(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947799
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】光起電デバイスにおける感光層のエピタキシャル成長制御用材料
(51)【国際特許分類】
H01L 51/44 20060101AFI20160623BHJP
【FI】
H01L31/04 135
【請求項の数】40
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-534033(P2013-534033)
(86)(22)【出願日】2011年10月14日
(65)【公表番号】特表2013-541217(P2013-541217A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】US2011056347
(87)【国際公開番号】WO2012051526
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年8月25日
(31)【優先権主張番号】61/393,732
(32)【優先日】2010年10月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509009692
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァシティ オブ ミシガン
(73)【特許権者】
【識別番号】513093173
【氏名又は名称】ダンクック ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フォレスト,ステファン,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ラシター,ブライアン,イー.
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュン,ヨプ
(72)【発明者】
【氏名】ヨック,ソヤン,ソ
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン,スン,オク
(72)【発明者】
【氏名】チン,ビュン,ディー.
【審査官】
森江 健蔵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−294933(JP,A)
【文献】
特開2007−059457(JP,A)
【文献】
特表2012−529188(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/073348(WO,A1)
【文献】
特表2009−530809(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/139275(WO,A1)
【文献】
特開2012−064650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極と、
第二電極と、
第一感光層および第二感光層を有する少なくとも一つのセルと、
少なくとも一つの有機シード層と、を有し、
前記有機シード層は、
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN);
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボキサミド;
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボン酸;
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボン酸三無水物;
テトラシアノ−キノンジメタン(TCNQ);
2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8,−テトラシアノ−キノンジメタン(F4−TCNQ);
N,N’−ジシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−キノンジイミン(F4DCNQI);
N,N’−ジシアノ−2,5−ジクロロ−3,6−ジフルオロ−1,4−キノンジイミン(C12F2DCNQI);
N,N’−ジシアノ−2,3,5,6,7,8−ヘキサフルオロ−1,4−ナフト−キノンジイミン(F6DCNNOI);
1,4,5,8−テトラヒドロ−1,4,5,8−テトラチア−2,3,6,7−テトラシアノアントラキノン(CN4TTAQ);
2,2,7,7,−テトラフルオロ−2,7−ジヒドロ−1,3,6,8−テトラオキサ−2,7−ジボラ−4,9,10,11,12−ペンタクロロ−ベンゾ[e]ピレン;
2−(6−ジシアノメチレン−1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロ−6H−ナフタレン−2−イリジン)マロノニトリル、およびこれらの組合せから選択される材料を含む、デバイスであって、
前記デバイスの前記第一感光層は、前記第一電極または前記第二電極の少なくとも一方に対して実質的に垂直な配向を示す、デバイス。
【請求項2】
第一電極と、
第二電極と、
第一感光層および第二感光層を有する少なくとも一つのセルと、
少なくとも一つの有機シード層と、を有し、
前記有機シード層は、
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN);
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボキサミド;
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボン酸;
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボン酸三無水物;
テトラシアノ−キノンジメタン(TCNQ);
2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8,−テトラシアノ−キノンジメタン(F4−TCNQ);
N,N’−ジシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−キノンジイミン(F4DCNQI);
N,N’−ジシアノ−2,5−ジクロロ−3,6−ジフルオロ−1,4−キノンジイミン(C12F2DCNQI);
N,N’−ジシアノ−2,3,5,6,7,8−ヘキサフルオロ−1,4−ナフト−キノンジイミン(F6DCNNOI);
1,4,5,8−テトラヒドロ−1,4,5,8−テトラチア−2,3,6,7−テトラシアノアントラキノン(CN4TTAQ);
2,2,7,7,−テトラフルオロ−2,7−ジヒドロ−1,3,6,8−テトラオキサ−2,7−ジボラ−4,9,10,11,12−ペンタクロロ−ベンゾ[e]ピレン;
2−(6−ジシアノメチレン−1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロ−6H−ナフタレン−2−イリジン)マロノニトリル、およびこれらの組合せから選択される材料を含む、デバイスであって、
前記第一感光層は、前記有機シード層を有しないデバイスと比較した際に、結晶性の向上を示す、デバイス。
【請求項3】
前記有機シード層は、前記第一電極と前記セルとの間に設けられている、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記有機シード層は、前記第一電極上に直接設けられている、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第一感光層は、前記有機シード層の上に直接設けられた、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第二感光層は、前記第二電極と前記第一感光層の間に設けられている、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項7】
