特許第5948086号(P5948086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5948086
(24)【登録日】2016年6月10日
(45)【発行日】2016年7月6日
(54)【発明の名称】杭打ち方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/06 20060101AFI20160623BHJP
【FI】
   E02D7/06
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-42021(P2012-42021)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-177765(P2013-177765A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(73)【特許権者】
【識別番号】505382135
【氏名又は名称】ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514013945
【氏名又は名称】福美建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡人
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−025739(JP,A)
【文献】 実開昭56−154435(JP,U)
【文献】 実開昭55−088442(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/127492(WO,A1)
【文献】 特開平09−328751(JP,A)
【文献】 実開昭60−025907(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行台車と、該走行台車上に旋回可能に設けられた旋回台と、該旋回台上に設けられたキャビンおよびブームと、該ブーム先端に枢支されたアームとを備え、前記ブームおよびアームが油圧機構によって起伏可能とされている建設車両を用い、
前記建設車両のアームの先端に油圧ブレーカを取付け、該油圧ブレーカに自身の軸部先端に球体部を有する圧入用チゼルを装着し、該圧入用チゼル軸部の所定角度の傾動を許容するとともに前記球体部の滑動を許容するように前記球体部を囲繞する打撃ヘッドを装着し、該打撃ヘッドの先端部に圧入する杭の上端部を軸方向に沿って着脱可能に嵌合させて支持するとともに、前記打撃ヘッドの所定角度の傾動姿勢を前記建設車両のブームおよびアームのリンクモーションに追従させつつ前記杭を地中に圧入することを特徴とする杭打ち方法。
【請求項2】
前記キャビンから重力方向を視認可能なように前記油圧ブレーカまたは前記打撃ヘッドから重錘を垂下することを特徴とする請求項1に記載の杭打ち方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭(支柱を含む)を地中に圧入(打設)するための杭打ち方法に係り、特に、太陽電池パネルを設置するための支柱の圧入に好適な杭打ち方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭を地中に圧入する杭打ち方法に係る技術としては、例えば特許文献1記載のものが開示されている。
同文献に開示される杭打ち装置は、油圧ショベルを改造した専用機とされている。つまり、油圧ショベルの車体下部からアームを車体前方に向けて設け、このアームと、上方を向くブームとによって長尺なリーダーマストを上下に向けて傾動可能に支持する構成としている。リーダーマストには、油圧ブレーカがリーダーマストに沿って滑動可能な架台を介して取付けられている。油圧ブレーカは、ワイヤロープによってリーダーマスト上端から吊り下げられている。そして、油圧ブレーカは、ワイヤロープの他端をウインチで巻上げ・巻下げすることによってリーダーマストに沿って滑動するようになっている。油圧ブレーカは打撃機構を内蔵しており、油圧ブレーカの先端に「杭」の上端部を装着し、その上端部を油圧ブレーカで打撃することにより、「杭」を地中に圧入可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−3920号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の杭打ち装置は、上述のアーム、リーダーマスト、架台およびウインチ等を、油圧ショベルを改造して備える専用機とされているので、設備コストが嵩むという問題がある。また、圧入可能な杭の長さは、リーダーマスト上の架台の滑動範囲よりも長くできない。また、リーダーマストは一定の範囲で傾動可能なものの、上記アームとブームとによって上下で支持されるため、傾動範囲の制限も大きい。つまり、圧入可能な杭の長さが架台の滑動範囲によって制限される上、圧入時の杭の姿勢も傾動範囲によって制限されるという問題がある。
