(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記並列フィードフォワード補償器への入力は、前記油圧ポンプユニットに対する流量指令から、操作器からの流量指令値を減算することにより構成される請求項1又は請求項2に記載の馬力制限装置。
前記補償値を出力することは、定数ゲインと帯域通過フィルタのいずれか一方又はその両方により構成された並列フィードフォワード補償器により出力することである、請求項4に記載の馬力制限方法。
前記並列フィードフォワード補償器への入力は、油圧ポンプユニットに対する流量指令から、操作器からの流量指令値を減算することである、請求項4又は請求項5に記載の馬力制限方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る馬力制限装置を用いた油圧駆動システムの概略的な構成を示すブロック図である。油圧駆動システム100は、油圧ポンプ1、油圧ポンプ1の動力源としてのモータ2、油圧アクチュエータ3、制御弁4、圧力センサ5、操作器6、馬力制限コントローラ7、レギュレータ8を備える。ここで、圧力センサ5及び馬力制限コントローラ7が馬力制限装置101を構成する。また、油圧ポンプ1、モータ2、及びレギュレータ8が油圧ポンプユニット102を構成する。なお、以下では、馬力制限された流量指令値を含んだ指令信号がレギュレータ8に入力されることによって油圧ポンプ1の吐出流量が制御される構成を例示するが、例えば、当該指令信号がモータ2に入力されることによって油圧ポンプ1の吐出流量が制御されるよう構成されてもよい(その他の実施の形態参照)。
【0016】
油圧ポンプ1は、例えば、モータ2を動力源として、回転運動で作動油を吐出する。吐出油は制御弁4を経由して、油圧アクチュエータ3に供給される。油圧ポンプ1として、公知のものを用いることができる。本実施の形態では、油圧ポンプ1は、例えば、モータ2により一定回転で駆動され、斜板傾角の調整により油圧ポンプ1の吐出流量(以下、単に流量と呼ぶ場合がある)を変化できる可変容量ポンプである。動力源は、モータ2には限定されず、例えば、内燃エンジンであってもよい。
【0017】
油圧アクチュエータ3は、油圧ポンプ1から吐出される吐出油により、図示しない負荷を駆動する。油圧アクチュエータ3としては、例えば、油圧シリンダが例示される。
【0018】
制御弁4は、油圧アクチュエータ3に対する吐出油の給排を制御し、それによって、油圧アクチュエータ3の動作を制御する。制御弁4は、図示されない制御器がユーザの操作入力(アクチュエータ3の動作を指令する操作入力)に従って出力する制御信号に従って動作する。なお、制御弁4がアクチュエータ3から作動油を排出する場合、当該排出する作動油はリリーフ油として制御弁4から図示されない油路を介して油圧ポンプ1に戻る。
【0019】
圧力センサ5は、油圧ポンプ1の吐出圧力(以下、単に圧力と呼ぶ場合がある)を検出する。ここでは、圧力センサ5は、油圧ポンプ1から油圧アクチュエータ3に吐出油を供給する油路20に設置され、油路20を通って供給される吐出油の圧力を検出し、この検出した吐出圧力を馬力制限コントローラ7に出力する。
【0020】
操作器6は、油圧ポンプ1に吐出流量を指令するためにユーザにより操作される。ここでは、操作器6は、当該操作器6の操作量に応じた油圧ポンプ1の吐出流量の指令信号を生成し、馬力制限コントローラ7に出力する。
【0021】
馬力制限コントローラ7は、圧力センサ5により検出された油圧ポンプ1の吐出圧力及び操作器6により入力された油圧ポンプ1の吐出流量の指令信号に基づいて、馬力制限された流量指令値を含んだ指令信号を生成し、これをレギュレータ8に出力する。ここでは、流量指令値は、油圧ポンプ1の斜板を制御するための傾転角指令値である。
【0022】
レギュレータ8は、吐出流量の指令信号に含まれる傾転角指令値に応じて油圧ポンプ1の斜板の傾角を調整し、駆動中の油圧ポンプ1の吐出流量を変化させる。
【0023】
次に、馬力制限コントローラ7の構成について
図2を用いて具体的に説明する。
【0024】
