特許第5947912号(P5947912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5947912多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒とその調整方法
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  • 特許5947912-多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒とその調整方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5947912
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒とその調整方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/89 20060101AFI20160623BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20160623BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20160623BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20160623BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20160623BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20160623BHJP
   B01J 23/889 20060101ALI20160623BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20160623BHJP
   C10G 2/00 20060101ALN20160623BHJP
【FI】
   B01J23/89 Z
   B01J37/03 B
   B01J37/00 F
   B01J37/08
   B01J35/10 301G
   B01J35/04 Z
   B01J23/889 Z
   B01J35/08 B
   !C10G2/00
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-542687(P2014-542687)
(86)(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公表番号】特表2014-534068(P2014-534068A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】CN2012083091
(87)【国際公開番号】WO2013075559
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2014年7月14日
(31)【優先権主張番号】201110378794.1
(32)【優先日】2011年11月24日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512244657
【氏名又は名称】武▲漢凱▼迪工程技▲術▼研究▲総▼院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】方章建
(72)【発明者】
【氏名】▲陳義龍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼岩▲豊▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ジャン暁東▼
(72)【発明者】
【氏名】▲シュエ▼永▲傑▼
(72)【発明者】
【氏名】陶▲レイ▼明
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101804351(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101698152(CN,A)
【文献】 国際公開第2008/147013(WO,A2)