【0005】
さらに、油圧ブレーカがワイヤロープによってリーダーマスト上端から吊り下げられていることから、杭を地中に圧入する力は、杭および油圧ブレーカの自重と油圧ブレーカの打撃力のみとなる。そのため、圧入速度が遅くなり、作業効率を向上させる上で未だ改善の余地がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、設備コストを比較的に抑制しつつ、圧入可能な杭の長さの制限や圧入時の杭の姿勢の制限が比較的に緩やかであり、作業効率を比較的に向上させ得る杭打ち方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る杭打ち方法は、走行台車と、該走行台車上に旋回可能に設けられた旋回台と、該旋回台上に設けられたキャビンおよびブームと、該ブーム先端に枢支されたアームとを備え、前記ブームおよびアームが油圧機構によって起伏可能とされている建設車両を用い、前記建設車両のアームの先端に油圧ブレーカを取付け、該油圧ブレーカに自身の軸部先端に球体部を有する圧入用チゼルを装着し、該圧入用チゼル軸部の所定角度の傾動を許容するとともに前記球体部の滑動を許容するように前記球体部を囲繞する打撃ヘッドを装着し、該打撃ヘッドの先端部に圧入する杭の上端部を軸方向に沿って着脱可能に嵌合させて支持するとともに、前記打撃ヘッドの所定角度の傾動姿勢を前記建設車両のブームおよびアームのリンクモーションに追従させつつ前記杭を地中に圧入することを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る杭打ち方法によれば、建設車両を用い、その建設車両のアームの先端に油圧ブレーカが取付けられ、その油圧ブレーカの圧入用チゼルに伝えられた打撃力が打撃ヘッドを介して圧入する杭の上端部に伝えられるので、油圧ブレーカの打撃力によって杭を地中に圧入することができる。
そして、本発明の一態様に係る杭打ち方法によれば、油圧ブレーカの通常のチゼル(打撃用のロッド)に替えて上記圧入用チゼルを装着し、その圧入用チゼルの軸部先端の球体部に打撃ヘッドを装着するだけで杭打ち作業が可能となるので、例えば上述の特許文献1に記載されるように、専用機とされている杭打ち装置による杭打ち方法に比べ、設備コストを抑制することができ、また、段取り替えも容易である。
【0008】
また、本発明の一態様に係る杭打ち方法によれば、上述の特許文献1記載の杭打ち装置による杭打ち方法に比べ、傾動範囲の制限が大きいリーダーマストのような構成要素を用いておらず、建設車両のブームおよびアームのリンクモーションの範囲で自由に油圧ブレーカの姿勢を設定することができる。そのため、圧入可能な杭の長さの制限や圧入時の杭の姿勢の制限が比較的に緩やかである。
【0009】
なお、杭を地中に打ち込み始める状態では、建設車両のブームおよびアームのリンクモーションの関係から、油圧ブレーカのチゼルの角度が垂直方向から若干傾く場合もある。しかし、本発明の一態様に係る杭打ち方法によれば、圧入用チゼルは、自身の軸部先端に球体部を有し、打撃ヘッドは、圧入用チゼル軸部の所定角度の傾動を許容するとともに球体部の滑動を許容するように球体部を囲繞するので、打撃ヘッド先端部に支持する杭を、所定角度の傾動範囲内で建設車両のブームおよびアームのリンクモーションに追従させて、垂直方向に補正しつつ支持することができる。なお、杭が地中に圧入されていくうちに油圧ブレーカの圧入用チゼルの角度は上記リンクモーションの関係から垂直方向を容易に維持できるようになる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る杭打ち方法によれば、地盤が締まっていて杭を地中に圧入し難い場合や圧入速度を高めたい場合には、油圧ブレーカの打撃力に加えて、建設車両のブームおよびアームを操作して、ブームおよびアーム自体によって油圧ブレーカを下方へと押し付けることができる。そのため、上述の特許文献1記載の杭打ち装置による杭打ち方法に比べ、打撃の反力を押さえ込むことにより、杭の圧入速度を高め、作業効率を向上させることができる。
【0011】
