特許第5947907号(P5947907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5947907KCNQカリウムチャネル作動薬として使用できる新規な化合物、その製造方法および用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947907
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】KCNQカリウムチャネル作動薬として使用できる新規な化合物、その製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
   C07C 271/28 20060101AFI20160623BHJP
   C07D 235/26 20060101ALI20160623BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20160623BHJP
   A61K 31/27 20060101ALI20160623BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20160623BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20160623BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20160623BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   C07C271/28CSP
   C07D235/26 B
   A61K31/4184
   A61K31/27
   A61P25/00
   A61P25/08
   A61P25/04
   A61P9/10
【請求項の数】6
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2014-537451(P2014-537451)
(86)(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公表番号】特表2014-532629(P2014-532629A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】CN2012001423
(87)【国際公開番号】WO2013060097
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2014年6月24日
(31)【優先権主張番号】201110328036.9
(32)【優先日】2011年10月25日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513299225
【氏名又は名称】上海 インスティテュート オブ マテリア メディカ、チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF MATERIA MEDICA, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ナン,ファージュン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ツァオビン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヤンミン
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ,ピンツェン
(72)【発明者】
【氏名】フウ,ハイニン
(72)【発明者】
【氏名】スウ,ハイヤン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シェン
【審査官】 村守 宏文
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−520759(JP,A)
【文献】 特開平05−345752(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/012659(WO,A1)
【文献】 米国特許第05852053(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式IIIで表される構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化1】
(但し、
R1、C2-C8アルケニル基、任意にヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、フェニル基、もしくはハロゲン化フェニル基で置換されたC2-C8アルケニル基、C2-C8アルキニル基、任意にヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、フェニル基、もしくはハロゲン化フェニル基で置換されたC2-C8アルキニル基から選ばれる。
R2は、F、Clあるいはメトキシ基から選ばれる。
R3は、H、ハロゲン原子あるいはトリフルオロメチル基から選ばれる。
Yは、Oである。
R4は、C1-C6アルキル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、あるいはC6-C10アリール基から選ばれる。
R5は、H、ハロゲン原子、アミノ基、
【化2】
から選ばれるか、あるいはR5は隣接の
【化3】
と一緒に
【化4】
の縮合環構造を形成する。
R6は、H、あるいはC1-C6アルキル基である。)
【請求項2】
前述化合物は、以下の化合物K4、K5、K7〜K25、K28K37およびK39から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化5】
【化6】
【請求項3】
前述化合物の薬学的に許容される塩は、前述化合物が酸と形成した塩で、前述酸は、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、プロパン酸、マロン酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、カンファー酸、カンファースルホン酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、乳酸、グルコン酸、アスコルビン酸、没食子酸、アミグダリン酸、リンゴ酸、ソルビン酸、トリフルオロ酢酸、タウリン、ホモタウリン、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ケイ皮酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸または過塩素酸から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
有効成分として請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される補助剤とを含むことを特徴とする医薬品組成物。
【請求項5】
神経系疾患を治療する医薬品の製造における、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項6】
前述神経系疾患は、癲癇、痙攣、神経因性疼痛、急性虚血発作および神経変性疾患を含むことを特徴とする請求項5に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学分野に関し、具体的に、カリウムチャネル作動薬として使用できる新規な化合物、その製造方法、ならびに癲癇、痙攣、神経因性疼痛、急性虚血発作や神経変性疾患のような神経系疾患を治療する医薬品の製造における当該化合物およびその薬学的に許容される塩またはこれらのいずれかを含む医薬品組成物の応用に関する。
【背景技術】
【0002】
癲癇(epilepsy)は、大脳のニューロンの突発異常放電による神経機能失調症候群で、運動、感覚、意識、精神、植物神経などの障害として現れ、発症率が1%近くで、人類の命と健康を脅かすものである。癲癇の発生の神経電気生理学的基礎は、ニューロンの過剰の同期性放電で、癲癇型放電とも呼ばれる。神経の興奮失調は、癲癇型放電を引き起こす要因である。ニューロンの興奮性は、中枢神経系に分布するカリウム、ナトリウム、カルシウムのイオンチャネルの活動のバランスによって決まるため、このバランスが失調すると、神経の興奮性異常を起こし、癲癇の発症に繋がることがある。
【0003】
カリウムイオンチャネルは、ニューロンの興奮性の調節に重要な作用を発揮し、そのイオン機構は、細胞内のイオン濃度が細胞外よりも高く、膜電位が減極してチャネルが活性化された後、正電荷を帯びたカリウムイオンが外に流れ、これによって膜電位が負になり(負極化または過分極化)、細胞の興奮性が低下する。近年、癲癇の遺伝学的研究によると、カリウムイオンチャネルの異常は家族性良性新生児痙攣(BFNC)ような癲癇(Wulff, H.ら Chem Rev 2008, 108 (5), 1744-73.)を引き起こす可能性があることがわかった。
【0004】
電位依存性イオンチャネル(VGICs)は、プロテインキナーゼとGタンパク質共役受容体に次ぎ、3番目に大きな種類のシグナル伝達分子(Harmar, A. J. ら, Nucleic Acids Res 2009, 37 (Database issue), D680-5.)で、その78のファミリーメンバーのうち、半分以上はカリウムイオンチャネルで、その機能および構造の特徴から、カリウムイオンチャネルは、主に、内向き整流カリウムチャンネル(Kir)、2ポア型カリウムイオンチャネル(K2p)、Ca2+活性化カリウムイオンチャネル(KCa)および電位依存性カリウムチャネル(KV)の4種に分かれる。