【文献】 特表2011−517426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C10G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒であって、コアに金属成分、シェルに多孔質材料の細孔を用い、コアである金属成分がシェルである多孔質材料の細孔内に分散する構造を有し、前記金属成分は第一金属成分のCo、第二金属成分のCe、La、Zrのいずれか、第三金属成分のPt、Ru、Rh、Reのいずれかで構成され、完成した触媒は第一金属成分が10〜35質量%、第二金属成分が0.5〜10質量%、第三金属成分が0.02〜2質量%、残部の担体から構成され、前記担体は多孔質材料であり、その成分はナノシリカまたはアルミナであり、前記多孔質材料は球形の形状をしており、細孔径が1〜20nmで比表面積は300〜500m2/gであり、活性成分の粒径は0.5〜20nmであることを特徴とする触媒。
【請求項2】
第一金属成分が15〜30質量%、第二金属成分が1〜5質量%、第三金属成分が0.05〜2質量%、残部の担体から構成されることを特徴とする、請求項1の触媒。
【請求項3】
前記担体は細孔径1〜10nmで比表面積は300〜400m2/gであり、前記活性成分の粒径は0.5〜5nmであることを特徴とする、請求項1または2の触媒。
【請求項4】
前記担体は細孔径10〜20nmで比表面積は400〜500m2/gであり、前記活性成の粒径は6〜15nmであることを特徴とする、請求項1または2の触媒。
【請求項5】
前記担体は細孔径10〜20nmで比表面積は400〜500m2/gであり、前記活性成分の粒径は16〜20nmであることを特徴とする、請求項1または2の触媒。
【請求項6】
バルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒の調整方法であって、
該触媒は、ゲルテンプレート剤として有機ゲルを用いたゾルゲル法により調整され、完成した触媒は、第一金属成分のCoが10〜35質量%、第二金属成分のCe、La、Zrのいずれかが0.5〜10質量%、第三金属成分のPt、Ru、Rh、Reのいずれかが0.02〜2質量%、残部の担体から構成され、前記担体は多孔質材料であり、その成分はナノシリカまたはアルミナであり、前記多孔質材料は球形の形状をしており、細孔径が1〜20nmで比表面積は300〜500m2/gであり、活性成分の粒径は0.5〜20nmであることを特徴とする触媒であって、
1)原料の選択:オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)または硝酸アルミニウム、第一金属成分Coを含む水溶性塩、第二金属成分を含む硝酸塩またはニトロシル硝酸塩、第三金属成分を含む硝酸塩またはニトロシル硝酸塩を選択し、それぞれ該当する成分の質量割合に従って集め、そして、ゲルテンプレート剤を供給する工程と、
2)ゲルテンプレート剤を極性溶媒に溶解させ第一の溶液を得、一定温度にて金属塩を含む水溶液を第一の溶液に添加し、PH値を8〜10に調整するためにアンモニアを適量添加し、一定温度にて0.1〜3時間撹拌し第二の溶液を得る工程と、
3)TEOSまたは硝酸アルミニウムを第二の溶液に添加し、一定温度にて3〜24時間撹拌し続け、混合物を得る工程と、
4)90〜150℃で上記混合物をスプレー乾燥し、有機―無機ハイブリット材料の粉末を得る工程と、
5)スプレー乾燥後の上記粉末を、マッフル炉に移動させ、300〜750℃にて3〜12時間、粉末を焼成し、完成された触媒を得る工程と、
を含む、調整方法。
【請求項7】
前記工程4において、ゾルゲルテンプレート法によって調整されるゲルを110℃〜150℃でスプレー乾燥し、有機―無機ハイブリット材料を得ることを特徴とする、請求項6の調整方法。
【請求項8】
前記工程5において、スプレー乾燥後の上記粉末を、マッフル炉に移動させ、350〜700℃にて5〜10時間、粉末を焼成し、完成された触媒を得ることを特徴とする、請求項6、7いずれかの調整方法。
【請求項9】
前記ゲルテンプレート剤はアミノ基を含有する直鎖状の両親媒性のポリマーであることを特徴とする請求項6、7いずれかの調整方法。
【請求項10】
