特許第5948077号(P5948077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948077
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】プランジャユニット、位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20160623BHJP
   F16B 2/16 20060101ALI20160623BHJP
   B23Q 3/18 20060101ALI20160623BHJP
【FI】
   F16C29/06
   F16B2/16 Z
   B23Q3/18 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-31955(P2012-31955)
(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公開番号】特開2013-167330(P2013-167330A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(74)【代理人】
【識別番号】100114720
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】望月 廣昭
(72)【発明者】
【氏名】柳原 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】栗林 宏臣
(72)【発明者】
【氏名】金子 彰斗
【審査官】 北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−137130(JP,A)
【文献】 特開2007−113630(JP,A)
【文献】 特開平09−303554(JP,A)
【文献】 特開2009−274434(JP,A)
【文献】 実開昭63−5405(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/00− 31/06
B23Q 5/34
B23Q 5/38
F16H 63/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動体と、
前記転動体を転がり運動自在に保持する転動体保持器と、
前記転動体保持器を直線方向で案内自在な直動案内部と、
前記転動体保持器に対して付勢力を及ぼすように取り付けられる弾性部材と、
を備えるプランジャユニットであって、
前記プランジャユニットは、当該プランジャユニットが設置される相手部材に固定設置されるとともに前記直動案内部が取り付けられる固定ブロックを備え、
前記直動案内部は、前記固定ブロックに対して取り付け固定される軌道レールと、前記軌道レールの長手方向に沿って転がり運動又は滑り運動自在に組み付けられるとともに前記転動体保持器が取り付け固定される移動ブロックと、から構成され、
前記弾性部材は、前記移動ブロックの移動方向と平行方向の付勢力を前記転動体保持器に対して及ぼすように取り付けられることを特徴とするプランジャユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のプランジャユニットにおいて、
前記転動体保持器は、前記弾性部材から及ぼされる付勢力の力方向に対して直交する方向に軸方向を向けて取り付けられる転動体回転軸を備え、当該転動体回転軸に対して前記転動体が回転運動自在に設置されていることを特徴とするプランジャユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のプランジャユニットにおいて、
前記転動体回転軸は、前記転動体保持器に対して複数設置されていることを特徴とするプランジャユニット。
【請求項4】
ベース部材と、
前記ベース部材に対して往復動自在に装着される移動テーブルと、
前記移動テーブルを前記ベース部材の複数の位置で位置決めする位置決め手段と、
を備える位置決め装置であって、
前記ベース部材には、
前記移動テーブルの移動方向に沿って設けられる軌道面と、
前記軌道面に形成された複数の位置決め溝と、が形成され、
前記位置決め手段は、
前記軌道面を転動するとともに前記位置決め溝に対して嵌挿・離脱自在とされる転動体と、
前記転動体を転がり運動自在に保持する転動体保持器と、
前記転動体保持器を直線方向で案内自在な直動案内部と、
前記転動体保持器に対して付勢力を及ぼすように取り付けられる弾性部材と、
前記移動テーブルに固定設置されるとともに前記直動案内部が取り付けられる固定ブロックと、
を備えるプランジャユニットとして構成され、
