特許第5947811号(P5947811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947811
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】長骨用の形状記憶部材を有する髄内釘
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/72 20060101AFI20160623BHJP
【FI】
   A61B17/72
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-546611(P2013-546611)
(86)(22)【出願日】2011年12月23日
(65)【公表番号】特表2014-507968(P2014-507968A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】EP2011006551
(87)【国際公開番号】WO2012089330
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年11月27日
(31)【優先権主張番号】10197453.3
(32)【優先日】2010年12月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510090807
【氏名又は名称】オーソフィックス ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】コーティ、ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】バニャスコ、マーラ
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ、ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】マリーニ、グラツィアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ、グラツィアーノ
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/150691(WO,A1)
【文献】 特表2007−530194(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/037454(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨折した長骨に挿入される髄内釘であって、
近位端(3)と遠位端(4)との間に延びる中空のロッド(2)と、
前記ロッド(2)を収容する外側管状スリーブ(5)であって、前記ロッド(2)が前記外側管状スリーブ(5)と同軸であるとともに該外側管状スリーブ(5)の内側で軸方向に案内される外側管状スリーブ(5)と、
前記ロッド(2)の対応する受部(6)内に収容される複数の形状記憶部材(7)であって、該形状記憶部材(7)のそれぞれは、前記髄内釘を前記長骨に挿入することを可能にするために、前記形状記憶部材(7)が該形状記憶部材(7)のそれぞれの受部(6)内に収容される非使用形態と、前記形状記憶部材(7)が前記外側管状スリーブ(5)内のスロット(8)から突出する使用形態とをとることができる複数の形状記憶部材(7)と
を備え、
前記形状記憶部材(7)の遠位対(11)は、前記ロッド(2)の前記遠位端(4)に設けられ、
一対の横通路(23、24)が、前記ロッド(2)の前記近位内に設けられ、一対の対応する横孔(13、14)が、前記外側管状スリーブ(5)の近内に設けられ、前記一対の横孔及び前記一対の横通路は、それぞれの骨用ねじを収納するように意図されているとともに、前記骨用ねじを挿入するための、共通平面上にあるそれぞれの軸を有する、骨折した長骨に挿入される髄内釘において、
前記遠位対(11)形状記憶部材(7)が、互いに対してずらされた平面上にあり、また、前記共通平面に対してそれぞれのずらされた平面上にあり、前記形状記憶部材(7)は、遠位カバー(12)によって、前記形状記憶部材(7)の対応する受部(6)内に保持され、前記遠位カバー(12)は前記ロッド(2)に取り付けられるとともに固定されて前記形状記憶部材(7)の遠位対(11)を所定位置に保持することを特徴とする髄内釘。
【請求項2】
前記遠位対(11)の前記第1の形状記憶部材(7)及び前記第2の形状記憶部材(7)は、互いに90度で角度的に離間している、請求項1に記載の髄内釘。
【請求項3】