【0005】
電位依存性カリウムチャネル(KV)は、カリウムチャネルスーパーファミリーの重要な一つで、12のメンバーを含む(KV1.X-KV12.X)。その中では、KCNQチャネルは、電位依存性カリウムチャネルの7番目のメンバー(Kv7)で、5つのサブタイプを含み、それぞれKCNQ1からKCNQ5と名付けられた。他のカリウムチャネルと比べて、KCNQチャネルの活性化閾値が低く、作動電位閾値で(-60mV)開き、且つその活性化が遅く、減極し続けても失活しないなどの特徴で、KCNQチャネルは細胞の興奮性の調節において基礎レベルにあり、その開放が神経の興奮性を低下させ、機能の抑制が神経細胞の膜電位の減極を引き起こし、興奮性が向上し、より多くの神経インパルスを誘導する。
【0006】
KCNQのターゲットの顕著な利点に基づき、その作動薬が癲癇の治療に有効な医薬品と思われている。このカリウムチャネル作動薬は、カリウムチャネルを活性化することで、神経細胞の興奮性を低下させ、癲癇の治療だけでなく、痙攣、神経因性疼痛、急性虚血発作や神経変性疾患のような他の過剰な神経興奮性による疾患にも使用できる。
【0007】
既に報告されたKCNQ作動薬は、主に以下のようなものである。
1) 特許US5,384,330に開示された以下のような構造を有する化合物。
【化1】
その構造の特徴は、o-ジアミノベンゼン環を含有することである。
【0008】
2) 特許WO2005/087754A1に記載の以下のような構造のKCNQ作動薬。
【化2】
その構造の特徴は、p-ジアミノベンゼン環を含有し、且つその一つのアミノ基の窒素が別の飽和環(複素環の場合、W=O)に含まれるとともに、もう一つのアミノ基の隣接の箇所がR1、R2で置換されていることである。
【0009】
3)特許WO2008024398-B1に以下のような構造が記載されている。
【化3】
この化合物の構造は、特許WO2005/087754の構造と類似で、飽和環にさらに一つの縮合環構造を加えただけである。
【0010】
現在、最も代表的なKCNQ作動薬は、 GSK (GlaxoSmithKline)によって開発された市販の抗癲癇薬であるRetigabine(レチガビン)で、その構造は以下の通りである。
【化4】
【0011】
Retigabineは、初めて系統的に研究されたKCNQ作動薬で、KCNQ2-5を活性化することができ、主に部分発作型癲癇の成人患者の治療に用いられる。Retigabineは、吸収が速いため、一回の投与後、約1.5-2時間で最大血漿濃度に達する。
【0012】
Retigabineの構造において、3つの窒素で置換された電子豊富なベンゼン環を有し、そのうち、2つの窒素原子が隣接で、且つその一つがアミノ基として存在するため、この構造の特徴によって、Retigabineは合成および保存の際に酸化されて変性しやすい。また、本願の発明者らは、Retigabineの組織分布を研究したところ、Retigabineのマウスの脳組織における濃度が高くないことを見出したが、これがその効果の最大限の発揮に影響を与える可能性がある。従って、癲癇、痙攣、神経因性疼痛、急性虚血発作や神経変性疾患のような神経系疾患を治療する新規な医薬品の開発のために、活性がより高く、性質がより安定した、特に脳組織における濃度分布にもっと有利なカリウムチャネル作動薬を開発する必要がある。
【0013】
本願の発明者らは、研究したところ、Retigabine分子における第二級アミンの-NH-のN原子がさらに置換された場合、得られた化合物はRetigabineのカリウムチャネル活性化の活性を維持または増加するだけでなく、Retigabineよりも高い脳組織における分布濃度を有するため、より優れた治療効果があることを見出した。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、カリウムチャネル作動薬として使用できる新規な化合物およびその薬学的に許容される塩を提供することである。 本発明のもう一つの目的は、上述化合物の製造方法を提供することである。
本発明のまたもう一つの目的は、有効成分として前述化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される補助剤とを含む医薬品組成物を提供することである。
本発明のさらにもう一つの目的は、神経系疾患などを治療する医薬品の製造における、上述化合物およびその薬学的に許容される塩またはこれらのいずれかを含む医薬品組成物の用途を提供することである。
【0015】
本発明に係る化合物は、下述一般式Iの構造を有する。
【化5】
(但し、
Lは、存在しないか、あるいは任意にC1-C4アルキル基で置換されてもよい、
【化6】
から選ばれる連結基である。
【0016】
R1は、H、C1-C6アルキル基、任意にヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルコキシ基、C1-C4アルキルカルボニル基、ハロゲン原子、C6-C10アリール基、もしくはハロゲン化C6-C10アリール基で置換されてもよいC1-C6アルキル基、C3-C6シクロアルキル基、C1-C6アルキルカルボニル基、C1-C6アルコキシカルボニル基、C1-C6アルキルアミノカルボニル基、C2-C8アルケニル基、任意にヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルコキシ基、ハロゲン原子、C6-C10アリール基、もしくはハロゲン化C6-C10アリール基で置換されてもよいC2-C8アルケニル基、C5-C7シクロアルケニル基、C2-C8アルキニル基、任意にヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルコキシ基、ハロゲン原子、C6-C10アリール基、もしくはハロゲン化C6-C10アリール基で置換されてもよいC2-C8アルキニル基、あるいはC6-C10アリール基から選ばれる。
【0017】
R2は、ハロゲン原子、C1-C4アルコキシ基、から選ばれる。
R3は、H、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、C1-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルコキシカルボニル基から選ばれる。
Xは、O、SあるいはNHである。
Yは、存在しないか、あるいはOもしくはNR7である。ここで、R7は、H、C1-C6アルキル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、C3-C8シクロアルキル基から選ばれる。
R4は、C1-C6アルキル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、あるいはC6-C10アリール基、から選ばれる。
【0018】
R5は、H、ハロゲン原子、アミノ基、C1-C6アルキルアミノ基、
【化7】
から選ばれるか、あるいはR5は隣接の
【化8】
と一緒に
【化9】
の縮合環構造を形成する。
【0019】
R6は、H、C1-C6アルキル基、あるいはC3-C6シクロアルキル基である。
上述置換基の定義において、前述ハロゲン原子あるいはハロゲン化基におけるハロゲン原子は、F、ClあるいはBrである。)
より好ましくは、本発明に係る化合物は、一般式IIで表される構造を有する。
【化10】
【0020】
(但し、
R1は、H、C1-C6アルキル基、任意にヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルキルカルボニル基、ハロゲン原子、C6-C10アリール基、もしくはハロゲン化C6-C10アリール基で置換されてもよいC1-C6アルキル基、C3-C6シクロアルキル基、C1-C6アルキルカルボニル基、C1-C6アルコキシカルボニル基、C1-C6アルキルアミノカルボニル基、C2-C8アルケニル基、任意にヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルコキシ基、ハロゲン原子、C6-C10アリール基、もしくはハロゲン化C6-C10アリール基で置換されてもよいC2-C8アルケニル基、C5-C7シクロアルケニル基、C2-C8アルキニル基、任意にヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルコキシ基、ハロゲン原子、C6-C10アリール基、もしくはハロゲン化C6-C10アリール基で置換されてもよいC2-C8アルキニル基、あるいはC6-C10アリール基から選ばれる。
【0021】
R2は、ハロゲン原子、C1-C4アルコキシ基から選ばれる。
R3は、H、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基から選ばれる。
Xは、Oである。
Yは、存在しないか、あるいはOである。
R4は、C1-C6アルキル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、あるいはC6-C10アリール基から選ばれる。
【0022】
R5は、H、ハロゲン原子、アミノ基、
【化11】
から選ばれるか、あるいはR5は隣接の
【化12】
と一緒に
【化13】
の縮合環構造を形成する。
【0023】
R6は、H、C1-C6アルキル基、あるいはC3-C6シクロアルキル基である。
上述置換基の定義において、前述ハロゲン原子あるいはハロゲン化基におけるハロゲン原子は、F、ClあるいはBrである。)