前記セルは、第三感光層をさらに有する、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第三感光層は、前記第一および第二感光層の間に設けられている、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第一感光層は、ホウ素サブフタロシアニン塩化物(SubPc)、銅フタロシアニン(CuPc)、C60およびC70フラーレン、塩化アルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スクアライン(SQ)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、およびこれらの組合せから選択される材料を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第二感光層は、C60およびC70フラーレン、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ペルフルオロ銅フタロシアニン(F16−CuPc)、およびこれらの組合せから選択される材料を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第三感光層は、ホウ素サブフタロシアニン塩化物(SubPc)、銅フタロシアニン(CuPc)、C60およびC70フラーレン、塩化アルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スクアライン(SQ)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ペルフルオロ銅フタロシアニン(F16−CuPc)、およびこれらの組合せから選択される材料を含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第一電極は、ZnO、GIO、IGZO、ITO、TiO2、MgO、GITO、WO、ZIO、およびZITOから選択される少なくとも一つの金属酸化物材料を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第一電極は、複合ITO/金属電極であり、前記金属は、Ca、LiF/Al、およびMg:Agから選択される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第二電極は、スチール、Ni、Ag、Al、Mg、In、およびこれらの混合物または合金から選択される材料を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項15】
少なくとも一つのブロック層をさらに有する、請求項1または2に記載の前記デバイス。
【請求項16】
前記少なくとも一つのブロック層は、前記電池と前記第二電極との間に設けられている、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記少なくとも一つのブロック層は、NPD,Alq3、CBP、およびRu(acac)3から選択される材料を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
太陽電池または逆太陽電池を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項19】
前記少なくとも一つの有機シード層は、前記第二電極と前記少なくとも一つのセルの間に設けられる、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項20】
少なくとも一つの第二セル、少なくとも一つの第二有機シード層、および第三電極をさらに含む、請求項1または2に記載の前記デバイス。
【請求項21】
タンデム型太陽電池を含む、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記有機シード層は、75μm以下の厚みを有する、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項23】
前記有機シード層は、5〜50nmの範囲の厚さを有する、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
第一電極の上方に少なくとも一つの有機シード層を堆積することと、
前記有機シード層の上方に少なくとも一つの第一感光層を設けることと、
前記第一感光層の上方に少なくとも一つの第二感光層を堆積することと、
前記第二感光層の上方に第二電極をパターニングすることと、
を含み、
前記有機シード層は、
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN);
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボキサミド;
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン―ヘキサカルボン酸;
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン―ヘキサカルボン酸三無水物;
テトラシアノ−キノンジメタン(TCNQ);
2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8,−テトラシアノ−キノジメタン(F4−TCNQ);
N,N’−ジシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−キノンジイミン(F4DCNQI);
N,N’−ジシアノ−2,5−ジクロロ−3,6−ジフルオロ−1,4−キノンジイミン(C12F2DCNQI);
N,N’−ジシアノ−2,3,5,6,7,8−ヘキサフルオロ−1,4−ナフト−キノジイミン(F6DCNNOI);
1,4,5,8−テトラヒドロ−1,4,5,8−テトラチア−2,3,6,7−テトラシアノアントラキノン(CN4TTAQ);
2,2,7,7,−テトラフルオロ−2,7−ジヒドロ−1,3,6,8−テトラオキサ−2,7−ジボラ−4,9,10,11,12−ペンタクロロ−ベンゾ[e]ピレン;
2−(6−ジシアノメチレン−1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロ−6H−ナフタレン−2−イリジン)マロノニトリル、およびこれらの組合せから選択される材料を含み、
前記第一感光層が前記第一電極または前記第二電極の少なくとも一方に実質的に垂直な感光性デバイスの作製方法。
【請求項25】
第一電極の上方に少なくとも一つの有機シード層を堆積することと、
前記有機シード層の上方に少なくとも一つの第一感光層を設けることと、
前記第一感光層の上方に少なくとも一つの第二感光層を堆積することと、
前記第二感光層の上方に第二電極をパターニングすることと、
を含み、
前記有機シード層は、
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN);
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボキサミド;
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン―ヘキサカルボン酸;
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン―ヘキサカルボン酸三無水物;
テトラシアノ−キノンジメタン(TCNQ);
2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8,−テトラシアノ−キノジメタン(F4−TCNQ);
N,N’−ジシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−キノンジイミン(F4DCNQI);
N,N’−ジシアノ−2,5−ジクロロ−3,6−ジフルオロ−1,4−キノンジイミン(C12F2DCNQI);
N,N’−ジシアノ−2,3,5,6,7,8−ヘキサフルオロ−1,4−ナフト−キノジイミン(F6DCNNOI);
1,4,5,8−テトラヒドロ−1,4,5,8−テトラチア−2,3,6,7−テトラシアノアントラキノン(CN4TTAQ);
2,2,7,7,−テトラフルオロ−2,7−ジヒドロ−1,3,6,8−テトラオキサ−2,7−ジボラ−4,9,10,11,12−ペンタクロロ−ベンゾ[e]ピレン;
2−(6−ジシアノメチレン−1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロ−6H−ナフタレン−2−イリジン)マロノニトリル、およびこれらの組合せから選択される材料を含み、
前記第一感光層は、前記有機シード層を有しないデバイスと比較した際に、結晶性の向上を示す、感光性デバイスの製造方法。
【請求項26】
前記有機シード層は、前記第一電極上に直接堆積される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記有機シード層は、前記第一電極上に、75μm以下の厚みを有するよう、直接堆積される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項28】
前記第一感光層は、前記有機シード層上に直接堆積される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項29】
第三感光層を堆積することをさらに含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項30】
前記第三感光層は、前記第一感光層と第二感光層との間に堆積される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第一感光層は、ホウ素サブフタロシアニン塩化物(SubPc)、銅フタロシアニン(CuPc)、C60およびC70フラーレン、塩化アルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スクアライン(SQ)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、およびこれらの組合せから選択される材料を含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項32】