前記遠位対(11)の一方の形状記憶部材(7)は、前記横通路(23、24)及び前記横孔(13、14)の前記共通平面に対して+45度の平面にあるのに対し、前記遠位対(11)の他方の形状記憶部材(7)は、前記横通路(23、24)及び前記横孔(13、14)の前記共通平面に対して−45度の平面にある、請求項1または2に記載の髄内釘。
【請求項4】
前記外側管状スリーブ(5)の前記近位の前記横孔(13、14)は、前記外側管状スリーブ(5)の壁にあるスロットである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の髄内釘。
【請求項5】
前記ロッド(2)の前記近位の前記横通路(23、24)は、貫通孔(24)及び貫通スロット(23)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の髄内釘。
【請求項6】
各形状記憶部材(7)は、2つのウィング(15)が中央部分(16)によって接続されている実質的にフォーク状の形状を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の髄内釘。
【請求項7】
前記形状記憶部材(7)は、SIM(応力誘起マルテンサイト)材料によって実現される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の髄内釘。
【請求項8】
前記SIM材料は、ニチノールのような、ニッケルとチタンとの合金である、請求項7記載の髄内釘。
【請求項9】
前記遠位カバー(12)は、2つの部分(20、22)によって形成されており、該部分(20、22)は、単部片を形成するそれぞれの端において接続され、各部分は、互いに対して垂直なそれぞれの平面上にある、請求項1〜8のいずれか一項に記載の髄内釘。
【請求項10】
前記2つの部分(20、22)は双方とも、前記遠位カバーが前記ロッド(2)に取り付けられるとともに固定されて形状記憶部材(7)の前記遠位対(11)を所定位置に保持したときに、前記ロッド(2)の円筒表面に続く円筒状に湾曲した外側表面を有する、請求項9に記載の髄内釘。
【請求項11】
丸みを帯びた先端(25)が、前記外側管状スリーブ(5)の遠位端に固定される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の髄内釘。
【請求項12】
前記丸みを帯びた先端(25)は開口端を有する、請求項11に記載の髄内釘。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その最も包括的な態様において、骨折した長骨、例えば大腿骨又は脛骨に挿入されるのに適しているとともに、近位端と遠位端との間に延びるカニューレ状ロッドを備える髄内釘に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、釘であって、
近位端と遠位端との間に延びるカニューレ状ロッドと、
カニューレ状ロッドを収容する外側管状スリーブであって、カニューレ状ロッドが外側管状スリーブと同軸であるとともに外側管状スリーブの内側で軸方向に案内される外側管状スリーブと、
カニューレ状ロッドの対応する受部内に収容される形状記憶部材であって、形状記憶部材のそれぞれは、釘を骨に挿入することを可能にするために、形状記憶部材が形状記憶部材のそれぞれの受部内に後退可能に収容される形態と、形状記憶部材が外側管状スリーブにあるスロットから突出する別の形態とをとることができる形状記憶部材と
を備える釘に関する。
【背景技術】
【0003】
髄内釘は、外科的介入の分野において知られているとともに外科的介入に使用されており、外科的介入の際、骨折した長骨に挿入されて、骨の強度を回復させ、仮骨の再生機構が正常に働くことを可能にする。
【0004】
これらの釘は、円筒形状を有するステムすなわちロッドを含むとともに中実又は中空のいずれかであり、中空の場合、ロッドはカニューレ状になっている。
【0005】
再構成される骨部分に髄内釘を固定するために、通常、平行平面上にあるとともにロッドを直径方向に横切って延びる軸を有する2つのずれた孔が、釘の遠位端に対応して釘に設けられている。一般に、平行平面上にある軸を有する2つの更なるずれた孔が、釘の近位端に対応して設けられている。
【0006】
これらの孔は、骨において適当な孔がドリル穿孔された後、骨折した骨の内部に髄内釘を固定するようにして、骨に挿入される骨用ねじを収納するように意図されている。
【0007】
これらの一般的に知られている釘は、依然として広く使用されているが、骨用ねじを挿入するために孔がドリル穿孔される必要があることに起因して既知の欠点を有する。これらの孔は、挿入された髄内釘の孔に対応する必要があるが、遠位の釘孔は視認できないため、X線技術が必要とされ、外科手術中、手術スタッフをX線に累積的に被曝させるとともに多大な不利益を生じさせる。