最も好ましくは、本発明に係る化合物は、一般式IIIで表される構造を有する。
【化14】
【0024】
(但し、
R1は、H、C1-C6アルキル基、任意にヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルキルカルボニル基、ハロゲン原子、フェニル基、もしくはハロゲン化フェニル基で置換されたC1-C6アルキル基、C2-C8アルケニル基、任意にヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、フェニル基、もしくはハロゲン化フェニル基で置換されたC2-C8アルケニル基、C5-C7シクロアルケニル基、C2-C8アルキニル基、任意にヒドロキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、フェニル基、もしくはハロゲン化フェニル基で置換されたC2-C8アルキニル基から選ばれる。
【0025】
R2は、F、Clあるいはメトキシ基から選ばれる。
R3は、H、ハロゲン原子あるいはトリフルオロメチル基から選ばれる。
Yは、存在しないか、あるいはOである。
R4は、C1-C6アルキル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基、あるいはC6-C10アリール基から選ばれる。
【0026】
R5は、H、ハロゲン原子、アミノ基、
【化15】
から選ばれるか、あるいはR5は隣接の
【化16】
と一緒に
【化17】
の縮合環構造を形成する。
R6は、H、あるいはC1-C6アルキル基である。)
【0027】
本発明の最適な方案によれば、一部の代表的な好ましい化合物は、以下の通りである。
【化18】
【0028】
【化19】
【0029】
【化20】
【0030】
本発明における上述化合物またはその薬学的に許容される塩は、上述化合物が酸と形成した塩で、前述酸は、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、ギ酸、酢酸、プロパン酸、マロン酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、カンファー酸、カンファースルホン酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、乳酸、グルコン酸、アスコルビン酸、没食子酸、アミグダリン酸、リンゴ酸、ソルビン酸、トリフルオロ酢酸、タウリン、ホモタウリン、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ケイ皮酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸または過塩素酸から選ばれる。
【0031】
本発明のもう一つは、上述化合物またはその薬学的に許容される塩の製造方法を提供するが、主に以下の製造方法がある。ここで、Pは任意のアミノ保護基で、具体的に、「有機合成における保護基」(華東理工大学有機化学教学研究組、華東理工大学出版社、2004)を参照する。
【0032】
方法1:
トルエンスルホン酸のような弱酸の触媒下で、カルボニル化合物aとアニリンbとを縮合させてイミンcを得た後、後者を水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤の作用によってイミン還元させて第二級アミンdを得る。第二級アミンdにハロゲン化炭化水素との置換反応、α,β-不飽和カルボニル化合物の付加反応またはアシル化反応などの手段で置換基R1を導入して中間体fを得る。当業者によく知られる公知の条件で中間体dまたはfにおけるアミノ保護基Pを脱離させて中間体fまたはgを得た後、アミンfまたはgをアシル化剤である
【化21】
と反応させて一般式Iで表される化合物を得る。
【0033】
【化22】
【0034】
方法2:
トルエンスルホン酸のような弱酸の触媒下で、カルボニル化合物aとニトロ基で置換されたフェニレンジアミン系化合物hとを縮合させてイミンiを得た後、後者を水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤の作用によってイミン還元させて中間体であるアミンjを得る。当業者によく知られる方法、例えば、Pd-C触媒水素化やSnCl2(塩化第一スズ)還元でニトロ基を還元させてジアミノ中間体kを得て、2つのアミノ保護基Pを導入して中間体lを得て、方法1と類似の方法で置換基R1を導入して中間体mを得た後、保護基Pを除去して2つのアミノ基を露出させ、中間体nを得た後、アシル化剤である
【化23】
と作用させて一般式Iで表される化合物を得る。
【0035】
【化24】
【0036】
方法3:
アシル化剤である
【化25】
とニトロ基で置換されたアニリン系化合物oとを反応させて中間体pを得て、ニトロ基を還元させたアミノ化合物qに前述方法で置換基R1を導入して中間体rを得て、中間体rをさらにハロゲン化炭化水素である
【化26】
と置換反応させて一般式Iで表される化合物を得る。
【0037】
【化27】
【0038】
方法4:
一般式Iで表される化合物における置換基R1がアルケニル基あるいはアルキニル基である場合、さらにオレフィンメタセシス反応(olefin metathesis)で他の一般式Iで表される本発明に係る化合物を得る。前述通常のオレフィンメタセシス反応は、金属ルテニウムカルベン錯体(Grubbs触媒)の触媒下でオレフィン同士間、オレフィンとアルキンとの再結合反応を行うが、反応の一般式は以下の通りである。
【化28】
【0039】
方法5: 化合物の塩の合成
本発明に係る一般式Iで表される化合物は、その薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩などに転換してもよいが、通常の方法は、相応の酸の溶液を上述化合物の溶液に入れ、塩形成が完了した後、減圧で溶媒を除去することで、本発明に係る化合物に相応の塩を得る。
本発明のまた一つは、KCNQカリウムチャネル作動薬としての上述化合物およびその薬学的に許容される塩またはこれらのいずれかを含む医薬品組成物の用途、特に神経系疾患などを治療する医薬品の製造における用途を提供する。
【0040】
本発明のまた一つは、治療が必要な患者に治療有効量の上述化合物およびその薬学的に許容される塩またはこれらのいずれかを含む医薬品組成物を投与することを含む、神経系疾患を治療する方法を提供する。
前述神経系疾患は、癲癇、痙攣、神経因性疼痛、急性虚血発作および神経変性疾患を含む。
【0041】
有利な効果
本発明に記載の新規な化合物は、従来の医薬品であるレチガビン(Retigabine)と比べて、性質がより安定し、酸化変性しにくい。
同時に、本発明によって提供される化合物は、Retigabineのカリウムチャネル活性化の活性を維持するだけでなく、体内における抗癲癇効果が顕著で、より高い脳組織における分布濃度を有するため、より優れた治療効果がある。
【0042】
具体的な実施形態
以下、具体的な実施例で本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されない。
【0043】
一、化合物の製造実施例
下述製造実施例において、NMRはVarian製のMercury-Vx 300Mで測定し、較正はδH 7.26 ppm(CDCl3)、2.50 ppm(DMSO-d6)、3.15 ppm (CD3OD)である。試薬は、主に上海化学試薬公司によって提供された。TLC薄層クロマトグラフィーは、山東煙台会友シリカゲル開発有限公司製、型式HSGF 254である。化合物精製に使用された順相カラムクロマトグラフィーのシリカゲルは、山東青島海洋加工工場分工場製、型式zcx-11、200-300メッシュである。
【0044】
製造実施例1: 4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)カルバニル酸メチル(K1)の合成
1.1. 4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)カルバニル酸-t-ブチルの合成
【化29】
モノBoc-p-フェニレンジアミン(2.57g、0.0123mol)とp-トルエンスルホン酸 (62mg、0.32mmol)をトルエン(50mL)に入れた後、さらにp-フルオロベンズアルデヒド(1.68g、0.0135mol)を入れ、加熱して12時間共沸させることによって水を除去し、熱いうちにろ過し、ろ液を冷却したところ、固体が析出し、濾過して乾燥し、得られた粗生成物をそのまま次の反応に供した。
【0045】
上述粗生成物(3.5g、11.1mmol)をジオキサン/MeOH(30mL、ジオキサン/メタノールの体積比が4:1)に溶解させ、NaBH4(697mg, 0.018mol)を分けて入れ、反応が完了するまで室温で撹拌した。水で終了させ、EtOAcで抽出し(15mL×3)、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮したことで、産物の4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)カルバニル酸-t-ブチル(3.5g)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ 7.31(t, J=8.4Hz, 2H), 7.14(d, J=8.4Hz, 2H), 7.01(t, J=8.7Hz, 2H), 6.56(d, J=9.0Hz, 2H), 6.22(s, 1H), 4.27(s, 2H), 1.50(s, 9H).