前記第二感光層は、C60およびC70フラーレン、3,4,9,10−ポリエチレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ペルフルオロ銅フタロシアニン(F16−CuPc)、およびこれらの組合せから選択される材料を含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項33】
前記第三感光層は、ホウ素サブフタロシアニン塩化物(SubPc)、銅フタロシアニン(CuPc)、C60およびC70フラーレン、塩化アルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スクアライン(SQ)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ペルフルオロ銅フタロシアニン(F16−CuPc)、およびこれらの組合せから選択される材料を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記第一電極は、ZnO、GIO、IGZO、ITO、TiO2、MgO、GITO、WO、ZIO、およびZITOから選択される少なくとも一つの金属酸化物材料を含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項35】
前記第一電極は、複合ITO/金属電極を含み、前記金属はCa、LiF/Al、およびMg:Agから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第二電極は、スチール、Ni、Ag、Al、Mg、In、およびこれらの混合物または合金から選択される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも一つのブロック層をさらに堆積する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも一つのブロック層は、前記少なくとも一つの第二感光層と前記第二電極との間に設けられる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも一つのブロック層は、NPD、Alq3、CBP、BCP、およびRu(acac)3から選択される材料を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記、第三感光層は、ホウ素サブフタロシアニン塩化物(SubPc)、銅フタロシアニン(CuPc)、C60およびC70フラーレン、塩化アルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スクアライン(SQ)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、3,4,9,10−ポリエチレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ペルフルオロ銅フタロシアニン(F16−CuPc)、およびこれらの組合せから選択される材料を含む、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2010年10月15日に出願され、本願において全体を参照することにより包含されている、米国仮出願番号61/393,732の利益を主張する。
【0002】
連邦支援の研究に関する宣言
本発明は、エネルギー省によって認定された契約番号DE−SC00000957に基づく米国政府支援を得てなされた。該政府は、本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
共同研究の合意
本願に係る発明は、産学連携研究協定に参加した次の一つ以上の団体によって、当該団体のおかげで、および/または、当該団体との関係においてなされた。前記合意は発明がなされた日以前において有効であり、本願に係る発明は合意の範囲内において行われた活動の結果としてなされたものである。
【0004】
本発明は、一般に、有機太陽電池といった感光デバイス(photosensitive device)に関する。より具体的には、得られるデバイスが、それを有さないものと比べたときに、より高い結晶性を示す選択的正孔輸送有機シード層(preferentially hole conducting organic seed layer)といった有機シード層を有する感光デバイスに関する。
【背景技術】
【0005】
光電子デバイス(optoelectronicdevice)は、その材料の可視光および電子特性に依って、電気的に電磁放射を生成若しくは検出し、または周囲の電磁放射から電気を生み出している。
【0006】
感光性光電子デバイス(photosensitive optoelectronic device)は電磁放射を電気に変換する。太陽電池、光起電力(PV)デバイスとも呼ばれる、は専ら電力を生み出すために使用される感光光電子デバイスである。太陽光以外の光源から電力を生み出し得るPVデバイスは、電力を消費する電気機器に使用し、例えば、照明、ヒーターを提供すること、または計算機、ラジオ、コンピュータ、若しくは遠隔モニター若しくはコミュニケーション装置といった電子回路若しくはデバイスへの電力供給に使用することができる。これらの発電用途は、バッテリーまたは他のエネルギー貯蔵デバイスの交換をしばしば含むことによって、太陽光または他の光源からの直接の照光が利用できないとき、または前記PVの電力の産生と特定の用途への必要量をバランスする場合に運転を継続しうる。本願明細書で使用される場合、「負荷抵抗」は電力を消費または貯蔵する回路、デバイス、装置またはシステムのいずれをも意味する。
【0007】
他のタイプの感光光電デバイスは、光伝導体電池(photoconductor cell)である。この機能において、信号検知電子回路(current detecting circuit)はデバイスの抵抗をモニターし、光の吸収による変化を検知する。
【0008】
他のタイプの感光光電デバイスは、光検知器である。動作時において光検知器は、光検知器が電磁放射にさらされ、またバイアス電圧をかけられているときに発生する電流を測定する電流検知回路と一緒に使用される。本願明細書に記載の検知電流はバイアス電圧を光検知器に供給し、電磁放射に対する前記光検知器の前記電気信号を測定することができる。
【0009】
感光光電デバイスのこれら三つの分類は、下記に定義した整流接合が存在するかどうか、また前記デバイスが、バイアスまたはバイアス電圧としても知られる外的に掛けられた電圧によって動作するかによって特徴付けることができる。光伝導体電池は整流接合を有さず、また通常バイアスによって動作する。PVデバイスは少なくとも一つの整流接合を有しており、バイアスなしに動作する。光検知器は少なくとも一つの整流接合を有し、バイアスなしで動作する。光検出器は少なくとも一つの整流接合を有し、常にではないが通常バイアスによって動作する。一般則として、光起電電池(photovoltaic cell)は、回路、デバイス、または装置に電力を供給するが、検知回路に信号または電流を供給することはしない。対照的に、光検知器または光伝導体は、信号または電流を供給し検知回路の制御を行う、または前記検知回路からの情報の出力を供給し、電力は前記回路、デバイス、または装置に供給しない。
【0010】
従来、感光光電デバイスは、例えば、結晶性、非結晶性、およびアモルファスシリコン、ヒ化ガリウム、テルル化カドミウム、およびその他、多くの無機半導体、から構成されてきた。本願明細書で使用される場合「半導体」の用語は、電荷キャリアが熱的または電磁的励起によって誘起された際に導電できる材料を意味する。前記用語「光伝導性」は、電磁放射エネルギーが吸収され、よって電荷キャリアの励起エネルギーに変換され、キャリアが材料中の電荷を伝導、すなわち輸送できるようになる工程を一般に意味する。前記用語「光伝導体」および「光伝導材料」は、本願明細書においては、その電磁放射を吸収し電荷キャリアを生成する特性によって選択される半導体材料を指すのに使用する。
【0011】
PVデバイスは、入射する太陽エネルギーを有用な電力に変換する効率によって特徴付けてもよい。結晶またはアモルファスシリコンを使用したデバイスが市販用途では支配的であり、23%以上の効率を達成したものもある。しかし、効率的な結晶ベースデバイス、特に大表面積を有するものは、著しく効率を損なわせる欠陥なしに大きな結晶を製造することに内在する問題のために、製造が難しく製造コストが高い。一方、高効率アモルファスシリコンデバイスは依然として安定性に関する問題に悩まされている。現在市販されているアモルファスシリコン電池は、4%〜8%の間で安定した効率を有する
PVデバイスは標準照射条件下(すなわち、1000W/m