前記水溶液の調整において、第一金属成分Coを含む水溶性塩は、硝酸コバルト、酢酸コバルト、炭酸コバルトの何れかであり、第二金属成分を含む塩は硝酸塩であり、第三金属成分を含む塩は硝酸塩であることを特徴とする請求項6、7いずれかの調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒合成とナノ材料の適用分野に関し、特に、多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒とその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、石油資源の縮小と石油価格の上昇とともに、石油の代替品についての研究や科学進歩が進んでいる。石炭、石油ガスやバイオマスから得られたシンガス(CO+H2)をフィッシャー・トロプシュ合成によりガス化して炭化水素に転換する方法は、大きな注目を集めてきた。フィッシャー・トロプシュ合成は、シンガス(CO+H2)から触媒を用いて炭化水素を生成するさまざまな反応である。生成物は、主に比較的高い炭素数をもつ重質炭化水素(C5+)である。高品質のディーゼルやジェット燃料が、パラフィンを精製、分解して作ることができ、それは硫化物や窒化物がほとんどない、とてもクリーンなモータの燃料である。1923年にドイツの科学者、グランス・フィッシャーとハンス・トロプシュによって発明されたこの合成方法は、液体燃料の供給を増やす、最も有効的な方法の一つであり、重要な経済的意義と商業的価値をもつエンジン燃料を作り出す主な方法の一つになると期待される。
【0003】
フィッシャー・トロプシュ合成の反応機構に関する要因には、活性金属粒子の種類、大きさ、分散度、希釈性が反応性に及ぼす影響や、担体のチャネリングの影響(閉じ込め効果や形状選択効果等)や、反応機構の詳細過程に影響を及ぼし、そして反応性や生成物の種類や分散性に影響を及ぼす助剤の促進効果がある。多くの研究が、活性成分の分散性、活性中心の構造、微環境、位置、担体のチャネリング構造などを含む触媒材料構造が、シンガスの転換反応における活性や選択性に大きな影響を及ぼすことを示してきた。スン ユハン氏等は、コアシェル構造をもち、容易に還元する安定的な活性度をもつ、触媒CO3O4@MCM-41を調整した。はじめに、彼らはCo3O4粒子を調整し、次に両親媒性試薬としてPVPを用い、メソ多孔質シリコンコーティングしたCO3O4粒子をもつコアシェル構造をもつコバルト系触媒を設計、調整した。この触媒は、コバルトの活性中心の凝集を抑えることができる。しかし、これは触媒材料に一つの金属成分をもつ複雑な方法であり、CO変換率は低く、生成物は主に高いメタンの選択性をもつ、軽質炭化水素である。(非特許文献1参照。)
【0004】
特許文献1はフィッシャー・トロプシュ合成のコバルト系触媒とその調整、適用について開示している。この触媒は金属成分、球形のアルミナ粒子の担体から構成されている。第一金属成分はCo、第二金属成分はCe、LaまたはZr、第三金属成分はPt、Ru、RhまたはReである。この触媒はスラリーの気泡塔反応器や、連続撹拌スラリー反応器に適しているが、とても価格が高く、その活性中心は容易に凝集し不活性化してしまう。
【0005】
マイクロカプセル型反応器は、近年、ナノ集合や触媒において新しい概念であり、従来の触媒の、リサイクルが難しい、安定性や選択性が低い等の問題に対処している。この反応器は、ゲスト分子だけが選択的にカプセル空間に入りカプセルの中で反応種と触媒反応をするのではなく、その反応物もまた選択的に反応器から拡散する可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】スン ユハン氏等による、「Chemical Industry and Engineering progress」 2010年, 380頁の論文
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許公開公報第101698152号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一つの目的は、マイクロカプセル型反応器を用いる触媒の調整の利点と、多孔質材料ナノ触媒の閉じ込めの利点を組み合わせて、多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒と、その調整方法を提供する。