【0046】
1.2. 4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)カルバニル酸メチル(K1)の合成
【化30】
【0047】
上述で得られた4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)カルバニル酸-t-ブチル(100mg、0.32mmol)をCH2Cl2(2mL)に溶解させ、トリフルオロ酢酸(TFA、1.5mL)を入れ、室温で1h撹拌した後、濃縮し、得られた化合物をジオキサン(10mL)に溶解させ、ジイソプロピルエチルアミン(120mg、1.18mmol)を入れ、0℃でゆっくりクロロギ酸メチル(45mg、0.49mmol)を滴下し、室温で1h撹拌し、水で希釈し、EtOAcで抽出し(10mL×3)、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮してカラム(PE/EtOAc=4:1)にかけたことで、産物の4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)カルバニル酸メチル(K1)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ 7.13-7.26(m, 4H), 6.87-6.96(m, 4H), 6.61(s, 1H), 4.26(s, 2H), 3.77(s, 3H).
【0048】
製造実施例1と類似の操作を使用し、以下の化合物を得た。
【表1】
【0049】
製造実施例2: 4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸メチル(K9)の合成
2.1. 4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸-t-ブチルの合成
【化31】
【0050】
4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)カルバニル酸-t-ブチル(316mg、1mmol)をDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)(5mL)に溶解させ、臭化プロパルギル(178mg、1.5mmol)とジイソプロピルエチルアミン(i-Pr2NEt)(258mg、2mmol)を滴下し、80℃で2h撹拌し、冷却し、水で希釈し、EtOAcで抽出し(10mL×3)、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮してカラム(PE/EtOAc=8:1)にかけたことで、産物の4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸-t-ブチル(330mg、93.2%)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ 7.21-7.30(m, 4H), 7.00(t, J=8.4Hz, 2H), 6.86(d, J=9.0Hz, 2H), 6.32(s, 1H), 4.42(s, 2H), 3.92(d, J=2.4Hz, 2H), 2.20(t, J=2.4Hz, 1H), 1.50(s, 9H).
【0051】
2.2. 4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸メチルの合成
【化32】
【0052】
上述で得られた4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸-t-ブチル(100mg、0.282mmol)をCH2Cl2(2mL)に溶解させ、トリフルオロ酢酸(TFA、1.5mL)を入れ、室温で1h撹拌した後、濃縮し、得られた化合物をジオキサン(10mL)に溶解させ、ジイソプロピルエチルアミン(109mg、0.846mmol)を入れ、0℃でゆっくりクロロギ酸メチル(40mg、0.423mmol)を滴下し、 室温で1h撹拌し、水で希釈し、EtOAcで抽出し(10mL×3)、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮してカラム(PE/EtOAc=4:1)にかけたことで、産物の4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸メチル(K9)(78mg、88.6%)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ 7.23-7.28(m, 4H), 6.99(t, J=8.4Hz, 2H), 6.83(d, J=8.7Hz, 2H), 4.41(s, 2H), 3.91(s, 2H), 3.72(s, 3H), 2.22(s, 1H).
【0053】
製造実施例2と類似の方法を使用し、以下の化合物を得た。
【表2】
【0054】
製造実施例3: 2-フルオロ-5-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸メチル(K10)の合成
3.1. 2-フルオロ-5-ニトロカルバニル酸メチルの合成
【化33】
窒素の保護下で、2-フルオロ-3-ニトロアニリン(156mg、1mmol)を乾燥したTHF(5mL)に溶解させ、氷浴で0℃に冷却し、 水素化ナトリウム(40mg、60%、1mmol)を入れ、室温に上昇させて60min撹拌し、0℃に下がり、クロロギ酸メチル(85.2μL、1.1mmol)を入れ、10min撹拌し、水(10mL)で希釈し、EtOAc(10mL×3)で抽出し、有機相を合併して飽和食塩水で洗浄し(15mL×3)、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮してカラム(PE/EtOAc=10:1-5:1)にかけたことで、産物の2-フルオロ-5-ニトロカルバニル酸メチル(245mg、84.5%)を得た。
【0055】
3.2. 2-フルオロ-5-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸メチル(K10)の合成
【化34】
【0056】
上述で得られた2-フルオロ-5-ニトロカルバニル酸メチル(95mg、0.443mmol)を酢酸エチル(15mL)に溶解させ、N2で置換し、早くPd-C(10%、5mg)を入れ、H2で置換し、室温で6h反応し、ろ過し、濃縮して得られた無色の油状物は2-フルオロ-5-アミノカルバニル酸メチルであり(72.5mg、89.1%)、直接次の反応に供した。
【0057】
窒素の保護下で、2-フルオロ-5-アミノカルバニル酸メチル(72.5mg、0.39mmol)を乾燥したTHF(5mL)に溶解させ、臭化プロパルギル(44μL、0.59mmol)、DIPEA(140μL、0.78mmol)を入れた。60℃で6時間撹拌し、水(10mL)で希釈し、EtOAc(10mL×3)で抽出し、有機相を合併して飽和食塩水で洗浄し(15mL×3)、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮してカラム(PE/EtOAc=6:1-4:1)にかけたことで、産物の2-フルオロ-5-(N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸メチル(70.1mg、81%)を得た。
【0058】
窒素の保護下で、2-フルオロ-5-(N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸メチル(70mg、0.32 mmol)を乾燥したTHF(5mL)に溶解させ、p-フルオロベンジルブロミド(81μL、0.64mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(115μL、0.64mmol)を入れた。60℃で6時間撹拌し、水(10mL)で希釈し、EtOAc(10mL×3)で抽出し、有機相を合併して飽和食塩水で洗浄し(15mL×3)、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮してカラム(PE/EtOAc=6:1-4:1)にかけたことで、産物の2-フルオロ-5-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸メチル(K10)(88.7mg、84%)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ 7.79(s, 1H), 7.30(m, 2H), 7.01(m, 2H), 6.93(dd, J=9.9 Hz, J=9.0 Hz, 2H), 6.83(s, 1H), 6.51(m, 1H), 7.01(m, 2H), 4.44(s, 2H), 3.94(d,J=2.4 Hz,2H),3.79(s, 3H), 2.24(t, J=2.4 Hz,1H).