2、AM1.5スペクトル照射である標準試験条件)での最大限に発電させるため、すなわち光電流と光起電力の積の最大値を得るため最適化を行ってもよい。標準照射条件下でのこのような電池の電力変換効率は、次の3つのパラメータに依存している。すなわち、(1)バイアスなしでの電流、すなわち、短絡電流I
SC(A)、(2)開回路条件での光起電力、すなわち前記開回路電圧V
OC(V)、および(3)前記曲線因子、ff。
【0012】
PVデバイスは、負荷に接続され、光を照射された際に、光によって発生した電流を生産する。無限の負荷に接続された状態で照射したとき、PVデバイスはその最大限の電圧、V開回路、すなわちV
OCを発生する。その電気接点を短絡させた状態で照射した場合、PVデバイスはその最大限の電流、I短絡電流、すなわちI
SCを生成する。実際に発電に使用した場合、PVデバイスは有限の負荷抵抗に接続され、その出力はその電流とその電圧の積、I×Vによって得られる。PVデバイスによって生み出される最大全出力はI
SC×V
OCを越えることは本質的にできない。前記負荷の値が最大動力抽出について最適化されたとき、前記電流と電圧はI
maxおよびV
maxの値をそれぞれ有している。
【0013】
PVデバイスの性能指数は、
【0014】
【数1】
【0015】
として定義される曲線因子、ffである。
式中、実際の使用で、I
SCおよびV
OCが同時に得られることは決してないので、ffは常に1未満である。にもかかわらず、ff
0が1に近づくにつれて前記デバイスは直列または内部抵抗が低下し、よって最適条件におけるI
SCとV
OCとの積のより多くの部分を負荷に提供する。デバイス上でP
incが入射電力のところで、前記デバイスの電力効率η
Pは、
【0016】
【数2】
【0017】
によって計算してもよい。
【0018】
前記半導体の大きな体積を占める内部的に発生した電界を生成するために、通常方法は、適切に選択した伝導特性、特に分子量子エネルギー状態分布(molecular quantum energy states)に関して、を有する材料の2つの層を並置することになる。これら二つの材料の界面は、光起電接合(photovoltaic junction)と呼ばれる。従来の半導体理論では、PV接合を形成する材料は一般にnまたはp型のどちらかで表されてきた。ここでn型はその大多数のキャリアが電子である。これは比較的自由なエネルギー準位をもつ多くの電子を有する材料としてみることができる。前記p型はその大多数のキャリアが正孔である。このような材料は比較的自由なエネルギー準位にある多くの正孔を有する。バックグラウンドの型、すなわち、光的に精製していない(not photo−generated)、大部分のキャリア濃度は第一に欠陥または不純物による意図しないドーピングに依存する。不純物の型と濃度は、前記伝導帯の最低エネルギーと価電子帯の最高エネルギーの間のギャップ内のフェルミエネルギーの値、または準位を決定する。前記フェルミエネルギーは、占有可能性が1/2に等しいエネルギー値によって表される分子量子エネルギー状態の統計的占有率を特定する。伝導帯最低エネルギー近くのフェルミ準位は電子が支配的なキャリアであることを示している。価電子帯最高エネルギー近くのフェルミエネルギーは、正孔が支配的なキャリアであることを示している。結果として、前記フェルミエネルギーは従来の半導体の最も特徴的な特性であり、原型的なPV接合は従来から前記p−n接合部分を有している。
【0019】
「整流」の用語は、とりわけ、接合部分が非対称の伝導特性を有する、すなわち、前記接合部分が選択的に一方向への電子電荷輸送を支持している接合部分を意味する。整流は通常、適切に選択された材料の間の接点に発生する作られた電界(built−in electric field)に関係している。
【0020】
従来の無機半導体PV電池は、p−n接合を用いて、内部電界を形成している。高効率PVデバイスは、典型的に高価な単結晶成長基板上で生産されている。これらの成長基板は結晶ウェハーを含んでよく、結晶ウェハーは完全格子を形成すること、および活性層のエピタキシャル成長のための構造支持体として使用でき、「エピ層」としても知られている。これらのエピ層は、その無傷の原型成長基板と共にPVデバイスに一体化してもよい。代わりに、それらのエピ層を除去して、ホスト基板と再結合してもよい。基板に蒸着した低分子量有機薄膜を使用した、光検知器およびPV電池は低コストかつ軽量という潜在的利点を有する。加えて、前記励起子の拡散長が、光の完全な吸収に必要な厚さに比べて小さい(何千オングストロームに対して何百オングストロームのオーダー)ため、薄膜はより効率的な発電を可能とする。結果、有機材料を含む効率的な光起電デバイスのさらなる発展、向上へのニーズが存在する。
【0021】
以前は、1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN)が、有機発光ダイオードなどの有機電子デバイスにおける正孔電荷輸送材料として使用されていた。HAT−CN/CuPc/C60 OPVヘテロ接合のエネルギー準位図を挿入図として
図9に示す。とても深い最低空分子軌道(LUMO)があることによって、電子は、CuPc/C60接合部分の励起子の乖離に起因して急速に正孔と結合するITOとCuPcの最高被占分子軌道の間で往復する。ゆえに、前記HAT−CNは、アノードにおいて潜在的に低抵抗な電荷注入層を提供する。この状況は、PTCDAテンプレートを使用したデバイスに対して著しく違っている。PTCDAテンプレートは、十分な厚さを有していればHAT−CNと比べて非常に低エネルギーであるそのLUMOのために正孔輸送がブロックされる。この理由により、前記ITOアノード表面に蒸着した緩衝層としてHAT−CNは適切な選択である。
【0022】
以前とは違い、PTCDAといった強結着性のテンプレートを使用した際に観察されるよりありふれた平位配向とは対照的にHAT−CNは、配列された垂直相を誘起する点でCuPcをテンプレートする過去の報告に比べて以下の開示は発展している。それでもなお、ドナー分子が平位配列するか垂直配向するか否かに関わらず、テンプレート法によって誘起される長距離の構造配列は低分子量OPVの性能の向上に支配的に働くことは明らかである。ゆえに、前記HAT−CNテンプレートとその誘導体は性能、および場合によっては他の低分子または高分子ベースのOPVの安定性の向上に支配的に影響するかもしれないことが予想される。
【発明の概要】
【0023】
前述のものを考えると、ドナー分子の望ましい配向を誘起するテンプレート剤を用いて作られた改良された感光性デバイスが開示されている。特に、ドナー分子の配列された垂直相を誘起するテンプレート材料と工程条件の新たな組合せが開示されている。
【0024】
一実施形態によると、第一電極と、第二電極と、HAT−CNおよびその誘導体といった少なくとも一つの選択的正孔輸送有機シード層と、ドナー分子を有する第一感光層およびアクセプタ分子を有する第二感光層を有する少なくとも一つのセルであって、大部分の前記ドナー分子は前記第一電極に対して実質的に垂直配向を有するセルと、を有する感光性デバイスが開示されている。
【0025】
前記開示されたデバイスの製造方法もまた開示されている。特に、少なくとも一つの選択的正孔輸送有機シード層を第一電極の上方に蒸着することと、少なくとも一つの第一感光層、(ただし前記第一感光層がドナー分子を含む)を前記選択的正孔輸送有機シード層の上方に設けることと、少なくとも一つの第二感光層を前記第一感光層(ただし前記第二感光層がアクセプタ分子を含む)に蒸着することと、第二電極を前記第二感光層(ただし前記ドナー分子の大部分は前記第一電極に対して実質的に垂直な配向を有する)の上方にパターニングすることと、を有する感光デバイスを製造する方法が開示されている。
【0026】
他の一実施形態において、前記選択的正孔輸送有機シード層を有しないデバイスと比較した際に、前記開示されたデバイスは一つ以上の次の特徴、
向上したV
OC、
向上したI
SC、
向上した曲線因子、
を有している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本願の前述および他の特徴は、実施形態についての以下の詳細な説明を添付の図面と併用することにより、より簡単に明らかとなるであろう。便宜上、デバイスのすべての説明は幅との関係で強調された高さ次元によって表されてもよい。
【
図1】一実施形態に係る有機シード層を有する感光デバイスの断面構造の概略図である。
【
図2A】一実施形態に係るHAT−CNシード層を有する誘起太陽電池の断面構造の概略図である。
【
図2B】さまざまな厚さのHAT−CNシード層厚さを有する
図1Aデバイスの測定した電流密度−電圧である。
【
図3】一実施形態に係る、HAT−CNシード層を有する逆太陽電池の断面の概略図である。
【
図4A】一実施形態に係る、HAT−CNシードおよび再結合層を有するタンデム太陽電池の断面の概略図である。
【
図4B】一実施形態に係る、HAT−CNシードおよび再結合層を有するタンデム太陽電池の断面の概略図である。
【
図4C】一実施形態に係る、HAT−CNシードおよび再結合層を有するタンデム太陽電池の断面の概略図である。
【
図4D】一実施形態に係る、HAT−CNシードおよび再結合層を有するタンデム太陽電池の断面の概略図である。
