(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947873
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】マイクロニードルパッチ収納容器2
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20160623BHJP
【FI】
A61M37/00 500
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-267119(P2014-267119)
(22)【出願日】2014年12月10日
(62)【分割の表示】特願2013-213184(P2013-213184)の分割
【原出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-61677(P2015-61677A)
(43)【公開日】2015年4月2日
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-228396(P2012-228396)
(32)【優先日】2012年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501296380
【氏名又は名称】コスメディ製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】権 英淑
(72)【発明者】
【氏名】神山 文男
【審査官】
安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−079622(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3179380(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3152532(JP,U)
【文献】
特開2005−035636(JP,A)
【文献】
特開2010−075485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外周である周辺部と、該周辺部の内部に該周辺部より窪んだ1個若しくは複数個の架台部と、該架台部の内部若しくは該周辺部の内部に架台部よりさらに窪んだ1個若しくは複数個の底面部と、該周辺部と該架台部と該底面部をつなぐ側面部とを有し、柔軟性あるマイクロニードルパッチを該架台部上で保持し、
該架台部上に置かれたマイクロニードルパッチを押さえて保持する窪み部を有する蓋をも備えるマイクロニードルパッチ収納容器。
【請求項2】
柔軟性あるマイクロニードルパッチの離型シート部分を前記架台部上で保持することを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。
【請求項3】
柔軟性あるマイクロニードルパッチの粘着シート部分を前記架台部上で保持することを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。
【請求項4】
1個の収納容器内に複数個のマイクロニードルパッチを平面的に収納することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。
【請求項5】
前記底面部は2個であって、2枚のマイクロニードルパッチを平面的に保持することを特徴とする請求項4に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。
【請求項6】
前記架台部は1個であって、周辺部の内側全面に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。
【請求項7】
前記架台部は2個であって、周辺部内部の互いに向かい合う位置に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。
【請求項8】
マイクロニードル収納容器と前記蓋の対応する位置に、切り込み及び耳を備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。
【請求項9】
表面に帯電防止処理が付されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。
【請求項10】
