数の第二通気路68の経路長は、型締め方向Cに見た場合の開口位置が第二凹部64の最深部から外縁64E側となるに従って長くなるように設定されている。ここで、第二凹部64の「最深部」とは、第二型部材60の第一型部材50とのパーティング面からの第二凹部64の深さが最も大きくなる部分である。なお、第二凹部64は、基材3の外面形状を模した形状に形成されているため、その最深部は、基材3の外面形状における最上部に対応する部分であるとも言える。そのような部分が所定範囲を占める領域として存在する場合には、例えばその全体を最深部と定義することができる。本実施形態のように一定深さを有し型締め方向Cに見て略矩形状に形成された第二凹部64では、その中央領域が最深部となる。
【0082】
また、各第二通気路68の「経路長」は、予め定められた基準箇所から第二凹部64の表面までの長さとして定義することができる。本実施形態では、各第二通気路68のそれぞれに共通の緩衝空間69が、基準箇所として定められている。すなわち、各第二通気路68の「経路長」は、それぞれに共通の緩衝空間69と第二凹部64の表面との間の、通気路の延在方向に沿った長さとして定義されている。本実施形態では、各第二通気路68は、緩衝空間69から型締め方向Cに沿って直線状に延びる部分を少なくとも有する。複数の第二通気路68のうちの一部は、型締め方向Cに沿う部分のみを有しており、そのまま第二凹部64の中央領域(最深部)に開口している。複数の第二通気路68のうちの他の一部は、型締め方向Cに沿う部分と、当該部分に対して交差する方向に延びる部分とを有する屈曲形状に形成されている。これらは、第二凹部64における傾斜面部分に開口している。いずれにしても、複数の第二通気路68のそれぞれは、第二凹部64の表面に対して略直交する方向に開口している。なお、「略直交する」とは、直交している状態、又は実質的に直交しているとみなすことができる状態(例えば、第二凹部64の表面に対する開口方向のなす角が85°〜90°の状態)である。
【0083】
冷却機構80は、金型セット5及びその内部の収容空間Rに載置される基材3を冷却する。本実施形態では、冷却機構80は、冷却液の流通路(図示せず)が内部に形成された板状部材を含む。冷却液の流通路は冷却液循環路の一部を構成し、この冷却液循環路には圧送ポンプや熱交換器等が介在されている。すなわち、本実施形態に係る冷却機構80は、冷却液循環式の冷却機構として構成されている。冷却機構80は、第一型部材50に対して接触及び離間可能な状態で設けられている。冷却機構80は、第一型部材50に対して型締め方向Cに沿って相対移動可能に構成されている。より具体的には、冷却機構80は、スライド機構30を構成する架台32の上に固定されており、第一型部材50が、冷却機構80に対して型締め方向Cに沿って移動可能に構成されている。なお、冷却機構80は、ペルティエ素子等の放電素子を含む、電熱冷却方式の冷却機構であっても良い。
【0084】
本実施形態に係る熱転写方法は、上記第一の実施形態と同様に、載置工程、シート引出工程、型締工程、加熱工程、賦形工程、被覆工程、シート切断工程、及び取出工程を備えている。これらは、本実施形態では、載置工程及びシート引出工程、加熱工程、賦形工程、型締工程、被覆工程、取出工程の順に実行される。また、本実施形態に係る熱転写方法は、上記の各工程に加えて、冷却工程をさらに備えている。冷却工程は、賦形工程の開始時以後であってかつ被覆工程の開始時前に開始される。本実施形態では、冷却工程は、型締工程の開始時以後であってかつ被覆工程の開始時前に開始される。以下、順を追って説明する。
【0085】
本実施形態では、シート引出工程により所定間隔を隔てて上下に対向した第一型部材50と第二型部材60との間にシート材2が配置された状態(
図14を参照)で、型締工程よりも前に加熱工程が実行される。加熱工程では、
図15に示すように、まず、第二本体部61の下面における第二凹部64以外の平面部分とシート材2とが接するように、シート材2に対して第二型部材60を型締め方向Cに相対移動させる。このとき、クランプ59の上面とシート材2とが接するように、クランプ59に対してシート材2及び第二型部材60を型締め方向Cに相対移動させる。加熱工程は、シート材2がクランプ59と第二本体部61との間に挟持された状態で実行される。なお、付勢部材59A付きのクランプ59は、型締め前にシート材2と第二本体部61とを密接させるための“密接手段”として機能する。