ここで、本発明の一態様に係る杭打ち方法において、前記キャビンから重力方向を視認可能なように前記油圧ブレーカまたは前記打撃ヘッドから重錘を垂下することは好ましい。この重錘としては、例えばワイヤの先端に分銅を取付けたものとしてもよいし、鎖自体を重錘として油圧ブレーカまたは打撃ヘッドに垂下させてもよい。このような重錘を垂下すれば、杭が垂直に圧入されているか否かをキャビンから容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0012】
上述のように、本発明によれば、設備コストを比較的に抑制しつつ、圧入可能な杭の長さの制限や圧入時の杭の姿勢の制限が比較的に緩やかであり、作業効率を比較的に向上させ得る杭打ち装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一態様に係る杭打ち方法を実施する杭打ち装置が装着された建設車両の一実施形態を説明する正面図であり、同図は建設車両のブームおよびアームのリンクモーションの範囲を併せて図示している。
図2】本発明の一態様に係る杭打ち方法を実施する杭打ち装置を構成する油圧ブレーカ(圧入用チゼルを装着した状態)の一実施形態を説明する図であり、同図(a)はその正面図、(b)は同図(a)の右側面図である。
図3】本発明の一態様に係る杭打ち方法を実施する杭打ち装置を構成する打撃ヘッドの一実施形態を説明する図であり、同図(a)は正面から見て軸方向に沿った断面を示す図、(b)は同図(a)のA矢視図である。
図4図3の打撃ヘッドに対応する杭の一例を説明する図であり、同図(a)は杭の一端の正面図、(b)は同図(a)のB矢視図である。
図5図1の建設車両に装着された杭打ち装置で図4の杭を地中に圧入する杭打ち方法の例(建設車両に最も近い位置で杭を圧入する例)を説明する図であり、同図(a)は圧入前の状態を示し、(b)は圧入後の状態を示している。
図6図1の建設車両に装着された杭打ち装置で図4の杭を地中に圧入する杭打ち方法の例(建設車両から最も遠い位置で杭を圧入する例)を説明する図であり、同図(a)は圧入前の状態を示し、(b)は圧入後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一態様に係る杭打ち方法を実施する杭打ち装置を備える建設車両の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この建設車両10は、下部に走行台車1を備え、走行台車1上には旋回台2が旋回可能に設けられている。旋回台2上には、オペレータの操作室であるキャビン3と、油圧機構であるブームシリンダ6によって起伏可能とされているブーム4とが設けられている。ブーム4の先端にはアーム5が枢支されており、アーム5は、油圧機構であるアームシリンダ7によって起伏可能とされている。
【0015】
ここで、この建設車両10には、杭打ち装置として油圧ブレーカ20がアーム5の先端に装着されている。油圧ブレーカ20は、ブラケット22の二箇所がアーム5先端とアーム5先端部のチルト機構8に対して枢支されており、チルト機構8の駆動により、所定の範囲で回動されるようになっている。このチルト機構による所定の範囲で回動構造については、通常の建設車両の装備をそのまま用いている。
【0016】
油圧ブレーカ20には、図1(および図2)に示すように、圧入用チゼル24が油圧ブレーカ20の打撃機構によって打撃可能に装着されている。この圧入用チゼル24は、自身の軸部先端に球体部26を有する。なお、油圧ブレーカ20のブラケット22には、図1に示すように、キャビン3から重力方向を視認可能なように重錘として鎖40が垂下されている。そして、圧入用チゼル24の球体部26に、当該球体部26を囲繞するように打撃ヘッド30が装着されている。
【0017】
打撃ヘッド30は、図3に拡大図示するように、結合ボルト39によって上下に分割および組み合わせ可能な、上部ヘッド32および下部ヘッド36を有して構成されている。上部ヘッド32および下部ヘッド36は、円柱状(同図(b)参照)の鋼材からなり、相互の当接部30aは、インロー嵌合(この例では、上部ヘッド32側が凸、下部ヘッド36側が凹のインロー)とされている。
【0018】