収納容器を減菌紙又は減菌フィルムシートにより形成した袋の中に格納して密閉することを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のマイクロニードルパッチ収納容器。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載されたマイクロニードルパッチ収納容器に収納されたマイクロニードルパッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロニードルパッチを収納する収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚表層や皮膚角質層に修飾効果や機能効果を付与するため、薬効成分を含む液状物質、軟膏剤、クリーム製剤、テープ製剤、パッチ製剤、パップ製剤等がこれまで使用されてきた。これらは皮膚表面に塗布又は貼付することにより、薬効成分を皮膚内に浸透させ効果を発揮させようとするものである。しかし、皮膚に塗布するのみでは皮膚の発汗作用や皮膚と外部との接触等により薬効成分は容易に消失・脱落するため、上記従来製剤は十分な効果を上げることができない。さらに、皮膚は体内に異物が侵入するのを阻止するバリアー機能を有しており、薬効成分を皮膚に塗布又は貼付するのみで皮膚内に吸収させることは困難である。
【0003】
最近、これらの問題を解決し、皮膚内に薬効成分を確実に供給する方法としてマイクロニードルが開発され、その研究が進んでいる。マイクロニードルとは、長さが1mmに満たない微小な針である(特許文献1)。マイクロニードルを生体内で容易に溶解消失する物質により作成すると、刺入されたマイクロニードルは皮膚内で溶解し、吸収されて消失する(特許文献2)。従って、予めマイクロニードルに薬効成分を含有させておけば、薬効成分を皮膚内の特定の場所に供給できる。このようなマイクロニードルを基板上に多数配列すればマイクロニードルアレイとなり、ニードル数に比例して送達量を増加させることができるため実用上大きな期待が持たれている(特許文献2−4、非特許文献1)。マイクロニードルアレイに、マイクロニードルアレイを皮膚に付着させるための粘着シート等を付加して使用しやすい製品としたものがマイクロニードルパッチである。さらに粘着シ−トに離型シートを被せて使いやすくすることも行われている。
マイクロニードルアレイの材質は、水溶性高分子、特にヒアルロン酸がよく用いられている(特許文献3、4)。粘着シートには柔軟性のあるフィルム、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ウレタンにアクリル系あるいはゴム系の粘着剤を塗布したものがよく用いられている。
【0004】
マイクロニードルは概して長さが1mmより短く、直径は0.1mm程度であるため、刺入に際し痛みを感じることはなく、また出血もない。刺入箇所は速やかに閉鎖されて痕跡を残さない。その結果マイクロニードルは皮膚の特定の箇所に特定の薬効成分を送達する優れた方法と認知されている。マイクロニードルにはワクチンの送達などの医学的な用途のほか、ヒアルロン酸等の皮膚有効成分の皮膚表面への送達やほくろやあざ隠し等化粧品としての用途もあり注目されている。
【0005】
初期のマイクロニードルは1cm
2程度の大きさの堅い基板上に100本程度のマイクロニードルを備えたものであった。しかし、最近顔面の広い部分を一度に改善したいとの要望が高まり、平面でない顔面にフィットさせるため、基板を柔らかくしてその上にマイクロニ−ドルを備えたマイクロニードルアレイが開発されてきた。
【0006】
マイクロニードルアレイを市場にて消費者に届けるためには、適切な容器が必要である。マイクロニードルアレイは針部分を有し、輸送あるいは販売・保存のさい針部分を保護する必要があるため、従来広く使用されているテープ剤などの貼付剤の容器(特許文献5、6)をそのまま流用することはできない。また、柔らかい基板を有するマイクロニードルアレイに堅い基板用の容器(特許文献7−9)を流用することもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2002−517300号公報
【特許文献2】特開2003−238347号公報
【特許文献3】特開2008−284318号公報
【特許文献4】特開2011−194189号公報
【特許文献5】特開2006−056543号公報
【特許文献6】特表2008−518042号公報
【特許文献7】登録実用新案3152532号公報
【特許文献8】特開2010−75485号公報
【特許文献9】特開2010−75486号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】権英淑、神山文男、「マイクロニードル製品化への道程」薬剤学、社団法人日本薬剤学会、平成21年4月、第69巻、第4号、p.272−276
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