この触媒の調整方法は単純であり、生成コストが低く、メタンの選択性が低く、触媒反応の活性は高く、C5+の選択性が良い。ディーゼル油やパラフィンが主な生成物である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の技術的態様は以下の通りである。バルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒は、金属成分をコアとし、多孔質材料の細孔をシェルとし、コアである金属成分がシェルである多孔質材料の細孔内に分散する構造を有する。金属成分は第一金属成分としてCo、第二金属成分としてはCe、La、Zrのいずれかで、第三金属成分としてはPt、Ru、Rh、Reのいずれかである。完成した触媒は、第一金属成分が10〜35質量%、第二金属成分が0.5〜10質量%、第三金属成分が0.02〜2質量%、そして残部は担体から構成される。担体は多孔質材料で、成分はシリカまたはアルミナである。多孔質材料は球形で、細孔径1〜20nm、比表面積は300〜500m2/gである。活性成分の粒径は0.5〜20nmである。
【0010】
好適には、触媒の第一金属成分が15〜30質量%、第二金属成分が1〜5質量%、第三金属成分が0.05〜2質量%、そして残部は担体から構成される。
【0011】
主に軽質炭化水素でなる生成物を得るためには、担体は細孔径が1〜10nm、比表面積が300〜400m2/gの多孔質材料であり、活性成分の粒径は0.5〜5nmである。
【0012】
主に中間の蒸留物(C5-C18)を得るためには、担体は細孔径が10〜15nm、比表面積が400〜500m2/gの多孔質材料であり、活性成分の粒径は6〜15nmである。
【0013】
C18+の含有量が比較的高い生成物を得るためには、担体は細孔径が10〜20nm、比表面積が400〜500m2/gの多孔質材料であり、活性成分の粒径は16〜20nmである。
【0014】
バルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒の調整方法は、該触媒は、ゲルテンプレート剤として有機ゲルを用いたゾルゲル法により調整され、完成した触媒は、第一金属成分のCoが10〜35質量%、第二金属成分のCe、La、Zrのいずれかが0.5〜10質量%、第三金属成分のPt、Ru、Rh、Reのいずれかが0.02〜2質量%、残部の担体から構成され、前記担体は多孔質材料であり、その成分はナノシリカまたはアルミナであり、前記多孔質材料は球形の形状をしており、細孔径が1〜20nmで比表面積は300〜500m2/gであり、活性成分の粒径は0.5〜20nmであることを特徴とする触媒であって、以下の工程から構成される。
【0015】
1)原料の選択:オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)または硝酸アルミニウム、第一金属成分Coを含む水溶性塩、第二金属成分を含む硝酸塩またはニトロシル硝酸塩、第三金属成分を含む硝酸塩またはニトロシル硝酸塩を選択し、それぞれ該当する成分の質量割合に従う。そして、ゲルテンプレート剤を供給する。
【0016】
2)ゲルテンプレート剤を極性溶媒に溶解させ第一の溶液とした後、一定温度にて金属塩を含む水溶液を前記第一の溶液に添加し、PH値を8〜10に調整するためにアンモニアを適量添加し、一定温度にて0.1〜3時間撹拌しそれを第二の溶液とする。
【0017】
3)TEOSまたは硝酸アルミニウムを前記第二の溶液に添加し、一定温度にて3〜24時間撹拌し続け、混合物を得る。
【0018】
4)90〜150℃で前記混合物をスプレー乾燥し、有機―無機ハイブリット材料の粉末を得る。
【0019】
5)スプレー乾燥後の前記粉末を、マッフル炉に移動させ、300〜750℃にて3〜12時間、粉末を焼成し、完成された触媒を得る。
【0020】
好適には、工程4において、ゾルゲルテンプレート法によって得られたゲルを110〜150℃でスプレー乾燥し有機―無機ハイブリット材料を得る。
【0021】
好適には、工程5において、スプレー乾燥された後の粉末をマッフル炉に移動し350〜700℃にて5〜10時間、焼成し、完成された触媒を得る。
【0022】
好適には、ゲルテンプレート剤はアミノ基を含有する直鎖状の両親媒性のポリマーである。
【0023】
好適には、水溶液の調整において、第一金属成分Coを含む水溶性塩は、硝酸コバルト、酢酸コバルト、炭酸コバルトの何れかである。第二金属成分を含む塩は硝酸塩である。第三金属成分を含む塩は硝酸塩である。
【0024】
本発明の利点は以下のとおりである。
【0025】