【0008】
最近、代替的な釘構造体が提案されている。例えば、同一出願人が所有する欧州特許第1740113号は、近位端と遠位端との間で延びる真っ直ぐなステムを備え、少なくとも形状記憶材料から作製される複数の要素を更に備えた、骨折した長い骨に挿入することのできる髄内釘を開示している。これらの形状記憶部材の自由端は、骨に釘を固定するためにステムの外側に配置される。
【0009】
形状記憶部材を有するそのような釘は、多くの観点から有利である一方、依然として解消すべき幾つかの欠点も有する。
【0010】
例えば、骨用ねじがないことに起因して、髄管内部での釘の完全な安定性、及び患者の体重によって引き起こされる高い軸方向の応力に対する完全な安定性がない。この種の応力が加わると、釘は不安定となり、骨接合過程を妨害しさえする場合があるか、又は治癒過程において異常が生じる場合がある。
【0011】
本発明の技術的課題は、形状記憶部材を収容するより単純な釘構造体によって、従来技術の解決策の欠点を全て解消する構造上の特徴及び機能上の特徴を有する髄内釘を提供することである。
【0012】
本発明の釘の別の目的は、釘の取り付け時に最終的な固定形態に至る前に固定化段階を改善する釘を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、骨折部分が十分に硬化したときに抜去することがより容易な髄内釘を提供することである。
【発明の概要】
【0014】
本発明の基礎となる構想は、請求項1に記載の、骨折した長骨に挿入される髄内釘を提供することである。
【0015】
従属請求項は、本発明による髄内釘の好ましい実施形態及び特に有利な実施形態を概説する。
【0016】
本発明による髄内釘の更なる特徴及び利点は、例示的かつ非限定的な目的で与えられたその例示的な一実施形態の以下の説明から、また、添付図面を参照すれば、より明らかとなるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】構成部材に分解されている、本発明による釘の斜視図である。
図2図1の釘の管状スリーブの立面図である。
図3図1の釘のカニューレ状ロッドの立面図である。
図4A】本発明の釘に組み込まれる形状記憶部材の正面図である。
図4B】本発明の釘に組み込まれる形状記憶部材の側面図である。
図4C】本発明の釘に組み込まれる形状記憶部材の平面図である。
図4D】本発明の釘に組み込まれる形状記憶部材の断面図である。
図5図4A図4Dの形状記憶部材のための受部を有する、図3のカニューレ状ロッドの遠位端部分の細部の斜視図である。
図6図3に示されているカニューレ状ロッドの遠位カバーの斜視図である。
図7図3のカニューレ状ロッドの近位端部分の細部の側面図である。
図8】遠位カバーが取り外されている、図3のカニューレ状ロッドの伸張側面図である。
図9】組み付けられた形態にある、本発明の釘の正面立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記の図面を参照すると、1は、骨折した長骨、例えば大腿骨に挿入されることを意図された、本発明による髄内釘を全体的に示している。
【0019】
大腿骨用の釘の場合、釘1には、大腿骨の形状に沿うように5度近くの曲率を有する解剖学的形状が設けられる。
【0020】
釘1は、近位端3と遠位端4との間に延びる内部ロッド2を備えている。
【0021】
釘1は、同軸に挿入される内部ロッド2を収容する外側管状スリーブ5を更に備えている。
【0022】
したがって、釘1と、その主要な構成部材である内部ロッド2及び外側管状スリーブ5とは、近位端部分の軸x’−x’が釘1の残りの本体及び遠位端部分の軸x”−x”と5度の小さな角度を形成するように曲がっている、すなわち屈曲している。
【0023】
釘1と、その主要な構成部材である内部ロッド2及び外側管状スリーブ5とは、円筒形であることが好ましい。
【0024】
外側管状スリーブ5及び内部ロッド2は双方とも、双方の構成部材の近位部に一対の横孔を含み、これらの横孔は、骨用ねじを収納するように意図されているとともに、骨用ねじを挿入するために、共通平面上にあるそれぞれの軸を有する。
【0025】
より具体的には、外側管状スリーブ5は、骨用ねじを通すことを可能にするように、釘の軸に対して横方向に設けられた一対の横孔すなわちスロット13及び14を含んでいる。
【0026】
より近位のスロット13は、他方のスロット14よりも軸方向に長い。
【0027】
外側管状スリーブ5が管状であるため、スロット13、14は、外側管状スリーブの近位部分の周壁の、対向した同軸部分に設けられる。双方のスロット13、14は、互いに対して平行な対応する貫通孔を有している。