【0086】
加熱工程では、第二本体部61の内部に埋め込まれた加熱手段(図示せず)の熱が第二本体部61に伝達され、さらに加熱状態にある第二本体部61の熱が、接触部位を介して直接的にシート材2に伝達される。また、加熱状態にある第二本体部61の熱は、第二凹部64に存在する空気を介して、輻射熱として間接的にシート材2に伝達される。これにより、シート材2は部位によらずに全体が概ね均一に加熱される。
【0087】
次に、
図16に示すように、第二通気路68を介してシート材2と第二型部材60との間(第二凹部64)に存在する空気を真空吸引することにより、賦形工程が実行される。賦形工程では、加熱工程により軟化したシート材2が、第二凹部64の表面に沿って吸着される。加熱状態のシート材2は、第二凹部64の外縁64Eを起点として屈曲しつつ、第二凹部64に沿うように(すなわち、基材3の外面形状に類似する形状となるように)賦形される。つまり、賦形工程を実行することにより、基材3の外面形状に類似する形状を有する凸状の賦形部分がシート材2に形成される。このとき、シート材2は、部位によらずに略均一な伸び率で伸びながら賦形される。このため、賦形部分の内側に形成された転写層2Bの文字や図柄も、均一性を維持する。
【0088】
上述したように、複数の第二通気路68の経路長は、型締め方向Cに見た場合の開口位置が第二凹部64の最深部から外縁64E側となるに従って長くなるように設定されている。このため、真空吸引の効果は、第二通気路68の経路長が最短となる第二凹部64の最深部に対応する位置で最も早く、第二通気路68の経路長が長くなる(外縁64E側となる)に従ってより遅く現れる。その結果、加熱状態にあるシート材2は、第二凹部64の最深部から徐々に外縁64Eに向かって、第二凹部64の表面形状に追従する。よって、賦形工程において、シート材2の全体的な位置ずれを有効に抑制することができる。
【0089】
本実施形態では、加熱工程及び賦形工程の実行後に、型締工程が実行される。型締工程では、付勢部材59Aの付勢力に抗して、第一型部材50と第二型部材60とが互いに近接するように相対移動して、型締めされる。この型締めにより、
図17に示すように、クランプ59がクランプ収納部51Aに完全に収納されるとともに、第一型部材50と第二型部材60との間に収容空間Rが形成される。このとき、シート材2は、第二凹部64に沿うように既に賦形された状態で、それ以外の未だなお平面状を維持する部分が、第一本体部51及びクランプ59と第二本体部61との間に挟持される。
【0090】
冷却工程は、冷却機構80を第一型部材50に接触させて基材3を冷却する工程である。冷却工程では、それ以前の各工程では第一型部材50から離間した状態に保持されていた冷却機構80を、
図18に示すように第一型部材50に接触させる。本実施形態では、型締めによって一体化された第一型部材50及び第二型部材60の全体が型締め方向Cに沿って冷却機構80側に移動することで、冷却機構80と第一型部材50とが接触する。冷却工程では、基材3の熱が載置台56を介して第一本体部51に伝達され、さらに第一本体部51の熱が、冷却機構80によって奪われる。その結果、基材3が冷却される。冷却工程は、その後の被覆工程中も継続的に実行される(
図19及び
図20を参照)。
【0091】
冷却工程の開始後に、被覆工程が実行される。被覆工程では、まず、シート材2と第二型部材60との間の真空吸引を停止する。その後、本実施形態では、シート材2と第二型部材60との間の圧空供給を開始するとともに、シート材2と第一型部材50との間の真空吸引を開始する。これにより、それまで第二凹部64の表面に沿っていたシート材2が、
図19に示すように第一型部材50側(基材3側)に向かって移動し始める。最終的には、
図20に示すように、第一本体部51及び基材3の表面に沿ってシート材2が押し付けられて密着する。このようにして、基材3の表面にシート材2が被覆される。