1. 本発明のフィッシャー・トロプシュ合成触媒において、Coは主要な触媒作用を行う活性金属である。理論上は、同一の分散度の下では、Coの含有量が高いほど触媒の活性度は高くなる。しかし、比表面積や細孔径やチャネルのような因子がCoの最大添着量を制限する。Coが添着量を超えたら、Coは凝集しやすくなり、逆に触媒活性を低くしてしまう。このように、当業者はCo触媒をできるだけ改善するために、触媒担体におけるCoの分散度を改善する助剤を添加することを試みてきた。本発明においては、適当な有機ゲルテンプレート、反応時間、反応物の質量を選ぶことにより、形状、粒径、細孔径がコントロール可能なナノ多孔質触媒が得られる。活性成分が均一に多孔質材料に分散するので、それらは凝集することがなく、よって触媒の活性や反応生成物の選択性を改善する。また、助剤を添加することにより、触媒の活性や選択性がさらに高くなる。このようにして、触媒の生成物コストをさげるために、活性成分の量が減らされる。この触媒はスラリーの気泡塔反応器や連続型スラリー撹拌反応器に適している。
【0026】
2. フィッシャー・トロプシュ合成の生成物の範囲は、メタンから高い分子量をもつパラフィンまで範囲が広いので、選択性が低いとこの工程では欠点になる。フィッシャー・トロプシュ合成の活性や生成物の選択性は触媒材料の中のコバルト粒子の大きさによって大きく変わる。本発明では、生成物の分布は、特定の細孔径と特定の表面積をもつ多孔質材料を担体に選ぶことにより改善され、生成物においてディーゼル油やパラフィンの選択性を高くできる。私たちの研究によれば、コアシェル構造をもつナノ触媒では、シェルがコアを安定化させ、コアは活性が高い。そして、シェルの閉じられた空間は、反応物が蓄積し局部的に集中し有効な反応を促進する微環境を作り、全体的な活性と生成物の選択性を高め、対カーボン、対焼結、熱水の安定性などの特性が向上する。活性成分の粒径が0.5〜20nmの時、そして比表面積が300〜500m2/gの時、ディーゼル油やパラフィンを生成しやすい。
【0027】
3. 本発明において多孔質材料に閉じ込められたコバルト系ナノ触媒は、ゾルゲル法によってその場で合成される。よって、触媒の活性成分と担体として用いられる多孔質材料を同時に合成することができる。それにより、調整工程が単純になり、作業に都合がよく、工業生産に適応しやすい。
【0028】
本発明のこの新しい触媒は、マイクロカプセル反応器の触媒調整工程の利点と、多孔質材料によるナノ触媒の閉じ込めの利点を組み合わせたものである。それは、有機ゲルをテンプレート剤として用い、その表面に担体が生成する。この設計、調整されたコアシェル構造のコバルト系多孔質触媒は、高い活性をもち、メタンの選択性が低く、主な生成物がディーゼル油やパラフィンである。特許文献1と比較して、触媒中の活性成分が細孔をもつ担体に均一に分散し、高い材料活性、CO変換率、低いメタンの選択性を達成することができる。同時に、ほんの少量の貴金属助剤を添加することにより、高い触媒作用が認められ、それによって生成コストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、フィッシャー・トロプシュ合成の多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒の調整方法のフローチャートであり、本発明の一つの実施形態に従う。
【発明を実施するための形態】
【0030】
多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒は、テンプレート剤として有機ゲルを用いてゾルゲル法により調整される。この触媒は金属成分をコア、多孔質材料をシェルとして用いている。金属成分は、第一金属成分としてCo、第二金属成分としてCe、La、Zrのいずれか、第三金属成分としてPt、Ru、Rh、Reのいずれかで構成される。完成した触媒は、第一金属成分が10〜35質量%、第二金属成分が0.5〜10質量%、第三金属成分が0.02〜2質量%、残部は担体で構成される。この担体は多孔質材料であり、その成分はナノシリカまたはアルミナである。多孔質材料は球形の形状をしている。多孔質材料は細孔の大きさが1〜20nmで比表面積は300〜500m2/gである。活性成分の粒径は0.5〜20nmである。
【0031】
好適には、触媒の第一金属成分が15〜30質量%、第二金属成分が1〜5質量%、第三金属成分が0.05〜2質量%、そして残部は担体から構成される。
【0032】
好適には、主に軽質炭化水素でなる生成物を得るためには、担体は細孔径が1〜10nm、比表面積が300〜400m2/gの多孔質材料であり、活性成分の粒径は0.5〜5nmである。