【0028】
更なるスロット8が、外側管状スリーブ5の遠位部分に設けられている。これらの遠位スロットは、互いに対して90度だけ角度的にずらされており、近位スロット13、14に対してそれぞれ+45度及び−45度だけ角度的にずらされている。
【0029】
図3に示されている内部ロッド2はカニューレ状になっている、すなわち、長手方向に延びる内隙を有している。内部ロッドは、骨の髄管に挿入される際に使用するガイドワイヤー、例えばキルシュナー鋼線を収容するのに使用される機能部として、その長さ全体に沿ってカニューレ状になっていてもよい。
【0030】
本発明によれば、内部ロッド2は、外側管状スリーブ5の内側に摺動的に収容されている。より具体的には、内部ロッド2は、外側管状スリーブ5の内側を軸方向に移動可能であり、釘1の近位端に取り付けられた外部装置によって駆動される。
【0031】
内部ロッド2は、近位部分に一対の近位の横通路23、24を含んでいる。
【0032】
より近位の横通路23は、形状及び長さが実質的に外側管状スリーブ5のスロット13に対応するスロットである。他方の横通路24は、固定ねじを収納する貫通孔であり、この横通路は、内部ロッド2が外側管状スリーブ5の内側の適正な位置にあるときに外側管状スリーブ5のスロット14の軸に対応する軸を有している。
【0033】
重要なことは、外側管状スリーブ5の内側での内部ロッド2の軸方向に案内された相対移動により、外側管状スリーブ5にあるスロット13、14を、内部ロッド2にある対応する横通路23及び24と一致させることができることである。
【0034】
内部ロッド2のヘッド部分には、釘1の内部ロッド2を把持するのに適した図示しない駆動器具とのねじ接続のために、ねじ山26が設けられている。
【0035】
髄管への釘1の容易な挿入を可能にするために、外側管状スリーブ5の近位端に取り付けることができる外部器具が想定される。この接続を可能にするため、外側管状スリーブの近位端は、例えば差し込み式の取付けシステム21を備えているが、当該分野において知られている任意の他の締結システムを使用することができる。
【0036】
内部ロッド2は、少なくとも形状記憶材料から作製される活性部材7を収納する幾つかの遠位受部6を備えている。
【0037】
活性部材7はそれぞれ、互いに同様であることが好ましい。
【0038】
各活性部材7は、2つの小さなウィング15が中央部分すなわちコア16によって接続されている実質的にフォーク状の形状を有している。
【0039】
遠位受部6は、活性部材7が後退位置にあるときに、活性部材7のコア16を収容する通過開口18及び活性部材のウィング15を収容する2つの側方凹部10の形態である。
【0040】
活性部材7は、その形状記憶の特徴により、各遠位受部6の内側に完全に隠れる第1の形態から、外側管状スリーブ5に設けられている対応するスロット8から突出するように内部ロッドの遠位受部から突出する拡張形態へ、異なる形態をとることができる。
【0041】
換言すれば、活性部材7は、骨への釘の挿入を可能にするために、ウィング15が側方凹部10によって収容されている状態で、活性部材7のそれぞれがそのそれぞれの遠位受部6に後退可能に収容される第1の形状又は形態をとるように構成されているとともに、そのような形態をとるのに適している。骨折した骨の髄管の内壁に当接するとともに内壁を把持するには、活性部材7の上記ウィング15が遠位受部6のそれぞれの側方凹部10から突出する別の形状又は形態がとられる。
【0042】
「形状記憶材料」という用語によっては、所与の開始形状を有するとともに、所定の外部条件下で又は「材料命令(material instruction)」とも呼ばれる所定の活性化条件を受けたときに所与の新たな形状をとるが、材料命令が解除されたときには初期の形状に戻る、当該技術分野において知られている材料を意図する。
【0043】
本発明の意味では、開始形状は、形状記憶部材である活性部材7が内部ロッド2の遠位受部6から突出するように配置される形態に相当し得る。しかしながら、使用される材料に応じて、開始形状は、活性部材7が後退して遠位受部に収容される形態にも相当する場合がある。
【0044】
形状記憶部材である活性部材7は形状記憶合金で実現することができるが、SIM材料、すなわち、応力誘起マルテンサイトにしやすい材料、例えば、ニッケルとチタンとの合金であるニチノールを使用することが好ましいことに留意せねばならない。
【0045】
形状記憶材料の別の特性は、第1の形状又は形態から第2の形状又は形態への遷移が可逆である、すなわち、形状記憶部材が第2の形状又は形態から第1の形状又は形態に変化することで釘を骨から抜くことを可能にすることができることにある。
【0046】