前記直動案内部は、前記移動テーブル又は前記移動テーブルとともに前記ベース部材に対して往復動自在とされる前記固定ブロックに対して取り付け固定される軌道レールと、前記軌道レールの長手方向に沿って転がり運動又は滑り運動自在に組み付けられるとともに前記転動体保持器が取り付け固定される移動ブロックと、から構成され、
前記弾性部材は、前記移動ブロックの移動方向と平行方向の付勢力を前記転動体保持器に対して及ぼすように取り付けられることを特徴とする位置決め装置。
【請求項5】
請求項4に記載の位置決め装置において、
前記位置決め溝には、少なくとも前記転動体が嵌挿・離脱する側の縁部が傾斜面を有して形成されていることを特徴とする位置決め装置。
【請求項6】
請求項5に記載の位置決め装置において、
前記傾斜面は、複数の傾斜角度又は曲率を有する面を組み合わせて形成されていることを特徴とする位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャユニット及び位置決め装置に係り、特に、位置決め性能に優れるとともに従来にはない形態を有するプランジャユニット及び位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの位置決めや押し出しを行う部品として、ボールプランジャやインデックスプランジャなどといったプランジャユニットが知られている。従来のプランジャユニットは、例えば下記特許文献1に開示のように、ボールと、ボールの直径より小さい直径を有する円柱孔からなるボール受部と、スプリングとから構成され、ボール受部の上端縁に配置されたボールがスプリングによって直接圧接された形態を有するものであった。そして、使用目的によってバネ荷重や円柱孔の孔径などを選定することで、位置決め力や押し出し力を調整することができ、また、装着された各種の機械装置において、スライド冶具の固定などといった機能を発揮するものであった。なお、ワーク等をある位置に位置決めする力については、「保持力」と称することが通常であるため、以下、この用語を用いることとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−41213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上掲した特許文献1に代表される従来のプランジャユニットは、ボールとスプリングとを直接接触させるものであるため、ボールとスプリングとの間は滑り接触となり、また、スプリングとこれを案内する案内面との滑り接触や、スプリングの曲がり変形によって、保持力の変動率が大きいものであった。したがって、例えばボールが長距離を転動して位置決めされるような形式のプランジャユニットの場合には、保持力のばらつきが発生してスムーズな動作が阻害されるといった課題が存在していた。
【0005】
ところで、転がり案内は、滑り案内に比して摩擦係数が一桁ほど小さいことが従来から知られている。そこで、発明者らは、転がり案内などのように、滑り案内に比して摺動抵抗の変動率が小さい機構をプランジャユニットに採用することができれば、保持力のばらつきの少ないスムーズな動作が可能なプランジャユニットを提供することが可能であることを着想した。
【0006】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題と、かかる課題を解決するために発明者らが得た着想に基づき成されたものであって、その目的は、保持力のばらつきを極小化することでスムーズな動作を行うことができるとともに高い位置決め性能を有する従来にはないプランジャユニットと、このようなプランジャユニットを備える位置決め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプランジャユニットは、転動体と、前記転動体を転がり運動自在に保持する転動体保持器と、前記転動体保持器を直線方向で案内自在な直動案内部と、前記転動体保持器に対して付勢力を及ぼすように取り付けられる弾性部材と、を備えるプランジャユニットであって、前記プランジャユニットは、当該プランジャユニットが設置される相手部材に固定設置されるとともに前記直動案内部が取り付けられる固定ブロックを備え、前記直動案内部は、前記固定ブロックに対して取り付け固定される軌道レールと、前記軌道レールの長手方向に沿って転がり運動又は滑り運動自在に組み付けられるとともに前記転動体保持器が取り付け固定される移動ブロックと、から構成され、前記弾性部材は、前記移動ブロックの移動方向と平行方向の付勢力を前記転動体保持器に対して及ぼすように取り付けられることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る位置決め装