【0033】
主に中間の蒸留物(C5―C18)を得るためには、担体は細孔径が10〜15nm、比表面積が400〜500m2/gの多孔質材料であり、活性成分の粒径は6〜15nmである。
【0034】
比較的高いC18+の含有量をもつ生成物を得るためには、担体は細孔径が10〜20nm、比表面積が400〜500m2/gの多孔質材料であり、活性成分の粒径は16〜20nmである。
【0035】
多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒の調整方法は、以下の工程から構成される。
【0036】
1)原料の選択:オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)または硝酸アルミニウム、第一金属成分Coを含む水溶性塩、第二金属成分を含む硝酸塩またはニトロシル硝酸塩、第三金属成分を含む硝酸塩またはニトロシル硝酸塩を選択し、それぞれ該当する成分の質量割合に従う。そして、ゲルテンプレート剤を供給する。
【0037】
2)ゲルテンプレート剤を極性溶媒に溶解させ第一の溶液とした後、一定温度にて金属塩を含む水溶液を前記第一の溶液に添加し、PH値を8〜10に調整するためにアンモニアを適量添加し、一定温度にて0.1〜3時間撹拌しそれを第二の溶液とする。
【0038】
3)TEOSまたは硝酸アルミニウムを前記第二の溶液に添加し、一定温度にて3〜24時間撹拌し続け、混合物を得る。
【0039】
4)90〜150℃で前記混合物をスプレー乾燥し、有機―無機ハイブリット材料の粉末を得る。
【0040】
5)スプレー乾燥後の前記粉末を、マッフル炉に移動させ、300〜750℃にて3〜12時間、粉末を焼成し、完成された触媒を得る。
【0041】
好適には、工程4において、ゾルゲルテンプレート法によって得られたゲルを110〜150℃でスプレー乾燥し有機―無機ハイブリット材料を得る。
【0042】
好適には、工程5において、スプレー乾燥された後の粉末はマッフル炉に移動され350〜700℃にて5〜10時間、焼成され、完成された触媒を得る。
【0043】
好適には、ゲルテンプレート剤はアミノ基を含有する直鎖状の両親媒性のポリマーである。
【0044】
好適には、水溶液の調整において、第一金属成分Coを含む水溶性塩は、硝酸コバルト、酢酸コバルト、炭酸コバルトである。第二金属成分を含む塩は硝酸塩である。第三金属成分を含む塩は硝酸塩である。
【0045】
さらに具体的に本発明を説明すると、本発明の主な内容は、図1と以下の実施例と組み合わせて説明できる。
【実施例1】
【0046】
ポリエチレンイミン(PEI)20gを集めて、80℃にて、100mlのエタノールに溶解させ、溶液を得た。その後、脱イオン水100mlに、硝酸コバルト六水和物93.8gと、硝酸ランタン六水和物39.1gと、硝酸プラチナ2.32gを添加し、撹拌し溶解させ、水溶液を得た。次にこの水溶液と溶液を均一に混合し、5mlのアンモニアを添加し、一定温度で2時間、撹拌し、反応溶液を得た。この反応溶液にTEOSを計算された量添加し、一晩室温にて撹拌し混合物を得た。その後、その混合物をスプレー乾燥して粉末を得た。この粉末をマッフル炉に移動し、温度がゆっくりと400℃に上がった後に6時間乾燥させ、それによって多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒を得た。このナノ触媒の成分は以下のとおりである。Co:La:Pt:SiO2=15:10:0.5:74.5。
【0047】
ナノ触媒の活性化は、加圧型固定床反応器で次のように行った。ナノ触媒を100g、反応器に置いた。還元ガスとして純粋なH2(純度>99.9%)を用い、体積速度は1000 h-1 に調整した。加熱速度は2℃/min、活性化温度は350℃、活性化圧力は0.5MPaに調整し、活性化時間は4時間だった。
【0048】
触媒反応は、スラリー床反応器にて、次のように行った。50gの活性化触媒を無水、無酸素状態でスラリー床反応器に移動した。ポリオレフィンを反応媒体として用いた。合成用ガスはH2:CO=1.5で取り込んだ。合成用ガスの流量は、体積速度を1000h-1に調整した。反応器の圧力は3.0MPaとなるように調整した。加熱プログラムは150℃までは3℃/minの速度で反応温度を上昇させ、その後220℃までは2℃/minの速度で上昇し、反応が行われるように設定した。生成物の選択性は質量%で次のようになった。C1, 6.1; C2-4, 7.3; C5-11, 32.2; C12-18, 29.5; C18+, 24.9。CO の変換率は81.5であった。