マイクロニードルパッチは皮膚に貼付して薬効成分を送達するものであるため、その製造後流通過程を経て使用されるまでの間、衛生的でかつその薬効を損なわないように保持される必要がある。本発明が解決しようとする課題は、この目的のため、基板が柔軟なマイクロニードルアレイに粘着シートや離型シートを付加したマイクロニードルパッチを保持するに適切なマイクロニードルパッチ収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明に係るマイクロニードルパッチ収納容器は、最外周である周辺部と、該周辺部の内部に該周辺部より窪んだ1個若しくは複数個の架台部と、該架台部の内部若しくは該周辺部の内部に架台部よりさらに窪んだ1個若しくは複数個の底面部と、該周辺部と該架台部と該底面部をつなぐ側面部とを有し、柔軟性あるマイクロニードルパッチを該架台部上で保持し、
該架台部上に置かれたマイクロニードルパッチを押さえて保持する窪み部を有する蓋をも備えることを特徴とする。
【0011】
マイクロニードルパッチを収納容器に本発明に係るマイクロニードルパッチ収納する方法として、マイクロニードルパッチの粘着シート部分を収納容器の架台部に保持する方法と、マイクロニードルパッチの離型シートを収納容器の架台部に保持する方法とがある。これは多くのマイクロニードルパッチは粘着シートを備えているが、離型シートは必ずしも備えていないためである。
ここに粘着シートはマイクロニードルアレイを皮膚に保持するために用いられる。また、離型シートは粘着シートの粘着部分を覆い、通常粘着シートより大きく、マイクロニードルアレイを皮膚表面に適用する前に剥ぎ取られる。離型シートはマイクロニードルパッチの取扱を容易とするため付されるものであり、マイクロニードルパッチの取扱に習熟した者にとっては必ずしも必要ではない。
【0012】
本発明における離型シートは代表的にはPETにシリコン離型処理したフィルムから作られるがそれに限定されない。マイクロニードルアレイを粘着シートにより固定でき使用時に手で離型できれば目的を達するのであるから、必ずしも表面離型処理を必要としない。例えばPP、PEからなるフィルム、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、等のフィルム、表面が滑らかな紙等も使用し得る。
【0012】
1個のマイクロニードル収納容器は、底面の数だけのマイクロニードルパッチを収納することができる。通常、1つのマイクロニードルパッチ収納容器には1個のマイクロニードルパッチを収納する。しかし例えば、目の下に貼付するマイクロニードルパッチの場合、通常左右の目の下に貼付するので、2枚を1組として収納することが取引上好ましい。
この際、1個のマイクロニードルパッチに2個以上のマイクロニードルアレイを保持させることもできる。この場合1つの容器に2個以上のマイクロニードルアレイを収納できる。
また必要に応じ、2個の収納容器を横に接続して用いることもできる。このようにしても、2個のマイクロニードルパッチを収納できる。
【0013】
本発明に係るマイクロニードル収納容器は蓋を備えることが好ましい。蓋は、マイクロニードル収納容器内にゴミやチリが入るのを防ぐことができる。
蓋には、架台部に相対する位置に窪みを設けることが好ましい。窪みは、架台部と共にマイクロニードルパッチを挟み保持することができる。窪みは、マイクロニードルパッチを離型シートで保持するとき、特に有用である。
【0014】
蓋の窪みと架台部との間にマイクロニードルパッチを挟んで保持する際、マイクロニードルパッチを全面的に押しつけるように蓋の窪み部を構成すると、静電気の作用によりマイクロニードルパッチが蓋に密着する。静電気によりマイクロニードルパッチが蓋に吸着すると、マイクロニードルパッチは蓋を取り外す際不意に飛び出すこととなり、また収納容器に吸着して取り出し難くなるためである。蓋の窪み部による押しつけを部分的とすると、静電気の影響を弱めて取扱が容易となり好ましい。静電気の影響をより少なくしマイクロニードルパッチが蓋に吸着するのを防ぐには、架台部の面積を蓋の窪み部の面積よりも大きくすることが望ましい。
【0015】
架台部は、マイクロニードルパッチの形状によって、いろいろな形状をとることができる。周辺部の内側全面に1個の架台部を設けることもできる。周辺部内部の互いに向かい合う位置に2個の架台部を設けることもできる。形状の例を実施例として示すが、実施例に示されている形状に限定されるわけではない。
【0016】
マイクロニードルパッチ収納容器は、複数個の該容器を互いに勘合させてスタックできることが望ましい。そのためには、マイクロニードルパッチの底面外側により他のマイクロニードルパッチ収納容器に収納されているマイクロニードルパッチを部分的に押しつけられるようにしておくことが好ましい。