【
図4E】一実施形態に係る、HAT−CNシードおよび再結合層を有するタンデム太陽電池の断面の概略図である。
【
図5A】真空熱蒸発(VTE)によって基板上に成長させたCuPc層を有する構造の断面の概略図である。
【
図5B】VTEによって基板上に成長させたHAT−CN層を有する構造の断面の概略図である。
【
図5C】VTEによって基板上に成長させたCuPcおよびHAT−CNの層を有する構造の断面の概略図である。
【
図6】Si基板上に成長させた
図5Bの前記HAT−CN層のX線回折(XRD)特性である。
【
図7A】
図5A−Cの前記HAT−CN、およびCuPc層との接合、およびSi基板上に成長させたPTCDA/CuPc接合のXRD特性である。
【
図7B】
図5A−Cの前記HAT−CN、およびCuPc層との接合、およびSi基板上に成長させたPTCDA/CuPc接合のXRD特性である。
【
図8A】ITO基板上に成長させた
図5A−CのHAT−CN、およびCuPc層との接合のXRD特性である。
【
図8B】ITO基板上に成長させた
図5A−CのHAT−CN、およびCuPc層との接合のXRD特性である。
【
図8C】ITO基板上に成長させた
図5A−CのHAT−CN、およびCuPc層との接合のXRD特性である。
【
図9】1太陽(100mW/cm
2)AM1.5照明(凡例の”光”)の下、および暗闇の中で、HAT−CN緩衝層を有するまたは有さないCuPc:C60有機太陽電池の電流密度−電圧特性である。差し込み図:ITO/HAT−CN/CuPc/C
60/BCP/Al太陽電池におけるフロンティア軌道の相対位置を示した平衡エネルギー準位図案である。示した数字は真空順位に対する前記軌道の前記エネルギー(eV)である。接合面エネルギー準位のシフトは仮定されておらず、バンド曲がりも示されていない。エネルギーは参考から持ってきたものである。
【
図10】酸化インジウムスズ基板上に成長させたCuPc、HAT−CN、およびHAT−CN/CuPcのX線回折バターンである。CuPc、HAT−CN層の厚さは、それぞれ25nmと30nmである。差し込み図は、平位(左)積層方向と垂直に立った(右)積層方向の前記CuPc結晶積層の癖である。X線ピークの強度から示されるように、前記垂直に立った積層体は数十ナノメートルのフィルム成長に渡って配列を保つ。
【
図11】HAT−CN緩衝層を有する(破線)および有しない(線)CuPc:C
60太陽電池の外部量子効率−波長を示したグラフである。差し込み図、厚さ30nmのHAT−CNテンプレート層を有しないおよび有するガラス基板/HAT−CN/CuPc/CuPc:C
60構造の吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
有機光起電デバイスといった、感光デバイスを本願明細書に開示する。開示される前記デバイスは、例えば、入射電磁波(例えば、PVデバイス)から使用できる電流を生み出すのに使用してもよく、または入射電磁放射線を検知するのにしようしてもよい。いくつかの実施形態においては、少なくとも二つの電極(例えば、アノードおよびカソード)および電池を電極間に有してもよい。前記電池は、電磁放射を吸収し、開裂して電流を生み出す励起子を生成する感光デバイスの一部であってもよい。
【0029】
本願明細書で使用される場合、「有機」の用語は、高分子材料だけでなく有機感光デバイスを形成するのに使用できる低分子量有機材料を包含する。「低分子」は、一般にまだ高分子を形成していない有機材料を意味し、低分子として状況によっては繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を使用することは、「低分子」クラスから分子を除外することにはならない。低分子は、例えば、高分子骨格状のペンダント基として、または骨格の一部として、高分子に含まれてもよい。低分子は、デンドリマーのコア部分として働いてもよく、前記デンドリマーはコア部上に形成される一連の化学的シェルからなる。デンドリマーの前記コア部は蛍光またはりん光の低分子放射体であってもよい。デンドリマーは「低分子」であってもよい。一般に、低分子は、どの分子をとっても同じ分子量を持つ決まった化学式を有する、一方、高分子は分子によって異なってもよい分子量をもつ決まった化学式を有する。本願明細書で使用される場合、「有機」はヒドロカルビルおよびヘテロ原子で置換されたヒドロカルビル配位子の金属錯体を包含する。
【0030】
本願明細書で使用される場合、「層」の用語は、その主要寸法がX−Y、すなわちその長さと幅にそって、である感光デバイスの一部または構成要素を意味する。前記用語「層」は必ずしも材料の単一層またはシートに限定されないことを理解するべきである。層は材料の何枚かのシートの積層体または組合せであり得る。さらに、そのような層と他の材料または層との接合面を含む、ある層の表面は欠陥を有してもよく、前記表面は他の材料または層との貫入する、巻き込まれた、または複雑なネットワークを表している。同様に、層は不連続であってもよいことを理解するべきであり、結果、前記X−Y寸法に沿った連続性は他の層または材料によって阻害または中断されていてもよい。
【0031】
前記「電極」および「接点」の用語は、光起電電流を外部回路に供給するまたはバイアス電流または電圧をデバイスに供給する媒質を提供する層を意味するのに使用される。
図1に示されているように、電極102および114は例である。電極は金属または「金属代替物」によって構成されてもよい。本願明細書で使用される場合、前記「金属」の用語は、元素的に純粋な金属および二以上の材料を含む合金も含む両方の材料を包含するのに使用される。前記「金属代替物」の用語は、通常の定義に属する金属ではなく、ドープされたワイドバンドギャップ半導体、縮退半導体、導電性酸化物、および伝導性高分子などの、導電性といった金属様の特性を有する材料を指すことがある。電極は単一層または複数層(「複合」電極)を含んでよく、透明、半透明、または不透明であってもよい。電極および電極材料の例としては、ブルヴィックらによる米国特許第6,352,777号報やパルタサラティらによる米国特許第6,420,031号報に開示されているものが含まれ、それぞれは全体を参照することによって本願明細書に包含されている。本願において使用されているように、層は、関連した波長の環境電磁放射の少なくとも50%を透過させる場合に「透明」であるといえる。
【0032】
前記「カソード」の用語は、次のように使用される。PVデバイスといった、環境放射下で負荷抵抗に接続され、かつ外部電圧を印加していない、積層されていないPVデバイス、または積層されたPVデバイスの単一ユニットにおいて、電子は前記光伝導材料から前記カソードに移動する。同様に、本願明細書で使用される場合、前記「アノード」の用語は、照光下のPV装置において、正孔が(電子が反対に動くのと同様だが)光伝導性材料から前記アノードに移動するといったように使用される。本願明細書において前記用語が使用される際に、アノードおよびカソードは電極でも電荷輸送層でもよいことに注意するべきである。
【0033】
本願明細書で使用される場合、「トップ」は前記基板(もしあるなら)から最も遠いことを意味する一方、「ボトム」は前記基板に最も近いことを意味する。もし、前記デバイスがベース基板を含まないなら、「トップ」は前記第一電極(例えば、ボトム電極)から最も遠いことを意味する。例えば、二つの電極を有するデバイスに関して、前記ボトム電極は前記基材に最も近い電極を意味し、一般には作製された前記第一電極である。前記ボトム電極は、前記基板に最も近いボトム側、および前記基板から最も遠いトップ側、の二つの表面を有する。第一層を、第二層の「上方」または「上」に設け、蒸着し、または塗布したと記載されているところでは、前記第一層はさらに前記基板および/または第一電極から遠くに設けられている。前記第一層が、前記第二層に「物理的に接している」または「直接上に」設けられていると特定しない場合、前記第一及び第二層の間に多くの層があってもよい。例えば、間に様々な有機層があっても、カソードはアノードの「上方に設けられ」または「上に設けられ」と記載されうる。
【0034】
本願明細書で使用される場合、前記フレーズ「選択的正孔輸送」は正孔の移動度が電子のそれよりも高いことを意味する。
【0035】
本願明細書で使用される場合、「実質的な垂直配向」というフレーズは、それが上に設けられている電極に対しての配向を表している。例えば、銅フタロシアニン(CuPc)ドナー分子といった、前記ドナー分子は、蒸着されていないときよりも、それが上に設けられている前記電極に対してより垂直(直立)なモルフォロジーをとる。大部分の前記ドナー分子は超薄テンプレート層により垂直の姿勢をとることになり、本願明細書において「選択的正孔輸送有機シード層」と定義され、このような配向を規定している。
【0036】
本願明細書で使用されているように、「超薄テンプレート層」は、0〜75nmの範囲で1nmまたは5nm増分といった、75nm未満の層として定義される。一実施形態において、前記テンプレート層は、5〜40nmといった50nm未満である。一実施形態において、前記超薄テンプレート層は30nm厚である。