馬力制限コントローラ7は、並列フィードフォワード補償器(Parallel Feed forward Compensator、以下PFCと称する)9と、加算器10と、流量制限値演算部11と、流量制限部12と、を備える。馬力制限コントローラ7は、例えば、マイクロコントローラ、PLC(Programmable Logic Controller)等の演算器で構成される。PFC9、加算器10、流量制限値演算部11及び流量制限部12は、演算器が、その内蔵する動作プログラムを実行することにより実現される。
【0025】
PFC9は、レギュレータ8に対して馬力制限された吐出流量を指令する馬力制限後の流量指令値Qc[L/min]に基づいて、圧力センサ5により検出された吐出圧力の実績値(出力された吐出圧力)を補償するための補償値Pf[MPa]を出力する。
【0026】
加算器10は、PFC9により出力された補償値Pf[MPa]と圧力センサ5により検出されて出力される吐出圧力の実績値P[MPa]とを加算し、補償後の吐出圧力値P’[MPa]を出力する。
【0027】
流量制限値演算部11は、加算器10により出力された補償後の吐出圧力値P’ [MPa]及び予め設定された油圧ポンプ1の馬力制限値Wm[kW]に基づいて、油圧ポンプ1の吐出流量の制限値Qm[L/min]を演算する。流量制限値Qm[L/min]は、以下の式(1)に基づいて演算される。
【0028】
Qm=(60η)・Wm/P’・・・(1)
ここでηはポンプの効率であり、馬力制限値Wm[kW]は、例えば予め馬力制限コントローラ7内部の図示しない記憶部に記憶されている。
【0029】
流量制限部12は、流量制限値演算部11により演算された流量制限値Qm[L/min]及び油圧ポンプ1の吐出流量を指令する流量指令値Qd[L/min]に基づいて、馬力制限後の流量指令値Qc[L/min]を油圧ポンプ1に出力する。具体的には、流量制限部12は、流量指令値Qdと流量制限値Qmを比較し、流量指令値Qdが流量制限値Qmより小さい場合は、油圧ポンプ1に出力する流量指令値Qcを流量指令値Qdとし、流量指令値Qdが流量制限値Qmより大きい場合は、油圧ポンプに出力する流量指令値Qcを流量制限値Qmとする。ここで流量指令値Qd[L/min]は、
図1の操作器6から指令され、馬力制限コントローラ7内部の図示しない記憶部に一時的に記憶されている。尚、馬力制限値Wm及び流量指令値Qdが記憶される記憶部は、演算器の内部のメモリ、若しくはハードディスクドライブ等の外部メモリ、その他、ネットワークを介して接続されたコンピュータによりアクセス可能な記憶装置であってもよい。
【0030】
次に、PFC9の構成について説明する。PFC9は、馬力制限後の流量指令値Qcを入力として、油圧ポンプの吐出圧力を補償するための補償値Pfを出力するものであって、本実施の形態では、例えば、定数ゲインと、2次ハイパスフィルタ及び1次ローパスフィルタを有する帯域通過フィルタとで構成される。PFC9の伝達関数Gf(s)は次式(2)で示される。
【0033】
ここで、ω
H1、ω
H2は2次ハイパスフィルタのカットオフ周波数、ω
Lは一次ローパスフィルタのカットオフ周波数、Kfは定数ゲインである。
【0034】
図3は、PFC9による補償後の吐出圧力の応答波形を示したグラフである。縦軸は圧力、横軸は時間を示している。実線はPFC補償後の圧力P’、破線は圧力実績値P、一点鎖線はPFC補償値Pfをそれぞれ示している。ここではある負荷条件下で流量指令値がステップ状に変化した場合の圧力の応答波形を示している。
【0035】
圧力実績値Pは、流量指令値の変化に対して応答の立ち上がりが遅れている(図中の期間td)。これに対し、PFC補償値Pfは、圧力実績値Pが変化するまでの期間tdに擬似的な出力を発生させる。これにより、PFC補償後の圧力P’は、応答遅れがないように見える。
【0036】
このように、PFC9により、流量指令値が変化してから圧力実績値が変化するまでのタイムラグの間、擬似的な出力を発生させることができるので、圧力実績値の応答遅れを補うことができる。
【0037】
次に、馬力制限コントローラ7における具体的な馬力制限処理について説明する。まず、式(2)で示したPFC9の連続時間伝達関数Gf(s)は、双一次変換などの手法を用いて次式(3)のような離散時間伝達関数Gf(z)に変換される。
【0039】
このとき、時刻kにおけるPFC9の出力Pf(k)は、以下のように計算される。
【0041】