顔面にマイクロニードルパッチを貼付してヒアルロン酸及び薬効成分を補給し、しわを除去する等の美容効果を上げるためには、通常数日にわたって貼り替えしつつ貼付する必要がある。そのため、一連の使用に必要な枚数を、ひとまとめにして包装できるのが取引上望ましいからである。
【0017】
マイクロニードルアレイに収納容器の収納容器と蓋部の対応する位置には切り込みと耳を設け、使用に際し容易に蓋を収納容器から取り外せるようにすることが好ましい。マイクロニードルパッチ収納容器は、製造時から使用直前までは密閉しておく必要があるが、使用に際しては容易に取り出せる必要があるためである。
【0018】
マイクロニードルパッチ収納容器の前記底面には、マイクロニードルパッチをつまんで取り出しやすくするためのふくらんだ部分を設けてもよい。静電気で収納容器に密着している場合にも、マイクロニードルパッチをつまみ出しやすくするためである。
【0019】
本発明に係るマイクロニードルパッチ収納容器は、その表面には帯電防止処理が付されていることが好ましい。収納容器が帯電すると、マイクロニードルパッチが収納容器に吸着し、取り扱いにくくなるためである。
【0020】
本マイクロニードル収納容器は、マイクロニードルを密閉状態で保持できるが、必ずしも無菌状態で保持できるわけではない。マイクロニードルを無菌状態で保持するためには、容器とマイクロニードルを無菌処理した後、容器を減菌紙または減菌フィルムシートにより形成した袋の中に格納して密閉することが望ましい。減菌フィルムシートとしては、プラスチック製シートやアルミニウム製シートを好適に用いることができる。アルミニウムシートは密閉性が高く、特に好ましい。
【0021】
貼付剤、つまり有効薬剤成分と接着剤を混ぜ樹脂フィルム上に展開したいわゆる貼り薬では、通常有効成分の上に離型シートをおき、皮膚に貼付する前に離型シートを剥ぎ取って有効薬剤成分を直接皮膚に接触させるように貼付するのが通常である。この場合、皮膚の角質層の上に貼るので清潔なことは望ましいが、角質層のバリア効果の存在のため無菌とまでは要求されない。
【0022】
この点で、マイクロニードルパッチ収納容器に必要な条件は、貼付剤収納容器に必要な要件より厳しい。マイクロニードルは、皮膚内に刺入されるため衛生的に保存されなければならない。また、ニードルは鋭利でなければ皮膚内に刺入できないので、ニードル先端を破損しうるような堅いものを当てることはできない。また、ニードルは皮膚内に刺入されるので、粘着剤のような体内に入って安全かどうかわからないものを付着させてはならない。すなわち、マイクロニードルは、減菌状態でかつ容器のいかなる部分にも接触させない状態で粘着シート又は離型シートの部分のみで保持され保存されなければならない。このため、マイクロニードル収納容器は、必然的に、貼付剤収納容器とは構造的にも異なるものとなり、貼付剤収納容器から類推して設計することはできない。
【0023】
また、マイクロニードルアレイが柔軟なとき、堅いマイクロニードルアレイを保存する容器や方法をそのまま用いることもできない。堅いものと柔軟なものとでは、保持方法が異なるためである。
【0024】
マイクロニードルパッチ収納容器の材質は特に限定しないが、射出成形加工若しくはプレス加工が容易な樹脂が好ましい。特に透明若しくは半透明であれば中身の状況を外から目視できるので好ましい。また、空気や水蒸気の透過性が小さく、長期にわたってマイクロニードルパッチを安定に保護できることが望ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)が好ましいが、なかでもPETはγ線、電子線照射滅菌による劣化や発臭が少ないので特に好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明のマイクロニードルパッチ収納容器の特徴は、収納容器に底面から突出する架台部を設けたことである。これにより柔軟なマイクロニードルパッチを、マイクロニードルを下向きにし、マイクロニードル部分には架台部を設けないことにより、マイクロニードルが容器のいかなる部分にも接触しない状態でマイクロニードルパッチを保持できる。マイクロニードルパッチが柔軟なシートであるとしても、開封するときまで衛生的に保持できる。
【0026】
本発明のマイクロニードルパッチ収納容器は、マイクロニードルアレイの形状に合わせて架台部の形状や構造を調節できる。また必要に応じ、粘着シート部分でも、離型シート部分でも、いずれの部分においても保持できる。
【0027】
本発明のマイクロニードルパッチ収納容器によれば、マイクロニードルパッチを必要なときに容易に取り出すことができる。さらに、収納容器は互いにスタックでき、一連の使用に必要な数個のマイクロニードルパッチを簡便に包装することができる。