【0059】
製造実施例3と類似の方法を使用し、以下の化合物を得た。
【表3】
【0060】
製造実施例4: 2-アミノ-4-(N-p-フルオロベンジル-N-アリルアミノ)カルバニル酸エチル(K20)の合成
4.1. 2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)カルバニル酸-t-ブチルの合成
【化35】
【0061】
製造実施例1と類似の操作に従い、o-ニトロ-p-フェニレンジアミンとp-フルオロベンズアルデヒドを原料として、中間体の2-ニトロ-4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)アニリンを得た。2-ニトロ-4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)アニリン(2.61g、0.01mol)をTHF(30mL)に溶解させ、N2で置換し、早くPd-C(10%、261mg)を入れ、H2で置換し、一晩水素化反応し、ろ過し、濃縮して得られた産物の2-アミノ-4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)アニリン(2.3g、99.6%、無色油状物、産物が不安定で酸化変性しやすい)を早く次の反応に供した。1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ 7.32(t, J=8.7Hz, 2H), 7.02(t, J=8.7Hz, 2H), 6.58(d, J=8.7Hz, 1H), 6.01-6.08(m, 2H), 4.22(s, 2H).
【0062】
上述産物の2-ニトロ-4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)アニリン(1g、4.32mmol)をTHF/H2O(40mL、1:1)に溶解させ、ジ-t-ブトキシ炭酸無水物(Boc2O)(2.83g、12.96mmol)と炭酸水素ナトリウム(1.16g、12.96mmol)を入れ、室温で一晩撹拌した。水で希釈し、EtOAc(30mL×3)で抽出し、有機相を合わせてNa2SO4で乾燥し、減圧で溶媒を除去してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(PE/EtOAc=5:1)、中間体の2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)カルバニル酸-t-ブチル(1.67g、89.5%、無色油状物)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ 7.28(t, J=8.7Hz, 2H), 7.00(t, J=8.7Hz, 3H), 6.89(s, 1H), 6.26(d, J=8.7Hz, 1H), 4.25(s, 2H), 1.48(s, 18H).
【0063】
4.2. 2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-(N-p-フルオロベンジル-N-アリルアミノ)カルバニル酸-t-ブチルの合成
【化36】
【0064】
中間体の2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-(N-p-フルオロベンジルアミノ)カルバニル酸-t-ブチル(150mg、0.348mmol)をDMF(5mL)に溶解させ、臭化アリル(55mg、0.452mmol)とi-Pr2NEt(99mg、0.766mmol)を滴下し、50℃で2h撹拌し、冷却し、水(10mL)で希釈し、EtOAc(10mL×3)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮してカラム(PE/EtOAc=4:1)にかけたことで、化合物の2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-(N-p-フルオロベンジル-N-アリルアミノ)カルバニル酸-t-ブチル(143mg、87.2%、無色油状物)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ 7.18(t, J=6.9Hz, 2H), 6.90-7.06(m, 4H), 6.49(s, 1H), 6.48(d, J=8.7Hz, 1H), 5.79-5.88(m, 1H), 5.18(s, 1H), 5.13(s, 1H), 4.44(s, 2H), 3.92(d, J=3.6Hz, 2H), 1.49(s, 18H). 13C NMR(75 MHz, CDCl3): δ 163.5, 160.3, 154.9, 153.5, 147.5, 134.4, 134.3, 133.4, 128.4, 128.3, 127.0, 116.7, 115.5, 115.2, 80.4, 53.4, 53.1, 28.3.
【0065】
4.3. 2-アミノ-4-(N-p-フルオロベンジル-N-アリルアミノ)カルバニル酸エチル(K20)の合成
【化37】
【0066】
化合物の2-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-4-(N-p-フルオロベンジル-N-アリルアミノ)カルバニル酸-t-ブチル(80mg、0.17mmol)をCH2Cl2(0.2mL)に溶解させ、TFA(1mL)を入れ、室温で1h撹拌した後、濃縮し、得られた残留物をジオキサン(10mL)に溶解させ、DIPEA(66mg、0.51mmol)を入れ、0℃でゆっくりクロロギ酸エチル(18mg、0.17mmol)のジオキサン(2mL)溶液を滴下し、室温で1h撹拌し、水で希釈し、EtOAc(10mL×3)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮してカラム(PE/EtOAc=4:1-2:1)にかけたことで、産物の2-アミノ-4-(N-p-フルオロベンジル-N-アリルアミノ)カルバニル酸エチル(K20)(28mg、無色油状物)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ 7.18(t, J=8.1Hz, 2H), 6.99(t, J=8.4Hz, 1H), 6.91(d, J=8.7Hz, 1H), 6.12(d, J=8.7Hz, 2H), 6.06(d, J=2.1Hz, 1H), 5.80-5.86(m, 1H), 5.19(s, 1H), 5.14(d, J=3.0Hz, 1H), 4.44(s, 2H), 4.20(q, J=6.9Hz, 2H), 3.91(d, J=4.5Hz, 2H), 3.59(brs, 2H), 1.28(t, J=6.9Hz, 3H).
【0067】
製造実施例4と類似の方法を使用し、以下の化合物を得た。
【表4】
【0068】
製造実施例5: 2-(メトキシカルボニルアミノ)-4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸メチル(K22)の合成
【化38】
【0069】
製造実施例4と類似の操作に従い、化合物の2-アミノ-4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸メチルを得た。得られた化合物(80mg、0.24mmol)をジオキサン(10mL)に溶解させ、DIPEA(100mg、0.98mmol)を入れ、0℃でゆっくりクロロギ酸エチル(50mg、0.53mmol)のジオキサン(2mL)溶液を滴下し、原料が完全に反応するまで撹拌した。水で希釈し、EtOAc(10mL×3)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、濃縮してカラム(PE/EtOAc=4:1-2:1)にかけたことで、産物の2-(メトキシカルボニルアミノ)-4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸メチル(K22)(68mg、72%)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ 7.25(t, J=8.4Hz, 2H), 7.12(d, J=8.7Hz, 2H), 6.99(t, J=8.7Hz, 2H), 6.57(d, J=8.7Hz, 1H), 4.45(s, 2H), 3.94(s, 2H), 3.71(s, 6H), 2.22(s, 1H).