【0092】
被覆工程においても、賦形工程の場合と同様に、圧空供給の効果は、第二通気路68の経路長が最短となる第二凹部64の最深部に対応する位置で最も早く、第二通気路68の経路長が長くなる(外縁64E側となる)に従ってより遅く現れる。その結果、予め賦形されたシート材2は、実質的にはその賦形形状を保持したまま、基材3の最上部から徐々に外周側部分に向かって、基材3の表面形状に追従する。よって、被覆工程においても、シート材2の全体的な位置ずれを有効に抑制することができる。
【0093】
本実施形態でも、賦形工程において、シート材2が基材3の外面形状に類似する形状に予め賦形されるので、その後の被覆工程において、成形品の外周側部分でのクラックの発生や基材3に対するシート材2の位置ずれ等の発生を有効に抑制することができる。また、転写層2Bにおける図柄層の部位毎の伸び率のばらつきも抑制されるので、加飾された成形品の意匠性を高く維持することができる。
【0094】
また、本実施形態では、第二凹部64における傾斜面部分に開口する複数の第二通気路68のそれぞれは、第二凹部64の表面に対して略直交する方向に開口している。このため、全ての第二通気路68の第二凹部64の表面への開口面積を、実質的に等しくすることができる。これにより、賦形工程における第二型部材60(第二凹部64)へのシート材2の吸着や、被覆工程における第二型部材60(第二凹部64)からのシート材2の吐出を、シート材2の全体に亘って略均一化することができる。よって、例えば第二通気路68の開口部の跡がシート材2に残るのを抑制することができ、成形品の外観を良好に維持することができる。
【0095】
さらに本実施形態では、冷却工程の開始後、必要以上に長いインターバルを空けることなく、早期に被覆工程が開始される。よって、シート材2との粘着前に基材3が過度に冷却されることもなく、基材3とシート材2とを適切に接着させることができる。また、基材3に対するシート材2の接着が完了するまでの時間を短縮することができ、成形品が得られるまでのサイクルタイムを有効に短縮することができる。なお、本実施形態では、上述したように、被覆工程においてシート材2が高い位置精度で基材3に対して被覆される。基材3とシート材2との接着完了までの時間が短縮されることで、被覆完了から接着完了までの間での位置ずれの発生も抑制される。結果的に、最終的な成形品においても、基材3に対するシート材2の位置精度を高く維持することができ、良好な外観を備えた成形品を得ることができる。
【0096】
3.その他の実施形態
最後に、本発明に係る金型セット及び熱成形装置等の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。なお、同様に、上記第一の実施形態で開示された個々の構成と、上記第二の実施形態で開示された個々の構成とを、矛盾が生じない範囲内で適宜組み合わせることも可能である。
【0097】
(1)上記第一の実施形態では、型締め方向Cに見て、第一凹部54と第二凹部64とが同心状に配置されるとともに、第一凹部54の外縁54Eが第二凹部64の外縁64Eを包含する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、型締め方向Cに見て、第一凹部54の中心部と第二凹部64の中心部とが異なる位置となりつつ第一凹部54の外縁54Eが第二凹部64の外縁64Eを包含するように、両者が配置されても良い。また、
図21に示すように、型締め方向Cに見て、第一凹部54と第二凹部64とが同心状となりつつ第一凹部54の外縁54Eと第二凹部64の外縁64Eとが一致するように、両者が配置されても良い。
【0098】
(2)上記の各実施形態では、基材3が多機能携帯電話(スマートフォン)の筐体である構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、従来型携帯電話、携帯音楽プレイヤー、ナビゲーション装置、携帯ゲーム機、及びタブレット等の筐体を基材3としても良い。この場合、基材3の外面形状が異なれば、それに応じて第二型部材60の第二凹部64の形状も決定される。例えば一例として