次に、流量制限値演算部11により、時刻kにおける流量制限値Qm(k)は、時刻kにおける圧力実績値P(k)、PFC9の出力Pf(k)を用いて以下のように演算される。ここで、ηはポンプの効率を考慮したもので、圧力や流量に応じて可変にすることでより正確に馬力制限することが可能となる。
【0043】
ここで、時刻kにおいて流量指令値Qd(k)よりも流量制限値Qm(k)が小さくなり、流量が制限されると仮定すると、Qc(k)=Qm(k)となる。よって、時刻kにおける流量制限値Qm(k)は、次式(6)により算出される。
【0045】
次に、流量制限部12により、流量制限値Qm(k)が、実際に流量指令値Qd(k)よりも小さければ、Qc(k)=Qm(k)とし、流量制限を行う。
【0046】
このように、補償後の圧力を用いて流量制限値を計算することにより、必要以上に流量指令値を変化させることがなくなるので、馬力制限におけるハンチングを抑制することができる。
【0047】
(第1比較例)
次に、PFC9を用いた本実施の形態に係る馬力制限の効果を比較例と対比して説明する。まず、従来技術で採用される馬力制限を第1の比較例として説明する。
【0048】
第1の比較例に係る馬力制限では、(9)式に基づいて油圧ポンプの流量と油圧ポンプの吐出圧力とから馬力の実績値(出力された馬力)Wを算出する。また、予め設定された馬力制限値Wm[kW]に対して、油圧ポンプの流量を制限する流量制限値Qm[L/min]を次式により算出する。
Qm=(60・η) Wm/P・・・(7)
そして、馬力実績値Wが馬力制限値Wmを超えると、油圧ポンプの吐出流量を指令する流量指令値を、流量制限値Qm[L/min]に制限して、油圧ポンプの吐出流量を制限し、それにより、油圧ポンプの馬力を制限する。
【0049】
図4は、第1比較例に係る馬力制限による油圧ポンプの特性を示したグラフである。縦軸は油圧ポンプの吐出流量、横軸は油圧ポンプの吐出圧力を示している。同グラフ中の曲線Wmは、馬力Wmとなる流量と圧力の点を結んだ馬力制限曲線を示している。実線で示した軌跡Pは、ある時刻における流量と圧力の位置を時系列で一定時間毎にプロットしたものである(図中の点a〜点i)。第1比較例に係る馬力制限では、圧力が増加して点aで示す時刻で馬力がWmを超えた場合、流量指令値は点線で示すように、点aの圧力において馬力Wmとなる流量に制限される。同様に、次の時刻bにおいても、圧力が増加したならば、流量指令値は、点bの圧力において馬力Wmとなる流量に制限される。ここで、流量指令値の変化に対して圧力が応答遅れなく変化するならば、この操作による軌跡Pはすぐに馬力制限曲線Wm上に収束するはずである。しかし、実際には応答遅れがあるため、現在の圧力に基づいて馬力Wmとなる流量を指令すると、
図4のように点b〜点cにかけて流量を下げ過ぎて点dで馬力がWmを下回ったり、逆に、点d〜点eにかけて流量を上げ過ぎて点fでまた馬力がWmを上回ったりと、馬力制限曲線を跨ぐようにして変動を繰り返す。すなわちハンチングが発生してしまう。
【0050】
これに対し、
図5は、本実施の形態1に係る馬力制限による油圧ポンプの特性を示したグラフである。ここでも縦軸は油圧ポンプの吐出流量、横軸は油圧ポンプの吐出圧力を示している。同グラフ中の曲線Wmは、馬力Wmとなる流量と圧力の点を結んだ馬力制限曲線を示している。破線で示した軌跡Pは、ある時刻における流量と圧力の位置を時系列で一定時間毎にプロットしたものである(図中の点a〜点d)。実線で示して軌跡P’は、ある時刻における流量とPFCによる補償後の圧力の位置を時系列で一定時間毎にプロットしたものである(図中の点a’〜点d’)。本実施の形態1に係る馬力制限では、圧力が増加して点aで示す時刻で馬力がWmを超えた場合、流量指令値は点線で示すように、点a(=点a’)の圧力において馬力Wmとなる流量に制限される。次に、次の時刻bにおいても、圧力が増加したならば、流量指令値は点線で示すように、点b’の補償後の圧力において馬力Wmとなる流量に制限される。ここで、補償後の圧力は、PFCにより流量指令値に対する応答遅れが補償されていて、その遅れは非常に小さいため、この操作による軌跡P’は、すぐに馬力制限曲線Wm上に収束する。さらに、補償後の圧力が収束すれば、実際の圧力の軌跡Pも馬力制限曲線Wmに収束する。すなわちハンチングが低減される。