置は、ベース部材と、前記ベース部材に対して往復動自在に装着される移動テーブルと、前記移動テーブルを前記ベース部材の複数の位置で位置決めする位置決め手段と、を備える位置決め装置であって、前記ベース部材には、前記移動テーブルの移動方向に沿って設けられる軌道面と、前記軌道面に形成された複数の位置決め溝と、が形成され、前記位置決め手段は、前記軌道面を転動するとともに前記位置決め溝に対して嵌挿・離脱自在とされる転動体と、前記転動体を転がり運動自在に保持する転動体保持器と、前記転動体保持器を直線方向で案内自在な直動案内部と、前記転動体保持器に対して付勢力を及ぼすように取り付けられる弾性部材と、前記移動テーブルに固定設置されるとともに前記直動案内部が取り付けられる固定ブロックと、を備えるプランジャユニットとして構成され、前記直動案内部は、前記移動テーブル又は前記移動テーブルとともに前記ベース部材に対して往復動自在とされる前記固定ブロックに対して取り付け固定される軌道レールと、前記軌道レールの長手方向に沿って転がり運動又は滑り運動自在に組み付けられるとともに前記転動体保持器が取り付け固定される移動ブロックと、から構成され、前記弾性部材は、前記移動ブロックの移動方向と平行方向の付勢力を前記転動体保持器に対して及ぼすように取り付けられることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保持力のばらつきを極小化することでスムーズな動作を行うことができるとともに高い位置決め性能を有する従来にはないプランジャユニットと、このようなプランジャユニットを備える位置決め装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るプランジャユニットの一形態例を示す図であり、特に、全体構成を示す外観斜視図である。
図2】本実施形態に係るプランジャユニットの一形態例を示す図であり、特に、構成部材を分解して示した部品展開図である。
図3】本実施形態に係るプランジャユニットの動作を説明するための模式図である。
図4】本実施形態に係る位置決め装置の全体構成を示した外観斜視図である。
図5】本実施形態に係る位置決め装置の上面を示す図である。
図6図5中のA−A断面を示す縦断面側面図である。
図7図5中のB−B断面を示す部分縦断面背面図である。
図8】本実施形態に係る位置決め装置が有するベース部材等を示す外観斜視図である。
図9図8中の符号Cで示された箇所の拡大図である。
図10】本実施形態に係る位置決め装置が、菓子切断機に用いられる切断刃の清掃装置として用いられる場合を例示した概略図であり、特に、上面視を示している。
図11】本実施形態に係る位置決め装置が、菓子切断機に用いられる切断刃の清掃装置として用いられる場合を例示した概略図であり、特に、側面視を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1及び図2は、本実施形態に係るプランジャユニットの一形態例を示す図であり、特に、図1が全体構成を示す外観斜視図であり、図2が構成部材を分解して示した部品展開図である。また、図3は、本実施形態に係るプランジャユニットの動作を説明するための模式図である。
【0013】
本実施形態に係るプランジャユニット10は、本体基板11と、この本体基板11に固定設置される固定ブロック12と、固定ブロック12に取り付けられる本発明に係る直動案内部としての2つのLMガイド13,13と、2つのLMガイド13,13に取り付けられる転動体保持器14と、転動体保持器14に対して転がり運動自在に保持される本発明に係る転動体としての2つのローラ15,15と、転動体保持器14に対して付勢力を及ぼすように取り付けられる本発明に係る弾性部材としての2つの圧縮コイルバネ16,16と、2つの圧縮コイルバネ16,16を収納設置するバネケース17と、を有して構成されている。
【0014】
本体基板11は、プランジャユニットが設置される相手部材に対して取り付け固定される部材である。本実施形態では、平板形をした板状部材として構成されているが、本発明に係る本体基板の形状についてはどの様なものであってもよい。また、本体基板11には、その下面側に固定ブロック12が固定設置されており、本体基板11と固定ブロック12とは、一体の部材として構成されている。
【0015】
本実施形態に係る固定ブロック12は、2つのLMガイド13,13を取り付けるための部材である。すなわち、固定ブロック12の一方側(図1及び図2における紙面左側)の側面は、LMガイド13を構成する軌道レール13aを鉛直方向で設置可能なように、水平面として形成されている。
【0016】