【0037】
図1には、光起電デバイス100が示してある。前記図は必ずしも実際の寸法通りではない。デバイス100は、間に位置する少なくとも一つの電池を有する、第一電極102と第二電極114を含んでもよい。ある実施形態においては、前記電池は第一光起電層106と第二光起電層110を有してもよい。ある実施形態においては、任意で、前記電池は、第一光起電層106と第二光起電層110との間に第三有機光起電層108を有してもよい。ある実施形態においては、デバイス100は、任意に基板を有してもよい。ある実施形態においては、前記基板は第一電極102の下、または第二電極114の上に位置してもよい。さらに、デバイス100は、任意に平滑層、および/またはブロック層を有してもよい。例えば、ある実施形態において、ブロック層112は前記電池と第二電極114の間に位置してもよい。デバイス100は、少なくともある実施形態においては、記載された層を順に蒸着することにより作製してもよい。
【0038】
図1に示した層が有する特定の順番は単なる例示であり限定する意図はない。例えば、いくつかの層(ブロック層など)は省略してある。他の層(反射層または追加アクセプタ―およびドナー層など)を追加してもよい。我々は、反射層を入射光の50%より多く反射する層として定義する。前記層の順番は変更してもよい。具体的に記載されたもの以外の順番のものを使用してもよい。さらに、前記感光性デバイスは一つ以上の追加ドナー−アクセプタ層を有するタンデムデバイスとして存在してもよい。タンデムデバイスは、前記タンデムドナー−アクセプタ層の間に電荷輸送層、電極、または電荷再結合層を有してもよい。
【0039】
適切な基板は所望の構造特性を提供するものならどの基板でもよい。前記基板は、柔軟でも硬くても、平面でも非平面でもよい。前記基板は、透明でも、半透明でも、非透明でもよい。例えば基板としては、硬いプラスチック、ガラス、および水晶を含んでもよい。柔軟プラスチックおよび金属フォイルが柔軟基板材料の例として挙げられる。
【0040】
電極102および114は、上記のように適した材料ならどれを有していてもよい。ある実施形態において、電極114は「カソード」を意味し、一方電極102は「アノード」を意味する。ある実施形態において、電極102は透明または半透明の材料を有してもよい。ある実施形態において、電極102は、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムガリウム(GIO)、酸化亜鉛ガリウムインジウム(IGZO)、酸化スズインジウム(ITO)、酸化チタン(TiO
2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化インジウム亜鉛(ZIO)、酸化タングステン(WO
x)、酸化スズインジウムガリウム(GITO)、および酸化スズインジウム亜鉛(ZITO)からなる群から選択される材料を有してもよい。
【0041】
ある実施形態において、電極102はITOを含む。ある実施形態において、電極114は、スチール、Ni、Ag、Al、Mg、Inから選択される金属、およびこれらの混合物または合金といった、低い仕事関数の金属を含む。ある実施形態において、電極114はAlを有する。
【0042】
上記のように、ある実施形態において、電極102および/または114は複合電極を含んでもよい。例えば、電極102はITO/金属電極を含んでもよく、前記金属はCa、LiF/Al、およびMg:Agから選択される。
【0043】
図1に示すように、前記電気は第一電極102と第二電極114との間に位置してもよい。一方、
図1に記載の前記感光層の順番は、単なる例示として理解するべきであり、ある実施形態において、任意の第三感光層108は前記第一および第二感光層の間に位置してもよい。ある実施形態において、層106、108、および110は一続きで配列してもよく、結果それぞれの前記有機感光層は前記一続きのものの隣のものと直接接することとなる。例えば、ある実施形態において、第一有機感光層106は第二感光層110と直接接している。第三感光層108のような、少なくとも一つの追加の感光層を有する他の実施形態において、第一有機感光層106は第三の感光層108と直接接しており、第三有機感光層は第二有機感光層110と直接接している。
【0044】
前記感光層を有する前記電池は、デバイス100のいわゆる「感光領域」を表し、光はそこで吸収され励起状態、すなわち「励起子」を形成し、これは続いて電子とホールに開裂してもよい。前記励起子の前記開裂は一般に、アクセプタ層とドナー層の並置によって形成される「ヘテロ接合」で発生する。感光デバイス100は単一ヘテロ接合を有していてもよく、またはいわゆる「デュアルヘテロ接合」を有していてもよく、励起子は第三感光層(例えば、デュアルドナー−アクセプタ層)の両界面で開裂する。例えば、電荷乖離は、第一感光層106(例えば、ドナー層)と第三有機層108の間の前記ヘテロ接合で発生してもよい。電荷乖離は第三感光層108(例えば、デュアルドナー−アクセプタ)と第二感光層110(例えば、アクセプタ層)の間の前記ヘテロ接合で発生してもよい。前記ヘテロ接合での作られた電位は、接して前記ヘテロ接合を形成する前記二材料間の前記HOMO−LUMOエネルギー準位差により決まる。前記ドナーおよびアクセプタ材料の間のHOMO−LUMOギャップ補正は、ドナー/アクセプタ界面の励起子拡散長内でつくられた励起子への電荷開裂を容易にする前記界面における電界を作り出す。
【0045】
上記の示唆のように前記「層」の用語に関して、
図1に示した、感光層106、108、および110の前記境界は、緻密でなくてよく、欠陥を有し、不連続であってよく、かつ/またはさもなければドナーおよびアクセプタ材料(例えば、混合および/またはバルクヘテロ接合)の貫入した、巻き込まれた、または複雑なネットワークを描いていてもよい。
【0046】
混合ヘテロ接合は、例えば、真空蒸着、気層蒸着、または真空熱蒸着を使用した前記ドナーおよびアクセプタ材料の同時蒸着によって形成してもよい。バルクヘテロ接合は、例えば、蒸着後熱処理を伴う制御成長同時蒸着、または溶液工程によって形成してもよい。ポリマー複合またはバルクのヘテロ接合は、例えば、ドナーとアクセプタ材料のポリマーブレンドという溶液工程によって行ってもよい。
【0047】
一般に、平面ヘテロ接合は良好なキャリア伝導度を有するが、励起子開裂が弱い。複合層はキャリア伝導度が低いかもしれないが、励起子開裂が良好であり、バルクヘテロ接合は良好なキャリア伝導度および良好な励起子開裂を有しうるが、材料の「袋小路」の末端で、効率を低下させる電荷の蓄積を起こすかもしれない。特に明記しない限り、平面、複合、バルク、およびハイブリッドヘテロ接合は、本願明細書で開示されている実施形態を通してドナー−アクセプタヘテロ結合として交互に用いてもよい。
【0048】
ゆえに、いくつかの実施形態において、第三感光層108は、第一感光層106と第二感光層110の間に設けられたバルク、複合、またはナノ結晶ドナー−アクセプタ層を有してもよい。実施形態によっては、第三感光層108は、第一感光層106と第二感光層110の両方を有する材料を含んでもよい。
【0049】
エネルギー準位は、デュアルヘテロ接合構造を設計する際に考慮するべきである。ヘテロ接合で開裂する励起子のために、二つの材料のLUMOおよびHOMOの間のエネルギーの相殺(offset)(ΔE
1およびΔE
2)は、励起子結合エネルギー(E
B)の半分より大きいか、等しくあるべきである。このことは、前記感光領域を有する感光層用の材料を選択する際に考慮してもよい。
【0050】
実施形態によっては、デバイス100の第一、第二、および第三感光層は、それぞれ前記電池を構成する他のそれぞれの感光層とは異なる材料を有してもよい。実施形態によっては、感光電池に使用される好適な材料として、シクロメタル有機金属化合物を含む有機材料を含んでもよい。「有機金属」の用語は、本願明細書においては、当業者にとって一般に理解される通りに使用されており、例えば、「無機化学」(第二版)Gary L. Miessler、Donald A. Tarr、Prentice Hall著 (1999)の第13章のように。有機層は真空蒸着、スピンコート、有機気層蒸着(OVPD)、インクジェットプリント、真空熱蒸着(VTE)、および当該技術分野で知られたその他の方法によって形成してもよい。
【0051】
実施形態によっては、前記感光層を個々に選択することにより相互補完的吸収スペクトルを構成してもよい。すなわち、本願明細書で説明した前記デバイスの前記感光層を構成する前記材料は、その他の感光層の吸収スペクトルと相互補完的である吸収スペクトルを有する材料から独立に選択することにより光源から広範囲の波長を得ることができる。
【0052】
実施形態によっては、第一感光層106はドナー型材料を有する。実施形態によっては、第三感光層108はデュアルドナー/アクセプタ型材料を有する。実施形態によっては、第二感光層110はアクセプタ型材料を有する。
【0053】
実施形態によっては、第一感光層106は
、ホウ素サブフタロシアニン