図22に示すように、基材3の外面が段付き形状となっている場合には、第二凹部64も、それに応じた段付き凹部として形成されると好適である。
【0099】
(3)上記の各実施形態では、第二凹部64が基材3の外面形状に沿う形状を有するように形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。第二凹部64は、基材3の外面形状に完全に沿っている必要はなく、基材3の外面形状に概ね対応する形状を有するように形成されていれば良い。例えば一例として
図23に示すように、扁平な断面U字状の基材3に対して第二凹部64が断面長円状に形成される等、第二凹部64の形状は、基材3の外面形状を概略的に表すものであっても良い。
【0100】
(4)上記第一の実施形態では、周壁部52の内面(傾斜面53)が、鉛直面に対して一律の傾斜角度を有している構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば
図24に示すように、傾斜面53が、複数段階に傾斜するように形成されても良い。例えば傾斜面53が、第一凹部54の外縁54Eから鉛直面に対して第1の傾斜角度で傾斜する第一傾斜面53Aと、鉛直面に対して上記第1の傾斜角度よりも小さい第2の傾斜角度で傾斜する第二傾斜面53Bとを有しても良い。なお、上記第2の傾斜角度が上記第1の傾斜角度よりも大きく設定されても良い。
【0101】
(5)上記の各実施形態では、第二凹部64の最深部である、基材3の平板部3Aに対応する部分が、基材3の平板部3Aに平行な平面状に形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば
図25に示すように、第二凹部64が、その最深部に、第一型部材50側(載置部56側)に向かって局所的に突出する突出部64Pを有しても良い。このような突出部64Pを備えることで、賦形工程において、加熱状態にあるシート材2を、最深部から徐々に第二凹部64の外縁64Eに向かって凹部形状に追従させることが容易となる。また、被覆工程において、基材3に対して、最上部から徐々に外周側部分に向かってシート材2を被覆することが容易となる。よって、基材3に対するシート材2の位置精度をさらに高めることができる。
【0102】
(6)上記の各実施形態で説明した金型セット5において、
図26に示すように、第二型部材60が、第二凹部64における基材3の変曲部に対応する位置に設けられた断熱部材65をさらに含んでも良い。図示の例では、断熱部材65は、第二本体部61に埋め込まれている。このような断熱部材65を備えることで、当該断熱部材65の設置位置におけるシート材2の伸びを抑制できる。よって、シート材2の伸び量を調整することができ、図柄の歪みやコントラスト差の増大を抑制することができる。その結果、加飾された成形品の意匠性をさらに向上させることができる。なお、断熱部材65は、第二凹部64の表面に貼り付けられていても良い。また、断熱部材65は、第二凹部64における基材3の変曲部に非対応の位置に設けられても良い。
【0103】
(7)上記第二の実施形態で説明した金型セット5において、
図27に示すように、第一型部材50が、第一本体部51上に配置され、載置部56の周囲を取り囲むように形成された矩形枠状の中間壁部55をさらに含んでも良い。この場合、第一本体部51と第二本体部61とは、中間壁部55を介して間接的に密接可能となる。このような中間壁部55を備えることで、中間壁部55を備えない場合に比べて、第二凹部64の深さを浅くすることができる。よって、加熱工程において、第二凹部64に存在する空気を介して輻射熱によりシート材2を加熱する際に、短時間でシート材2を十分かつ略均一に加熱することができる。その結果、シート材2の加熱からシート材2の賦形、さらには基材3に対するシート材2の被覆までの全体のサイクルタイムを短縮することができる。
【0104】
(8)上記の各実施形態では、シート材2が、基体シート2Aとその基体シート2Aから剥離される図柄層を含む転写層2Bとを有する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、シート材2は、図柄層を含まずにハードコート層のみを含む転写層2Bを有するシートであっても良い。また、例えば、シート材2は、基体シート2Aと転写層2Bとが剥離しない一体型シートであっても良い。