【0070】
製造実施例5と類似の方法を使用し、以下の化合物を得た。
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
製造実施例6: 5-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)ベンゾイミダゾール-2-オンカルバニル酸メチル(K25)の合成
【化39】
【0073】
製造実施例4の方法で得られた2-アミノ-4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)アニリン(27mg、0.1mmol)をTHF(5mL)に溶解させ、固体トリホスゲン(30mg、0.1mmol)のTHF(2mL)溶液とEt3N(30mg、0.3mmol)を滴下し、室温で2h撹拌し、濃縮してカラム(PE/EtOAc/MeOH=10:10:1-5:5:1)にかけたことで、産物の5-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)ベンゾイミダゾール-2-オン(K25)(25mg、84.5%)を得た。1H NMR(300 MHz, CD3OD): δ 7.34(t, J=8.7Hz, 2H), 7.03(t, J=8.7Hz, 2H), 6.89(d, J=8.7Hz, 1H), 6.72(d, J=8.7Hz, 2H), 4.42(s, 2H), 3.95(s, 2H), 2.60(s, 1H).
【0074】
製造実施例6と類似の方法を使用し、化合物の5-(N-p-フルオロベンジル-N-アリルアミノ)ベンゾイミダゾール-2-オン(K34)を製造した。1H NMR(300 MHz, DMSO-d6);δ 10.22(s,1H),10.14(s,1H),7.26(t,J=7.8 Hz,2H),7.13(d,J=8.1 Hz,1H),6.69(d,J=8.4 Hz,1H),6.32(d,J=8.4 Hz,1H),6.28(s,1H).
【化40】
【0075】
製造実施例7: 2-(エトキシカルボニルアミノ)-4-[N-p-フルオロベンジル-N-1-(6-ヒドロキシ-2-メチレン-3-へキセニル)アミノ]カルバニル酸エチル(K32)の合成
【化41】
【0076】
窒素の保護下で、製造実施例5と類似の方法で得られた化合物の2-(エトキシカルボニルアミノ)-4-[N-p-フルオロベンジル-N-1-(6-ヒドロキシ-2-メチレン-3-へキセニル)アミノ]カルバニル酸エチル(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸エチル(15mg、0.036mmol)とアリルアルコール(21mg、0.36mmol)を無水塩化メチレン(3ml)に溶解させ、アルゴンを15分間導入して酸素を除去した。早くGrubbs II触媒を入れ、3回換気し、一晩還流した。減圧で溶媒を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(PE/EtOAc=4:1-2:1)、産物の2-(エトキシカルボニルアミノ)-4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸エチル(K32)(15mg、85%、黒色油状物)を得た。1H NMR(300 MHz, CDCl3): δ 7.18(dd, J=8.7 Hz,J=8.4 Hz,2H),7.07 -6.96(m,5H),6.40(dd,J=8.7 Hz,J=2.7 Hz,1H),6.36(s,1H),5.88-5.79(dt,J=16.2 Hz,J=5.15 Hz,1H),5.03(s,1H),4.52(s,1H),4.18(m,4H), 4.10(s,2H),1.28(m,6H).
【0077】
製造実施例7と類似の方法を使用し、化合物の2-(エトキシカルボニルアミノ)-4-[N-p-フルオロベンジル-N-1-(6-アミノ-2-メチレン-3-ヘキセニル)アミノ]カルバニル酸エチル(K39)を製造した。1H NMR (CDCl3, 300 MHz);δ 7.17(dd, J=8.4 Hz,J=5.4 Hz,2H),7.07(d,J=9.0 Hz,2H),6.98(t,J=8.7 Hz,2H),6.59(s,1H),6.35(dd,J=9.0 Hz,J=2.7 Hz,1H),6.29(d,J=15.9 Hz,1H),5.76(d,j=15.9 Hz,1H),5.11(s,1H),4.99(s,1H),4.49(s,2H), 4.17(m,4H),4.08(s,2H),1.25(m,6H).
【化42】
【0078】
製造実施例8: 2-アミノ-4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸エチル二塩酸塩の調製(K21・2HCl)
【化43】
511mg(1.5mmol)の化合物の2-アミノ-4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸エチル(K21)を塩化メチレン(5mL)に溶解させ、5N塩酸の酢酸エチル溶液(1mL)を入れ、10分間撹拌し、溶媒を除去し、2-アミノ-4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギルアミノ)カルバニル酸エチル二塩酸塩(K21・2HCl)(624mg)を得た。
製造実施例8と類似の方法を使用し、それぞれ化合物K3の塩酸塩K3・HCl、K17の塩酸塩K17・HCl、K18の塩酸塩K18・HClおよび化合物K20の二塩酸塩K20・2HClを得た。
【0079】
二、電気生理実験の実施例:本発明の化合物のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における電気生理実験
1. 細胞の培養とトランスフェクション
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(中国科学院細胞庫)の培養液の配合:50/50 DMEM/F-12(Cellgro, Mamassas, VA)に10%ウシ胎児血清(FBS) (Gibco, オーストラリア)、2mM L-グルタミン酸(Invitrogen)を入れた。KCNQチャネルの発現およびその突然変異:トランスフェクションの24時間前に、トリプシン(Sigma, 中国)で消化した後、直径60mmの培養皿に展開した。トランスフェクションは、Lipofectamine2000TM試薬(Invitrogen)を使用し、そのプロトコールに従って操作した。トランスフェクションの24時間後、細胞を消化して再度poly-L-lysine(Sigma)に浸漬したスライドガラスに展開した。GFP(緑色蛍光タンパク質)と一緒にコトランスフェクションし、蛍光顕微鏡でトランスフェクション細胞を確認することができた。
【0080】
2. CHO細胞における電気生理の記録:
室温で、Axopatch-200B増幅器(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で全細胞電圧クランプ記録を行った。ホウケイ酸ガラス毛細管(World Precision Instruments, Sarasota, FL)を伸ばして電極とし、電極内に細胞内液を充填した後の抵抗が3-5MΩである。細胞内液の配合:145mM KCl、1mM MgCl2、5mM EGTA、10mM HEPES、5mM MgATP(KOHでpH=7.3に調整した)。記録の間、BPSかん流システム(ALA Scientific Instruments, Westburg, NY)で細胞外液をかん流し続けた。細胞外液:140mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl2、1.5mM MgCl2、10mM HEPES、10mMグルコース(NaOHでpH=7.4に調整した)。電気信号を1kHzにおいてフィルターにかけた後、DigiData 1322AでpClamp 9.2ソフトウェア(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)によってデジタル信号に転換した。抵抗を直列に接続して信号損失の60-80%補い、現在の研究に多段電圧スキームを使用した。スキームにおけるクランプ電圧は-100mVとした。細胞を一連の2000msの刺激電圧(-90mVから+50mVまで、間隔10mV)で電流を誘導した。
【0081】
3. 実験結果
ここで、V1/2は半数活性化電圧で、ΔV1/2は半数活性化電圧の左へのシフト値で、負号(-)は電流活性化曲線の左へのシフトを、正号(+)は右へのシフトを表す。I/I0は活性化の倍率で、ここで、I0は-10mVのテスト電圧の刺激で生じた電流のピーク値の最大値で、Iは投与(化合物濃度が10μM)後同様に-10mVのテスト電圧の刺激で生じた電流のピーク値の最大値で、I/I0>1は作動活性、I/I0<1は阻害活性を表す。Nは測定した細胞の数である。NTは未測定を表す。
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
三、化合物の体内における効果を評価する実施例
体内効果実施例1: 化合物K9とK1のペンチレンテトラゾール(PTZ)による痙攣に対する治療作用
1. 実験の目的:
本発明の化合物K9、K1とRetigabine(実験室でUS538,433,0に開示された方法を参照して自制したもの)の抗痙攣作用を比較することである。
2. サンプルの処理:
Retigabine: 淡灰色粉末で、水に溶けやすい。無色で、透明の液体である。
化合物K9: 黄色顆粒で、水に溶けにくい。0.2%CMC溶液を入れた後、30min超音波処理したところ、均一の懸濁液となった。
化合物K1: 淡黄色顆粒で、水に溶けにくい。0.2%CMC溶液を入れた後、30min超音波処理したところ、均一の懸濁液となった。
【0085】
3. 実験動物
C57BL/6Jマウス(中国科学院実験動物センターから購入):16-18グラム。
4. 実験の手順
被験医薬品(30mg/kg)を胃かん流で投与した。1時間後、ペンチレンテトラゾール(PTZ、80mg/kg)を皮下注射した。すぐ動物の60min以内の反応を観察した。
【0086】
5. 実験結果
【表9】
【0087】
動物は、Retigabineによる処理を受けた後、静かになり、運動が減少し、20min後、次第に回復し、1h後、顕著な異常が見られなかった。動物は、それぞれK9とK1による処理後、PTZ急性痙攣のマウスのクローヌスの潜伏期間を延ばし、全身強直性発作の潜伏期間を延ばし、且つ死亡率を低下させたと、顕著に痙攣の発生率を低下させるができた。結果から、三者は同等の効果の抗痙攣作用を有することが示された。
【0088】
体内効果実施例2: 化合物K21の腹腔注射のPTZ(ペンチレンテトラゾール)およびMES(最大電流刺激)による動物モデルに対する治療作用のテスト実験
1. 実験の目的:
K21と陽性化合物のRetigabineの抗痙攣作用を比較することである。
2. サンプルの処理:
Retigabine: 淡灰色粉末で、水に溶けやすい。無色で、透明の液体である。
K21: 茶青色層状顆粒で、水に溶けにくい。50ulのDMSOで溶解し、さらに0.5%HEC溶液を入れたところ、均一の懸濁液となった。
【0089】
3. 実験動物:
雄KMマウス(中国科学院実験動物センターから購入): (22±2)グラム。
4. 実験の手順:
(1) PTZによるテスト:各種の被験医薬品を腹腔注射した(10 mg/kg、5mg/kgm2.5mg/kg、0.1ml/10g)。30min後、ペンチレンテトラゾール(PTZ、100mg/kg)を皮下注射した。すぐ動物の1h以内の反応を観察して記録した。
【0090】
(2)MESによるテスト:YLS-9A型生理薬理電子刺激機を使用し、セット8とし、刺激電圧160V、波数90個(即ち、刺激時間5.4秒)とした。耳にクリップを挟んで電気刺激を1回与えた後、後ろ足の強直性伸長を痙攣を指標とし、実験の前日にスクリーニングした。実験の時、まず、各種の被験医薬品を腹腔注射し(10 mg/kg、0.1ml/10g)、30min後前日に設定したパラメーターでMESテストを行い、すぐ動物の反応を観察して記録した。
【0091】
5. 実験結果:
【表10】
【0092】
【表11】
【0093】
6. 実験の結論
化合物K21は、MESによるテストにおいて完全に大きい発作の発生を抑制し、PTZによるテストにおいて動物の痙攣の発生率および死亡率を顕著に低下させ、PTZによる急性痙攣のマウスのクローヌスの潜伏期間を延ばし、且つ一定の投与量に依頼する効果の関係が存在する。化合物K21は、抗痙攣効果が同じ投与量で陽性化合物Retigabineよりもやや強かった。両者は、いずれも一定の鎮静作用を示した。
【0094】
体内効果実施例3: K21の経口投与のPTZおよびMESによる動物モデルに対する治療作用
1. 実験の目的:
K21と陽性化合物のRetigabineの経口投与による抗痙攣作用を比較することである。
2. サンプルの処理:
Retigabine: 淡灰色粉末で、水に溶けやすい。無色で、透明の液体である。
K21: 茶青色層状顆粒で、水に溶けにくい。50ulのDMSOで溶解し、さらに0.2%CMC溶液を入れ、20min超音波処理したところ、均一の懸濁液となった。
3. 実験動物:
雄KMマウス(中国科学院実験動物センターから購入):PTZ実験において、動物体重(22±2)グラム、MES実験において、動物体重18グラム。
【0095】
4. 実験の手順:
(1) PTZによるテスト
動物を12h断食させ、胃かん流で被験化合物CF341とretigabine(30mg/kg、0.2ml/10g)を投与し、1h後、ペンチレンテトラゾール(PTZ、100mg/kg)を皮下注射し、すぐ動物の1h以内の反応を観察して記録した。
(2)MESによるテスト
YLS-9A型生理薬理電子刺激機を使用し、セット8とし、刺激電圧160V、波数90個(即ち、刺激時間5.4秒)とした。耳にクリップを挟んで電気刺激を1回与えた後、後ろ足の強直性伸長を痙攣を指標とし、実験の前日にスクリーニングした。
動物を12h禁食させ、胃かん流で各種被験医薬品(30mg/kg、0.2ml/10g)を投与し、1h後前日に設定したパラメーターでMESテストを行い、すぐ動物の反応を観察して記録した。
【0096】