本実施形態に係るLMガイド13は、軌道レール13aと、軌道レール13aの長手方向に沿って転がり運動自在に組み付けられる移動ブロック13bとから構成される部材である。このLMガイド13に関する具体的な構成は、公知の技術であるので詳細な説明は省略するが、移動ブロック13bは、移動ブロック13b内を無限に循環するボール列あるいはローラ列を介して軌道レール13aに対して組み付けられており、軌道レール13aの長手方向に沿った移動ブロック13bの往復直線運動が可能となった部材である。そして、上述したように、LMガイド13を構成する軌道レール13aは、固定ブロック12の鉛直方向の水平面に対して固定設置されている。一方、LMガイド13を構成する移動ブロック13bには、後述する転動体保持器14が固定設置されている。したがって、移動ブロック13bに固定設置された転動体保持器14は、固定ブロック12に対して鉛直方向で上下動可能な状態とされている。
【0017】
本実施形態に係る転動体保持器14は、転がり運動自在な状態で2つのローラ15,15が固定保持されている。すなわち、この転動体保持器14には、LMガイド13によって案内される方向(なお、この方向は、後述する2つの圧縮コイルバネ16,16から及ぼされる付勢力の力方向と同じ方向である)に対して直交する方向に軸方向を向けて取り付けられる2本の転動体回転軸14a,14aが設置されており、これら2本の転動体回転軸14a,14aに対して回転運動自在な状態で2つのローラ15,15が固定保持されている。
【0018】
また、本実施形態に係る転動体保持器14の上面側には、2つの圧縮コイルバネ16,16が配置されている。これら2つの圧縮コイルバネ16,16は、その上面側が本体基板11に取り付けられたバネケース17内に収納されており、このバネケース17によって、圧縮コイルバネ16の上面側の位置決めがなされている。また、本体基板11には、2つの圧縮コイルバネ16,16を導通させるための開口孔11a,11aが形成されているので、2つの圧縮コイルバネ16,16の下面側は、転動体保持器14の上面側に当接するように形成されている。つまり、2つの圧縮コイルバネ16,16によって及ぼされる移動ブロック13bの移動方向と平行方向の付勢力は、転動体保持器14と2つのローラ15,15を常に鉛直下方向に向けて押圧するように作用することとなる。
【0019】
そして、プランジャユニット10を構成する上記の各部材のうち、2つの圧縮コイルバネ16,16を除く部材については、それぞれがボルト等の締結手段19によって結合されている。
【0020】
なお、本実施形態では、転動体保持器14に加わる力のバランス等を考慮して、転動体保持器14に対して2つのローラ15,15が固定保持されている場合を例示したが、転動体であるローラの設置個数については、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0021】
以上、本実施形態に係るプランジャユニット10が取り得る具体的な構成部材例を説明した。次に、図3を用いて、本実施形態に係るプランジャユニット10の動作例について説明する。
【0022】
図3で示す本実施形態に係るプランジャユニット10は、固定ブロック12の側が、プランジャユニット10が設置される相手部材(不図示)に対して取り付け固定された状態を示してあり、不図示の相手部材を係止部材20に対して位置決めすることを想定したものである。すなわち、本実施形態に係るプランジャユニット10は、係止部材20に形成された位置決め溝21に対してローラ15が嵌挿されることで係止部材20に対するプランジャユニット10(及び不図示の相手部材)の位置決めが行われ、ローラ15が位置決め溝21から離脱することで係止部材20に対するプランジャユニット10(及び不図示の相手部材)の位置移動の自由状態が実現するように構成されている。
【0023】
まず、図3の実線で示すように、係止部材20に対するプランジャユニット10(及び不図示の相手部材)の位置移動が自由な状態のときには、ローラ15は係止部材20の表面を転動自在な状態とされている。このとき、ローラ15には、転動体保持器14を介して2つの圧縮コイルバネ16,16からの付勢力が鉛直下方向に向けて常時加わっている。
【0024】
上記の状態からプランジャユニット10(及び不図示の相手部材)を図3における紙面左方向に移動させると、プランジャユニット10が有するローラ15は、圧縮コイルバネ16からの付勢力を受けることで係止部材20に形成された位置決め溝21に対して符号15→15α→15βで示す順番にて徐々に落ち込み、最終的に符号15γで示すように完全に位置決め溝21に嵌挿された状態となる。このように、ローラ15が符号15→15α→15β→15γで示す順に位置決め溝21に落ち込む際には、LMガイド13を構成する移動ブロック13bが転動体保持器14とローラ15を鉛直下方向に向けて案内することとなるが、プランジャユニット10における移動要素については、すべてがLMガイド13及びローラ15という転がり案内を受ける部材で構成されているので、摺動抵抗の変動率が非常に小さく、保持力のばらつきの少ないスムーズな動作が可能となっている。