塩化物(SubPc)、銅フタロシアニン(CuPc)、C60およびC70フラーレン、塩化アルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スクワライン(SQ)、およびポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)から選択される材料を有する。
【0054】
実施形態によっては、前記第二感光層は、C
60およびC
70フラーレン、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ペルフルオロ銅フタロシアニン(F
16−CuPc)、およびこれらの組合せから選択される材料を含む。一実施形態においては、前記材料はC
60を含む。
【0055】
実施形態によっては、前記第三感光層は、
ホウ素サブフタロシアニン塩化物(SubPc)、銅フタロシアニン(CuPc)、C60およびC70フラーレン、塩化アルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スクアライン(SQ)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、ペルフルオロ銅フタロシアニン(F16−CuPc)、およびこれらの組合せから選択される材料を含む。一実施形態においては、前記材料はCuPc:C60である。
【0056】
本願明細書に開示されたそれぞれの感光層は活性であることを理解するべきである。すなわち、前記層はそれぞれ電荷キャリアの生成に活発に参加しうる。それらの層とは異なり従来の多層デバイスの中には、輸送層または光スペーサとして振る舞うが、キャリアの産生には参加しない不活性な層を有するものがある。例えば、従来の多層デバイスは、感光電池の層と電極の層の間の接触を単に阻害する二つの不活性層によって挟まれた、二つの層を有する感光電池を有する。対照的に、本願明細書で開示されたそれぞれの前記有機感光層は、隣接層の界面でのヘテロ接合を形成することによって生産的な光の吸収に関与しうる。上記に開示したように、例えば、励起子は、三つの有機層を有するデバイスにおける第二感光層(例えば、デュアルドナー−アクセプタ層)の両界面で開裂してもよい。
【0057】
デバイス100は、前記電池と第一電極102の間に設けられた少なくとも一つの有機シード層104をさらに有する。実施形態によっては、前記シード層は第一電極102上に直接蒸着され、かつ接している。前記有機シード層もまた前記電池に直接接していてもよい。例えば、実施形態によっては、有機シード層104は、第一電極102および第一感光層106と直接接していてもよい。
【0058】
前記有機シード層は、ある感光性デバイスの効率を高めるのに寄与しうる。例えば、有機シード層を有しないデバイスと比較した際に、デバイス100の第一感光層106は、結晶性の向上を示し得る。特定の理論に縛られることなく、前記第一感光層を前記有機シード層上に蒸着することによって一つ以上の前記感光層上に好ましい結晶特性を付与することができると思われており、前記感光層は前記シード層の前記結晶の配向によってエピタキシャル制御されている。実施形態によっては、有機シード層104と第一感光層102の間、および/または有機シード層104と第一感光層106との間に一つ以上の介在層があってもよい。好適な介在層は、本願明細書において有機シード層104として開示された一つ以上の結晶材料を含んでもよい。
【0059】
実施形態によっては、前記感光層の好適な結晶特性は、まず基板上に第一電極102蒸着し、続いて少なくとも一つの有機層104と第一感光層106を蒸着しながら、デバイス100の前記層を連続的に蒸着することによって達成してもよい。実施形態によっては、前記有機シード層104は第一電極102上に直接蒸着し、続けて第一感光層106を有機シード層104上に直接蒸着してもよい。好適な蒸着技術は、例えば上述のOVPD、およびVETを含んでもよい。前記シード層は、前記配向性成長の方向や蒸着時の状態のまま覆っている感光層の多形を制御したり変更したりするのを助け、よってガラスやナノ結晶材料を使用できると考えられている。
【0060】
実施形態によっては、有機シード層104は、選択的正孔輸送有機材料を有してよい。
実施形態によっては、シード層104は、
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボニトリル(HAT−CN);
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボ
キサミド;
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボン酸;
1,4,5,6,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボン酸三無水物;
テトラシアノ−キノンジメタン(TCNQ);
2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8,−テトラシアノ−キノンジメタン(F4−TCNQ);
N,N’−ジシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−キノンジイミン(F4DCNQI);
N,N’−ジシアノ−2,5−ジクロロ−3,6−ジフルオロ−1,4−キノンジイミン(C12F2DCNQI);
N,N’−ジシアノ−2,3,5,6,7,8−ヘキサフルオロ−1,4−ナフト−キノンジイミン(F6DCNNOI);
1,4,5,8−テトラヒドロ−1,4,5,8−テトラチア−2,3,6,7−テトラシアノ
アントラキノン(CN4TTAQ);
2,2,7,7,−テトラフルオロ−2,7−ジヒドロ−1,3,6,8−テトラオキサ−2,7−ジボラ−4,9,10,11,12−ペンタクロロ−ベンゾ[e]ピレン;
2−(6−ジシアノメチレン−1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロ−6H−ナフタレン−2−イリジン)マロノニトリル、およびこれらの組合せから選択される材料を含みうる。
【0061】
任意に、デバイス100は、励起子ブロック層(“EBL”)といったブロック層112をさらに有してもよい。EBLの例は、Forrest等の米国特許第6,451,415に開示されており、これらは事実上全体を参照として本明細書中に取り込む。EBLの追加の背景説明は、Peumans等著、「超薄有機ダブルヘテロ構造光起電ダイオードにおける高光学強度での効率的光子捕獲」Applied Physics Letters 76, 2650−52 (2000)においても見つけることができ、これらは事実上全体を参照として本明細書中に取り込む。EBLは、励起子が前記ドナーおよび/またはアクセプタ材料の外に移動することを防ぎ、消光を抑えることによって作用してもよい。EBL材料の例は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−アルファ−ナフチルベンジジン(NPD)、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)、カルバゾールビフェニル(CBP)、バトクプロテイン(BCP)、およびトリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)(Ru(acac)
3)から選択してもよい。一実施形態においては、ブロック層112はBCPを含む。
【0062】
実施形態によっては、デバイス100は、一つ以上の追加の電池(例えば、感光領域)をさらに有してもよい。すなわち、実施形態によっては、デバイス100は感光電池の「積層体」を含んでもよい。ゆえに、実施形態によっては、デバイス100は少なくとも一つの他のドナー/デュアルアクセプタ−ドナー/アクセプタヘテロ結合を含む第二感光領域を少なくとも一つ含んでもよい。実施形態によっては、第一感光電池および第二感光電池は、さらに下記で記載したように
図4A〜Eに示されたようなデバイスに含まれてもよい。実施形態によっては、第一セルおよび第二セルは異なる吸収特性を有してもよい。
【0063】
デバイス100は透明電荷輸送層、追加電極、または電荷再結合領域をさらに含んでもよい。電荷輸送層は有機でも無機でもよく、光伝導活性であってもなくてもよい。電荷輸送層は電極に似ているが、前記デバイス外部との電気的な接触を有さず、光電子デバイスのサブセクションからの電荷キャリアを隣接したサブセクションに伝達する。電荷再結合領域は電荷輸送層に似ているが、光電子デバイスの隣接するサブセクション間の電子と正孔の再結合を許容する。電荷再結合領域は、Forrest等による米国特許第6,657,378号、Rand等による米国特許出願公開2006−0032529A1「有機感光デバイス」出願日2004年8月11日、およびForrest等による米国特許第7,375,370号「積層有機感光デバイス」出願日2004年11月3日(事実上全体を参照として本明細書中に取り込む)に開示されているように、半透明金属、またはナノクラスター、ナノ粒子、および/またはナノロッドを含む金属代替再結合中心を有してもよい。電荷再結合領域は、再結合中心が組み込まれた透明マトリックス層を有しても有さなくてもよい。電荷輸送層、電極、または電荷再結合領域は、光電子デバイスのサブセクションのカソードおよび/またはアノードとして機能してもよい。電極または電荷輸送層はショットキーコンタクトとして機能してもよい。