上部ヘッド32には、テーパ穴33が設けられている。このテーパ穴33は、圧入用チゼル24側に拡径しており、挿通される圧入用チゼル24の軸部24aが所定角度の傾動(この例では、中心軸に対し軸回り全周に亘ってα=5°)を許容するように設けられている。そして、上部ヘッド32と下部ヘッド36の間には、凹球面部34,37が形成されている。上側の凹球面部34は上記テーパ穴33に連通しており、凹球面部34,37は、挿通される圧入用チゼル24の球体部26の滑動を許容するように球体部26を囲繞して収容するように、各ヘッド32,36の内部に形成されている。なお、凹球面部34,37の分割位置は、丁度、上部ヘッド32および下部ヘッド36の当接部30a(上記インロー嵌合の分割面の位置)とされ、球体部26の中心Oが、当接部30aの分割面上に位置している。このような構成により、圧入用チゼル24の軸部24a側から上部ヘッド32を挿通し、次いで、圧入用チゼル24の球体部26側から下部ヘッド36を上部ヘッド32の下面に対向させるようにして組み合わせ、上部ヘッド32および下部ヘッド36を複数の結合ボルト39で結合することにより、圧入用チゼル24が一体に結合された打撃ヘッド30を構成することができる。これにより、打撃ヘッド30は球体部26まわりに回動自在(圧入用チゼル24との干渉範囲を除く)とされている。
【0019】
ここで、本実施形態の例では、杭Kは、図4に示すように、中央のウェブ部Kaと、このウェブ部Kaの両端から同じ側に向けて直角な方向に延びる左右のフランジ部Kbと、各フランジ部Kbの先端から斜め外側に向けて張り出す左右の鍔部Kcとを有する横断面が略コ字状のアルミ合金製の形鋼である。なお、図4に示す端部は上端部であって、反対側の端部は切りっ放しとされている。また、杭Kは、全長が3mや3.6mなど複数の種類があり(質量は全長3.6mのもので40kg程度)、圧入(打設)する深さは約1.5mである。
【0020】
本実施形態の例では、上述の略コ字状の杭Kに整合させて、下部ヘッド36には、図3(b)に示すように、圧入する杭Kの上端部を杭Kの軸方向に沿って着脱可能に嵌合させて支持する略コ字状の凹部38が上部ヘッド32とは反対側の面(同図(a)の下側の面)に形成されている。凹部38は、平面視(A矢視(同図(b)))で略コ字状の凹部の左右の鍔部Kcの向きに対応する拡幅部分38aが鍔部Kcの端部側に向けて拡幅して形成され、また、正面視(同図(a))で、凹部38の入口の左右に、面取り38bを設けることで杭Kの挿抜が容易とされている。
【0021】
次に、上述の杭打ち装置による杭Kの杭打ち方法、および作用・効果について説明する。
上述の杭打ち装置を使用して杭打ちする際は、まず、準備として、圧入用チゼル24の軸部24a側から上部ヘッド32を挿通し、次いで、油圧ブレーカ20に圧入用チゼル24の軸部24aを装着する。次いで、圧入用チゼル24の球体部26側から下部ヘッド36を上部ヘッド32の下面に対向させるようにして組み合わせ、上部ヘッド32および下部ヘッド36を複数の結合ボルト39で結合して、油圧ブレーカ20が一体に結合された打撃ヘッド30を組み立てる。そして、建設車両10のアーム5の先端にその油圧ブレーカ20を取付けるだけでよい。
【0022】
すなわち、この杭打ち装置による杭打ち方法によれば、油圧ブレーカ20のチゼルを圧入用チゼル24に交換し、その圧入用チゼル24の軸部先端の球体部26に上部ヘッド32と下部ヘッド36を組み合わせた打撃ヘッド30を装着するだけで杭打ち作業が可能となるので、例えば上述の専用機とされている特許文献1記載の杭打ち装置による杭打ち方法に比べ、設備コストを抑制することができ、また、段取り替えも容易である。
【0023】
そして、この杭打ち装置で杭Kを圧入するときは、図5(a)ないし図6(a)に示すように、まず、圧入したい位置で杭Kを地面GL上に直立姿勢で支持する(この直立姿勢は、不図示の支持治具によって仮支え状態を維持する)。なお、上述の杭Kは、太陽電池パネルを設置するための支柱であって、この杭Kを所定深さまで複数本を圧入後、その上部に太陽電池パネルを装着するためのものである。
【0024】
次いで、その直立姿勢の杭Kの上端部に打撃ヘッド30の凹部38を嵌合させるように上方から杭打ち装置全体を地面GLに向けて押し付ける。このとき、建設車両10のブーム4およびアーム5のリンクモーションの範囲(図1参照)で自由に油圧ブレーカ20の姿勢を設定することができるので、杭Kの嵌合位置への杭打ち装置の誘導が容易である。また、凹部38には、上記面取り38bや拡幅部分38aが設けられているので、杭Kの嵌合位置への杭打ち装置の誘導がより容易である。
【0025】
このように、この杭打ち装置による杭打ち方法によれば、上述の特許文献1記載の杭打ち装置による杭打ち方法に比べ、傾動範囲の制限が大きいリーダーマストのような構成要素を用いておらず、建設車両10のブーム4およびアーム5のリンクモーションの範囲(図1参照)で自由に油圧ブレーカ20の姿勢を設定することができるので、圧入可能な杭Kの長さの制限や圧入時の杭Kの姿勢の制限が比較的に緩やかである。