5. 実験結果:
【表12】
【0097】
【表13】
【0098】
7. 実験の結論
化合物K21とretigabineは、いずれもMESによるテストにおいて顕著に大きい発作の発生を抑制し、且つ効果が同等であった。PTZによるテストにおいて、retigabineは、動物の痙攣の発生率および死亡率を顕著に低下させたが、化合物K21は、顕著に動物の強直発作を抑制し、死亡率が対照群よりもすこし低下したが、顕著な差がなかった。
【0099】
四、化合物の薬物動態学的研究実施例
薬物動態学的研究実施例1: K9とRetigabineのマウスの脳組織における分布の試験研究
1. 投与スキーム
雄、体重18-20gの健康KMマウス108匹を、試験前に12h断食させ、自由に水を飲ませた。投与の2h後、同時に食事させた。具体的な手順は下述表に示す。
【表14】
【0100】
試験前に12h断食させ、自由に水を飲ませた。投与の2h後、同時に食事させた。
マウスの胃かん流と静脈投与後、以上の時刻で、各時刻に3匹ずつ腹大動脈から血を出して殺処分した。各動物から0.5mlの全血を収集し、ヘパリン化試験管に置き、3000rpmで10min遠心して血漿を分離し、-20℃の冷蔵庫に冷凍保存した。動物を殺処分した後、全脳を摘出して解剖し、冷やした生理食塩水で残留の血液を流し、乾燥した後、ラベルを貼り、-20℃の冷蔵庫に冷凍保存した。
【0101】
2. 試験結果
液体クロマトグラフ-質量分析で血漿および脳組織におけるK9とRetigabineの濃度を測定した。
2.1. K9
マウスに胃かん流で20mg/kgの化合物K9を投与した後、血漿および脳組織におけるピーク濃度Cmaxはそれぞれ2197 ng/mlおよび4421 ng/gであった。濃度-時間曲線下の面積AUC0-tはそれぞれ1865 ng・h/mlおよび3565 ng・h/gであった。脳組織における被ばく量は、血漿の約1.9倍に相当した。消失半減期は約1.2hであった。
マウスに静脈注射で20mg/kgの化合物K9を投与した後、血漿および脳組織における濃度-時間曲線下の面積AUC0-tはそれぞれ7185 ng・h/mlおよび10694 ng・h/gで、血漿クリアランスは2.78 L/h/kgであった。化合物K9の脳組織における被ばく量は、血漿の約1.5倍に相当した。
投与量で修正した後、血漿AUC0-tで計算すると、マウスに胃かん流で20mg/kgの化合物K9を投与した後の生物学的利用能の絶対値が26%であった。
【0102】
2.2 Retigabine
マウスに胃かん流で20mg/kgのRetigabineを投与した後、血漿および脳組織におけるピーク濃度Cmaxはそれぞれ2788 ng/mlおよび849 ng/gであった。濃度-時間曲線下の面積AUC0-tはそれぞれ21088 ng・h/mlおよび3460 ng・h/gであった。脳組織における被ばく量は、血漿の約16%に相当した。消失半減期は約7hであった。
マウスに静脈注射で20mg/kgのRetigabineを投与した後、血漿および脳組織における濃度-時間曲線下の面積AUC0-tはそれぞれ59987 ng・h/mlおよび8661ng・h/gで、血漿クリアランスは0.322 L/h/kgであった。Retigabineの脳組織における被ばく量は、血漿の約14%に相当した。
投与量で修正した後、血漿AUC0-tで計算すると、マウスに胃かん流で20mg/kgのRetigabineを投与した後の生物学的利用能の絶対値が35.2%であった。
【0103】
薬物動態学的研究実施例2: K20・2HClとK21・2HClのマウスの脳組織における分布の試験研究
1. 投与スキーム
雄、体重18-20gのKMマウス54匹を、試験前に12h断食させ、自由に水を飲ませた。投与の2h後、同時に食事させた。具体的な手順は下述表に示す。
【表15】
【0104】
試験前に12h断食させ、自由に水を飲ませた。投与の2h後、同時に食事させた。
マウスの胃かん流投与後、以上の時刻で、各時刻に3匹ずつ腹大動脈から血を出して殺処分した。各動物から0.5mlの全血を収集し、ヘパリン化試験管に置き、11000rpmで10min遠心して血漿を分離し、-20℃の冷蔵庫に冷凍保存した。動物を殺処分した後、全脳を摘出して解剖し、冷やした生理食塩水で残留の血液を流し、乾燥した後、ラベルを貼り、-20℃の冷蔵庫に冷凍保存した。
【0105】
2. 試験結果
2.1. K20・2HCl
マウスに胃かん流で20mg/kgの化合物K20・2HClを投与した後、血漿および脳組織における元の形態の薬物K20・2HClと代謝物retigabineの濃度がピークに達した時間Tmaxはいずれも0.25hで、 代謝物retigabineの血漿および脳組織における被ばく量は、それぞれ元の形態の薬物K20・2HClの2.9%および1.8%であった。元の形態の薬物K20・2HClの脳組織における濃度は、血漿中濃度の2.3倍で、代謝物retigabineは1.4倍であった。
【0106】
2.2, K21・2HCl
マウスに胃かん流で5mg/kgの化合物K21・2HClを投与した後、血漿および脳組織における元の形態の薬物K21・2HClと代謝物retigabineの濃度がピークに達した時間Tmaxはいずれも0.25hで、代謝物retigabineの血漿および脳組織における被ばく量は、それぞれ元の形態の薬物K21・2HClの5.4%および4.6%であった。元の形態の薬物K21・2HClの脳組織における濃度は、血漿中濃度の2.4倍で、代謝物retigabineは2.0倍であった。
【0107】
上述試験結果から、本発明によって提供される化合物は、Retigabineのカリウムチャネル作動活性を維持するだけでなく、体内における抗癲癇効果も顕著である。
1. 雄KMマウスモデルにおいて、腹腔注射による投与の場合、化合物K21・2HClの抗痙攣効果が陽性化合物Retigabineよりも優れた。
2. 同様に、雄KMマウスモデルにおいて、10mg/kgの投与量で胃かん流で投与した場合、化合物K21・2HClとRetigabineは、MESテストにおいて効果が同等で、顕著に大きい発作の発生を抑制することができた。PTZテストにおいて、Retigabineは、顕著に動物の痙攣の発生率と死亡率を低下させ、化合物K21・2HClは顕著に動物の強直発作を抑制することができた。
【0108】
薬物動態学的研究から、このような化合物は、Retigabineよりも優れた脳組織における濃度分布を有することが示された。
1. マウスに胃かん流で20mg/kgの化合物K9を投与した後、化合物の脳組織における被ばく量は、血漿の約1.9倍に相当した。マウスに静脈注射で20mg/kgの化合物K9を投与した後、化合物の脳組織における被ばく量は、血漿の1.5倍に相当した。同じ条件で、Retigabineの胃かん流および静脈注射による投与の場合、そのマウスの脳における被ばく量は、それぞれ血漿の16%および14%であった。
2. マウスに胃かん流で20mg/kgの化合物K20を投与した後、化合物の脳組織における被ばく量は、血漿濃度の2.3倍であった。
3. マウスに胃かん流で5mg/kgの化合物K21・2HClを投与した後、化合物の脳組織における被ばく量は、血漿濃度の2.4倍であった。