【0105】
(9)上記の各実施形態では、本発明に係る金型セットを、ロールtoシートの連続処理を行う熱転写装置1に適用した例について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えばロールtoロールの連続処理による熱転写や、シートtoシートの貼り合わせ成形等にも、同様に、本発明に係る金型セットを適用することができる。
【0106】
(10)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【0107】
さらに、本発明は、概念的には、(i)基材3への被覆前に、シート材2を基材3の外面形状に類似する形状に予め賦形すること、及び(ii)シート材2を、基材3に対して高い位置精度で被覆させること、の少なくとも1つによって特徴付けられる。これらの発明概念を具現化した金型セット及び熱成形装置の他の実施形態も、本明細書において開示される。なお、以下に開示される構成は、
図28に示される、平板状の第二本体部61を含む第二型部材60を備えた従来から公知の金型セットの基本構成をベースとしている。
図28では、上記の各実施形態で既に説明した部材と同一の部材には、同一の符号を付している。
【0108】
(A)1つの態様として、例えば
図29に示すように、1つ以上の第二通気路68が、第二本体部61における基材3の最上部に対応する位置のみに開口するように構成されても良い。この場合、被覆工程の初期段階では、第二通気路68を介して真空吸引してシート材2を部分的に第二本体部61に吸着させつつ、第一通気路58を介してシート材2と第一型部材50との間を真空吸引する(
図29の上側)。この段階を経ることで、シート材2は、大まかではあるが、基材3の外面形状に類似する形状に予め賦形される。その後、第二通気路68を介して圧空供給を行い、シート材2を基材3に完全に被覆させる(
図29の下側)。
【0109】
(B)1つの態様として、例えば
図30に示すように、載置部56が、第一本体部51に対して型締め方向Cに相対移動可能に構成されても良い。すなわち、載置部56が、上記の各実施形態と同様の基準位置と、この基準位置よりも第二型部材60側に突出した突出位置との間で移動可能に構成されても良い。この場合、被覆工程の初期段階では、載置部56を突出位置まで突出させた状態で第一通気路58を介してシート材2と第一型部材50との間を真空吸引する(
図30の上側)。この段階を経ることで、基材3に対するシート材2の最初の接触が第二本体部61により近い位置で行われるので、位置精度を高めることができる。その後、載置部56を基準位置に戻して、シート材2を基材3に完全に被覆させる(
図30の下側)。このとき、載置部56を突出位置から基準位置に戻す際にシート材2に余裕代が生じるので、成形品の外周側部分におけるクラックの発生を有効に抑制することができる。
【0110】
(C)1つの態様として、例えば
図31に示すように、第一型部材50及び第二型部材60が、それぞれ分割構造を有するように構成されても良い。例えば、第一型部材50が、第一本体部51と、この第一本体部51の周囲を取り囲みつつ型締め方向Cに相対移動可能な第一周壁57とを含み、第二型部材60が、第二本体部61と、この第二本体部61の周囲を取り囲みつつ型締め方向Cに相対移動可能な第二周壁67とを含むように構成する。第一周壁57と第二周壁67とは、型締め方向Cに見て重なる部分を有するように配置される。この場合、被覆工程において、第一周壁57と第二周壁67とを同期して基材3側に移動させることで、2つの周壁57,67によって挟持されたシート材2を基材3に被覆させる(
図31の下側)。シート材2を挟持してその位置をコントロールしながら基材3に被覆するので、位置精度を高めることができる。その後、第一通気路58を介してシート材2と第一型部材50との間を真空吸引しつつ、第二通気路68を介してシート材2と第二型部材60との間に圧空供給して、シート材2を基材3に完全に被覆させる。