【0026】
次いで、図5(b)ないし図6(b)に示すように、油圧ブレーカ20の打撃機構を作動させて杭Kを地中に圧入する。つまり、この杭打ち装置による杭打ち方法によれば、油圧ブレーカ20が建設車両10のアーム5の先端に取付けられ、圧入用チゼル24に伝えられた打撃力が打撃ヘッド30を介して圧入する杭Kの上端部に伝えられるので、油圧ブレーカ20の打撃力によって杭Kを地中に圧入することができる。
ここで、杭Kを地中に打ち込み始める状態では、圧入したい位置で杭Kを地面GL上に直立姿勢で支持したときに、建設車両10のブーム4およびアーム5のリンクモーションの関係から、図1に符号θで示すように、油圧ブレーカ20のチゼルの角度が垂直方向から若干傾く場合もある。
【0027】
しかし、この杭打ち装置による杭打ち方法によれば、圧入用チゼル24は自身の軸部先端に球体部26を有し、打撃ヘッド30は軸部が所定角度の傾動を許容するように挿通されるテーパ穴33と、該テーパ穴33に連通して球体部26を囲繞して滑動を許容するように収容する凹球面部34,37とを内部に有するので、打撃ヘッド30先端部の凹部38に支持する杭Kを、所定角度の傾動範囲内(この例では、中心軸に対し軸回り全周に亘ってα=5°(>θ))で垂直方向に補正して支持することができる。なお、杭Kが地中に圧入されていくうちに油圧ブレーカ20のチゼル24の角度は上記リンクモーションの関係から垂直方向を容易に維持できるようになる。
【0028】
また、この杭打ち装置による杭打ち方法によれば、走行台車1を固定したまま旋回台2の旋回機構を用いて複数箇所の杭打ち作業を行う場合、打撃ヘッド30が球体部26まわりに回動自在なので、杭(支柱)Kの向きを一方向に揃えることが容易にできる。
また、この杭打ち装置による杭打ち方法によれば、地盤が締まっていて杭Kが圧入し難い場合や圧入速度を高めたい場合には、油圧ブレーカ20の打撃力に加えて、建設車両10のブーム4およびアーム5を操作して、ブーム4およびアーム5自体によって油圧ブレーカ20を下方へと押し付けることができる(図5および図6参照)。そのため、上述の特許文献1記載の杭打ち装置による杭打ち方法に比べ、打撃の反力を押さえ込むことにより、杭Kの圧入速度を高め、作業効率を向上させることができる。
【0029】
また、この杭打ち装置による杭打ち方法によれば、油圧ブレーカ20に付設されて、キャビン3から重力方向を視認可能なように垂下された重錘として鎖40を有するので、杭Kが垂直に圧入されているか否かをキャビン3から容易に確認することができる。
なお、本発明に係る杭打ち方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
【0030】
例えば、上記実施形態では、杭Kは、太陽電池パネルを設置するための支柱であって、横断面が略コ字状のアルミ合金製の形鋼である例で説明したが、これに限定されず、種々の杭に対して本発明を適用可能である。勿論、横断面も略コ字状に限定されず、例えばH型、Z型、T型、I型等種々の形状に対して用いることができる。この場合に、打撃ヘッド30先端部の凹部38の形状は、地中に圧入する杭の上端部を杭の軸方向に沿って着脱可能に嵌合させて支持可能なように、対応した形状とされる。
【0031】
また、例えば上記実施形態では、油圧ブレーカ20に、キャビン3から重力方向を視認可能なように垂下された鎖40が付設された例を説明したが、これに限定されず、鎖40に替えて、キャビンから重力方向を視認可能に垂下された重錘とされていれば、例えばワイヤの先端に分銅を取付けたものとしてよい。また、油圧ブレーカ20でなく、例えば打撃ヘッド30に垂下してもよい。さらに、このような垂下された重錘を設けない構成としてもよい。しかし、杭が垂直に圧入されているか否かをキャビンから容易に確認可能とする上では、垂下された重錘を油圧ブレーカや打撃ヘッドに付設することは好ましい。
【符号の説明】
【0032】
1 走行台車
2 旋回台
3 キャビン
4 ブーム
5 アーム
6 ブームシリンダ(油圧機構)
7 アームシリンダ(油圧機構)
8 チルト機構
10 建設車両
20 油圧ブレーカ
22 (油圧ブレーカの)ブラケット
23 ブレーカ本体
24 圧入用チゼル
26 球体部
30 打撃ヘッド
32 上部ヘッド
33 テーパ穴
34 (上部ヘッド側の)凹球面部
36 下部ヘッド
37 (下部ヘッド側の)凹球面部
38 凹部
39 結合ボルト
40 鎖(垂下された重錘)
K 杭(支柱)
図1
図2
図3
図4
図5
図6