【0051】
次に、実施の形態1と第1の比較例のそれぞれのシミュレーション結果を比較する。シミュレーション条件は、流量指令値Qdを800[L/min]、馬力制限値Wmを200[kW]、油圧シリンダの容積を10[L]とし、リリーフ流量を800[L/min]から250[L/min]まで30秒で変化させた場合を想定する。
【0052】
図6は、第1比較例に係る馬力制限によるシミュレーション結果を示したグラフである。
図6(a)は、馬力実績値の時間応答波形を示し、
図6(b)は、馬力制限による油圧ポンプの特性を示している。シミュレーション結果より、第1比較例では開始から15秒を経過してから20秒付近において大幅なハンチングが発生している。
【0053】
これに対し、
図7は、実施の形態1に係る馬力制限によるシミュレーション結果を示したグラフである。
図7(a)は、馬力実績値の時間応答波形を示し、
図7(b)は、馬力制限による油圧ポンプの特性を示している。シミュレーション結果より、本実施の形態では、第1比較例と比べハンチングが低減されている。
【0054】
(第2比較例)
次に、PFC9を用いた本実施の形態に係る馬力制限の効果を第2の比較例と対比して説明する。第2の比較例は、第1の比較例において補償回路を備えるよう構成されている。
【0055】
図8は、第2比較例における補償回路のブロック図である。
図8において、Gは制御対象(油圧ポンプ等)、uは操作量(流量指令値)、yは出力(補償後の圧力(圧力実績))、Fは補償要素としての直列フィルタ(位相進みフィルタ)である。第2の比較例は、応答遅れを補償するために制御対象(油圧ポンプ)に対し直列にフィルタを備える。
【0056】
これに対し、
図9は、実施の形態1における補償回路のブロック図である。Gは制御対象(油圧ポンプ等)、uは操作量(流量指令値)、yは出力(補償後の圧力)、Hは並列フィルタ(PFC)である。
図9(a)に示すように、本実施形態では、応答遅れを補償するために油圧ポンプに対し並列フィルタを備える。ここで、
図9(a)のブロック図を等価変換すると、
図9(b)の直列フィルタとして表現される。したがって、第2比較例の直列フィルタをF=1+G
-1Hとすれば、本実施形態の並列フィルタ(PFC)と同様の効果が得られることになる。しかしながら、G
-1は一般に高次の微分項が含まれるため、現実的にはこのようなフィルタを利用することは不可能である。したがって、補償要素として直列フィルタを用いる第2比較例と補償要素として並列フィルタを適用する本実施の形態とは構成に本質的な相違がある。
【0057】
さらに、第2比較例の直列フィルタと本実施形態の並列フィルタの効果について説明する。
図10は、第2比較例に係る直列フィルタの周波数特性を示したボード線図である。
図10(a)は、ゲイン線図を示し、
図10(b)は、位相線図をそれぞれ示している。実線は補償後の特性、H(s)は直列フィルタの特性、G(s)は制御対象の特性をそれぞれ示している。高周波領域では、制御対象G(s)の遅れが大きく、位相遅れはほとんど改善できないことを示している。
【0058】
これに対し、
図11は、実施の形態1に係る並列フィルタの周波数特性を示したボード線図である。
図11(a)は、ゲイン線図を示し、
図11(b)は、位相線図をそれぞれ示している。実線は補償後の特性、H(s)は直列フィルタの特性、G(s)は制御対象の特性をそれぞれ示している。
図11において低周波数領域では、補償後の特性が制御対象の特性G(s)とほぼ等しくなる、一方で、高周波領域では、補償後の特性が並列フィルタの特性H(s)とほぼ等しくなり、位相遅れをなくすことができる。
【0059】
ところで、馬力制限では、式(7)のように、馬力制限値Wmを圧力Pで割って流量制限値Qmを求めているが、この式(7)を動作点(圧力P
0)のまわりで線形化すると、次式(8)のように表現できる。
【0061】
式(8)を圧力のフィードバック制御と見なせば、(60η)Wm/P
02はフィードバックゲインに相当し、動作点の圧力P
0が低い場合は非常に大きなゲインとなることがわかる。フィードバック制御の理論では、位相遅れ180度以上の応答遅れとなる周波数領域があれば、一定以上の大きさのゲインでフィードバックを行ったとき不安定になる。