【0025】
また、図3で例示するように、位置決め溝21については、複数の傾斜角度又は曲率を有する面を組み合わせて形成した傾斜面の集合体として構成することも可能である。なお、図3では、3つの傾斜角度の面を組み合わせることで、傾斜面が形成されている。そして、ローラ15は、例えば符号15βで示す位置にまで侵入すると、その後は傾斜面の作用によって自動的に位置決め溝21に対して嵌挿されることとなる。つまり、本実施形態に係るプランジャユニット10によれば、少ない外力によってプランジャユニット10(及び不図示の相手部材)の位置決めが可能となる。また、位置決め溝21を形成する傾斜面の形状選択によって、ローラ15が位置決め溝21に対して落ち込んだり離脱したりする際の速度を制御することが可能となる。例えば、位置決め溝21を形成する傾斜面の角度を、位置決め溝21の外側に向かうに従って緩い角度とすることで、ローラ15は初速が小さく、徐々に速度を増して位置決め溝21に嵌挿されることになるので、例えばローラ15が位置決め溝21に嵌挿される際の振動や騒音を低下させることが可能となる。
【0026】
なお、符号15γで示すようなローラ15が位置決め溝21に完全に嵌挿された状態から、プランジャユニット10(及び不図示の相手部材)に対して外力が加わった場合、この外力の鉛直上方向の分力が圧縮コイルバネ16からの鉛直下方向の付勢力に勝ると、ローラ15は位置決め溝21から離脱し、係止部材20に対するプランジャユニット10(及び不図示の相手部材)の自由状態が回復されることとなる。
【0027】
以上、図1図3を用いて、本実施形態に係るプランジャユニット10の具体的な構成例とその動作について説明を行った。次に、本実施形態に係るプランジャユニット10を利用した位置決め装置の構成例を説明する。なお、本実施形態に係る位置決め装置30は、上述した本実施形態に係るプランジャユニット10をそのまま組み込んだものであるので、上述したプランジャユニット10と同一又は類似の部材については、同一符号を付して説明を省略する場合がある。
【0028】
図4は、本実施形態に係る位置決め装置の全体構成を示した外観斜視図である。また、図5は、本実施形態に係る位置決め装置の上面を示す図である。さらに、図6は、図5中のA−A断面を示す縦断面側面図であり、図7は、図5中のB−B断面を示す部分縦断面背面図である。またさらに、図8は、本実施形態に係る位置決め装置が有するベース部材等を示す外観斜視図であり、さらにまた、図9は、図8中の符号Cで示された箇所の拡大図である。
【0029】
本実施形態に係る位置決め装置30は、図4にて示すように、ベース部材31と、ベース部材31に対して往復動自在に装着される移動テーブルとしての本体基板11と、を有して構成されている。ベース部材31と本体基板11との間には、一対のLMガイド32,32が設置されており、LMガイド32を構成する軌道レール32aがベース部材31に対して固定設置される一方、LMガイド32を構成する移動ブロック32bが本体基板11に対して固定設置されている。つまり、本発明に係る移動テーブルとしての本体基板11は、一対のLMガイド32,32の作用によって、軌道レール32aの長手方向に沿った方向でベース部材31に対して往復直線移動が可能となっている。
【0030】
なお、本発明に係る移動テーブルとしての本体基板11は、上述した本実施形態に係るプランジャユニット10を構成する本体基板11と同一の部材である。したがって、本実施形態に係る位置決め装置30では、図5における紙面左側の位置にプランジャユニット10が配置された構成が採用されている。
【0031】
すなわち、図6及び図7を参照して本実施形態に係る位置決め装置30に組み込まれたプランジャユニット10の概略構成を説明すると、このプランジャユニット10は、ベース部材31に対して往復動自在に装着される本体基板11と、この本体基板11に固定設置される固定ブロック12を有している。この固定ブロック12には、2つのLMガイド13,13が鉛直方向にその案内方向を向けて取り付けられており、さらに、2つのLMガイド13,13に取り付けられた転動体保持器14を、固定ブロック12に対して鉛直方向で上下移動できるように構成されている。また、転動体保持器14に対しては、2本の転動体回転軸14a,14aが設置されており、これら2本の転動体回転軸14a,14aに対して回転運動自在な状態で2つのローラ15,15が固定保持されている。さらに、転動体保持器14の上面側には、2つの圧縮コイルバネ16,16が配置されており、これら2つの圧縮コイルバネ16,16は、その上面側が本体基板11に取り付けられたバネケース17内に収納される一方、2つの圧縮コイルバネ16,16の下面側は、転動体保持器14の上面側に当接するように形成されている。したがって、2つの圧縮コイルバネ16,16によって及ぼされる移動ブロック13bの移動方向と平行方向の付勢力は、転動体保持器14と2つのローラ15,15を常に鉛直下方向に向けて押圧するように作用している。