本発明のマイクロニードルパッチ収納容器は、静電気の影響を避けるように設計されている。もし静電気の影響があると、蓋を取り外す際マイクロニードルパッチが蓋に吸着して急に飛び出したり、収納容器に吸着して取り出しにくくなったりするためである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例で用いた離型シート付きマイクロニードルパッチの図
【
図2】マイクロニードルパッチ収納容器の第1実施例の図
【
図3】マイクロニードルパッチ収納容器の第2実施例の図
【
図4】マイクロニードルパッチ収納容器の第3実施例の図
【
図5】マイクロニードルパッチ収納容器の第4実施例の図
【
図6】マイクロニードルパッチ収納容器の第5実施例の図
【
図7】マイクロニードルパッチ収納容器の第6実施例の図
【
図8】第1実施例のマイクロニードルパッチ収納容器の蓋の図
【
図9】第1実施例のマイクロニードルパッチ収納容器に、離型シートを有するマイクロニードルパッチを離型シート部分で保持する態様の図
【
図10】第4実施例のマイクロニードルパッチ収納容器に、離型シートを有しないマイクロニードルパッチを粘着シート部分で保持する態様の図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。マイクロニードルアレイの形状は、そのマイクロニードルアレイを貼付する皮膚の位置に応じて異なっており、そのためいろいろな架台部の配置の例を以下に示している。特殊な形状のマイクロニードルアレイやマイクロニードルパッチであればそれに応じて適宜設計変更すればよいのであって、本発明は実施例の形状に限定されるわけではない。
【0030】
例示に用いたマイクロニードルパッチ10を
図1に示す。マイクロニードルアレイ11は、
図1に示すように、かまぼこ形の断面の底を窪ませた平面形状をしており、横幅約35mm、縦幅約15mmである。これは目の下に貼付することを想定して設計された形状である。このマイクロニードルは柔軟なシート上に設けられており、マイクロニードルアレイ全体として顔面の凹凸に合わせて変形させることができる。なお、
図1はマイクロニードルが上を向いている方向で示されている。
マイクロニードルのサイズは限定ではないが、長さ30〜1000μmのニードルが50〜500本/cm
2程度備えられている。主成分はヒアルロン酸であるが、皮膚のしわ取りや若返り活性化に有効な成分を含んでいる。
【0031】
マイクロニードルアレイ部分とほぼ同じ形で、周辺が2〜10mm広い形の粘着シート12が、マイクロニードルアレイ面の反対側の面に粘着されている。なお、粘着面はアレイ面と同じ方向である。また、マイクロニードルアレイ面側には、マイクロニードルアレイ部分を除いて、ほぼ長方形の離型シート13(70×45mm)が粘着面を覆うように貼り付けられている。但し、マイクロニードルパッチが離型シートを備えることは必須ではない。
粘着シート12の底の部分が幅狭くしてあるのは、マイクロニードルアレイ11をなるべく目に近づけて貼付するためである。
【0032】
このマイクロニードルパッチを使用する際は、離型シート13中央に切断線を設けているので、離型シートの両端を持ち、離型シートを開くように広げながら貼付部位(目の下)に接触させれば、粘着シート12により粘着する。その後、マイクロニードルアレイ11面を軽くたたくことにより、マイクロニードルが皮膚角質内に刺入される。皮膚の痛みを感じる部分は皮膚表面から1mm程度内部といわれているので、この刺入により痛みを感じることは殆どない。
【実施例1】
【0033】
上記のマイクロニードルパッチに適した、マイクロニードルパッチ収納容器の一例を
図2に示す。材質はポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate:PET)である。
本マイクロニードルパッチ収納容器は、蓋をかぶせて閉じた収納容器とすることができる。蓋の一例を
図8に示す。本マイクロニードルパッチ収納容器や蓋の表面は帯電防止処理が施されているが、この処理は必須ではない。
【0034】
本マイクロニードル収納容器は外寸約86×63mmのほぼ長方形状である。一番外側が周辺部21であり、周辺部21の内周全面に約3mm窪んだ架台部22が設けられている。架台部22の内周全面に約2mm窪んだ底面部23が設けられている。底面部32は平面で深さは一様である。周辺部21、架台部22、底面部23は側面部24により互いに接続されている。
【0035】
本マイクロニードル収納容器の底面部23は長方形となっているが、楕円形や勾玉型であっても差し支えない。楕円形のマイクロニードルアレイを保持するには楕円形であることが好適であり、勾玉型のマイクロニードルアレイを保持するには勾玉型であることが好適である。
【0036】
この収納容器にマイクロニードルパッチ10を収納したときの模式図を