【0064】
図1に開示された前記デバイスに加えて、少なくとも一つの有機シード層は「反転デバイス」として構成されてもよい。例えば、
図3は、AlまたはAgアノードとCuPc感光層の間に設けられたHAT−CNシード層を含む反転デバイスの例を示している。BCDブロック層は、前記感光領域と複合ITO/金属カソードとの間に設けられている。
【0065】
他の実施形態において、好適なデバイスは、
図4AからEに示したような「タンデム」デバイスを含む。このようなデバイスにおいて、二以上の感光電池は、介在する電導領域とともに電気的に逐次積層してもよい。前記介在する電導領域は帯電した再結合領域または電荷輸送層でもよい。再結合領域として、前記領域は透明マトリックス層を有するまたは有さない再結合中心を有してもよい。マトリックス層を有さない場合、前記領域を形成する材料の配列は前記領域を通して連続していない。第二感光電池は単一ドナー/アクセプタヘテロ接合を有してもよく、デバイス100について上記に開示されているものと異なるか類似したドナー/デュアルアクセプタ−ドナー/アクセプタヘテロ接合を有してもよい。任意に、前記タンデムデバイスは、上記のような一つ以上の平滑層および/またはブロック層を有してもよい。
図4Aおよび
図4Bは反転タンデムデバイスの例を表している。
図4A〜Eの前記デバイスは単なる例示であり、限定するものではないことを理解するべきである。
【0066】
本願明細書に開示されたぞれぞれの前記デバイスにおいて、励起子ブロック層といった層は省略した。反射層または追加の感光領域といった他の層を追加してもよい。層の順番は変更しても逆にしてもよい。例えば、Forrest等の米国特許第6,333458号、およびPeumans等の米国特許第6,440,769号(事実上全体を参照として本明細書中に取り込む)のように、集光器または捕集形状を用いて効率を高めてもよい。
【0067】
例えば、Peumans等の米国特許第7,196,835号「周期的絶縁多層積層体」、2004年6月1日出願(事実上全体を参照として本明細書中に取り込む)に開示されているように、コーティングを用いて、デバイスの好ましい領域に光エネルギーを照射してもよい。前記タンデムデバイスにおいては、前記電池間の前記電気的接触は電極を介して行われ、透明絶縁層を電池の間に形成してもよい。また、前記タンデムデバイスにおいては、一つ以上の感光領域が、ドナー−アクセプタヘテロ接合の代わりに、ショットキーバリアヘテロ接合であってよい。具体的に開示されたもの以外の配置を用いてもよい。
【0068】
他の実施形態においては、好適なデバイスとして、例えば、
図5A〜Cに示したような真空熱蒸着(VTE)によって基板上に成長させた、一つ以上のCuPcおよび/またはHAT−CN層を含んでもよい。例えば、一実施形態によると、前記CuPc層は前記基板と直接接していてもよい。
図5Aは、真空熱蒸着(VTE)によって基板上に成長させたCuPc層を含む構造を示した、断面の構造概略図である。
【0069】
他の実施形態において、HAT−CN層はVTEによって基板上に成長させてもよい。
図5BはVTEによって基板上に成長させたHAT−CN層を含む構造を示した、断面の構造概略図である。
【0070】
さらに他の実施形態において、CuPc層およびHAT−CN層は基材上に成長させてもよい。
図5CはCuPcおよびHAT−CN層を含む構造を示した、断面の構造概略図である。
【0071】
X線回折データ
図6は、Si基板上に成長させた
図5BのHAT−CN層のX線回折(XRD)特性を示したものである。
図6に示したように、前記HAT−CN層と下にあるSi基板との間に明確な区別がある。
【0072】
CuPcのみ、またはHAT−CN層と組み合わせたCuPcを含むXRDパターンについても同じである。例えば、
図7A〜Bは、ケイ素基板上に成長させたPTCDA/CuPcの組合せだけでなく、
図5A〜CにおいてHAT−CNおよびCuPc層の組合せのXRD特性を示している。
【0073】
さらに、
図8A〜Cは、
図5A〜CにおいてITO基板上に成長させたHAT−CNとCuPc層との組み合わせのXRD特性を示したものである。
【実施例】
【0074】
二つのOPV、ひとつは前記HAT−CN緩衝層を有し、もう一つは有しない、を上記のように形成した。
図9は、対応するOPVの前記暗電流密度(JD)−電圧、および光電流密度(JPH)−電圧特性を示している。V>0でのOPVの前記暗電流密度は、V<0でのJDが変化しない間、HAT−CN緩衝層を使用することにより増大する。正バイアス下での前記増大は、その配列が改善されたことによるCuPcの抵抗低下による正孔抽出の改善による(下記を見よ)。1つの太陽、AM1.5G照射、の下では、HAT−CNテンプレート層を使用することにより、J
SCは4.2±0.06mA/cm
2から4.6±0.05mA/cm
2まで上昇するが、さらにより著しくは、ffが50%±2%から62%±1%に上昇した。J
SCとffがV
OCの大きな変化を伴わずに増大する結果、前記PCEは、HAT−CNをテンプレート緩衝層として使用することにより、1.1%±0.1%から1.4%±0.1%に向上した。
【0075】
HAT−CN補正されたOPVについてのデータの詳細を表1にまとめた。曲線因子(ff)は一般にOPVの直列および分岐抵抗の組合せによって決まる。順方向バイアスJPH−V特性の傾きから明らかなように、直列抵抗の低下はffの増大に関係している。具体的には、JD−V特性によって計算した面積直列抵抗は、電荷輸送HAT−CNテンプレートを使用した場合、33±7Ω−cm
2から2.5±0.2Ω−cm
2に低下した。
【0076】
【表1】
【0077】
直列抵抗低下の原因を調べるため、HAT−CN緩衝層テンプレートを有する、または有しない、ITO上のCuPcフィルムのX線回折測定を実施した。
図10は、ITO上のCuPc、ITO上のHAT−CN、およびHATCN/ITO上のCuPcの三サンプルのX線回折を示している。ITO上のHAT−CNでは、非常に薄い層を使用したため、特に回折ピークは観察されなかった。一方、ITO上のCuPcは、CuPcのa層の(200)回折に相当する2θ=6.7°に弱いピークを示した。前記CuPc回折強度はITO/HAT−CN/CuPcフィルムについて著しく増大しており、HAT−CNが上に重なっている層の結晶化を誘起するテンプレートの役割をしていることを示している。
【0078】
前記CuPc回折ピークの位置が、HAT−CNの添加に付随して変化せず、ピーク強度のみが増大しているため、より大きく、配向したCuPcドメインが結晶配向を変えることなく形成されたと推測する。前記2θ=6.7°のピークは、
図10の挿入図に示したように、前に前記基材表面の前記CuPc分子の前記垂直な配向によるものと考えられる。ゆえに、HAT−CN緩衝層を伴う前記OPVの低下した直列抵抗は、部分的に前記CuPcの結晶モルフォロジーにより、より高い正孔移動度につながる。CuPc層の広範な結晶化は、HAT−CNテンプレートによって誘起され、ゆえに前記活性層と前記ITO電極の間の抵抗を低下させる。前記直列抵抗の低下の他の理由は、前に述べたように、また前記エネルギー準位
図1から推測されるように、前記ITOとHAT−CNとの間の接触抵抗の低下である。HAT−CNテンプレートを有する、および有さない前記OPVの前記外部量子効率(EQE)を
図11に示した。前記EQEは、HAT−CN層をITOおよびCuPcの間に挿入することにより、調査したすべての波長領域、λ=300nm〜800nm、でわずかに向上した。一方で、EQEの増加が結晶配向の向上に起因する光電流の増大によることを示す
図11、挿入図のように、前記活性層の前記吸収スペクトルは、HAT−CNの導入によって変化しなかった。
【0079】
実施例の他に、または特に明示したところでは、明細書と請求の範囲に使用される原料の量を表すすべての数字、反応条件、分析手法等は、あらゆる場面において「約」の用語によって修正されるべきであることを理解しなければならない。ゆえに、逆に明示しない限り、明細書および添付の請求の範囲に掲げられた数値パラメータは、本願の開示により求められる望ましい特性に依って変化してもよい近似値である。最低でも、請求の範囲に等価物の原則を適用することを制限する試みとしてではなく、それぞれの数値パラメータは、有効桁数と通常の切り捨て方を参酌して構成されるべきである。
【0080】
広範な開示を規定する数値範囲およびパラメータは、近似値であるが、特に明示しない限り、特定の実施例で規定された数値はできるだけ正確に記載される。しかし、どの数値も個々の測定試験における標準偏差から生じる必然的な一定の誤差を固有に含む。
【0081】
本願明細書で開示されたデバイスと方法の他の実施形態は、明細書と発明の実施を考えれば当業者にとって明らかであろう。本願に開示されたデバイスと方法の本当の範囲は請求の範囲によって規定され、明細書と実施例は、好適な例にすぎないと解すべきである。