【0032】
なお、図7に示されるように、2つのローラ15,15のそれぞれの前後には、転動体であるローラ15,15の周囲環境を整えるためのブラシ18が設置されている(ただし、図7では、紙面上側の断面で示された箇所に位置するローラ15については紙面奥側のブラシ18のみが、紙面下側の背面外観が示された箇所に位置するローラ15については紙面手前側のブラシ18のみが描かれている)。かかるブラシ18の作用によって、転動体であるローラ15,15の周囲環境は常に整えられるので、例えばローラ15と後述する軌道面35との間に異物が噛み込んで不具合が生じることを防止することが出来ている。
【0033】
一方、本実施形態に係るベース部材31は、図8に示すように、本発明に係る移動テーブルである本体基板11の移動方向に沿って設けられる軌道面35,35と、軌道面35,35に形成された複数の位置決め溝36とが形成される部材である。
【0034】
ベース部材31に形成された軌道面35,35は、上述したプランジャユニット10が有する2つのローラ15,15が転がり運動するために設けられた水平面であり、ローラ15からの繰り返しの転がり抵抗や摺動抵抗を受けることから、例えば、焼入れ処理を施すなどして表面硬度を高めておくことが好ましい。
【0035】
また、軌道面35,35の所定位置に形成された複数の位置決め溝36は、本体基板11を含むプランジャユニット10の停止位置を考慮して設けられる形状である。特に、本実施形態に係る位置決め溝36では、ローラ15が嵌挿・離脱する側の縁部が、複数の傾斜角度を有する面を組み合わせて形成された傾斜面として形成されている。すなわち、図8にて示すように、一の軌道面35に設けられた2つの位置決め溝36の内側に位置する側の縁部に対して傾斜面が設けられており、この傾斜面は、図9にて示すように、外側に位置する傾斜面36aは傾斜角度が小さく形成されるとともに、内側に位置する傾斜面36bは外側に位置する傾斜面36aよりも傾斜角度が大きくなるように形成されている。したがって、位置決め溝36に嵌り込むローラ15は、外側に位置する傾斜面36aの作用によって嵌り込みの初期には低速で溝に落ち込むとともに、内側に位置する傾斜面36bの作用によって速やかにローラ15は位置決め溝36へと導入されるので、プランジャユニット10のスムーズで静音な位置決めが実現可能となっている。さらに、ローラ15が外側に位置する傾斜角度の小さい傾斜面36aに到達すると、その後は傾斜面の作用によって外力無しでも自動的にローラ15は位置決め溝36へと嵌挿されるので、少ない外力による、あるいは、傾斜面の作用に基づき外力無しでもプランジャユニット10のスムーズな位置決めが実現可能となっている。
【0036】
以上、移動テーブルとしての本体基板11をベース部材31の複数の位置で位置決めする位置決め手段としてのプランジャユニット10と、このプランジャユニット10を備える位置決め装置30の具体的な構成例と動作を説明した。次に、本実施形態に係る位置決め装置30の具体的な使用例を、図10及び図11を用いて説明する。ここで、図10及び図11は、本実施形態に係る位置決め装置が、菓子切断機に用いられる切断刃の清掃装置として用いられる場合を例示した概略図であり、特に、図10が上面視を示し、図11が側面視を示している。
【0037】
図10及び図11で示す菓子切断機40は、図10における紙面左側から紙面右側に向けて搬送されるとともに、切断位置で図10における紙面上側から紙面下側に向けて搬送されてくる菓子41を、図10における実線の位置で切断刃42によって切断するための装置である。切断刃42には、不図示の駆動源が接続されており、切断刃42の回転駆動が可能となっている。また、切断刃42は、図10における実線の位置から破線の位置にまで、すなわち、図10における紙面左右方向に位置移動が可能となっており、これらの位置移動は、例えばあらかじめ設定されたプログラム指令信号に応じて動作可能となっている。
【0038】