図9に示す。マイクロニードルパッチ10は収納容器にぴったり入る大きさであり、マイクロニードル11面を下向にして収納容器内部に収容される。マイクロニードルパッチ10の離型シートが架台部上に置かれ、蓋を用いたとき蓋の窪み部との間に離型シートが挟まれ保持される。
図9において破線の二重線で示されている側面部とその内側の底面部は、離型シートの下になっている架台部と共に、マイクロニードルパッチの下になっている。またマイクロニードルは下向きになっているので、上向きとなっている
図1と異なり点状に見えない
【0037】
上記の収納容器用の蓋を
図8に示している。蓋の外寸は収納容器と同じである。蓋は、周辺部31から窪んだ、収納容器の架台部22に整合する窪み部32を有している。蓋と収納容器を係合したとき、この窪み部32と収納容器の架台部22によりマイクロニードルパッチを挿み保持する。
蓋の外側に耳33があり、収納容器外側の対応する位置に切り込み25がある。これらは収納容器から蓋を外しやすいよう設けられた。
【0038】
蓋の窪み部32は、図の上下には設けられているが左右には設けられていない。つまりマイクロニードルパッチは、
図2の架台部22の左右部分では上から押さえつけられてはいない。上からマイクロニードルパッチを押さえつけない部分を設け、静電気の影響を避け、マイクロニードルパッチを取り出しやすくした。もしマイクロニードルパッチを完全に押さえつけると、静電気のため、蓋を取り外す際蓋に吸着して急に飛び出したり、収納容器に吸着して取り出しにくくなったりする。
【0039】
本マイクロニードルパッチ収納容器は蓋をすることなく、マイクロニードルパッチを収容後他の収納容器を上からかぶせ、他の収納容器に蓋の代わりをさせることもできる。
また、マイクロニードルパッチを収容したマイクロニードルパッチ収納容器を、蓋をすることなくヒートシール可能なフィルム又はポリエチレンとラミした滅菌紙をかぶせ、収納容器周辺部とフィルムとをヒートシールにより融着することにより密封することもできる。
【実施例2】
【0040】
マイクロニードルパッチ収納容器の第2の例を
図3に示す。架台部22が上下に二つに分かれている点が実施例1の収納容器と異なる。この例の収納容器は、横に長いマイクロニードルアレイを好適に収納できる。
【0041】
この収納容器も第1実施例の収納容器と同様に、蓋を被せることや、他の収納容器を上から被せて蓋の代わりをさせて積層することもできる。この収納容器の各表面に帯電防止処理を付せば、マイクロニードルパッチが静電気的に吸着して取り出しにくくなるのを防止できる。また、この収納容器もヒートシール可能なフィルムまたはフィルムとラミした紙とでヒートシールし、融着密閉することができる。これらの点は実施例3〜6のマイクロニードル収納容器に共通するので、以下各実施例においては煩雑を避けるため記載を省略する。また、実施例2〜6のマイクロニードル収納容器の
図3〜
図7において、側面部と窪み部の記号を省略している。
【実施例3】
【0042】
マイクロニードルパッチ収納容器の第3の例を
図4に示す。架台部が左右に二つに分かれている点が実施例1、2の収納容器と異なる。この実施例の収納容器は、正方形若しくは円形のマイクロニードルアレイを好適に収納できる。
【実施例4】
【0043】
マイクロニードルパッチ収納容器の第4の例を
図5に示す。架台部が左右に二つに分かれており、かつそれぞれの架台部が三角形状である点が実施例1〜3の収納容器と異なる。
本マイクロニードルパッチ収納容器に、離型シートを有しないマイクロニードルパッチを収納した場合の例を
図10に示す。粘着シートが直接架台部22に接触し、マイクロニードルパッチは粘着シートにより架台部22に仮粘着して保持されている。
【実施例5】
【0044】
マイクロニードルパッチ収納容器の第5の例を
図6に示す。架台部が左右に二つに分かれており、かつそれぞれの架台部が三角形状ではあるが向き合う辺が円弧の一部となっている点が実施例1〜4の収納容器と異なる。
このように架台部の形状は直線的に構成されるとは限らない。
【実施例6】
【0045】
マイクロニードルパッチ収納容器の第6の例を
図7に示す。架台部22が左右と中央3つに分かれ、各架台部22の間に底面部23が2つある点が実施例1〜5の収納容器と異なる。この収納容器は2つの底面部を有するので2個のマイクロニードルパッチを保持し収納できる。
【符号の説明】
【0046】
10 マイクロニードルパッチ
11 マイクロニードルアレイ
12 マイクロニードルパッチの粘着シート
13 マイクロニードルパッチの離型シート
21 収納容器の周辺部
22 収納容器の架台部
23 収納容器の底面部
24 収納容器の側面部
25 収納容器の切り込み
31 蓋の周辺部
32 蓋の窪み
33 蓋の耳