【0062】
第2比較例の直列フィルタによる補償では、高周波領域で位相遅れが180度以上となることは避けられないため、ハンチングが発生する可能性がある。一方、本実施の形態のPFCによる補償では、全周波数領域にわたって位相遅れを小さくできるため、ハンチングを発生しにくくすることができる。
【0063】
(第3比較例)
次に、PFC9を用いた本実施の形態に係る馬力制限の効果を第3比較例と対比して説明する。第3比較例は、PFCを馬力のフィードバック制御に適用した馬力制限の構成について説明する。
【0064】
通常、PFCは、制御量(出力)をその位相を反転させてフィードバックする(負帰還)ような制御に適用される。このPFCを単純に適用した場合の馬力制限の構成は
図12のブロック図のようになる。
【0065】
しかしながら、一般に油圧ポンプの馬力は吐出流量と吐出圧力との積となるため、
図12のブロック図の制御対象(流量→馬力)は非線形な特性となるため、PFCで応答遅れを補償する考え方をそのまま適用することはできない。
【0066】
そこで、本実施の形態では、油圧ポンプでは、流量を操作して圧力を変化させることができるとともに、その変化させた圧力を計測できることを利用し、
図2のブロック図のような構成としている。
【0067】
これにより、制御対象(流量→圧力)は基本的には線形近似できるような特性となり、PFCの補償の考え方を適用できる。さらに、PID制御器などの補償要素も不要となり、非常に簡単な構成で馬力制限を実現することができる。
【0068】
さらに、本実施の形態に係る馬力制限の構成は、
図2のブロック図に示すように、フィードバックされる圧力実績値と指令値(馬力)の次元が異なっており、且つフィードバックされる圧力実績値の位相は反転されない。そして、このような圧力実績値を割り算の形でフィードバックすることで、PFCを利用できるように工夫してある。このような点で、本実施の形態の馬力制限の制御は、通常のフィードバック制御とは本質的に相違しており、かつ「馬力=流量×圧力」で表現できる油圧ポンプならではの独創的な構成である。
【0069】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、
図13を用いて説明する。尚、実施の形態1と共通する構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0070】
図13は、本発明の実施の形態2に係る馬力制限装置のブロック図である。本実施の形態は、実施の形態1と比較すると、馬力制限コントローラ7が、加減算器13を更に備え、加減算器13により、馬力制限後の流量指令値Qcから流量指令値Qdを減算した値をPFC9の入力とした点が相違する。
【0071】
ここで、PFC9は基本的に高周波領域の応答を補正するので、流量指令値Qdの変動がそのような高周波領域にない場合(典型的には流量指令値Qdが一定の場合)には、PFC9への入力から流量指令値Qdの成分を差し引いてもPFC9の効果が損なわれることはない。このような構成としたことで、例えば油圧ポンプ1の起動時などに負荷がない状態で流量指令値を0から規定値までステップ状に上げた際、実際の圧力は上がらないが、PFC9の補償値が大きくなり、馬力制限が働いてしまうことを防ぐことができる。
【0072】
(その他の実施の形態)
上記各実施の形態においては、PFC9は、定数ゲインと、2次ハイパスフィルタ及び1次ローパスフィルタを有する帯域通過フィルタとで構成されたが、これに限られるものではない。流量指令に対する油圧ポンプの吐出圧力の応答遅れを補償することができる構成であれば、PFC9は、例えば定数ゲインと、その他の帯域通過フィルタにより構成されてもよいし、定数ゲインのみで構成されてもよい。
【0073】
また、上記各実施の形態においては、油圧ポンプ1においてモータ2の回転数は一定とし、油圧ポンプ1への指令は、流量指令値をポンプの傾転角の指令に変換して行われたが、これに限られるものではなく、油圧ポンプの傾転角を一定とし、油圧ポンプへの指令は、流量指令値をモータの回転数の指令に変換して行われるようにしてもよい。
【0074】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。