【実施例2】
【0049】
PEI20gを集めて、80℃にて、100mlのエタノールに溶解させ、溶液を得た。その後、脱イオン水100mlに、硝酸コバルト六水和物53.6gと、硝酸セリウム六水和物1.7gと、ニトロシル硝酸ルテニウム5.9gを添加し、撹拌し溶解させ、水溶液を得た。次にこの水溶液と溶液を均一に混合し、一定温度で2時間、撹拌し、反応溶液を得た。この反応溶液に硝酸アルミニウムを計算された量添加し、一晩室温にて撹拌し混合物を得た。その後、その混合物をスプレー乾燥して粉末を得た。この粉末をマッフル炉に移動し、温度がゆっくりと550℃に上がった後に3時間乾燥させ、それによって多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒を得た。このナノ触媒の成分は以下のとおりである。Co:Ce:Ru:Al2O2=10:0.5:1.5:88。
【0050】
ナノ触媒の活性化は、加圧型固定床反応器で次のように行った。ナノ触媒を100g、反応器に置いた。還元ガスとして純粋なH2(純度>99.9%)を用い、体積速度は1000 h-1 に調整した。加熱速度は2℃/min、活性化温度は350℃、活性化圧力は1.5MPaに調整し、活性化時間は4時間だった。
【0051】
触媒反応は、スラリー床反応器にて、次のように行った。50gの活性化触媒を無水、無酸素状態でスラリー床反応器に移動した。ポリオレフィンを反応媒体として用いた。合成用ガスはH2:CO=1.5で取り込んだ。合成用ガスの流量は、体積速度を1000h-1に調整した。反応器の圧力は3.0MPaとなるように調整した。加熱プログラムは150℃までは3℃/minの速度で反応温度を上昇させ、その後220℃までは2℃/minの速度で上昇し、反応が行われるように設定した。生成物の選択性は質量%で次のようになった。C1, 6.8; C2-4, 7.9; C5-11, 27.2; C12-18, 28.6; C18+, 29.5。COの変換率は 85.3であった。
【実施例3】
【0052】
PEI20gを集めて、80℃にて、100mlのエタノールに溶解させ、溶液を得た。その後、脱イオン水100mlに、硝酸コバルト六水和物53.6gと、硝酸セリウム六水和物1.7gと、ニトロシル硝酸ルテニウム5.9gを添加し、撹拌し溶解させ、水溶液を得た。次にこの水溶液と溶液を均一に混合し、一定温度で2時間、撹拌し、反応溶液を得た。この反応溶液にTEOSを計算された量添加し、一晩室温にて撹拌し混合物を得た。その後、その混合物をスプレー乾燥して粉末を得た。この粉末をマッフル炉に移動し、温度がゆっくりと450℃に上がった後に3時間乾燥させ、それによって多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒を得た。このナノ触媒の成分は以下のとおりである。Co:Ce:Ru:SiO2=10:0.5:1.5:88。
【0053】
ナノ触媒の活性化は、加圧型固定床反応器で次のように行った。ナノ触媒を100g、反応器に置いた。還元ガスとして純粋なH2(純度>99.9%)を用い、体積速度は1000 h-1 に調整した。加熱速度は2℃/min、活性化温度は350℃、活性化圧力は1.5MPaに調整し、活性化時間は4時間だった。
【0054】
触媒反応は、スラリー床反応器にて、次のように行った。50gの活性化触媒を無水、無酸素状態でスラリー床反応器に移動した。ポリオレフィンを反応媒体として用いた。合成用ガスはH2:CO=1.5で取り込んだ。合成用ガスの流量は、体積速度を1000h-1に調整した。反応器の圧力は3.0MPaとなるように調整した。加熱プログラムは150℃までは3℃/minの速度で反応温度を上昇させ、その後220℃までは2℃/minの速度で上昇し、反応が行われるように設定した。生成物の選択性は質量%で次のようになった。C1, 5.6; C2-4, 7.1; C5-11, 23.9; C12-18, 29.8; C18+, 33.6。COの変換率は76.3であった。
【実施例4】
【0055】
比較として、コバルト系フィッシャー・トロンプシュ合成触媒の調整方法がCN101698152Aに次のように開示された。
【0056】