本発明の釘1は、釘1の遠位端4に位置付けられる活性部材7の対11を有して構成されている。活性部材7のこの対11を遠位対と呼ぶ。
【0047】
遠位対である対11を形成する第1の活性部材7及び第2の活性部材7は、互いに対してずらされた平面上にあり、また、対11の第1の活性部材7及び第2の活性部材7は双方とも、スロット13、14及び横通路23、24がある共通平面に対してそれぞれのずらされた平面上にあることが有利である。
【0048】
より詳細には、スロット13、14及び横通路23、24の軸がある共通平面に対して、対11の一方の活性部材7は+45度を向き、対11の他方の活性部材7は−45度を向いている。
【0049】
したがって、対11の第1の活性部材7及び第2の活性部材7は、互いから90度だけ角度的に離間している。
【0050】
活性部材7が互いに例えば60進法の90度のずれを有してずらされていることにより、直交平面上に所定の安定性が確保され、これは釘1に髄管内でのより良好な把持を与えるのに有用である。
【0051】
本発明の形状記憶部材は、内部ロッド2から構造上独立しており、内部ロッド2の遠位部分の対応する遠位受部6内に遠位カバー12によってしっかりと保持された状態でこれらの遠位受部内に収容されることが有利である。各活性部材7の中央部分であるコア16はその遠位受部6内に遠位カバー12によってしっかりと保持されるのに対し、活性部材7のウィング15は遠位カバー12と内部ロッド2との間の開口及びスロット8を通って自由に移動可能である。
【0052】
遠位カバー12は、カバーされる内部ロッドの遠位端と協働する特定の構造を有している。
【0053】
遠位カバー12は、カバーされていない内部ロッドの遠位部分に半田付け又は他の固定技法によって固定される。
【0054】
遠位カバー12は、内部ロッドに固定されると、活性部材7が後退形態にあるときに、活性部材7のコア16を収納する通過開口18によって、また、同じ活性部材7の各ウィング15を収納する一対の対向する側方凹部10によって各遠位受部6が形成されるように、内部ロッド2を形成する共通部片を形成するとみなされ得る。
【0055】
より詳細には、遠位カバー12は2つの部分20及び22によって形成されており、これらの部分20及び22は、単部片を形成するそれぞれの端において接続され、各部分は、互いに対して垂直なそれぞれの平面上にある。
【0056】
部分20、22は双方とも、遠位カバーが取り付けられるとともに内部ロッド2に固定されて活性部材7の対11を所定位置に保持したときに、内部ロッド2の円筒表面に続く円筒状に湾曲した外側表面を有している。
【0057】
遠位カバー12の2つの部分のうちの、符号20が付けられた一方の部分は、内側が平坦であるのに対し、他方の部分22は、内部ロッド2の遠位端4上に設けられた対応する内側部材と協働するように適合した形状を有する細長い内側部材を有している。
【0058】
遠位カバー12と内部ロッド2の遠位端との間の連結により、カニューレ状ロッド2の円筒形の外側表面の連続性が確保される。
【0059】
骨折した骨の髄管への釘1の挿入を容易にするために、外側管状スリーブ5の先端部分が、釘を上記髄管の中へスムーズに摺動させることを可能にするように丸みを帯びていることが好ましい。
【0060】
より具体的には、構造上独立した丸みを帯びた先端25は、外側管状スリーブ5の遠位端に固定されるように設けられる。
【0061】
先端25は、内部ロッド2が外側管状スリーブ5に挿入されてから外側管状スリーブの遠位端に半田付けされる。
【0062】
そのような先端25は、開口端を有するカニューレ状ロッド2の開口を維持することに留意せねばならない。
【0063】
説明したことから理解することができるように、本発明による髄内釘は、従来技術の解決策を参照して本明細書の導入部において述べた要件を満たし、従来技術の解決策を参照して本明細書の導入部において述べた欠点を解消する。
【0064】
本発明による釘の明確な利点は、釘を髄管内に固定するのに、釘の近位部分に設けられる横固定ねじが1本だけしか必要とされないことである。
【0065】
近位ねじと遠位の形状記憶部材とを組み合せることの別の利点は、このようにして構成された釘が、形状記憶材料から作製された釘と従来の釘の骨用ねじとの二重の利点を有することである。
【0066】
当然のことながら、当業者は、随伴する特定の要件を満たすために、上述した髄内釘に対して数多くの変更及び変形を適用することができ、それらの変更及び変形の全ては、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の保護範囲によって包含される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9