一方、本実施形態に係る位置決め装置30は、移動テーブルとしての本体基板11の上面に設置された従動アーム51を介して切断刃42と関係している。すなわち、従動アーム51の先端には回転体52が設置されており、切断刃42が図10における紙面左右方向へ移動すると、この回転体52が切断刃42の固定ベースに接触して紙面左右方向への移動力を受けるので、この移動力が従動アーム51を介して本体基板11に伝達される。すると、ローラ15が位置決め溝36に対して嵌挿されることで位置決めされていた本体基板11は、切断刃42の移動という外力を受けることで位置決め溝36からローラ15が離脱し、位置決め状態が解除されることとなる。
【0039】
また、切断刃42からの外力を受けた本体基板11が移動を続けると、ローラ15は別の位置決め溝36へと移動して嵌挿されることになるので、図10の実線で示される位置とは別の位置で位置決めされることとなる。例えば、切断刃42が破線で描かれた位置に移動すると、従動アーム51を介して切断刃42と関係している本体基板11もこの位置に移動する。そして、例えば切断刃42が破線で描かれた位置を清掃位置と設定しておき、かかる位置に本体基板11が移動した場合には、従動アーム51とともに本体基板11の上面に設置された清掃アーム43が図10における紙面上方に向けて移動し、切断刃42の清掃を行うようにしておけばよい。このように、菓子切断機40に対して本実施形態に係る位置決め装置30を適用することで、所望の位置で清掃アーム43を動作させることができるので、常に切断刃42を清潔な状態に維持することが可能となる。また、本実施形態に係る位置決め装置30によれば、外力を制御したり計測したりする必要がない。すなわち、ベース部材31に形成された位置決め溝36の作用によって、外力を受けた本体基板11は精度よく位置決めされるので、相手部材の位置を計測したり、位置決め精度を向上させるための特別な機器を設けたりする必要がない。したがって、本実施形態に係る位置決め装置30によれば、安価で精度が良く、安定した保持力を有する位置決め装置を実現することが可能である。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0041】
例えば、上述した本実施形態では、プランジャユニット10が有する移動要素のすべてをLMガイド13及びローラ15という転がり案内を受ける部材で構成していた。ただし、ローラ15を用いたことで、本発明に係るプランジャユニットは、従来技術に比べて摺動抵抗の変動率が非常に小さく、保持力のばらつきの少ないスムーズな動作が可能となっている。したがって、例えばLMガイド13の設置箇所は、滑り案内機構に変更することが可能である。
【0042】
また、上述した本実施形態では、ベース部材31に対する位置決め溝36の形成個数を4溝、すなわち、位置決めの箇所を2箇所としていたが、本発明に係る位置決め溝の形成数については、任意に選択することが可能である。
【0043】
さらに、上述した本実施形態に係る位置決め装置30では、ローラ15の周囲環境を整えるためにブラシ18を設置した場合の形態例を示したが、同様の作用効果を得られるものであれば、ブラシ18以外の環境整備手段を設置してもよい。例えば、エアーを吹き付けるような構成を採用してもよいし、板状のカーテンを設置するようにしてもよい。
【0044】
またさらに、上述した本実施形態で示した装置形態は、本発明が取り得るものの一例であり、上述した実施形態と同様の構成及び作用効果を発揮できる範囲において、適宜設計変更が可能である。特に、図10及び図11で示した用途例については、本発明が適用可能な多様な用途例のうちの一例を示したにすぎず、本発明が菓子切断機の技術分野のみに用いられることを限定したものではない。本発明に係るプランジャユニット及び位置決め装置は、あらゆる産業分野において適用が可能である。
【0045】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0046】
10 プランジャユニット、11 本体基板、11a 開口孔、12 固定ブロック、13 LMガイド、13a 軌道レール、13b 移動ブロック、14 転動体保持器、14a 転動体回転軸、15 ローラ、16 圧縮コイルバネ、17 バネケース、18 ブラシ、19 締結手段、20 係止部材、21 位置決め溝、30 位置決め装置、31 ベース部材、32 LMガイド、32a 軌道レール、32b 移動ブロック、35 軌道面、36 位置決め溝、36a 外側に位置する傾斜面、36b 内側に位置する傾斜面、40 菓子切断機、41 菓子、42 切断刃、43 清掃アーム、51 従動アーム、52 回転体。
図1
図2
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図4
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図11