Al2O3担体を適量マッフル炉に添加し、温度550℃にて4時間焼成した。結果として得たAl2O3担体を100g集めた。脱イオン水に、硝酸コバルト六水和物53.6gと、硝酸セリウム六水和物1.7gと、ニトロシル硝酸ルテニウム5.9gを添加し、撹拌し溶解させ、結果として得た溶液を110mlに希釈し、水溶液を得た。その後、フルポア浸漬法を用いて、上記水溶液を適量Al2O3担体に含浸させ、含浸触媒を得た。含浸触媒を80℃にて水槽で真空乾燥し、エージングのため24時間室温においた。その後エージングされた触媒をマッフル炉に移動し、温度がゆっくりと120℃に上がった後に6時間乾燥させ、温度が500℃まで上がった後に8時間焼成させ、触媒を得た。このナノ触媒の成分は以下のとおりである。Co:Ce:Ru:Al2O3=10:0.5:1.5:88。
【0057】
ナノ触媒の活性化は、加圧型固定床反応器で次のように行った。ナノ触媒を100g、反応器に置いた。還元ガスとして純粋なH2(純度>99.9%)を用い、体積速度は1000 h-1 に調整した。加熱速度は2℃/min、活性化温度は350℃、活性化圧力は1.5MPaに調整し、活性化時間は4時間だった。
【0058】
触媒反応は、スラリー床反応器にて、次のように行った。50gの活性化触媒を無水、無酸素状態でスラリー床反応器に移動した。ポリオレフィンを反応媒体として用いた。合成用ガスはH2:CO=1.5で取り込んだ。合成用ガスの流量は、体積速度が1000h-1となるように調整した。反応器の圧力は3.0MPaとなるように調整した。加熱プログラムは150℃までは3℃/minの速度で反応温度を上昇させ、その後220℃までは2℃/minの速度で上昇し、反応が行われるように設定した。生成物の選択性は質量%で次のようになった。C1, 9.3; C2-4, 9.1; C5-11, 27.8; C12-18, 21.2; C18+, 32.6。COの変換率は71.3であった。
【0059】
実施例1〜3によって、本発明の実施形態に従った方法で調整された触媒は比較的高い活性をもつことがわかる。合成ガスの体積速度が1000h-1の条件下では、Co量が10質量%だけであっても、COの転換率は80質量%を超え、フィッシャー・トロプシュ合成の金属成分の効果が明らかであった。上記の実施例においては、メタンは比較的低い選択性をもち、C5+は良い選択性をもった。実施例2と実施例4を比較すると、実施例2で調整された触媒は低い生産コストで、メタンの選択性が低く、C5+の選択性は良く、特にC12+の選択性はさらに有益である。
【実施例5】
【0060】
本発明の実施形態に従い、多くの多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒を調整し、それらの触媒特性を表1に示した。
【実施例6】
【0061】
本発明の実施形態に従い、多くの多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒を調整し、それらの触媒特性を表1に示した。
【実施例7】
【0062】
本発明の実施形態に従い、多くの多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒を調整し、それらの触媒特性を表1に示した。
【実施例8】
【0063】
本発明の実施形態に従い、多くの多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒を調整し、それらの触媒特性を表1に示した。
【実施例9】
【0064】
本発明の実施形態に従い、多くの多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒を調整し、それらの触媒特性を表1に示した。
【実施例10】
【0065】
本発明の実施形態に従い、多くの多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒を調整し、それらの触媒特性を表1に示した。
【実施例11】
【0066】
本発明の実施形態に従い、多くの多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒を調整し、それらの触媒特性を表1に示した。
【実施例12】
【0067】
本発明の実施形態に従い、多くの多孔質材料閉じ込め系のコバルト系フィッシャー・トロプシュ合成ナノ触媒を調整し、それらの触媒特性を表1に示した。
【0068】
【表1】
図1